JP4360545B2 - 連続熱処理炉 - Google Patents

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本発明は、プラズマディスプレイパネル(PDP)に用いられるガラス基板や太陽電池ウエハ等を浮揚させて搬送しながら熱処理を行う連続熱処理炉に関するものである。
プラズマディスプレイパネルに用いられるガラス基板は、表面に電極等をパターン形成して熱処理を行う際に、表面だけでなく裏面にも傷が付かないように搬送する必要がある。また、太陽電池ウエハも、表裏両面に電極等がパターン形成されるものがあるので、これらの表裏両面に傷が付かないように搬送する必要がある。ただし、一般的な連続熱処理炉は、図2に示すように、被処理材である例えばガラス基板1をセラミックス板等からなるセッター2上に載置してローラコンベア3で搬送し、内側上部にヒータ4を配置した炉5内を通すことにより熱処理を行うものであるため、セッター2に触れる側のガラス基板1の下面が傷付くおそれが生じる。そこで、従来から、図3に示すように、炉5内の下部に配置された空気室6の天井面に多数形成された噴出口6aからエアーAを噴出させておき、その上にガラス基板1を配置してエアーAによる空気層によって浮揚させた状態で搬送を行う連続熱処理炉が開発されている(例えば、特許文献1参照。)。
ところが、このような浮揚搬送を行う従来の連続熱処理炉は、下方からの上向きのエアーAの噴出だけでガラス基板1を支持して搬送するものであるため、このガラス基板1が不安定になり上下に揺れながら搬送されるおそれがあるために、上方に配置されたヒータ4との間の距離が変化して熱処理が均一化しないという問題があった。また、浮揚搬送を行う連続熱処理炉は、実際には斜め前方の上方に向けてエアーAを噴出することによりガラス基板1を前方に搬送するようにしているので、例えば搬送速度を速くするにはこのエアーAの圧力を高めて噴出速度を速くする必要がある。しかしながら、このようにエアーAの噴出速度を速くすると、ガラス基板1の浮揚高さも高くなるので、搬送速度に応じてヒータ4との間の距離が変化するために加熱条件を再調整する必要が生じるという問題もあった。
さらに、太陽電池ウエハのように両面に形成された電極の熱処理を行う必要がある被処理材の場合には、上方のヒータ4と向かい合う上面と、エアーAが吹き付ける下面とで条件が大きく異なるために、これらの面をそれぞれ最適な条件で加熱処理することができないという問題もあった。
特開2002−267368号公報
本発明は、被処理材の上下からガスを吹き付けて搬送することにより、この被処理材の搬送が不安定になったり均一な熱処理ができないという問題を解決しようとするものである。
請求項1の発明は、板状の被処理材を浮揚させて加熱した炉内を搬送することにより熱処理を行う連続熱処理炉において、炉内の下部に上方に向けてガスを噴出させる下部噴出手段、この炉内の上部に下方に向けてガスを噴出させる上部噴出手段と、炉内に噴出されたガスを排気する排気口とを備え、前記下部噴出手段および前記上部噴出手段はそれぞれ独立に噴出圧を調整可能とされていると共に、前記下部噴出手段に導入されるガスおよび前記上部噴出手段に導入されるガスはそれぞれ前記炉体の床壁中央部および天井壁中央部を通して幅方向に対称に導入され、かつ前記炉体の両側壁から対称に排気されることを特徴とする。
請求項2の発明は、前記下部噴出手段と上部噴出手段が、ヒータによって加熱された熱板に多数開口された噴出口からガスをこの熱板の上方又は下方に噴出させるものであることを特徴とする。
請求項1の発明によれば、ガラス基板等の被処理材は、従来と同様に下部噴出手段から吹き上げるエアー等のガスに持ち上げられて浮揚するだけでなく、上部噴出手段から吹き降ろすガスによって下方へ押し下げられるので、これらのガスの噴出圧を調整することにより、被処理材の下面と上面にそれぞれ形成されるガス層に上下を支持されて浮揚高さを安定させることができ、これによって均一な熱処理を行うことができるようになる。しかも、例えば下部噴出手段から斜め前方の上方に吹き上げるガスの噴出圧を高めて被処理材の搬送速度を速めた場合にも、上部噴出手段のガスも噴出圧を少し高くすることにより、この被処理材の浮揚高さを調節することができるので、搬送速度にかかわらず一定の浮揚高さで搬送を行うことができるようになる。
請求項2の発明によれば、下部噴出手段と上部噴出手段が熱板に形成された噴出口からガスを上下に噴出するので、これらの熱板の放射熱(輻射熱)により被処理材を上下面から加熱することができるようになる。このため、被処理材の上面と下面をそれぞれ最適な条件で加熱することができるようになる。また、これら下部噴出手段と上部噴出手段の熱板がヒータの役割を果たすので、炉内に別途ヒータを配置する必要もなくなる。
以下、本発明の最良の実施形態について図1を参照して説明する。なお、この図1においても、図2〜図3に示した従来例と同様の機能を有する構成部材には同じ番号を付記する。
本実施形態は、従来例と同様に、プラズマディスプレイパネルに用いられるガラス基板1を浮揚搬送しながら熱処理を行う連続熱処理炉について説明する。この連続熱処理炉は、図1に示すように、炉5の内部に下部空気室7と上部空気室8を配置したものである。炉5は、従来例と同様に、熱処理を行うガラス基板1の搬送路を断熱性の高い壁材で覆ったものであり、図面奥側から手前側に向けてトンネル状に長く形成されている。そして、図面奥側の端にガラス基板1の搬入口が開口し、手前側の端にガラス基板1の搬出口が開口している。また、炉5の左右の側壁には、排気口が適宜形成されている。
下部空気室7は、炉5内のガラス基板1の搬送路の下方に配置された長尺な筐体であり、天井部が搬送路に平行な長尺で平坦な上面を有する熱板7aによって形成されている。上部空気室8は、炉5内のガラス基板1の搬送路の上方に配置された長尺な筐体であり、床部が搬送路に平行な長尺で平坦な下面を有する熱板8aによって形成されている。これらの熱板7a,8aは、いずれも熱伝導性が高い金属やシリコンカーバイド(SiC)等の板材に絶縁層を介してヒータを組み込んだものであり、このヒータの加熱によって板材の全面から均一に放射熱を放射することができるようになっている。また、これらの熱板7a,8aには、上下に貫通する噴出口7b,8bが均一な間隔で多数穿設されている。ただし、図面では表れないが、熱板7aの噴出口7bは、上端開口部が少し前方に寄っていて、熱板8aの噴出口8bは、下端開口部が少し前方に寄っていてる。
上記下部空気室7は、この熱板7aの下方を十分な広さの空間をあけて薄い金属板で覆ったものであり、この内部空間に炉5の床壁を通して加熱加圧されたエアーAが送り込まれるようになっている。また、上部空気室8は、この熱板8aの上方を十分な広さの空間をあけて薄い金属板で覆ったものであり、この内部空間に炉5の天井壁を通して加熱加圧されたエアーAが送り込まれるようになっている。従って、下部空気室7の各噴出口7bからは、上方のガラス基板1の搬送路に向けて斜め前方にエアーAが噴出し、上部空気室8の各噴出口8bからは、下方のガラス基板1の搬送路に向けて斜め前方にエアーAが噴出することになる。
上記構成の連続熱処理炉は、まず図面奥側の端で、下部空気室7の熱板7aと上部空気室8の熱板8aとの間にガラス基板1を挿入して搬送を開始する。すると、このガラス基板1は、下部空気室7の噴出口7bから斜め前方の上方に噴出するエアーAを下面に受けて持ち上げられ浮揚した状態となり、前方に向けて搬送される。即ち、このガラス基板1は、熱板7aの上面との間に生じた空気層を流体潤滑膜として前方に向けて滑走することになる。ただし、これだけでは従来のようにガラス基板1が上方への移動を規制されないため、空気層の状態の僅かな変動に応じて浮揚高さが不安定になり、しかも、一旦この浮揚高さに変動が生じると、これが次第に増幅されて上下に揺れながら搬送されるようになる場合がある。
しかしながら、本実施形態では、このガラス基板1が、上部空気室8の噴出口8bから下方に噴出するエアーAを上面に受けて押し下げられるので、これによって上方への移動が規制され、浮揚高さの変動が抑制されて揺れが減衰するようになる。つまり、ガラス基板1の浮揚高さが高くなると、上部空気室8の噴出口8bに近付くので、エアーAが吹き付ける力が強くなり、この上昇が直ちに抑制されて、上下の揺れが速やかに減衰することになる。これに対して、従来のように、下部空気室7のみでガラス基板1を支持しようとすると、このガラス基板1の浮揚高さが低くなって来たときに、噴出口7bに近付くことによりエアーAの吹き付け力が強くはなるが、この場合はガラス基板1の重力に逆らって再び持ち上げる必要があるので、このガラス基板1の動作に時間遅れが生じ、必要以上に上方への力が加わって揺れの振幅が増幅されるおそれが生じる。
この結果、本実施形態の連続熱処理炉では、ガラス基板1が下部空気室7の熱板7aと上部空気室8の熱板8aとの間で、上下の空気層に支持されて、安定して前方に滑らかに搬送されることになる。そして、この搬送の間に、熱板7a,8aからの放射熱を上下の面に受けるので、ガラス基板1が熱処理される。しかも、ガラス基板1は、これらの熱板7a,8aとの間の距離がほぼ一定のまま搬送されるので、均一な熱処理を行うことができるようになる。
ここで、下部空気室7と上部空気室8が全く同じ構造であるとして、噴出口7b,8bから噴出するエアーAの圧力も同じ場合には、ガラス基板1は、自重の分だけ上方の熱板8aよりも下方の熱板7a寄りの浮揚高さで搬送される。このため、通常は、下部空気室7の噴出口7bからのエアーAの圧力の方を高めて、熱板7a,8aからの距離が等しくなる中間の浮揚高さでガラス基板1を搬送することにより、上下面の加熱を均一にする。ただし、ガラス基板1の浮揚高さが正確に中間位置でなくても、熱板7aと熱板8aの加熱量が異なるようにすれば、このガラス基板1の上下面の加熱を均一にすることはできる。また、これら熱板7a,8aの加熱量を調整すれば、ガラス基板1の上下面の加熱を適宜異なるように調整することもできる。
なお、上記実施形態では、ヒータによって加熱された熱板7a,8aにエアーAの噴出口7b,8bを設ける場合を示したが、ヒータはこれら上下の噴出口7b,8bとは別個に設けるようにすることもできる。ただし、このヒータが炉5内の上部や下部だけに配置される場合には、ガラス基板1の上下面を均一に加熱することは困難になる。
また、上記実施形態では、下部空気室7や上部空気室8の内部空間に一旦圧力空気を溜めることにより、各噴出口7bや各噴出口8bからエアーAを均一な圧力で噴出させるようにする場合を示したが、これらのエアーAが均一な圧力で噴出するのであれば、このための構造は限定されない。さらに、上記実施形態では、エアーAを加熱加圧して下部空気室7や上部空気室8に供給する場合を示したが、ガラス基板1の熱処理の障害になることがなければ、必ずしも加熱する必要はない。
また、上記実施形態では、下部空気室7と上部空気室8の噴出口7b,8bが共に斜め前方を向く場合を示したが、いずれか一方だけが斜め前方を向き、他方は真っ直ぐに下方又は上方のみに向けてエアーAを噴出するものであってもよい。さらに、ガラス基板1の前方への送りを他の搬送手段で実現する場合には、これら下部空気室7と上部空気室8の噴出口7b,8bが共に真っ直ぐに上方と下方に向けてエアーAを噴出させるようにすることもできる。さらに、上記実施形態では、エアーAを用いる場合を示したが、処理の必要に応じて不活性ガス等の他のガスを用いることもできる。
また、上記実施形態では、プラズマディスプレイパネルに用いられるガラス基板1を熱処理する連続熱処理炉について説明したが、この連続熱処理炉で他のガラス基板や太陽電池ウエハ等の被処理材の熱処理を行うことも可能であり、それぞれの被処理材の熱処理専用の連続熱処理炉にも本発明を同様に実施することができる。
本発明の一実施形態を示すものであって、連続熱処理炉の構造を示すために長手方向に直交する縦方向に切断した断面正面図である。 従来例を示すものであって、ローラコンベアを用いた連続熱処理炉の構造を示すために長手方向に沿う縦方向に切断した断面部分側面図である。 従来例を示すものであって、連続熱処理炉の構造を示すために長手方向に直交する縦方向に切断した断面正面図である。
1 ガラス基板
5 炉
7 下部空気室
7a 熱板
7b 噴出口
8 上部空気室
8a 熱板
8b 噴出口

Claims (2)

  1. 板状の被処理材を浮揚させて加熱した炉内を搬送することにより熱処理を行う連続熱処理炉において、
    炉内の下部に上方に向けてガスを噴出させる下部噴出手段、この炉内の上部に下方に向けてガスを噴出させる上部噴出手段と、炉内に噴出されたガスを排気する排気口とを備え、前記下部噴出手段および前記上部噴出手段はそれぞれ独立に噴出圧を調整可能とされていると共に、前記下部噴出手段に導入されるガスおよび前記上部噴出手段に導入されるガスはそれぞれ前記炉体の床壁中央部および天井壁中央部を通して幅方向に対称に導入され、かつ前記炉体の両側壁から対称に排気されることを特徴とする連続熱処理炉。
  2. 前記下部噴出手段と上部噴出手段が、ヒータによって加熱された熱板に多数開口された噴出口からガスをこの熱板の上方又は下方に噴出させるものであることを特徴とする請求項1に記載の連続熱処理炉。
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