JP4220877B2 - 基板冷却方法、基板冷却装置、及び製膜装置 - Google Patents
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Description
真空処理室では、製膜プロセスの関係上、内部が減圧されており、また、処理対象の基板は真空処理装置内で高温に加熱されている。
例えば、製膜装置が太陽電池パネルの製造に用いられるプラズマCVD装置である場合には、真空処理室では、内部を減圧させた状態にてSiH4(シランガス)などからなる原料ガスを含む製膜ガスを送り込み、基板加熱ヒータによって基板を加熱しながら、非接地電極として設けられた図示しないラダー電極に高周波電力を供給することによりプラズマを発生させて原料ガスを分解して、加熱された基板K表面にシリコン系薄膜が製膜される。
アンロード室は、内部が減圧された状態で真空処理室内部と連通されて、真空処理室から搬送台車によって基板が送り込まれる。そして、アンロード室内と真空処理室内とを遮断した状態で、アンロード室内にベントガスが供給されることで、アンロード室の内圧が大気圧まで高められて、基板が大気圧環境に戻される。
ここで、基板は、鉛直面に対して約9°程度のわずかな角度傾斜した状態にして搬送台車に保持されている。
このベント管は、送り込まれたベントガスを噴出孔から基板の高さ方向略中央部分に噴出するものである。これにより、ベント管から基板に吹き付けられたベントガスは、基板の高さ方向略中央部分から、基板の表面に沿って上下方向へ分散して流れるようになっている。
ここで、アンロード室内に供給されるベントガスは、加熱されていた基板を冷却するための冷媒の役割も兼ねている。
ここで、基板のような板状の部材は、中央部よりも周縁部で温度低下が生じやすい。このため、アンロード室で冷却される基板には、水平方向に温度勾配が生じて、熱変形や熱応力が生じやすい。このような基板の熱変形や熱応力は、基板に割れや座屈を生じさせる要因となる。また、一般的に、基板の周縁部は、搬送台車等によって保持されていて、熱応力が生じても変形することができないので、変形によって熱応力を逃がすことができず、割れや座屈が生じやすい。また、座屈強度は基板サイズが大きくなる程低下するため、大型基板では熱座屈が問題となる。
すなわち、この冷却装置では、基板を急速に冷却することができないので、製膜装置のスループットをあまり向上させることができない。
すなわち、本発明にかかる基板冷却方法では、周縁部よりも温度低下が生じにくい中央部を、周縁部よりも積極的に冷却するので、中央部と周縁部との温度差が生じにくく、強度の弱い基板端部に発生する引っ張り応力が低下し、基板に割れや座屈が生じにくい。特に、基板中央部が周囲部より温度が低くなると、基板端部に発生する応力は圧縮応力となり、基板割れは発生しなくなる。
ここで、基板の中央部のみを積極的に冷却することができるよう、冷媒は、基板の中央部にのみ直接吹き付けることが好ましい。
なお、基板には、片面側からのみ冷媒を吹き付けてもよく、また、より高い冷却効果を求める場合には、両面側から吹き付けてもよい。
基板を水平にした状態では、基板の周囲には、熱対流によって、基板の下面側から上面側に向かう流れが形成される。この流れは、下面側では、基板の中央部から周縁部に向かって下面に沿って放射状に流れ、上面側では、周縁部から中央部に向かって集中するように上面に沿って流れて、中央部に達したのちは、基板の上方に向かって流れる。
このため、基板の周縁部は全周にわたって均一に冷媒や周辺雰囲気の流れに触れることとなり、周縁部で温度勾配が生じにくくなる。
すなわち、基板は、連続しない複数の小領域が積極的に冷却される。
このように、基板において積極的に冷却されて熱応力の生じやすい領域が、複数の小領域に分散しているので、基板に生じる熱応力が全体として小さくなり、基板に割れや座屈が生じにくくなる。
すなわち、この基板冷却装置は、基板の中央部を積極的に冷却するので、基板に割れや座屈が生じにくい。
ここで、この基板冷却装置は、基板の中央部のみを積極的に冷却することができるよう、冷媒を基板の中央部にのみ直接吹き付ける構成とすることが好ましい。
また、冷媒吐出装置は、基板の片面側からのみ冷媒を吹き付ける構成としてもよく、より高い冷却効果を求める場合には、両面側から吹き付ける構成としてもよい。
これにより、基板の周囲で熱対流によって生じる流れが、基板に吹き付けられた冷媒の流れと平行となるので、基板に吹き付けられた冷媒の流れが乱されにくい。このため、基板の周縁部は全周にわたって均一に冷媒や周辺雰囲気の流れに触れることとなり、周縁部で温度勾配が生じにくくなる。
すなわち、基板は、連続しない複数の小領域が積極的に冷却される。
このように、基板において積極的に冷却されて熱応力の生じやすい領域が、複数の小領域に分散しているので、基板に生じる熱応力が全体として小さくなり、基板に割れや座屈が生じにくくなる。
ここで、冷媒吐出装置、または冷媒吐出装置の冷媒吐出部を、基板に対向する位置に進出退避可能にして設けた場合には、基板の冷却時以外には冷媒吐出部を退避させて、基板の周囲の空間を空けることができるので、基板のハンドリングが容易になる。
この基板冷却装置では、冷媒吐出部は、管が基板に平行な面上に位置するようにして設けられているので、基板において各管に対向する領域に、各管に設けられた吐出口から吐出された冷媒が吹き付けられる。すなわち、基板において各管に対向する領域が積極的に冷却される。
この各管の配置や本数、及び各管に設けられる吐出口の配置や設置数は、基板の冷却が適切に行われるように適宜設定されるものである。例えば、基板の中央部において一つの大きい領域を積極的に冷却する場合には、基板において各管から冷媒が直接吹き付けられる領域同士が連続するように、管同士の間の間隔を詰める。一方、基板の中央部において連続しない複数の小領域をそれぞれ冷却したい場合には、基板において各管から冷媒が直接吹き付けられる領域同士が連続しないように、管同士の間の間隔を広くとる。
ここで、管に設けられる吐出口の径は、冷媒が供給される側に近い吐出口と冷媒が供給される側から遠い吐出口までの全ての吐出口で、冷媒の吐出量が均一となるように設定される。すなわち、各吐出口を通過する冷媒に適切な圧力損失を生じさせて管内全域で内圧が均一となるように、各吐出口の径が設定される。
この基板冷却装置では、冷媒吐出部を構成する管は、例えば前記冷媒吐出装置本体または前記基板冷却装置本体等に、一箇所のみを固定的に支持されているので、管に熱変形が生じても、自由な変形が許容される。
これにより、冷媒吐出部に歪みやよじれ等が生じにくく、歪みやよじれ等に由来する問題が生じにくい。
この基板冷却装置では、冷媒吐出装置の冷媒吐出部は、冷媒を吐出する吐出口が基板側とは異なる方向に向けて設けられていて、吐出口から吐出された冷媒が直接基板に吹き付けられないようになっている。そして、吐出口の周囲には、誘導部が設けられていて、冷媒吐出部の吐出口から吐出された冷媒は、一旦誘導部に受けられて流れが緩和されてから基板に向けて誘導される。
すなわち、冷媒の流れが一旦緩和されてから基板に当てられるので、冷媒の流れに微粒子が巻き込まれていた場合にも、この微粒子が基板表面に勢いよく衝突することがなく、基板表面を傷めにくい。
また、このように冷媒が一旦誘導部で受けられてから基板に吹き付けられるので、基板に吹き付けられる冷媒の流れが均一化されることとなり、基板において冷媒の当たる領域を均一に冷却することができる。
凸曲面には、基板に対する傾きが変化する方向に沿って複数の吐出口が設けられているので、この冷媒吐出部からは、凸曲面の軸または中心点を中心とした放射状に冷媒が吐出される。
このため、基板において凸曲面に最も近い領域では、冷媒は略垂直方向から吹き付けられ、この領域から離間した領域では、基板表面に対して傾斜する方向から冷媒が吹き付けられる。
これにより、基板表面近傍では、中央部から周縁部に向かう冷媒の流れが自然に形成されることとなる。
[第一実施形態]
以下、本発明の第一実施形態にかかる製膜装置について、図面を用いて説明する。
製膜装置としては、主として、複数の処理室を直列に並べたインライン型と、中央の基板搬送共通室の周辺に複数の基板処理室を並列に並べたクラスタ型があるが、本実施形態では、本発明の技術をインライン型の製膜装置に適用した場合について説明する。
さらに、製膜装置1には、製膜処理の対象である基板Kを支持するとともに真空処理室2からアンロード室3を通じてクリーンブース4まで設けられるレールR上を行き来可能な搬送台車6と、クリーンブース4で搬送台車6から基板Kを受け渡されて、後段の処理工程に搬送する搬送装置7とが設けられている。
ここで、レールR及び搬送台車6の組は、製膜装置1において1バッチで製膜処理される基板Kのそれぞれに対して一組ずつ設けられている。
支持台6bは、基板Kの四隅を保持するイーゼル状の部材であって、基板Kの両面を露出させた状態で保持するものである。
また、支持台6bは、台車部6aとの接続部を支点として、移動方向に直交する円直面上で旋回可能とされていて、基板Kを起立させた状態、及び略水平に寝かせた状態で保持することが可能である。なお、この支持台6bの旋回動作は、図示せぬ駆動装置によって行われる。
アンロード室3は、内部にベントガスを吐出するベントガス吐出装置16を有している。ここで、ベントガスは、基板Kを冷却するための冷媒の役割も有している。すなわち、アンロード室3は、製膜装置1において基板Kの初回の冷却を行う第一基板冷却装置を兼ねており、ベントガス吐出装置16は、冷媒吐出装置を兼ねている。
ベントガス吐出装置16は、窒素ガス等のベントガスを大気圧以上の圧力で供給する図示せぬベントガス供給源(冷媒供給源)と、ベントガス供給源からベントガス管路Cを通じてベントガスを供給されるベントガス吐出部17(冷媒吐出部)とを有している(図1及び図2参照)。
ベントガス吐出部17は、図1に示すように、アンロード室3の底部から上方に立ち上げられたベントガス管路Cの上端に接続されて、アンロード室3内で搬送台車6に支持される基板Kの中央部Mに対向する位置に保持されている。すなわち、ベントガス吐出部17は、搬送台車6に支持される基板Kの中央部Mに対してのみベントガスを直接吹き付ける構成とされている。
ここで、ベントガス吐出部17は、搬送台車6による基板Kの搬送路の片側に設けられている。すなわち、ベントガス吐出部17は、アンロード室3内に搬入された基板Kの片面側に位置しており、基板Kの片面に対してベントガスを吹き付ける構成とされている。
なお、ベントガス吐出部17は、アンロード室3内に搬入された基板Kに対して、薄膜が形成された側とそうでない側とのうち、いずれの側に配置されていてもよい。
また、ベントガス吐出部17は、ベントガス管路Cに対して着脱可能にして設けられており、冷却対象の基板Kのサイズや冷却条件に応じて、適切な形状のものに交換可能とされている。
そして、ベント管18a,18b,18cは、基板Kに平行な面上で、マニホールド18dとの接続部を下方に向けた状態にして設けられている。
ここで、ベントガス吐出部17から基板K表面までの距離は、5mm程度に設定される。
支持部材19は、その中間部を、ベント管18bの他端に対して溶接等によって固定されている。支持部材19の両端には、開口部19aが形成されていて、この開口部19aには、それぞれベント管18a,18cの他端が挿入されている。図3(図2のA−A線矢視断面図)に示すように、開口部19aの内径αは、ベント管18a,18cの外径βよりもわずかに大きく設定されていて、ベント管18a,18cは、支持部材19によってあそびをもたせた状態で支持されている。
すなわち、ベント管18a,18cは、いずれも一端のみを固定的に支持されている。
ここで、図3ではベント管18cの支持構造についてのみ図示しているが、ベント管18aの支持構造も同様の構造である。また、図3では、後述する誘導部21の図示を省略している。
一方、ベント管18bは、支持部材19を介してベント管18a,18cに支持されているが、このように支持部材19とベント管18a,18cとの間にあそびが設けられているので、ベント管18bも、実質的に、一端のみを固定的に支持されている。
吐出口Hの内径D1は、各吐出口Hから吐出されるベントガスの流量が均一になるように設定されている。
すなわち、内径D1は、各吐出口Hから吐出されるベントガスに適切な圧力損失を生じさせて各ベント管内の全域で内圧が均一となるように(具体的には、ベント管18a,18b,18c内でのベントガスの流量に対して各吐出口Hから吐出されるベントガスの流量が十分小さくなるように)、ベント管18a,18b,18cの内径D2に対して吐出口Hの内径D1が十分小さく設定されている。
誘導部21は、ベント管18a,18b,18cと略平行にして設けられてこれらベント管18a,18b,18cの側面のうち、基板Kに向く側を除いて覆う略半円筒体によって構成されている。この誘導部21は、冷媒管路C、支持部材19、または対応するベント管に支持されている。ここで、誘導部21は、一箇所のみで支持されていることが好ましい。
図1に示すように、クリーンブース4には、搬送台車6の移動経路の側方に、搬送台車6の支持台6bの旋回を許容するスペースSがそれぞれ設けられている。これらスペースSの下方には、保持する基板Kが略水平となるまで旋回した状態の支持台6bに対向する位置に、それぞれ搬送装置7が設けられている。ここで、搬送装置7としては、例えばローラーコンベア等が用いられる。
すなわち、クリーンブース4は、基板Kに冷媒を吹き付けて冷却する第二基板冷却装置を兼ねている。
ここで、クリーンブース4の下方には、冷媒吐出装置26が吐出する冷媒を系外に排出するための排気口4aが設けられている。
ここで、図5に示すように、ケーシング27の下面には開口部27cが設けられている。冷媒吐出部27bは、開口部27cを覆うパネルによって構成されるものであって、ケーシング27内の冷媒を基板Kの中央部Mに向けて吐出する吐出口27dが設けられている。
図6(図5の拡大断面図)に示すように、吐出口27dは、冷媒吐出部27bの下面に突出させて設けられる円筒状のノズルによって構成されている。この吐出部27は、基板Mに対して垂直となる向きに向けられている。
また、冷媒吐出部27bはケーシング27に対して着脱可能とされており、この冷媒吐出部27bを交換することで、冷却条件に応じて適切な形状の吹出口27dに交換することができるようになっている。
具体的には、冷媒吐出部27bを、内径D3の異なる吐出口27dが設けられた他の冷媒吐出部27bに交換することで、基板Kにおいて直接空気を吹き付けられる面積を調整することができるようになっている。
ここで、ケーシング27の内面のうち、フィルター28が設置される位置から吹出口までの範囲は、フィルター28から冷媒吐出部27bまで送り込まれる清浄な空気の流れに乱れを生じさせないように、段部等のない滑らかな壁面とされている。
ここで、冷媒吐出装置26は、清浄な空気を、例えば基板面1m2あたり流速2.0m/sで吐出する構成とされており、また清浄な空気の流量は、例えば基板面1m2あたり8.44m3/minとされる。
まず、真空処理室2内は常に減圧されているので、アンロード室3を真空処理室2及びクリーンブース4と遮断した状態で、アンロード室3内を真空処理室2内と同程度の減圧環境にする。
続いて、アンロード室3を真空処理室2と接続して、搬送台車6によって基板Kをアンロード室3内に搬入する。
その後、再びアンロード室3と真空処理室2とを遮断したのち、アンロード室3内に、ベントガス吐出装置16によってベントガスを注入して、アンロード室3内を大気圧環境に戻す。
このように基板Kにおいて周縁部Eよりも冷却されにくい中央部Mにベントガスを吹き付けることで中央部Mの熱がベントガスによって奪われる。そして、中央部Mの熱を奪ったベントガスは、中央部Mから周縁部Eに向けて、基板表面に沿って放射状に流れて、周縁部Eの冷却に寄与する。
すなわち、周縁部Eよりも温度低下が生じにくい中央部Mが、周縁部Eよりも積極的に冷却されるので、中央部Mと周縁部Eとの温度差が生じにくい。
これにより、基板Kの冷却中に基板Kに生じる熱変形や熱応力が小さくなって、基板Kに割れや座屈が生じにくい。
この各ベント管18a,18b,18cの間隔は、基板Kの冷却が適切に行われるように適宜設定されるものである。本実施の形態では、基板Kにおいて各ベント管からベントガスが直接吹き付けられる領域同士が連続するように、ベント管同士の間の間隔が定められており、これによって基板Kの中央部Mにおいて一つの大きい領域が積極的に冷却されるようになっている。また、ベント管18a,18b,18cはそれぞれ平行にして配置されているので、基板Kにおいてベントガスが吹き付けられる領域は、基板Kと略相似形状の四角形となる。このため、基板Kにおいてベントガスによって冷却される領域と周縁までの距離が基板Kの全周にわたってほぼ同一となり、各部で冷却条件が等しくなり、冷却むらが生じにくい。
すると、これらベント管18a,18b,18cには熱変形が生じる。
しかし、これらベント管18a,18b,18cは、一端のみを固定的に支持され、他端はあそびをもたせた状態で支持されているので、自由な変形が許容されている。このため、ベントガス吐出部17には、熱変形による歪みやよじれ等が生じにくく、歪みやよじれ等に由来する問題、例えばベントガス吐出部17がよじれて基板Kに接触してしまうといった問題が生じにくい。
アンロード室3は、ベントガスを供給し始めた状態では高真空に保たれているので、吐出口Hから吐出されたベントガスは、音速に近い高速の噴流となる。しかし、本実施形態では、吐出口Hから吐出されたベントガスは、一旦誘導部21に受けられて流れが緩和されてから基板Kに向けて誘導される。すなわち、ベントガスの流れが一旦緩和されてから基板Kに当てられる。
このようにベントガスの流れが一旦緩和されることで、ベントガスの流れに微粒子が巻き込まれていた場合にも、この微粒子が基板K表面に勢いよく衝突することがなく、基板K表面を傷めにくい。
また、このようにベントガスが一旦誘導部21で受けられてから基板Kに吹き付けられるので、基板Kに吹き付けられるベントガスの流れが均一化されることとなり、基板Kにおいてベントガスの当たる領域を均一に冷却することができる。
すなわち、クリーンブース4においても、アンロード装置3と同様に、基板Kの中央部Mが積極的に冷却されるので、中央部Mと周縁部Eとの温度差が生じにくい。
これにより、基板Kの冷却中に基板Kに生じる熱変形や熱応力が小さくなって、基板Kに割れや座屈が生じにくい。
また、このように基板Kの中央部Mを積極的に冷却した場合、中央部Mに熱応力が生じることがあるが、この熱応力は、基板K全体を凹状または凸状に変形させるように作用する。すなわち、中央部Mに生じた熱応力は、基板K全体が変形することで逃がされるので、基板Kに割れや座屈が生じにくい。
基板Kを水平にした状態では、基板Kの周囲には、熱対流によって、基板Kの下面側から上面側に向かう流れが形成される。この流れは、下面側では、基板Kの中央部Mから周縁部Eに向かって下面に沿って放射状に流れ、上面側では、周縁部Eから中央部Mに向かって集中するように上面に沿って流れて、中央部Mに達したのちは、基板Kの上方に向かって流れる。
このため、基板Kの周縁部Eは全周にわたって均一に冷媒や周辺雰囲気の流れに触れることとなり、周縁部Eで温度勾配が生じにくくなる。
ここで、従来の製膜装置と本実施形態にかかる製膜装置1から、それぞれ、製膜処理を終えてアンロード室で大気圧環境へ戻した直後の基板を取り出し、その温度分布を放射温度計を用いて測定した。この温度分布を示すコンター図を、次の図8、図9に示す。
これに対して、本実施形態の製膜装置1から取り出した基板は、図9に示すように、全体に温度勾配が緩くなっている。特に、熱応力による割れや座屈の生じやすい周縁部では、明らかに温度勾配が緩くなっているので、周縁部に生じる熱応力が小さく、基板に割れや座屈が生じにくいであろうことがわかる。
従来の製膜装置から取り出した基板では、最大引っ張り応力は15.7MPaであった(座屈固有値は0.962で1.0以下であるために、基板は熱座屈を発生している)。
一方、本実施形態の製膜装置1から取り出した基板では、最大引っ張り応力は6.5MPaであった(座屈固有値は1.16で1.0以上であるために、基板は熱座屈を発生していない)。
すなわち、本実施形態にかかる製膜装置1では、アンロード室3での冷却時に基板Kに生じる熱応力が従来の製膜装置の半分以下となるので、従来の製膜装置よりも明らかに基板Kに割れや座屈が生じにくいことがわかる。
実際に従来の製膜装置と本実施形態にかかる製膜装置とで、基板に割れや座屈を生じさせない条件で冷却を行い、冷却開始から冷却完了までに最低限必要な時間を測定したところ、従来の製膜装置では、冷却時間が約4分必要であったのに対して、本実施形態にかかる製膜装置1では、必要な冷却時間は3分であり、クリーンブース4での冷却時間を大幅に短縮することができた。
例えば、搬送台車6による初期の保持姿勢、すなわちクリーンブース4内に搬入された直後で水平に寝かされる前の姿勢の基板Kに略垂直に対向する向きにして、冷媒吐出装置26の冷媒吐出部27bを設けてもよい。この場合には、クリーンブース4内に搬送台車6によって搬入された基板Kを、搬入直後から冷却することができ、基板Kを水平に寝かせる作業が完了するまでの冷媒吐出装置26の待機時間が短縮される。
ベント管一本だけでベントガス吐出部17を構成する場合には、ベント管は十分大径のものを用いて、基板Kに対向する面積、すなわち基板Kに対してベントガスを直接吹き付けることのできる面積を確保する。
以下、本発明の第二実施形態にかかる製膜装置について、図10を用いて説明する。
本実施形態にかかる製膜装置は、第一実施形態にかかる製膜装置1において、アンロード室3の構成を変更したものである。
以下、製膜装置1と同様または同一の構成については同様の符号を用いて示し、詳細な説明を省略する。
以下、本発明の第三実施形態にかかる製膜装置について、図11を用いて説明する。
本実施形態にかかる製膜装置は、第一実施形態または第二実施形態にかかる製膜装置において、クリーンブース4の構成を変更したものである。
以下、上記各実施形態の製膜装置と同様または同一の構成については同様の符号を用いて示し、詳細な説明を省略する。
次に、本発明の第四実施形態について、図12及び図13を用いて説明する。
本実施形態にかかる製膜装置は、第一実施形態、第二実施形態、第三実施形態のうちのいずれかの製膜装置において、アンロード室に設けられるベントガス吐出装置16の構成を変更したものである。
本実施の形態では、ベントガス吐出装置16において、ベントガス吐出部17の代わりに、球殻状のベントガス吐出部37を設けたものである。このベントガス吐出部37において、少なくともアンロード室内に搬入された基板K側の領域には、複数の吐出口Hが設けられている。
このため、基板Kにおいて凸曲面に最も近い領域では、ベントガスは略垂直方向から吹き付けられ、この領域から離間した領域では、基板K表面に対して傾斜する方向からベントガスが吹き付けられる。
これにより、基板K表面近傍では、中央部Mから周縁部Eに向かう冷媒の流れが自然に形成されることとなり、確実に、基板Kの中央部Mを積極的に冷却することが可能となる。
例えば、ベントガス吐出部37は、基板K側を向く壁面がドーム状に形成された箱体によって構成してもよい。この場合には、ドーム状の壁面には、複数の吐出口Hが形成される。
また、ベントガス吐出部37は、基板Mに平行にして設けられた径の十分大きい円筒体によって構成することができる。この場合には、円筒体においてすくなくとも基板側の領域は、吐出口が周方向に沿って複数設けられた構成とされる。
これらいずれの場合にも、ベントガス吐出部37からは、凸曲面の軸または中心点を中心とした放射状に冷媒が吐出されることとなる。
次に、本発明の第五実施形態について、図14を用いて説明する。
本実施形態にかかる製膜装置は、第一実施形態、第二実施形態、第三実施形態、第四実施形態のうちのいずれかの製膜装置において、アンロード室での基板Kに対するベントガスの吹き付け状態、及びクリーンブースでの基板Kに対する冷媒の吹き付け状態を変更したものである。
具体的には、ベントガス吐出装置を、基板Kの各小領域M1,M2,M3,M4に対向する位置にそれぞれベントガス供給部を設けた構成とし、冷媒吐出装置を、各小領域M1,M2,M3,M4に対向する位置にそれぞれ吐出口が設けられた構成とする。
すなわち、基板Kは、中央部Mのなかでも、連続しない複数の小領域M1,M2,M3,M4がより積極的に冷却される。
このように、基板Kにおいて積極的に冷却されて熱応力の生じやすい領域が、複数の小領域M1,M2,M3,M4に分散しているので、基板Kに生じる熱応力が全体として小さくなり、基板Kに割れや座屈が生じにくくなる。特に、従来割れが生じやすかった基板Kの周縁部(図14中に長円で囲って示す領域)に、割れや座屈が生じにくくなる。
2 真空処理室
3、33 アンロード室(第一基板冷却装置)
4、34 クリーンブース(第二基板冷却装置)
6b 支持台
16 ベントガス吐出装置(冷媒吐出装置)
17 ベントガス吐出部(冷媒吐出部)
18a,18b,18c ベント管
21 誘導部
26 冷媒吐出装置
27b 冷媒吐出部
H 吐出口
K 基板
M 中央部
M1,M2,M3,M4 中央部の小領域
Claims (11)
- 冷却対象である太陽電池パネルに用いられる基板の少なくとも片面の中央部のみに、該基板に対して略垂直方向から冷媒を吹き付け、その冷媒が前記基板の表面に沿って中央部から全ての周縁部に向けて流れるようにして前記基板の冷却を行うことを特徴とする基板冷却方法。
- 前記基板を水平にした状態で冷却を行うことを特徴とする請求項1記載の基板冷却方法。
- 前記基板の中央部の、連続しない複数の領域にのみ、それぞれ前記冷媒を吹き付けることを特徴とする請求項1または2に記載の基板冷却方法。
- 冷却対象である太陽電池パネルに用いられる基板を支持する支持台と、
該支持台に支持される前記基板と対向する位置に設けられ、前記基板の少なくとも片面の中央部のみに対して略垂直方向から冷媒を吹き付け、その冷媒を前記基板の表面に沿って中央部から全ての周縁部に向けて流し、前記基板を冷却する冷媒吐出装置とを有していることを特徴とする基板冷却装置。 - 前記支持台が、前記基板を水平にして保持可能とされていることを特徴とする請求項4記載の基板冷却装置。
- 前記冷媒吐出装置が、前記基板の中央部の、連続しない複数の領域に向けてのみ前記冷媒を吐出する構成とされていることを特徴とする請求項4または5に記載の基板冷却装置。
- 前記冷媒吐出装置の冷媒吐出部が、長手方向に沿って複数の吐出口が設けられた管を、同一平面上に複数本配置した構成とされており、
該冷媒吐出部は、前記管が前記基板に平行な面上に位置するようにして設けられていることを特徴とする請求項4から6のいずれかに記載の基板冷却装置。 - 前記冷媒吐出部を構成する前記管は、一箇所のみを固定的に支持され、他の部分は支持されないか、支持部にあそびをもたせた状態で支持されていることを特徴とする請求項7記載の基板冷却装置。
- 前記冷媒吐出装置の冷媒吐出部は、前記冷媒を吐出する吐出口が前記基板側とは異なる方向に向けて設けられており、
前記吐出口の周囲には、該吐出口から吐出された冷媒を受けて前記基板側に向けて案内する誘導部が設けられていることを特徴とする請求項4から8のいずれかに記載の基板冷却装置。 - 前記冷媒吐出装置の冷媒吐出部は、前記基板に対向する面に凸曲面を有する中空形状をなしており、この凸曲面には、基板に対する傾きが変化する方向に沿って複数の吐出口が設けられていることを特徴とする請求項4から8のいずれかに記載の基板冷却装置。
- 減圧環境下で加熱された太陽電池パネルに用いられる基板に処理を施す真空処理室と、該真空処理室から前記基板が送り込まれて、該基板を冷却しつつ大気圧環境に戻すアンロード室とを有する製膜装置であって、
前記アンロード室もしくはその後段に、請求項4から10のいずれかに記載の基板冷却装置を備えることを特徴とする製膜装置。
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