JP4217805B2 - 光学活性γ−ラクトンの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学活性化合物である光学活性γ−ラクトンの製造に関する。さらに、詳しくは、原料となるラセミ体ハイドロキシアミドを微生物が生産するリパーゼを用いて、光学分割することにより、香料素材及びフェロモンとして有用な光学活性γ−ラクトンを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
合成ラクトン類はその特徴的な香気から食品香料、香粧品香料を含む多くの分野で使用されているが、それらのほとんどはラセミ体である。しかし、近年の分析技術の進歩により、ピーチ、アプリコット、ストロベリー等の香気成分として天然に存在するγ−ラクトン類がさまざまなR/S比を有していることが明らかになってきた(例えばJ. of Chromatgraphy,498,396(1990))。この場合、光学活性γ−ラクトン類は光学異性体間で香気や香味が異なることから、より天然に近い香り、味を求めた場合、最適なR/S比で調合することが必要となる。
【0003】
また、不斉炭素を有するラクトンの一部は昆虫のフェロモンとして以前より知られており、工業的な製造も行なわれている(Tetrahedron 47,6223(1991))。
【0004】
従来の光学活性γ−ラクトン類の製造には、化学合成法と、化学合成法に比べ高価な試薬や複雑な工程を必要としない微生物や酵素を用いる方法とが用いられている。
【0005】
化学合成法は、主に、金属錯体を用いた不斉水素化反応であるが、ラクトンの側鎖(R1)に不飽和結合がある場合、この不飽和結合をも同時に水素化してしまう問題点がある。
【0006】
微生物や酵素を用いる光学活性γ−ラクトン類の製造法は報告数が少ないが、その中でも、以下のようなものがある。
【0007】
(A)ラセミ体ヒドロキシカルボン酸エステルを原料とし、酵素触媒によって光学分割する方法があり、この酵素触媒を用いた光学分割法によって、昆虫のフェロモンとして知られている光学活性γ−ラクトン類が工業的に製造されている(「化学と生物」、35,35(1997))。
【0008】
(B)パン酵母を利用した不斉還元法により得たケト酸からヒドロキシカルボン酸を調整する方法をラクトン合成に応用する方法が提案されている(Agric.Biol.Chem,51,3417(1987))。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した方法(A)では、ヒドロキシカルボン酸エステルを比較的安価に製造することが困難であり、多段階の工程を必要とすることから、実用に適していない。又、昆虫のフェロモンとしての光学活性γ−ラクトン類を工業的に製造する場合、高い光学純度を得るために、酵素反応を2回行う必要があり、工程が煩雑となっている。
【0010】
一方、方法(B)では、反応の制御が難しく、しかも反応生成物にパン酵母に由来した香気が残る問題がある。
【0011】
このように従来より報告されている光学活性γ−ラクトン類の製造では、何らかの問題があり、効率的な製造方法が開発されていないのが現状である。
【0012】
本発明は、このような実情に鑑みなされたものであり、ハイドロキシアミドを基質とし特定な酵素(リパーゼ)を用いた光学分割法により、従来の方法よりも安価で簡便に光学活性γ−ラクトン類を製造することが可能な方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、γ−ラクトンのハイドロキシアミド体である一般式(1)(式中、R 1 は炭素数2〜8の飽和及び不飽和直鎖アルキル基から選ばれる基であり、R 2 は、水素原子、炭素数1〜5の飽和アルキル基、炭素数1〜5の不飽和アルキル基、アラルキル基又は芳香族炭化水素基から選ばれる基である)で表されるγ−ハイドロキシカルボン酸の一級アミドまたは二級アミドを、アシル供与体の存在下にリパーゼを触媒として不斉アシル化反応を行なうと、一方の光学活性ハイドロキシアミドのみを高い選択率で効率よくアシル化させることができる事実を見いだし、効果の顕著な本発明を完成した。
【化2】
【0014】
即ち、本発明は一般式(1)γ−ハイドロキシカルボン酸アミドのラセミ体を原料とし、有機溶媒中、アシル供与体の存在下で、リパーゼを触媒とし、アシル化反応を行なった後、反応生成物であるアシル体と未反応の非アシル体であるハイドロキシアミド体とを分離し、その後、アシル体を加水分解し、環化することによって光学活性γ−ラクトンを製造する方法である。
【0015】
さらに、本発明は、上記未反応物である非アシル体(ハイドロキシアミド体)を環化することで、アシル体からの光学活性γ−ラクトンとは対掌の光学活性γ−ラクトンを製造する方法である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以上の本発明は以下のように図示される。尚、式中、R 1 、R 2 は、式(1)(2)と同じであり、R 3 は、アシル供与体の残基を表している。また、γ−ラクトンにおける*は、光学活性な炭素原子であることを示している。
【0017】
【化3】
【0018】
本発明の出発原料であるγ−ラクトンのハイドロキシアミド体の合成は、例えば、ラセミ体γ−ラクトンをシールドチューブ中でメチルアミン、ベンジルアミン等の一級アミン類と加温攪拌してアミド化することにより収率よく行うことができる。
【0019】
本発明で用いられる微生物由来のリパーゼは、種々のものが市販されており、本発明では、これらの市販品をそのまま用いることができる。具体例としては、リパーゼQL(名糖産業(社)製)、リパーゼPL(名糖産業(社)製)、リパーゼPS−C(天野製薬(社)製)、その他を挙げることができる。
【0020】
本発明を実施するには、原料であるハイドロキシアミド体を反応容器に採り、これに、有機溶媒、アシル供与体を加えて混合液とする。ここで用いられる有機溶媒としては、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル又はターシャルブチルメチルエーテルのようなエーテル系溶媒を用いることができる。アシル供与体としては、特に限定されるものではないが、酢酸イソプロペニルや酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等の上述したR 3 基が炭素数1〜17である飽和カルボン酸ビニル類、アクリル酸ビニル、メタクリル酸ビニル等の不飽和カルボン酸ビニル類、芳香族カルボン酸ビニル類、コハク酸無水物、グルタル酸無水物等の酸無水物類等を用いることができる。混合液中のハイドロキシアミド体の濃度は、約10〜200モル/リットル、特に好ましくは約60〜80モル/リットルとなるように調整する。
【0021】
次に、得られた混合溶液に、微生物由来のリパーゼを、加水分解活性が約30000ユニット/gのものでは、約0.01〜20重量%、好ましくは約0.2〜5重量%の濃度となるように加える。力価の異なるリパーゼを用いる場合には、上記濃度に相当するように換算して加える。反応温度は、室温、好ましくは25〜35℃であり、反応時間は2〜100時間であるが、反応温度を高めたり、酵素量を増加することにより、反応時間を短縮することも可能である。
【0022】
反応後、リパーゼを濾過除去し、反応生成物であるアシル体と未反応物である非アシル体(ハイドロキシアミド)の混合物を得る。
【0023】
得られた混合物から反応生成物(アシル体)と未反応物(非アシル体)をそれぞれ分離するには、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いることができる。特に、アシル供与体としてコハク酸無水物などジカルボン酸類を用いたとき、反応生成物がハイドロキシアミドのジカルボン酸モノエステル体の場合には、アルカリ水溶液で水層に抽出することができ、未反応物であるハイドロキシアミド体は有機層に残ることから容易に分離することができる。得られたハイドロキシアミドのアシル体は、加水分解後、ラクトン化することにより光学活性γ−ラクトンを製造することができる。更に、未反応物である非アシル体(ハイドロキシアミド)をラクトン化することにより、反応生成物から得られた上述のラクトンと対掌の光学活性γ−ラクトンを製造することができる。
【0024】
なお、光学純度が若干低い場合は、酵素反応後、分離したハイドロキシアミド体を再結晶することによって光学純度を向上させることができる。また、ハイドロキシアミド体の光学純度は光学活性カラムを装着したHPLC(ChiralcelOD,OD−R)、γ−ラクトンの光学純度は光学活性カラムを装着したGC(ChiraldexG−TA)によって分析することができる。
【0025】
【実施例】
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0026】
(参考例1)
ハイドロキシアミドの合成:γ−ウンデカラクトン10g(54mmol)とベンジルアミン6.5g(61mmol)をシールドチューブ中、80〜100℃で4〜5時間攪拌した。反応液を室温まで下げると粗結晶が得られた。この粗結晶をトルエン−石油エーテルより再結晶をすることにより、15gのγ−ウンデカラクトンのハイドロキシアミド体(一般式(1)におけるR1がC7H15、R 2 がCH 2 Ph(Phはフェニル基(以下、同じ)))が無色結晶として得られた(収率95%)。
【0027】
(実施例1)
ターシャルブチルメチルエーテル25mlにγ−デカラクトンのハイドロキシアミド体(一般式(1)におけるR1がC6H13、R 2 がCH 2 Ph)555mg(2mmol)を溶解し、コハク酸無水物200mg(2mmol)を加え、さらにリパーゼPL(加水分解活性=90000ユニット/g)若しくはリパーゼPS−Cを50mg加え、室温で12.5時間(リパーゼPS−Cの場合は3時間)攪拌した。反応の進行は、液体クロマトグラフィーで確認し、原料と反応生成物の量がほぼ等しくなった時点をもって反応の終点とした。
【0028】
反応終了後、酵素を濾過除去し、これに0.5M炭酸ナトリウム水溶液50mlで反応生成物であるハイドロキシアミドのコハク酸モノエステル体を抽出する操作を2回連続して行った。得られた水層に水酸化ナトリウム100mgを加えて1時間還流した。
【0029】
反応終了後、反応液をジエチルエーテルで抽出し、飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾別後、減圧下で溶媒を留去し、光学純度90%eeのハイドロキシアミド(S−体)250mgを得た(収率45%)。得られたハイドロキシアミド体を再結晶したところ、光学純度98%eeまで向上した。
【0030】
このハイドロキシアミド体に10%(W/W)塩酸を加え、1時間加熱還流した。反応液を室温まで冷却し、酢酸エチルで抽出後、飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄後、さらに飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾別後、減圧下で溶媒を留去することにより、(S)−γ−デカラクトン136mgを得た(収率40%)。
【0031】
有機層に残った未反応物であるハイドロキシアミド体(R−体)261mg(光学純度91%ee、収率47%)は、再結晶して、光学純度98%eeとした。このハイドロキシアミド体に、10%(W/W)塩酸を加え、1時間加熱還流した後、ジエチルエーテルで抽出後、反応液を室温まで冷却し、飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄後、さらに飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾別後、減圧下で溶媒を留去することにより、対掌の(R)−γ−デカラクトン146mgを得た(収率43%)。
【0032】
得られた(R)−γ−デカラクトンを光学活性カラムを装着したガスクロマトグラフィーで分析したところ、98%eeの光学純度であった。また、(S)−γ−デカラクトンの光学純度は98%eeであった。
【0033】
(実施例2)
ターシャルブチルメチルエーテル25mlにγ−ウンデカラクトンのハイドロキシアミド体(一般式(1)におけるR1 がC7H15、R 2 がCH 2 Ph)583mg(2mmol)を溶解し、コハク酸無水物200mg(2mmol)を加え、さらにリパーゼPL(名糖産業(社)製、加水分解活性=90000ユニット/g)50mgを加え、室温で10時間攪拌した。反応の進行は、液体クロマトグラフィーで確認し、原料と反応生成物の量がほぼ等しくなった時点をもって反応の終点とした。
【0034】
反応終了後、酵素を濾過除去し、これに0.5M炭酸ナトリウム水溶液50mlで反応生成物であるハイドロキシアミドのコハク酸モノエステル体を抽出する操作を2回連続して行った。得られた水層に水酸化ナトリウム100mgを加えて1.5時間還流した。
【0035】
反応終了後、酵素を濾過除去し、これに0.5M炭酸ナトリウム水溶液50mlで反応生成物であるハイドロキシアミドのモノエステル体を抽出する操作を2回連続して行った。得られた水層に水酸化ナトリウム100mgを加えて1.5時間還流した。
【0036】
反応終了後、反応液を酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾別後、減圧下で溶媒を留去することにより、光学純度91%eeのハイドロキシアミド(S−体)262mgを得た(収率45%)。そして、得られたハイドロキシアミド体を再結晶したところ、光学純度98%eeまで向上した。
【0037】
このハイドロキシアミド体に10%(W/W)塩酸を加え、1時間加熱還流した。反応液を室温まで冷却し、酢酸エチルで抽出後、飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄後、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾別後、減圧下で溶媒を留去することにより、(S)−γ−ウンデカラクトン140mgを得た(収率38%)。
【0038】
有機層に残った未反応物であるハイドロキシアミド体(R−体)280mg(光学純度92%ee、収率48%)は、再結晶することによって、98%eeの光学純度とした。このハイドロキシアミド体に10%(W/W)塩酸を加え、1時間加熱還流した後、反応液を室温まで冷却し、飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄した後、さらに飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾別後、減圧下で溶媒を留去することにより、対掌の(R)−γ−ウンデカラクトン147mgを得た(収率40%)。
【0039】
得られた(R)−γ−ウンデカラクトンを光学活性カラムを装着したガスクロマトグラフィーで分析したところ、光学純度98%eeであった。また、(S)−γ−ウンデカラクトンは光学純度98%eeであった。
【0040】
(実施例3)
ジイソプロピルエーテル25mlにγ−ドデカラクトンのハイドロキシアミド体(一般式(1)におけるR1 がC8 H17、R 2 がCH 2 Ph)611mg(2mmol)を溶解し、酢酸ビニル172mg(2mmol)を加え、さらにリパーゼPL(名糖産業(社)製、加水分解活性=90000ユニット/g)100mgを加え室温で8時間攪拌した。反応の進行は、液体クロマトグラフィーで確認し、原料と反応生成物の量がほぼ等しくなった時点をもって反応の終点とした。
【0041】
反応終了後、酵素を除去して、反応生成物と未反応物の混合溶液を得、この混合溶液をエバポレーターで濃縮して625mgの混合物とした。得られた混合物から、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(流出液;ジクロロメタン:メタノール=20:1(容量比)の混合溶媒)を用いて反応物327mg(収率47%)と光学純度92%eeの未反応物287mg(収率47%)をそれぞれ単離精製した。
【0042】
そして、反応物はメタノールに溶解させ、水酸化ナトリウム100mgを加えて加水分解した。加水分解終了後、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾別後、減圧下で溶媒を留去することにより、光学純度92%eeのハイドロキシアミド体(S−体)275mgを得た(収率45%)。それぞれのハイドロキシアミド体を再結晶したところ、光学純度98%eeまで向上した。
【0043】
このハイドロキシアミド体に10%(W/W)塩酸を加え、1時間加熱還流した後、反応液を室温まで冷却し、酢酸エチルで抽出後、飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄後、さらに飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾別後、減圧下で溶媒を留去することにより、(R)−γ−ドデカラクトン175mg(収率44%)と(S)−γ−ドデカラクトン167mg(収率42%)を得た。
【0044】
得られた(R)−γ−ドデカラクトンを光学活性カラムを装着したガスクロマトグラフィーで分析したところ、光学純度98%eeであった。また、(S)−γ−ドデカラクトンの光学純度は98%eeであった。
【0045】
(実施例4)
ターシャルブチルメチルエーテル25mlにγ−ジャスモラクトンのハイドロキシアミド体(一般式(1)におけるR1がCH2CH2CH=CHC2H5、R 2 がCH 2 Ph)551mg(2mmol)を溶解し、コハク酸無水物200mg(2mmol)を加え、さらにリパーゼQLM(名糖産業(社)製)50mgを加え室温で2時間攪拌した。反応の進行は、液体クロマトグラフィーで確認し、原料と反応生成物の量がほぼ等しくなった時点をもって反応の終点とした。
【0046】
反応終了後、酵素を濾過除去し、これに0.5M炭酸ナトリウム水溶液50mlで反応生成物であるハイドロキシアミドのコハク酸モノエステル体を抽出する操作を2回連続して行った。得られた水層に水酸化ナトリウム100mgを加えて1時間還流した。
【0047】
反応終了後、反応溶液をジエチルエーテルで抽出して飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾別後、減圧下で溶媒を留去することにより、光学純度91%eeのハイドロキシアミド(S−体)248mgを得た(収率45%)。得られたハイドロキシアミド体を再結晶したところ、光学純度98%eeまで向上した。
【0048】
このハイドロキシアミド体に10%(W/W)塩酸を加え、1時間加熱還流した。反応液を室温まで冷却し、酢酸エチルで抽出後、飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄した後、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾別後、減圧下で溶媒を留去することにより、(S)−γ−ジャスモラクトン138mgを得た(収率41%)。
【0049】
また、有機層に残った未反応物であるハイドロキシアミド体(R−体)259mg(光学純度92%ee、収率47%)は、再結晶することによって、光学純度98%eeとした。このハイドロキシアミド体に10%(W/W)塩酸を加え、1時間加熱還流した後、ジエチルエーテルで抽出後、反応液を室温まで冷却し、飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄後、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾別後、減圧下で溶媒を留去することにより、(R)−γ−ジャスモラクトン145mgを得た(収率43%)。
【0050】
得られた(R)−γ−ジャスモラクトンを光学活性カラムを装着したガスクロマトグラフィーで分析したところ、光学純度98%eeであった。また、(S)−γ−ジャスモラクトンの光学純度は98%eeであった。
【0051】
(実施例5)
ターシャルブチルメチルエーテル25mlにラセミ体マメコガネ性フェロモン前駆体(5−(1−decynyl)oxacyclopentan−2−oen)のハイドロキシアミド体(一般式(1)におけるR 1 が下記式(3)で示される不飽和直鎖アルキル基、R 2 がCH 2 Ph、)687mg(2mmol)を溶解した。
【0052】
【化4】
【0053】
そして、コハク酸無水物200mg(2mmol)を加え、さらにリパーゼQL(名糖産業(社)製、加水分解活性=30000ユニット/g)50mgを加え室温で3時間撹拌した。反応の進行は、液体クロマトグラフィーで確認し、原料と反応生成物の量がほぼ等しくなった時点をもって反応の終点とした。
【0054】
反応終了後、酵素を濾過除去し、これに0.2M炭酸水素ナトリウム水溶液50mlで反応生成物であるハイドロキシアミドのコハク酸モノエステル体を抽出する操作を3回連続して行った。得られた水層に水酸化ナトリウム100mgを加えて1時間還流した。
【0055】
反応終了後、反応溶液をジエチルエーテルで抽出し、飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾別後、減圧下で溶媒を留去し、光学純度99%eeのハイドロキシアミド(S−体)302mg(収率44%)を得た。このハイドロキシアミド体に10%塩酸を加え、1時間加熱還流した。
【0056】
反応液を室温まで冷却し、酢酸エチルで抽出後、飽和炭酸水素ナトリウム、で洗浄後、さらに飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾別後、減圧下で溶媒を留去することにより、(S)−5−(1−decynyl)oxacyclopentan−2−oneを191mg(収率43%)得た。これをn−ペンタン25mlに溶解し、5%Lindlar触媒100mg、キノリン3滴を加え、水素雰囲気下0℃で1時間撹拌した。反応終了後、触媒を除去し、1N塩酸で洗浄し、さらに飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾別後、減圧下で溶媒を留去して、(S、Z)−(+)−5−(1−decenyl)oxacyclopentan−2−oneを184mg得た(収率41%)。
【0057】
また、有機層に残った未反応物であるハイドロキシアミド体(R−体)316mg(光学純度99%ee、収率46%)に10%塩酸を加え、1時間加熱還流した後、ジエチルエーテルで抽出後、反応液を室温まで冷却し、飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄後、さらに飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾別後、減圧下で溶媒を留去することにより、(R)−5−(1−decynyl)oxacyclopentan−2−oneを200mg(収率45%)得た。これをn−ペンタン25mlに溶解し、5%Lindlar触媒100mg、キノリン3滴を加え、水素雰囲気下0℃で1時間撹拌した。反応終了後、触媒を除去し、1N塩酸で洗浄し、さらに飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾別後、減圧下で溶媒を留去し、(R、Z)−(−)−5−(1−decenyl)oxacyclopentan−2−oneを188mg得た(収率42%)。
【0058】
得られた(R、Z)−(−)−5−(1−decenyl)oxacyclopentan−2−oneを光学活性カラムを装着したガスクロマトグラフィーで分析したところ、99%eeの光学純度であった。また、(S、Z)−(+)−5−(1−decenyl)oxacyclopentan−2−oneの光学純度は99%eeであった。
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、リパーゼを用いてハイドロキシアミドを光学分割するため、安価で簡単な方法で、香料素材あるいはフェロモンとして有用な光学活性γ−ラクトンを製造することができる。
Claims (1)
- 一般式(1)(式中、R1は炭素数2〜8の飽和および不飽和直鎖アルキル基から選ばれ、R2は、水素原子、炭素数1〜5の飽和アルキル基、炭素数1〜5の不飽和アルキル基、アラルキル基又は芳香族炭化水素基から選ばれる基である)で表されるγ−ハイドロキシカルボン酸アミドを、アシル供与体の存在下にリパーゼを触媒として不斉アシル化反応を行なってアシル体と非アシル体の混合物とし、次いで前記アシル体と前記非アシル体を分割した後、それぞれを加水分解して一般式(2)(式中、R1は炭素数2〜8の飽和及び不飽和直鎖アルキル基から選ばれる基であり、*を付した炭素原子は光学活性な炭素原子である)のγ−ラクトンとすることを特徴とする光学活性γ−ラクトンの製造方法。
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