JP4215456B2 - エマルションの分散液又は溶解液の調製方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エマルションの分散液又は溶解液の調製方法に関する。より詳しくは、エマルションと水系溶媒含有液とを混合し、エマルションの混合に伴う発泡を抑制した分散液又は溶解液の調製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エマルションは、水系の塗料、紙の塗工液、水性インク、接着剤、粘着剤、フロアポリッシュ等の用途において用いられているが、このようなエマルションの中でも、カルボキシル基を多く有するポリマーによるエマルションすなわちアルカリ可溶性エマルションは、水に分散されているポリマー粒子がアルカリの添加により溶解又は膨潤して増粘するという性質を有し、粘性改良剤、ゲル化剤、チクソトロピー添加剤等の各種添加剤として有用なものである。このような分野においては、エマルションを水で希釈したり水を含んだ溶液に混合したりすることにより、エマルションの分散液又は溶解液を調製し、このような分散液又は溶解液が用いられている。
【0003】
このようなエマルションにおいては、一般的に乳化重合法により製造され、重合安定性を向上、維持する目的から乳化剤が使用されていることから、乳化剤がエマルション中に含まれることになる。この乳化剤により、エマルションを水で希釈したり水を含んだ溶液に混合したりするときに発泡する。また、特に上記アルカリ可溶性エマルションにおいては、一般に、該エマルションを構成するポリマー中に、カルボキシル基等の親水性部分と、ポリマー主鎖やアルキル基等の疎水性部分を有しているため、該ポリマー自体が界面活性能を有する。上記アルカリ可溶性エマルションを同様に希釈したり混合したりするときには、この該ポリマー自体の界面活性能により発泡する。このようなエマルションの分散液又は溶解液の発泡による不具合を抑制するために、通常では消泡剤が用いられている。特に、強攪拌や振とう、高速での空気吹込み等の、泡立ちやすい方法でエマルションを分散又は溶解する場合には、発泡を抑制しなければならない必要性が高い。しかしながら、エマルションの分散液又は溶解液を使用する分野によっては、消泡剤の使用による不具合を生じる場合があり、また、消泡剤はこのような分散液又は溶解液の構成成分において比較的高価なものであるので、エマルションの分散液又は溶解液を調製するに際し、特に泡立ちやすい方法で分散又は溶解する場合に消泡剤の使用を抑制しつつ、発泡を抑制することができるようにする工夫の余地があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、消泡剤の使用を抑制しつつ、発泡を抑制することができるエマルションの分散液又は溶解液の調製方法を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、エマルションの分散液又は溶解液の調製方法について種々検討したところ、通常ではエマルションと水系溶媒含有液とを混合してエマルションの分散液又は溶解液を調製するときに発泡することとなるが、エマルションを水系溶媒含有液と混合するに際し、予め水系溶媒含有液に塩基性物質を添加したり、予め水系溶媒含有液に塩基性物質を添加して該水系溶媒含有液のpHを7以上としたりすると、消泡剤の使用を抑制しつつ、発泡を抑制することができることを見いだした。これは、エマルションを構成するポリマーが、特に該ポリマー中に親水性基を有している場合には、その親水性−疎水性のバランスにより該ポリマー自体が界面活性能をもつことから、水系溶媒含有液と混合する際にエマルション中の乳化剤と共に作用して発泡することとなるが、予め水系溶媒含有液に塩基性物質を添加したり、予め塩基性物質を添加して水系溶媒含有液のpHを7以上とすることにより、ポリマーの界面活性能が低下することに起因して、エマルションを分散又は溶解するときに生じる発泡を抑制することができるものと考えられる。例えば、ポリマーが加水分解してカルボキシアニオンとなるような官能基を有する場合、水系溶媒含有液をアルカリ性とし、pHを上記のように特定すると、該官能基部分が速やかに加水分解反応を受けることによりポリマー中の親水性部分が増加し、それに伴って、界面活性能を発現するために必要な親水性−疎水性のバランスが崩れるためにポリマー自体の界面活性能が低下するものと考えられる。このような効果に起因して、上述したような特に泡立ちやすい方法でエマルションを分散又は溶解する場合においても本発明の作用効果を奏することになり、エマルションを分散又は溶解するときに貯蔵容器から泡が溢れだす、送液ポンプが空回りする、塗料用途においては、塗膜に斑が発生したりレベリング性が低下したりする等の発泡による不具合を抑制することができることになる。また、消泡剤の使用量を低減することができることから、(多量の)消泡剤の使用によるコストの増大、塗料用途においては、塗料のハジキが起こったりオイルスポットが発生したりするという不具合を抑制することができることになる。
またエマルションがアルカリ可溶性エマルションであると、粘性改良剤、ゲル化剤、チクソトロピー添加剤等の各種添加剤として有用なものとなり、この場合にエマルションの分散液又は溶解液を調製し、このような分散液又は溶解液が用いられる場合が多いことから、本発明の作用効果をより充分に発揮することができることも見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0006】
すなわち本発明は、エマルションと水系溶媒含有液とを混合してエマルションの分散液又は溶解液を調製する方法であって、上記エマルションを水系溶媒含有液と混合するに際し、予め水系溶媒含有液に塩基性物質を添加するエマルションの分散液又は溶解液の調製方法である。
【0007】
本発明はまた、エマルションと水系溶媒含有液とを混合してエマルションの分散液又は溶解液を調製する方法であって、上記エマルションを水系溶媒含有液と混合するに際し、予め水系溶媒含有液に塩基性物質を添加して上記水系溶媒含有液のpHを7以上とするエマルションの分散液又は溶解液の調製方法でもある。
以下に、本発明を詳述する。
【0008】
本発明のエマルションの分散液又は溶解液の調製方法においては、エマルションと水系溶媒含有液とを混合することによりエマルションの分散液又は溶解液を調製することとなる。これにより調製されたエマルションの分散液は、エマルションが水系溶媒含有液中に希釈されたものとなり、また、これにより調製されたエマルションの溶解液は、エマルションが水系溶媒含有液中に希釈され、かつ、エマルション中のポリマーが水系溶媒含有液中に溶解されたものとなる。
【0009】
上記水系溶媒含有液とは、水を必須とし、必要に応じて水に溶解することができる有機溶媒1種又は2種以上を含む溶液であるが、エマルションが用いられる用途等に応じて、溶媒以外の他の成分を含んでいてもよい。このような水系溶媒含有液の調製方法としては、これらの成分を混合することにより行うことができるが、水と溶解することができる有機溶媒及びその他の成分の種類や使用量としては、エマルションの分散液又は溶解液の用途や所望する性能等に応じて適宜設定することになる。
溶媒以外の他の成分としては、例えば、塗料用途に関しては、充填剤、増量剤、レベリング剤、可塑剤、安定剤、染料、顔料等の各種塗料用添加剤が挙げられる。更に、例えば、上記増量剤としては、炭酸カルシウムや硫酸バリウム等が挙げられる。また、例えば、上記顔料としては、酸化チタン、三酸化アンチモン、亜鉛華、鉛白、リトポン等の白色無機系顔料;カーボンブラック、黄鉛、モリブデン赤、ベンガラ、黄色酸化鉄、黄華等の着色無機系顔料;ベンジジン、ハンザイエロー等のアゾ系化合物やフタロシアニンブルー等のフタロシアニン類等の有機系顔料が挙げられる。
【0010】
本発明のエマルションの分散液又は溶解液の調製方法は、消泡剤の使用量を抑制することができるという効果を奏することができることから、消泡剤の使用量の好適な範囲としては、エマルションの分散液又は溶解液を用いる用途によって適宜設定することが好ましいが、例えば、エマルションの分散液又は溶解液100質量部に対して1質量部以下とすることが好ましく、より好ましくは、0.1質量部以下、更に好ましくは、0.05質量部以下、特に好ましくは、0.02質量部以下とすることである。また、通常用いられているように別途消泡剤を使用することによって、より高い発泡抑制効果が得られる。消泡剤としては、例えば、シリコーン系消泡剤、プルロニック型消泡剤、脂肪族アルコール系消泡剤、脂肪酸系消泡剤、鉱物油系消泡剤、トリブチルホスフェート、並びに、これらのエマルション型消泡剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0011】
本発明においては、上記エマルションを水系溶媒含有液と混合するに際し、(1)予め水系溶媒含有液に塩基性物質を添加するか、又は、(2)予め水系溶媒含有液に塩基性物質を添加して上記水系溶媒含有液のpHを7以上とする。
【0012】
上記(2)においては、予め水系溶媒含有液のpHを7以上とすることになるが、水系溶媒含有液のpHが7未満であると、エマルションの分散液又は溶解液調製時に、特に泡立ちやすい方法により分散又は溶解する場合に、発泡を充分に抑制することができなくなる。好ましくは、pHを8以上とすることであり、より好ましくは、9以上とすることであり、更に好ましくは、10以上とすることである。水系溶媒含有液のpHを予めこのように調整することにより、特に泡立ちやすい方法でエマルションを分散・混合・溶解するような方法によってエマルションの分散液又は溶解液を調製する場合にも、発泡を充分に抑制することができることになる。
【0013】
上記塩基性物質としては、用途等により適宜設定すればよいが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム;酸化カルシウム;無水炭酸ナトリウム(ソーダ灰)、炭酸水素ナトリウム;炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム;アンモニア(水);モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の水溶性有機アミン類等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。なお、ここでいう塩基性物質の中でも、水系溶媒含有液と混合した際に均一に溶解するものであることが好ましい。すなわち当該物質固有の各溶解度の範囲内において水と混合したときに、当該物質が不溶物を生ずることなく(スラリー化することなく)均一に水に溶解するものが好適である。このような塩基性物質としては、0℃の水に対して5質量%以上の溶解度を有するものが好ましい。また、塩基性物質の添加方法としては、固体を添加してもよく、塩基性物質の水溶液として添加してもよい。
【0014】
本発明においては、塩基性物質を添加した水系溶媒含有液のpHの上限が14であることが好ましい。また、水系溶媒含有液における、塩基性物質の添加前と添加後とのpHの上昇率(%)としては、1以上が好ましく、また、300以下が好ましい。すなわち本発明における水系溶媒含有液としては、このようなものが好適である。塩基性物質を添加前と添加後とのpHの上昇率(%)が1未満であったり、300を超えたりすると、本発明の作用効果を充分に発揮することができなくなるおそれがある。より好ましくは、10以上であり、また、150以下である。なお、塩基性物質の添加前と添加後とのpHの上昇率(%)とは、水系溶媒含有液の塩基性物質添加前のpH(pH1)と、添加後のpH(pH2)とから、下記式により計算される値である。
pHの上昇率(%)={(pH2−pH1)/pH1}×100
例えば、塩基性物質を添加する前の水系溶媒含有液のpH(pH1)が6.9であり、添加後のpH(pH2)が7.0である場合には、pHの上昇率(%)は、1.4であり、塩基性物質を添加する前の水系溶媒含有液のpH(pH1)が4であり、添加後のpH(pH2)が14である場合には、pHの上昇率(%)は、250である。
【0015】
本発明において使用されるエマルションとしては、水系溶媒含有液中に分散又は溶解することができるエマルションであればよく、この中でも水中油型(O/W型)エマルションを用いることが好ましく、更にこのようなエマルションの中でも、本発明においては、アルカリ可溶性エマルションを用いることが好適である。
【0016】
上記アルカリ可溶性エマルションとしては、該エマルションを希釈してその固形分が1質量%に調整された水溶液の粘度が1〜1000mPa・s、好ましくは1〜500mPa・s、更に好ましくは1〜100mPa・sであり、該水溶液にアルカリ性物質を添加してpHを9に調整したときの粘度が、添加前の2〜10000倍、好ましくは2〜8000倍、更に好ましくは2〜5000倍となる増粘特性を有するエマルションを挙げることができる。
このようなエマルションは、例えば、アルカリ性物質により親水性が高まる基を有する単量体を必須とし、必要に応じてその他の単量体を含む単量体成分を乳化重合することにより得ることができる。アルカリ性物質により親水性が高まる基としては、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基等の酸性基や、カルボン酸エステル基、リン酸エステル基、スルホン酸エステル基等の容易に加水分解して酸性基を生成する基等が挙げられる。
【0017】
本発明におけるアルカリ可溶性エマルションとしてはまた、カルボキシル基を有する重合体を含むエマルションが好ましく、例えば、カルボキシル基を有する単量体と、該カルボキシル基を有する単量体と共重合可能なその他の単量体からなる単量体成分を乳化重合して得られるものが好適である。このようなエマルションは、公知の方法で製造することができる。また、このようなアルカリ可溶性エマルションの中でも、全単量体成分に占めるカルボキシル基を有する単量体の比率の高い、すなわち高酸価のポリマーを含有するエマルションが、特に発泡を低減するのに有効であり、このようなアルカリ可溶性エマルションとしては、カルボキシル基を有する単量体、20℃の水に対する溶解度が3質量%以上の非イオン性単量体及び強酸基を有する単量体を必須成分とする単量体成分を乳化重合して得られる、20℃の水への溶解度が10質量%未満である重合体の水分散体が好適である。このような水分散体の製造方法について以下に説明する。
【0018】
上記アルカリ可溶性エマルションを形成することになるカルボキシル基を有する単量体、20℃の水に対する溶解度が3質量%以上の非イオン性単量体及び強酸基を有する単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記カルボキシル基を有する単量体としては、カルボキシル基及び/又はその塩を有する単量体を用いることができ、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、並びに、それらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩及びアミン塩等が好適である。これらの中でも、重合安定性とアルカリ可溶性のバランスが良好であるメタクリル酸が最も好ましい。
【0019】
上記カルボキシル基を有する単量体の使用量としては、全単量体量100質量%に対して、10〜90質量%が好ましい。10質量%未満であると、重合安定性は向上するが、カルボキシル基を有する重合体のアルカリ可溶性、増粘性が低下するおそれがある。90質量%を超えると、重合安定性が著しく低下すると共に、得られるカルボキシル基を有する重合体の水への溶解度が10質量%以上となり水分散体として存在できなくなるおそれがある。より好ましくは、35〜90質量%であり、更に好ましくは、40〜85質量%であり、特に好ましくは、50〜80質量%である。
【0020】
上記20℃における水に対する溶解度が3質量%以上の非イオン性単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、アクリル酸ポリエチレングリコール、メタクリル酸ポリエチレングリコール、アクリル酸ポリエチレングリコールポリプロピレングリコール、メタクリル酸ポリエチレングリコールポリプロピレングリコール、イソプロペニルオキサゾリン、ポリエチレングリコール(2−(1−プロペニル)−4−ノニル)フェニルエーテル、ポリエチレングリコール(2−(1−プロペニル))フェニルエーテル、ポリエチレングリコール2−プロペニルエーテル、ポリエチレングリコール3−メチル−3−ブテニルエーテル、アリルアルコール、ポリオキシエチレンアリルエーテル、N−ビニル−2−ピロリドン、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドが好適である。これらの中でも、共重合性と親水性のバランスが良好である(メタ)アクリル酸エステル系単量体が好ましく、アクリル酸メチルが最も好ましい。
【0021】
上記20℃における水に対する溶解度が3質量%以上の非イオン性単量体の使用量としては、全単量体量100質量%に対して5〜60質量%が好ましい。60質量%を超えると、カルボキシル基を有する重合体のアルカリ可溶性が不充分となるおそれがある。より好ましくは、10〜50質量%であり、更に好ましくは、30〜50質量%である。
【0022】
上記強酸基を有する単量体としては、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸−2−スルホエチル、(メタ)アクリル酸−3−スルホプロピル、(メタ)アクリル酸−4−スルホブチル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類並びにそれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−3−クロロプロピルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルホスフェート等の酸性リン酸エステル基を有する単量体が好適である。これらの中でも、重合安定性が良好であるスルホン酸系が好ましく、更に、共重合性も良い、(メタ)アクリル酸−2−スルホエチル、(メタ)アクリル酸−3−スルホプロピル、(メタ)アクリル酸−4−スルホブチル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸並びにそれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩が特に好ましい。
【0023】
上記強酸基を有する単量体の使用量としては、全単量体量100質量%に対して、0.5〜10質量%が好ましい。0.5質量%未満であると、重合安定性を向上させる効果が低くなるおそれがあり、10質量%を超えると、水溶性重合体が多くできるため、エマルション自体の粘度が上がり、ハンドリング性が悪くなるおそれがある。また、増粘性を担う成分が減少するため、増粘性が低下するおそれがある。より好ましくは、1〜7質量%である。
【0024】
上記単量体成分は、必要に応じて上述した単量体以外のその他の単量体1種又は2種以上を含んでいてもよい。その他の単量体としては、メタクリル酸メチル;(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜18のアルコール(環式アルコールを除く)とのエステルである(メタ)アクリル酸エステル系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン、クロロメチルスチレン、エチルビニルベンゼン等のスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸シクロへキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルメチル等のシクロヘキシル基を有する単量体;クロトン酸メチル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和エステル類;ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン等のジエン類;(メタ)アクリル酸とポリプロピレングリコールとのモノエステル;(メタ)アクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチル、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の塩基性単量体類;ビニルフェノール等の石炭酸系単量体;(メタ)アクリル酸2−アジリジニルエチル、(メタ)アクリロイルアジリジン等のアジリジン基を有する単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基を有する単量体類;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリエトキシシラン等のケイ素原子に直結する加水分解性ケイ素基を有する単量体;フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲンを有する単量体;(メタ)アクリル酸とエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の多価アルコールとのエステル化物等の分子内に重合性不飽和基を2個以上有する多官能(メタ)アクリル酸エステル類;ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジアリルフマレート等の分子内に重合性不飽和基を2個以上有する多官能アリル化合物;(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸メタリル、ジビニルベンゼン等の多官能単量体;トリアリルシアヌレート等のシアヌレート類が好適である。
【0025】
上記その他の単量体の使用量としては、全単量体量100質量%に対して、0〜30質量%が好ましい。30質量%を超えると、カルボキシル基を有する重合体のアルカリ可溶性が不充分となるおそれがある。
【0026】
上記単量体成分を乳化重合してアルカリ可溶性エマルションを製造する方法としては特に限定されるものではないが、初期重合工程、滴下重合工程及び熟成工程を含む方法が好適である。
【0027】
上記乳化重合における初期重合工程においては、強酸基を有する単量体の使用量を、全単量体量の0.5〜10質量%とし、かつ初期重合工程における連鎖移動剤の使用量を、使用する全単量体量100質量部に対して0.0001〜1質量部として、強酸基を有する単量体と連鎖移動剤とを集中的に添加することが好ましい。これにより安定に重合を行うことができ、また、固形分を高くすることができる。
なお、ここでいう初期重合とは、乳化重合方法を大きく初期重合工程、滴下工程、熱成工程の3投階の工程に分けた場合の最初の工程であり、水又は乳化剤水溶液の仕込まれた初期の釜に一定量の単量体を一括して投入し、一定時間重合を行う工程である。
【0028】
上記初期重合工程においては、重合反応液中の単量体濃度を5〜45質量%とすることが好ましい。5質量%未満であると、例えば、最終的に得ようとするエマルションの固形分を30質量%以上とするためには、滴下工程で使用するプレエマルション濃度を50質量%を超えるものにしなければならず、滴下時にショックを起こし凝集物を発生するおそれがある。また、45質量%を超えると、初期重合時の発熱が著しく、反応温度を制御することが非常に困難となるおそれがある。より好ましくは、8〜35質量%であり、更に好ましくは、10〜25質量%である。
【0029】
上記連鎖移動剤としては、メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸、t−ドデシルメルカプタン等のメルカプト基を有する化合物;四塩化炭素;イソプロピルアルコール;トルエン等の連鎖移動係数の高い化合物が好適であり、1種又は2種以上を用いることができる。
【0030】
上記初期重合工程において添加される連鎖移動剤の使用量が、使用する全単量体量100質量部に対して0.0001質量部未満であると、保護コロイドとして働く水溶性重合体が少なく、エマルション粒子の安定性が低下するおそれがあり、1質量%を超えると、重合安定性を向上させる効果が低下して、凝集物が多く発生したりエマルション粒子が沈降したりするおそれがある。より好ましくは、0.001〜0.1質量部であり、更に好ましくは、0.003〜0.07質量部である。なお、連鎖移動剤については、エマルション粒子を形成する重合体の分子量を調節する目的として、別途、滴下工程において用いることもできる。
【0031】
上記乳化重合に用いられる重合開始剤としては、熱又は酸化還元反応によって分解し、ラジカル分子を発生させる化合物であればよく、水溶性を備えた重合開始剤が好ましい。このような重合開始剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類;2,2′アゾビス−(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4′アゾビス−(4−シアノペンタン酸)等の水溶性アゾ化合物;過酸化水素等の熱分解性開始剤;過酸化水素及びアスコルビン酸、t−ブチルハイドロパーオキサイド及びロンガリット、過硫酸カリウム及び金属塩、過硫酸アンモニウム及び亜硫酸水素ナトリウム等の組み合わせからなるレドックス系重合開始剤が好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合開始剤の使用量としては、単量体成分の組成や重合条件等に応じて適宜設定すればよい。
【0032】
上記乳化重合に用いる乳化剤としては、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤、又は、これらの反応性界面活性剤等が好適であり、1種又は2種以上を用いることができる。乳化剤の使用量としては、全単量体量100質量部に対して0.001質量部以上が好ましく、また、3質量部以下が好ましい。3質量部を超えると、重合安定性は向上するが、使用時の発泡を促し作業性や物性を低下させるおそれがある。より好ましくは、0.005質量部以上であり、また、2質量部以下である。更に好ましくは、0.01質量部以上であり、また、1質量部以下である。特に好ましくは、0.05質量部以上であり、また、0.5質量部以下である。
【0033】
上記アニオン系界面活性剤としては、カリウムドデシルサルフェート、ナトリウムドデシルサルフェート、アンモニウムラウリルサルフェート等のアルキル硫酸エステル塩;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート等のポリオキシアルキルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンカルボン酸エステル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンフェニルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレン置換フェニルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸塩;アルキルアリルポリエーテル硫酸塩;ポリオキシエチレンアルケニルアリールサルフェート塩、α−スルホナト−ω−1−(アリルオキシメチル)アルキルオキシポリオキシエチレン塩等の不飽和基を有する反応性アニオン乳化剤が好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
上記ノニオン系界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、グリセロールモノラウレート、ソルビタン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル等の脂肪族と多価アルコールとのエステル;ポリオキシエチレン、オキシエチレンオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、高級アルコール・ポリエチレングリコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸モノエステル・ポリエチレングリコール縮合物、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪族エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルグリセリンホウ酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、エチレンオキサイドと脂肪族アミン、アミド又は酸との縮合生成物、アルキルアミド・ポリエチレングリコール縮合物、アルキルアミン・ポリエチレングリコール縮合物等のポリオキシエチレン鎖を分子内に有し、界面活性能を有する化合物が好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
上記高分子界面活性剤としては、ポリビニルアルコール及びその変性物;(メタ)アクリル酸系水溶性高分子、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート系水溶性高分子、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート系水溶性高分子(ただし、上記アルカリ可溶性エマルションの製造方法により製造される共重合体とは異なる共重合体);ポリビニルピロリドンが好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
また、乳化剤の種類については、上記例示の各種乳化剤のうち、その気泡性に関して、その1質量%水溶液の25℃におけるロスマイルス法(JIS K 3362)による起泡力試験において、落下直後の泡高が200mm以下であり、かつ、落下5分後の泡高が100mm以下であるものが、特に好ましい。乳化剤の起泡性能が上記性能の範囲内であり、また、乳化剤の使用量が上述した範囲内である場合に、特に本発明の方法によってエマルションを分散又は溶解した際に、エマルションに含まれる乳化剤に起因する発泡を抑制できるので好ましい。
【0037】
上記滴下工程における滴下方法としては、モノマー滴下、プレエマルション滴下等が挙げられるが、これらの中でも、プレエマルション滴下が好ましい。また、滴下形態としては、一括添加、均一滴下、多段滴下、パワーフィード等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0038】
上記プレエマルションとは、単量体を水又は乳化剤水溶液に加え、攪拌混合することにより予めプレ乳化した単量体分散体をいう。このプレエマルションを初期重合後の反応系に滴下投入して行くことになるが、このときのプレエマルション中の単量体濃度は、50質量%以下が好ましい。50質量%を超えると、滴下時にショックを起こし凝集物を発生する可能性が高くなるおそれがある。なお、プレエマルションの濃度が低すぎると最終の固形分が低下するため、ショックを起こさない範囲で、できるだけプレエマルション中の単量体濃度を上げることが好ましい。プレエマルション中の単量体濃度は、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましい。
【0039】
上記乳化重合において、最終工程である熟成工程としては、従来の方法と同様に行うことができるが、残存単量体量が充分低減するまで行い、場合によっては、後添加触媒を加えることがある。
【0040】
上記乳化重合における反応温度や反応時間等の重合条件としては、単量体成分の組成や重合開始剤の種類等に応じて適宜設定すればよいが、反応温度は0〜100℃とすることが好ましく、40〜95℃とすることがより好ましい。また、反応時間は初期重合工程、滴下工程及び熟成工程を全てを総合して1〜15時間程度が好適である。
【0041】
本発明におけるエマルションとしては、上述したアルカリ可溶性エマルション以外にも、水系の塗料、紙の塗工液、水性インク、接着剤、粘着剤、フロアポリッシュ等の用途に対して従来より一般に用いられているエマルション、例えば、酢酸ビニル系エマルション、(メタ)アクリル酸エステル系(以下、「アクリル系」と称する)エマルション、酢酸ビニル−アクリル系エマルション、酢酸ビニル−エチレン系エマルション、(メタ)アクリルアミド系エマルション、スチレン−ブタジエン系エマルション、スチレン−アクリル系エマルション、アクリル−シリコーン系エマルション等が挙げられる。
【0042】
上記エマルションを構成する重合体としては、重量平均分子量が10万〜1000万であるものが好ましく、20万〜200万であるものがより好ましい。
上記エマルションとしては、エマルション100質量%に対する固形分濃度が10〜60質量%であることが好ましく、15〜40質量%であることがより好ましい。
【0043】
本発明においては、上述したエマルションと(1)予め塩基性物質を添加した水系溶媒含有液とを、又は、(2)予め塩基性物質を添加してpHを7以上に調整した水系溶媒含有液とを混合してエマルションの分散液又は溶解液を調製することになるが、これらの混合割合としては、エマルションの分散液又は溶解液の用途や所望する物性等により適宜設定すればよく、例えば、エマルションの分散液又は溶解液における固形分濃度が0.001〜20質量%以下であることが好ましく、0.01〜10質量%であることがより好ましく、0.05〜5質量%であることが更に好ましい。
【0044】
上記エマルションと予め塩基性物質を添加した水系溶媒含有液又は予め塩基性物質を添加してpHを7以上に調整した水系溶媒含有液とを混合する方法としては特に限定されず、エマルションを水系溶媒含有液に添加する形態、エマルションに水系溶媒含有液を添加する形態、これらを一度に混ぜる形態等が挙げられる。
【0045】
本発明においてはまた、エマルションを水系溶媒含有液と混合した後の液、すなわち調製されたエマルションの分散液又は溶解液のpHを5以上に調整することが好ましく、これにより、本発明の作用効果をより充分に発揮することができることになる。6〜12がより好ましい。
【0046】
本発明のエマルションの分散液又は溶解液の調製方法により調整されたエマルションの分散液又は溶解液は、消泡剤の使用を抑制しても発泡を抑制することができることから、粘性改良剤、ゲル化剤、チクソトロピー添加剤等として、水系の塗料、紙の塗工液、水性インク、接着剤、粘着剤、フロアポリッシュ等の用途に好適に用いることができる。
【0047】
【実施例】
以下に実施例を揚げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は、「質量部」を、「%」は、「質量%」をそれぞれ意味するものとする。
【0048】
エマルション製造例(1)
滴下ロート、攪拌装置、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を取り付けたフラスコに、イオン交換水239.3部、スチレンスルホン酸ナトリウム12.0部、メタクリル酸28.7部、及び、30%乳化剤水溶液(日本乳化剤社製、商品名:ニューコール707SF)0.1部とを仕込み、フラスコ内を窒素ガスで置換しつつ、75℃まで攪拌しながら昇温した。一方、メタクリル酸150.6部と、アクリル酸メチル107.6部とを、30%乳化剤水溶液(日本乳化剤社製、商品名:ニューコール707SF)0.9部をイオン交換水420.5部に溶解した乳化剤水溶液に添加し、激しく攪拌することにより、プレエマルション(単量体濃度38.0%)を調製した。
【0049】
次いで、2%3−メルカプトプロピオン酸水溶液2.0部をフラスコに一括投入し、続いて、重合開始剤として5%過硫酸アンモニウム水溶液14.0部を一括投入し、75℃で20分間攪拌することにより、初期重合を行った。その後、反応温度を75℃に保ちながら、滴下ロートからプレエマルションを3時間かけて滴下した。滴下終了後、イオン交換水10.3部を用いて滴下ロートを洗浄し、この洗液をフラスコに投入した。更に30分間重合させた後、後添加触媒として0.5%亜硫酸水素ナトリウム14.0部を一括添加し、更に60分間重合させた。得られた反応液を冷却して重合を終了し、エマルション(1)を得た。このときの固形分は、30.0%であった。
[組成:メタクリル酸/アクリル酸メチル/スチレンスルホン酸ナトリウム=60/36/4(質量比)]
【0050】
エマルション製造例(2)
滴下ロート、攪拌装置、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を取り付けたフラスコに、イオン交換水270.6部、及び、30%乳化剤水溶液(日本乳化剤社製、商品名:ニューコール707SF)9.7部とを仕込み、フラスコ内を窒素ガスで置換しつつ、75℃まで攪拌しながら昇温した。一方、メタクリル酸101.9部と、アクリル酸メチル189.2部とを、30%乳化剤水溶液(日本乳化剤社製、商品名:ニューコール707SF)19.4部をイオン交換水392.4部に溶解した乳化剤水溶液に添加し、激しく攪拌することにより、プレエマルション(単量体濃度41.4%)を調製し、該プレエマルションを滴下ロートに仕込んだ。
【0051】
次いで、上記プレエマルションのうちの70.3部をフラスコ内に投入して10分間攪拌後、続いて、重合開始剤として5%過硫酸アンモニウム水溶液3.4部を一括投入し、20分間攪拌することにより、初期重合を行った。その後、反応温度を77℃に保ちながら、滴下ロートからプレエマルションを2時間かけて滴下した。滴下終了後、イオン交換水10.0部を用いて滴下ロートを洗浄し、この洗液をフラスコに投入した。更に30分間重合させた後、後添加触媒として0.5%亜硫酸水素ナトリウム3.4部を一括添加し、更に60分間重合させた。得られた反応液を冷却して重合を終了し、エマルション(2)を得た。このときの固形分は、30.0%であった。
[組成:メタクリル酸/アクリル酸メチル=35/65(質量比)]
【0052】
実施例1〜2
製造したエマルション(1)を用いて、下記の方法により泡立ち試験を行った。
(泡立ち試験)
500mLメスシリンダーにイオン交換水200mLを入れ、表1〜2に示すアルカリ(塩基性物質)を溶解した。アルカリ溶解時にバブリングする場合は、ガス濾過管(相互理化学硝子製作所社製、硝子粒子番号2)を用いて5L/分で空気を1分間バブリングした。アルカリ溶解後、水溶液のpHを測定した。次に、一旦バブリングを停止し、ここへエマルション(1)を表1〜2に示す量(剤添加量)添加した後、5L/分で空気をバブリングした。結果を表1〜2に示す。
【0053】
比較例1〜2
製造したエマルション(1)を用いて、下記の方法により泡立ち試験を行った。
(泡立ち試験)
500mLメスシリンダーにイオン交換水200mLを入れ、ここへエマルション(1)を表1〜2に示す量(剤添加量)添加した後、5L/分で空気をバブリングした。一旦バブリングを停止し、液のpHを測定した。その後、表1〜2に示すアルカリ(塩基性物質)を溶解した。アルカリ溶解時には、ガス濾過管(相互理化学硝子製作所社製、硝子粒子番号2)を用いて5L/分で空気を1分間バブリングした。アルカリ溶解後、水溶液のpHを測定した。結果を表1〜2に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
表1〜2中、剤添加量とは、エマルション(1)の添加量である。バブリングにおいて、流量とは、空気の流量である。最終pHとは、エマルションを添加してバブリングした後のpHである。
【0057】
実施例3
エマルション(1)を用いて、下記の方法により泡立ち試験を行った。
(泡立ち試験)
500mLメスシリンダーにイオン交換水100mLを入れ、炭酸カルシウム(商品名:NS#100、日東粉化工業社製)5.0gを加えてガス濾過管(相互理化学硝子製作所社製、硝子粒子番号2)を用いて15L/分で空気を1分間バブリングして炭酸カルシウムを分散させた。一旦バブリングを停止し、液のpHを測定した。次に、アルカリ(炭酸ナトリウム)0.1gを添加し、ガス濾過管を用いて5L/分で空気を1分間バブリングした。アルカリ溶解後、液のpHを測定した。次に、一旦バブリングを停止し、ここへエマルション(1)を表3に示す量(剤添加量)添加した後、5L/分で空気をバブリングした。結果を表3に示す。表3中の記載は、表1と同様である。
【0058】
比較例3
エマルション(1)を用いて、下記の方法により泡立ち試験を行った。
(泡立ち試験)
500mLメスシリンダーにイオン交換水100mLを入れ、炭酸カルシウム(商品名:NS#100、日東粉化工業社製)5.0gを加えてガス濾過管(相互理化学硝子製作所社製、硝子粒子番号2)を用いて15L/分で空気を1分間バブリングして炭酸カルシウムを分散させた。一旦バブリングを停止し、液のpHを測定した。ここへエマルション(1)を表3に示す量(剤添加量)添加した後、5L/分で空気をバブリングした。一旦バブリングを停止し、液のpHを測定した。その後、表3に示すアルカリ(炭酸ナトリウム)を溶解した。アルカリ溶解時には、ガス濾過管を用いて5L/分で空気を1分間バブリングした。アルカリ溶解後、液のpHを測定した。結果を表3に示す。
【0059】
【表3】
【0060】
実施例4
製造したエマルション(2)を用いて、下記の方法により泡立ち試験を行った。
(泡立ち試験)
使用したイオン交換水の量やアルカリを表4に示すようにしたこと以外は、実施例1と同様にして操作を行った。結果を表4に示す。
【0061】
比較例4
製造したエマルション(2)を用いて、下記の方法により泡立ち試験を行った。
(泡立ち試験)
使用したイオン交換水の量やアルカリを表4に示すようにしたこと以外は、比較例1と同様にして操作を行った。結果を表4に示す。
【0062】
【表4】
【0063】
表4中、剤添加量とは、エマルション(2)の添加量である。バブリングにおいて、流量とは、空気の流量である。最終pHとは、エマルションを添加してバブリングした後のpHである。
【0064】
実施例5
エマルション(2)を用いて、下記の方法により泡立ち試験を行った。
(泡立ち試験)
使用したイオン交換水の量やアルカリを表5に示すようにしたこと以外は、実施例3と同様にして操作を行った。結果を表5に示す。表5中の記載は、表4と同様である。
【0065】
比較例5
エマルション(2)を用いて、下記の方法により泡立ち試験を行った。
(泡立ち試験)
使用したイオン交換水の量やアルカリを表5に示すようにしたこと以外は、比較例3と同様にして操作を行った。結果を表5に示す。
【0066】
【表5】
【0067】
エマルション製造例(3)
滴下ロート、攪拌装置、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を取り付けたフラスコに、イオン交換水316.1部、及び、乳化剤(第一工業製薬社製、商品名:ハイテノールN−08)2.9部を仕込み、フラスコ内を窒素ガスで置換しつつ、75℃まで攪拌しながら昇温した。一方、メタクリル酸102.2部と、アクリル酸メチル189.8部とを、乳化剤(第一工業製薬社製、商品名:ハイテノールN−08)5.8部をイオン交換水286.2部に溶解した乳化剤水溶液に添加し、激しく攪拌することにより、プレエマルション(重合性単量体濃度50.0%)を調製し、該プレエマルションを滴下ロートに仕込んだ。また別途、重合開始剤としての1%過硫酸アンモニウム水溶液67.0部を調製し、プレエマルションとは別の滴下ロートに仕込んだ。
【0068】
次いで、該プレエマルションのうちの58.4部をフラスコ内に投入して5分間攪拌後、還元剤として1%亜硫酸水素ナトリウム水溶液3.0部を投入し、続けて、重合開始剤として調製しておいた1%過硫酸アンモニウム水溶液のうちの6.7部を投入して、反応温度77℃で20分間攪拌することにより、初期重合を行った。その後、反応温度を77℃に保ちながら、滴下ロートから残りのプレエマルションを2時間かけて、また、残りの1%過硫酸アンモニウム水溶液を3時間かけて、それぞれ滴下した。プレエマルションの滴下終了後、イオン交換水10.0部を用いて滴下ロートを洗浄し、この洗液をフラスコに投入した。開始剤水溶液の滴下終了後、更に30分間重合させた後、後添加触媒として1%ロンガリット水溶液17.0部を1時間かけて滴下し、更に30分間重合させた。得られた反応液を冷却して重合を終了し、エマルション(3)を得た。このときの固形分は、30.0%であった。
[組成:メタクリル酸/アクリル酸メチル=35/65(質量比)]
【0069】
実施例6〜7
製造したエマルション(3)を用いて、下記の方法により泡立ち試験を行った。
(泡立ち試験)
500mLメスシリンダーにイオン交換水200mLを入れ、消泡剤(商品名:ノプコ8034−L、サンノプコ社製)を表6に示す量(消泡剤量)添加し、アルカリ(塩基性物質)として炭酸ナトリウムを0.5g添加した後、分散溶解した。バブリングは、ガス濾過管(相互理化学硝子製作所社製、硝子粒子番号2)を用いて10L/分で空気を1分間バブリングした。分散溶解後、液のpHを測定した。次に、一旦バブリングを停止し、ここへエマルション(3)を表6に示す量(剤添加量)添加した後、10L/分で空気をバブリングした。結果を表6に示す。表6中の記載は、表4と同様である。
【0070】
比較例6〜7
製造したエマルション(3)を用いて、下記の方法により泡立ち試験を行った。
(泡立ち試験)
500mLメスシリンダーにイオン交換水200mLを入れ、消泡剤(商品名:ノプコ8034−L、サンノプコ社製)を表6に示す量(消泡剤量)添加した後、10L/分で空気を1分間バブリングした。一旦バブリングを停止し、液のpHを測定した。ここへエマルション(3)を表6に示す量(剤添加量)添加した後、10L/分で空気を1分間バブリングした。一旦バブリングを停止し、液のpHを測定した。その後、アルカリ(塩基性物質)として炭酸ナトリウム0.5gを添加し、10L/分で空気をバブリングした。アルカリ溶解後、液のpHを測定した。結果を表6に示す。
【0071】
【表6】
【0072】
【発明の効果】
本発明のエマルションの分散液又は溶解液の調製方法は、上述の構成からなり、エマルションと水系溶媒含有液とを混合してエマルションの分散液又は溶解液を調製する場合に、消泡剤の使用を抑制しつつ、発泡を抑制することができる。
Claims (4)
- エマルションと水系溶媒含有液とを混合してエマルションの分散液又は溶解液を調製する方法であって、
該エマルションは、カルボキシル基を有する重合体を含むアルカリ可溶性エマルションであり、
該アルカリ可溶性エマルションを水系溶媒含有液と混合するに際し、予め水系溶媒含有液に塩基性物質を添加し、アルカリ可溶性エマルションを該水系溶媒含有液に添加し、希釈して分散又は溶解することを特徴とするアルカリ可溶性エマルションの分散液又は溶解液の調製方法。 - エマルションと水系溶媒含有液とを混合してエマルションの分散液又は溶解液を調製する方法であって、
該エマルションは、カルボキシル基を有する重合体を含むアルカリ可溶性エマルションであり、
該アルカリ可溶性エマルションを水系溶媒含有液と混合するに際し、予め水系溶媒含有液に塩基性物質を添加して該水系溶媒含有液のpHを7以上とし、アルカリ可溶性エマルションを該水系溶媒含有液に添加し、希釈して分散又は溶解することを特徴とするアルカリ可溶性エマルションの分散液又は溶解液の調製方法。 - 前記アルカリ可溶性エマルションの分散液又は溶解液における固形分濃度は、0.001〜20質量%であることを特徴とする請求項1又は2記載のアルカリ可溶性エマルションの分散液又は溶解液の調製方法。
- 前記アルカリ可溶性エマルションの分散液又は溶解液の調製方法は、空気吹込みによってアルカリ可溶性エマルションを分散又は溶解することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアルカリ可溶性エマルションの分散液又は溶解液の調製方法。
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