JP3688235B2 - 高分子乳化剤を用いた乳化重合法 - Google Patents
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Description
【技術分野】
本発明は、新規な高分子乳化剤及びそれを用いた乳化重合法に係り、特に、所定の不飽和モノマーの乳化重合に際して、乳化剤として好適に用いられ、そして、それによって優れた特性のエマルジョン型接着剤を提供し得る高分子乳化剤に関するものである。
【0002】
【背景技術】
従来から、水等の所定の液体中に、これと溶け合わない別の液体、例えば有機液体が、細粒として分散せしめられてなるエマルジョンを形成するに際して、その安定なエマルジョンを得るために、系内に、所定の乳化剤を添加、存在せしめることが、行われてきている。そして、そのような乳化剤は、通常、分子内に親水性基と親油性基(疎水性基)の両方を含み、従って、水と油の界面に吸着層を作り易い、所謂、表面活性な物質として認識され、工業的な用途の他、医薬用の乳化製剤において用いられ、また食品用乳化剤等としても、広く用いられてきている。
【0003】
そして、それら各種の用途に用いられる乳化剤としては、一般に、界面活性剤の中から適宜に選択され、例えば、アルカリ石鹸、有機アミン石鹸、高級アルコールの硫酸エステル非イオン活性剤、タンパク質、植物ゴム、アルギン酸塩、カルボキシメチルセルロース、脂肪酸モノグリセリド類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ショ糖の脂肪酸エステル類等を挙げることができるが、それら乳化剤は、何れも、低分子量のものであって、合成重合体からなる高分子量の乳化剤であって、実用上において有効であるものは、殆ど知られていない。
【0004】
また、そのような乳化剤の工業的用途の一つとして、乳化重合における使用を挙げることが出来る。具体的には、水に不溶性の不飽和モノマーの重合に際して、石鹸や表面活性剤等を乳化剤として用いて、そのような不飽和モノマーを水中に均一に分散せしめて、水溶性の重合触媒を用いて重合せしめるものであって、重合後においても、生成重合体は水に分散した乳化状態で得られ、塗料や接着剤においては、そのような乳化状態のまま、それぞれの用途に適用されることとなるのであるが、乳化剤自体、生成重合体に対しては本来的に不純物となることに加えて、得られる重合体の分子量が、乳化剤の分子量に比べて遥かに大きく、それら両者間に親和性乃至は相溶性が殆ど存在しないところから、乳化重合の状態のままのエマルジョンは、乳化剤の存在によって物性的な悪影響を受け、例えば、接着剤にあっては、耐水性や接着強度等の物性が低下する等の問題を内在しているのである。
【0005】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その課題とするところは、合成重合体からなる新規な高分子乳化剤であって、特に、水系乳化重合における乳化剤として好適に用いられ得るものを提供することにあり、また、そのような高分子乳化剤を用いた有用な乳化重合法、更には、それによって得られたエマルジョンからなる、優れた特性を有するエマルジョン型接着剤を提供することにある。
【0006】
【解決手段】
そして、本発明にあっては、そのような課題を解決するために、低分子主鎖成分としての(メタ)アクリル系モノマー又はビニル系モノマーの5〜30重量%と、親水性成分としてのアルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートの30〜70重量%と、疎水性成分としてのアルコキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ケイ素含有(メタ)アクリレート又はフッ素含有(メタ)アクリレートの20〜65重量%とからなるランダム若しくはブロック共重合体を主成分として含有する高分子乳化剤を、その要旨とするものである。
【0007】
このように、本発明に従う高分子乳化剤にあっては、主鎖成分として、低分子の(メタ)アクリル系モノマー又はビニル系のモノマーを介在させつつ、重合性の特定の親水性成分並びに重合性の特定の疎水性成分が、ランダム共重合又はブロック共重合せしめられてなる重合体にて、構成されてなるものであって、その重合体主鎖中に、親水性成分と疎水性成分とが結合、含有せしめられていることによって、それら親水性成分及び疎水性成分に含まれる親水性セグメント及び疎水性セグメントが、重合体主鎖に対して側鎖(分岐鎖)部分として存在し、以て親水性界面に対しては、その親水性セグメントが配向する一方、疎水性界面に対しては、その疎水性セグメントが配向することによって、効果的な乳化作用を発揮し得ることとなるのである。
【0008】
従って、そのような本発明に係る高分子乳化剤を用いて、不飽和モノマーの少なくとも1種からなるモノマー組成物を、水系において乳化重合せしめることが、効果的に実現され得ることとなるのであり、これにより、乳化安定性に優れた重合体エマルジョンが、有利に得られるのである。
【0009】
また、かかる高分子乳化剤を用いた乳化重合法によって得られた重合体のエマルジョンは、そのまま、エマルジョン型接着剤として有利に用いられることとなる。そのようなエマルジョン型接着剤における接着成分である重合体に対して、それを乳化せしめている乳化剤も高分子であるところから、それらの間の相溶性乃至は親和性を効果的に高め得て、耐水性や強度等の物性の向上に効果的に寄与せしめ得るからである。
【0010】
なお、ここで、本明細書における前記した箇所や後述する箇所における(メタ)アクリル・・・なる表示は、アクリル・・・なる化合物とメタクリル・・・なる化合物の二つを総称する表示として用いられており、また、・・・(メタ)アクリレートなる表示は、・・・アクリレートなる化合物と・・・メタクリレートなる化合物の二つを総称する表示として用いられていることが、理解されるべきである。
【0011】
【発明の実施の形態】
ところで、上記した本発明に従う高分子乳化剤において、それを構成する重合体の主鎖成分として、少なくとも、低分子の(メタ)アクリル系モノマー又はビニル系モノマーが用いられている必要がある。後述する重合性の特定の親水性成分や疎水性成分が、何れも、マクロモノマーとなるところから、それら成分の重合反応性を考慮して、前記した低分子の(メタ)アクリル系モノマーやビニル系モノマーを存在せしめることによって、得られる重合体の重合度を向上せしめることが出来るのである。
【0012】
そして、そのような低分子のモノマーとしては、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリル系モノマーや、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、塩化ビニル、N−ビニルラクタム、酢酸ビニル等のビニル系モノマーを挙げることが出来る。
【0013】
また、かかる高分子乳化剤を与える重合体に、親水性セグメントを導入するための親水性成分は、以下の化1にて示されるアルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが、用いられることとなる。
【0014】
【化1】
【0015】
なお、かかる化1にて示される化合物において、R1 は水素原子又はメチル基であり、R2 はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素数が6以下のアルキル基であり、更にnは2〜50の整数である。
【0016】
さらに、本発明に従う高分子乳化剤を与える重合体に、疎水性セグメントを導入するための疎水性成分としては、下記化2にて示されるアルコキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートが、好適に用いられることとなるが、また、それに代えて、ケイ素含有(メタ)アクリレート又はフッ素含有(メタ)アクリレートも、有利に用いられることとなる。
【0017】
【化2】
【0018】
なお、かかる化2において、R3 としては水素原子又はメチル基が選択され、また、R4 としては、前記した化1におけるR2 と同様に、炭素数が6までのアルキル基が採用されることとなる。さらに、mにあっても、上記の化1に示される化合物と同様に、2〜50の整数である。
【0019】
更にまた、このような化2にて示される化合物と同様に、疎水性成分として用いられるケイ素含有(メタ)アクリレートや、フッ素含有(メタ)アクリレートとしては、ポリシロキサン基を有する(メタ)アクリレートや、フルオロアルキル基乃至はパーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート等の公知のものが、何れも用いられ得るが、その中で、ケイ素含有(メタ)アクリレートとしては、特に、下記の化3にて表されるポリジメチルシロキサン(メタ)アクリレートが有利に用いられることとなる。
【0020】
【化3】
【0021】
但し、かかる化3において、R5 は水素原子又はメチル基であり、Aはエチレン基、プロピレン基、ブチレン基等の低級アルキレン基であり、Meはメチル基であり、pは2〜50の整数である。
【0022】
そして、上記せる低分子主鎖成分と親水性成分と疎水性成分とからなる3成分を用いて、目的とする高分子乳化剤を形成するに際しては、それら3成分を、低分子主鎖成分:5〜30重量%、親水性成分:30〜70重量%、疎水性成分:20〜65重量%の割合において(それら3成分の合計量は100重量%である)、用いる必要がある。けだし、低分子主鎖成分の割合が5重量%よりも少なくなると、重合が進行し難く、また30重量%を超えるようになると、得られる重合体の疎水性が高くなり、O/W型のエマルジョン形成には不適格となる問題を生じるからであり、また、親水性成分が30重量%未満では、疎水性の増大によるHLB値の低下と水溶性の減少が惹起される一方、70重量%を超えるようになると、乳化安定性が低下する問題を惹起するようになるからであり、更に、疎水性成分の割合が20重量%よりも低くなると、乳化安定性が減少する問題があり、一方、65重量%を超えるようになると、HLB値の低下や水溶性の消失等の問題が惹起されることとなって、有効な乳化性能を発揮することが出来なくなるからである。
【0023】
ここにおいて、かくの如き3成分を用いて本発明に従う高分子乳化剤を製造するに際しては、一般に、リビングラジカル光重合方式にて、それら3成分がランダム共重合若しくはブロック共重合せしめられることとなる。具体的には、リビングラジカル光重合においては、光源として、超高圧水銀ランプ(波長:250〜546nm)等による紫外線を用い、更に、重合開始剤として、p−キシリレンビスジエチルジチオカルバメートやベンジルジエチルジチオカルバメート等を用いて、モノマー総量に等しい溶媒、例えばメチルエチルケトン等の溶媒中において、Arガスによる加圧雰囲気下、20〜25℃の温度で、数時間、光照射を行うことにより、それら3成分のランダム共重合やブロック共重合が行われるのである。
【0024】
例えば、ランダム共重合を行う場合にあっては、前記3成分の所定割合のモノマー組成物を、同量の溶媒に溶解せしめた後、耐圧容器内に収容し、それに所定の開始剤を添加した後、Arガスを徐々に封入して、最終封入圧が4〜5kg/cm2 となるようにして重合に供せしめるのである。なお、重合は、光源より、所定時間の間、紫外線を照射することより行われることとなる。そして、そのような重合操作によって得られた容器内の重合生成物に対して、通常の再沈殿精製操作が施され、その得られた沈殿物を、常温にて真空乾燥せしめることにより、目的とする高分子乳化剤が得られるのである。
【0025】
また、ブロック共重合による方式を採用する場合にあっては、先ず、低分子主鎖成分と親水性成分とが、上記の如きランダム共重合操作と同様にして、共重合せしめられて、幹ポリマーが製造される。次いで、この低分子主鎖成分と親水性成分からなる共重合体(幹ポリマー)と共に、疎水性成分を、メチルエチルケトン等の所定の溶媒に溶解せしめて、上記のランダム重合操作と同様にして、ブロック共重合を行わしめるのである。なお、その際、それぞれのモノマーの重合は、光照射にて開始、進行せしめられることとなることは、言うまでもないところである。そして、得られたブロック共重合体は、適当な単離操作が施されて、目的とする高分子乳化剤として、採取されるのである。
【0026】
なお、本発明に従う高分子乳化剤を得るための3成分の重合は、上記した光重合方式を採用することによって行われる他、それら3成分のランダム共重合体を得る場合にあっては、また、溶液熱重合方式にて実施することも可能である。その場合において、それら3成分は、攪拌機、温度計、窒素ガス導入管を備えた三つ口フラスコに収容され、更に溶媒として、メチルエチルケトンとp−キシレンの等量混合溶媒をモノマーの3.5〜4倍量加え、更にアドビスイソブチロニトリル(開始剤)を加えて、65℃の温度の油浴中において、8〜10時間重合せしめることにより、目的とする3成分のランダム共重合体が得られるのである。なお、そのようにして得られた重合生成物は、n−ヘキサンでの再沈殿精製操作を2回繰り返し、常温で真空乾燥せしめることにより、目的とする高分子乳化剤が得られることとなる。
【0027】
そして、かくの如くして得られた、前記3成分からなるランダム若しくはブロック共重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにて測定された数平均分子量(Mn)が5000〜100000程度のものであって、そのまま、高分子乳化剤として用いられる他、他の適当な公知の乳化剤と組み合わされて、高分子乳化剤として用いられることとなるが、その使用に際しては、一般に、従来からの乳化剤の使用方式が、そのまま適用可能である。具体的には、そのような本発明に従う高分子乳化剤は、固形分の形態において、或いはそれを水に溶解せしめた形態において、それぞれの用途に適用せしめられ得るのである。
【0028】
ところで、かかる本発明に従う高分子乳化剤は、通常の乳化剤が適用される各種用途に適宜に用いられ得る他、特に、公知の各種の不飽和モノマーの少なくとも1種からなるモノマー組成物を水系において乳化重合せしめるに際しての乳化剤として、好適に用いられることとなる。それは、選択された乳化重合用のモノマー組成に対する高分子乳化剤の親和性に由来する共通成分効果によるものと考えることが出来るのである。
【0029】
特に、そのような本発明に従う高分子乳化剤を用いた水系の乳化重合において、そこで重合せしめられるモノマー組成と、用いられる高分子乳化剤の成分組成を相互に対応させ得る柔軟性があり、具体的には、乳化重合を行うモノマー組成に対応して、高分子乳化剤の成分組成を変更したり、或いはそれとは逆に、高分子乳化剤の成分組成に応じて、乳化重合を行うモノマー組成を選択することが可能となるのである。例えば、高分子乳化剤における低分子主鎖成分として、メチルメタクリレート(MMA)の如き(メタ)アクリル系モノマーを用いた場合にあっては、主鎖骨格は(メタ)アクリレートとなるところから、各種の(メタ)アクリレートの乳化重合が可能となるのであり、また疎水性成分として、前記化2に示される如きアルコキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートを用いた場合にあっては、ポリプロピレングリコール単位が側鎖となって、それは、それほど強い低表面張力成分となるものではないところから、各重合成分の表面張力を比較した場合において大きな偏りがなく、そのために、一般用途の乳化重合にも適しているのである。
【0030】
また、スチレン系モノマーの乳化重合の場合にあっては、高分子乳化剤の骨格(低分子主鎖成分)を、上記したMMAモノマーからスチレンに変更すれば、親和性の観点から、より適合した乳化剤となるのであり、更に、極めて表面自由エネルギーの低いケイ素含有不飽和モノマーやフッ素含有不飽和モノマーを乳化重合する場合にあっては、高分子乳化剤の疎水性成分を、それぞれ、前記した化3にて示されるポリジメチルシロキサン(メタ)アクリレート等のケイ素含有(メタ)アクリレート、又はパーフルオロオクチルエチルメタクリレート等のフッ素含有(メタ)アクリレート等のモノマーに変更すれば、また、界面化学的に適合した乳化剤となるのである。
【0031】
なお、かかる乳化重合において、高分子乳化剤の使用量としては、乳化せしめられるモノマーに対して充分な乳化能が発揮され得るように、乳化重合せしめられるモノマー組成物の100重量部に対して、少なくとも1重量部以上の割合とすることが望ましい。また、そのような高分子乳化剤の添加量の上限としては、従来の低分子乳化剤の添加量に比べて遥かに大きく、一般に、モノマー組成物の100重量部に対して、50重量部程度の多量の添加も可能である。従来の低分子乳化剤を用いた場合にあっては、それが10重量部以上も添加されることは殆どないが、本発明に従う高分子乳化剤の場合にあっては、乳化重合用成分との共通成分が乳化剤成分にもなっているところから、重合生成物に悪影響を及ぼさない程度において、多量に添加することが可能となったのであり、事実、40重量部を添加した場合にあっても、力学特性が低下しないことが認められている。なお、かかる高分子乳化剤の添加量が50重量部を超えるようになると、重合系のゲル化や弾性率の急激な低下が惹起されるようになるところから、それ以上の添加は避けることが望ましいのである。
【0032】
また、かくの如き乳化重合を実現するための重合手法としては、例えば、連続乳化重合、一括乳化重合、二段乳化重合、分割添加重合等の公知の乳化重合法が採用され得、また、そのような乳化重合に際して採用される重合温度や重合時間にあっても、特に制限されるものではなく、目的とするエマルジョンの分子量やゲル含有率等に応じて、適宜に設定されることとなる。更に、かかる乳化重合に際しては、従来より乳化重合操作に一般的に用いられている各種添加剤や助剤、例えば連鎖移動剤、重合開始剤、キレート化剤等を使用することが出来ることは言うまでもないところである。
【0033】
そして、このような乳化重合法によって得られたエマルジョンは、従来から公知の各種の用途に用いられることとなるが、特に、本発明にあっては、そのようなエマルジョンが、従来の低分子乳化剤ではなく、本発明に従う高分子乳化剤を用いて得られたものであって、しかも、そのような高分子乳化剤が先述せる如き特徴を有しているところから、エマルジョンを構成する重合体と高分子乳化剤との親和性が高められ得ていることによって、耐水性や接着強度等の物性に優れたエマルジョン型接着剤として、好適に用いられることとなる。
【0034】
さらに、そのようなエマルジョン型接着剤を与える不飽和モノマーとしては、本発明にあっては、高分子乳化剤と同様な3成分のモノマーに加えて、更にエチレン性不飽和カルボン酸が用いられることとなる。具体的には、(メタ)アクリル系モノマー又はビニル系モノマーからなる第1成分と、アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートからなる第2成分と、アルコキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ケイ素含有(メタ)アクリレート、又はフッ素含有(メタ)アクリレートからなる第3成分と、エチレン性不飽和カルボン酸からなる第4成分とを、前述せる如き高分子乳化剤の存在下において、乳化重合せしめて得られるエマルジョンを、接着剤の成分として用いるものであって、これにより、低分子乳化剤では実現の困難な物性を備えた接着剤を提供し得ることとなったのである。
【0035】
なお、それらエマルジョンを形成するための第1成分、第2成分及び第3成分としては、それぞれ前記した高分子乳化剤を構成する低分子主鎖成分、親水性成分及び疎水性成分と同一のモノマーが用いられていることが望ましく、また、第4成分としてのエチレン性不飽和カルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸等のモノカルボン酸:イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等の多価カルボン酸:マレイン酸モノメチルエステル等の多価カルボン酸の部分エステル等を用いることが出来るが、それらの中でも特にモノカルボン酸が好適に用いられることとなる。そして、それら第1成分〜第4成分は、一般に、第1成分:50〜89重量%、第2成分:5〜25重量%、第3成分:5〜25重量%、第4成分:1〜20重量%程度の割合において用いられることとなる(但し、それら4成分の合計量は100重量%である)。
【0036】
そして、このようにして得られたエマルジョン型接着剤には、更に必要に応じて、従来から公知の各種の添加剤、例えば粘着付与剤や、プロセスオイル等の可塑剤、炭酸カルシウム、クレー等の充填剤、分散剤、消泡剤、防腐剤、酸化防止剤、増粘剤等が、本発明の効果を妨げない範囲で、適宜に添加され得るものであることは、従来からの接着剤と同様である。
【0037】
【実施例】
以下に、本発明のいくつかの実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には、上記の具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0038】
先ず、低分子主鎖成分として、メチルメタクリレート(MMA)を用い、また親水性成分として、メトキシ(ポリエチレングリコール)メタクリレート(MPEGMA:化1におけるR1およびR2がそれぞれメチル基であり、nが23であるもの)を用い、更に疎水性成分として、メトキシ(ポリプロピレングリコール)メタクリレート(MPPGMA:化2におけるR3及びR4がそれぞれメチル基であり、mが20であるもの)を用いて、下記表1に示されるポリマー組成を与えるモノマー配合組成において、リビングラジカル光重合を行い、各種ポリマー組成のランダム共重合体からなる高分子乳化剤を得た。
【0039】
具体的には、それらMMA、MPEGMA及びMPPGMAからなるモノマー組成物の100重量部を、メチルエチルケトン(MEK)の100重量部に溶解せしめた後、パイレックス製耐圧ガラスボトルに収容し、更に0.3重量部の開始剤(p−キシリレンビスジエチルジチオカルバメート)を添加せしめ、更にボトル内にArガスを徐々に供給して、最終封入圧:4〜5kg/cm2 とした状態において、重合に供した。なお、重合は、光源として紫外線(超高圧水銀ランプ:250〜546nm)を用い、かかる光源より距離:10cmの位置にボトル(重合容器)を固定して、20〜25℃の温度下、6時間照射することにより、行った。その後、ボトル内の重合生成物を、約10倍量のn−ヘキサン中に注いで、再沈殿精製を行い、そしてその得られた沈殿物を常温で真空乾燥することにより、目的とする高分子乳化剤を得た。
【0040】
かくして得られた各種の高分子乳化剤について、それぞれゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を測定すると共に、各高分子乳化剤の水溶性及び乳化安定性についても評価し、それぞれの結果を、下記表1に併せ示した。なお、乳化安定性については、3種のモノマー:MMA、MPPGMA及びMPEGMAの乳化5時間後の状態において、評価したものである。
【0041】
【表1】
【0042】
次いで、上記で得られた高分子乳化剤PE−4〜PE−6を用いて、下記表2に示されるモノマー組成において、MMA、MPEGMA、MPPGMA、AA(アクリル酸)、BA(ブチルアクリレート)を用いて乳化重合することにより、下記表2に示される如き状態の各種のエマルジョンを得た。なお、この高分子乳化剤を使用した乳化重合に際して、モノマー組成としては、重量比において、MMA/MPEGMA/MPPGMA/AA=70/15/15/3(A組成)又はMMA/MPEGMA/MPPGMA/AA/BA=70/15/15/3/5(B組成)を採用し、そのようなモノマーの合計量(A組成の場合には103重量部、B組成の場合には108重量部)において、所定の高分子乳化剤の3重量部を脱イオン水:30重量部に溶解した乳化剤水溶液に対して、MMA、MPPGMA、MPEGMA、AA、BAの順に配合して、ホモジナイザーにて攪拌、乳化させ、予備乳化したモノマーエマルジョンを調製した。そして、この得られたモノマーエマルジョンに、1−ドデカンチオール(連鎖移動剤)の2重量部、過硫酸アンモニウム(開始剤)0.5重量部を添加して、更に攪拌せしめた。そして、その得られた配合物を、予め73〜77℃に保っておいた90重量部の脱イオン水の入った4つ口フラスコ(攪拌器、温度計、窒素ガス導入管を備えている)に対して、送液ポンプを用いて一定速度において2〜3時間かけて、先のモノマーエマルジョンを滴下せしめ、更に滴下終了の後、同温度で2時間熟成を行って、重合終了とした。
【0043】
【表2】
【0044】
かくして得られた4種のポリマーエマルジョンについて、その引張接着強度と90°剥離強度を、JIS規定の方法に従って求め、その結果を、下記表3に示した。なお、下記表3には、上記で得られた4種類のポリマーエマルジョンの他、乳化剤として従来の低分子乳化剤(アニオン系:ニューコール707SF、ノニオン系:プルロニックF−68)をそれぞれ1%濃度で用いて得られたポリマーエマルジョンについての評価も併せ示した。
【0045】
【表3】
【0046】
以上の表1、表2及び表3の結果から明らかなように、本発明に従う高分子乳化剤は、優れた水溶性を有しており、そして、それを乳化重合における乳化剤として用いることにより、水系において乳化重合を有効に行うことが出来るのであり、また、そのような乳化重合によって得られたエマルジョンは、90°剥離強度において優れた特徴を発揮し、接着剤として優れた特徴を有するものであることが理解されるのである。
【0047】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明に従う高分子乳化剤は、水溶性に優れた乳化剤であり、従って、水系の乳化重合における乳化剤として好適に用いられ得ると共に、そのような乳化重合にて得られたエマルジョンは、また脱水性や剥離強度等の物性において優れた特徴を発揮する接着剤としても有効に用いられ得るのである。
Claims (2)
- 低分子主鎖成分としての(メタ)アクリル系モノマー又はビニル系モノマーの5〜30重量%と、親水性成分としてのアルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートの30〜70重量%と、疎水性成分としてのアルコキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ケイ素含有(メタ)アクリレート又はフッ素含有(メタ)アクリレートの20〜65重量%とからなるランダム若しくはブロック共重合体を主成分として含有することからなる高分子乳化剤を用いて、不飽和モノマーの少なくとも1種からなるモノマー組成物を、水系において乳化重合せしめることを特徴とする乳化重合法。
- 請求項1記載の乳化重合法によって得られたエマルジョンからなることを特徴とするエマルジョン型接着剤。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001367003A JP3688235B2 (ja) | 2001-11-30 | 2001-11-30 | 高分子乳化剤を用いた乳化重合法 |
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