JP4214878B2 - 積層フィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
これらの各種ディスプレイにおいては、表示画面に外部から光が入射し、この光が反射して表示画像を見ずらくすることがあり、特に近年、フラットパネルディスプレイの大型化に伴い、上記問題を解決することが、重要な課題となってきている。
通常、このような問題を解決するために、各種ディスプレイに対して、様々な反射防止処置や防眩処置がとられている。その一つとして反射防止フィルムを各種のディスプレイに使用することが行われている。この反射防止フィルムには、反射防止性能を有するとともに、保護フィルムとしての機能も要求される。現在では、熱可塑性樹脂フィルムに反射防止層や透明導電層などを積層した積層フィルムが多く用いられるようになってきている。
前記積層フィルムは、熱可塑性樹脂フィルム上に乾式法や湿式法などにより反射防止層や透明導電性層などを積層することにより製造されている。近年の表示装置の大型化などに伴い、生産性、加工性を高める観点からロールトゥーロールで連続的に成膜をおこなうことが好ましい。しかしながら、この積層フィルムに用いる熱可塑性樹脂フィルムは、(1)静摩擦係数が高く、(2)引張弾性率が低いために、成膜した後の積層フィルムの表面欠陥(傷や皺)などが起こりやすい。そのため、皺や傷などの表面欠陥がないように連続成膜するためには、成膜時のロールの走行速度を遅くしなければならなかった。
他には、樹脂中にガラス繊維を分散させて、プラスチックフィルムの引張弾性率を上げたりすることも行われている(例えば、特許文献4を参照)。
しかしながら、これらの方法で薄膜を形成させた場合、フィルムが熱膨張を起こすと、弾性率による復元力が大きく、摩擦力が低いためにフィルムを走行させる成膜ロール上でフィルムが滑ってしまう。そのため、皺の発生は解消できるが、滑りによりフィルムに傷が付いたり、摩擦係数を下げるためや引張弾性率を上げるために分散させた粒子により、得られる積層フィルムの光線透過率が低下したり、ヘイズが上昇してしまったりする。そしてこの積層フィルムを実装すると表示欠陥の原因となる。他にも、工程が増えるため、コストや歩留まりに問題がある。
(1)下記[1]〜[3]の特性を有する長尺の熱可塑性樹脂を含有してなる基材フィルム上に、無機酸化物からなる層を少なくとも1層、物理気相析出法により形成する工程を含む積層フィルムの製造方法、
[1]フィルムの静摩擦係数が0.7以上である;
[2]フィルムの引張弾性率が4000MPa以下である;
[3]フィルム全幅における膜厚変動が基準膜厚の3%以内でかつ標準偏差が基準膜厚の0.7%以内である、
(2)基材フィルムが脂環式構造を有する重合体樹脂フィルムである請求項1記載の積層フィルムの製造方法、
(3)物理気相析出法がスパッタリング法である請求項1又は2記載の積層フィルムの製造方法、
(4)積層フィルムが、反射防止機能付偏光板保護フィルムである請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法、
及び
(5)積層フィルムが、導電性フィルムである請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法、
がそれぞれ提供される。
静摩擦係数が0.7未満であると、ロール上で基材フィルムがスリップしてしまい、傷が入って積層フィルムのヘイズが上がったり、透過率が下がったりして、これにより実装した時の表示欠陥の原因となる。
静摩擦係数は、ASTM D1894に準拠して測定する。
基材フィルムの引張弾性率を上記範囲にすることにより、樹脂にガラス繊維等を添加して強化する必要がないので、工程が減り、生産性と歩留まりが向上する。
引張弾性率は、JIS K7127に準拠して測定する。
膜厚変動が上記範囲をはずれると、走行時や成膜時に皺が入ったり、走行中のロールとの滑りやブロッキング現象により傷が付いたりする。
上記ダイラインの深さ及び高さ、並びに幅方向における山から山までの距離及び谷から谷までの距離は、三次元表面構造解析顕微鏡を用い、フィルム表面の凹凸のある面を下から上に一定速度で走査させて干渉縞を発生させて測定することができる。
ダイラインの深さや高さを測定するに際しては、隣り合う谷と山で、ベースが異なっている場合は、図1のようにベースライン12を引いて、谷14又は山13からそのベースライン12までの最短距離をダイラインの深さ15又は高さ16とする。また山から山までの距離は図1の17に示された距離とする。これは谷から谷までの距離も同様である。
脂環式構造を有する重合体樹脂は、主鎖及び/又は側鎖に脂環式構造を有するものであり、機械強度、耐熱性などの観点から、主鎖に脂環式構造を含有するものが好ましい。
ノルボルネン系重合体としては、具体的にはノルボルネン系モノマーの開環重合体、ノルボルネン系モノマーと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体、及びそれらの水素化物、ノルボルネン系モノマーの付加重合体、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーとの付加共重合体などが挙げられる。これらの中でも、透明性の観点から、ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体水素化物が最も好ましい。
上記の脂環式構造を有する重合体樹脂は、例えば特開2002−321302号公報などに開示されている公知の重合体から選ばれる。
また、ポリマーとしてYの構造を繰り返し単位として有するモノマーとしては、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]デカ−3,7−ジエン(慣用名:テトラシクロドデセン)及びその誘導体(環に置換基を有するもの)が挙げられる。
揮発性成分は、基材フィルムに微量含まれる分子量200以下の物質であり、例えば、残留単量体や溶剤などが挙げられる。揮発性成分の含有量は、脂環式構造含有重合体樹脂に含まれる分子量200以下の物質の合計として、脂環式構造含有重合体樹脂をガスクロマトグラフィーにより分析することにより定量することができる。
基材フィルムの飽和吸水率は、JIS K7209に準じて測定する。
基材フィルムを得る方法として、Tダイを用いる方法を採用する場合、Tダイを有する押出機における脂環式構造を有する重合体の溶融温度は、脂環式構造を有する重合体のガラス転移温度よりも80〜180℃高い温度にすることが好ましく、ガラス転移温度よりも100〜150℃高い温度にすることがより好ましい。押出機での溶融温度が過度に低いと脂環式構造を有する重合体の流動性が不足するおそれがあり、逆に溶融温度が過度に高いと樹脂が劣化する可能性がある。
薬品処理としては、重クロム酸カリウム溶液、濃硫酸などの酸化剤水溶液中に、浸漬し、その後充分に水で洗浄すればよい。浸漬した状態で振盪すると効率的であるが、長期間処理すると表面が溶解したり、透明性が低下したりするといった問題があり、用いる薬品の反応性、濃度などに応じて、処理時間などを調整する必要がある。
他の層としては、プライマー層;アンカー層;ハードコート層;SiOx(x=1.5〜2.0)超微粒子の3次元骨格からなる高均質透明多孔体層(屈折率1.25〜1.46);粘着剤層;防汚層;などが挙げられる。
プライマー層は、基材フィルムと無機酸化物からなる層との接着性の付与及び向上を目的として形成される。プライマー層を構成する材料としては、ポリエステルウレタン系樹脂、ポリエーテルウレタン系樹脂、ポリイソシアネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、主鎖に炭化水素骨格及び/又はポリブタジエン骨格を有する樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ゴム、環化ゴム又はこれらの重合体に極性基を導入した変性物が挙げられる。
中でも、主鎖に炭化水素骨格及び/又はポリブタジエン骨格を有する樹脂の変性物及び環化ゴムの変性物が好ましい。
プライマー層の厚みは特に制限されないが、通常0.01〜5μm、好ましく
は0.1〜3μmである。
アンカー層の厚みは特に限定されず、通常0.1〜30μm、好ましくは0.5〜15μmである。
防眩層には、平均粒径が0.2〜10μmの粒子を含有させてよい。ここでいう平均粒径は、粒子が凝集してない場合は一次粒子、粒子が凝集している場合は二次粒子の重量平均径である。粒子を含有させることで、防眩フィルムの表面に光を散乱させる凹と凸を形成し、防眩性を発現させることができる。粒子としては、無機粒子や有機粒子が挙げられる。
無機粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化錫、ITO、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリンおよび硫酸カルシウムなどの粒子が挙げられる。中でも、二酸化珪素、酸化アルミニウムが好ましい。
有機粒子としては樹脂粒子が好ましい。樹脂粒子の具体例としては、シリコン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ弗化ビニリデン樹脂から作製される粒子などが挙げられる。中でも、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂から作製される粒子が好ましく、ベンゾグアナミン樹脂、ポリスチレン樹脂から作製される粒子が特に好ましい。
本発明に使用する無機酸化物としては、SiO、SiO2、Al2O3、ZrO2、TiO、TiO2、Ti2O3、Ta2O5、TaHf2、HfO2、ZnO、MgO、SnO2、In2O3、In2O3/SnO2(ITOともいう)、CeO2、In2O3/CeO2(ICOともいう)、Y2O3、Yb2O3、Sb2O3、Sb2O5/SnO2(ATOともいう)、Ai2O3/ZnO2およびこれらの混合物が挙げられる。
真空蒸着法は、10−2〜10−5Pa程度の真空中で抵抗加熱、電子ビーム加熱、レーザ光加熱、アーク放電などの方法で蒸着物質を加熱蒸発させ、熱可塑性樹脂を含有してなる基材フィルム表面に付着させて薄膜層を形成する方法である。また、スパッタリング法は、アルゴンなどの不活性ガスが存在する1〜10−1Pa程度の真空中で、グロー放電などにより加速されたAr+などの陽イオンをターゲット(蒸着物質)に撃突させて蒸着物質をスパッタ蒸発させ、熱可塑性樹脂を含有してなる基材フィルム表面に薄膜層を形成させる方法である。蒸発の方法としては、DC(直流)スパッタリング、RF(高周波)スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、バイアススパッタリングなどがある。イオンプレーティング法は、上記の真空蒸着法とスパッタリング法とを組み合わせたような蒸着法である。この方法では、1〜10−1Pa程度の真空中において、加熱により放出された蒸発原子を、電界中でイオン化と加速を行い、高エネルギー状態で熱可塑性樹脂を含有してなる基材フィルム表面に付着させ、薄膜層を形成させる。
これらの中でも、幅の広い基材フィルム上に無機化合物からなる層を形成する場合、幅方向の膜厚均一性、密着性、生産性、及び歩留まりを向上することができるという点でスパッタリング法が好ましい。
無機酸化物からなる層を2層以上形成する場合は、相対的に低屈折率の薄膜と相対的に高屈折率の薄膜とが交互に積層されてなる、異種の無機酸化物からなる2層以上の複合多層膜であるのが、より高度な反射防止機能をもたせることができる点で好ましい。このような複合多層膜において、各層の厚さや屈折率等については、例えば、A.VASICEK著、「OPUTICS OF THIN FILMS」等に記載された公知技術に準じて設定することができる。
図2に示すフィルム巻き取り式真空成膜装置は、真空室1内に、巻きだしロール2、ガイドロール3−1、3−2、3−3、3−4、成膜ロール4、ターゲット5−1を備えた成膜カソード6−1、ターゲット5−2を備えた成膜カソード6−2、巻き取りロール7、真空ポンプ8を備えている。そして、ロール状に巻かれた長尺の基材フィルム9は、巻きだしロール2に装填されている。
なお、ターゲット及び成膜カソードは図ではそれぞれ2つ備えているが、2つ以上備えていれば、特に制限されない。
まず、装填された長尺の基材フィルム9は、巻きだしロール2から巻き出された後、複数のガイドロール3−1、3−2に導かれて、成膜ロール4に外接し、さらに別のガイドロール3−3、3−4を経て、巻き取りロール7に至るようになっている。成膜ロール4の周りにターゲット5−1を備えた成膜カソード6−1と、ターゲット5−2を備えた成膜カソード6−2が設置されており、スパッタリングで成膜ロール4に巻回された基材フィルム9の表面に高屈折率層及び低屈折率層が連続的に成膜される。次いで、高屈折率層及び低屈折率層が積層された長尺の基材フィルム9は、反対側のガイドロール3−3、3−4に導かれ、巻き取りロール7により巻き取られる。
ここで、成膜ロール4の温度Ts(℃)は、基材フィルムに使用する熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTg(℃)とすると、(Tg−130)(℃)<Ts(℃)<Tg(℃)の範囲にすることが好ましい。成膜ロールの温度Tsを前記範囲とすることにより、高屈折率層及び低屈折率層を基材フィルム全面に均一に積層することができ、反射率の均一な反射防止層を形成させることができる。
このスパッタリングによる成膜の際、真空室1は、真空ポンプ8により常に排気され、図示しないが成膜に必要となる作用ガスや反応ガスがボンベにより導入される。作用ガスとしては、不活性なガスが挙げられ、具体的にはアルゴンなどの希ガスが用いられる。反応性ガスとしては、通常酸素が挙げられる。真空室内の圧力は、通常10−1〜10−5Paの範囲である。
本発明において、低屈折率層及び高屈折率層をそれぞれ2層以上形成させる場合には、図2のようなフィルム巻き取り式真空成膜装置を用いて巻き取り方向などを順次変えて(例えば、巻き取りロール7を巻きだしロールにし、巻きだしロール2を巻き取りロールにする)連続的に高屈折率層及び低屈折率層を形成させてもよいし、図2のようなフィルム巻き取り式真空成膜装置を2連に連接して連続的に低屈折率層及び高屈折率層を形成させるようにしてもよい。
反射機能付偏光板保護フィルムの構成は、基材フィルム、ハードコート層、無機化合物からなる層を必須成分として有する。その他に有してもいい層としては、プライマー層、防汚層、SiOx(x=1.5〜2.0)超微粒子の3次元骨格からなる高均質透明多孔体層(屈折率1.25〜1.46)などが挙げられる。また、これらの層を積層する順序、積層方法については特に制限されない。
反射防止機能付偏光板保護フィルムの厚さは、通常30〜200μm、好ましくは40〜100μmである。
導電性フィルムの厚さは、通常30〜300μm、好ましくは60〜200μmである。
なお部及び%は特に断りのない限り重量基準である。
本実施例における評価は、以下の方法によって行った。
(1)静摩擦係数
ASTM D1894に準拠して、インテスコ社製、「精密万能材料試験機2005型」を用いて、試験速度を150mm/分、試験荷重を200g(ゴム付き荷重)、スリップ面をフィルム対金属(クロムメッキ鉄板)、試験方向をMD(長手)方向、試験温度を23℃の条件で行う。なお、同様の測定を5回行い、その算術平均値を静摩擦係数の代表値とする。
(2)引張弾性率
JIS K7127に準拠して、東洋ボールドウィーン社製、「テンシロン UTM−10T−PL」を用いて、試験片の形状はW=10mm、L=40mmとし、引張速度を500mm/分、荷重はロードセル50kgfで測定を行う。なお、同様の測定を5回行い、その算術平均値を引張弾性率の代表値とする。
(3)全光線透過率及びヘイズ
ASTM D1003に準拠して、日本電色工業社製、「濁度計NDH−300A」を用いて測定する。なお、同様の測定を5回行い、その算術平均値を全光線透過率及びヘイズの代表値とする。
(4)基材フィルムの基準膜厚、膜厚変動及び標準偏差
MD(長手)方向に任意の場所からフィルムをTD(幅)方向に1350mm切り出し、その切り出したフィルムについて、明産社製、「接触式ウェブ厚さ計 RC−101」を用いて、フィルムのTD方向に0.48mm毎に測定し、その測定値の算術平均値を基準膜厚T(μm)とする。膜厚変動は、前記測定した膜厚の内、最大値をTMAX(μm)最小値をTMIN(μm)として以下の式から算出する。
膜厚変動(%)=(TMAX−TMIN)/T×100
膜厚の標準偏差(μm)は、0.48mm毎に測定した全膜厚測定値より算出する。
(5)基材フィルムの長手方向に形成されるダイラインの深さ及び高さが5nm以上50nm以下のものの幅方向における山から山までの距離及び谷から谷までの距離
フィルムに光を照射して、透過光をスクリーンに映したときにスクリーン上に光の明若しくは暗の縞部分が見られる箇所(ダイライン)について、全幅に渡って観察する。このダイライン部分のフィルムを3cm角程度の大きさに切り取り、三次元表面構造解析顕微鏡(Zygo社製)を用いて、フィルム両面の表面を観察する。フィルム上の凹凸を干渉縞を発生させて測定する。
(6)傷の数
積層フィルムのTD(幅)方向に任意の場所から100mm×100mmのサイズをMD(長手)方向で10m毎に10点サンプリングして、光学顕微鏡により観察する。
ノルボルネン系重合体(ZEONOR 1420、日本ゼオン社製;ガラス転移温度Tg136℃)のペレットを、空気を流通させた熱風乾燥機を用いて100℃で、4時間乾燥した。そしてこのペレットを、リーフディスク形状のポリマーフィルター(濾過精度30μm)を設置した50mmの単軸押出機と内面に表面粗さRa=0.15μmのクロムメッキを施した650mm幅のT型ダイスを用いて260℃で押出し、押出されたシート状のノルボルネン系重合体を第1冷却ドラム(直径250mm、温度:135℃、周速度R1:25.7m/分)に密着させ、次いで第2冷却ドラム(直径250mm、温度125℃、周速度R2:25.7m/分)、次いで第3冷却ドラム(直径250mm、温度100℃、周速度R3:25.5m/分)に順次密着させて移送し、幅600mm、長さ300mの基材フィルム1を得た。得られた長尺の基材フィルムはロール状に巻き取った。なお、T型ダイスの開口部から押出されたシート状のノルボルネン系重合体が最初に密着する第1冷却ドラムまでをアルミ製の囲い部材で覆い、かつ前記囲い部材からシート状の溶融樹脂が最初に密着する冷却ドラムまでの距離を80mmとした。
得られた長尺の基材フィルム1の特性を表1に示す。
第1冷却ドラムの周速度R1を10.05m/分、第2冷却ドラムの周速度R2を10.05m/s、及び第3冷却ドラムの周速度R3を9.98m/分とした他は、製造例1と同様にして長尺の基材フィルム2を得た。
得られた長尺の基材フィルム2の特性を表1に示す。
無水マレイン酸変性スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の水素添加物(旭化成工業社製、「タフテックM1913」;メルトインデックス値は200℃、49N荷重で4.0g/10分、スチレンブロック含量30重量%、水素添加率80%以上、無水マレイン酸付加量2%)2部を、キシレン8部とメチルイソブチルケトン40部の混合溶媒に溶解し、孔径1μmのポリテトラフルオロエチレン製のフィルターでろ過して、完全な溶液のみをプライマー溶液として調製した。
6官能ウレタンアクリレート(新中村化学社製、「NKオリゴ U−6HA」)30部、ブチルアクリレート40部、イソボロニルメタクリレート(新中村化学社製、「NKエステル IB」30部、光重合開始剤(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−14−オン)10部をホモジナイザーで混合して紫外線硬化性樹脂組成物からなるハードコート剤を調整した。
製造例2で得られたロール状の長尺基材フィルムを図2に示す連続真空スパッタリング装置(直流マグネトロンスパッタリング装置)の巻きだしロール2にフィルムの全幅を厚さ60μmの粘着テープにより固定した状態で装填する。次いで、真空室1の圧力が1×10−5Paになるまで真空排気を開始した。ターゲットとして酸化インジウム錫(以下、「ITO」と称する)を使用し、これをターゲット5−1に装填した。
真空室内の圧力が1×10−5Paに到達した後、成膜ロール4を25℃にし、成膜中の圧力0.3Pa、ロール速度1m/分、ロール走行中のフィルムに係る張力80Nの条件で、スパッタリングにより、膜厚100nmのITO層を形成させて、巻き取りロール7に巻き取って長尺の積層フィルムAを得た。
得られた積層フィルムAの評価結果を表2に示す。
基材フィルムとして、表3に示す基材フィルム3〜5を用いた他は、実施例1と同様にスパッタリングを行い、膜厚100nmのITO層を形成した積層フィルムC〜Eをそれぞれ作製した。
得られた積層フィルムC〜Eの評価結果を表2に示す。
ターゲットをシリコンにした他は、実施例1と同様にスパッタリングを行い、膜厚100nmの酸化珪素(SiOx、x=2)層を形成した長尺の積層フィルムBを得た。
得られた積層フィルムBの評価結果を表2に示す。
基材フィルムとして、表3に示す基材フィルム3〜5を用いた他は、実施例2と同様にスパッタリングを行い、膜厚100nmのSiO2層を形成した積層フィルムF〜Hをそれぞれ作製した。
得られた積層フィルムF〜Hの評価結果を表2に示す。
製造例1で得られた長尺の基材フィルム1の両面に、高周波発振機(コロナジェネレーターHV05−2、Tamtec社製)を用いて、出力電圧100%、出力250Wで、直径1.2mmのワイヤー電極で、電極長240mm、ワーク電極間1.5mmの条件で3秒間コロナ放電処理を行い、表面張力が0.072N/mになるように表面改質して長尺の基材フィルム1Aを得た。このフィルムは再度ロール状に巻き取った。
製造例3で得られたプライマー溶液を、前記基材フィルム1Aの表面改質処理を行った面のうち片面に、乾燥後のプライマー層の膜厚が0.5μmになるように、ダイコーターを用いて塗布し、80℃の乾燥炉中で5分間乾燥させて、プライマー層を有する基材フィルム1Bを得た。
基材フィルム1Bのプライマー層を有する方の面に、製造例4で得たハードコート剤を硬化後のハードコート層の膜厚が5μmになるように、ダイコーターを用いて連続的に塗布した。次いで、80℃で5分間乾燥させた後、紫外線照射(積算光量300mJ/cm2)を行い、ハードコート剤を硬化させ、ハードコート層積層フィルム1Cを得た。このハードコート層積層フィルム1Cは、ロール状に巻き取った。硬化後のハードコート層の膜厚は5μm、表面粗さは0.2μmであった。
前記ハードコート層積層フィルム1Cを図2に示す連続真空スパッタ装置(直流マグネトロンスパッタリング装置)の巻きだしロール2にフィルムの全幅を厚さ60μmの粘着テープにより固定した状態で装填した。次いで、真空室1の圧力が1×10−5Paになるまで真空排気を開始した。ターゲットとして低屈折率層を構成する材料としてシリコンを用い、このターゲットには反応性ガスとして酸素を使用した。また高屈折率層を構成する材料としてITOを使用した。シリコンをターゲット5−1に、ITOをターゲット5−2に装填した。
真空室内の圧力が1×10−5Paに到達した後、成膜ロール4を25℃にし、フィルムのハードコート層を積層した面に、まずITO層を、膜厚15nmで形成させ、巻き取りロール7に巻き取った。この後、巻き取りロール7の回転方向を逆にして、巻き取りロール7から巻きだしながら、酸化珪素(SiOx、x=2)層を、膜厚35nmで形成させ、巻きだしロール2に巻き取った。さらにその後、巻きだしロール2から巻きだしながら、ITO層を膜厚134nmで形成させ、巻き取りロール7に巻き取った。その後ロール7から巻きだしながら、酸化珪素(SiOx、x=2)層を膜厚93nmで形成させて、巻きだしロール2に巻き取って反射防止層を積層した長尺のフィルム1Dを得た。なお、スパッタリング条件は、成膜中の圧力は0.3Pa、ロールの平均速度は0.8m/分、成膜ロール走行中のフィルムに係る張力は80Nとした。
得られた偏光板保護フィルム1Eの評価結果を表4に示す。
基材フィルムとして、表3に示す基材フィルム3〜5を用いた他は、実施例4と同様にして、基材フィルム3〜5に対応する反射防止機能付偏光板保護フィルム3E〜5Eをそれぞれ得た。
得られた反射防止機能付偏光板保護フィルム3E〜5Eの評価結果を表4に示す。
基材フィルムとして製造例2で得られた長尺の基材フィルム2を用い、ターゲットとしてITOのみを用い、防汚層を形成させない他は、実施例3と同様にして導電性フィルム2F(基材フィルム/プライマー層/ハードコート層/ITO層(30nm))を得た。
得られた導電性フィルム2Fの評価結果を表4に示す。
基材フィルムとして、表3に示す基材フィルム3〜5を用いた他は、実施例4と同様にして、導電性フィルム3F〜5Fを得た。
得られた導電性フィルム3F〜5Fの評価結果を表4に示す。
本発明によれば、実施例に示すように、基材フィルム上に、成膜時の熱皺や傷の発生、及びフィルム走行中の皺や傷の発生などの不具合なく無機酸化物からなる層を形成させることができるので、得られる積層フィルムは、ヘイズも低く、傷も少ない。一方、比較例は、成膜時の熱皺や傷の発生、及びフィルム走行中の皺や傷の発生しやすいので、得られる積層フィルムは、ヘイズが大きく、傷の数も多い。
12:ベースライン
13:谷
14:山
15:深さ
16:高さ
17:ダイラインの山から山までの距離
1:真空室
2:巻きだしロール
3:ガイドロール
4:成膜ロール
5−1、5−2:ターゲット
6−1、6−2:成膜カソード
7:巻き取りロール
8:真空ポンプ
9:基材フィルム
Claims (5)
- 下記[1]〜[3]の特性を有する長尺の熱可塑性樹脂を含有してなる基材フィルム上に、無機酸化物からなる層を少なくとも1層、物理気相析出法により形成する工程を含む積層フィルムの製造方法。
[1]フィルムの静摩擦係数が0.7以上である;
[2]フィルムの引張弾性率が4000MPa以下である;
[3]フィルム全幅における膜厚変動が基準膜厚の3%以内でかつ標準偏差が基準膜厚の0.7%以内である。 - 基材フィルムが脂環式構造を有する重合体樹脂フィルムである請求項1記載の積層フィルムの製造方法。
- 物理気相析出法がスパッタリング法である請求項1又は2記載の積層フィルムの製造方法。
- 積層フィルムが、反射防止機能付偏光板保護フィルムである請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- 積層フィルムが、導電性フィルムである請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
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