特許文献1及び特許文献2に記載されている非接触方式の温度センサは、加熱ローラ表面から輻射される赤外線を検知することにより、加熱ローラの表面温度を検出するものであり、その内部に赤外線検知用サーミスタと温度補償用サーミスタとを備えている。赤外線検知用サーミスタは、加熱ローラ表面から輻射される赤外線を検知しているが、その出力電圧は周囲の温度(すなわち、赤外線検知用サーミスタ自身の温度)に依存する。このような温度依存を補償するために赤外線検知用サーミスタ自身の温度を検出する必要がある。そこで、温度補償用サーミスタは、赤外線検知用サーミスタの近傍であって、加熱ローラ表面から輻射される赤外線の影響を受けない箇所に配置される。
温度センサは、このように配置された2つのサーミスタの両端電位を検出することにより、加熱ローラ表面の絶対温度が把握できるように構成され、2つのサーミスタの両端電位の差分の平均値をADコンバータでデジタル値に変換し、変換後のデジタル値をCPUへ出力する。CPUは、所定のプログラムを実行することにより、入力されたデジタル値及び予め定められたテーブルに基づいて加熱ローラの表面温度を求め、加熱ローラの通電制御を行う。
しかしながら、上述の2つのサーミスタの両端電位の差分(電位差)を取得する場合、その電位差がグランドレベル(接地レベル)に達する場合がある。すなわち、2つのサーミスタの両端電位の電位差を示す電圧にノイズ等の交流成分(高周波成分)が重畳した場合、電位差がグランドレベルに達するようなときには、重畳したノイズのグランドレベル以下のみの成分が除去されてしまう。このため、グランドレベル以下の除去された成分に応じて、2つのサーミスタの両端電位の電位差の平均値が大きくなり、検出された温度が実際の温度より高くなり、加熱ローラの表面温度を精度よく検出することができない虞があった。
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、加熱ローラからの輻射熱を検知する第1センサ及び第1センサの周辺温度を検知する第2センサと、第1センサ及び第2センサの出力の差分を算出する算出手段と、該算出手段で算出された差分の直流成分に重畳した交流成分の除去を防止すべく該直流成分をオフセットするオフセット手段と、該オフセット手段で直流成分をオフセットした差分に基づいて、加熱ローラの表面温度を検知する検知手段とを備えることにより、簡便な構成で加熱ローラの表面温度の検知誤差を減少させることができる定着装置及び該定着装置を備える画像形成装置を提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、第1センサの出力から所定値を減算する減算手段を備え、オフセット手段は、第2センサの出力及び減算手段で減算された出力の差分を算出して直流成分をオフセットすることにより、第2センサの出力にかかわらず、簡便な構成で加熱ローラの表面温度の検知誤差を減少させることができる定着装置及び該定着装置を備える画像形成装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、第2センサの出力に所定値を加算する加算手段を備え、オフセット手段は、加算手段で加算された出力及び第1センサの出力の差分を算出して直流成分をオフセットすることにより、第1センサの出力にかかわらず、簡便な構成で加熱ローラの表面温度の検知誤差を減少させることができる定着装置及び該定着装置を備える画像形成装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、算出手段で算出された差分の大小に応じて、オフセット手段でオフセットされる直流成分の増減を制御することにより、第1センサ及び第2センサの出力の差分にかかわらず、加熱ローラの表面温度の検知誤差を減少させることができる定着装置及び該定着装置を備える画像形成装置を提供する。
また、本発明の他の目的は、直流成分のオフセット値が異なる複数のオフセット手段と、算出手段で算出された差分の大小に応じて、オフセット手段の1つを選択する選択手段とを備え、選択されたオフセット手段で直流成分の増減を制御することにより、第1センサ及び第2センサの出力の差分にかかわらず、加熱ローラの表面温度の検知誤差を減少させることができる定着装置及び該定着装置を備える画像形成装置を提供する。
また、本発明の他の目的は、算出手段で算出された差分の平均値を算出し、算出された平均値に基づいて、加熱ローラの表面温度を検知することにより、加熱ローラの表面温度の検知誤差を減少させることができる定着装置及び該定着装置を備える画像形成装置を提供することにある。
本発明に係る定着装置は、加熱ローラを備え、現像剤による画像が転写されたシートを加熱して、前記画像をシート上に定着させる定着装置において、前記加熱ローラからの輻射熱を検知する第1センサと、該第1センサの周辺温度を検知する第2センサと、前記第1センサ及び第2センサの出力の差分を算出する算出手段と、該算出手段で算出された差分の直流成分に重畳した交流成分の除去を防止すべく該直流成分をオフセットするオフセット手段と、該オフセット手段で直流成分をオフセットした差分に基づいて、加熱ローラの表面温度を検知する検知手段とを備えることを特徴とする。
本発明に係る定着装置は、前記第1センサの出力から所定値を減算する減算手段を備え、前記オフセット手段は、前記第2センサの出力及び前記減算手段で減算された出力の差分を前記算出手段で算出して直流成分をオフセットするように構成してあることを特徴とする。
本発明に係る定着装置は、前記第2センサの出力に所定値を加算する加算手段を備え、前記オフセット手段は、前記加算手段で加算された出力及び前記第1センサの出力の差分を前記算出手段で算出して直流成分をオフセットするように構成してあることを特徴とする。
本発明に係る定着装置は、前記算出手段で算出された差分の大小に応じて、前記オフセット手段でオフセットされた直流成分の増減を制御する制御手段を備えることを特徴とする。
本発明に係る定着装置は、前記直流成分のオフセット値が異なる複数のオフセット手段と、前記算出手段で算出された差分の大小に応じて、前記オフセット手段の1つを選択する選択手段とを備え、前記制御手段は、前記選択手段で選択されたオフセット手段で直流成分の増減を制御するように構成してあることを特徴とする。
本発明に係る定着装置は、前記算出手段で算出された差分の平均値を算出する手段を備え、前記検知手段は、前記手段で算出された平均値に基づいて、加熱ローラの表面温度を検知するように構成してあることを特徴とする。
本発明に係る画像形成装置は、前述の発明のいずれか1つに係る定着装置を備え、該定着装置で画像をシート上に定着させて画像形成を行うようにしてあることを特徴とする。
本発明にあっては、算出手段(例えば、算出回路)は、加熱ローラからの輻射熱を検知する第1センサ(例えば、赤外線検知用サーミスタ)の出力(例えば、電圧Vc)及び第1センサの周辺温度を検知する第2センサ(例えば、補償用サーミスタ)の出力(例えば、電圧Vd)の差分(例えば、(Vd−Vc)×α、αは定数)を算出する。オフセット手段(例えば、オフセット回路)は、算出手段の出力(差分)の直流成分に重畳する交流成分(例えば、高周波成分を有するノイズ)の除去を防止するため、直流成分をオフセットする。例えば、算出手段の出力の直流成分がグランドレベル(接地レベル)近傍である場合、交流成分のうちグランドレベル以下の成分が除去されることを防止すべく、直流成分がグランドレベルに達しないように、直流成分をオフセットする(所要の値のバイアスをかける)ことにより、出力レベルをグランドレベルより大きくする。これにより、算出手段の出力の平均値に基づいて加熱ローラの表面温度を求める際に、算出手段の出力に交流成分が重畳した場合であっても、交流成分の最小値をグランドレベル以上にして、交流成分のうちグランドレベル以下の成分のみが除去される(あるいは、交流成分のうちグランドレベル以上の成分のみが残存する)ことによる平均値の増加を抑制して、加熱ローラの表面温度が実際の表面温度より高く検知されることを防止して、精度よく加熱ローラの表面温度を検知する。
本発明にあっては、減算手段(例えば、減算回路)は、第1センサの出力(例えば、電圧Vc)から所定値(例えば、電圧Vb)を減算し、算出手段は、第2センサの出力(例えば、電圧Vd)及び減算手段の出力(例えば、電圧Vc−Vb)の差分を算出する。この場合、算出される差分は、(Vd−Vc+Vb)×α(αは定数)となる。これにより、算出手段の出力の直流成分をVb×αだけグランドレベルより大きくする。第2センサの出力にバイアスをかけることができない場合(例えば、第2センサの出力が増幅限界値付近にあって、出力値を増加できないような場合)であっても、第1センサの出力にバイアスをかけることにより、算出手段が出力する第1センサ及び第2センサの出力の差分を大きくすることができる。
本発明にあっては、加算手段(例えば、加算回路)は、第2センサの出力(例えば、電圧Vd)に所定値(例えば、電圧Vb)を加算し、算出手段は、加算手段の出力(例えば、電圧Vd+Vb)及び第1センサの出力(例えば、電圧Vc)の差分を算出する。この場合、算出される差分は、(Vd−Vc+Vb)×α(αは定数)となる。これにより、算出手段の出力の直流成分をVb×αだけグランドレベルより大きくする。第1センサの出力にバイアスをかけることができない場合(例えば、第1センサの出力がグランドレベル付近にあって、出力値を減少できないような場合)であっても、第2センサの出力にバイアスをかけることにより、算出手段が出力する第1センサ及び第2センサの出力の差分を大きくすることができる。
本発明にあっては、制御手段は、算出手段で算出された差分の大小に応じて、オフセット手段でオフセットされる直流成分の増減を制御する。例えば、算出手段の出力(直流成分)が小さい場合、すなわち、直流成分がグランドレベルに近い場合、直流成分に重畳した交流成分のうち、グランドレベル以下の交流成分が除去されることを防止するため、直流成分を増加させるようにオフセットする。これにより、直流成分がグランドレベルに達しないようにし、交流成分の最小値をグランドレベル以上にして交流成分が除去されることを防止する。また、直流成分が最大増幅電圧レベルに近い場合、直流成分に重畳した交流成分のうち、最大増幅電圧レベル以上の交流成分が除去されることを防止するため、直流成分を減少させるようにオフセットする。これにより、直流成分が最大増幅電圧レベルに達しないようにし、交流成分の最大値を最大増幅電圧レベル以下にして交流成分が除去されることを防止する。
本発明にあっては、選択手段は、算出手段で算出された差分の大小に応じて、直流成分のオフセット値が異なる複数のオフセット手段のうち1つのオフセット手段を選択し、制御手段は、選択されたオフセット手段で直流成分の増減を制御する。例えば、第1センサの出力電圧をVc、第2センサの出力電圧をVd、算出される差分を(Vd−Vc)とすると、差分(Vd−Vc)のオフセット値が、Vb1、Vb2、Vb3(Vb1>Vb2>Vb3、例えば、Vb1=0.2V、Vb2=0V、Vb3=−0.2V)であるオフセット手段を設けておく。すなわち、オフセット手段により、差分は、Vd−Vc+Vb1、Vd−Vc+Vb2、Vd−Vc+Vb3のいずれかにオフセットされる。なお、オフセット値は、Vb1、Vb2、Vb3に代えて、Vb1×α、Vb2×α、Vb3×α(αは定数)であってもよい。
制御手段は、例えば、差分(Vd−Vc)が大きい場合、すなわち、直流成分が最大増幅電圧レベルに近い場合、オフセット値がVb3のオフセット手段を選択して、直流成分を減少させるようにオフセットする。これにより、直流成分が最大増幅電圧レベルに達しないようにし、交流成分の最大値を最大増幅電圧レベル以下にして交流成分が除去されることを防止する。また、差分(Vd−Vc)が小さい場合、すなわち、直流成分がグランドレベルに近い場合、オフセット値がVb1のオフセット手段を選択して、直流成分を増加させるようにオフセットする。これにより、直流成分がグランドレベルに達しないようにし、交流成分の最小値をグランドレベル以上にして交流成分が除去されることを防止する。
本発明にあっては、算出手段で算出された差分の平均値を算出する。検知手段は、算出された平均値、すなわち、差分出力(Vd−Vc)×αの平均値、第2センサの出力に基づいて、加熱ローラの表面温度を検知する。この場合、算出手段で算出された差分からオフセット分を除去することにより、差分出力を算出することができる。差分の平均値を算出することにより、差分に含まれる交流成分が相殺され、例えば、交流成分の一部が除去されることによって差分出力が大きくなることを防止できる。
本発明にあっては、プリンタ装置、デジタル複合機等の画像形成装置が備える定着装置に適用することができる。
本発明にあっては、加熱ローラからの輻射熱を検知する第1センサ及び第1センサの周辺温度を検知する第2センサと、第1センサ及び第2センサの出力の差分を算出する算出手段と、該算出手段で算出された差分の直流成分に重畳した交流成分の除去を防止すべく該直流成分をオフセットするオフセット手段と、該オフセット手段で直流成分をオフセットした差分に基づいて、加熱ローラの表面温度を検知する検知手段とを備えることにより、簡便な構成で加熱ローラの表面温度の検知誤差を減少させることができる。
本発明にあっては、第1センサの出力から所定値を減算する減算手段を備え、オフセット手段は、第2センサの出力及び減算手段で減算された出力の差分を算出して直流成分をオフセットすることにより、第2センサの出力にかかわらず、簡便な構成で加熱ローラの表面温度の検知誤差を減少させることができる。
本発明にあっては、第2センサの出力に所定値を加算する加算手段を備え、オフセット手段は、加算手段で加算された出力及び第1センサの出力の差分を算出して直流成分をオフセットすることにより、第1センサの出力にかかわらず、簡便な構成で加熱ローラの表面温度の検知誤差を減少させることができる。
本発明にあっては、算出手段で算出された差分の大小に応じて、オフセット手段でオフセットされる直流成分の増減を制御することにより、第1センサ及び第2センサの出力の差分にかかわらず、加熱ローラの表面温度の検知誤差を減少させることができる。
本発明にあっては、直流成分のオフセット値が異なる複数のオフセット手段と、算出手段で算出された差分の大小に応じて、オフセット手段の1つを選択する選択手段とを備え、選択されたオフセット手段で直流成分の増減を制御することにより、第1センサ及び第2センサの出力の差分にかかわらず、加熱ローラの表面温度の検知誤差を減少させることができる。
本発明にあっては、算出手段で算出された差分の平均値を算出し、算出された平均値に基づいて、加熱ローラの表面温度を検知することにより、加熱ローラの表面温度の検知誤差を減少させることができる。
本発明にあっては、プリンタ装置、デジタル複合機等の画像形成装置が備える定着装置に適用することができる。
実施の形態1
以下、本発明に係る定着装置及び該定着装置を備える画像形成装置の一例としてのデジタル複合機を実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は本発明に係るデジタル複合機の要部構成を示す模式図である。デジタル複合機は、電子写真方式にて画像形成を行い、転写装置20により、記録用紙、OHPフィルム等のシートS上に現像剤による画像(トナー像T)を転写する。トナー像Tが転写されたシートSは、所定の搬送路に沿って搬送され、シートSが定着装置40を通過する際に、加熱ローラ41a及び加圧ローラ41bの作用によりシートS上にトナー像Tが定着する。トナー像Tが定着したシートSは、所定の搬送路に沿ってさらに搬送され、装置外部へ排出される。
定着装置40は、加熱ローラ41a、加圧ローラ41b、ヒータ42、加熱ローラ41aの表面温度を検知する温度検知センサ10、加熱ローラ41aの表面温度を求める温度演算回路100などを備え、温度演算回路100は、ノイズ除去防止回路120等を備えている。温度演算回路100の演算結果は、CPU30へ出力される。
加熱ローラ41aは、中空円筒状の芯金とその外側に形成された離型層とにより構成される。芯金は鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅などの金属、又はこれらの合金により形成され、その直径は、例えば、40mm程度、肉厚は1.3mm程度を有する。離型層は、PTA(テトラフルオロエチレンとペルフルオトアルキルビニルエーテルとの共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の合成樹脂を芯金に塗布して形成される、離型層の厚みは、例えば、25μm程度である。
加熱ローラ41aの内部には、加熱手段であるヒータ42が設けられている。ヒータ42としては、例えば、棒状のハロゲンランプを用いることができる。ヒータ42は、外部から通電されることにより発光し、赤外線を輻射する。加熱ローラ41aの内周面(すなわち、芯金の内周面)は、ヒータ42から輻射される赤外線により加熱される。定着装置40は、ヒータ42のオン・オフを制御することにより加熱ローラ41aの表面温度を略一定に保つ。
加圧ローラ41bは、シートSの搬送路を挟んで加熱ローラ41aの反対側に加熱ローラ41aに当接して配置される。加圧ローラ41bは、中空円筒状の芯金、その外側に形成される耐熱弾性材層、さらにその外側に形成される離型層により構成される。芯金及び離型層は、加熱ローラ41aに用いられる芯金及び離型層と同様の材料により形成される。また、耐熱弾性材層には、シリコーンゴム等が使用され、例えば、芯金の外側に厚さ6mm程度に形成される。加圧ローラ41bには、加圧用バネ等の付勢部材(不図示)によって加熱ローラ41aの方向に所定の大きさの付勢力が加えられており、その結果、加熱ローラ41a及び加圧ローラ41bの圧接部に幅6mm程度の定着ニップが形成されている。
温度検知センサ10は、加熱ローラ41a表面からの輻射熱(赤外線)を検知する非接触方式の温度センサである。以下にその構造を説明する。
図2は温度検知センサ10の構成を示す断面図である。温度検知センサ10は、筐体の内部に赤外線検知用サーミスタ11、及び補償用サーミスタ12を備えたセンサである。温度検知センサ10の筐体は、保持部材101及び蓋部材102により構成される。保持部材101及び蓋部材102は、アルミニウム等の熱伝導率が大きく、熱放射率が小さい金属により形成される。
保持部材101には、加熱ローラ41aから輻射される赤外線を通過させるために開口部101aが設けられている。開口部101aから適宜の間隔を隔てて凹部101bが設けられている。蓋部材102は、赤外線吸収フィルム105を挟み込んだ状態で保持部材101に固着される。赤外線吸収フィルム105としては、例えば、黒体吸収膜を用いることができる。蓋部材102は、保持部材101の開口部101aと対向するように設けられた空間部102a、及び凹部101bと対向するように設けられた空間部102bを備えている。
赤外線検知用サーミスタ11は、赤外線吸収フィルム105と蓋部材102の空間部102aとにより仕切られる空間内において赤外線吸収フィルム105上に設置される。また、補償用サーミスタ12は、赤外線吸収フィルム105と蓋部材102の空間部102bとにより仕切られる空間内において赤外線吸収フィルム105上に設置される。
加熱ローラ41aからの赤外線が開口部101aを通じて赤外線吸収フィルム105に入射した場合、その赤外線は赤外線吸収フィルム105に吸収される。赤外線吸収フィルム105は、吸収した赤外線量に応じて昇温する。赤外線吸収フィルム105の温度は、赤外線吸収フィルム105上に設置された赤外線検知用サーミスタ11の両端電圧Vcとして検出される。ただし、赤外線検知用サーミスタ11は、周囲(例えば、保持部材101及び蓋部材102)の温度環境の影響を受けるため、加熱ローラ41aの表面温度を検知するためには、その影響を取り除く必要がある。そこで、加熱ローラ41aから輻射される赤外線の影響を直接的に受けない場所に補償用サーミスタ12を設置し、この補償用サーミスタ12の両端電圧Vdを検知することにより、赤外線検知用サーミスタ11の補償を行う。定着装置40では、温度検知センサ10の出力に基づいて、加熱ローラ41aの表面温度を検知することができる。
図3は温度検知センサ10の出力と加熱ローラ41aの表面温度との関係を示すグラフである。グラフの横軸は、補償用サーミスタ12の出力電圧である補償出力Vdを示し、縦軸は、補償出力Vdと赤外線検知用サーミスタ11の出力電圧であるセンサ出力Vcとの差分を5倍した値(以下、差分出力という)を示している。図に示すように、加熱ローラ41aの表面温度は、補償出力Vd及び差分出力(Vd−Vc)×5を検知することにより求めることができる。例えば、補償出力が1.6V、差分出力が0.5Vである場合、加熱ローラ41aの表面温度は160℃となる。同様に、補償出力が1.6Vの場合であって、差分出力が1.0Vであるときは、加熱ローラ41aの表面温度は200℃となり、差分出力が1.25Vであるときは、加熱ローラ41aの表面温度は230℃となり、差分出力が1.5Vであるときは、加熱ローラ41aの表面温度は250℃となる。したがって、補償出力Vd、差分出力(Vd−Vc)×5、及び表面温度の三者の関係を数値化した温度変換テーブルを保持しておき、補償出力Vd及び差分出力(Vd−Vc)×5を検知した場合に、該当する表面温度を温度変換テーブルから読み出すことにより、加熱ローラ41aの表面温度を求めることができる。
しかし、差分出力(Vd−Vc)×5を用いて表面温度を温度変換テーブルから読み出す場合、差分出力の誤差が加熱ローラ41aの表面温度の誤差となって現れる場合がある。
図4は従来の温度演算回路200の一例を示す回路図であり、図5は従来の差分出力波形の一例であり、図6は従来の加熱ローラ41aの表面温度の測定結果を示す説明図である。
図4に示すように、従来の温度演算回路200は、赤外線検知用サーミスタ11には抵抗204が直列に接続されており、赤外線検知用サーミスタ11の出力電圧(センサ出力Vc)がオペアンプによるボルテージフォロワ回路203により取り出される。同様に、補償用サーミスタ12には抵抗202が直列に接続されており、補償用サーミスタ12の出力電圧(補償出力Vd)がオペアンプによるボルテージフォロワ回路201により取り出される。抵抗202、204は、それぞれ直流電圧(電圧がV1)に接続されている。
赤外線検知用サーミスタ11によるセンサ出力Vc、及び補償用サーミスタ12による補償出力Vdは、オペアンプ214と抵抗211、212、213、215とからなる差動増幅回路210に入力される。抵抗211、213の抵抗値は、例えば、20kΩであり、抵抗212、215の抵抗値は、100kΩである。これにより、差動増幅回路210は、補償出力Vdとセンサ出力Vcとの差分値(Vd−Vc)を5倍に増幅して差分出力(Vd−Vc)×5を出力する。
図5に示すように、差分出力(Vd−Vc)×5の波形は、直流成分に交流成分(例えば、ノイズなどの高周波成分)が重畳した場合、直流成分がグランドレベル近傍にあるときには、交流成分のうちグランドレベル以下の成分が除去されてしまい、差分出力に現われない。このため、加熱ローラ41aの表面温度を算出すべく、差分出力の平均値を算出する際に、本来であれば直流成分に重畳した交流成分が平均値化により相殺されるところ、交流成分のグランドレベル以下の成分のみが除去されてしまうため(あるいは、交流成分のうちグランドレベル以上の成分のみが残留するため)、差分出力の平均値が本来の値よりも全体として増加することになる。図3で説明したように、補償出力Vdが一定であって、差分出力(Vd−Vc)×5が増加した場合には、表面温度が高くなる。
この結果、図6に示すように、加熱ローラ41aの表面温度は、定着装置40の始動時、すなわち、ウォームアップ時には大きく変動して誤差を発生するとともに、表面温度は200℃程度まで上昇し、実際の表面温度に比べて高くなり、誤差を生ずることになる。 本発明は、上述の問題を解決するものである。
図7は本発明の温度演算回路100の一例を示す回路図である。赤外線検知用サーミスタ11には抵抗104が直列に接続されており、赤外線検知用サーミスタ11の出力電圧(センサ出力Vc)がオペアンプによるボルテージフォロワ回路103により取り出される。同様に、補償用サーミスタ12には抵抗102が直列に接続されており、補償用サーミスタ12の出力電圧(補償出力Vd)がオペアンプによるボルテージフォロワ回路101により取り出される。抵抗102、104は、それぞれ直流電圧(電圧がV1)に接続されている。
ボルテージフォロワ回路103により取り出されたセンサ出力Vcとバイアス電圧Vbは、オペアンプ124、抵抗121、122、123、125などを備えるノイズ除去防止回路120(差動増幅回路)に入力される。バイアス電圧Vbは、例えば、0.2Vであり、抵抗121、122、123、125の抵抗値は、例えば、20kΩである。これにより、ノイズ除去防止回路120は、センサ出力Vcとバイアス電圧Vbとの差分電圧(Vc−Vb)を増幅せずに後段の差動増幅回路110へ出力する。
ボルテージフォロワ回路101により取り出された補償出力Vdとノイズ除去防止回路120により出力された差分電圧(Vc−Vb)は、オペアンプ114、抵抗111、112、113、115などを備える差動増幅回路110に入力される。抵抗111、113の抵抗値は、例えば、20kΩであり、抵抗112、115の抵抗値は、例えば、100kΩである。これにより、差動増幅回路110は、補償出力Vdとノイズ除去防止回路120により出力された差分電圧(Vc−Vb)との差分値(Vd−Vc+Vb)を5倍に増幅して差分出力(Vd−Vc+Vb)×5を出力する。なお、差動増幅回路110から出力された差分出力は、平均値化回路で平均値化された後、ADコンバータでアナログ値からデジタル値に変換され、変換後のデジタル値がCPU30へ出力される。
CPU30は、差動増幅回路110から出力された差分出力(Vd−Vc+Vb)×5(より具体的には、差分出力(Vd−Vc+Vb)×5に相当するデジタル値)から、バイアス電圧Vbの5倍の値を減算する(この場合、バイアス電圧Vbは、0.2Vであるから、1.0Vを減算する)ことにより、差分出力(Vd−Vc)×5を抽出し、抽出した差分出力(Vd−Vc)×5、及び補償出力Vdに基づいて、温度変換テーブルを参照して加熱ローラ41aの表面温度を求める。
上述のとおり、差分出力を算出する前段階で、センサ出力Vcに、バイアス電圧Vbである0.2Vを減算する。センサ出力Vcを0.2V減少させることにより、補償出力Vdとの差分を1.0V(0.2Vを5倍した値)だけ大きくすることが可能である。以上の処理により、従来は除去されていたノイズの負方向の成分が除去されずに差分出力として現われ、差分出力の平均値が増加することを防止できる。差分出力からバイアス電圧を5倍した値を減算することにより、差分出力(Vd−Vc)×5を抽出することができる。
図8は本発明の差分出力波形の一例であり、図9は本発明の加熱ローラ41aの表面温度の測定結果を示す説明図である。図8に示すように、従来の差分出力(Vd−Vc)×5に対して、本発明にあっては、差分出力は(Vd−Vc+Vb)×5となるため、差分出力がVb×5の値だけ大きくなり、直流成分をVb×5だけグランドレベルより大きくすることができる。従って、差分出力波形の直流成分に交流成分(例えば、ノイズなどの高周波成分)が重畳した場合であっても、交流成分の一部が除去されることを防止することができる。このため、加熱ローラ41aの表面温度を算出すべく、差分出力の平均値を求める際に、直流成分に重畳した交流成分が平均値化により相殺され、差分出力の平均値を精度よく求めることができ、加熱ローラ41aの表面温度を精度よく算出することができる。
この結果、図9に示すように、加熱ローラ41aの表面温度は、定着装置40の始動時、すなわち、ウォームアップ時には安定した値で推移し誤差が減少するとともに、表面温度は100℃程度まで上昇し、誤差を生ずることなく表面温度を算出することができる。
実施の形態2
実施の形態1では、赤外線検知用サーミスタ11のセンサ出力Vcからバイアス電圧Vbを減算して差分出力を算出する構成であったが、差分出力の算出は、これに限定されるものではなく、補償用サーミスタ12による補償出力Vdに対してバイアス電圧Vbを加算することもできる。
図10は実施の形態2の温度演算回路100の一例を示す回路図である。赤外線検知用サーミスタ11には抵抗104が直列に接続されており、赤外線検知用サーミスタ11の出力電圧(センサ出力Vc)がオペアンプによるボルテージフォロワ回路103により取り出される。同様に、補償用サーミスタ12には抵抗102が直列に接続されており、補償用サーミスタ12の出力電圧(補償出力Vd)がオペアンプによるボルテージフォロワ回路101により取り出される。抵抗102、104は、それぞれ直流電圧(電圧がV1)に接続されている。
ボルテージフォロワ回路101により取り出された補償出力Vdとバイアス電圧Vbは、オペアンプ134、抵抗131、132、133、135などを備えるノイズ除去防止回路130(差動増幅回路)に入力される。バイアス電圧Vbは、例えば、−0.2Vであり、抵抗131、132、133、135の抵抗値は、例えば、20kΩである。これにより、ノイズ除去防止回路130は、補償出力Vdとバイアス電圧Vbとの差分電圧(Vd−Vb)を増幅せずに後段の差動増幅回路110へ出力する。なお、この場合、バイアス電圧Vbは、−0.2Vであるため、補償出力Vdには、0.2Vが加算されたことになる。
ボルテージフォロワ回路103により取り出されたセンサ出力Vcとノイズ除去防止回路130により出力された差分電圧(Vd−Vb)は、オペアンプ114、抵抗111、112、113、115などを備える差動増幅回路110に入力される。抵抗111、113の抵抗値は、例えば、20kΩであり、抵抗112、115の抵抗値は、例えば、100kΩである。これにより、差動増幅回路110は、センサ出力Vcとノイズ除去防止回路130により出力された差分電圧(Vd−Vb)との差分値(Vd−Vb−Vc)を5倍に増幅して差分出力(Vd−Vb−Vc)×5を出力する。なお、この場合、バイアス電圧Vbは、−0.2Vであるから、差分出力は(Vd+0.2−Vc)×5となる。また、差動増幅回路110から出力された差分出力は、平均値化回路で平均値化された後、ADコンバータでアナログ値からデジタル値に変換され、変換後のデジタル値がCPU30へ出力される。
CPU30は、差動増幅回路110から出力された差分出力(Vd−Vb−Vc)×5(より具体的には、差分出力(Vd−Vb−Vc)×5に相当するデジタル値)から、バイアス電圧Vbの5倍の値を加算する(この場合、バイアス電圧Vbは、−0.2Vであるから、−1.0Vの加算、すなわち、1.0Vを減算する)ことにより、差分出力(Vd−Vc)×5を抽出し、抽出した差分出力(Vd−Vc)×5、及び補償出力Vdに基づいて、温度変換テーブルを参照して加熱ローラ41aの表面温度を求める。
実施の形態2では、差分出力を算出する前段階で、補償出力Vdに、0.2Vを加算する(バイアス電圧Vb(−0.2V)を減算することで、0.2Vを加算することになる)。補償出力Vdを0.2V増加させることにより、センサ出力Vcとの差分を1.0V(0.2Vを5倍した値)だけ大きくすることが可能である。以上の処理により、従来は除去されていたノイズの負方向の成分が除去されずに差分出力として現われ、差分出力の平均値が増加することを防止できる。差分出力からバイアス電圧を5倍した値を減算することにより、差分出力(Vd−Vc)×5を抽出することができる。
実施の形態3
実施の形態1、2では、所定のバイアス電圧Vbを加算又は減算することにより、差分出力(Vd−Vb−Vc)×5を求める構成であったが、これに限定されるものではなく、差分値(Vd−Vc)の大小に応じて、差分出力を増減し、差分値(Vd−Vc)の値にかかわらず、一層精度良く加熱ローラ41aの表面温度を求めることができる。
図11は実施の形態3のデジタル複合機の要部構成を示す模式図である。実施の形態1との相違点は、温度演算回路100の中にノイズ除去防止回路140、160を有する点、及び判定回路170を有する点である。ノイズ除去防止回路140、160の構成は、ノイズ除去防止回路120と同様である。また、判定回路170は、補償出力Vdとセンサ出力Vcとの差分値(Vd−Vc)の大小に応じて、所定の判定結果を温度演算回路100及びCPU30へ出力する。以下、実施の形態3の温度演算回路100及び判定回路170について説明する。
図12は温度演算回路100及び判定回路170の一例を示す回路図である。赤外線検知用サーミスタ11には抵抗104が直列に接続されており、赤外線検知用サーミスタ11の出力電圧(センサ出力Vc)がオペアンプによるボルテージフォロワ回路103により取り出される。同様に、補償用サーミスタ12には抵抗102が直列に接続されており、補償用サーミスタ12の出力電圧(補償出力Vd)がオペアンプによるボルテージフォロワ回路101により取り出される。抵抗102、104は、それぞれ直流電圧(電圧がV1)に接続されている。
ボルテージフォロワ回路103により取り出されたセンサ出力Vcとバイアス電圧Vb1は、オペアンプ124、抵抗121、122、123、125などを備えるノイズ除去防止回路120(差動増幅回路)に入力される。また、ボルテージフォロワ回路103により取り出されたセンサ出力Vcとバイアス電圧Vb2は、オペアンプ144、抵抗141、142、143、145などを備えるノイズ除去防止回路140に入力される。また、ボルテージフォロワ回路103により取り出されたセンサ出力Vcとバイアス電圧Vb3は、オペアンプ164、抵抗161、162、163、165などを備えるノイズ除去防止回路160に入力される。
ボルテージフォロワ回路103により取り出されたセンサ出力Vcとボルテージフォロワ回路101により取り出された補償出力Vdは、オペアンプ174、抵抗171、172、173、175、選択回路180などを備える判定回路170に入力される。例えば、抵抗171、172、173、175は、20kΩであり、これにより、差分値(Vd−Vc)は、増幅せれずに選択回路180へ出力される。
バイアス電圧Vb1、Vb2、Vb3それぞれは、例えば、0.2V、0V、−0.2Vであり、抵抗121、122、123、125、141、142、143、145、161、162、163、165の抵抗値は、例えば、20kΩである。これにより、ノイズ除去防止回路120は、センサ出力Vcとバイアス電圧Vb1との差分電圧(Vc−Vb1)を増幅せずに後段の差動増幅回路110へ出力する。また、ノイズ除去防止回路124は、センサ出力Vcとバイアス電圧Vb2との差分電圧(Vc−Vb2)を増幅せずに後段の差動増幅回路110へ出力する。また、ノイズ除去防止回路160は、センサ出力Vcとバイアス電圧Vb3との差分電圧(Vc−Vb3)を増幅せずに後段の差動増幅回路110へ出力する。
ボルテージフォロワ回路101により取り出された補償出力Vdとノイズ除去防止回路120により出力された差分電圧(Vc−Vb1)は、オペアンプ114、抵抗111、112、113、115を備える差動増幅回路110に入力される。また、ボルテージフォロワ回路101により取り出された補償出力Vdとノイズ除去防止回路140により出力された差分電圧(Vc−Vb2)は、オペアンプ134、抵抗131、132、133、135を備える差動増幅回路130に入力される。また、ボルテージフォロワ回路101により取り出された補償出力Vdとノイズ除去防止回路160により出力された差分電圧(Vc−Vb3)は、オペアンプ154、抵抗151、152、153、155を備える差動増幅回路150に入力される。
抵抗111、113、131、133、151、153の抵抗値は、例えば、20kΩであり、抵抗112、115、132、135、152、155の抵抗値は、例えば、100kΩである。これにより、差動増幅回路110は、補償出力Vdとノイズ除去防止回路120により出力された差分電圧(Vc−Vb1)との差分値(Vd−Vc+Vb1)を5倍に増幅して差分出力VO1:(Vd−Vc+Vb1)×5を切替回路105へ出力する。また、差動増幅回路130は、補償出力Vdとノイズ除去防止回路140により出力された差分電圧(Vc−Vb2)との差分値(Vd−Vc+Vb2)を5倍に増幅して差分出力VO2:(Vd−Vc+Vb2)×5を切替回路105へ出力する。また、差動増幅回路150は、補償出力Vdとノイズ除去防止回路160により出力された差分電圧(Vc−Vb3)との差分値(Vd−Vc+Vb3)を5倍に増幅して差分出力VO3:(Vd−Vc+Vb3)×5を切替回路105へ出力する。
図13は選択回路180の一例を示す回路図である。選択回路180は、入力された差分値(Vd−Vc)の範囲を3つの領域に分割し、差分値(Vd−Vc)の大小に応じて、3つの出力端子Da、Db、Dcのいずれか1つからハイレベル(例えば、「1」)の信号を出力する。例えば、差分値(Vd−Vc)の領域を、0.2V、及び0.4Vを境界値として3つの領域に分割する。このため、選択回路180は、境界値である0.2Vを生成するための抵抗181、182、境界値0.4Vを生成するための抵抗183、184、コンパレータ185、186、インバータ回路189、190、AND回路191などを備えている。
コンパレータ185の(+)端子には、0.2Vの電圧が入力され、(−)端子には、差分値(Vd−Vc)が入力される。コンパレータ185は、差分値(Vd−Vc)が0.2V以上である場合、ハイレベルの信号を出力する。これにより、インバータ回路189は、差分値(Vd−Vc)が0.2V未満である場合、出力端子Daを通じてハイレベルの信号を出力する。
コンパレータ186の(+)端子には、0.4Vの電圧が入力され、(−)端子には、差分値(Vd−Vc)が入力される。コンパレータ186は、差分値(Vd−Vc)が0.4V以上である場合、ハイレベルの信号を出力端子Dc及びインバータ回路190へ出力する。これにより、出力端子Dcからは、差分値(Vd−Vc)が0.4V以上である場合に、ハイレベルの信号が出力される。AND回路191には、コンパレータ185の出力及びインバータ回路190の出力が入力されるため、AND回路191は、差分値(Vd−Vc)が、0.2V以上0.4V未満である場合、出力端子Dbを通じてハイレベルの信号を出力する。なお、上述の境界値(0.2V、0.4V)は、一例であって、定着装置40、加熱ローラ41aなどの特性に応じて、適宜設定することができる。
図14は切替回路105の動作の一例を示す説明図である。切替回路105には、差動増幅回路110、130、150からの差分出力VO1、VO2、VO3、及び判定回路180からの出力Da、Db、Dcが入力される。図14(a)に示すように、Daがハイレベルである場合、差分出力VO1が平均値化回路(不図示)で平均値化された後、ADコンバータ(不図示)でアナログ値からデジタル値に変換され、変換後のデジタル値VoutがCPU30へ出力される。また、図14(b)に示すようにDbがハイレベルである場合、差分出力VO2が平均値化回路(不図示)で平均値化された後、ADコンバータ(不図示)でアナログ値からデジタル値に変換され、変換後のデジタル値VoutがCPU30へ出力される。また、図14(c)に示すようにDcがハイレベルである場合、差分出力VO3が平均値化回路(不図示)で平均値化された後、ADコンバータ(不図示)でアナログ値からデジタル値に変換され、変換後のデジタル値VoutがCPU30へ出力される。
CPU30は、切替回路105から出力された出力Vout(より具体的には、差分出力(Vd−Vc+Vb)×5に相当するデジタル値であり、Vbは、Vb1、Vb2、Vb3のいずれかである)に対して、判定回路170からの出力されたDa、Db、Dcに基づき、Daがハイレベルである場合、出力Voutからバイアス電圧Vb1の5倍の値を減算(この場合、バイアス電圧Vb1は、0.2Vであるから、1.0Vを減算する)する。また、CPU30は、Dbがハイレベルである場合、出力Voutからバイアス電圧Vb2の5倍の値を減算(この場合、バイアス電圧Vb2は、0Vであるから、結果として何もしない)する。また、CPU30は、Dcがハイレベルである場合、出力Voutからバイアス電圧Vb3の5倍の値を減算(この場合、バイアス電圧Vb3は、−0.2Vであるから、−1.0Vを減算する)する。これにより、CPU30は、差分出力(Vd−Vc)×5を抽出し、抽出した差分出力(Vd−Vc)×5及び補償出力Vdに基づいて、温度変換テーブルを参照して加熱ローラ41aの表面温度を求める。
上述のとおり、差分出力を算出する前段階で、センサ出力Vcに、バイアス電圧Vb1である0.2Vを減算、バイアス電圧Vb2である0Vを減算、あるいは、バイアス電圧Vb3である−0.2Vを減算する。センサ出力Vcを0.2V、0V、−0.2V減少させることにより、補償出力Vdとの差分を1.0V、0V、−1.0V(バイアス電圧を5倍した値)だけ大きくすることが可能である。以上の処理により、従来は除去されていたノイズの負方向の成分、又は正方向の成分が除去されずに差分出力として現われ、差分値(Vd−Vc)の大小にかかわらず、差分出力の平均値が増加することを防止できる。判定回路170からの出力Da、Db、Dcにより、温度変換テーブルに使用する差分出力を選択する事ができる。差分出力からバイアス電圧を5倍した値を減算することにより、差分出力(Vd−Vc)×5を抽出することができる。
図15は従来の差分出力波形の一例である。図15に示すように、差分出力(Vd−Vc)×5の波形は、直流成分に交流成分(例えば、ノイズなどの高周波成分)が重畳した場合、直流成分が最大増幅電圧レベル近傍にあるときには、交流成分のうち最大増幅電圧レベル以上の成分が除去されてしまい、差分出力に現われない。このため、加熱ローラ41aの表面温度を算出すべく、差分出力の平均値を算出する際に、本来であれば直流成分に重畳した交流成分が平均値化により相殺されるところ、交流成分の最大増幅電圧レベル以上の成分のみが除去されてしまうため(あるいは、交流成分のうち最大増幅電圧レベル以下の成分のみが残留するため)、差分出力の平均値が本来の値よりも全体として減少することになる。この場合、図3で説明したように、補償出力Vdが一定であって、差分出力(Vd−Vc)×5が減少した場合には、表面温度が実際の値よりも低くなる。この結果、図6で示したのと同様に、加熱ローラ41aの表面温度は、誤差を生ずることになる。実施の形態3の発明は、直流成分がグランドレベル近傍にある場合のみならず最大増幅電圧レベル近傍にある場合であっても、加熱ローラ41aの表面温度の検出誤差を減少させるものである。
図16は本発明の差分出力波形の一例である。実施の形態3の発明にあっては、差分値(Vd−Vc)が0.2V未満である場合、差分出力は(Vd−Vc+Vb1)×5となるため、差分出力がVb1×5の値(例えば、Vb1=0.2Vの場合には、1.0V)だけ大きくなり、直流成分をVb1×5だけグランドレベルより大きくすることができる。従って、差分出力波形の直流成分に交流成分(例えば、ノイズなどの高周波成分)が重畳した場合であっても、交流成分の一部が除去されることを防止することができる。このため、加熱ローラ41aの表面温度を算出すべく、差分出力の平均値を求める際に、直流成分に重畳した交流成分が平均値化により相殺され、差分出力の平均値を精度よく求めることができ、加熱ローラ41aの表面温度を精度よく算出することができる。これは、実施の形態1と同様であって、図8で示した例と同様である。
また、差分値(Vd−Vc)が0.2V以上0.4V未満である場合、差分出力は(Vd−Vc+Vb2)×5となるため、差分出力がVb2×5の値(例えば、Vb2=0Vの場合には、0V)だけ大きくなり、実質的には、直流成分のオフセットを行わない。従って、差分出力波形の直流成分に交流成分(例えば、ノイズなどの高周波成分)が重畳した場合であっても、交流成分の一部が除去されることを防止することができる。
また、差分値(Vd−Vc)が0.4V以上である場合、差分出力は(Vd−Vc+Vb3)×5となるため、図16に示すように、差分出力がVb3×5の値(例えば、Vb3=−0.2Vの場合には、−1.0V)だけ大きくなり、直流成分を−1.0Vだけ大きくする(すなわち、直流成分を1.0V減少させる)ことができる。従って、差分出力波形の直流成分に交流成分(例えば、ノイズなどの高周波成分)が重畳した場合であっても、交流成分の一部(例えば、最大増幅電圧レベル以上の成分)が除去されることを防止することができる。このため、加熱ローラ41aの表面温度を算出すべく、差分出力の平均値を求める際に、直流成分に重畳した交流成分が平均値化により相殺され、差分出力の平均値を精度よく求めることができ、加熱ローラ41aの表面温度を精度よく算出することができる。この結果、実施の形態1と同様、図9に示すように、加熱ローラ41aの表面温度は、定着装置40の始動時、すなわち、ウォームアップ時には安定した値で推移し誤差が減少するとともに、表面温度は100℃程度まで上昇し、誤差を生ずることなく表面温度を算出することができる。
図17は差分値(Vd−Vc)に重畳した交流成分の除去防止の例を示す説明図である。図17では、一例として、3.3Vを最大増幅電圧レベルとしている。図17(a)に示すように、差分値(Vd−Vc)の直流成分が大きい場合(例えば、最大増幅電圧レベル付近)、直流成分のバイアス値を減少させることにより、直流成分に重畳した交流成分(正方向)が除去されないようにする。また、図17(b)に示すように、差分値(Vd−Vc)の直流成分がグランドレベルと最大増幅電圧レベルとの中間レベル付近にある場合、直流成分にバイアスを印加せずに、そのままの直流成分を出力する。また、図17(c)に示すように、差分値(Vd−Vc)の直流成分が小さい場合(例えば、グランドレベル付近)、直流成分のバイアス値を増加させることにより、直流成分に重畳した交流成分(負方向)が除去されないようにする。
以上説明したように、本発明にあっては、簡便な構成により加熱ローラの表面温度の検知誤差を従来よりも減少させることができる。また、補償用サーミスタの出力が増幅限界値付近にあって、出力値を増加できないような場合、すなわち、補償出力Vdにバイアス値を加えることができない場合であっても、センサ出力Vcにバイアスをかけることができる。また、赤外線検知用サーミスタの出力がグランドレベル付近にあって、出力値を減少できないような場合、すなわち、センサ出力Vcにバイアス値を加えることができない場合であっても、補償出力Vdにバイアスをかけることができ、精度良く加熱ローラの表面温度を算出することができる。さらに、差分値(Vd−Vc)の値に基づいて、使用するバイアス値を選択できるため、差分値(Vd−Vc)が最大増幅電圧レベル付近、あるいはグランドレベル付近である場合であっても、精度良く加熱ローラの表面温度を算出することができる。また、バイアスをかける必要のない場合に対しても、適用する事ができる。
上述の実施の形態1〜3において示した回路構成及び回路定数は、一例であって、これに限定されるものではない。例えば、一段の増幅回路に代えて多段の増幅回路を用いても良い。
上述の実施の形態1〜3では、CPU30が定着装置40と分離された構成であるが、定着装置40にCPU30を含める構成とすることもできる。
上述の実施の形態1〜3では、温度演算回路をボルテージフォロワ回路、差動増幅回路などのハードウエアで構成するものであったが、これに限定されるものではなく、温度演算回路の機能を温度演算処理プログラム等で構成し、CPUで実行することにより実現することもできる。
上述の実施の形態3では、ノイズ除去防止回路120、140、160、及び差動増幅回路110、130、150を備え、差分値(Vd−Vc)を3つの電圧領域に分ける構成であったが、差分値の電圧領域の分割数は3つに限定されるものではなく、2つ、4つ以上であってもよい。