JP4221832B2 - 車両のステアリング構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、乗員のステアリングホイールの操作を検出する操作検出部と、操舵輪を操舵する操舵部と、操作検出部と操舵部との間を接続するフレキシブルな伝達手段とを備えた所謂ケーブル式ステアリングのような車両のステアリング構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、上述例の車両のステアリング構造としては、例えば特開平11−5543号公報、特開平11−11325号公報および特開平11−11326号公報の構造がある。
すなわち、特開平11−5543号公報のものは、ステアリングホイール側に設けられるプーリ(原動プーリ)と、操舵輪を操舵する操舵部側に設けられるプーリ(従動プーリ)との間にケーブルを張架し、原動プーリの外周面を凹曲状に形成する一方、従動プーリの外周面を凸曲状に対して、ケーブルの張力を一定に保ったままステアリングホイールの回転力および回転角に対する操舵輪(前輪)の傾動力および傾動角を変化させるように構成したものである。
【0003】
また、特開平11−11325号公報に記載のものは、ステアリングホイール側に設けられる駆動プーリと、操舵輪を操舵する操舵部側に設けられる従動プーリとの間にケーブルを張架すると共に、プーリを回転可能に収納するプーリハウジングを設けて、このプーリハウジング内にはプーリから離れる方向にバネ付勢されたスライダを取付け、経年変化によってケーブルが伸びた時、上述のスライダによりプーリに巻回されたケーブルに張力を付加して、ケーブルの伸びを補償すべく構成したものである。
【0004】
さらに、特開平11−11326号公報に記載のものは、乗員により操作されるステアリングホイールと操舵輪を操舵するステアリングギヤボックスとを、アウタ部材の内部にインナ部材を収納したケーブルで連結し、ステアリングホイールの回転をインナ部材を介してステアリングギヤボックスに伝達すべく構成すると共に、アウタ部材を金属製パイプ材から構成することで、アウタ部材の撓みを防止して、ステアリングホイール操作時の剛性感を高めたものである。
【0005】
このような所謂ケーブル式ステアリングを自動車等の車両に装備する場合、右ハンドル仕様車と左ハンドル仕様車とでケーブルの配設を変えて、エンジンルームの共通化を図ることが要請される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、操作検出部と操舵部との間を接続するフレキシブルな伝達手段を、一対のケーブルで構成し、該ケーブルを車幅方向に離間させて配設すると共に、該一対のケーブルの両方をダッシュパネル近傍で車室内側ケーブルとエンジンルーム側ケーブルに分割し、該車室内側ケーブルの長さを選択し、該エンジンルーム側ケーブルを共通化して、右ハンドル用と左ハンドル用とのレイアウトに変更可能とすることで、ケーブルの長さおよびケーブルの配設を変える簡単な構成でありながら右ハンドル仕様車と左ハンドル仕様車とでエンジンルームの共通化を図ることができ、また一対のケーブルを離間配設することにより、ケーブル配設上の曲率半径を可及的大きく設定でき、ケーブルをゆるやかなカーブ状に配設して、その負荷を低減することができ、しかも、一対のケーブルのうち車室内側ケーブル長さを選択することで、エンジンルーム側ケーブルを共通化して右ハンドル仕様の車両と左ハンドル仕様の車両とにレイアウトを変更することができる車両のステアリング構造の提供を目的とする。
【0007】
この発明の一実施態様においては、上述の伝達手段をケーブルにより構成し、エンジンルームは左右ハンドル用で同一に構成し、上述のケーブルは右ハンドル用と左ハンドル用とでケーブルの長さを選択すべく構成することにより、右ハンドル仕様車と左ハンドル仕様車とでケーブルの長さを選択して、エンジンルームを左右ハンドル用で同一に形成することができる車両のステアリング構造の提供を目的とする。
【0008】
この発明の一実施態様においては、上述の一対のケーブルをエンジンの両側を通過させて配設することで、ケーブル配設上の曲率半径が大きくなり、ケーブルをゆるやかなカーブに沿って配設することができ、ケーブルの負荷をより一層低減させることができる車両のステアリング構造の提供を目的とする。
【0009】
この発明の一実施態様においては、上述の一対のケーブルをブレーキの倍力装置の両側を通過させて配設することで、倍力装置の配置とケーブルの配設との両立を図ることができる車両のステアリング構造の提供を目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明は、車室内に設けられて乗員のステアリングホイールの操作を検出する操作検出部と、エンジンルーム内に設けられて操舵輪を操舵する操舵部と、上記操作検出部と操舵部との間を接続するフレキシブルな伝達手段とを備えた車両のステアリング構造であって、上記伝達手段は一対のケーブルから構成され、上記ケーブルを車幅方向に離間させて配設すると共に、該一対のケーブルの両方をダッシュパネル近傍で車室内側ケーブルとエンジンルーム側ケーブルに分割し、該車室内側ケーブルの長さを選択し、エンジンルーム側ケーブルを共通化して、右ハンドル用と左ハンドル用とのレイアウトに変更可能した車両のステアリング構造であることを特徴とする(図9参照)
【0011】
この発明の一実施態様、上記伝達手段をケーブルにより構成し、エンジンルームは左右ハンドル用で同一に構成され、上記ケーブルは右ハンドル用と左ハンドル用とで長さを選択すべく構成した車両のステアリング構造であることを特徴とする(図9参照)
【0012】
この発明の一実施態様、上記ケーブルをエンジンの両側を通過させて配設した車両のステアリング構造であることを特徴とする(図9参照)
【0013】
この発明の一実施態様、上記ケーブルを制動用倍力装置の両側を通過させて配設した車両のステアリング構造であることを特徴とする(図9参照)
【0014】
【発明の作用及び効果】
この発明によれば、乗員のステアリングホイールの操作は操作検出部、伝達手段および操舵部を介して操舵輪に伝達され、この操舵輪が操舵されるが、フレキシブルな伝達手段を一対のケーブルで構成し、該ケーブルを車幅方向に離間させて配設すると共に、一対のケーブルの両方をダッシュパネル近傍で車室内側ケーブルとエンジンルーム側ケーブルに分割して、車室内側ケーブルの長さを選択可能に構成したので、上述のケーブルの長さとケーブルの配設を変える簡単な構成でありながら、右ハンドル仕様車と左ハンドル仕様車とでエンジンルームの共通化を図ることができる効果がある。
【0015】
また、一対のケーブルを離間配設したので、ケーブル配設上の曲率半径を可及的大きく設定でき、ケーブルをゆるやかなカーブ状に配設して、該ケーブルの負荷を低減することができる効果がある。
【0016】
さらに、エンジンルーム側ケーブルを共通化して、車室内側ケーブルの長さを選択するので、エンジンルーム側ケーブルを共通化することができ、右ハンドル仕様の車両と左ハンドル仕様の車両とにレイアウトを変更することができる効果がある。
【0017】
この発明の一実施態様によれば、上述の伝達手段をケーブルにより構成し、エンジンルームを左右ハンドル用で同一構成し、上述のケーブルは右ハンドル用と左ハンドル用とでその長さを選択すべく構成したので、右ハンドル仕様車と左ハンドル仕様車とでケーブルの長さを選択すると、エンジンルームを左右ハンドル用で同一に形成することができ、該エンジンルームのレイアウト性の向上を図ることができる効果がある。
【0018】
この発明の一実施態様によれば、上述の一対のケーブルを、エンジンの両側を通過させて配設したので、ケーブル配設上の曲率半径を大きくすることができ、これによりケーブルをゆるやかなカーブに沿って配設することができ、該ケーブルの負荷をより一層低減させることができる効果がある。
【0019】
この発明の一実施態様によれば、上述の一対のケーブルを制動用倍力装置の両側を通過させて配設したので、この倍力装置の配置と、ケーブルの配設との両立を図ることができる効果がある。
【0020】
【実施例】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両のステアリング構造を示すが、まず図1、図2を参照して車両の前部車体構造を概略的に説明する。
【0021】
エンジンルームと車室とを区画するダッシュロアパネル1を設け、このダッシュロアパネル1の下端部には略水平に延びるフロアパネル2を接合する一方、ダッシュロアパネル1の上端部にはダッシュアッパパネル3、カウルアッパパネル4、カウルロアパネル5からなり車幅方向に延びるカウルボックス6を取付けている。
【0022】
また上部がボンネット7(フード)で開閉可能に覆われたエンジンルーム8内において、タイヤハウス9の上部にはバッテリ10を搭載すると共に、フロントサイドフレーム11にはエンジンマウント(図示せず)を介してエンジン12を縦置き状に搭載している。
【0023】
一方、車室側においてはメータフード13を有するインストルメントパネル14を設け、このインストルメントパネル14内にはメータ15、ベントダクト16、デフロスタダクト17を配設している。
【0024】
なお、図1、図2において、18はフロントウインドガラス、19はヘッドランプ、20はフロントディファレンシャル装置、21は操舵輪としての前輪、22はブレーキペダル23の踏力を油圧に変換する制動用倍力装置いわゆるマスタバック(マスシリンダ)である。
【0025】
次に図2、図3、図4を参照して車両のステアリング構造について述べる。
内部にラックおよびピニオンを収納し車幅方向に延びるステアリングギヤボックス24を設け、ラック両端にはタイロッド25,25を連結して、前輪21を操舵する操舵部26を構成し、この操舵部26をエンジンルーム8内の下部に位置させている。
【0026】
また上述のステアリングギアボックス24に一体的に形成されたピニオンホルダ27の上部には従動側のケーブル操作ユニットとしてのプーリボックス28を取付けている。
このプーリボックス28はその内部に従動プーリを有し、従動プーリの回転力をピニオンホルダ27内のピニオンに伝達すべく構成している。
【0027】
一方、図4に示すように車室内に設けられて乗員のステアリングホイール29の操作を検出する操作検出部30を設け、この操作検出部30と上述のステアリングホイール29との両者でステアリング操作ユニット31を形成している。
【0028】
このステアリング操作ユニット31は次のように構成されている。
すなわち、図4に示す如く、固定シャフト32の外周部にベアリング33を介して可動シャフト34を設け、この可動シャフト34の下端部には原動ベベルギヤ35を一体形成している。
【0029】
また上述の可動シャフト34の上端部外周にはコラム36を一体的に連結する一方、固定シャフト32の上端にはベース部材37を介してホーンパッド38を取付け、上述のベース部材37の上面にはエアバッグインフレータ39を配設している。
【0030】
而して、ステアリングホイール29の操作時に、各要素32,37〜39の非回動を保った状態で、コラム36、可動シャフト34、原動べベルギヤ35を回動操作すべく構成している。
【0031】
上述の固定シャフト32に取付けられたケーブル操作ユニットとしてのプーリボックス40を設け、このプーリボックス40の内部にはプーリ軸41を介して原動プーリ42を回転可能に取付けて、この原動プーリ42には従動べベルギヤ43を一体形成している。
【0032】
また上述のプーリボックス40の一部を切欠いて、切欠部44を形成し、この切欠部44から従動べベルギヤ43の一部を外方に導出し、この導出部を原動ベベルギヤ35に噛合させている。
【0033】
さらに上述のプーリボックス40内において原動プーリ42にはフレキシブルな伝達手段としてのケーブル45を巻回し、このケーブル45をケーブルガイド46を介してプーリボックス40外部に導出している。
【0034】
このケーブル45はプーリボックス40内の原動プーリ42と、操舵部26側におけるケーブル操作ユニット28内の従動プーリとの間を接続する伝達手段であり、このケーブル45はアウタチューブとインナケーブルとを有するが、図示の便宜上、インナケーブルをケーブル45と示している。なお、図中、47はコンビネーションスイッチ、48はステアリングロック部である。
次に図2、図3を参照して、ステアリング操作ユニット31の支持構造について説明する。
【0035】
図3に示すようにダッシュアッパパネル3の後面部と、車幅方向に延びる強度部材としてのステアリング支持メンバ50(車両側支持部)との間には、断面が門形のステアリングブラケット51を張架している。
【0036】
上述のステアリング支持メンバ50には該メンバ50を中心として回動可能なフィキシングブラケット52を設けている。このフィキシングブラケット52はステアリングブラケット51の左右両側面外部に位置する2部材を連結板53(図2参照)で一体連結したものであって、該フィキシングブラケット52の前端部には、ステアリングブラケット51に形成された円弧状のガイド溝54(ガイド手段)に挿入するピン55(ガイド手段)を設けている。
【0037】
また上述のフィキシングブラケット52のスラント状の後端部には屈曲形成されたレール取付け部52aを設け、このレール取付け部52aにスライドレール56を取付けている。
【0038】
すなわち、上述のスライドレール56はレール取付け部52aに固定された複数の固定レール(いわゆるアウタレール)57,58と、これらの固定レール57,58に沿って摺動可能な可動レール(いわゆるインナレール)59と、これら両レール間に介設されたボールおよびローラとを有し、左右対称に構成された可動レール59,59間に前述のプーリボックス40を固定している。
【0039】
なお図中、60は支軸61を中心として起伏可能に構成された足載せ台(いわゆるオットマン)で、常時図示の格納状態にバネ付勢されており、休息等に際して乗員が足を載せる場合には、付勢力に抗して図示の時計方向へ回動するものである。
【0040】
ところで車室側に設けられたプーリボックス40と、左右ハンドル用α,β同一に構成可能なエンジンルーム8側に設けられたプーリボックス28との間を接続するフレキシブルな伝達手段(ケーブル参照)は、図2、図5に示すように車幅方向に離間配設された一対のケーブル45,45から構成されている。
【0041】
しかも、上述のケーブル45はその一部を分割して、ケーブル45の長さを選択することで、図5に実線で示す右ハンドル用αと、同図に仮想線で示す左ハンドル用βとのレイアウトに変更可能となるように構成されている。
【0042】
すなわち一側(右側)のケーブル45をダッシュロアパネル1の近傍車室側の分割部62にて、ケーブル前部45a(フロントケーブル)とケーブル後部45b(リヤケーブル)とに前後2分割すると共に、他側(左側)のケーブル45を同様にダッシュロアパネル1の近傍車室側の分割部63にて、ケーブル前部45c(フロントケーブル)とケーブル後部45d(リヤケーブル)とに前後2分割している。
【0043】
而して、図5に実線で示す右ハンドル用αのレイアウトを達成するには、一側のケーブル45のケーブル前部45aをダッシュロアパネル1の貫通孔64を介して車室側へ導出し、分割部62にてケーブル前部45aとケーブル後部45bとを接続すると共に、他側のケーブル45のケーブル前部45cをダッシュロアパネル1の貫通孔65を介して車室側へ導出し、分割部63にてケーブル前部45cとケーブル後部45dとを接続すると、ブレーキの倍力装置22の両側を通過する一対のケーブル45,45にて両プーリボックス28,40間を接続して、右ハンドル用αのレイアウトを達成することができる。
【0044】
この右ハンドル用αのレイアウトから図5に仮想線で示す左ハンドル用βのレイアウトに変更するには、分割部62,63からケーブル後部45b,45dを分割して、各要素29,30,31,40,47,45b,45dを左側に移行し、一側においてはケーブル前部45aの後端に位置する分割部62とケーブル後部45bとの間をケーブル長さ調整用の比較的長尺のケーブル中間部45e(インタミーデッドケーブル)で接続し、他側においてはケーブル前部45cをエンジン12の下方部に位置変更した後に、このケーブル前部45cの後端に位置する分割部63とケーブル後部45dとの間をケーブル長さ調整用の比較的長尺のケーブル中間部45fで接続すると、一対のケーブル45,45にて両プーリボックス28,40間を接続して、左ハンドル用βのレイアウトを達成することができる。
【0045】
なお、上述のケーブル中間部45fはダッシュロアパネル1の貫通孔66を介して車室側へ導出される。また67,68は各要素45e,45b間および45f,45d間の分割部である。
【0046】
ここで、上述の分割部62は図6に示す如く構成されている。すなわち、ダッシュロアパネル1の貫通孔64に保護環としてのグロメット69を装着し、このグロメット69に固定されてエンジンルーム8側から車室側へ導出されたアウタチューブ前部70aと、車室側に位置するアウタチューブ後部70bとを接続部70cにて接続及び分割可能に構成すると共に、上述のケーブル前部45aおよびーブル後部45bはアウタチューブ前後部70a,70b内に移動可能に挿入されている。
【0047】
また上述の分割部62に対応してケーブル前部45aの後端にはナット部材71を取付け、ケーブル後部45bの前端にはボルト部材72を取付けて、これら両部材71,72からなるカップリング73にてケーブル前部45aとケーブル後部45bとを分割および接続可能に構成したものである。
【0048】
上述の図6に示す分割部62の構成に代えて、図7に示す分割部62の構成を採用してもよい。つまり、ケーブル前部45aの後端にスペーサ74を固定し、このスペーサ74に対して回動操作自在に構成されたナット部材71を設け、このナット部材71と、ケーブル後部45bの前端に接合固定されたボルト部材72との両者でカップリング73を構成したものである。なお、図7において図6と同一の部分には同一符号を付している。
【0049】
要するに上述の分割部62はカップリング73によりケーブル前部45aとケーブル後部45bとが分割および接続可能に構成されている。その他の分割部63,67,68についても図7に示す分割部62とほぼ同様に構成されるものである。
【0050】
このように図1〜図7に示す実施例によれば、乗員のステアリングホイール29の操作は操作検出部30、伝達手段(ケーブル45参照)および操舵部26を介して操舵輪(前輪21参照)に伝達され、この操舵輪(前輪21参照)が操舵されるが、フレキシブルな伝達手段を一対のケーブル45,45で構成し、該ケーブル45を車幅方向に離間させて配設すると共に、該ケーブル45の一部を分割して、ケーブル45の長さを選択可能に構成したので、上述のケーブル45の長さとケーブル45の配設を変える簡単な構成でありながら、右ハンドル仕様車と左ハンドル仕様車とでエンジンルーム8の共通化を図ることができる効果がある。
【0051】
また、一対のケーブル45,45を離間配設したので、ケーブル45配設上の曲率半径を可及的大きく設定でき、ケーブル45をゆるやかなカーブ状に配設して、該ケーブル45の負荷を低減することができる効果がある。
【0052】
さらに、車室内側に位置するケーブル45の長さを選択(具体的にはケーブル後部45bを用いる場合と、ケーブル後部45bおよびケーブル中間部45eの双方を用いる場合とを選択)すると、エンジンルーム8側を共通化して、右ハンドル仕様の車両と左ハンドル仕様の車両とにレイアウトを変更することができる効果がある。
【0053】
加えて、上述の伝達手段をケーブル45により構成し、エンジンルーム8を左右ハンドル用β,αで同一構成し、上述のケーブル45は右ハンドル用αと左ハンドル用βとでその長さを選択すべく構成したので、右ハンドル仕様車と左ハンドル仕様車とでケーブル45の長さを選択すると、エンジンルーム8を左右ハンドル用β,αで同一に形成することができ、該エンジンルーム8のレイアウト性の向上を図ることができる効果がある。
【0054】
また、上述の一対のケーブル45,45を制動用倍力装置22の両側を通過させて配設(図5の実線参照)したので、この倍力装置22の配置と、ケーブル45の配設との両立を図ることができる効果がある。
【0055】
なお、上記構成に代えて、右ハンドル用αのレイアウトを達成するにはケーブル前部45a,45cを有するプーリボックス28を用い、左ハンドル用βのレイアウトを達成するにはケーブル前部45aと各要素45c,45fの長さに相当するケーブル前部とを有するプーリボックス28を用い、プーリボックスの交換により左右ハンドル用β,αのレイアウトを達成すべく構成してもよい。
【0056】
図8は車両のステアリング構造の他の実施例を示し、この図8の実施例においても、上述のケーブル45はその一部を分割して、ケーブル45の長さを選択することで、図8に実線で示す右ハンドル用αと、同図に仮想線で示す左ハンドル用βとのレイアウトに変更可能となるように構成されている。
【0057】
すなわち一側のケーブル45をダッシュロアパネル1の近傍車室側の分割部62にて、ケーブル前部45aとケーブル後部45bとに前後2分割すると共に、他側のケーブル45を同様にダッシュロアパネル1の近傍車室側の分割部63にて、ケーブル前部45cとケーブル後部45dとに前後2分割している。
【0058】
而して、図8に実線で示す右ハンドル用αのレイアウトを達成するには、一側のケーブル45のケーブル前部45aをダッシュロアパネル1の貫通孔64を介して車室側へ導出し、分割部62にてケーブル前部45aとケーブル後部45bとを接続すると共に、他側のケーブル45のケーブル前部45cをダッシュロアパネル1の貫通孔65を介して車室側へ導出し、分割部63にてケーブル前部45cとケーブル後部45dとを接続すると、ブレーキの倍力装置22の両側を通過する一対のケーブル45,45にて両プーリボックス28,40間を接続して、右ハンドル用αのレイアウトを達成することができる。
【0059】
この右ハンドル用αのレイアウトから図8に仮想線で示す左ハンドル用βのレイアウトに変更するには、分割部62,63からケーブル後部45b,45dを分割して、各要素29,30,31,40,47,45b,45dを左側に移行する。
【0060】
またケーブル前部45a,45cを有するプーリボックス28を、比較的長尺のケーブル前部45g,45hを備えた他のプーリボックス28と交換し、一側においてはエンジン12を下部を通した後にダッシュロアパネル1の貫通孔75から車室側へ導出させたケーブル前部45gの後端と、ケーブル後部45bの前端とを分割部62(カップリング73参照)にて接続し、他側においてはエンジン12の下部を通した後にダッシュロアパネル1の貫通孔66から車室側へ導出させたケーブル前部45hの後端と、ケーブル後部45dの前端とを分割部63(カップリング73参照)にて接続すると、ブレーキの倍力装置22の両側を通過する一対のケーブル45,45にて両プーリボックス28,40間を接続して、左ハンドル用βのレイアウトを達成することができる。
【0061】
この図8の構成によれば、ケーブル中間部45e,45fを用いることなく左右ハンドル用のレイアウト変更を達成することができる。なお、この実施例においてもその他の点については先の図5の実施例とほぼ同様の作用、効果を奏するので、図8において図5と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0062】
図9は車両のステアリング構造のさらに他の実施例を示し、この図9の実施例においても、上述のケーブル45はその一部を分割して、ケーブル45の長さを選択することで、図9に実線で示す右ハンドル用αと、同図に仮想線で示す左ハンドル用βとのレイアウトに変更可能となるように構成されている。
【0063】
すなわち、一側のケーブル45はダッシュロアパネル1の近傍車室側の分割部62にて、ケーブル前部45aとケーブル後部45bとの前後に2分割されると共に、他側のケーブル45は、エンジン12の下部を通って右側から左側へ指向した後に、ダッシュロアパネル1の貫通孔66から車室内に導出されたケーブル前部45hと、ダッシュロアパネル1の車室内側面に沿って左方から右方へ延びるケーブル中間部45と、前方から後方に延びるケーブル後部45dとに分割部63,76を介して3分割されている。
【0064】
而して、図9に実線で示す右ハンドル用αのレイアウトを達成するためには、一側のケーブル45のケーブル前部45aをダッシュロアパネル1の貫通孔64を介して車室側へ導出し、分割部62にてケーブル前部45aとケーブル後部45bとを接続すると共に、他側においては各分割部63,76にてケーブル前部45h、ケーブル中間部45、ケーブル後部45dを接続すると、エンジン12の両側を通過する一対のケーブル45,45にて両プーリボックス28,40間を接続して、右ハンドル用αのレイアウトを達成することができる。
【0065】
この右ハンドル用αのレイアウトから図9に仮想線で示す左ハンドル用βのレイアウトに変更するには、各分割部62,63,76からケーブル後部45b,45dおよびケーブル中間部45を分割して、各要素29,30,31,40,47,45b,45dを左側に移行する。
【0066】
そして、一側においてはケーブル前部45aの後端に位置する分割部62とケケーブル後部45dの前端との間をケーブル長さ調整用の比較的長尺のケーブル中間部45eで接続し、他側においてはケーブル前部45hの後端に位置する分割部63とケーブル後部45dの前端との間を該分割部63(カップリング73参照)で接続すると、エンジン12の両側を通過する一対のケーブル45,45にて両プーリボックス28,40間を接続して、左ハンドル用βのレイアウトを達成することができる。
【0067】
この図9の構成によれば、上述の一対のケーブル45,45を、エンジン12の両側を通過させて配設したので、ケーブル45の配設上の曲率半径を大きくすることができ、これによりケーブル45をゆるやかなカーブに沿って配設することができ、該ケーブル45の負荷をより一層低減させることができる効果がある。
【0068】
なお、図9に示すこの実施例においても、その他の点については先の実施例とほぼ同様の作用、効果を奏するので、図9において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0069】
図10は車両のステアリング構造のさらに他の実施例を示し、この実施例では操舵部26とケーブル45との接続部としてのプーリボックス28を、該操舵部26の車幅方向の略中央部に設け、右ハンドル用αと左ハンドル用βとでエンジンルーム8のみならず操舵部26の共用化を図るように構成している。
【0070】
しかも、この実施例においても図10に実線で示す右ハンドル用αと同図に仮想線で示す左ハンドル用βとのレイアウトに変更可能となるように構成されている。
【0071】
すなわち、一側のケーブル45jはプーリボックス27からエンジン12の下部を通し、ダッシュロアパネル1の前部において上方へ立ち上げ、該ダッシュロアパネル1の貫通孔77から車室内へ導出し、この導出部を後方に導いてプーリボックス40に接続している。
【0072】
また他側のケーブル45kはプーリボックス27からエンジン12の下部を通し、ダッシュロアパネル1の前部において上方へ立ち上げ、該ダッシュロアパネル1の貫通孔78から車室内へ導した後に、ダッシュロアパネル1の車室内側面に沿って左方から右方へ沿設し、この沿設端部を後方に導びいてプーリボックス40に接続し、分割部を有さない一対のケーブル45,45にて両プーリボックス28,40間を接続して、右ハンドル用αのレイアウトを達成している。
【0073】
この右ハンドル用αのレイアウトから図10に仮想線で示す左ハンドル用βのレイアウトに変更するには、各プーリボックス28,40間のケーブル長さ(詳しくは貫通孔77,78からプーリボックス40までの長さ)が異なる一側のケーブル45mと他側のケーブル45nとを有する別のプーリボックス28,40に交換し、各要素29,30,31,40,47を左側に移行すると、一対のケーブル45,45に交換し、各要素29,30,31,40,47を左側に移行すると、一対のケーブル45,45にて両プーリボックス28,40間を接続して、左ハンドル用βのレイアウトを達成することができる。
【0074】
このように、図10に示す実施例によれば、乗員のステアリングホイール29の操作は操作検出部30、伝達手段(ケーブル45参照)および操舵部26を介して操舵輪(前輪21参照)に伝達され、この操舵輪(前輪21参照)が操舵されるが、上述の操舵部26と上述の伝達手段(ケーブル45参照)との接続部(プーリボックス28参照)を車両の車幅方向の略中央部に設けたので、右ハンドル仕様車と左ハンドル仕様車とでエンジンルーム8および操舵部26(ラック&ピニオン機構を有するステアリングギヤ参照)の共用化が図れ、かつエンジンルーム8内のレイアウトが左右略対称に形成できて、そのレイアウトの自由度が向上する効果がある。
【0075】
なお、図10において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略している。
【0076】
ここで、上述の図10の構成に代えて、操舵部26側のプーリボックス28と、ステアリングホイール29側のプーリボックス40との間を、相対的に長尺な一側のケーブル45mと他側のケーブル45kとで相互に接続し、ケーブル45m,45kを迂回的に取回し配置すると、左右ハンドル用β,αの仕様変更に際して、両プーリボックス28,40を交換することなく、各要素29,30,31,40,47の移行処理のみで左右ハンドル用β,αのレイアウト変更を達成することができる。また、図10の構成に前述同様の分割部を付加して、分割部における分割および接続により左右ハンドル用β,αのレイアウト変更を達成するように構成してもよいことは勿論である。さらに、エンジン12の後部とダッシュロアパネル1との間にケーブル45の取回り用のスペースが存在する場合には、図示の2つの貫通孔77,78をダッシュロアパネル1の車幅方向中央部の1つの貫通孔(図示せず)で代替することもできる。
【0077】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の操舵輪は、実施例の前輪21に対応し、
以下同様に、
フレキシブルな伝達手段は、ケーブル45に対応し、
操舵部と伝達手段との接続部は、プーリボックス28(ケーブル操作ユニット)に対応し、
エンジンは、縦置きエンジン12に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ステアリング構造を備えた車両の前部車体構造を示す側面図。
【図2】 図1の要部概略斜視図。
【図3】 車両のステアリング構造を示す側面図。
【図4】 ステアリング操作ユニットの断面図。
【図5】 車両のステアリング構造を示す平面図。
【図6】 分割部の説明図。
【図7】 分割部の他の実施例を示す説明図。
【図8】 車両のステアリング構造の他の実施例を示す平面図。
【図9】 本発明の車両のステアリング構造の実施例を示す平面図。
【図10】 車両のステアリング構造のさらに他の実施例を示す平面図。
【符号の説明】
8…エンジンルーム
12…エンジン
21…前輪(操舵輪)
22…倍力装置
26…操舵部
28…プーリボックス(接続部)
29…ステアリングホイール
30…操作検出部
45…ケーブル(伝達手段)
45a,45h…ケーブル前部(エンジンルーム側ケーブル)
45b,45d…ケーブル後部(車室内側ケーブル)
45e,45i…ケーブル中間部(車室内側ケーブル)

Claims (4)

  1. 車室内に設けられて乗員のステアリングホイールの操作を検出する操作検出部と、
    エンジンルーム内に設けられて操舵輪を操舵する操舵部と、
    上記操作検出部と操舵部との間を接続するフレキシブルな伝達手段とを備えた車両のステアリング構造であって、
    上記伝達手段は一対のケーブルから構成され、
    上記ケーブルを車幅方向に離間させて配設すると共に、
    該一対のケーブルの両方をダッシュパネル近傍で車室内側ケーブルとエンジンルーム側ケーブルに分割し、
    該車室内側ケーブルの長さを選択し、該エンジンルーム側ケーブルを共通化して、右ハンドル用と左ハンドル用とのレイアウトに変更可能とした
    車両のステアリング構造。
  2. 上記伝達手段をケーブルにより構成し、
    エンジンルームは左右ハンドル用で同一に構成され、
    上記ケーブルは右ハンドル用と左ハンドル用とで長さを選択すべく構成した
    請求項1記載の車両のステアリング構造。
  3. 上記ケーブルをエンジンの両側を通過させて配設した
    請求項1または2記載の車両のステアリング構造。
  4. 上記ケーブルを制動用倍力装置の両側を通過させて配設した
    請求項1または2記載の車両のステアリング構造。
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