JP3583798B2 - 光学活性2−メチルブタン酸およびその誘導体の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、2−メチルブタン酸アルキルあるいは2−メチルブタン酸アルコキシアルキルへ、酵素あるいは該酵素を産生する微生物を作用させることを特徴とする、光学活性2−メチルブタン酸およびその誘導体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
生物学的活性を呈する化合物の多くに、光学異性体が存在することは広く知られており、一般的には、目的とする所望の生物学的活性を呈する光学異性体が、その一部に限定され、その他の異性体が、所望の生物学的活性を呈さないか、あるいは毒性等の好ましくない生理作用を伴うものである。
【0003】
それ故、光学異性体を有する化合物において、生物学的に活性な異性体を得る適当な手段・手法が無い場合には、すべての光学異性体が混合された状態にて、農薬や製薬用途にしばしば用いられており、目的とする光学異性体本来の生物学的活性が著しく低減したり、毒性などの望ましくない生理作用を伴うという問題点があった。
【0004】
この問題を克服するために、光学異性体の分割法が種々検討されてきており、例えば、被分割光学異性体の各種エステル誘導体を調製し、光学選択的にエステルを加水分解する酵素を該誘導体に作用させ、そして、反応系の溶媒に対する溶解度の差などを利用して光学異性体同士を互いに分離する方法が提案されており、この方法を実現させるための、種々の光学選択性を備えたエステル分解酵素を産生する微生物の研究が進められている。
【0005】
このような技術背景において、光学活性2−メチルブタン酸は、液晶化合物の中間体として有用な化合物であり、また、光学活性2−メチルブタン酸およびその誘導体は、種々の食品の芳香成分として自然界に存在していることが知られており、従って、香料としての用途の化合物として重要視されている。
【0006】
この光学活性2−メチルブタン酸およびその誘導体の製造方法として、α、β不飽和カルボン酸の不斉水素化を利用する方法(特開平3−157346号) 、あるいはラセミ体の2−メチルブタン酸のキャンディダリパーゼによる不斉エステル化または2−メチルブタン酸エステルの加水分解による方法 K.H. Engel, Tetrahedoron Asymmetry, 2, 165 (1991);Erland Holmberg et al., Applied Microbiologyand Biotechnology, 35, 572 (1991) などが提案されているが、いずれの方法によっても、得られる光学活性体の光学純度が低くなるなどの欠点が指摘されていた。
【0007】
また、前記光学活性2−メチルブタン酸の誘導体の一つである、光学活性2−メチルブタノールは、従来より、医薬あるいは農薬用途の生理活性物質や、液晶材料の合成中間体として重要視されている。
【0008】
この光学活性2−メチルブタノールの現在採用されている分離・精製手段の一つに、フーゼル油から光学活性なS体の2−メチルブタノールを分離する方法があるが、この方法によると、フーゼル油中の他の成分との分別のための精密蒸留を繰り返す必要があり、そのための多段階の精製工程を経なければならず、従って、この方法によると、収率が低い上に、製造コストが高くつくという問題点を含むものであった。 一方、R体の2−メチルブタノールが、(+) α、α−ジメチルコハク酸から合成された報告 Chemistry and Industry (London), p.1093,1926年 もあるが、この方法によると、原料が高価であり、かつ合成工程も複雑であることから、到底工業化に適するものではない。 さらに、最近では、リパーゼなどの酵素を利用したエステル化による光学活性2−メチルブタノールの生産方法が提案されている(特開平2−242700号)が、この方法でも、反応液から光学活性2−メチルブタノールを分離する際に、精密蒸留などが必要であることから、実用的手段とはいえないものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述した従来技術が抱えている課題に鑑みて発明されたものであり、その目的とするところは、高い光学純度を有する光学活性2−メチルブタン酸およびその誘導体を工業的に生産し得る方法を提供することにある。
【0010】
すなわち、本発明の要旨とするところは、図1を参照すると、2-メチルブタン酸アルキルまたは2-メチルブタン酸アルコキシアルキルに、そのS体のエステルを優先的に加水分解するアスパジーラス( Aspergillus )属、バチルス( Bacillus )属またはセラチア( Serratia )属に属する微生物および/または該微生物が産生したプロテアーゼまたはエステル分解酵素を用いて、水または緩衝液中で光学活性(S)-2-メチルブタン酸および(R)-2-メチルブタン酸アルキルまたは(R)-2-メチルブタン酸アルコキシアルキルに分割することを特徴とした、光学活性2-メチルブタン酸、光学活性 2- メチルブタン酸アルキルおよび光学活性 2- メチルブタン酸アルコキシアルキルの製造方法である。
【0011】
さらに、本発明の他の態様では、前記光学活性(R)−2−メチルブタン酸アルキルまたはアルコキシアルキルを、さらに化学的に還元することにより、(R)−2−メチルブタノールを得ることを特徴とした、光学活性(R)−2−メチルブタノールの製造方法である。
【0012】
さらに、前記光学活性(R)−2−メチルブタン酸アルキルまたはアルコキシアルキルを、加水分解することを特徴とする、光学活性(R)−2−メチルブタン酸の製造方法である。
【0013】
すなわち、本発明は、(R)−2−メチルブタン酸アルキルあるいは(R)−2−メチルブタン酸アルコキシアルキルに対し高い光学選択性、つまり、2−メチルブタン酸アルキルを加水分解し、光学活性の(R)−2−メチルブタン酸アルキルあるいは(R)−2−メチルブタン酸アルコキシアルキルを反応液中に残存させる能力を有する、アスパジーラス(Aspergillus)属、バチルス(Bacillus)属、セラチア(Serratia)属に属する微生物由来のプロテアーゼ、またはエステル分解酵素の知見に基づいて完成されたものである。
【0014】
本発明における酵素反応の基質となる、ラセミ体の2−メチルブタン酸アルキルまたはアルコキシアルキルは、特に限定されるものではないが、公知のエステル化方法により容易に合成・入手できることから、メチル、エチル、メトキシエチル等のエステル誘導体が好ましい。
【0015】
また、本発明方法に使用できる酵素としては、アスパジーラス(Aspergillus) 属、バチルス(Bacillus)属、セラチア(Serratia)属に属する微生物、特に、アスパジーラス・メレウス(Aspergillus melleus) 、アスパジーラス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、バチルス・ サブチリス(Bacillus subtilis) 、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、あるいはセラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens) に属する微生物の産生によるプロテアーゼまたはエステル分解酵素であって、2−メチルブタン酸アルキルまたはアルコキシアルキルを光学選択的に加水分解しうるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、該酵素を含有する微生物菌体、菌体培養物もしくは菌体処理物等であっても適用可能である。
【0016】
上述した微生物由来の酵素としては、例えば、XP−488(Aspergillus melleus 由来、ナガセ生化学工業製)、デナチームAP−15(Aspergillus oryzae由来、ナガセ生化学工業製)、スミチームMP(Aspergillus melleus 由来、新日本化学製)、ビオプラーゼSP−10 (Bacillus subtilis由来、ナガセ生化学工業製)、結晶プロテアーゼ ナガーゼ(Bacillus subtilis 由来、ナガセ生化学工業製)、耐熱性アルカリプロテアーゼ(Bacillus sp.由来、栗田工業製)、SM酵素(Serratiamarcescens由来、ナガセ生化学工業製)などの酵素が挙げられる。
【0017】
本発明の方法は、本明細書中で、特に言及しない限り、以下の工程を経て行うものである。
【0018】
まず、酵素反応は、ラセミ体の2−メチルブタン酸アルキルまたはアルコキシアルキルを含有する水または緩衝液に、前記プロテアーゼまたはエステル分解酵素を添加し、撹拌する。 この際の反応液のpHは、酵素の活性(反応特性)を考慮して、4〜10、好ましくは6〜8とし、反応温度も同様の理由で、5℃〜60℃、好ましくは10℃〜45℃とする。 酵素の使用量は特に限定されるものではないが、基質の2−メチルブタン酸アルキルまたはアルコキシアルキルに対し、1〜100g/基質mol 程度が、円滑な酵素反応を進める上で好ましい範囲である。 さらに、反応時間は、酵素の投入量、反応温度、反応pH等で変動するが、通常1〜24時間程度で完了するように設定する。
【0019】
反応終了後、生成した2−メチルブタン酸と未反応の2−メチルブタン酸アルキルまたはアルコキシアルキルを溶媒抽出法、結晶析出法、カラムクロマトグラフ法など通常用いられる分離手段によって分取する。 なお、この分離手段に関連して、溶媒抽出法によると、反応液を炭酸ナトリウム等でpH9付近に調整した後、酢酸エチル、イソプロピルエーテル、トルエン、ヘプタン、ジクロロメタン等の溶媒を用いて抽出した場合、未反応の光学活性(R)−2−メチルブタン酸アルキルまたはアルコキシアルキルを反応液から90%以上の回収率で回収できることが、後述する実施例から明らかとなった。
【0020】
次に、分取した(R)−2−メチルブタン酸アルキルまたはアルコキシアルキルを、リチウムアルミニウムハイドライドなどを用いた方法で還元することにより、光学活性(R)−2−メチルブタノールを得る。
【0021】
また、分取した(R)−2−メチルブタン酸アルキルまたはアルコキシアルキルを、アルカリ等を用いた周知の方法でさらに加水分解することにより、光学活性(R)−2−メチルブタン酸も得ることができるのである。
【0022】
【実施例】
本発明方法の好適な実施例を以下に具体的に詳述するが、下記実施例は例示目的のものであり、本発明を限定する旨に解釈すべきものではない。
【0023】
実施例1: (R)−2− メチルブタン酸アルキルの調製(その1)
300mMリン酸緩衝液(pH 8.0)5mlを入れたバイアル瓶に、2−メチルブタン酸メチルを 300mMの濃度になるように加え、酵素剤XP−488(Aspergillus melleus 由来;ナガセ生化学工業製)を50mg加え、25℃で、24時間撹拌した。 反応終了後、反応液に5%炭酸ナトリウム水溶液 1.5ml加え、pH9付近に調整してから、酢酸エチル10mlを加えて、(R)−2−メチルブタン酸メチルを抽出した。 抽出液を下記条件に従って、ガスクロマトグラフィーで分析したところ、光学純度 100%の(R)−2−メチルブタン酸メチル(収率39%)が得られた。
【0024】
==ガスクロマトグラフィー分析条件==
カラム: CDX−B、30m(J&W社製)
温度:カラム初期温度……45℃(20分)、
昇温速度……27.5℃/分、
最終温度…… 100℃(20分)、
インジェクター温度…… 250℃、
検出器温度…… 250℃
キャリアーガス:ヘリウム、1 ml/分
検出器:FID
実施例2: (R)−2− メチルブタン酸アルキルの調製(その2)
300mMリン酸緩衝液(pH 7.0) 5mlを入れたバイアル瓶に、2−メチルブタン酸メチルを 300mMの濃度になるように加え、酵素剤デナチーム AP−15(Aspergillus oryzae 由来;ナガセ生化学工業製)を 100mg加え、30℃で、24時間撹拌した。 反応終了後、反応液に5%炭酸ナトリウム水溶液 1.5ml加え、pH9付近に調整してから、酢酸エチル10mlを加えて、(R)−2−メチルブタン酸メチルを抽出した。 抽出液を実施例1にて示した分析条件に従って、ガスクロマトグラフィーで分析したところ、光学純度94%の(R)−2−メチルブタン酸メチル(収率44%) が得られた。
【0025】
実施例3: (R)−2− メチルブタン酸アルキルの調製(その3)
300mMリン酸緩衝液(pH 7.0) 5mlを入れたバイアル瓶に、2−メチルブタン酸メチルを 300mMの濃度になるように加え、スミチーム MP (Aspergillus melleus 由来;新日本化学製)を50mg加え、35℃で、24時間撹拌した。 反応終了後、反応液に5%炭酸ナトリウム水溶液 1.5ml加え、pH9付近に調整してから、イソプロピルエーテル10mlを加えて、(R)−2−メチルブタン酸メチルを抽出した。 抽出液を実施例1にて示した分析条件に従って、ガスクロマトグラフィーで分析したところ、光学純度90%の(R)−2−メチルブタン酸メチル(収率44%) が得られた。
【0026】
実施例4: (R)−2− メチルブタン酸アルキルの調製(その4)
300mMリン酸緩衝液(pH 8.0) 5mlを入れたバイアル瓶に、2−メチルブタン酸メチルを 300mMの濃度になるように加え、酵素剤ビオプラーゼSP−10(Bacillussubtilis由来;ナガセ生化学工業製)を50mg加え、35℃で、24時間撹拌した。
【0027】
反応終了後、反応液に5%炭酸ナトリウム水溶液 1.5ml加え、pH9付近に調整してから、イソプロピルエーテル10mlを加えて、(R)−2−メチルブタン酸メチルを抽出した。 抽出液を実施例1にて示した分析条件に従って、ガスクロマトグラフィーで分析したところ、光学純度 100%の(R)−2−メチルブタン酸メチル(収率39%)が得られた。
【0028】
実施例5: (R)−2− メチルブタン酸アルキルの調製(その5)
300mMリン酸緩衝液(pH 7.0) 5mlを入れたバイアル瓶に、2−メチルブタン酸メチルを 300mMの濃度になるように加え、結晶アルカリプロテアーゼ ナガーゼ(Bacillus subtilis 由来;ナガセ生化学工業製)を5mg加え、35℃で、24時間撹拌した。 反応終了後、反応液に5%炭酸ナトリウム水溶液 1.5ml加え、pH9付近に調整してから、ヘプタン10ml加えて、(R)−2−メチルブタン酸メチルを抽出した。 抽出液を実施例1にて示した分析条件に従って、ガスクロマトグラフィーで分析したところ、光学純度 100%の(R)−2−メチルブタン酸メチル(収率38%)が得られた。
【0029】
実施例6: (R)−2− メチルブタン酸アルキルの調製(その6)
300mMリン酸緩衝液(pH 8.0) 5mlを入れたバイアル瓶に、2−メチルブタン酸メチルを 300mMの濃度になるように加え、耐熱性アルカリプロテアーゼ(Bacillus sp.由来;栗田工業製)を50mg加え、40℃で、24時間撹拌した。 反応終了後、反応液に5%炭酸ナトリウム水溶液1.5ml 加え、pH9付近に調整してから、ジクロロメタン10mlを加えて、(R)−2−メチルブタン酸メチルを抽出した。
【0030】
抽出液を実施例1にて示した分析条件に従って、ガスクロマトグラフィーで分析したところ、光学純度 100%の(R)−2−メチルブタン酸メチル(収率40%) が得られた。
【0031】
実施例7: (R)−2− メチルブタン酸アルキルの調製(その7)
300mMリン酸緩衝液(pH 7.0) 5mlを入れたバイアル瓶に、2−メチルブタン酸メチルを 300mMの濃度になるように加え、SM酵素(Serratia marcescens 由来;ナガセ生化学工業製)を50mg加え、35℃で、24時間撹拌した。 反応終了後、反応液に5%炭酸ナトリウム水溶液 1.5ml加え、pH9付近に調整してから、トルエン10mlを加えて、(R)−2−メチルブタン酸メチルを抽出した。 抽出液を実施例1にて示した分析条件に従って、ガスクロマトグラフィーで分析したところ、光学純度 100%の(R)−2−メチルブタン酸メチル(収率40%) が得られた。
【0032】
実施例8: (R)−2− メチルブタン酸アルキルの調製(その8)
300mMリン酸緩衝液(pH 8.0) 5mlを入れたバイアル瓶に、2−メチルブタン酸エチルを 300mMの濃度になるように加え、XP−488(Aspergillus melleus 由来;ナガセ生化学工業製)を50mg加え、25℃で、24時間撹拌した。 反応終了後、反応液に5%炭酸ナトリウム水溶液 1.5ml加え、pH9付近に調整してから、酢酸エチル10mlを加えて、(R)−2−メチルブタン酸エチルを抽出した。 抽出液を実施例1にて示した分析条件に従って、ガスクロマトグラフィーで分析したところ、光学純度 100%の(R)−2−メチルブタン酸エチル(収率40%) が得られた。
【0033】
実施例9: (R)−2− メチルブタン酸アルコキシアルキルの調製
300mMリン酸緩衝液(pH 8.0) 5mlを入れたバイアル瓶に、2−メチルブタン酸メトキシエチルを 300mMの濃度になるように加え、XP−488(Aspergillus melleus 由来;ナガセ生化学工業製)を50mg加え、25℃で、24時間撹拌した。 反応終了後、反応液に5%炭酸ナトリウム水溶液 1.5ml加え、pH9付近に調整してから、酢酸エチル10mlを加えて、(R)−2−メチルブタン酸メトキシエチルを抽出した。 抽出液を実施例1にて示した分析条件に従って、ガスクロマトグラフィーで分析したところ、光学純度 100%の(R)−2−メチルブタン酸メトキシエチル(収率37.7%) が得られた。
【0034】
実施例 10 : (R)−2− メチルブタノールの調製
100ml三口フラスコに50mlの乾燥THF(テトラヒドロフラン) 、1.90g(0.05mol)の水素化リチウムアルミニウムを入れ、5℃以下に冷却し、11.6g(0.1mol) の(R)−2−メチルブタン酸メチル(実施例1にて調製した(R)−2−メチルブタン酸メチル)の5ml THF溶液を、この冷却温度を保ちながら、30分かけて滴下した。 その後、室温まで戻し、3時間攪拌した後、塩酸/氷水中に注意深く注ぎ、酢酸エチルで抽出し、水洗、乾燥、濃縮して、下記分析値を有する6.2gの(R)−2−メチルブタノール(収率70.3%)を得た。
【0035】
〔分析データ〕
なお、赤外吸収分析は、パーキンエルマー社製の赤外分光光度計 FT1600 (KBr錠剤法) にて、またNMR分析は、バリアン社製の UNITY400 (400MHz)を用いてそれぞれ測定を行った。
【0036】
実施例 11 : (R)−2− メチルブタノールの調製
100ml三口フラスコに50mlの乾燥THF(テトラヒドロフラン) 、1.90g(0.05mol)の水素化リチウムアルミニウムを入れ、5℃以下に冷却し、13.0g(0.1mol) の(R)−2−メチル酪酸エチル(実施例8にて調製した(R)−2−メチルブタン酸エチル)の5ml THF溶液を、この冷却温度を保ちながら、30分かけて滴下した。 その後、室温まで戻し、3時間攪拌した後、塩酸/氷水中に注意深く注ぎ、酢酸エチルで抽出し、水洗、乾燥、濃縮して、下記分析値を有する6.5gの(R)−2−メチルブタノール(収率73.7%)を得た。
【0037】
〔分析データ〕
なお、赤外吸収分析は、パーキンエルマー社製の赤外分光光度計 FT1600 (KBr錠剤法) にて、またNMR分析は、バリアン社製の UNITY400 (400MHz)を用いてそれぞれ測定を行った。
【0038】
実施例 12 : (R)−2− メチルブタン酸の調製
100ml三口フラスコに、1.2g(0.010mol)の(R)−2−メチルブタン酸メチルエステル(実施例1にて調製した(R)−2−メチルブタン酸メチル)を、0.82g(0.019mol) の水酸化ナトリウムと20mlメタノール中にて、室温にて24時間攪拌した後、5%塩酸で中和し、エーテル抽出を行い、水洗、硫酸マグネシウムによる乾燥後、濃縮した。 そして、蒸留による精製を行って、下記分析値を有する0.92g の(R)−2−メチルブタン酸(収率87%)を得た。
【0039】
〔分析データ〕
なお、赤外吸収分析は、パーキンエルマー社製の赤外分光光度計 FT1600 (KBr錠剤法) にて、またNMR分析は、バリアン社製の UNITY400 (400MHz)を用いてそれぞれ測定を行った。
【0040】
【発明の効果】
本発明の方法によると、様々な分野での応用が期待される光学活性2−メチルブタノール、光学活性2−メチルブタン酸およびその誘導体が、従来の化学合成法と比較して、簡便にかつ高い光学純度にて生産されるなど、工業的大量生産に適した優れた方法が提供されるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造工程を示す概略図である。
Claims (7)
- 光学活性2-メチルブタン酸、光学活性 2- メチルブタン酸アルキルおよび光学活性 2- メチルブタン酸アルコキシアルキルの製造方法であって、
2-メチルブタン酸アルキルまたは2-メチルブタン酸アルコキシアルキルを、2-メチルブタン酸アルキルまたは2-メチルブタン酸アルコキシアルキルを光学選択的に加水分解するアスパジーラス( Aspergillus )属、バチルス( Bacillus )属またはセラチア( Serratia )属に属する微生物および/または該微生物が産生したプロテアーゼまたはエステル分解酵素を用いて水または緩衝液中で加水分解し、光学活性(S)-2-メチルブタン酸、および光学活性(R)-2-メチルブタン酸アルキルまたは光学活性(R)-2-メチルブタン酸アルコキシアルキルに分割する、工程を含むことを特徴とする方法 - 前記酵素が、アスパジーラス・メレウス(Aspergillus melleus)、アスパジーラス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、およびセラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)からなるグループから選択された一種以上の微生物が産生したプロテアーゼまたはエステル分解酵素である請求項1に記載の方法。
- 前記2-メチルブタン酸アルキルが、2-メチルブタン酸メチルまたは2-メチルブタン酸エチルである請求項1または2に記載の方法。
- 前記2-メチルブタン酸アルコキシアルキルが、2-メチルブタン酸メトキシエチルである請求項1または2に記載の方法。
- 前記光学活性2-メチルブタン酸および光学活性2-メチルブタン酸アルキルの製造方法が、前記光学活性2-メチルブタン酸アルキルまたは光学活性2-メチルブタン酸アルコキシアルキルを加水分解する工程をさらに含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
- 光学活性2-メチルブタノールの製造方法であって、
請求項1から4のいずれかに記載の方法により得られた、前記光学活性2-メチルブタン酸アルキルまたは光学活性2-メチルブタン酸アルコキシアルキルを化学的に還元する工程を含む方法。 - 前記光学活性2-メチルブタン酸アルキルまたは光学活性2-メチルブタン酸アルコキシアルキルを化学的に還元する工程が、リチウムアルミニウムハイドライドの存在下で光学活性(R)-2-メチルブタン酸アルキルを還元する工程を含む請求項6に記載の方法。
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