以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
収納式多目的シート1は、図1及び図2に示されるように、略矩形形状のシート本体11と、シート本体11を支持するベース12とを備える。図1は本実施形態に係る収納式多目的シートを示す斜視図であり、図2は本実施形態に係る収納式多目的シート1を示す側面図である。図1及び図2では、シート本体11は、収納位置にある。
この収納式多目的シート1は、身障者用トイレブース、多目的トイレブース又は介護施設の脱衣所等に設置される収納式多目的シートであり、特に車椅子使用者の利用を意図したものである。本実施形態では、シート本体11を倒す及び持ち上げるために必要な力(シート本体11の操作力)は、車椅子利用者がシート本体11を無理なく容易に操作することが可能な値(例えば、35N程度)に設定されている。
ベース12は、水平方向の回転軸13周りにシート本体11を揺動自在に支持している。シート本体11は、回転軸13に平行な長手方向に伸び且つ回転軸13に垂直な短手方向で互いに対向する第1側部11a及び第2側部11bを有している。第1側部11aは、揺動支点側となり、ベース12に対して、回転軸13周りに揺動自在に軸支されている。第2側部11bは、自由端側となる。
収納式多目的シート1は、通常、壁面Wに沿って設置される。つまり、ベース12を壁面Wに沿って設置し、収納時の収納位置で、シート本体11の戴置面11cが壁面Wに近接し且つ対面するように設置される。
シート本体11の背面11dには脚14が設けられている。そして、使用時の使用位置では、脚14の先端が床面に接地してシート本体11を支え、収納位置のときは、シート本体11と同様に、脚14はシート本体11と並設される状態で収納されるようシート本体11側の基端を中心に揺動するように構成されている。
シート本体11の第2側部11bには、第2側部11bに沿うように手すり16が設けられている。シート本体11の第1側部11aには、第1側部11aに沿うように手すり15が設けられている。手すり15は、回転軸13の周りに揺動自在に軸支されている。
図2に示されるように、ベース12の上に設けられた支持部21に対して、回転軸13を介してシート本体11が軸支されている。回転軸13を介して、さらに、手すり15を支えるブラケット22も支持されている。
シート本体11の背面11dの本体支持フレーム23には、脚14の基端側が回転軸24により軸支されている。脚作動用リンク25は、その一端を回転軸13の隣で、支持部21に設けられたピン26により軸支され、他端が脚14に回転軸27で軸支されている。このとき、本体支持フレーム23、支持部21、脚作動用リンク25、及び脚14(回転軸13,27,24及びピン26)は、実質的に第1の4リンク機構を形成する。この第1の4リンク機構により、脚14はシート本体11の揺動動作に連動して揺動する。
回転軸27には、手すり作動用リンク31の一端も軸支されている。手すり作動用リンク31の他端は、規制部材32に回転軸33で軸支されている。規制部材32は、手すり回転軸34で本体支持フレーム23に軸支されている。これにより、本体支持フレーム23、脚14、手すり作動用リンク31及び規制部材32(回転軸24,27,33,34)により、実質的に第2の4リンク機構が形成されている。この第2の4リンク機構により、後述するように、ロック解除機構の動作及び規制部材32による手すり16の揺動規制が、シート本体11及び脚14の揺動動作に連動する。
手すり16を支えるブラケット35は、手すり回転軸34により、本体支持フレーム23に軸支されている。後述するように、手すり16は、ロック機構によりその位置が固定されるが、そのロックをユーザが解除するためのロック解除レバー36が回転軸13によって軸支されている。
ここで、図2に示すように、ベース12を壁面Wに密着または隣接するようにして設置したとする。手すり15に着目すると、図2に示す収納位置では、手すり15は壁面Wとシート本体11との間に収納される。手すり15は、同図に示す側面視において、屈曲部15aを有する。屈曲部15aよりも先端側の手すり15は、シート本体11と実質的に平行になっている。これにより、シート本体11と壁面Wとの間の距離を小さくしても、壁面Wにあたらないように手すり15を格納することができる。手すり15は、ブラケット22を介してシート本体の回転軸13周りに揺動自在に取り付けられている。シート本体11の揺動動作に連動して、手すり15も揺動する。
シート本体11の背面11dに設けられた収納部18内には、図3に示されるように、丸パイプ43(トーションバー46)、バランスバネ機構51、錘57、及びダンパー61が収納されている。収納部18には、この収納部18を覆うカバー部材19が着脱自在に設けられている。バランスバネ機構51、錘57、及びダンパー61等の可動機構は、カバー部材19に覆われることとなる。図3は本実施形態に係る収納式多目的シート1を示す正面図であり、シート本体11が収納位置にある。図3では、説明のため、カバー部材19は、その一部が切り欠かれた状態で示されている。
丸パイプ43は、図4に示されるように、シート本体11の第1側部11aに設けられている。丸パイプ43は、本体支持フレーム23にブラケットを介して固定されている。丸パイプ43の両端43a、43bは開放されている。図4は、本実施形態に係る収納式多目的シートにおける、シート本体11のベース12への支持構造を示す分解斜視図である。
ベース12の頂部には、軸受金具44が、ネジ、ボルト等を用いて着脱自在に取付けられている。軸受金具44は、基板44aと、基板44aに固定され基板44aから起立する一対の支持腕44b,44cと、一対の軸受44d,44eと、を有している。軸受44dは半部分44d',44d"を有している。半部分44d',44d"は、支持腕44bを挟持した状態で、複数のネジ44fにより一体に締結されて支持腕44bに固定されている。軸受け44eは半部分44e',44e"を有している。半部分44e',44e"は、支持腕44cを挟持した状態で、複数のネジ44gにより一体に締結されて支持腕14cに固定されている。
丸パイプ43の一端43aが軸受44dの半部分44d'に嵌入され、他端43bが軸受44eの半部分44e'に嵌入されることにより、丸パイプ43の中心軸が回転軸13と略同軸上に位置し、シート本体11は、ベース12によって回転軸13周りに揺動自在に支持されることとなる。
丸パイプ43内には、シート本体11の収納位置を保持するように、シート本体11を起立させる方向に付勢するトーションバー46(第1バネ)が配置されている。トーションバー46は、積層された複数枚の板バネからなり、丸パイプ43内に挿入されている。トーションバー46の一端46aは、仕切板に形成された矩形穴43cに挿通されている。トーションバー46の他端46bは、軸受44eの半部分44e"に形成された矩形穴44hに挿通されている。半部分44e"に形成されたネジ44gの挿通穴44iは、円弧状の長穴であり、ネジ44gを緩めると半部分44e"を回転軸13周りに回動させることができる。ネジ44gを緩め、半部分44e"を回転軸13回りに回動させてトーションバー46を回転軸13回りに捩じり、ネジ44gを締め付けて、軸受け44eを支持腕44cに固定している。このように、トーションバー46には与圧が与えられている。
トーションバー46は、シート本体11の戴置面11cが略水平に延在する使用位置から、シート本体11の戴置面11cが略鉛直に延在する収納位置へ向けて、シート本体11を付勢する付勢力をシート本体11に付与している。トーションバー46は、収納位置から使用位置の角度範囲において、線形特性を有している。トーションバー46よるシート本体11への付勢力は、シート本体11が収納位置では、上述した与圧の反力として発生する。そして、トーションバー46よるシート本体11への付勢力は、シート本体11が収納位置から使用位置に傾くに従って徐々に増加する。トーションバー46は、シート本体11に対して、その付勢力に応じた回転軸13周りの上昇モーメントを発生する。
バランスバネ機構51は、図3に示されるように、シート本体11とベース12との間に設けられている。バランスバネ機構51は、外筒52、内筒53、及び圧縮バネ(第2バネ)54を有している。バランスバネ機構51は、丸パイプ43の一端43a側に配置されている。
外筒52は、一端側が開口し且つ他端側が閉じた有底状の部材である。外筒52は、他端側が本体支持フレーム23に固定されたブラケット55に対して、回転軸13に平行な軸周りに揺動自在に軸支されている。内筒53は、一端側が開口し且つ他端側が閉じた有底状の部材であり、外径が外筒52の内径よりも小さく設定されている。内筒53は、一端側が外筒52の一端側の開口から挿入されており、外筒52に対してそれぞれの中心軸方向に相対移動する。内筒53は、他端側がベース12に固定されたブラケット56に対して、回転軸13に平行な軸周りに揺動自在に軸支されている。圧縮バネ54は、実質的に自由長の状態で圧縮力が付与されていない状態で、外筒52及び内筒53内に配置されている。圧縮バネ54の一端は外筒52の底面に接触し、圧縮バネ54の他端は内筒53の底面に接触している。
バランスバネ機構51(圧縮バネ54)は、シート本体11の傾き角度に応じて、鉛直上向きの力をシート本体11に付与する。ここで、内筒53の揺動中心軸53aは、図5に示されるように、鉛直方向から見て回転軸13からシート本体11の傾倒方向に所定距離離れ、回転軸13方向から見て回転軸13を含む水平面より鉛直方向で下方に所定距離離れて位置している。図5は、バランスバネ機構51の動作を説明するための模式図である。図5において、線T1は回転軸13を中心としたときの外筒52の揺動中心軸52aの移動軌跡を示し、線T2は内筒53の揺動中心軸53aを中心としたときの外筒52の揺動中心軸52aの移動軌跡を示す。
シート本体11が収納位置にあるときには、外筒52の揺動中心軸52aと内筒53の揺動中心軸53aとを結ぶ方向(圧縮バネ54の中心軸方向)が、シート本体11と略平行となるように、略鉛直方向とされる。このとき、外筒52の揺動中心軸52aには、シート本体11を収納位置に保持するバネ反力が作用しないように構成されている。これは、バランスバネ機構51によるバネ反力がシート本体11の落下モーメント特性に対して沿いが良くなるように工夫したものであり、収納位置ではシート本体11を保持するために起立保持力を付与する必要があるが、この起立保持力分がそもそも落下モーメントと上昇モーメントの偏差量となるため、この保持力を速やかに減少させなければ、速やかに落下モーメントの特性に上昇モーメントの特性を沿わせることができない。起立保持力をバランスバネ機構51が発生しないようにすることで起立保持力を速やかに減少させることができるものである。また落下モーメントが発生していない時は、バランスバネ機構もバネ反力を発生しないようにすることで、その特性曲線も類似したものとなり落下モーメントに上昇モーメント特性を沿わせることも容易となる。
バランスバネ機構51は、上述したようにシート本体11に対して設けられていることから、シート本体11の揺動に伴って揺動する。このとき、シート本体11の揺動中心軸となる回転軸13と、バランスバネ機構51の内筒53の揺動中心軸53aとがずれていることから、シート本体11の揺動に伴って、外筒52の揺動中心軸52aと内筒53の揺動中心軸53aとの間隔が変化する。シート本体11が収納位置から使用位置へ傾倒していくと、外筒52の揺動中心軸52aと内筒53の揺動中心軸53aとの間隔は小さくなり、圧縮バネ54が圧縮されていく。
圧縮バネ54が圧縮されると、この圧縮に応じて、外筒52の揺動中心軸52aと内筒53の揺動中心軸53aとを結ぶ方向にバネ反力が生じる。このバネ反力は、図6の特性線F1に示されるように、シート本体11が収納位置から使用位置に傾くにしたがって、徐々に増加する。本実施形態では、シート本体11が使用位置にあるときに、バネ反力が最大となる。バネ反力は、外筒52の揺動中心軸52aに作用し、その鉛直方向成分がシート本体11を起立させる方向に付勢する力となる。
バネ反力の鉛直方向成分は、図6の特性線F2に示されるように、外筒52の揺動中心軸52aと内筒53の揺動中心軸53aとを結ぶ直線の傾きが所定角度に到達するまでは、シート本体11の傾きが大きくなるに従って大きく増加し、外筒52の揺動中心軸52aと内筒53の揺動中心軸53aとを結ぶ直線の傾きが所定角度を超えると、シート本体11の傾きが大きくなるに従って増加量は小さくなるように構成されている。本実施形態では、内筒53の揺動中心軸53aが回転軸13を含む水平面より下方に位置しているので、バネ反力の鉛直方向成分が0になることはない。これにより、バランスバネ機構51は、シート本体11の収納位置から使用位置への傾倒を抑制するようにシート本体11を起立させる方向に付勢し且つシート本体11の使用位置ではその付勢力が低下するように非線形特性を有することとなる。バランスバネ機構51(圧縮バネ54)は、シート本体11に対して、その付勢力に応じた回転軸13周りの上昇モーメントを発生する。なお、回転軸13を中心とした外筒52の揺動中心軸52aの軌跡の接線方向に向く力(バランスバネ機構51によりシート本体11を実際に持ち上げようとする力)は、バランスバネ機構51が垂直の状態から水平の状態に傾斜していくため図6の特性線F3に示すように、収納位置で最も効率よく付与しやすく、使用位置では殆ど持上げようとする力は作用できないようになっている。
錘57は、図7に示されるように、シート本体11の本体支持フレーム23における第2側部11b側に、本体支持フレーム23に対して着脱自在に設けられている。錘57には、本体支持フレーム23に固定されたボルト58(錘装着部)が挿通する孔が形成されており、錘57は、ボルト58に挿通した後にナット59を締結することによりボルト58(本体支持フレーム23)に取り付けられる。図7は、錘57近傍を示す正面図であり、破断線内はカバー部材19を取り外した状態で図示されており、説明の都合上、手すり16の記載を省略している。
錘57はシート本体11の自由端側に設けられることから、錘57の質量(例えば、錘57の個数等)を適宜選択することにより、シート本体11の回転軸13周りの落下モーメントが変わることとなる。すなわち、錘57によりシート本体11の落下モーメントが調整される。錘57の質量を大きくすると、シート本体11の落下モーメントは大きくなり、錘57の質量を小さくすると、シート本体11の落下モーメントは小さくなる。シート本体11やトーションバー46の部品ばらつきが、落下モーメントを大きくする方向でも小さくなる方向でも調整が可能となるように、錘57はベースとして二つ取付けるように構成され、この状態から錘57を取除いたり、更に追加するように構成されている。
ダンパー61は、図3に示されるように、シリンダ式(例えば、エアシリンダ式)のダンパーであって、シート本体11とベース12との間に設けられている。ダンパー61は、シリンダ62と、ダンパーロッド63と、を有している。ダンパー61は、丸パイプ43の他端43b側に配置されている。シリンダ62は、本体支持フレーム23に固定されたブラケット64に対して、回転軸13に平行な軸周りに揺動自在に軸支されている。ダンパーロッド63は、ベース12に固定されたブラケット65に対して、回転軸13に平行な軸周りに揺動自在に軸支されている。
ダンパー61は、シート本体11の傾倒速度を抑制するように作用するが、その目的は主に収納位置から使用位置への大きな傾倒速度を低下させることにあり、収納位置から使用位置への速い傾倒動作に対して反力(抵抗力)を発生させることにある。言い換えると通常の操作に対してはダンパー61が作用するとシート本体11を倒すことも起こすことも重くなるため大きく作用しないようにその特性が設定されている。ここで、ダンパーロッド63の揺動中心軸63aは、図8に示されるように、鉛直方向から見て回転軸13からシート本体11の傾倒方向に所定距離離れ、回転軸13方向から見て回転軸13を含む水平面より鉛直方向で下方に所定距離離れて位置している。図8は、ダンパー61の動作を説明するための模式図である。図8において、線T3は回転軸13を中心としたときのシリンダ62の揺動中心軸62aの移動軌跡を示し、線T4はダンパーロッド63の揺動中心軸63aを中心としたときのシリンダ62の揺動中心軸62aの移動軌跡を示す。
シート本体11が収納位置にあるときには、シリンダ62の揺動中心軸62aとダンパーロッド63の揺動中心軸63aとを結ぶ方向(ダンパー61の中心軸方向)が、シート本体11と略平行となるように、略鉛直方向とされる。ダンパー61は、上述したようにシート本体11に対して設けられていることから、シート本体11の揺動に伴って揺動する。このとき、シート本体11の揺動中心軸となる回転軸13と、ダンパーロッド63の揺動中心軸63aとがずれていることから、シート本体11が収納位置から使用位置へ向けて傾倒していくと、シリンダ62の揺動中心軸62aとダンパーロッド63の揺動中心軸63aとの間隔は小さくなり、ダンパーロッド63がシリンダ内に押し込まれるよう変位する。このダンパーロッド63の単位角度あたりの変位量は、収納位置で最大となり、その後徐々に小さくなり、使用位置で最小となる。このため、ダンパー61の反力は、図9に示されるように、収納位置から使用位置への傾倒に対して下に凸の反比例的に変化し、収納位置で最大となり、使用位置で最小となる。
ダンパー61は、収納位置近傍では、発生する反力が大きいことから、ダンパー61による減衰機能がしっかり効く状況であることから、シート本体11が収納状態から傾倒を開始する状況でダンパー61が大きく寄与できるため、大きな傾倒速度によってシート本体11が傾倒してしまうという状況を回避できシート本体11の揺動を安定させることができる。その後、使用位置に近付くに従って、発生する反力が小さくなって、使用位置方向への傾倒に対して抵抗となることが抑制されて、シート本体11がスムーズに傾倒する。使用位置近傍では、発生する反力が更に小さくなることから、使用位置にある状態から収納位置へシート本体11を持上げることは苦労を伴う作業となるが、この時はダンパー61が抵抗力を発生し難い特性になっていることから傾倒過大に操作力を付与する必要がなくなるため、好適な操作性を提供できるように工夫したものである。
図10はダンパー61に変わる第2実施形態を表すものであり、ベース12に、リトラクタ機構71を設けている。リトラクタ機構71は、自動車等に用いられるシートベルトリトラクタ機構(例えば、特開2005−320002号公報を参照)と同様な構成を有しており、その機能も、シートベルトと同様であって、ウエビング90が通常の状態では発生しないような速さで引き出された時にウエビング90の引き出しをロックし、その状態で停止させるように機能させるものである。その他の具体的な構成についてはシートベルトと同じなので詳細な説明は可能な限り省略する。リトラクタ機構71から伸びるウエビング90は、図10に示されるように、ウエビング90の引き出し速度を拡大するためにシート本体11の傾倒ともに可動する脚14の先端部に接続している。図10は、リトラクタ機構71の構成を説明するための側面図である。
リトラクタ機構71は、図11に示されるように、ベース12に固定される金属製のハウジング72、ハウジング72に回転自在に支持された巻取軸73、巻取軸73を常時巻取り方向へ回動付勢する回動付勢機構(図示略)、ウエビング90の急激な引き出しに感応して巻取軸73の回転をロックする緊急ロック機構(図示略)、ハウジング72内において巻取軸73に外嵌装着されウエビング90を巻取る合成樹脂製の巻取りドラム75、緊急ロック機構のロック動作に連動して巻取りドラム75から延びるウエビング90の途中部をクランプするクランプ機構78等で構成されている。図11は、リトラクタ機構71の動作説明図である。
クランプ機構78は、緊急ロック機構のロック動作に連動してウエビング90の途中部をクランプする機構である。クランプ機構78は、ハウジング72の1対の側壁72aにそれらの間において一端部が枢支されたアーム80と、アーム80の他端部に回動自在に連結された可動クランプ部材81と、ハウジング72の後上壁部72bの前面に沿って上下動自在でクランプ部材81と協働してウエビング90を挟持可能なベースクランプ部材82と、緊急ロック機構に作動的に連結され且つその上端部がアーム80の他端部に回動自在に連結された作動部材(不図示)と、を有している。
アーム80の一端部には枢支軸80aが挿通され、その枢支軸80aの端部がアーム80の端部から突出し、ハウジング72の1対の側壁72aに回動自在に枢支されている。アーム80の他端部には右方へ突出する軸部が固着され、この軸部が緊急ロック機構の作動部材と連結されている。
ベースクランプ部材82は第1ガイド部材87に固着されており、この第1ガイド部材87に、可動クランプ部材81がベースクランプ部材82に対して接近・離隔させ方向へ移動自在にガイド支持されている。第1ガイド部材87は、ハウジング72の後上壁部72bの前面に固着された第2ガイド部材88に、上下に移動自在にガイド支持されている。
このように構成された第2実施形態にあっては、シート本体11に、体や車椅子、カバンなどの何らかの物が引っ掛かるなどの何らかの外的要因により通常操作以外の外力がシート本体11に作用したような場合、シート本体11は、その外力によって使用位置方向へ通常より速い動きで傾倒が行われることになる。しかし、この第2実施形態では、このような外的要因による速いシートの傾倒動作に対してリトラクタ機構71が有効に機能しこれを抑制することができるものである。具体的には、シート本体11が速く傾倒するような状況が発生した場合にはウエビング90が急激に引き出される。ウエビング90の急激な引き出しに感応して緊急ロック機構が作動すると、緊急ロック機構の作動部材が上方へ移動して、アーム80が可動クランプ部材81とともに枢支軸80a回りに右側面視にて反時計回りに揺動し、可動クランプ部材81とベースクランプ部材82とでウエビング90がクランプされる。これにより、シート本体11の傾倒がロックされることとなる。リトラクタ機構71は、シート本体11の、収納位置から使用位置への傾倒速度の変化量(傾倒の加速度)が所定の値を超えた場合、シート本体11の傾倒を規制する。なお、本実施形態ではダンパー61とリトラクタ機構71とを排他的に採用するものとして説明しているが、両方とも取り付けるものであっても良いことは言うまでも無く、その場合は一層外的要因に対するシート本体11の過剰な動きを好適に抑制できるものである。
ここで、図12及び図13を参照して、シート本体11の落下モーメント及び上昇モーメントの関係を説明する。図12は、シート本体11の収納位置からの角度に対するシート本体11の落下モーメント及び上昇モーメントの変化を示す。
シート本体11の落下モーメント(特性線M1)は、上述したように、主としてシート本体11の質量及び錘57の質量に応じて回転軸13周りに発生し、収納位置が鉛直線に沿った位置の場合は0である。しかしながら、図12に示す例の場合は、収納位置でより安全にシート本体11を起立させるために壁側に少し倒れた位置を収納位置としているため、マイナスの値を示している。シート本体11の落下モーメントは、収納位置からの角度が大きくなる、すなわち使用位置へ向かうに従い、徐々に大きくなるように変化し、使用位置で最大となる。
トーションバー46により回転軸13周りに発生するシート本体11の上昇モーメント(特性線M2)は、収納位置では、トーションバー46に与えられた与圧の反力に応じた初期値を有する。トーションバー46による上昇モーメントは、収納位置からの角度に対して線形に変化し、使用位置で最大となる。
バランスバネ機構51により回転軸13周りに発生するシート本体11の上昇モーメント(特性線M3)は、収納位置では略0である。バランスバネ機構51による上昇モーメントは、図6の特性線F2に示した通り、シート本体11を起立させる方向に付勢する力は、上記所定角度に到達するまでは収納位置からの角度に対して大きく増加するような特性として構成され、上記所定角度を超えると増加量は小さくなるような上に凸の非線形特性として構成されている。
シート本体11の上昇モーメント(特性線M4)は、トーションバー46による上昇モーメントとバランスバネ機構51による上昇モーメントとの和となる。収納位置では、シート本体11の上昇モーメントが落下モーメントよりも大きい。これにより、シート本体11は、その収納位置で確実に起立した安定姿勢を保つ。ここで、本件発明では、体が不自由な方でも容易に操作ができて、かつシート本体11が安定して起立状態が保持できるように、操作力の最大値である35Nの保持力が発生するように正確に調整されているものである。よって、利用者がシート本体11を倒そうとしてシート本体11を操作し、利用者の操作力により発生するシート本体11の使用位置に向かうモーメント(以下、操作モーメントと称する)がシート本体11に作用している上昇モーメントに打ち勝つとシート本体11は収納位置から傾倒する。操作モーメントとして35Nをシート本体11に作用させると上昇モーメントと落下モーメントとの差よりも操作モーメントの方が大きくなるため上昇モーメントに打ち勝ってシート本体11が傾倒を開始する。
図13に示された収納位置(0°)から第1角度(略20°)までの角度範囲A3は、シート本体11の上昇モーメントが落下モーメントよりも大きい。このため、利用者がシート本体11から手を離す等してシート本体11への操作力が弱まり、操作モーメントがシート本体11の上昇モーメントと落下モーメントとの差よりも小さくなると、シート本体11は収納位置に復帰するように正確に調整されている。これによって、体が不自由な方でも楽にシート本体11を収納できるものである。
続く第1角度から第2角度(略70°)のA2の期間は、シート本体11の落下モーメントの方が上昇モーメントより大きくなっている。しかし、その偏差量は非常に小さな範囲で維持されるように調整されているものであって、その偏差量もシート本体11の回転軸13などに作用する摩擦力の範囲内となるように調整している。言い換えれば落下モーメントM4に上昇モーメントM1が近似して沿うような特性となるように調整しているものである。上記角度範囲A2におけるシート本体11の上昇モーメントと落下モーメントとの差は、利用者が操作力を多少弱めた場合でも、シート本体11が急激に収納位置又は使用位置に傾倒しないように設定されている。このため、利用者がシート本体11を倒している途中で手を離す等しても、シート本体11が急激に収納位置又は使用位置に傾倒することはない。また、シート本体11の上昇モーメントが落下モーメントよりも大きいことから、利用者がシート本体11を使用位置から収納位置に持ち上げる際に、利用者の操作をアシストすることとなる。
シート本体11が図13に示された第2角度(略70°)となると、シート本体11の上昇モーメントと落下モーメントとが均衡し、上記第2角度から使用位置(90°)までの角度範囲A3では、シート本体11の落下モーメントが上昇モーメントよりも大きい。このため、利用者がシート本体11から手を離す等してシート本体11への操作力が弱まり、操作モーメントがシート本体11の上昇モーメントと落下モーメントとの差よりも小さくなると、シート本体11は使用位置に復帰する。そして、シート本体11は、その使用位置で確実に起立した着座姿勢を保つ。
上述した実施形態におけるバランスバネ機構51は、その内部に収容された圧縮バネ54に所定の圧縮力が予め付与された状態で、外筒52及び内筒53内に配置されている。このバランスバネ機構51では、圧縮バネ54の一端は外筒52の底面に接触し、圧縮バネ54の他端は内筒53の底面に接触している。ところで、バランスバネ機構51はこのような形態以外にも好ましい形態として次のような形態を取り得る。
バランスバネ機構51の第1の変形例を図14に示す。図14に示すバランスバネ機構511は、圧縮バネ93が外筒91及び内筒92内に配置されているものの、圧縮力は予め付与されていない状態で配置されている。圧縮バネ93の一端は外筒91の底面には接触しておらず、圧縮バネ93の他端のみが内筒92の底面に接触している。図14に示した状態は、シート本体11が収納位置に位置している場合のバランスバネ機構511の状態を示している。シート本体11が使用位置へ傾倒し始めると、外筒91と内筒92とが近接し、やがて外筒91の底面が圧縮バネ93に当接し、圧縮バネ93が圧縮され始める。従って、このバランスバネ機構511では、シート本体11が収納位置から使用位置へと傾倒する間において収納位置近傍の約30度ぐらいまでは圧縮バネ93が作用しない不感帯が設けられているものである。
バランスバネ機構511を用いた場合の、シート本体11の落下モーメント及び上昇モーメントの関係を、図15を参照しながら説明する。図15は、シート本体11の収納位置からの角度に対するシート本体11の落下モーメント及び上昇モーメントの変化を示す。
シート本体11の落下モーメント(特性線M101)は、上述したように、主としてシート本体11の質量及び錘57の質量に応じて回転軸13周りに発生し、収納位置が鉛直線に沿った位置の場合は0である。しかしながら、図15に示す例の場合は、収納位置でより安全にシート本体11を起立させるために壁側に少し倒れた位置を収納位置としているため、マイナスの値を示している。シート本体11の落下モーメントは、収納位置からの角度が大きくなる、すなわち使用位置へ向かうに従い、徐々に大きくなるように変化し、使用位置で最大となる。
トーションバー46により回転軸13周りに発生するシート本体11の上昇モーメント(特性線M102)は、収納位置では、トーションバー46に与えられた与圧の反力に応じた初期値を有する。トーションバー46による上昇モーメントは、収納位置からの角度に対して線形に変化し、使用位置で最大となる。
バランスバネ機構511により回転軸13周りに発生するシート本体11の上昇モーメント(特性線M103)は、収納位置では0である。バランスバネ機構511による上昇モーメントは、シート本体11の収納位置からの回転角度が30度を超えるまで、すなわち変曲点P1に至るまでは不感帯ゾーンであるため、0のままである。シート本体11の収納位置からの回転角度が30度を超え、すなわち変曲点P1を過ぎると、圧縮バネ93の作用により、所定角度(シート本体11の収納位置からの回転角度が60度を超えた角度)に到達するまでは収納位置からの角度に対して増加するように変化し、その所定角度を超えると収納位置からの角度に対して減少するように変化する。
シート本体11の上昇モーメント(特性線M104)は、トーションバー46による上昇モーメントとバランスバネ機構511による上昇モーメントとの和となる。利用者がシート本体11を倒そうとしてシート本体11を操作し、利用者の操作力により発生するシート本体11の使用位置に向かうモーメント(以下、操作モーメントと称する)がシート本体11の上昇モーメントと落下モーメントとの差よりも大きくなると、シート本体11は収納位置から傾倒する。この例の場合、収納位置から変曲点P1に相当する角度までは、シート本体11の落下モーメントの増加がトーションバー46による上昇モーメントの増加よりも多いため、利用者の操作力は徐々に減少する。収納位置から変曲点P1に相当する角度を過ぎると、バランスバネ機構511による上昇モーメントが効いてくるので、シート本体11の落下モーメントの特性と、トーションバー46による上昇モーメントとバランスバネ機構511による上昇モーメントとの和の特性との偏差が極めて小さくなり、よく落下モーメントの特性に上昇モーメントに特性が沿っていることが見て取れる。これによってこの領域でのバランス性能は非常によく手を離した状態でもシート本体11が停止状態となるようなバランス状態を保つことができる。
バランスバネ機構51の第2の変形例を図16に示す。図16に示すバランスバネ機構512は、圧縮バネ93が外筒91及び内筒92内に配置されているものの、圧縮力は予め付与されていない状態で配置されている点は第1の変形例と同様である。バランスバネ機構512では更に、第2圧縮バネ94を外筒91及び内筒92内に配置しており、第2圧縮バネ94の一端は外筒91の底面に接触しており、第2圧縮バネ94の他端は内筒92の底面に接触している。図16に示した状態は、シート本体11が収納位置に位置している場合のバランスバネ機構512の状態を示している。シート本体11が使用位置へ傾倒し始めると、外筒91と内筒92とが近接して第2圧縮バネ94を圧縮し、やがて外筒91の底面が圧縮バネ93に当接し、圧縮バネ93が圧縮され始める。従って、このバランスバネ機構512では、シート本体11が収納位置から使用位置へと傾倒する間において圧縮バネ93が作用しない不感帯が設けられていると共に、その不感帯に至るまでの間では第2圧縮バネ94が作用している。
バランスバネ機構512を用いた場合の、シート本体11の落下モーメント及び上昇モーメントの関係を、図17を参照しながら説明する。図17は、シート本体11の収納位置からの角度に対するシート本体11の落下モーメント及び上昇モーメントの変化を示す。
シート本体11の落下モーメント(特性線M201)は、上述したように、主としてシート本体11の質量及び錘57の質量に応じて回転軸13周りに発生し、収納位置が鉛直線に沿った位置の場合は0である。しかしながら、図17に示す例の場合は、収納位置でより安全にシート本体11を起立させるために壁側に少し倒れた位置を収納位置としているため、マイナスの値を示している。シート本体11の落下モーメントは、収納位置からの角度が大きくなる、すなわち使用位置へ向かうに従い、徐々に大きくなるように変化し、使用位置で最大となる。
トーションバー46により回転軸13周りに発生するシート本体11の上昇モーメント(特性線M202)は、収納位置では、トーションバー46に与えられた与圧の反力に応じた初期値を有する。トーションバー46による上昇モーメントは、収納位置からの角度に対して線形に変化し、使用位置で最大となる。
バランスバネ機構512により回転軸13周りに発生するシート本体11の上昇モーメント(特性線M203)は、収納位置では0である。バランスバネ機構511による上昇モーメントは、シート本体11の収納位置からの回転角度が30度を超えるまで、すなわち変曲点P1に至るまでは圧縮バネ93の不感帯ゾーンであるため、第2圧縮バネ94のみが作用し、第2圧縮バネ94による上昇モーメントが発生する。シート本体11の収納位置からの回転角度が30度を超え、すなわち変曲点P1を過ぎると、圧縮バネ93の作用も加わり、所定角度(シート本体11の収納位置からの回転角度が60度を超えた角度)に到達するまでは収納位置からの角度に対して増加するように変化し、その所定角度を超えると収納位置からの角度に対して減少するように変化する。
シート本体11の上昇モーメント(特性線M204)は、トーションバー46による上昇モーメントとバランスバネ機構512による上昇モーメントとの和となる。利用者がシート本体11を倒そうとしてシート本体11を操作し、利用者の操作力により発生するシート本体11の使用位置に向かうモーメント(以下、操作モーメントと称する)がシート本体11の上昇モーメントと落下モーメントとの差よりも大きくなると、シート本体11は収納位置から傾倒する。この例の場合、収納位置から変曲点P1に相当する角度までは、シート本体11の落下モーメントの増加がトーションバー46による上昇モーメントの増加よりも多いため、利用者の操作力は徐々に減少する。収納位置から変曲点P1に相当する角度を過ぎると、バランスバネ機構512による上昇モーメントがより効いてくるので、シート本体11の落下モーメントの特性と、トーションバー46による上昇モーメントとバランスバネ機構512による上昇モーメントとの和の特性との偏差が極めて小さくなり、手を離した状態でもバランス状態を保つことができる。
以上のように、本実施形態においては、シート本体11(本体支持フレーム23)の自由端側に対して着脱自在に且つ選択的に取り付けられる錘57が設けられているので、この錘57の質量を変更することにより、シート本体11の落下モーメントの特性が変わることとなる。この結果、落下モーメントの特性と上昇モーメントの特性との相対関係を容易に調整することができる。また、本実施形態では、トーションバー46、バランスバネ機構51(圧縮バネ54)、及び錘57により、様々な要請に応じた落下モーメントや上昇モーメントの各特性の適切な設定を比較的容易に行うことができる。
本実施形態における作用効果を、特許文献1に記載された収納式多目的シートにおけるシート本体の落下モーメント及び上昇モーメントの特性と対比して、詳細に説明する。特許文献1に記載された収納式多目的シートでは、図18に示されるように、シート本体の落下モーメント及び上昇モーメントが発生する。図18では、特性線M10はシート本体の落下モーメントの変化を示している。特性線M20は引張バネによる上昇モーメントの変化を示し、特性線M30は錘による上昇モーメントの変化を示し、特性線M40はシート本体の上昇モーメント(引張バネによる上昇モーメントと錘による上昇モーメントとの和)の変化を示している。
錘による上昇モーメントは、収納位置では0であり、収納位置からの角度が大きくなるにしたがって大きくなる。そして、使用位置に近づくにしたがって、錘による上昇モーメントの単位角度あたりの変化は小さくなり、使用位置近傍では、錘による上昇モーメントはほとんど変化しない。すなわち、錘による上昇モーメントは、非線形の特性を有することとなる。
引張バネによる上昇モーメントは、収納位置では、引張バネにより予め与えられる引張力に応じた初期値が発生し、収納位置からの角度が大きくなるにしたがって大きくなる。そして、引張バネによる上昇モーメントは、シート本体の回転軸と引張バネのシート本体側に掛けられた一端とが同じ水平高さとなったときに、最大となり、その後は引張バネのシート本体側に掛けられた一端の水平高さがシート本体の回転軸よりも高くなるため、収納位置からの角度に対して減少するように変化する。すなわち、引張バネによる上昇モーメントも、非線形の特性を有することとなる。
このように、特許文献1に記載された収納式多目的シートでは、非線形特性を有する上昇モーメント同士の和によりシート本体の上昇モーメントが構成されているが、本実施形態では、線形特性を有する上昇モーメント(トーションバー46による上昇モーメント)と非線形特性を有する上昇モーメント(バランスバネ機構51よる上昇モーメント)との和によりシート本体11の上昇モーメントが構成されているので、シート本体11の上昇モーメントの特性の調整を容易に行うことができる。
特許文献1に記載された収納式多目的シートでは、シート本体の落下モーメントの特性は、シート本体の質量により一義的に決まってしまうが、本実施形態では、シート本体11の自由端(第2側部11b)側に設けられる錘57の質量を変更することにより、シート本体11の落下モーメントの特性も変化することとなる。この結果、本実施形態では、シート本体11の上昇モーメントだけでなく、シート本体11の落下モーメントの特性の調整も容易に行うことができる。
特許文献1に記載された収納式多目的シートでは、シート本体の上昇モーメントと落下モーメントとが均衡する角度を境にして、シート本体の上昇モーメントと落下モーメントとの差の絶対値が必ず大きくなっている。これに対し、本実施形態では、上記角度範囲A2において、シート本体11の上昇モーメントと落下モーメントとの差が略一定となっている。したがって、本実施形態では、この角度範囲A2において、利用者の操作力による操作モーメントが小さくなった場合でも、シート本体11が急激に収納位置又は使用位置に傾倒することはない。シート本体11の上昇モーメントと落下モーメントとの差は、シート本体11が傾倒することなく、回転軸13等の摺動部分に作用する摩擦力等の作用によってその角度位置で停止するような値に設定することが好ましい。
特許文献1に記載された収納式多目的シートでは、収納位置でのシート本体の上昇モーメントと落下モーメントと差がシート本体の落下モーメントの最大値の略3割もあり、利用者がシート本体を倒すために大きな操作力が必要となる。これに対して、本実施形態では、収納位置でのシート本体の上昇モーメントと落下モーメントと差がシート本体の落下モーメントの最大値の1.5割程度であり、利用者は比較的小さな操作力でシート本体11を倒すことが可能となる。
特許文献1に記載された収納式多目的シートでは、使用位置でのシート本体の上昇モーメントと落下モーメントと差がシート本体の落下モーメントの最大値の略2割もあり、利用者がシート本体を持ち上げるために大きな操作力が必要となる。これに対して、本実施形態では、収納位置でのシート本体の上昇モーメントと落下モーメントと差がシート本体の落下モーメントの最大値の1割程度であり、利用者は比較的小さな操作力でシート本体11を持ち上げることが可能となる。また、特許文献1に記載された収納式多目的シートでは、上述したように、きりつ使用位置でのシート本体の上昇モーメントと落下モーメントと差が大きいことから、シート本体が使用位置に到達するときの傾倒速度が大きくなる懼れがあるものの、本実施形態では、シート本体11が使用位置に到達するときの傾倒速度も比較的小さくなり、その衝撃も弱い。
また、本実施形態では、トーションバー46は、シート本体11の収納位置から使用位置の角度範囲において、線形特性を有している。これにより、非線形特性を有するバランスバネ機構51による上昇モーメントの特性を比較的小さく設定することが可能となり、バランスバネ機構51のばらつきによるシート本体11に作用する上昇モーメントの特性への影響を緩和することができる。
また、本実施形態では、トーションバー46を構成する板バネの枚数を変更すること等により、上昇モーメントの特性の調整が可能となる。これにより、シート本体11の落下モーメントの特性と上昇モーメントの特性との相対関係の調整をより一層容易に行うことができる。
また、本実施形態では、ダンパー61が設けられているので、何らかの部材がシート本体11に接触する等の要因によってシート本体11の傾倒速度が過大となった場合でも、シート本体11が倒伏しないように利用者がシート本体11を支えるといった行為を求められること無く、ダンパー61によりシート本体11の急激な倒伏を防ぐことができる。本実施形態のように、上記角度範囲A2において、シート本体11の落下モーメントと上昇モーメントとの差を小さく設定し、シート本体11を小さな操作力で操作可能とした場合、上述したような要因によりシート本体11の傾倒速度が過大となり易いことが考えられるため、ダンパー61はシート本体11の急激な倒伏を防ぐために特に有効である。
また、本実施形態では、丸パイプ43(トーションバー46)、バランスバネ機構51、錘57、及びダンパー61がカバー部材19により覆われている。これにより、丸パイプ43(トーションバー46)、バランスバネ機構51、錘57、及びダンパー61等の可動機構に何らかの部材等が接触するのを防ぎ、シート本体11の起立及び倒伏動作に支障が生じるのを防止することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
トーションバー46は、板バネ式のトーションバーに限られることなく、棒状のトーションバーであってもよい。トーションバー46は、シート本体11の収納位置から使用位置の角度範囲において線形特性を有していればよく、この角度範囲外において非線形特性を有していてもよい。
ダンパー61は、上述したシリンダ式のダンパーに限られない。ダンパー61として、例えばロータリーダンパーを採用してもよい。
1…収納式多目的シート、11…シート本体、11a…第1側部、11b…第2側部、12…ベース、13…回転軸、46…トーションバー、51…バランスバネ機構、54…圧縮バネ、57…錘、58…ボルト、59…ナット、61…ダンパー、62…シリンダ、63…ダンパーロッド、71…リトラクタ機構、90…ウエビング。