JP4220585B2 - ステント - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は,補綴具に関し,特に所定位置に容易に挿入でき且つ確実に補綴できる器具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
TiNi合金をはじめとする形状記憶合金において,マルチンサイト変態の逆変態に付随して顕著な形状記憶効果及び超弾性を示すことは,よく知られている。なかでもTiNi合金は,生活環境温度近傍で優れた機能を持つことから,電子レンジのダンパー,エアコンの風向制御装置,炊飯器蒸気調圧弁等の家電用アクチュエータや,建築用の換気口,携帯電話アンテナ,眼鏡フレームなど幅広い分野で使用されている。また,医療分野への応用の試みは,合金開発当初からなされ,これまでに歯列矯正線,人工歯根,血管拡張コイル,カテーテルガイトワイヤー等が実用化されている。
【0003】
近年,血管や気管などの狭窄部や閉寒部および血管内瘤の治療は,経皮的な低侵襲性治療手術によって行われることが多い。血管や気管の狭窄・閉塞部治療には,先端部にバルーン及びステントを収納したカテーテルを大腿部動脈,或いは口から要治療部位に導いた後,バルーン及びステントをカテーテルから手元操作で解放して,バルーンによる狭窄・閉塞部の拡張およびその拡張径保持のためにステントを留置する。
【0004】
一方,血管に発生した瘤に対しては,前記同様にカテーテル操作によって,ステントで瘤発生部を塞栓することで瘤への血流を止めることによってなされている。
【0005】
このようなステントの内で,網状・格子状のステンレス製ステントに関しては,二重管カテーテルの内管に巻き付けて縮径した状態で体内に進入させ,所定部位で外管からステント及びバルーンを解放した後,バルーンで狭窄部を拡張すると同時にステントを復元させる。更には,ジグザグ状にして円筒を形成し,パンタグラフを折り畳む様にして縮径し,カテーテルからの拘束解放と同時に自発的ばね力で元径に回復するタイプもある。
【0006】
また,ステントを形状記憶合金製とすることで,より自発的形状回復力を持たせたものが最近開発されつつある。形状記憶合金の形状記憶効果を利用したものは,冷水で縮径したステントを体内導入時にも冷風,冷水などで冷却を続け,拡張操作時に体温で元径に形状回復させる。また,形状記憶合金の超弾性を利用したものは,線のヘリカルコイルを引き伸ばして縮径にしたもの,メッシュ状円筒を小さく折り畳んで,二重管カテーテルの内外管の間に拘束縮径して,所定部位での拘束解放と同時に自発的に元径に形状回復するものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし,ステンレス製ステントは,カテーテルに収納牲およびバルーンでの拡張性を持たせる必要から,ステントを構成する円筒の剛性は十分に低くしなければならず,本質的に求められる再狭窄防止の為の元径復元時剛性は,充分であるとは言い切れない難点がある。また,形状記憶合金の形状記憶効果を使ったステントは,体温で形状回復するものでは,冷却を保って所定部位まで運ぶことに対する課題が残されている。また,体温を越えた温度で形状回復するものでは,所定部位での形状復元の加熱方法と留置時体温まで周囲温度低下によるステントの剛性低下の難点がある。一般に形状記憶合金は,形状回復温度以上の母相では,良好な剛性を持つ超弾性を示すが,マルテンサイト相では,極めて柔らかくなる。したがって,体温で超弾性を示す形状記憶合金を用いたステントでは,最も保形性に優れているが,これまでの構造ではその収納性・拡張時の把持力に課題を残していた。
【0008】
すなわち,コイルばね形状は,コイルを引っ張ることて縮径出来るが,変形後のステントが長くなりカテーテルへの収納性,留置部位への位置決めが難しいという欠点を有していた。
【0009】
一方,網状・格子状の場合,板の円筒加工品は,渦巻き状に絞つて縮径し,解放後に所定円筒に復元させるために,留置部位への位置決めは,容易にすることができるが,使用する板を薄くすることで,縮径は容易になるが,拡張時の保形性に難点がある。
【0010】
また,超弾性パイプを格子に切り抜き,ステントとすることで,より保形性に優れたものも提供可能になっているが,この場合,保形性の向上は,逆に縮径性やカテーテルへの収納性を悪くする難点がある。これは,前記板の円筒加工品にも言えることである。
【0011】
そこで,本発明の一技術的課題は,所望する剛性と容易な操作性とを具備した新規なステントを提供することにある。
【0012】
また,本発明の他の技術的課題は,カテーテルへの収納性を向上し,留置部位への位置決めを容易にしたステントを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、血管、気管、尿管などの狭窄部や閉塞を拡張保持するための形状記憶合金製ステントであって、生体温度よりやや低い形状回復温度を有するステントに4%から10%までの縮径歪みを与えることで、前記生体温度よりも上昇した形状回復温度を有するものとし、前記縮径歪みを与えた前記ステントを体内の所定の位置に挿入した後、バルーン内に温水を圧入することで、前記バルーンを膨らませて前記ステントを拡張すると同時に前記生体温度より上昇した前記形状回復温度以上で前記ステントを加温し、これによって、所定の位置において、前記ステントを記憶された形状に回復させて前記生体温度で超弾性特性を示すように構成されていることを特徴とするステントが得られる。
【0014】
具体的に、本発明のステントでは、生体温度よりやや低い温度から超弾性を示すステントを強加工によって生体温度近傍で形状回復を開始する程度に縮径し、外部拘束によって体内挿入時の形状回復を抑え、且つ所定部位でのバルーン膨張圧で外部拘束が解放されるステントが提供できる。
【0016】
即ち,具体的に,本発明のステントでは,血管や気管,尿管などの狭窄部や閉塞部を拡張保持,或いは,血管内の瘤塞栓するステントを,体温(生体温度37℃)で超弾性を示す形状記憶合金で構成して,該ステントを強加工を加えて縮径して形状回復温度を上昇させ,体内導入時には縮径されたステントの形状回復を抑え,所定部位に到達後温水,温風で強変形による歪みを解消して形状を元径に同復後,留置時超弾性で保形を維持できるものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下,本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0018】
(第1の実施の形態)
まず,第1の実施の形態では,ステントの一例として,尿道ステントについて説明する。
【0019】
図1は本発明の第1の実施の形態による尿道ステントの元径状態を示し,図2は図1のステントの縮径状態を夫々示している。図1及び図2に示す様に,尿道ステント1は,コイル状の形状記憶合金線材から形成されている。
【0020】
図1及び図2に示す尿道ステント1は,具体的には,次のように製造されている。まず,図1に示すように,0.5mmTiNi合金線を外径12mmコイル,長さ30mmに加工を行い,熱処理によってコイル形状固定と同時に形状回復温度を35℃とした。これを,図2に示すように,約15℃の水浴中で外径5mmに縮径した。ここでコイルが受けた歪みは,外径,もしくは,内径の歪み変化で約6.5%である。
【0021】
図2に示す縮径コイルの形状記憶特性を調べた結果,37℃では,形状回復せず,42℃で形状回復を開始した。その後45℃に加温後,37℃まで冷却し,コイルを引っ張り変形を行った結果,コイルは超弾性を示した。
【0022】
次に,図1及び図2に示す尿道ステント1の使用方法について具体的に説明する。具体的治療は,尿道入り口から前記縮径した尿道ステント1をプロ−ブに装着して狭窄部位まで運び,約43℃温水を尿道口から注入して,尿道ステント1を形状回復させて元径に復元した。その結果,尿道ステン卜1の形状回復力で挟窄部は拡張され,留置後も超弾性の保形力で拡張は維持されていた。
【0023】
次に,このコイルを用い,縮径量と形状回復特性について調べた。冷水中での縮径を外径10mm,8mm,7mm,6mm,4mmとした。そのときの前記例に基づく歪みは,それぞれ約1%,2.5%,4%,7%および9.5%であった。また,形状回復温度は,それぞれ35,37,40,45および48℃であった。以上の結果から,実用性を考慮すると,強加工の歪みは本実施の形態では4%以上が適当と言える。
【0024】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態では,ステントの他の例として,冠動脈ステントについて説明する。
【0025】
図3は本発明の第2の実施の形態による冠動脈ステントの一部を示す正面図である。図3に示すように,ダイヤモンド状の切り込み12を連続的に持った外径5mmで形状回復温度33℃のTiNi合金ステント11を製作した。この切り込み12のダイヤモンドの角(a)の曲率は5R,ダイヤモンド格子幅は0.5mmである。これを,15℃の流水中で,後に説明する図4に示すように,略角(a)が180度となるように,引っ張り径2mmに縮径した。この時のダイヤモンド角(a)が受ける最大歪みは前記例から10%である。
【0026】
図4は図3の冠動脈ステントの縮径時の状態を示す斜視図である。このステントの形状記憶特性は,第1の実施の形態によるコイル状の尿道ステント1と異なり縮径に於ける冠動脈ステント11にかかる変形の歪みにむらが生じるために,37℃加熱で若干の形状回復が認められるものの,縮径の形状は保っていた。この冠動脈ステント11の形状回復開始は,38℃であった。さらに,45℃に加熱後,37℃の冷却で,冠動脈ステント11は超弾性を示した。
【0027】
次に,図3及び図4に示す冠動脈ステント11の使用方法について具体的に説明する。具体的治療は,冠動脈の場合,二重管構造のカテーテルの管と管の間に縮径された冠動脈ステント11を収納したカテーテルを大腿部動脈部から心臓まで挿入して,所定狭窄部でカテーテル外管から冠動脈ステント11を解放した。このとき,冠動脈ステント11は,殆ど形状回復していない。冠動脈ステント11の元径への回復は,冠動脈ステント11の内側に入れたバルーンに温生理食塩水(約42℃)を圧入して,血管狭窄部の拡張と同時に温水加熱て形状を復元させた。その後,バルーンから温水を抜いて冠動脈ステント11を留置したが,狭窄部の拡張は保持された。ここで,カテーテル収納時に縮径した冠動脈ステント11を一時的に外部拘束しておくことで,より小さく且つ37℃での形状回復を抑えることがてきる。
【0028】
本実施の形態の場合には,冷水での縮径した冠動脈ステント11を血液中で無害とされる接着剤(例えば,澱粉等)で固め,上記操作を行った。その結果,挿入操作時の形状回復は,全く見られず,バルーンによる拡管圧(7kg/cm2 )で接着は剥離した。
【0029】
以上説明したように,本発明のステントの形状は,第1及び第2の実施の形態によって示したコイル,ダイヤモンドカット円筒以外にも,強変形で歪みが導入される形状記憶合金ステントのあらゆる形伏に適用できる。また,その形状は,その症例に応じて任意に選ぶことができ,上記の本実施の形態に限定されるものではない。
【0030】
また,本発明に用いる合金は生体温度で紹弾性を持つことが出来るTiNi合金および第3元素添加のTiNiX合金(X=Cr,V,Cu,Fe,Coなど)が好ましいが,Cu系やFe系などの多種の形状記憶合金およびベータTi合金などの合金についても適用されうる。更に,ステントの表面は,生体適合性或いは毒性を考慮した,チタン,金などが本発明のステントにコーティングされていても良い。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように,本発明では,所望する剛性と容易な操作性とを具備した新規なステントを提供することができる。
【0032】
また,本発明では,カテーテルへの収納性を向上し,留置部位への位置決めを容易にしたステントを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態による尿道ステントの元径時の状態を示す斜視図である。
【図2】図1の尿道ステントの縮径時の状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態による冠動脈ステントの元径時の状態を示す斜視図である。
【図4】図3の冠動脈ステントの縮径時の状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 尿道ステント
2 TiNi合金線材
11 冠動脈ステント
12 切り込み
Claims (1)
- 血管、気管、尿管などの狭窄部や閉塞を拡張保持するための形状記憶合金製ステントであって、生体温度よりやや低い形状回復温度を有するステントに4%から10%までの縮径歪みを与えることで、前記生体温度よりも上昇した形状回復温度を有するものとし、前記縮径歪みを与えた前記ステントを体内の所定の位置に挿入した後、バルーン内に温水を圧入することで、前記バルーンを膨らませて前記ステントを拡張すると同時に前記生体温度より上昇した前記形状回復温度以上で前記ステントを加温し、これによって、所定の位置において、前記ステントを記憶された形状に回復させて前記生体温度で超弾性特性を示すように構成されていることを特徴とするステント。
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JP26580497A JP4220585B2 (ja) | 1997-09-30 | 1997-09-30 | ステント |
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