まず、実施形態を説明する前に、本発明の基本となる光とEBのミックスアンドマッチについて説明する。
図1及び図2は、上記の考えに基づくパターン形成方法を説明するためのもので、図1はリソグラフィシステムの基本概念を示す図、図2はリソグラフィシステムの平面的な配置を示す図である。
これらの図において、1は光ステッパで、例えばエキシマレーザ光を用いたDeep−UVステッパからなる。2はセルプロジェクション方式の電子ビーム露光装置であり、複数台配置されている。3はレジスト及び反射防止膜を塗布すると共に、パターンが露光されたレジストを現像するレジスト塗布・現像装置である。4はレジストをインラインプロセスで処理するために各装置1,2,3間を雰囲気制御された環境下で搬送するための搬送機構である。5は被処理基板としての半導体ウェハである。
また、光ステッパ1において、1aは照射レンズ,1bはLSIパターンの一部が形成されたフォトマスク、1cは投影レンズを示している。さらに、電子ビーム露光装置2において、2aは電子銃,2b,2cは成形アパーチャマスクを示し、成形アパーチャマスク2b,2cの光学的重なりによって、矩形や三角形等の基本図形、更には繰り返しの基本となるセル形状のビームが成形されるようになっている。
このように構成されたリソグラフィシステムにおいて、レジスト塗布・現像装置3で反射防止膜及びレジストが塗布されたウェハ5は搬送機構4によって光ステッパ1に運ばれる。ここで、電子ビームで露光する際のチャージアップを防ぐため、レジスト及び反射防止膜の少なくとも一方は導電性であることが望ましい。光ステッパ1では、ウェハ5上の全面にレチクルのパターンが縮小されて順次露光される。つまり、ウェハ5上に形成すべきパターンの内の比較的寸法精度の緩いラフパターンが描画される。
露光が終了すると、ウェハ5は搬送機構4によって電子ビーム露光装置2に運ばれる。そして、電子ビームによってウェハ5全面の各チップに対して露光が順次成されていく。この際に、電子ビーム露光のスループットを高めるために繰り返しパターンはセルプロジェクション方式で露光するのが望ましい。
ここで、光ステッパ1のスループットに比べて電子ビーム露光装置2のスループットは一般的に低いことから、電子ビーム露光装置2を複数台配置してステッパの処理能力が電子ビーム装置の処理能力で律速されないようにシステムを構成して、ステッパ1から搬出されたウェハ5を複数台の電子ビーム露光装置2で並列処理できるようにしている。但し、システム全体としては、ウェハはシリーズに流れるためこれらの露光装置に対して1台のレジスト塗布・現像装置を配置する。これによって、電子ビーム露光の高い解像性とステッパの高いスループットが両立される。
なお、光ステッパ1のスループットに比べて電子ビーム露光装置2のスループットが高い場合は、複数台のステッパ1に対して電子ビーム露光装置2を1台とすればよい。
全てのパターンがウェハ5全面の全チップに対して描画された後、搬送機構4によってウェハ5は塗布・現像装置3に戻され、ここで現像されてパターン形成が完了する。このようなシステムで使うことができるレジストは、高い解像性と高い感度を有する化学増幅型のレジスト(UV2HSやUVN−HS:シプレー社製)である。
このような化学増幅型のレジストは、空気中の様々な化学物質でその性能が簡単に劣化するため、搬送機構4を設置して各種装置1,2,3内及び各種装置1,2,3間で環境制御された環境下で取り扱うようにしている。この環境制御には、化学的汚染についてだけでなく、物理的汚染,温度,湿度等についても当然制御がされている。これによって、露光前後でのパターン寸法の変化などを抑えている。
上記のようにリソグラフィシステムを構成することによって、0.1μmルールの微細パターンを含むデバイスパターンを高スループットで形成することができる。
図3は、このリソグラフィシステムを用いて0.5μm厚の化学増幅型ネガレジスト(UVN)に形成した微細パターンの一例である。Deep−UVステッパを用いて0.25μmまでのパターン形成を行い、0.25μm以下のパターン形成を電子ビーム露光で行った。現像液はTNAH水溶液、現像の条件は0.27規定で60秒であった。0.1μmまでのパターンが確実に形成できており、解像力的にはこのリソグラフィシステムが十分な性能を持つことが分った。
下記の(表1)は本リソグラフィシステムのスループットを試算した結果である。
スループット試算に使った露光パターンは、0.15μmルールの256MビットDRAMのゲート層である。このパターンを8インチウェハ全面に100チップ並べて露光したときのスループットを試算した。レジストの感度は10μC/cm2 とした。試算に使った電子ビーム描画装置は日立製のHL−800Dである。
この装置の性能は、文献(1) Y.Nakayama etal.,J.Vac.Sci.Technol.,B8(6).1990,p1836.、(2) Y .Shoda etal.,J.Vac.Sci.Technol.,B9(6).1991,p2940.、(3) H.Itoh etal.,J.Vac.Sci.Technol.,B10(6).1992,p2799.を参照した。なお、この試算ではステッパと電子ビーム露光装置は1台ずつの構成とした。
セルプロジェクションを使って(セル数:5個)電子ビーム露光だけで露光した場合のスループットは0.3枚/h、これに対して0.25μmルール以上のパターンはDeep−UVステッパで露光し、それ以下のパターンをセルプロジェクションを使って(セル数:5個)電子ビームで露光した場合には2.8枚/hと遥かに高い値を示す。電子ビーム露光装置を3台配置して、ステッパからのウェハを並列で処理できるようにすれば十分に量産ツールとして使えるスループットを確保できると判断される。つまり、電子ビーム露光の持つ光を越える優れた解像力と光ステッパと同等のスループットを兼ね備えた光リソグラフィ以降の量産システムを実現することができる。
しかしながら、このパターン形成方法及びリソグラフィシステムでは、同層内において、光露光パターンと荷電ビーム露光パターンの位置合わせは、それぞれが同一マークに対して位置合わせを行うため間接合わせとなってしまう。また下地との合わせについても間接合わせとなってしまう。パターン寸法の微細化に伴って益々合わせ精度が厳しくなっていく際に直接合わせにより重ね合わせ精度が向上できないことは大きな問題となっている。
そこで本発明では、同層内における光露光パターンと荷電ビーム露光パターンと位置合わせ、場合によってはクリティカルな位置精度が要求される荷電ビーム露光パターンの下地基板内のパターンに対しての位置合わせを、直接合わせで行うことにより、パターンの重ね合わせ精度の向上をはかる。以下に、本発明の各実施形態を説明する。
以下、本発明の詳細を図示の実施形態によって説明する。
(第1の実施形態)
図4は、本発明の第1の実施形態における、同層内の光露光パターンと電子ビーム露光パターンとの直接合わせ法、及び下地パターンと電子ビーム露光パターンとの直接合わせ法の基本を説明するための図である。
図4において、10は感光材下の基板のパターン、11は感光材中に形成された光露光パターンの潜像、12は潜像を観察するための検出ビ−ム、13は潜像の位置を算出するための手段、14は算出された位置を設計データと比べ電子ビーム露光時のパターン位置を補正制御するための手段、15はパターンを露光するための電子ビーム、16は電子ビ−ムによって形成された電子ビ−ム露光パターンの潜像である。
ここで、検出ビームと露光ビームとを別々に設けているのは、両者の作業を基板を載置したステージの動作中に並行して行われるようにして電子ビ−ム露光の処理能力を上げるためである。
次に、このように構成されたシステムを使っての、同層内の光露光パターンと電子ビ−ム露光パターンとの直接合わせ法と、下地パターンと電子ビ−ム露光パターンとの直接合わせ法について説明する。
(I)同層内の光露光パターンと電子ビーム露光パターンとの直接合わせ法
光とEBとの同層のミックスアンドマッチでは、最初に行われる光露光によって感光材中に潜像ができ上がる。この潜像をあたかも後から行う電子ビ−ム露光の位置合わせマークとして観察し、その検出信号から光露光パターン位置の設計値からのずれを読み取り、その読みとり値によって電子ビ−ム露光パターンの位置を設計値に対して補正を行い、露光していく。
この際に、潜像検出を電子ビ−ムで行う場合には、感光材に照射する電子ビ−ムの総量を感光材を露光するのに必要とされる電子ビームの総量以下に抑えなければならない。潜像検出を光で行う揚合には、光の波長が感光材の感光波長と異なる波長の光を使わなければならい。
このように、後から露光する電子ビ−ム露光のパターン位置を光露光で感光材中に形成される潜像をあたかも位置合わせマークのように使ってその位置を検出し、電子ビーム露光パターンの位置補正をすることで、同層内での両者のパターンが直接合わせで精度高く形成できることになる。
(II) 下地パターンと電子ビ−ム露光パターンとの直接合わせ法
上述の同層内の光露光パターンと電子ビ−ム露光パターンとの直接合わせ法では、両者を直接合わせで精度高く合わせることができることを述べたが、場合によってはクリティカルな位置精度が要求される電子ビ−ム露光パターンを下地基板内のパターン位置に対して合わせたいこともある。この場合には、最初に行われる光露光によってでき上がる感光材中の潜像ではなくて、感光材下の基板内のパターンをあたかも後から行う電子ビーム露光の位置合わせマークとして観察し、その検出信号から光露光パターン位置の設計値からのずれを読み取り、その読みとり値によって電子ビ−ム露光パターンの位置を設計値に対して補正を行い、露光していく。
この際も上述と同様に、感光材に照射する電子ビ−ムの総量を感光材を露光するのに必要とされる電子ビ−ムの総量以下に抑えなければならない。基板内パターン検出を光で行う場合には、光の波長が感光材の感光波長と異なる波長の光を使わなければならい。
このように、後から露光する電子ビ−ム露光のパターン位置を感光材下の基板内のパターンをあたかも位置合わせマークのように使ってその位置を検出し、電子ビ−ム露光パターンの位置補正をすることで、同層内での両者のパターンが直接合わせで精度高く形成できることになる。
(第2の実施形態)
本実施形態以降では同層のミックスアンドマッチリソグラフィシステムで使われる電子ビ−ム露光装置の詳細な構成を説明していく。
図5は、本発明の第2の実施形態に係わる電子ビ−ム露光装置の構成を示す図である。電子銃101から放出された電子ビ−ム102は照射レンズ103により所望の大きさ形状に成形され、対物レンズ104により試料上105にフォーカスされる。対物レンズ104内に試料面上の描画位置を制御する対物偏向器106があり、電子ビームは高速で偏向される。試料105はステージ107の上にあり、調整用マーク台108及びファラデ一カップ109と共に制御され移動する。
試料105と対物レンズ104間に、信号検出用検出器119があり、試料面からの信号を検出する。レーザ干渉計110により、ステージ位置は高精度にモニタされている。さらに、ステージ107はグランドから絶縁され、リターディング電圧印加手段により負の電圧111が印加できるようになっている。これによって、試料に入射する電子ビームを減速し、所望のエネルギーにすることができる。リターディング電圧111のon/offで試料面上でのビーム位置が変化するが、予めマーク台を用いて前記位置ずれを測定し、キャリブレーションしてある。
露光は設定位置にステージ107を移動し、対物偏向器106によりビ−ムを偏向し、描画位置を設定して行う。一方、潜像観察は予め行っておく。露光前に試料にリターディング電圧111を印加して所望の電子ビ−ム条件で電子ビ−ムを当てて、光露光で形成された潜像の位置を計測しておく。パターンの電子ビ−ム露光時には、この潜像位置情報を基に補正された露光パターンの位置を対物偏向器106により決定し、露光していく。
上記電子ビ−ム露光装置において、光露光した感光材中の潜像を観察した一例を図6に示す。図中でL字120に見えるところが光が当たって感光している部分(潜像)である。この揚合、観察しているレジストは現像処理等は一切行っておらず、レジスト表面には、凹凸などはなくレジストの感光/非感光による違いでコントラストができている。この観察を行ったビーム条件として、入射電子ビームのエネルギーは1850eVであった。また、信号の検出には2次電子を使い、検出のために感光材に照射した電子ビ−ムの総量は感光電子ビ−ム総量以下である。
ここで、レジスト中に観察される潜像の現れるメカニズムについて説明する。図18はそのメカニズムを説明する図である。レジスト304に電子ビーム302を照射した場合、照射する電子ビーム302の加速電圧の違いにより、図18に示すように2次電子の発生効率が異なり、絶縁物のであるレジスト304の表面が正又は負にチャージアップする。
加速電圧を2kVに設定し潜像観察を行った場合、図18に示すように、レジスト304の感光されている部分306の抵抗値が低下しており、レジスト表面にチャージした電荷は抵抗値の低いレジスト中を移動していき基板へ移動し、その後グランドへ流れる。一方、未露光部分305は抵抗値が高く、電荷の移動が起こりづらく、レジスト表面が負にチャージアップすることになる。
このようにレジスト表面のチャージアップの状態が、露光部分306と未露光部分305で異なり、レジスト表面の電位の違いがSEM像のコントラストとして観察され、潜像が見える。負にチャージしている部分が白く、その部分より電位が高い部分が黒くコントラストが付き、潜像として観察されている。
次に、このような潜像検出法を使って、潜像の位置を求める方法を説明する。前記図5において、ステージ107の位置情報は、レーザ干渉計110で高精度にモニタされている。また、試料面上の位置を制御する対物偏向器106による偏向領域は、予めステージ107上に設置して有るマーク台108を用いて偏向感度(偏向位置の大きさ)と方向は共にキャリブレーションされている。即ち、ステージ座標と対物偏向器の偏向領域内のマーク検出位置の関係から、そのマークのある位置を知ることができる。
これと同様に、例えば図7に示すように、L字型の潜像120を観察し、設計上のL字潜像が有ると思われる位置にステージ位置を(X1,Y1)移動し、そのステージ位置で対物偏向器106を駆動し、正確に潜像の位置を検出する。対物偏向器106の偏向領域内のL字潜像120の重心位置を(X2,Y2)とすると、試料上でのL字潜像120の位置は(X=X1+X2,Y=Y1+Y2)と求めることができる。この位置情報(X,Y)を元にして、電子ビ−ム露光でのパターンの位置合わせを行う。また、潜像観察用の対物偏向器と描画時のビーム位置制御用の対物偏向器が同一であるため、潜像の位置情報と描画位置は同じ位置に描画される。
このように本実施形態では、光露光による潜像を電子ビ−ムで検出し、光露光による潜像を直接電子ビ−ム露光時のマークとして使用するため、マーク位置の誤差や光マーク検出誤差等が含まれず、光露光パターンと電子ビーム露光パターンを直接重ね合わせすることになり、同層内での両者の位置精度が極めて高いパターン形成ができる。
(第3の実施形態)
ここでは、感光材下の基板内のパターンと電子ビーム露光パターンとを直接合わせした実施形態について説明する。使用した電子ビ−ム露光装置は、前記図5に示したものと同様である。
本実施形態による露光は、ステージ107を設定位置に移動し、対物偏向器106によりビームを偏向し、描画位置を設定して行う。一方、下地パターン観察は予め行っておく。露光前に試料にリターディング電圧111をかけて所望の電子ビ−ム条件で電子ビ−ムを当てて、下地パターンの位置を計測しておく。パターンの電子ビ−ム露光時には、この下地パターン位置情報を基に補正された露光パターンの位置を対物偏向器106により決定し、露光していく。
上記の電子ビ−ム露光装置において下地パターンを観察した一例を、図8に示す。図中で白く見えるところが下地パターン121の部分である。この場合、レジスト表面には、下地パターン121に起因した凹凸などはなく、平坦なレジスト面から下地パターン121の観察ができている。この観察を行ったビーム条件として入射電子のエネルギーは1850eVであり、ここではレジスト膜及び酸化シリコン膜下に形成された下地パターン121の文字マークを検出した例を示している。また、信号の検出には2次電子を使い、検出のために感光材に照射した電子ビ−ムの総量は感光電子ビ−ム総量以下である。
ここで、レジスト上で基板下地のパターンが観察されるメカニズムについて説明する。図19は、そのメカニズムを説明する図である。レジスト405に低加速電子ビーム404を照射した場合、照射する電子ビーム404の加速電圧の違いにより、図20に示すように2次電子の発生効率が異なり、絶縁物の表面が正又は負にチャージアップする。
一般的に、レジスト表面を低加速電子ビーム404で照射した場合、レジスト表面からレジストの抵抗値,静電容量に依存して、レジスト中を伝わって基板中に電子は逃げていく。しかし、図19に示すように、下地基板406の表面形状が異なる場合、レジスト膜厚がレジスト下の基板形状に依存して変化する。レジストの厚さが異なることにより、レジストの抵抗値,静電容量値基板形状によって変化する。このようなレジストの表面を2kV加速電圧電子ビームで観察を行った場合、レジスト表面は負に帯電し、その電圧は基板下地形状に依存したレジストの抵抗値,静電容量値に依存して異なる。
このようなレジスト表面の電位の違いがSEM像のコントラストとして観察され、基板下地パターンとしてより負にチャージしている部分が白く、その部分より高い部分が黒くコントラストが付き、基板下地パターンとして観察される。従って、レジスト表面をチャージアップさせることにより、レジスト下の基板パターンを観察でき、この基板下地パターンを位置合わせマークのように使ってその位置を検出し、その位置情報を基に電子ビーム露光パターンの位置補正をすることで高い重ね合わせ精度を持つパターンを形成することができる。
次に、このような下地パターン検出法を使って、パターンの位置を求める方法を説明する。前記図5において、ステージ107の位置情報はレーザ干渉計110で高精度にモニタされている。また、試料面上の位置を制御する対物偏向器106による偏向領域は、予めステージ107上に設置してあるマーク台108を用いて偏向感度,位置の大きさ,方向は共にキャリブレーションされている。即ち、ステージ座標と対物偏向器の偏向領域内のマーク検出位置の関係から、そのマークのある位置を知ることができる。
また、前記図7に説明したのと同様に、下地パターン121を観察し、設計上の下地パターン121の位置にステージ位置を(X1,Y1)移動し、そのステージ位置で対物偏向器106を駆動し、正確に潜像の位置を検出する。対物偏向器106の偏向領域内の下地パターン121の重心位置を(X3,Y3)とすると、試料上での下地パターン121の位置は(X=X1+X3,Y=Y1+Y3)と求めることができる。この位置情報(X,Y)を元にして、電子ビ−ム露光でのパターンの位置合わせを行う。また、下地パターン観察用の対物偏向器と描画時のビ−ム位置制御用の対物偏向器が同一であるため、下地パターン121の位置情報と描画位置は同じ位置に描画される。
このように本実施形態では、下地パターン121を電子ビ−ムで検出し、下地パターン121を直接電子ビームのマークとして使用するため、マーク位置の誤差及び光マーク検出誤差が含まれず、下地パターン121と電子ビーム露光パターンを直接重ね合わせすることになり、異層間での両者の位置精度が極めて高いパターン形成ができる。
(第4の実施形態)
第1の実施形態と同様な構成を持ったリソグラフィシステムにおいて、露光の前後で、使用するレジストの静電容量が変化することを用いて露光パターンを形成した場合の潜像観察について説明する。
ここでは、露光された領域の静電容量が増加した例について説明を行う。図21(a)は露光されていないレジスト表面の電圧が電子ビームにより変化する様子を示している。走査型電子顕微鏡等のスキャンは、図21(c)に示すように階段状に走査する。ある時間Δtだけある点(未露光領域)に止まっていると、図21(a)に示すように表面電位が変化し、Δt後にはV1まで電位が上昇する。一方、露光により、レジストの静電容量が変化した後は、図21(c)に示すようにある時間Δtだけある点(露光領域)に止っていると、図21(b)に示すように表面電位が変化し、Δt時間後にはV2まで電位が上昇する。
このように、レジストが露光されているときの電位V2は、レジストが露光されていないときの電位V1とは異なる。つまり、露光・未露光により、レジスト表面の電位が変化し、その電位差をコントラストとして観察することにより、潜像が検出される。
このように、露光の前後により、静電容量が変化することを用いて、パターンを形成することにより、レジスト中の露光の情報をレジストを現像することなく潜像の観察ができ、この潜像をあたかも後工程の位置合わせマークのように使ってその位置を検出し、その位置情報を基に電子ビーム露光パターンの位置補正をすることで、前工程で露光した情報を検出することにより、次工程と前工程のパターンが直接合わせを行うことができ、デバイスを精度良く形成することができる。
(第5の実施形態)
第1の実施形態と同様な構成を持ったリソグラフィシステムにおいて、露光の前後で、レジストの抵抗値・静電容量が変化することを用いて露光パターンを形成した場合の潜像観察又は下地パターン観察における、レジスト膜厚と観察電子ビームとの関係について述べる。
潜像は、露光・未露光部の抵抗値・静電容量が変化することにより観察される。このとき、検出信号のS/N関係上潜像観察時にレジストを露光してしまう場合がある。レジスト内部まで露光されると、潜像観察時に被測定レジストを露光してしまい、露光・未露光部の抵抗値・静電容量の差がなくなり、レジスト表面の電位が一定となる。この場合、潜像を観察することができなくなる。
図22は、膜厚500nmのレジストに対し、ビーム加速電圧を1kV,2kV,3kV,4kVと変えて全面スキャンした後に、2kVの加速電圧で潜像観察した結果を示す顕微鏡写真である。この図に示すように、4kV以上の加速電圧でレジスト表面を観察するとレジスト内部が感光してしまい、感光領域は黒く観察され、感光領域内の潜像が観察されなくなる。
これから、パターン形成用の電子ビームより、潜像観察用の電子ビームはエネルギーが低く、かつレジストの膜厚が潜像観察に用いられる電子ビームのレジスト中での飛程距離より厚くなければならないことが分る。この条件を満たしていないと、安定して潜像観察を行うことができないことが分る。また、パターン形成用の高加速電子ビームはレジストを十分透過し、パターンを形成する。
以上の条件を満足することにより、レジスト中の露光の情報をレジストを現像することなく潜像の観察ができ、この潜像をあたかも後工程の位置合わせマークのように使ってその位置を検出し、その位置情報を基に電子ビーム露光パターンの位置補正をすることで、前工程で露光した情報を検出することにより、次工程と前工程のパターン直接合わせを行うことができ、デバイスを精度良く形成することができる。
(第6の実施形態)
第1の実施形態と同様な構成を持ったリソグラフィシステムにおいて、露光の前後で、レジストの抵抗値・静電容量が変化するような物質を用いて露光した場合の潜像観察において、潜像又はレジスト下地パターン観察における、観察電子ビームの加速電圧の関係について述べる。
潜像は、露光・未露光部の抵抗値・静電容量が変化し、レジスト表面がチャージアップすることにより観察される。しかし、図23に示すように、潜像観察時のビーム加速電圧に依存して潜像の観察状態が変化する。これは、前記図20に示すように、絶縁物に電子ビームを照射した場合、加速電圧に依存して絶縁物の表面のチャージの条件が異なり、先の実施形態の条件においても加速電圧1kVでは潜像を観察することができない。
絶縁物の表面が負にチャージした場合は、前記図18に示すモデルのように潜像が観察される。一方、低加速電子ビーム502の照射により表面が正にチャージした場合は、図24に示すモデルのように、チャージアップによりレジスト504の表面と基板間に電界508が生じ、その電界の力により表面に正の電荷503がレジスト504中を流れ、レジスト表面は正に帯電することができない。このため、レジスト504の感光されている部分506と未露光部分507でチャージアップの状態に明確な差を設けることはできず、潜像は観察されない。即ち、潜像の観察は図20に示すV2より高い加速電圧、V1より低い加速電圧の電子ビームを用いて、レジストの表面を負にチャージアップさせたときに潜像が観察されることが分る。
以上の条件を満足することにより、レジスト中の露光の情報をレジストを現像することなく潜像の観察ができ、この潜像をあたかも後工程の位置合わせマークのように使ってその位置を検出し、その位置情報を基に電子ビーム露光パターンの位置補正することで、前工程で露光した情報を検出することにより、次工程と前工程のパターンが直接合わせを行うことができ、デバイスを精度良く形成することができる。
(第7の実施形態)
図9は、同層のミックスアンドマッチリソグラフィシステムで使われる他の電子ビ−ム露光装置の詳細な構成を説明するための図である。なお、ここでは潜像を使った直接合わせを例に挙げて実施形態を説明し、下地パターンを使っての直接合わせについては省略する。
電子銃101から放出された電子ビ−ム102は照射レンズ103により所望の大きさ形状に成形され、対物レンズ104により試料上105にフォーカスされる。対物レンズ104内に試料面上の描画位置を制御する対物偏向器106があり、電子ビームは高速で偏向される。試料はステージ107の上にあり、調整用マーク台108,ファラデ一カップ109と共に制御され移動する。試料105と対物レンズ104間に、信号検出用検出器119があり、試料面からの信号を検出する。
一方、潜像観察用低加速電子銃131から放出された電子ビーム132は、照射レンズ133により所望の大きさ形状に縮小され、対物レンズ134により試料上105にフォーカスされる。これと同時に、対物レンズ134内に設定されている偏向器136により、試料面105上で電子ビーム偏向走査し、潜像観察用検出器139により潜像を得る。
ステージ107の位置情報は、レーザ干渉計110で高精度にモニタされている。また、電子ビームによる試料面上の描画位置を制御する対物偏向器106は、予めステージ107上に設置して有るマーク台108を用いて、描画位置はキャリブレーションされている。同様に、潜像観察用の低加速電子ビ−ム用の偏向器115の偏向位置も、マーク台108を用いて偏向位置はキャリブレーションされている。
即ち、描画用の対物偏向器106と潜像検出用の偏向器136の相対的な位置関係は求められている。例えば図10に示すように、低加速電子ビーム132でL字潜像120を観察し、L字潜像120のステージ位置を(X1,Y1)、そのステージ位置で低加速電子ビーム118の偏向により正確に偏向領域内のL字潜像120の重心位置を求めると、(X4,Y4)となる。試料105上での低加速電子ビ−ム系でのL字潜像の位置は(X=X1+X4,Y=Y1+Y4)と求めることができる。
この位置情報(X,Y)と描画用偏向器106と潜像観察用の偏向器136の相対的な位置関係から、次工程のパターン位置を対物偏向器106にデータを入力し、位置制御し描画を行い、前工程描画位置との位置合わせを行う。このときに使用される潜像観察用の偏向器136は、静電型の偏向器を用いても電磁型偏向器を用いても問題はないが、静電型の偏向器を用いた方が位置精度の再現性は良い。
光露光による潜像を電子ビ−ムで検出し、光露光による潜像を直接電子ビ−ムのマークとして使用するため、マーク位置の誤差及び光マーク検出誤差が含まれず、光露光パターンと電子ビ−ム露光パターンを直接重ね合わせすることになり、同層内での両者の位置精度が極めて高いパターン形成ができる。
(第8の実施形態)
上記構成による電子ビーム露光装置において、低加速電子ビ−ムの試料105に入射するエネルギーは、レジスト材質,レジスト膜厚により潜像観察に適切な値が存在する。
図11はその一例で、同一ウェハを入射電子ビームのエネルギーが異なる場合の潜像の観察例である。図11(a)は入射電子ビ−ムのエネルギーを1850Vに設定した場合であり、L字潜像120が鮮明に観察される。図11(b)は入射電子ビ−ムのエネルギーを800Vに設定した場合であり、L字潜像120の鮮明さが劣化する。図11(c)は再び、電子ビ−ムのエネルギーを1850Vに設定した場合であり、L字潜像120が鮮明に観察できる。
(a)は(b)と比較した場合、L字潜像120の情報が顕著に変化して観察される。L字潜像120が顕著に観察されることにより、位置情報をS/N良く観察することが可能となる。これら入射電子のエネルギーの変化は、電子銃部131での加速電圧は一定であり、試料に印加する電圧を変化し試料に入射する電子ビ−ムのエネルギーを変化させた。また、潜像観察用低エネルギー電子ビ−ム132の試料105への入射エネルギーは電子銃部の電子ビームの加速電圧を可変し変化させても良く。またはリターディング電圧111を変化させても同様の効果を得ることができる。
レジストの材質、膜厚に依存する潜像観察に最適な観察用の加速電圧を設定することにより、前工程の光露光によりレジスト中に形成されている潜像を電子ビームで鮮明に検出することができる。画質、即ちS/Nが向上すると潜像パターンの位置検出精度が向上するため、光露光パターンと電子ビーム露光パターンをより高い精度で直接重ね合わせすることになり、同層内での両者の位置精度が著しく高いパターン形成ができる。
(第9の実施形態)
図12は、同層のミックスアンドマッチリソグラフィシステムで使われる他の電子ビーム露光装置の詳細な構成を説明するための図である。なお、ここでは潜像を使った直接合わせを例に挙げて実施形態の説明し、下地パターンを使っての直接合わせについては省略する。
パターン露光のための光学系は前記図5と基本的に同様である。本実施形態では、潜像観察用としてHe−Neレーザ141を光源とするレーザ顕微鏡を組み込んである。顕微鏡から放出されたレーザ光142は光露光の潜像上をスキャンして、その反射光が検出器143に検出されて潜像イメージが取得される。ステージ107の位置情報はレーザ干渉計110で高精度にモニタされている。そして、潜像観察用のレーザ顕微鏡で得られるイメージの位置は、マーク台108を用いて予めレーザ干渉計との間でキャリブレーションされている。
例えば図13に示すように、レーザ顕微鏡でL字潜像120を観察し、L字潜像120のステージ位置を(X1,Y1)、そのステージ位置でレーザビーム142の走査により正確に走査領域内のL字潜像120の重心位置を求めると、(X5,Y5)となる、試料105上でのレーザ顕微鏡でのL字潜像の位置は(X=X1+X5,Y=Y1+Y5)と求めることができる。この位置情報(X,Y)と描画用偏向器106とレーザ顕微鏡との相対的な位置関係から、次工程のパターン位置を対物偏向器106にデータを入力し、位置制御し描画を行い、前工程描画位置との位置合わせを行う。
本実施形態によれば、電子ビーム露光の持つ光を越える優れた解像力と光ステッパと同等のスループットを兼ね備えた光リソグラフィ以降の量産システムを提供することができる。
(第10の実施形態)
図14は、本発明における直接合わせ法を用いて同層のミックスアンドマッチリソグラフィシステムを実行する際の処理フローを示したものである。
デバイスパターンCADデータは、リソグラフィシステムで使う光ステッパの限界解像度より緩い解像寸法値を境界にして(これを以下境界寸法値と呼ぶ)、光露光用のレチクルCADデータと電子ビーム露光用のCADデータに分割される。
レチクルCADデータは一般のレチクル作製プロセスに送られ、レチクルが作製される。作製されたレチクルが光ステッパに装着され、上述の境界寸法値より大きなパターンを一括転写するために使われる。一方、電子ビーム露光用のCADデータは電子ビーム露光装置で使用できるようにデータ変換され、電子ビーム露光装置に送られる。
(I)図5に示した電子ビーム露光装置を使う場合
光ステッパによって一括露光されたウェハが電子ビーム露光装置に装着されると、電子ビームのエネルギーが潜像検出、又は下地パターン検出に適した値に調節される。まず、ウェハを連続移動させ、全面に電子ビームを照射して潜像の正確な位置を求める。この値とパターン設計データとの比較が行われ、電子ビーム露光で形成するパターンの位置が設計データに補正が加えられて最適値に修正される。この後、再びウェハが連続移動し、ウェハ全面に光露光では解像できないパターンが電子ビームによって形成される。全パターンの形成が完了した後、ウェハは現像装置に送られ、現像されて所望のレジストマスクが得られる。
(II)図9又図12に示した電子ビ−ム露光装置を使う場合
光ステッパによって一括露光されたウェハが電子ビ−ム露光装置に装着されると、電子ビ−ムのエネルギーが潜像検出、又は下地パターン検出に適した値に調節される。この装置では、潜像の位置検出と微細パターンの露光とがほぼ並行して行われる。露光用の電子ビ−ムと潜像/下地パターン検出用のビームは近接して並んでいるため、ウェハの連続移動が始まると検出ビ−ムがまずウェハに照射され、例えばフレーム当たりの潜像/下地パターンの検出を始め、それらが設計値からどれくらいずれているかが正確に求められる。次のフレームの検出を始めると同時に、露光用の電子ビ−ムが先のずれデータを基に電子ビーム露光のパターン位置が最適に補正されたデータを使って既に検査されたフレームの露光を並行して始める。
このような方式の繰り返しで、ウェハ全面に光露光では解像できないパターンが電子ビ−ムによって形成される。全パターンの形成が完了した後、ウェハは現像装置に送られ、現像されて所望のレジストマスクが得られる。
このように、本発明の実施形態では、光ステッパの限界解像度より緩い境界寸法のパターンは光露光で、それ以下の微細なパターンは電子ビ−ム露光で受け持ち、両者の合わせ/電子ビーム露光パターンと下地パターンとの合わせとも直接合わせで行うことで、光露光にとっては、限界解像力より緩いパターンの形成を受け持つことで、レチクル作製が簡単、露光プロセス裕度が広くなる、電子ビ−ム露光にとっては、境界寸法値以下のパターン形成だけを受け持つことで電子ビーム露光時間が大幅に短縮される、というメリットを持つ。従ってリソグラフィシステム全体としては、電子ビ−ム露光の持つ光を越える優れた解像力と光ステッパと同等のスループットと直接合わせによる超高精度合わせを兼ね備えた量産システムを実現することができる。
(第11の実施形態)
図15は、本発明のリソグラフィシステムを用いたデバイスの作製に関する実施形態を説明するための図である。ここでは、MOSFETのゲート電極加工を例に挙げて説明する。
図15(a)は、本実施形態により製造される半導体デバイスの基本的な構造を示す図である。同図において、半導体基板201の表面には素子分離用酸化膜202とゲート酸化膜203が形成され、その上にはポリシリコン領域204とレジスト205が堆積されている。ここでは、Si3 N4 を酸化マスクに使用する選択酸化法であるLOCOS(Local Oxidation of Silicon)による段差も示しているが、他の素子分離方法、例えばSTI(Shallow Trench Isolation)等における段差にも同様に適用できる。レジスト205は、Deep−UV光及び電子ビ−ムに感光するレジスト、例えばVN−HSでその厚さは500nm程度である。
図15(b)は、本実施形態により製造される半導体デバイスの他の構造を示す図である。同図において、ゲート電極領域がポリシリコン領域204とタングステンシリサイドなどの低抵抗層領域206から構成され、それらの上にタングステンシリサイドなどを反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)で加工するときのマスク材及びSAC(Self Align Contact)工程に使われるシリコン窒化膜領域207が堆積され、さらにレジスト領域205が堆積されている。上記マスク材としては、上記のほかにシリコン酸化膜などを用いてもよい。また、低抵抗層領域206はシリサイドに限定されず、タングステンなどの金属でもよい。
図15(c)は、微細パターンのため電子ビ−ムで露光するゲートの電極のパターンの平面図である。同図において、208はコンタクトパターン、209はゲートパターン、210はソース・ドレインパターンを示している。電子ビームによる露光では焦点震度が数μm以上と深いため、通常のDeep−UV光による露光とは比較にならないほど段差に対する露光裕度がある。従って、素子領域と素子分離領域の間に生じている段差部においてもレジストが切れたりすることなく精度よくパターニングすることが可能である。
以下、図16(a)から(d)を参照して、本実施形態によるリソグラフィシステムを使った半導体製造方法によりゲート電極を形成する工程を説明する。
図16(a)は、図15(a)の状態を左の方から斜めに見た斜視図であり、半導体基板201の上には、ゲート酸化膜領域203及び素子分離酸化膜領域202、ポリシリコン領域204(200nm)、レジスト領域205(500nm)が順に積層されている。ここで、レジストはネガであり、ゲートのみを電子ビ−ム露光で、その他はDeep−UV光で露光して全パターンを形成する。
まず、Deep−UV光によるパターン露光をする。図16(b)はレジスト中に光露光によって潜像208ができ上がっている様子を示す。次に、電子ビ−ム露光装置を用いて、潜像/下地パターンの検出を行い、それらの情報を基に電子ビ−ム露光のパターン位置を最適に修正し細線部分の露光を行う。これによってでき上がる電子ビ−ム露光の潜像209も合わせて図16(b)に示す。
次いで、現像を行って図16(c)の状態を得る。ここで、レジストの現像にはTMAH水溶液、0.27規定のものを使っている。この後、このレジストパターンに基づいてRIE工程が行われ、図16(d)に示すようにゲート電極の形を得ることができる。
なお、先に図15(b)に示したように、WSi等の低抵抗シリサイド領域とポリシリコンの積層構造をゲート電極として用いる際には、レジストマスクで最後までRIEを行うことがRIE選択比の関係から難しいことから、一度SiN領域にパターン転写して、これをマスクにWSiとポリシリコンを改めてRIEすることになる。ポリシリコンのみの場合にはレジストとのRIEの選択比が10程度なので、レジストマスクのみで十分であることは勿論、SAC工程のストッパ膜として使われる。
このように本実施形態によれば、電子ビ−ム露光の持つ光を越える優れた解像力と光ステッパと同等のスループットと直接合わせによる超高精度合わせを兼ね備えてレジストパターンを形成することができる。さらに、電子ビ−ムを微細パターンの露光に使うことで素子領域と素子分離領域の間に必然的にできてしまう段差部に対しても焦点深度に余裕ができ、微細パターンを精度良く形成することができる。これは、光露光に必要となってきている段差低減のための平坦化工程を省略できることにもなり、工程短縮に寄与できる。この方法は、またMOSFETのみではなく、バイポ−ラ型トランジスタの微細領域のパターニングにも応用できるものである。
(第12の実施形態)
図17は本発明の第12の実施形態を説明するための図である。上述してきたように本発明の特徴の一つは、現像前に下地パターン、光露光によって形成された潜像、電子ビーム露光によって形成された潜像の相互の位置関係を読みとれることにある。従って、このメリットをうまく使えばそれぞれの重ね合わせ精度、さらには予想解像度までチェックして、良いものだけを現像工程に送り出すことができる。これは製品の歩留まりを上げるうえで極めて大きなメリットとなる。
図17は、このメリットである機能をリソグラフィ工程に組み込んだ場合の処理フローを示したものである。本実施形態において、デバイスパターンCADデータからレチクル用CADデータ及び電子ビーム露光用CADデータを作成し、各々の露光装置に供給するまでは先の実施形態と同じであるので、その説明は省略する。
同層のミックスアンドマッチリソグラフィによって電子ビーム露光まで完了したウェハのレジスト中には潜像が形成されている。このウェハを再度電子ビーム又は光によって検査すると電子ビーム露光によって形成された潜像の位置が求められる。この工程によって、下地パターン、光露光によって形成された潜像、電子ビーム露光によって形成された潜像の位置情報が全て求められたことになる。場合によっては下地パターン、光露光によって形成された潜像のどちらか一方だけしか求めていないこともあるので、その揚合には未計測のパターン又は潜像の位置検出が必要になる。
その後、それらの位置が許容以内に入っているかどうかを判定する。この際に設計データをも組み入れて許容以内に入っているか否か判断する場合もある。判断の結果、合格したものだけが現像工程に送られる。不合格になったウェハはレジスト塗布工程に送り返され、既露光のレジストが剥離され、新たなレジストが塗布され、再び同層のミックスアンドマッチリソグラフィ工程でパターン形成が行われる。
この工程において使われる装置は、上述の装置に下地パターン、光露光によって形成された潜像、電子ビーム露光によって形成された潜像の位置情報及びパターンの設計データを比較して許容値以内か否かを判断する手段を加えただけでよい。装置の動作としては電子ビーム露光の際にウェハに対して行われる動作と殆ど変わらず、露光に用いる電子ビームがウェハに照射されないことだけがことなる。
また、予め潜像と現像後のレジストパターンとの比較を行っておけば、潜像データから仕上がり後のパターン形状を予測することもできる。さらに、潜像とあるプロセス条件における仕上がりレジスト寸法の関係を求めておけば、潜像データから仕上がりレジスト寸法の関係を求めることができる。
これによって、さらに程度の悪いものをふるい落とせば現像後に得られるレジストパターンはその後のプロセスに取って何ら不具合のないレジストマスクとなる。従って、ますます歩留まりの向上に寄与することができる。
また、同層のミックスアンドマッチを行って形成された潜像の観察は、上述した装置において行ってもよく、又は潜像観察用の装置で行い、位置精度,形状,潜像の寸法を求めても良い。その潜像データと設計データを比較し、許容値以内か否かを判断し、上述したように工程を進めていけばよい。この場合、描画装置を潜像の観察で占有することなく、描画装置は次のウェハ/転写用マスクの描画し、潜像の観察には専用の観察装置を用いるため、システム全体としての描画スループットのさらなる向上に寄与することができる。
(第13の実施形態)
図25は、本発明の第13の実施形態に係わるパターン形成方法の処理手順を示す図である。
第1の実施形態と同様のリソグラフィシステムにおいて、露光の前後で、レジストの抵抗値・静電容量が変化するような物質を用いて露光した場合の潜像観察、又は下地基板パターン観察において、レジスト膜厚と観察電子ビームの関係について述べる。
潜像は、露光・未露光部の抵抗値・静電容量が変化することによって観察される。このとき、検出信号のS/N関係上潜像観察時にレジストを露光してしまう場合がある。
この条件で、潜像を観察し、後工程の位置合わせとして用いて、その後に現像処理を行った結果を、図26の顕微鏡写真に示す。図中の701は50kVの電子ビームで露光したパターン、702は2kV電子ビームで露光したパターンである。このとき、潜像観察に用いた電子ビームは2kVの加速電圧を用いた。高加速電子ビームでパターニングされたレジスト上の表面に2kVで観察した後にレジストが、ネガレジストを用いたために餃子の皮のように残る。しかし、低加速観察により露光した下の領域には、高加速で形成されたパターンがあることが分る。
このような場合、潜像観察を行った後、現像処理を行う前に、ウェット又はドライ技術を用いて、ウェハ全面を潜像観察に用いた加速電圧により露光された領域厚のレジストを除去する。具体的には、先の実施形態と同様に、低加速電子ビームにより潜像観察を行い(S1)、その結果に基づいて高加速電子ビームの位置補正(S2)及び高加速電子ビームによるパターンの露光(S3)を行う。次いで、任意のレジスト膜厚を除去(S4)した後に、通常の現像処理(S5)を行う。これにより、潜像観察により露光された図26にあるような膜を除去することができ、希望とするパターンを得ることができる。
また、ポジレジストを用いた場合は、ネガレジストとは逆に、潜像観察を行った領域は現像後に膜減りを起こすが、パターニングを形成する上では問題ない。従って、ポジレジストの場合は、必ずしも任意のレジスト膜を除去する工程(S4)は必要ない。但し、ポジレジストでネガレジスト同様の処理を行っても何等問題はない。
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。光ステッパは必ずしもDeep−UVステッパに限るものではなく、他の波長域のものを用いることができる。電子ビーム露光装置はセルプロジェクション方式が最も望ましいが、電子ビーム露光で形成するパターンが少ない場合には通常の描画方式を採用しても良い。また、インラインで使用する光ステッパ及び電子ビーム露光装置の台数は仕様に応じて適宜変更可能である。さらに、電子ビームの代わりにイオンビームを用いたイオンビーム露光装置を用いることも可能である。
また、本発明は異なる装置で露光する場合に限らず、同一装置で露光する場合のずれ補正に適用することもできる。例えば、図27(a)のようなパターンを801,802,803の順に高加速電子ビームで露光する場合、外乱により露光パターン802のみがずれたとすると、そのままでは図27(b)のように露光パターン802と露光パターン803が離れることになる。このような場合、低加速の電子ビームで露光パターン802の潜像を検出して、パターン803の露光位置を補正することにより、図27(c)のように露光パターン802,803を繋ぐことができる。
また、実施形態では製造プロセスに関して、MOSFETのゲート電極について中心的に説明してきたが、同様の手法を例えば素子領域,コンタクトホール,金属配線層など全てのパタ−ニングに応用可能であることは勿論である。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々変形して実施することができる。