本発明は、自動車等の移動体の窓ガラス面やボディの絶縁性部材表面に配設した線条のアンテナであって、テレビジョン電波の受信や、自動車電話、携帯電話、パーソナル無線、業務用無線、PHS(Personal Handyphone System)などの超短波帯以上の電波の送受信に好適なアンテナに関するものである。
従来、自動車用電話、携帯電話の送受信用や、テレビジョン放送波受信用のアンテナとして、ポールアンテナが実用化され広く使用されてきたが、これらのポールアンテナは車体から突出した構造となっているので、安全上、および外観上好ましくないばかりでなく、洗車時に支障になり、さらに折損の恐れがあるなどの欠点があった。
そのため近年、突起物のないアンテナとして、自動車の窓ガラスにアンテナパターンを直接印刷して設けたガラスアンテナや、アンテナパターンを印刷したシールまたはシートを窓ガラスに貼付するようにしたアンテナが要望され、実用化されてきている。
自動車電話用、携帯電話用のアンテナとして実用化しているガラスアンテナやシールアンテナは、送受信利得もポールアンテナに比較して同等性能を有するものが実用化されるようになっている。
例えば、特開平6−152216号公報には、ガラス面における上下方向の長さが約1/4波長の放射用パターンと、ガラス面における左右方向の長さが約1/4波長の接地用パターンとからなり、接地用パターンをガラス面の左右端の少なくとも一方に設け、接地用パターンを左端に設けるときには放射用パターンを接地用パターンの左側辺部に寄せて配設し、接地用パターンを右端に設けるときには放射用パターンを接地用パターンの右側辺部に寄せて配設し、前記接地用パターンを中抜き形状としたことを特徴とする自動車電話用ガラスアンテナが開示されている(特許文献1)。
また、特開平6−314921号公報には、車両用窓ガラスに配設された車両用のガラスアンテナにおいて、垂直線条の先端に水平線条を接続した第1のエレメントと、垂直線条の先端に接続される水平線条と、別の水平線条を前記第1のエレメントの水平線条を挟むように上下に近接して配設し、この2本の水平線条により第1のエレメントの端部を包むように接続した第2のエレメントを少なくとも具備するようにしたことを特徴とする車両用ガラスアンテナが開示されている(特許文献2)。
さらに、特開平8−148921号公報には、自動車用の窓ガラスに導体パターンを用いて形成した自動車電話用ガラスアンテナ装置において、円形の放射用パターンと、この放射用パターンの外側に中心を同じくするドーナツ形状の接地用パターンとで形成したことを特徴とする自動車電話用ガラスアンテナ装置が開示されている(特許文献3)。
一方、テレビジョン放送波受信用の車両用ガラスアンテナとして実用化しているガラスアンテナは、受信性能、利得もポールアンテナに比較して同等のものが実用化され、開示されている。
例えば、特開平7−263934号公報には、車両用の後部窓ガラスの防曇用加熱線条の上部余白部に配設された車両用のガラスアンテナにおいて、水平線条と垂直線条から構成される第1のアンテナと共に、窓ガラスの左半分あるいは右半分の領域であって、該第1のアンテナの余白部に、水平線条を主たる構成とする主エレメントの一部から垂直に伸び、該垂直に延びる線条に横長の長方形状エレメントを接続し、該長方形状エレメントの短辺の一部から引き出し側方部において給電する第2のアンテナを具備するようにした車両用ガラスアンテナを開示した(特許文献4)。
また、特開2001−119223号公報には、車両用の側部窓に設けたガラスアンテナに関し、特にTV全帯域の電波を好適に受信するガラスアンテナが開示されている(特許文献5)。
さらに、特開2001−332923号公報には、導電性の枠体によって支持されているガラスに矩形状の平板フィルムアンテナ素子を設け、TV全帯域の電波を好適に受信するフィルムアンテナが開示されている(特許文献6)。
特開平6−152216号公報
特開平6−314921号公報
特開平8−148921号公報
特開平7−263934号公報
特開2001−119223号公報
特開2001−332923号公報
しかしながら、前記特許文献1〜特許文献3に示されるような自動車電話用または携帯電話用ガラスアンテナや、特許文献4〜特許文献6などに示されるようなTV放送波用ガラスアンテナは、いずれもアンテナの設置場所やアンテナ周辺の構造物によりアンテナ性能への影響を受けやすいため、車両毎にアンテナエレメントの調整やアンテナ設置位置を調整しなければならず、また、調整を行った後でも人体等の影響によりアンテナ性能が大きく変化していた。
また、特許文献1〜特許文献3に示される自動車電話用または携帯電話用ガラスアンテナは、ポールアンテナと比較して利得が低く、アンテナ利得のさらなる向上が望まれており、さらに、特許文献4〜特許文献6に示されるTV放送波用ガラスアンテナは、アンテナ給電点付近にアースを設ける必要があるだけでなく、さらに受信周波数に対してアンテナ設置条件が限られているものであり、特に、特許文献4は自動車等のリアウインドウに、特許文献5はサイドウインドウに、特許文献6は建物等の構造物の大型の窓やドアなどに限定して配設せざるを得ないものであった。
特に、特許文献4〜特許文献5に示されるTV放送波用ガラスアンテナについては、アンテナのインピーダンスをTV放送波受信全帯域にわたって受信機の入力インピーダンスに合わせることは困難であった。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、アンテナの設置場所や人体等によるアンテナ性能への影響を受けにくくし、実質的なアンテナエリアを小さくするとともに、従来以上にアンテナ性能を向上させることのできる自動車電話、携帯電話用のアンテナやTV放送波受信用のアンテナとして好適であり、さらにパーソナル無線用、業務用無線、PHSなどの電波を送受信することも可能で、しかもアンテナを配設する窓ガラス面上の位置にとらわれにくい車両用アンテナを提供することを目的とするものである。
すなわち、本発明は、自動車等移動体の窓ガラス面またはボディの絶縁部材表面に配設した第1の給電点より延ばした多角形状または円弧状の閉ループ形状の第1のエレメントと、前記第1のエレメントの内側で第1の給電点近傍に設けた第2の給電点より第1のエレメントに近接するように設けた第2のエレメントとからなり、前記第1のエレメントの線条長さは送受信電波の1波長以上、かつ第2のエレメントの線条長さより長くし、第2のエレメントの線条長さを送受信電波の3/4波長または5/4波長として、前記表面にアンテナエレメントのパターンを導電性のセラミックペーストで直接印刷、あるいはパターンを印刷したシールまたはシートを貼設し、前記第1の給電点と第2の給電点のそれぞれに同軸ケーブルの外部導線と内部導線を接続したことを特徴とする車両用アンテナである。
あるいは、本発明は、前記第2のエレメントの長さが送受信電波の3/4波長のときに、第2の給電点から送受信電波の1/2波長の線条長さ部分における前記第2のエレメントと第1のエレメントとの間隔を0.5〜10mmとしたことを特徴とする上述の車両用アンテナである。
あるいはまた、本発明は、前記第2のエレメントの長さが送受信電波の5/4波長のときに、第2の給電点から送受信電波の1波長の線条長さ部分における前記第2のエレメントと第1のエレメントとの間隔を0.5〜10mmとしたことを特徴とする上述の車両用アンテナである。
あるいはまた、本発明は、前記第1のエレメントの長さを前記第2のエレメントの長さより送受信電波の1/4波長以上長くしたことを特徴とする上述のいずれかに記載の車両用アンテナである。
あるいはまた、本発明は、前記第1のエレメントの長さは、送受信電波の波長をλとした時に(1+n/2)λ(nは0〜4の整数)としたことを特徴とする上述のいずれかに記載の車両用アンテナである。
本発明によれば、アンテナの設置場所や人体等によるアンテナ性能への影響を受けにくくすることができ、実質的なアンテナエリアを小さくすることができる。
また、従来以上にアンテナ性能を向上させることのできる自動車電話、携帯電話用のアンテナやTV放送波受信用のアンテナとして好適であり、さらにパーソナル無線用、業務用無線、PHSなどの電波を送受信することも可能である。
さらに、アンテナを配設する窓ガラス面上の位置にとらわれにくい車両用アンテナを提供できる。
さらにまた、本発明は、シンプルな構成であるので、コンパクトにして高性能なアンテナとすることができる。
また、車両の窓ガラスの車内面に直接印刷するガラスアンテナとしてだけでなく、薄いシールやシートに印刷したものを窓ガラス面や、ボディの絶縁性の部材の表面に貼着させる、シールアンテナとすることもできるので、取付けが容易である。
図1に本発明のアンテナを自動車用側部窓ガラスに設けた正面図を示す。
本発明のアンテナ2は、自動車等移動体の窓ガラス1の表面またはボディの絶縁部材の表面に設けた2つのエレメントからなる。該2つのエレメントは、第1の給電点10より延ばした閉ループ形状の第1のエレメント3と、該第1のエレメント3内に配設した第2の給電点11より第1のエレメント3に沿って延ばした第2のエレメント4であり、前記第1の給電点10と第2の給電点11のそれぞれに同軸ケーブル12の外部導線12bと内部導線12aを接続した。
前記第1のエレメント3は、線条長さを送受信電波の1波長以上、かつ第2のエレメントの線条長さより長くした多角形状または円弧状の閉ループ形状である。
また、第2のエレメント4は、前記第1のエレメント3の内側で第1の給電点近傍に設けた第2の給電点11より第1のエレメントの内側に近接するように、線条長さを送受信電波の3/4波長または5/4波長となるように設けた。
これによって、第1のエレメント3で囲まれた領域の面積は、第2のエレメント4で囲まれた領域の面積よりも大であり、第1のエレメント3で囲まれた領域によって、第2のエレメント4で囲まれた全領域を覆われた状態となっている。
尚、前記第2のエレメント4の線条の長さが送受信電波の3/4波長のときには、第2の給電点11から送受信電波の1/2波長の線条長さ位置における第2のエレメントと第1のエレメントとの間隔を0.5〜10mmとするのが好ましい。
一方、前記第2のエレメント4の線条の長さが送受信電波の5/4波長のときには、第2の給電点11から送受信電波の1波長の線条長さ位置における第2のエレメントと第1のエレメントとの間隔を0.5〜10mmとするのが好ましい。
また、前記第1のエレメント3の長さは、前記第2のエレメント4の長さより送受信電波の1/4波長以上長くするのが好ましい。
さらに、前記第1のエレメント3の長さの上限は、送受信電波の波長をλとした時に(1+n/2)λ(nは0〜4の整数)とした。
前記自動車等の窓ガラスとしては、自動車の前部窓ガラス、後部窓ガラス、側部窓ガラス、サンルーフ等の窓ガラスのいずれに設けても良く、また、該窓ガラスはガラス板のみならず、透明樹脂板、あるいはガラス板と透明樹脂板との複合体からなる場合も含まれる。
また、移動体のボディは通常金属製としたものが多いが、ルーフ、後部ドア、その他の一部の部材が樹脂等の絶縁部材からなる場合や、バンパーやスポイラー等の樹脂からなる絶縁部材については、このような絶縁部材に本発明のガラスアンテナ2を設けることができる。
また、前記アンテナは、自動車等移動体の窓ガラス1またはボディの絶縁材料からなる部材の表面に前記アンテナパターンを導電性ペーストによって直接印刷するか、あるいはアンテナパターンを印刷したシールまたはシートをこれらの絶縁材料からなる部位に貼設するようにしても良い。
尚、第1のエレメント、第2のエレメントの各導電線条の線幅は0.1〜10mmとするが、好ましくは0.5〜5mm程度の線幅とする。
また、当該アンテナ2を1箇所のみに設けたものであっても良いが、複数箇所に設けることによって、ダイバーシティ受信を可能とすることができる。この場合、同じパターン、または異なるパターンであっても良い。
また、本発明のアンテナ2を車両の窓ガラス1に設ける場合には、第1のエレメント3から金属ボディのフランジ20の端部までの間隔を5mm以上離して配設することが望ましい。
以下、本発明の作用について説明する。
前記第2のエレメント4を、前記送受信電波の3/4波長または5/4波長の長さの線条とし、第1のエレメント3を送受信電波の1波長以上、かつ第2のエレメントの線条長さより長くした閉ループ状とするのが望ましいとしたのは、第1のエレメント3を送受信電波の1波長以上、かつ第2のエレメントの線条長さより長くしたことにより擬似的に接地アンテナとみなしてアンテナの大きさを小さくするためであり、このとき第2のエレメント4を送受信電波の3/4波長または5/4波長の長さの線条とすることにより接地アンテナと同様に効率よく電波を送受信できるようになるためである。
図7は、本発明の実施例1のTV放送波UHF帯域におけるガラスアンテナの第1のエレメントの総長さ変化に対する受信特性図を示す。
図7に示したように、図2のTV放送波UHF帯のパターンにおいて、第1のエレメント3の線条長さ変化による受信利得の状況をみれば、第1のエレメント3の長さが送受信電波の1波長以上において良好な受信利得が得られていることが明らかである。
また、 図8は、本発明の実施例1のTV放送波UHF帯域におけるガラスアンテナの第2のエレメントの総長さ変化に対する受信特性図を示す。
図8に示したように、図2のTV放送波UHF帯のパターンにおいて、第2のエレメント4の線条長さ変化による受信利得の状況をみれば、第2のエレメント4の長さが送受信電波の3/4波長または5/4波長の長さにおいて特に高い受信利得が得られていることが明らかである。
また、第1のエレメント3を閉ループ形状とすることにより、外部の影響を受けやすいアンテナの先端部分の電界を安定化させることができ、車両部品や人体等による受信利得への影響を小さくすることができる。
前記第2のエレメント4の線条の長さが送受信電波の3/4波長のときには、第2の給電点11から送受信電波の1/2波長の線条長さ位置における第2のエレメントと第1のエレメントとの間隔を0.5〜10mmとするのが好ましいとしたのは、以下の理由による。
すなわち、アンテナエレメント4は主として給電点11とは反対側の先端部分で電波を受信しており、その給電線となるアンテナエレメント4の給電点11から送受信電波の1/2波長の長さの線条とそれに沿う第1のエレメント3を適切に近接させて、広帯域にわたってアンテナインピーダンスを調整するためであり、間隔を0.5〜10mmの範囲とすることによって受信機のインピーダンス(通常50Ωや75Ω)にあわせることが容易になるためである。
一方、前記第2のエレメント4の線条の長さが送受信電波の5/4波長のときに、第2の給電点11から送受信電波の1波長の線条長さ位置における第2のエレメントと第1のエレメントとの間隔を0.5〜10mmとするのが好ましいとしたのは、以下の理由による。
すなわち、第2のエレメント4は主として給電点11とは反対側の先端部分で電波を受信しており、その給電線となる第2のエレメント4の給電点11から送受信電波の1波長の長さの線条とそれに沿う第1のエレメント3を適切に近接させて、広帯域にわたってアンテナインピーダンスを調整するためであり、該間隔を0.5〜10mmの範囲とすることによって受信機のインピーダンス(通常50Ωや75Ω)にあわせることが容易になるためである。
また、前記第1のエレメント3の長さは、前記第2のエレメント4の長さより送受信電波の1/4波長以上長くするのが好ましいとしたのは、第1のエレメント3の長さは、前記第2のエレメント4と(1/4+m/2)λ(mは整数)だけずれる時がもっとも効率よく受信でき、エレメント4はエレメント3の内側にあるため、その長さが必然的に短くなるためでる。
さらに、前記第1のエレメント3の長さの上限を、送受信電波の波長をλとした時に(1+n/2)λ(nは0〜4の整数)としたのは、第1のエレメント3を最大にしたときと擬似的に同等と見なせるためであり、実際にエレメント長を3波長より長くしたときの受信効率の低下を防ぐためである。
また、送受信する周波数に対して第1のエレメント3と第2のエレメント4の各線条の長さを同一周波数に対して選定すると、選定した周波数に対して非常に高い利得が得られる。
一方、第1のエレメント3と第2のエレメント4の各線条の長さを該周波数帯の範囲内において別々の周波数となるように選定することにより、選定した周波数間とその前後の広帯域な周波数にわたって、高利得なアンテナとすることができる。
前記第1のエレメント3と金属ボディのフランジ20の開口端部までの間隔について、第1のエレメント3が金属フランジ20に接近していることによって金属フランジ20の影響を受け、電波の送受信の妨げになり、インピーダンスも変化し、アンテナ利得が低下してしまうため、第1のエレメント3と金属ボディのフランジ20の端部までの間隔を5mm以上離して配設することが望ましい。
以下本発明の種々の実施例について、説明する。
図1は、図2に示すような本発明のアンテナ2を、自動車の側部窓ガラス1に設け、車外側からみた一例である。
[実施例1]
図2に示すように、外側のエレメントである閉ループ形状で横長に形成した長方形状の第1のエレメント3の第1の給電点10を、第1のエレメント3の上辺の左寄りコーナー近くの位置に設けた。
内側のエレメントである第2のエレメント4は、前記第1の給電点10の近傍位置で第1のエレメント3の内側に設けた第2の給電点11より第1のエレメント3の内側に沿って時計回りに渦巻状に配設した形状としたものからなる。
第1のエレメント3と第2のエレメント4とからなる本発明のアンテナ2は、特に周波数470〜770MHz帯のTV放送波UHF帯に用いると有効なアンテナである。
前記第1のエレメント3の線条の総長さは、送受信電波の3/2波長、すなわち、TV放送波UHF帯の受信周波数470〜770MHz帯におけるガラス板の波長短縮率を約0.6とすると、600MHzの周波数では全周長さが約450mmとなり、縦辺a、cの長さを65mm、横辺b、dの長さを160mmとした。
一方、前記第2のエレメント4の線条の総長さは、送受信電波の5/4波長、すなわち、TV放送波UHF帯の受信周波数470〜770MHz帯におけるガラス板の波長短縮率を約0.6とすると、390mmの長さとした。
第2のエレメント4の線条の総長さについては、送受信周波数の波長の5/4倍に相当する長さとしたが、広帯域にわたって利得を高めるため第1のエレメント3の周波数帯域とは異なる580MHzの周波数の約5/4波長分の長さに合わせるようにすると良い結果が得られた。
また、第1のエレメント3の上辺dと第2のエレメント4の上辺間の間隔、および第1のエレメント3の下辺bと第2のエレメント4の下辺間の間隔は5mmであり、第1のエレメント3の左側辺aと第2のエレメント4の左側辺間の間隔、および第1のエレメント3の右側辺cと第2のエレメント4の右側辺間の間隔は10mmとした。
尚、第1のエレメント、及び第2のエレメント等の各導電線条の線幅は1mmの線幅とした。
さらに、本アンテナ2と車両の窓ガラスのフランジ間の距離は、最も近い部分で15mmである。
このような第1のエレメント3と第2のエレメント4からなるアンテナ2のパターンを、図1に示すような自動車の側部窓ガラス1のガラス面の車内面側に配設した。
本発明のアンテナパターンを、窓ガラス1の車内面に導電ペーストによりスクリーン印刷し、焼成してアンテナ付き窓ガラスを形成し、このような窓ガラス1を車輌等の側部窓に装着後、前記第1の給電点10に同軸ケーブル12の外部導線12bを、第2の給電点11に内部導線12aをそれぞれ接続した。
第1のエレメント3、および第2のエレメント4を上記のように配置した前記アンテナ2を、周波数470〜770MHz帯のTV放送波UHF帯における送受信利得が高くなるようにチューニングした結果、ダイポールアンテナ比で示すと、図6に示す周波数特性図から明らかなようにUHF帯の平均で−9.7dBと、従来の実用に供されているガラスアンテナの平均である−20.0dBの受信利得を大幅に上回る良好な結果が得られた。
また、このようにして得られた図2に示すアンテナは、車両に人が乗車した状態であってもアンテナインピーダンスの変化がほととんどなく、単純な構成であるため視界を損なうことのないアンテナを提供でき、利得も高く十分実用に供し得るものであった。
[実施例2]
図3に示したように、本実施例は、実施例1の変形例であり、外側のエレメントである閉ループ形状で縦長に形成した長方形状の第1のエレメント3の第1の給電点10を、第1のエレメント3の上辺の右寄りコーナー近くの位置に設けた。
内側のエレメントである第2のエレメント4は、前記第1の給電点10の近傍位置で第1のエレメント3の内側に設けた第2の給電点11より第1のエレメント3の内側に沿って時計回りに配設した略L字状、または略コ字状形状からなり、特に周波数帯域800MHz〜960MHzの移動体通信用のアンテナに用いると有効なアンテナである。
第1のエレメント3の下辺bに近接する第2のエレメント4の水平線条は、下辺の右側コーナーより第1のエレメント3の下辺に沿って延ばした水平線条を下辺の途中位置までとし、その先端部より上方に向けて垂直線条を延ばした略コ字形状を主とするエレメントであるが、前記水平線条の先端より分岐して第1のエレメント3の下辺左側コーナー部近傍に向けて水平方向に補助線条5を設けるようにしてもよい。
前記第2のエレメント4の主とする線条の合計長さを送受信電波の3/4波長に相当するようにした。
また、前記補助線条5は、第2のエレメント4のインピーダンス調整をすることができる。
前記第1のエレメント3の線条の総長さは、送受信電波の3/2波長、すなわち、800MHz〜960MHz帯の移動体通信用の周波数におけるガラス板の波長短縮率を約0.6とすると、850MHzの周波数では全周長さが約310mmとなり、縦辺a、cの長さを95mm、横辺b、dの長さを65mmとした。
また、前記第2のエレメント4の線条の総長さは、送受信電波の3/4波長、すなわち、周波数800MHz〜960MHz帯の周波数におけるガラス板の波長短縮率を約0.6として、169mmの長さの線条とした。
また、第2のエレメント4の線条の総長さについては、送受信周波数の波長の3/4倍に相当する長さとしたが、広帯域にわたって利得を高めるため第1のエレメント3の周波数帯域とは異なる800MHzの周波数の約3/4波長分の長さに合わせるようにすると良い結果が得られた。
また、第1の給電点10と第2の給電点間の間隔は、3mm、第1のエレメント3の下辺bと第2のエレメント4の下辺間の間隔は3mm、第1のエレメント3の右側辺cと第2のエレメント4の右側辺間の間隔は3mmとし、第1のエレメント3の左側辺aと第2のエレメント4の左側辺間の間隔を22mmとした。
さらに、本アンテナ2と車両の窓ガラスのフランジ間の距離は、最も近い部分で15である。
本発明のアンテナパターンを、窓ガラス1の車内面に導電ペーストによりスクリーン印刷し、焼成してアンテナ付き窓ガラスを形成し、あるいはシールまたはシートに印刷したものを窓ガラス1の室内側または樹脂ボディ等の絶縁部材の表面に貼着した。
このような窓ガラス1を車輌等の側部窓に装着後、前記第1の給電点10に同軸ケーブル12の外部導線12bを、第2の給電点11に内部導線12aをそれぞれ接続した。
また、第2のエレメント4は、前記第2の給電点11より前記第1のエレメント3の内側に沿うように設け、該第2のエレメント4の総長さは、送受信周波数の波長の3/4倍に相当する長さとしたが、ここでは900〜960MHzの周波数にわたって利得を高めるため900MHzの周波数の3/4波長分の長さに合わせることもできる。
従って、900MHzの周波数におけるガラス板による波長短縮率を約0.6とすると、エレメント4の右側辺の長さが89mm、エレメント4の下辺の長さが40mm、エレメント4の下辺の右側コーナーより第1のエレメント3の下辺に沿って延ばした水平線条の先端部より上方に向けた長さが25mmで、全体長さが150mmのコ字状となる。
さらに、前記第1の給電点10に同軸ケーブル12の外部導線12bを、第2の給電点11に内部導線12aを接続した。
第1のエレメント3、および第2のエレメント4を上記のように配置した前記アンテナ2を、周波数800MHz〜960MHz帯の移動体通信用帯域において送受信利得が高くなるように調整した。
このようにして配設した図3のアンテナをダイポールアンテナ比で示すと、周波数800MHz〜960MHz帯の移動体通信用帯域における送受信利得が高くなるようにチューニングした結果、平均で−7.8dBとなり、従来の実用に供されているガラスアンテナの平均である−10.0dBの受信利得を大幅に上回る良好な結果が得られ、十分実用に供し得るものであることがわかった。
[実施例3]
実施例3は、実施例1のパターンの変形例であるが、外側のエレメントである第1のエレメント3は、上下端、左右端に四隅部がある略菱形状で、左右対称形状であり、第1の給電点10は最下端の位置に設ける。
内側のエレメントである第2のエレメント4は、第1の給電点10に近接する上部側位置に設けた第2の給電点11より、第1のエレメント3の内側に沿って時計廻りに設け略コ字状とした。
第1のエレメント3の長さは、送受信電波の2波長に相当する長さとし、第2のエレメント4の全周の長さを5/4波長に相当する長さとし、さらに、第1のエレメント3の形状を図4に示すような異形状の四角形として、周波数帯域が1900〜2200MHzの移動体通信用のアンテナとして、用いるものであり、本パターンをガラス面の車内面に印刷焼き付け、あるいはシール又はシートに印刷したものを窓ガラス1の室内側または樹脂ボディ等の絶縁部材の表面に貼着した。
1900〜2200MHzの周波数におけるガラス板による波長短縮率を約0.5とすると、第1のエレメント3の長さは送受信電波の2波長、すなわち1950MHzの周波数では全周長さが約154mmとなり、上部側の左右の斜辺a、dが46mm、下部側の左右の斜辺b、cの長さが31mmで、全周長さが154mmの異形の四角形状とし、第2のエレメント4の全周総長さは5/4波長分の長さ、ここでは2100MHzの周波数に対して約89mmとした。
このような窓ガラス1を車輌等の側部窓に装着後、前記第1の給電点10に同軸ケーブル12の外部導線12bを接続し、第2の給電点11に内部導線12aを接続した。
第1のエレメント3、および第2のエレメント4を上記のように配置した前記アンテナ2を、周波数帯域が1900〜2200MHzの移動体通信用のアンテナの送受信利得が高くなるようにチューニングした結果、平均受信利得が−8.2dBと良好な送受信性能が得られ、十分実用に供し得るものであることがわかった。
[実施例4]
図5に示したように、外側のエレメントである第1のエレメント3は、円形状の線条のエレメントであり、該円形状の線条のエレメントの最下端の位置に第1の給電点10を設ける。
内側のエレメントである第2のエレメント4は、前記第1の給電点10に近接する上部側位置に設けた第2の給電点11より、第1のエレメント3の内側に沿って反時計廻りに設けた円形状の一部を切り欠いた円弧状とした。
第1のエレメント3の長さは、送受信電波の1波長に相当する長さとし、第2のエレメント4の全周の長さを3/4波長に相当する長さとし、さらに、第1のエレメント3の形状を図5に示すような円形状、第2のエレメント4の形状を円形状の一部を切り欠いた円弧状として、周波数帯域が170〜230MHzのTV放送波VHF−HIGH帯に用いるアンテナとして、用いるものであり、本パターンをガラス面の車内面に印刷焼き付け、あるいはシール又はシートに印刷したものを窓ガラス1の室内側または樹脂ボディ等の絶縁部材の表面に貼着した後、前記第1の給電点10に同軸ケーブル12の外部導線12bを、第2の給電点11に内部導線12aを接続した。
TV放送波VHF−HIGH帯の受信周波数170〜230MHz帯におけるガラス板による波長短縮率を約0.6とすると、第1のエレメント3の長さは受信電波の1波長、すなわち200MHzの周波数では全周長さが約1040mmの円形状とし、第2のエレメント4の全周総長さは3/4波長の長さ、ここでは210MHzの周波数に対して約750mmの円弧状とした。
第1のエレメント3、および第2のエレメント4を上記のように配置した前記アンテナ2を、170〜230MHz帯のTV放送波における受信利得が高くなるようにチューニングした。
このようにして配設した図5のアンテナをダイポールアンテナ比で示すと、VHF―HIGH帯の平均で−10.1dBとなり、従来の実用に供されているガラスアンテナの平均である−18.0dBの受信利得を大幅に上回る良好な結果が得られた。
以上、好適な実施例により説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、種々の応用が可能である。
また、第1のエレメント3、第2のエレメント4の線条の幅は20mm以下、好ましくは0.1〜10mmの範囲で適宜選択することにより、広い範囲の周波数の電波に対して利得を向上させる作用をしており、広帯域のアンテナとすることができる。
また、パーソナル無線、業務用無線、PHSなどの極超短波帯以上周波数の電波の送受信についても好適に使用することができるものである。
また、本発明のアンテナは、アンテナパターンを後部窓ガラスの加熱線条の上部余白部、下部余白部、前部窓ガラス、側部窓ガラス、ルーフ窓ガラスの、窓ガラス面に直接印刷する、あるいは薄いシール、またはシートに印刷し、窓ガラス面の内面側に貼着する、または、車両のボディのボディの絶縁性の部材に貼着して使用する。
また、本発明のアンテナは単独でも使用可能であるが、これらのガラスアンテナや、シールまたはシートに印刷し車両のボディの絶縁性の部材に貼着したシールアンテナ、あるいはポールアンテナなどと組み合わせてダイバーシティ受信を行うと、さらに好ましい結果を得ることができる。
本発明のアンテナを自動車用側部窓ガラスに設けた正面図。
本発明の実施例1のアンテナ部分を示す要部詳細正面図。
本発明の実施例2のアンテナ部分を示す要部詳細正面図。
本発明の実施例3のアンテナ部分を示す要部詳細正面図。
本発明の実施例4のアンテナ部分を示す要部詳細正面図。
本発明の実施例1のTV放送波UHF帯域におけるアンテナ利得の周波数特性図。
本発明の実施例1のTV放送波UHF帯域におけるガラスアンテナの第1のエレメントの総長さ変化に対する受信特性図。
本発明の実施例1のTV放送波UHF帯域におけるガラスアンテナの第2のエレメントの総長さ変化に対する受信特性図。
符号の説明
1 窓ガラス
2 本発明のアンテナ
3 第1のエレメント
4 第2のエレメント
5 補助線条
10 第1の給電点
11 第2の給電点
12 同軸ケーブル
12a 内部導線
12b 外部導線
20 金属フランジ