JP3985519B2 - 半導体基板及び電界効果型トランジスタ並びにこれらの製造方法 - Google Patents

半導体基板及び電界効果型トランジスタ並びにこれらの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高速MOSFET等に用いられる半導体基板及び電界効果型トランジスタ並びにこれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、Si(シリコン)基板上にSiGe(シリコン・ゲルマニウム)層を介してエピタキシャル成長した歪みSi層をチャネル領域に用いた高速のMOSFET、MODFET、HEMTが提案されている。この歪みSi−FETでは、Siに比べて格子定数の大きいSiGeによりSi層に引っ張り歪みが生じ、そのためSiのバンド構造が変化して縮退が解けてキャリア移動度が高まる。したがって、この歪みSi層をチャネル領域として用いることにより通常の1.3〜8倍程度の高速化が可能になるものである。また、プロセスとしてCZ法による通常のSi基板を基板として使用でき、従来のCMOS工程で高速CMOSを実現可能にするものである。
【0003】
しかしながら、FETのチャネル領域として要望される上記歪みSi層をエピタキシャル成長するには、Si基板上に良質なSiGe層をエピタキシャル成長する必要があるが、SiとSiGeとの格子定数の違いから、転位等により結晶性に問題があった。このために、従来、以下のような種々の提案が行われていた。
【0004】
例えば、SiGeのGe組成比を一定の緩い傾斜で変化させたバッファ層を用いる方法、Ge(ゲルマニウム)組成比をステップ状(階段状)に変化させたバッファ層を用いる方法、Ge組成比を超格子状に変化させたバッファ層を用いる方法及びSiのオフカットウェーハを用いてGe組成比を一定の傾斜で変化させたバッファ層を用いる方法等が提案されている(U.S.Patent 5,442,205、U.S.Patent 5,221,413、PCT WO98/00857、特開平6-252046号公報等)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の技術では、以下のような課題が残されている。
すなわち、上記従来の技術を用いて成膜されたSiGe層は、貫通転位密度や表面ラフネスがデバイス及び製造プロセスとして要望されるレベルには及ばない状態であった。
例えば、Ge組成比を傾斜させたバッファ層を用いる場合では、貫通転位密度を比較的低くすることができるが、表面ラフネスが悪化してしまう不都合があり、逆にGe組成比を階段状にしたバッファ層を用いる場合では、表面ラフネスを比較的少なくすることができるが、貫通転位密度が大きくなってしまう不都合があった。また、オフカットウェーハを用いる場合では、転位が成膜方向ではなく横に抜け易くなるが、まだ十分な低転位化を図ることができていない。表面ラフネスについても、近年のLSI等におけるフォトリソグラフィ工程に要求されるレベルにはまだ至っていない。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、貫通転位密度を低くかつ表面ラフネスも実用レベルまで小さくすることができる半導体基板及び電界効果型トランジスタ並びにこれらの製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明の半導体基板は、Si基板と、該Si基板上の第1のSiGe層と、該第1のSiGe層上に直接又はSi層を介して配された第2のSiGe層とを備え、前記第1のSiGe層は、膜厚の増加により転位を発生して格子緩和が生ずる膜厚である臨界膜厚の2倍より薄い膜厚であり、前記第2のSiGe層は、表面に向けてGe組成比が漸次増加するSiGeの傾斜組成層と該傾斜組成層の上面のGe組成比で傾斜組成層上に配されたSiGeの一定組成層とを交互にかつ連続したGe組成比で複数層積層状態にして構成され、前記第2のSiGe層下面のGe組成比は、前記第1のSiGe層におけるGe組成比の層中の最大値より低いことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の半導体基板の製造方法は、Si基板上にSiGe層をエピタキシャル成長させた半導体基板の製造方法であって、前記Si基板上に、第1のSiGe層をエピタキシャル成長する第1の層形成工程と、前記第1のSiGe層上に直接又はエピタキシャル成長したSi層を介して第2のSiGe層をエピタキシャル成長する第2の層形成工程とを有し、前記第1の層形成工程は、膜厚の増加により転位を発生して格子緩和が生ずる膜厚である臨界膜厚の2倍より薄く前記第1のSiGe層の膜厚を設定し、前記第2の層形成工程は、表面に向けてGe組成比を漸次増加させたSiGeの傾斜組成層をエピタキシャル成長する工程と、前記傾斜組成層の最終的なGe組成比で傾斜組成層上にSiGeの一定組成層をエピタキシャル成長する工程とを連続したGe組成比で複数回繰り返して、Ge組成比が成膜方向に傾斜をもって階段状に変化する前記第2のSiGe層を成膜し、該第2のSiGe層下面のGe組成比は、前記第1のSiGe層におけるGe組成比の層中の最大値より低いことを特徴とする。
また、本発明の半導体基板は、Si基板上にSiGe層が形成された半導体基板であって、上記本発明の半導体基板の製造方法により作製されたことを特徴とする。
【0009】
これらの半導体基板及び半導体基板の製造方法では、膜厚の増加により転位を発生して格子緩和が生ずる膜厚である臨界膜厚の2倍より薄く第1のSiGe層の膜厚を設定し、第2のSiGe層下面のGe組成比を第1のSiGe層におけるGe組成比の層中の最大値より低くするので、Si基板と第1のSiGe層との界面及び第1のSiGe層と第2のSiGe層との界面付近に効率的に転位を集中させることができ、第2のSiGe層表面の貫通転位密度及び表面ラフネスを低減することができる。
すなわち、第1のSiGe層が臨界膜厚の2倍より薄く成膜されるため、第1のSiGe層成膜中では膜厚に応じて歪みエネルギーが大きくなるが転位はほとんど生成しない。次に、第2のSiGe層のエピタキシャル成長を始めると、すでに第1のSiGe層に歪みエネルギーが蓄積されているため、第2のSiGe層の膜厚が薄い段階で、転位の生成と成長が、第1のSiGe層両側の界面及び第2のSiGe層内の第1のSiGe層側からはじまり、第1のSiGe層及び第2のSiGe層の格子緩和が始まる。このとき、第2のSiGe層のGe組成比が第1のSiGe層あるいは前記Si層との接触面で第1のSiGe層におけるGe組成比の層中の最大値より低いため、転位は、第1のSiGe層両側の界面に沿って集中し生成し、第1のSiGe層両側の界面における転位の生成が、第2のSiGe層の格子緩和を助け、第2のSiGe層内での転位の生成や成長が抑制されると共に、第2のSiGe層表面の表面ラフネスの悪化も抑制される。
さらに、第1のSiGe層は、Si基板表面における水分や酸素成分あるいは炭素成分といった不純物を除去する層として機能し、Si基板の表面汚染に起因した欠陥を抑制する効果がある。
【0010】
なお、第1のSiGe層の成膜中に転位が生成しはじめると、転位が多方向に成長し始めるため、転位の成長する方向を抑制することが困難になり、貫通転位や表面ラフネスを低減させることが難しい。そこで、第1のSiGe層の膜厚は、臨界膜厚の2倍を越えない範囲で、実際に転位の生成や格子緩和が顕著にはじまる膜厚より薄い膜厚に設定する必要がある。同時に、第1のSiGe層の膜厚は、実際に転位の生成や格子緩和が顕著にはじまる膜厚に近い膜厚であるほど効果的である。実際に転位の生成や格子緩和が顕著にはじまる膜厚は、成膜の温度条件等によって異なる。そこで、それぞれの成膜条件において、臨界膜厚の2倍を越えない範囲で、実際に転位の生成や格子緩和が顕著にはじまる膜厚付近で、本発明の効果が効果的に得られる膜厚を選べばよい。
【0011】
また、表面に向けてGe組成比が漸次増加するSiGeの傾斜組成層と該傾斜組成層の上面のGe組成比で傾斜組成層上に配されたSiGeの一定組成層とを交互にかつ連続したGe組成比で複数層積層状態にして第2のSiGe層とするので、第2のSiGe層全体としてGe組成比が傾斜階段状の層となり、界面において転位が横方向に走り易くなり、貫通転位が生じ難くなると共に、界面での組成変化が小さいので、界面での転位発生が抑制され、傾斜組成層の層内で転位が均等に発生して、表面ラフネスの悪化を抑制することができる。
【0012】
本発明者らは、SiGeの成膜技術について研究を行ってきた結果、結晶中の転位が以下のような傾向を有することがわかった。
すなわち、SiGe層を成膜する際に、成膜中に発生する転位は成膜方向に対して斜め方向又は横方向(成膜方向に直交する方向:<110>方向)のいずれかに走り易い特性を持っている。また、転位は層の界面で横方向に走り易いが、組成が急峻に変化する界面では、上記斜め方向に走り易くなると共に多くの転位が高密度に発生すると考えられる。
【0013】
したがって、Ge組成比を単純な階段状にして成膜すると、急峻な組成変化となる界面部分で多くの転位が高密度に生じると共に、転位が成膜方向の斜め方向に走り易く、貫通転位となるおそれが高いと考えられる。また、Ge組成比を単純に緩く傾斜させて成膜すると、上記斜め方向に走った転位が横方向に逃げるきっかけとなる部分(界面等)が無く、表面にまで貫通してしまうと考えられる。
【0014】
これらに対し、本発明の半導体基板の製造方法では、表面に向けてGe組成比を漸次増加させたSiGeの傾斜組成層をエピタキシャル成長する工程と、前記傾斜組成層の最終的なGe組成比で傾斜組成層上にSiGeの一定組成層をエピタキシャル成長する工程とを連続したGe組成比で複数回繰り返して、Ge組成比が成膜方向に傾斜をもって階段状に変化する前記第2のSiGe層を成膜するので、傾斜組成層と一定組成層とが交互に複数段形成されてGe組成比が傾斜階段状の層となり、転位密度が小さくかつ表面ラフネスが小さいSiGe層を形成することができる。
すなわち、界面において転位が横方向に走り易くなり、貫通転位が生じ難くなる。また、界面での組成変化が小さいので、界面での転位発生が抑制され、傾斜組成層の層内で転位が均等に発生して、表面ラフネスの悪化を抑制することができる。
【0015】
さらに、第2のSiGe層の傾斜組成領域では、転位が均等に生成し、転位同士の絡み合いが起こり、傾斜組成領域中の転位密度が減少するとともに、転位の成長が横方向に誘導されることにより表面領域における貫通転位密度が減少し、表面ラフネスの悪化も抑制される効果がある。
【0016】
従来の第1のSiGe層がない場合の傾斜組成領域では、傾斜組成領域の膜厚が所定の膜厚以上になり臨界膜厚を越えたときに転位の生成がはじまり、いったん転位密度の増加を経た後に、さらに傾斜組成祖領域を形成した場合に、前記の効果が得られる。すなわち、従来の構造では、傾斜組成領域の上側の一部の領域においてのみ前記の効果が得られる。
一方、第1のSiGe層がある本発明の構造では、すでに第1のSiGe層に歪みエネルギーが蓄積されているため、第2のSiGe層の膜厚が薄い段階で、転位の生成が第2のSiGe層内ではじまるため、第2のSiGe層内の傾斜組成領域全体で前記の効果が得られ、第2のSiGe層の表面領域における貫通転位密度が減少し、表面ラフネスの悪化も抑制される。
【0017】
また、本発明の半導体基板は、前記第1のSiGe層が、Ge組成比xが一定であり、次の関係式;
c(nm)=(1.9×10-3/ε(x)2)・ln(tc/0.4)
ε(x)=(a0+0.200326x+0.026174x2)/a0
0=0.543nm(a0は、Siの格子定数)
を満たす臨界膜厚tcの2倍未満の厚さである技術が採用される。
また、本発明の半導体基板の製造方法は、前記第1の層形成工程において、前記第1のSiGe層のGe組成比xが一定であり、第1のSiGe層を、次の関係式;
c(nm)=(1.9×10-3/ε(x)2)・ln(tc/0.4)
ε(x)=(a0+0.200326x+0.026174x2)/a0
0=0.543nm(a0は、Siの格子定数)
を満たす臨界膜厚tcの2倍未満の厚さにする技術が採用される。
【0018】
これらの半導体基板及び半導体基板の製造方法では、第1のSiGe層のGe組成比が一定であるため、同じGe組成比で実際に転位の生成や格子緩和が顕著にはじまる膜厚が最も薄くなり、最も薄い膜厚で本発明の効果が得られ、成膜に要する時間が短いという利点がある。また、これらの半導体基板及び半導体基板の製造方法では、第1のSiGe層を上記関係式を満たす臨界膜厚(成膜温度にかかわらず、Ge組成比及び格子定数のみから算出される転位が発生して格子緩和が生ずる膜厚をいう)tcの2倍未満の厚さにすることにより、第1のSiGe層の膜厚を容易に実際に転位の生成や格子緩和が顕著にはじまる膜厚内に設定することができる。
【0019】
すなわち、上記実際に転位の生成や格子緩和が顕著にはじまる膜厚は成膜温度により変化するため、Ge組成比x及び格子定数のみから理論的に求めた理想的な臨界膜厚tcの2倍未満とすれば、実際に転位の生成や格子緩和が顕著にはじまる膜厚より薄くなり、本発明の効果を得ることができる。なお、上記臨界膜厚は、平衡状態で成膜されることを前提にしているため、成膜温度にかかわらずGe組成比及び格子定数のみで決定されるが、実際に転位の生成や格子緩和が顕著にはじまる膜厚は、平衡状態だけでなく低温成長などの非平衡状態で成膜された場合も含めたものであり、成膜温度に応じて決定される。
【0020】
本発明の半導体基板は、Si基板上にSiGe層が形成された半導体基板であって、上記本発明の半導体基板の製造方法により作製されたことを特徴とする。すなわち、この半導体基板は、上記本発明の半導体基板の製造方法により作製されているので、表面の貫通転位が少なく、良好な表面ラフネスを有している。
【0021】
また、本発明の半導体基板は、前記第1のSiGe層のGe組成比xが0.05以上かつ0.3以下であることが好ましい。
また、本発明の半導体基板の製造方法は、前記第1のSiGe層のGe組成比xが0.05以上かつ0.3以下であることが好ましい。
また、本発明の半導体基板は、Si基板上にSiGe層が形成された半導体基板であって、上記本発明の半導体基板の製造方法により作製されたことを特徴とする。
【0022】
これらの半導体基板及び半導体基板の製造方法では、前記第1のSiGe層のGe組成比xが0.05以上かつ0.3以下であるため、実際に転位の生成や格子緩和が顕著にはじまる膜厚が薄すぎたり厚すぎたりすることがなく、適度な厚さの第1のSiGe層で本発明の効果が効果的に得られる。
すなわち、第1のSiGe層のGe組成比xが0.05より小さい場合は、実際に転位の生成や格子緩和が顕著にはじまる膜厚が厚くなりすぎるため、第1のSiGe層の成膜に要する時間が長くなり、しかも、第1のSiGe層の表面ラフネスが悪化してしまう。
【0023】
一方、第1のSiGe層のGe組成比xが0.3より大きい場合は、ごく薄い膜厚で、実際に転位の生成や格子緩和が顕著にはじまってしまうため、第1のSiGe層を制御性よく形成することが難しい。
また、前記第1のSiGe層のGe組成比xが0.05以上かつ0.3以下であれば、実際に転位の生成や格子緩和が顕著にはじまる膜厚が適度な厚さとなり、第1のSiGe層両側の界面に沿って転位が集中して生成し、第1のSiGe層両側の界面における転位の生成が、第2のSiGe層の格子緩和を助ける効果を効果的に得られる。
【0024】
本発明の半導体基板は、前記第2のSiGe層上に直接又は他のSiGe層を介して歪みSi層をエピタキシャル成長することを特徴とする。
本発明の半導体基板の製造方法は、前記第2のSiGe層上に直接又は他のSiGe層を介して歪みSi層をエピタキシャル成長する工程を有することを特徴とする。
また、本発明の半導体基板は、Si基板上にSiGe層を介して歪みSi層が形成された半導体基板であって、上記本発明の半導体基板の製造方法により作製されたことを特徴とする。
【0025】
これらの半導体基板の製造方法及び半導体基板では、前記第2のSiGe層上に直接又は他のSiGe層を介して歪みSi層がエピタキシャル成長されるので、欠陥が少なく、表面ラフネスの小さな良質な歪みSi層が得られ、例えば歪みSi層をチャネル領域とするMOSFET等を用いた集積回路用として好適な半導体基板を得ることができる。
【0026】
本発明の電界効果型トランジスタの製造方法は、SiGe層上にエピタキシャル成長された歪みSi層にチャネル領域が形成される電界効果型トランジスタの製造方法であって、上記本発明の歪みSi層を有する半導体基板の製造方法により作製された半導体基板の前記歪みSi層に前記チャネル領域を形成することを特徴とする。
また、本発明の電界効果型トランジスタは、SiGe層上にエピタキシャル成長された歪みSi層にチャネル領域が形成される電界効果型トランジスタであって、上記本発明の電界効果型トランジスタの製造方法により作製されたことを特徴とする。
【0027】
これらの電界効果型トランジスタの製造方法及び電界効果型トランジスタは、上記本発明の歪みSi層を有する半導体基板の製造方法により作製された半導体基板の歪みSi層にチャネル領域を形成するので、良質な歪みSi層により高特性な電界効果型トランジスタを高歩留まりで得ることができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る第1実施形態を、図1から図5を参照しながら説明する。
【0029】
図1は、本発明の半導体ウェーハ(半導体基板)Wの断面構造を示すものであり、この半導体ウェーハの構造をその製造プロセスと合わせて説明すると、まず、CZ法等で引上成長して作製されたp型あるいはn型Si基板1上に、図1及び図2に示すように、Ge組成比xが一定(例えばx=0.15)で上述した実際に転位の生成や格子緩和が顕著にはじまる膜厚よりも薄い厚さ(例えば300nm)の第1のSiGe層2を例えば減圧CVD法によりエピタキシャル成長する。
【0030】
この際、第1のSiGe層2が実際に転位の生成や格子緩和が顕著にはじまる膜厚より薄く成膜されるため、第1のSiGe層2成膜中では膜厚に応じて歪みエネルギーが大きくなるが転位や格子緩和はほとんど発生しない。
なお、第1のSiGe層2の厚さは、次の関係式;
c(nm)=(1.9×10-3/ε(x)2)・ln(tc/0.4)
ε(x)=(a0+0.200326x+0.026174x2)/a0
0=0.543nm(a0は、Siの格子定数)
を満たす臨界膜厚tcの2倍未満の厚さにする。
【0031】
次に、第1のSiGe層2上に第2のSiGe層3をエピタキシャル成長する。この第2のSiGe層3は、そのGe組成比yが少なくとも第1のSiGe層2との接触面で第1のSiGe層2におけるGe組成比xの層中の最大値より低く設定される。また、第2のSiGe層3は、Ge組成比xが0からy(例えばy=0.3)まで成膜方向に傾斜をもって階段状に変化するSi1-xGexのステップ傾斜層である。
【0032】
次に、第2のSiGe層3上にGe組成比が一定であるSi1-yGeyの緩和層4をエピタキシャル成長する。さらに、Ge組成比z(本実施形態ではz=y)でSi1-zGezの緩和層4上にSiをエピタキシャル成長して歪みSi層5を形成することにより、本実施形態の歪みSi層を備えた半導体ウェーハWが作製される。なお、各層の膜厚は、例えば、第2のSiGe層3が1.5μm、緩和層4が0.7〜0.8μm、歪みSi層5が15〜22nmである。
【0033】
上記第2のSiGe層3の成膜は、図2から図4に示すように、表面に向けてGe組成比を所定値まで漸次増加させたSiGeの傾斜組成層3aをエピタキシャル成長する工程と、傾斜組成層3aの最終的なGe組成比で傾斜組成層3a上にSiGeの一定組成層3bをエピタキシャル成長する工程とを連続したGe組成比で複数回繰り返して行われる。また、第2のSiGe層3下面のGe組成比は、第1のSiGe層2上面のGe組成比以下に設定される。なお、本実施形態では、第2のSiGe層3のGe組成比をゼロから漸次増加させている。
【0034】
例えば、本実施形態では、傾斜組成層3a及び一定組成層3bのエピタキシャル成長工程を5回繰り返し行って第2のSiGe層3を形成する。すなわち、1回の傾斜組成層3a及び一定組成層3bのエピタキシャル成長工程を1ステップとすると、まず最初のステップとして第1の傾斜組成層3aをSi基板1上に、Ge組成比を0から0.06まで漸次増加させて成長し、その上にGe組成比が0.06の第1の一定組成層3bを形成する。次に、第2のステップとして、Ge組成比0.06の第1の一定組成層3b上に第2の傾斜組成層3aを、Ge組成比を0.06から0.12まで漸次増加させて成長し、その上にGe組成比が0.12の第2の一定組成層3bを形成する。
【0035】
そして、第3のステップとして、Ge組成比0.12の第2の一定組成層3b上に第3の傾斜組成層3aを、Ge組成比を0.12から0.18まで漸次増加させて成長し、その上にGe組成比が0.18の第3の一定組成層3bを形成する。次に、第4のステップとして、Ge組成比0.18の第3の一定組成層3b上に第4の傾斜組成層3aを、Ge組成比を0.18から0.24まで漸次増加させて成長し、その上にGe組成比が0.24の第4の一定組成層3bを形成する。さらに、最後のステップとして、Ge組成比0.24の第4の一定組成層3b上に第5の傾斜組成層3aを、Ge組成比を0.24から0.3まで漸次増加させて成長し、その上にGe組成比が0.3の第5の一定組成層3bを形成する。なお、本実施形態では、各傾斜組成層3a及び各一定組成層3bの膜厚は、いずれも同じに設定されている。
【0036】
上記第2のSiGe層3のエピタキシャル成長を始めると、すでに第1のSiGe層2に歪みエネルギーが蓄積されているため、第2のSiGe層3の膜厚が薄い段階で、転位の生成と成長が、第1のSiGe層2両側の界面及び第2のSiGe層3内の第1のSiGe層2側からはじまり、第1のSiGe層2及び第2のSiGe層3の格子緩和が始まる。このとき、第2のSiGe層3のGe組成比が第1のSiGe層2の接触面で第1のSiGe層2におけるGe組成比の層中の最大値より低いため、転位は、第1のSiGe層2両側の界面2a、2bに沿って集中し生成し、第1のSiGe層2両側の界面2a、2bにおける転位の生成が、第2のSiGe層3の格子緩和を助け、第2のSiGe層3内での転位の生成や成長が抑制されると共に、第2のSiGe層3表面の表面ラフネスの悪化も抑制される。
【0037】
さらに、Ge組成比zが第2のSiGe層3の最終的なGe組成比と同じ(例えば、zが0.3)で一定組成比のSiGe緩和層4を所定厚さ(例えば、0.75μm)だけエピタキシャル成長し、次に、該SiGe緩和層4上に単結晶Siをエピタキシャル成長して歪みSi層5を所定厚さ(例えば、20nm)だけ形成することにより、本実施形態の半導体ウェーハWが作製される。
なお、上記減圧CVD法による成膜は、例えばキャリアガスとしてH2を用い、ソースガスとしてSiH4及びGeH4を用いている。
【0038】
このように本実施形態の半導体ウェーハWでは、実際に転位の生成や格子緩和が顕著にはじまる膜厚より薄く第1のSiGe層2の膜厚を設定し、第2のSiGe層3のGe組成比yを少なくとも第1のSiGe層2との接触面で第1のSiGe層2におけるGe組成比xの層中の最大値より低くするので、Si基板1と第1のSiGe層2との界面2a及び第1のSiGe層2と第2のSiGe層3との界面2bに効率的に転位を集中させることができ、貫通転位密度及び表面ラフネスを低減すること等ができる。
【0039】
また、第1のSiGe層2のGe組成比が一定であるため、同じGe組成比で実際に転位の生成や格子緩和が顕著にはじまる膜厚が最も薄くなり、最も薄い膜厚で本発明の効果が得られ、成膜に要する時間が短いという利点がある。
また、第1のSiGe層2を上記関係式を満たす臨界膜厚tcの2倍未満の厚さにすることにより、後述する実験結果に基づいて、第1のSiGe層2の膜厚を容易に実際に転位の生成や格子緩和が顕著にはじまる膜厚内に設定することができる。
【0040】
また、本実施形態では、第2のSiGe層3の成膜前にすでに第1のSiGe層2に歪みエネルギーが蓄積されているため、第2のSiGe層3の膜厚が薄い段階で、転位の生成が第2のSiGe層3内ではじまるため、第2のSiGe層3内の傾斜組成領域全体で前記の効果が得られ、第2のSiGe層3の表面領域における貫通転位密度が減少し、表面ラフネスの悪化も抑制される。
さらに、第1のSiGe層2は、Si基板1表面における水分や酸素成分あるいは炭素成分といった不純物を除去する層として機能し、Si基板1の表面汚染に起因した欠陥を抑制する効果がある。
【0041】
また、本実施形態では、第2のSiGe層3の形成において、表面に向けてGe組成比を漸次増加させたSiGeの傾斜組成層3aをエピタキシャル成長する工程と、傾斜組成層3aの最終的なGe組成比で傾斜組成層3a上にSiGeの一定組成層3bをエピタキシャル成長する工程とを連続したGe組成比で複数回繰り返すので、傾斜組成層3aと一定組成層3bとが交互に複数段形成されてGe組成比が傾斜階段状の層となり、上述したように転位密度が少なくかつ表面ラフネスが少ないSiGe層を形成することができる。
すなわち、本実施形態では、格子緩和に必要な転位を均等に発生させると共に、転位をできるだけ横方向に走らせて表面上に貫通して出ないようにSiGe層を成膜することができるので、良好な表面状態を得ることができる。
【0042】
次に、本発明の上記半導体ウェーハWを用いた電界効果型トランジスタ(MOSFET)を、その製造プロセスと合わせて図5を参照して説明する。
【0043】
図5は、本発明の電界効果型トランジスタの概略的な構造を示すものであって、この電界効果型トランジスタを製造するには、上記の製造工程で作製した半導体ウェーハW表面の歪みSi層5上にSiO2のゲート酸化膜6及びゲートポリシリコン膜7を順次堆積する。そして、チャネル領域となる部分上のゲートポリシリコン膜7上にゲート電極(図示略)をパターニングして形成する。
【0044】
次に、ゲート酸化膜6もパターニングしてゲート電極下以外の部分を除去する。さらに、ゲート電極をマスクに用いたイオン注入により、歪みSi層5及び緩和層4にn型あるいはp型のソース領域S及びドレイン領域Dを自己整合的に形成する。この後、ソース領域S及びドレイン領域D上にソース電極及びドレイン電極(図示略)をそれぞれ形成して、歪みSi層5がチャネル領域となるn型あるいはp型MOSFETが製造される。
【0045】
このように作製されたMOSFETでは、上記製法で作製された半導体ウェーハW上の歪みSi層5にチャネル領域が形成されるので、良質な歪みSi層5により高特性なMOSFETを高歩留まりで得ることができる。
【0046】
次に、本発明に係る第2実施形態について、図6及び図7を参照して説明する。
【0047】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態における第2のSiGe層3では、傾斜組成層3a及び一定組成層3bの膜厚がそれぞれ同一に設定されているのに対し、第2実施形態では、図6及び図7に示すように、傾斜組成層13a及び一定組成層13bをエピタキシャル成長する工程において、それぞれ繰り返す毎に傾斜組成層13a及び一定組成層13bの厚さを漸次薄くして第2のSiGe層13を形成している点である。なお、第1実施形態では、傾斜組成層3a及び一定組成層3bのエピタキシャル成長工程を5回繰り返し行っているが、本実施形態では、傾斜組成層13a及び一定組成層13bのエピタキシャル成長工程を4回繰り返し行って第2のSiGe層13を形成している点でも異なっている。
【0048】
すなわち、本実施形態では、傾斜組成層13a及び一定組成層13bのエピタキシャル成長工程において、第1の傾斜組成層13a及び第1の一定組成層13bを成長した後に、第1の傾斜組成層13a及び第1の一定組成層13bより薄く第2の傾斜組成層13a及び第2の一定組成層13bを成長する。さらに、同様にして第2の傾斜組成層13a及び第2の一定組成層13bより薄く第3の傾斜組成層13a及び第2の一定組成層13bを成長し、最後に第3の傾斜組成層13a及び第3の一定組成層13bより薄く第4の傾斜組成層13a及び第4の一定組成層13bを成長して第2のSiGe層13を形成する。
【0049】
すなわち、第1の傾斜組成層13a及び第1の一定組成層13bをl1、第2の傾斜組成層13a及び第2の一定組成層13bをl2、第3の傾斜組成層13a及び第3の一定組成層13bをl3、第4の傾斜組成層13a及び第4の一定組成層13bをl4とすると、l1>l2>l3>l4となるように積層する。
なお、転位が生じる限界膜厚はGe組成比によって変わるが、上記各層は、この限界膜厚よりは厚く設定され、格子緩和に必要な転位を各層で均等に生じるようにしている。
また、各傾斜組成層13aにおけるGe組成比の傾斜は、それぞれ同じになるように設定されている。
【0050】
前述したように、転位はGe組成比が高いほど発生し易くなるので、第1実施形態のように同一厚さで成膜を繰り返した場合、上層ほど転位が多く発生してしまうのに対し、本実施形態のように、繰り返す毎に傾斜組成層13a及び一定組成層13bの厚さを漸次薄くすることにより、各層でより転位を均等に発生させることができる。
【0051】
次に、本発明に係る第3実施形態について、図8を参照して説明する。
【0052】
第3実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態における第1のSiGe層2では、Ge組成比が一定に設定されているのに対し、第3実施形態では、図8に示すように、第1のSiGe層のGe組成比xが一定でない点である。例えば、本実施形態の第1の例は、図8の(a)に示すように、第1のSiGe層12のGe組成比xをSi基板1との接触面で層中の最大値とし、Ge組成比xを漸次減少させている。
【0053】
すなわち、本実施形態の第1の例では、第1のSiGe層12の形成工程において、成膜開始時ではGe組成比xを0.3とし、その後徐々に減少させて最終的にはGe組成比xをほぼ0まで変化させ、実際に転位の生成や格子緩和が顕著にはじまる膜厚より薄い所定厚さ(例えば、350nm)だけ成長させた傾斜組成層とする。
【0054】
本実施形態では、第1のSiGe層12のGe組成比xをSi基板1との接触面で層中の最大値とすることにより、成膜時の歪みエネルギーがSi基板1との界面側に集中することになり、第2のSiGe層3成膜開始時に生じる格子緩和の際に、第2のSiGe層3との界面よりもSi基板1との界面に多くの転位を発生させることができる。これにより、第2のSiGe層3表面側から離れた位置に転位を集中させることができ、第1実施形態と同様に、貫通転位や表面ラフネスを低減させることが可能になる。
【0055】
また、本実施形態の第2の例は、図8の(b)に示すように、第1のSiGe層22の形成工程において、成膜開始時ではGe組成比xを0.3とし、その後徐々に減少させてGe組成比xをほぼ0まで変化させて所定厚さ(例えば、350nm)成膜した後、さらに再びGe組成比xを徐々に増加させて最終的に0.3まで所定厚さ(例えば、350nm)成膜した組成変化層としている。
【0056】
なお、この第1のSiGe層22の厚さも、実際に転位の生成や格子緩和が顕著にはじまる膜厚より薄く設定する。
この第2の例においても、第1のSiGe層22のGe組成比xがSi基板1及び第2のSiGe層3との接触面で層中の最大値となるので、第1実施形態と同様に、Si基板1及び第2のSiGe層3との界面に多くの転位を発生させることができる。
【0057】
また、本実施形態の第3の例は、図8の(c)に示すように、第1のSiGe層32のGe組成比xをほぼ0から徐々に増加させて最終的に0.3まで実際に転位の生成や格子緩和が顕著にはじまる膜厚より薄い所定厚さ(例えば、350nm)成膜している。
【0058】
また、本実施形態の第4の例は、図8の(d)に示すように、第1のSiGe層42のGe組成比xをほぼ0から徐々に増加させて0.3まで所定厚さ(例えば、350nm)成膜し、さらにその後Ge組成比xを0.3から徐々に減少させてほぼ0まで所定厚さ(例えば、350nm)成膜している。なお、第1のSiGe層42の厚さは、実際に転位の生成や格子緩和が顕著にはじまる膜厚より薄く設定される。
【0059】
これらの第4及び第5の例では、いずれも第1のSiGe層32、42が実際に転位の生成や格子緩和が顕著にはじまる膜厚より薄い膜厚で形成されるので、第2のSiGe層3の成膜時に第1のSiGe層32、42の両側の界面に転位が集中的に発生し、貫通転位や表面ラフネスを低減することができる。なお、第4及び第5の例では、第1のSiGe層32、42の層中におけるGe組成比の最大値がSi基板1との界面側にないため、第1及び第2実施形態の方が、より貫通転位及び表面ラフネスの改善効果を得ることができる。
【0060】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0061】
例えば、上記各実施形態では、第1のSiGe層中において膜厚に対するGe組成比の分布として5通りの分布としたが、他の分布としても構わない。例えば、第1のSiGe層をGe組成比が異なる複数のSiGe層からなる多層膜としても構わない。また、前記多層膜でSi層を含む多層膜としても構わない。
また、上記各実施形態では、第1のSiGe層内でGe組成比を変化させる場合、膜厚に対して一定割合で組成を変化させたが、その割合を一定でなくした構造としても構わない。
さらに、第1のSiGe層は、Geを含む層であり、歪みエネルギーを蓄積できればよく、これら以外のいかなるGe組成比の分布であっても構わない。
【0062】
また、上記各実施形態では、第2のSiGe層内でGe組成比を表面に向けて漸次増加させた傾斜組成層を、膜厚に対して一定割合で組成を変化させたが、その割合を一定でなくした構造としても構わない。
また、上記各実施形態では、第1のSiGe層上に直接第2のSiGe層を配したが、Si層を介して第2のSiGe層を配しても構わない。
また、上記各実施形態の半導体ウェーハの歪みSi層上に、さらにSiGe層を成膜しても構わない。
【0063】
また、上記各実施形態では、MOSFET用の基板としてSiGe層を有する半導体ウェーハを作製したが、他の用途に適用する基板としても構わない。例えば、本発明の半導体基板の製造方法及び半導体基板を太陽電池や光素子用の基板に適用してもよい。すなわち、上述した各実施形態において、最表面で65%から100%Geあるいは100%Geとなるように第2のSiGe層及び第3のSiGe層を成膜し、さらにこの上にInGaP(インジウムガリウムリン)あるいはGaAs(ガリウムヒ素)やAlGaAs(アルミニウムガリウムヒ素)を成膜することで、太陽電池や光素子用基板を作製してもよい。この場合、低転位密度で高特性の太陽電池用基板が得られる。
【0064】
【実施例】
次に、本発明に係る半導体基板を実際に作製した際の貫通転位密度及び表面ラフネスの測定結果を示す。
【0065】
作製した半導体基板は、上記第1実施形態に対応するものであり、第1のSiGe層2のGe組成比を0.2とし、第2のSiGe層3の傾斜組成層3a及び一定組成層3bのエピタキシャル成長工程を5回繰り返して行った。半導体基板は第1のSiGe層2の膜厚を変えて複数作製した。なお、比較のために、第2のSiGe層を、一定組成層を含まない単一の傾斜組成層としたものも作製した。また、従来技術との比較のために、第1のSiGe層がなく、しかも、第2のSiGe層を、一定組成層を含まない単一の傾斜組成層としたもの(STD)も作製した。
この結果、図9及び図10に示すように、従来技術(STD)に対して、わずかでも第1のSiGe層を設けたものは、貫通転位密度及び表面ラフネスが低くなった。特に、第1のSiGe層が400nm以下の領域で低い貫通転位密度及び表面ラフネスが得られている。
【0066】
第2のSiGe層を、一定組成層を含まない単一の傾斜組成層としたものでは、従来技術(STD)に比べ、やはり、わずかでも第1のSiGe層を設けたものは、貫通転位密度及び表面ラフネスが低くなった。この場合も、特に第1のSiGe層が400nm以下の領域で低い貫通転位密度及び表面ラフネスが得られている。ただし、第1実施形態と比較すれば、貫通転位密度及び表面ラフネスが悪化しており、第2のSiGe層を傾斜組成層と一定組成層とからなる傾斜階段状の層とすることで、貫通転位密度及び表面ラフネスをより効果的に低減できたことが分かる。
【0067】
【発明の効果】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
本発明の半導体基板及び半導体基板の製造方法によれば、膜厚の増加により転位を発生して格子緩和が生ずる膜厚である臨界膜厚の2倍より薄く第1のSiGe層の膜厚を設定し、表面に向けてGe組成比が漸次増加するSiGeの傾斜組成層と該傾斜組成層の上面のGe組成比で傾斜組成層上に配されたSiGeの一定組成層とを交互にかつ連続したGe組成比で複数層積層状態にして第2のSiGe層を構成し、第2のSiGe層下面のGe組成比を、第1のSiGe層におけるGe組成比の層中の最大値より低くするので、Si基板と第1のSiGe層との界面及び第1のSiGe層と第2のSiGe層との界面付近に効率的に転位を集中させることができると共に、さらに転位を横方向に走らせて表面上に貫通して出ないようにすることができる。したがって、これらの相乗効果によって、貫通転位密度及び表面ラフネスの小さい良質な結晶性の基板を得ることができる。
【0068】
また、本発明の電界効果型トランジスタ及び電界効果型トランジスタの製造方法によれば、上記本発明の半導体基板又は上記本発明の半導体基板の製造方法により作製された半導体基板の前記歪みSi層に前記チャネル領域が形成されるので、良質な歪みSi層により高特性なMOSFETを高歩留まりで得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る第1実施形態における半導体基板を示す断面図である。
【図2】 本発明に係る第1実施形態における半導体基板の膜厚に対するGe組成比を示すグラフである。
【図3】 本発明に係る第1実施形態における第2のSiGe層を示す断面図である。
【図4】 本発明に係る第1実施形態における第2のSiGe層の膜厚に対するGe組成比を示すグラフである。
【図5】 本発明に係る第1実施形態におけるMOSFETを示す概略的な断面図である。
【図6】 本発明に係る第2実施形態における第2のSiGe層の膜厚に対するGe組成比を示すグラフである。
【図7】 本発明に係る第2実施形態における第2のSiGe層を示す断面図である。
【図8】 本発明に係る第3実施形態の各例における第1のSiGe層の膜厚に対するGe組成比を示すグラフである。
【図9】 本発明に係る第1実施形態に対応する実施例における第1のSiGe層の膜厚を変えた場合の貫通転位密度の測定結果を示すグラフである。
【図10】 本発明に係る第1実施形態に対応する実施例における第1のSiGe層の膜厚を変えた場合の表面ラフネスの測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 Si基板
2、12、22、32、42 第1のSiGe層
3 第2のSiGe層
3a、13a 傾斜組成層
3b、13b 一定組成層
4 SiGe緩和層
5 歪みSi層
6 SiO2ゲート酸化膜
7 ゲートポリシリコン膜
S ソース領域
D ドレイン領域
W 半導体ウェーハ(半導体基板)

Claims (13)

  1. Si基板と、
    該Si基板上の第1のSiGe層と、
    該第1のSiGe層上に直接又はSi層を介して配された第2のSiGe層とを備え、
    前記第1のSiGe層は、膜厚の増加により転位を発生して格子緩和が生ずる膜厚である臨界膜厚の2倍より薄い膜厚であり、
    前記第2のSiGe層は、表面に向けてGe組成比が漸次増加するSiGeの傾斜組成層と該傾斜組成層の上面のGe組成比で傾斜組成層上に配されたSiGeの一定組成層とを交互にかつ連続したGe組成比で複数層積層状態にして構成され、
    前記第2のSiGe層下面のGe組成比は、前記第1のSiGe層におけるGe組成比の層中の最大値より低いことを特徴とする半導体基板。
  2. 請求項1に記載の半導体基板において、
    前記第1のSiGe層は、Ge組成比xが一定であり、次の関係式;
    c(nm)=(1.9×10-3/ε(x)2)・ln(tc/0.4)
    ε(x)=(a0+0.200326x+0.026174x2)/a0
    0=0.543nm(a0は、Siの格子定数)
    を満たす臨界膜厚tcの2倍未満の厚さであることを特徴とする半導体基板。
  3. 請求項1又は2に記載の半導体基板において、
    前記第1のSiGe層は、Ge組成比xが0.05以上かつ0.3以下であることを特徴とする半導体基板。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載の半導体基板の前記第2のSiGe層上に直接又は他のSiGe層を介して配された歪みSi層を備えていることを特徴とする半導体基板。
  5. SiGe層上の歪みSi層にチャネル領域を有する電界効果型トランジスタであって、
    請求項4に記載の半導体基板の前記歪みSi層に前記チャネル領域を有することを特徴とする電界効果型トランジスタ。
  6. Si基板上にSiGe層をエピタキシャル成長させた半導体基板の製造方法であって、
    前記Si基板上に、第1のSiGe層をエピタキシャル成長する第1の層形成工程と、
    前記第1のSiGe層上に直接又はエピタキシャル成長したSi層を介して第2のSiGe層をエピタキシャル成長する第2の層形成工程とを有し、
    前記第1の層形成工程は、膜厚の増加により転位を発生して格子緩和が生ずる膜厚である臨界膜厚の2倍より薄く前記第1のSiGe層の膜厚を設定し、
    前記第2の層形成工程は、表面に向けてGe組成比を漸次増加させたSiGeの傾斜組成層をエピタキシャル成長する工程と、
    前記傾斜組成層の最終的なGe組成比で傾斜組成層上にSiGeの一定組成層をエピタキシャル成長する工程とを連続したGe組成比で複数回繰り返して、Ge組成比が成膜方向に傾斜をもって階段状に変化する前記第2のSiGe層を成膜し、
    該第2のSiGe層下面のGe組成比を、前記第1のSiGe層におけるGe組成比の層中の最大値より低くすることを特徴とする半導体基板の製造方法。
  7. 請求項6に記載の半導体基板の製造方法において、
    前記第1の層形成工程は、前記第1のSiGe層のGe組成比xが一定であり、第1のSiGe層を、次の関係式;
    c(nm)=(1.9×10-3/ε(x)2)・ln(tc/0.4)
    ε(x)=(a0+0.200326x+0.026174x2)/a0
    0=0.543nm(a0は、Siの格子定数)
    を満たす臨界膜厚tcの2倍未満の厚さにすることを特徴とする半導体基板の製造方法。
  8. 請求項6又は7に記載の半導体基板の製造方法において、
    前記第1のSiGe層は、Ge組成比xが0.05以上かつ0.3以下であることを特徴とする半導体基板の製造方法。
  9. Si基板上にSiGe層を介して歪みSi層が形成された半導体基板の製造方法であって、
    請求項6から8のいずれかに記載の半導体基板の製造方法により作製された半導体基板の前記第2のSiGe層上に直接又は他のSiGe層を介して前記歪みSi層をエピタキシャル成長することを特徴とする半導体基板の製造方法。
  10. SiGe層上にエピタキシャル成長された歪みSi層にチャネル領域が形成される電界効果型トランジスタの製造方法であって、
    請求項9に記載の半導体基板の製造方法により作製された半導体基板の前記歪みSi層に前記チャネル領域を形成することを特徴とする電界効果型トランジスタの製造方法。
  11. Si基板上にSiGe層が形成された半導体基板であって、
    請求項6から8のいずれかに記載の半導体基板の製造方法により作製されたことを特徴とする半導体基板。
  12. Si基板上にSiGe層を介して歪みSi層が形成された半導体基板であって、
    請求項9に記載の半導体基板の製造方法により作製されたことを特徴とする半導体基板。
  13. SiGe層上にエピタキシャル成長された歪みSi層にチャネル領域が形成される電界効果型トランジスタであって、
    請求項10に記載の電界効果型トランジスタの製造方法により作製されたことを特徴とする電界効果型トランジスタ。
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