JP4214878B2 - 積層フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、積層フィルムの製造方法に関し、さらに詳しくは傷や皺などの外観異常がなく、基材フィルムの高い透明性を維持することのできる積層フィルムの製造方法に関する。
液晶表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、CRT(ブラウン管)、EL(エレクトロルミネッセンス)素子などの各種ディスプレイにおいては、各種のフィルムが使用されている。
これらの各種ディスプレイにおいては、表示画面に外部から光が入射し、この光が反射して表示画像を見ずらくすることがあり、特に近年、フラットパネルディスプレイの大型化に伴い、上記問題を解決することが、重要な課題となってきている。
通常、このような問題を解決するために、各種ディスプレイに対して、様々な反射防止処置や防眩処置がとられている。その一つとして反射防止フィルムを各種のディスプレイに使用することが行われている。この反射防止フィルムには、反射防止性能を有するとともに、保護フィルムとしての機能も要求される。現在では、熱可塑性樹脂フィルムに反射防止層や透明導電層などを積層した積層フィルムが多く用いられるようになってきている。
前記積層フィルムは、熱可塑性樹脂フィルム上に乾式法や湿式法などにより反射防止層や透明導電性層などを積層することにより製造されている。近年の表示装置の大型化などに伴い、生産性、加工性を高める観点からロールトゥーロールで連続的に成膜をおこなうことが好ましい。しかしながら、この積層フィルムに用いる熱可塑性樹脂フィルムは、(1)静摩擦係数が高く、(2)引張弾性率が低いために、成膜した後の積層フィルムの表面欠陥(傷や皺)などが起こりやすい。そのため、皺や傷などの表面欠陥がないように連続成膜するためには、成膜時のロールの走行速度を遅くしなければならなかった。
そこで、成膜時のレートを上げてフィルムの走行速度を早くするために、樹脂フィルムをマット化させたり、滑剤を混ぜたり、表面を粗面化させたり、すべりの良い層をフィルム上にコートして摩擦係数を下げて成膜を行っている(例えば、特許文献1〜3を参照)。
他には、樹脂中にガラス繊維を分散させて、プラスチックフィルムの引張弾性率を上げたりすることも行われている(例えば、特許文献4を参照)。
しかしながら、これらの方法で薄膜を形成させた場合、フィルムが熱膨張を起こすと、弾性率による復元力が大きく、摩擦力が低いためにフィルムを走行させる成膜ロール上でフィルムが滑ってしまう。そのため、皺の発生は解消できるが、滑りによりフィルムに傷が付いたり、摩擦係数を下げるためや引張弾性率を上げるために分散させた粒子により、得られる積層フィルムの光線透過率が低下したり、ヘイズが上昇してしまったりする。そしてこの積層フィルムを実装すると表示欠陥の原因となる。他にも、工程が増えるため、コストや歩留まりに問題がある。
特開平11−48434号公報 特開2002−322558号公報 特開2000−108241号公報 特開2002−265636号公報
従って、本発明の目的は、傷や皺などの外観異常がなく、基材フィルムの高い透明性を維持することのできる効率のよい積層フィルムの製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、熱可塑性樹脂を含有してなる基材フィルムとして、膜厚変動の小さいものを用いることにより、摩擦係数が高く、弾性率が低い熱可塑性樹脂フィルムでも、上記目的を達成しうることを見出し、この知見に基づいてさらに研究を進め、本発明を完成するに至った。
かくして、本発明によれば、
(1)下記[1]〜[3]の特性を有する長尺の熱可塑性樹脂を含有してなる基材フィルム上に、無機酸化物からなる層を少なくとも1層、物理気相析出法により形成する工程を含む積層フィルムの製造方法、
[1]フィルムの静摩擦係数が0.7以上である;
[2]フィルムの引張弾性率が4000MPa以下である;
[3]フィルム全幅における膜厚変動が基準膜厚の3%以内でかつ標準偏差が基準膜厚の0.7%以内である、
(2)基材フィルムが脂環式構造を有する重合体樹脂フィルムである請求項1記載の積層フィルムの製造方法、
(3)物理気相析出法がスパッタリング法である請求項1又は2記載の積層フィルムの製造方法、
(4)積層フィルムが、反射防止機能付偏光板保護フィルムである請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法、
及び
(5)積層フィルムが、導電性フィルムである請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法、
がそれぞれ提供される。
本発明の製造方法によれば、摩擦係数が高く、弾性率が低い熱可塑性樹脂を含有してなる基材フィルムでも、表面性の良いものであれば、冷却ロールとの接触面積が増え、冷却効率がアップする。さらに、テンションを上げることで、押さえつけの効果が発生し、さらに接触面積が増加する。これにより、成膜時及び成膜ロール走行中における皺や傷を発生させることなく積層フィルムを効率よく得ることができる。
本発明の積層フィルムの製造方法は、長尺の熱可塑性樹脂を含有してなる基材フィルム上に、無機酸化物からなる層を少なくとも1層、物理気相析出法により形成する工程を含む。
本発明において、長尺とは、フィルムまたは積層体の幅方向に対し少なくとも5倍程度以上の長さを有するものを言い、好ましくは10倍もしくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻回されて保管または運搬される程度の長さを有するものを言う。
本発明に使用する基材フィルムは、静摩擦係数が0.7以上、好ましくは0.8以上である。
静摩擦係数が0.7未満であると、ロール上で基材フィルムがスリップしてしまい、傷が入って積層フィルムのヘイズが上がったり、透過率が下がったりして、これにより実装した時の表示欠陥の原因となる。
静摩擦係数は、ASTM D1894に準拠して測定する。
本発明に使用する基材フィルムは、引張弾性率が4000MPa以下、好ましくは500MPa以上3500MPa以下である。
基材フィルムの引張弾性率を上記範囲にすることにより、樹脂にガラス繊維等を添加して強化する必要がないので、工程が減り、生産性と歩留まりが向上する。
引張弾性率は、JIS K7127に準拠して測定する。
本発明に使用する基材フィルムは、フィルム全幅における膜厚変動が基準膜厚の3%以内でかつ標準偏差が基準膜厚の0.7%以下、好ましくは膜厚変動が基準膜厚の2.4%以下でかつ標準偏差が基準膜厚の0.5%以下である。
膜厚変動が上記範囲をはずれると、走行時や成膜時に皺が入ったり、走行中のロールとの滑りやブロッキング現象により傷が付いたりする。
本発明に使用する基材フィルムの基準膜厚は、通常30〜300μm、好ましくは40〜200μmである。
本発明においては、使用する基材フィルムは、厚さ3mmでの全光線透過率が89%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。基材フィルムの全光線透過率を前記範囲にすることにより、実装した際により高輝度及び高鮮明な表示装置を提供することができる。
本発明において、使用する基材フィルムは、この長手方向に形成されるダイラインの内、ダイラインの深さ及び高さが5nm以上50nm以下のものの幅方向における山から山までの距離及び谷から谷までの距離が7mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましく、3mm以下であることが特に好ましい。前記距離を上記範囲にすることにより、成膜時の加熱による熱膨張を、冷却ロールとの接触面積を増加させることができるので、効率良く冷却することができ、熱皺の発生を押さえることが可能となる。
上記ダイラインの深さ及び高さ、並びに幅方向における山から山までの距離及び谷から谷までの距離は、三次元表面構造解析顕微鏡を用い、フィルム表面の凹凸のある面を下から上に一定速度で走査させて干渉縞を発生させて測定することができる。
ダイラインの深さや高さを測定するに際しては、隣り合う谷と山で、ベースが異なっている場合は、図1のようにベースライン12を引いて、谷14又は山13からそのベースライン12までの最短距離をダイラインの深さ15又は高さ16とする。また山から山までの距離は図1の17に示された距離とする。これは谷から谷までの距離も同様である。
基材フィルムに使用する熱可塑性樹脂としては、基材フィルムにしたときに上記特性を満足するものであればよく、例えば、脂環式構造を有する重合体樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂などが挙げられる。中でも、透明性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、脂環式構造を有する重合体樹脂がより好ましい。
脂環式構造を有する重合体樹脂は、主鎖及び/又は側鎖に脂環式構造を有するものであり、機械強度、耐熱性などの観点から、主鎖に脂環式構造を含有するものが好ましい。
脂環式構造としては、飽和脂環炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環炭化水素(シクロアルケン)構造などが挙げられるが、機械強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が最も好ましい。脂環式構造を構成する炭素原子数には、格別な制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲であるときに、機械強度、耐熱性、及びフィルムの成形性の特性が高度にバランスされ、好適である。本発明に使用される脂環式構造を有する重合体樹脂中の脂環式構造を含有してなる繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上、もっとも好ましくは90重量%以上である。脂環式構造を有する重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合がこの範囲にあると基材フィルムの透明性および耐熱性の観点から好ましい。
脂環式構造を有する重合体樹脂は、具体的には、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィン系重合体、(3)環状共役ジエン系重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素化物などが挙げられる。これらの中でも、透明性や成形性の観点から、ノルボルネン系重合体がより好ましい。
ノルボルネン系重合体としては、具体的にはノルボルネン系モノマーの開環重合体、ノルボルネン系モノマーと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体、及びそれらの水素化物、ノルボルネン系モノマーの付加重合体、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーとの付加共重合体などが挙げられる。これらの中でも、透明性の観点から、ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体水素化物が最も好ましい。
上記の脂環式構造を有する重合体樹脂は、例えば特開2002−321302号公報などに開示されている公知の重合体から選ばれる。
本発明に使用する熱可塑性樹脂として好適に用いられるノルボルネン系重合体の中でも、繰り返し単位として、X:ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4−ジイル−エチレン構造と、Y:トリシクロ[4.3.0.12,5]デカン−7,9−ジイル−エチレン構造とを有し、これらの繰り返し単位の含有量が、ノルボルネン系重合体の繰り返し単位全体に対して90重量%以上であり、かつ、Xの含有割合とYの含有割合との比が、X:Yの重量比で100:0〜40:60であるものが好ましい。このような樹脂を用いることにより、長期的に寸法変化がなく、光学特性の安定性に優れる基材フィルムを得ることができる。
ポリマーとしてXの構造を繰り返し単位として有するモノマーとしては、ノルボルネン環に五員環が結合した構造を有するノルボルネン系単量体が挙げられ、より具体的には、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)及びその誘導体(環に置換基を有するもの)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.10,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、及びその誘導体が挙げられる。
また、ポリマーとしてYの構造を繰り返し単位として有するモノマーとしては、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]デカ−3,7−ジエン(慣用名:テトラシクロドデセン)及びその誘導体(環に置換基を有するもの)が挙げられる。
このようなノルボルネン系重合体を得る手段としては、具体的にはa)ポリマーとして前記Xの構造を繰り返し単位として有することができるモノマーと、ポリマーとして前記Yの構造を繰り返し単位として有することができるモノマーとの共重合比でコントロールして重合し、必要に応じてポリマー中の不飽和結合を水素化する方法や、b)前記Xの構造を繰り返し単位として有するポリマーと、前記Yの構造を繰り返し単位として有するポリマーとのブレンド比でコントロールする方法が挙げられる。
本発明において、使用する熱可塑性樹脂の分子量は、溶媒としてシクロヘキサン(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエンやテトラヒドロフラン)を用いたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略す。)で測定したポリイソプレン又はポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常5,000〜100,000、好ましくは8,000〜80,000、より好ましくは10,000〜50,000である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、フィルムの機械的強度及び成形加工性が高度にバランスされ好適である。
熱可塑性樹脂の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は特に制限されないが、通常1.0〜10.0、好ましくは1.0〜4.0、より好ましくは1.2〜3.5の範囲である。
本発明に好適に用いられる脂環式構造を有する重合体樹脂は、その分子量2,000以下の樹脂成分(すなわち、オリゴマー成分)の含有量が5重量%以下、好ましくは3重量%以下、より好ましくは2重量%以下である。オリゴマー成分の量が多いと無機化合物からなる層を成膜する際に、表面に微細な凹凸が発生したり、厚さムラを生じたりして面精度が悪くなる。
オリゴマー成分の量を低減するためには、重合触媒や水素化触媒の選択;重合反応や水素化反応などの反応条件;樹脂を成形用材料としてペレット化する工程における温度条件;などを最適化すればよい。オリゴマーの成分量は、シクロヘキサン(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン)を用いたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによって測定することができる。
本発明において、基材フィルムとして、揮発性成分の含有量が0.1重量%以下のものを使用することが好ましく、0.05重量%以下のものを使用することがより好ましい。揮発性成分の含有量が前記範囲にあることにより、フィルムの寸法安定性が向上し、無機化合物からなる層やその他の層を積層する際の積層むらを小さくできる。加えて、フィルム全面にわたって不純物や格子欠陥などの少ない均質な無機酸化物からなる層を形成させることができる。
揮発性成分は、基材フィルムに微量含まれる分子量200以下の物質であり、例えば、残留単量体や溶剤などが挙げられる。揮発性成分の含有量は、脂環式構造含有重合体樹脂に含まれる分子量200以下の物質の合計として、脂環式構造含有重合体樹脂をガスクロマトグラフィーにより分析することにより定量することができる。
本発明において、基材フィルムとして、飽和吸水率が0.01重量%以下のものを使用することが好ましく、0.007重量%以下のものを使用することがより好ましい。飽和吸水率が0.01重量%を超えると、無機化合物からなる層やその他の層と基材フィルムとの密着性が低くなり、長期間の使用において前記層の剥離が生じやすくなり好ましくない。さらに水分により、真空排気に時間を要したり、無機化合物からなる層やその他の層が変質したりして、生産性や歩留まりが低下してしまう。
基材フィルムの飽和吸水率は、JIS K7209に準じて測定する。
本発明において使用する基材フィルムには、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、塩素捕捉剤、難燃剤、結晶化核剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、離型剤、顔料、有機又は無機の充填材、中和剤、滑剤、分解剤、金属不活性化剤、汚染防止材、抗菌剤やその他の樹脂、熱可塑性エラストマーなどの公知の添加剤を発明の効果が損なわれない範囲で添加することができる。これらの添加剤は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、通常0〜5重量部、0〜3重量部の範囲で添加することが好ましい。
本発明に使用する基材フィルムを得る方法としては、溶液流延法又は溶融押出成形法が挙げられる。中でも、基材フィルム中の揮発性成分の含有量や厚さムラを少なくできる点から、溶融押出成形法が好ましい。さらに溶融押出成形法としては、ダイスを用いる方法やインフレーション法などが挙げられるが、生産性や厚さ精度に優れる点でTダイを用いる方法が好ましい。
基材フィルムを得る方法として、Tダイを用いる方法を採用する場合、Tダイを有する押出機における脂環式構造を有する重合体の溶融温度は、脂環式構造を有する重合体のガラス転移温度よりも80〜180℃高い温度にすることが好ましく、ガラス転移温度よりも100〜150℃高い温度にすることがより好ましい。押出機での溶融温度が過度に低いと脂環式構造を有する重合体の流動性が不足するおそれがあり、逆に溶融温度が過度に高いと樹脂が劣化する可能性がある。
本発明に用いる基材フィルムのフィルム全幅における膜厚変動を基準膜厚の3%以内で、かつ標準偏差が基準膜厚の0.7%以下にするための手段としては、1)熱可塑性樹脂を、押出機によって溶融させて当該押出機に取り付けられたダイスからシート状に押出し、押出されたシート状の熱可塑性樹脂を、少なくとも1つの冷却ドラムに密着させて成形して引き取る工程を50kPa以下の圧力下で行う;2)熱可塑性樹脂を、押出機によって溶融させて当該押出機に取り付けられたダイスからシート状に押出し、押出されたシート状の熱可塑性樹脂を、前記ダイスの開口部から押出されたシート状の熱可塑性樹脂が最初に密着する冷却ドラムまでを囲い部材で覆い、かつ前記囲い部材から前記ダイスの開口部又は最初に密着する冷却ドラムまでの距離Lを100mm以下とする;3)熱可塑性樹脂を、押出機によって溶融させて当該押出機に取り付けられたダイスからシート状に押出し、押出されたシート状の熱可塑性樹脂を、前記ダイスの開口部から押出されたシート状の熱可塑性樹脂より10mm以内の雰囲気の温度をT(℃)、熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTg(℃)としたとき、前記Tが、4/5×(Tg+10)≦T≦5/4×(Tg+270)となるように加温する;4)熱可塑性樹脂を、押出機によって溶融させて当該押出機に取り付けられたダイスからシート状に押出し、押出されたシート状の熱可塑性樹脂に、最初に密着する冷却ドラムの引き取り速度との速度差が0.2m/s以下の風を吹き付ける;が挙げられる。
また、本発明に使用する基材フィルムの揮発性成分の含有量を少なくするための手段としては、(1)揮発性成分量の少ない熱可塑性樹脂を用いること;(2)溶融押出成形法により基材フィルムを成形する;(3)フィルムを成形する前に用いる熱可塑性樹脂を予備乾燥する;などが挙げられる。予備乾燥は、例えば原料をペレットなどの形態にして、熱風乾燥機などで行われる。乾燥温度は100℃以上が好ましく、乾燥時間は2時間以上が好ましい。予備乾燥を行うことにより、フィルム中の揮発成分量を低減させる事ができ、さらに押し出す熱可塑性樹脂の発泡を防ぐことができる。
本発明において、使用する基材フィルムの長手方向に形成されるダイラインの内、ダイラインの深さ及び高さが5nm以上50nm以下のものの幅方向における山から山までの距離及び谷から谷までの距離が7mm以下となるようにするための手段としては、(1)ダイスリップ部の材質としてハードクロム、炭化クロム、窒化クロム、炭化チタン、炭窒化チタン、窒化チタン、超鋼、セラミック(タングステンカーバイド、酸化アルミ、酸化クロム)類、などを溶射もしくはメッキし、表面加工としてバフ、#1000番手以上の砥石を用いるラッピング、#1000番手以上のダイヤモンド砥石を用いる平面切削(切削方向は、樹脂の流れ方向に垂直な方向)、電解研磨、電解複合研磨などの加工を施したTダイを用いる;(2)ダイスリップの防錆剤として、例えばアミンの硝酸塩、カルボン酸塩、炭酸塩などの揮発性のものを使用する。具体的には、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、ジシクロヘキシルアンモニウムカプリレート、シクロヘキシルアンモニウムカルバメート、シクロヘキシルアミンカーボネイト等が挙げられる;(4)ダイスリップに付着している防錆剤を溶剤を用いてふき取る;(5)ダイスからシート状に押出し、押出されたシート状の非晶性の熱可塑性樹脂を少なくとも1つの冷却ドラムに密着させて成形して引き取る工程までを、50kPa以下の気圧下で行うこと;が挙げられる。
本発明に使用する基材フィルムとして、片面又は両面に、表面改質処理を施したものを使用してもよい。表面改質処理を行うことにより、他の層との密着性を向上させることができる。表面改質処理としては、エネルギー線照射処理や薬品処理などが挙げられる。
エネルギー線照射処理としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、電子線照射処理、紫外線照射処理などが挙げられ、処理効率の点等から、コロナ放電処理とプラズマ処理、特にコロナ放電処理が好ましい。
薬品処理としては、重クロム酸カリウム溶液、濃硫酸などの酸化剤水溶液中に、浸漬し、その後充分に水で洗浄すればよい。浸漬した状態で振盪すると効率的であるが、長期間処理すると表面が溶解したり、透明性が低下したりするといった問題があり、用いる薬品の反応性、濃度などに応じて、処理時間などを調整する必要がある。
本発明においては、基材フィルム上に、無機酸化物からなる層を少なくとも1層、物理気相析出法により成膜する前に、他の層を積層してもよい。
他の層としては、プライマー層;アンカー層;ハードコート層;SiOx(x=1.5〜2.0)超微粒子の3次元骨格からなる高均質透明多孔体層(屈折率1.25〜1.46);粘着剤層;防汚層;などが挙げられる。
プライマー層は、基材フィルムと無機酸化物からなる層との接着性の付与及び向上を目的として形成される。プライマー層を構成する材料としては、ポリエステルウレタン系樹脂、ポリエーテルウレタン系樹脂、ポリイソシアネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、主鎖に炭化水素骨格及び/又はポリブタジエン骨格を有する樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ゴム、環化ゴム又はこれらの重合体に極性基を導入した変性物が挙げられる。
中でも、主鎖に炭化水素骨格及び/又はポリブタジエン骨格を有する樹脂の変性物及び環化ゴムの変性物が好ましい。
主鎖に炭化水素骨格及び/又はポリブタジエン骨格を有する樹脂としては、ポリブタジエン骨格もしくはその少なくとも一部を水素添加した骨格を有する樹脂、具体的には、ポリブタジエン樹脂、水添ポリブタジエン樹脂、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS共重合体)及びその水素添加物(SEBS共重合体)などが挙げられる。中でも、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の水素添加物の変性物が好ましい。
導入する極性基としては、カルボン酸又はその誘導体が好ましく、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸等の不飽和カルボン酸;塩化マレイル、マレイミド、無水マレイン酸、無水シトラコン酸等の不飽和カルボン酸のハロゲン化物、アミド、イミド、無水物、エステル等の誘導体;等による変性物が挙げられ、密着性に優れることから、不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸無水物による変性物が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸がより好ましく、マレイン酸、無水マレイン酸が特に好ましい。これらの不飽和カルボン酸等を、2種以上を混合して用い、変性してもよい。
プライマー層の形成方法は特に制限されず、例えば、プライマー層形成用塗工液を公知の塗工方法により基材フィルム上に塗工して形成する方法が挙げられる。
プライマー層の厚みは特に制限されないが、通常0.01〜5μm、好ましく
は0.1〜3μmである。
ハードコート層は、基材フィルムの表面硬度、耐繰り返し疲労性及び耐殺傷性を補強する目的で形成される。ハードコート層の形成材料としては、有機シリコーン系、メラミン系、エポキシ系、アクリル系等の有機系ハードコート材料;ニ酸化ケイ素等の無機系ハードコート材料;が挙げられる。なかでも、接着力が良好であり、生産性に優れる観点から、多官能アクリレート系ハードコート材料の使用が好ましい。ハードコート層の形成方法は特に制限されず、例えば、ハードコート層形成用塗工液を公知の塗工方法により基材フィルム上に塗工して、紫外線を照射し硬化させて形成する方法が挙げられる。ハードコート層の厚みは特に限定されないが、通常0.5〜30μm、好ましくは2〜15μmである。
アンカー層としては、ハードコート層と基材フィルムとの密着性を向上させる機能を有する層や、K値(K値=[{(nx+ny)/2}−nz]×d;ここでnxは長手方向の屈折率、nyは幅方向の屈折率、nzは厚み方向の屈折率、dは厚み(nm)を表す。)が負の値となる三次元屈折率特性を有する層等の各種の位相差補償層、水分や空気の透過を防止する機能もしくは水分や空気を吸収する機能を有する層、紫外線や赤外線を吸収する機能を有する層、基材フィルムの帯電性を低下させる機能を有する層などが挙げられる。
アンカー層の厚みは特に限定されず、通常0.1〜30μm、好ましくは0.5〜15μmである。
防眩層としては、通常は、透明基材の表面に凹凸の形成させたものが用いられている。凹凸を形成させる方法は、エンボス加工などの公知の方法が用いられる。
防眩層には、平均粒径が0.2〜10μmの粒子を含有させてよい。ここでいう平均粒径は、粒子が凝集してない場合は一次粒子、粒子が凝集している場合は二次粒子の重量平均径である。粒子を含有させることで、防眩フィルムの表面に光を散乱させる凹と凸を形成し、防眩性を発現させることができる。粒子としては、無機粒子や有機粒子が挙げられる。
無機粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化錫、ITO、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリンおよび硫酸カルシウムなどの粒子が挙げられる。中でも、二酸化珪素、酸化アルミニウムが好ましい。
有機粒子としては樹脂粒子が好ましい。樹脂粒子の具体例としては、シリコン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ弗化ビニリデン樹脂から作製される粒子などが挙げられる。中でも、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂から作製される粒子が好ましく、ベンゾグアナミン樹脂、ポリスチレン樹脂から作製される粒子が特に好ましい。
粘着剤層を構成する材料としては、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテルや合成ゴムなどの適当なポリマーをベースポリマーとするものが挙げられる。
防汚層を構成する材料としては、通常、疎水基を有する化合物を好ましく使用できる。具体的な例としてはパーフルオロアルキルシラン化合物、パーフルオロポリエーテルシラン化合物、フッ素含有シリコーン化合物を使用することができる。防汚層の形成方法は、形成する材料に応じて、例えば、蒸着、スパッタリング等の物理気相析出法、化学気相析出法、湿式コーティング法等を用いることができる。防汚層の厚みは特に制限はないが、通常20nm以下が好ましく、1〜10nmであるのがより好ましい。
本発明では、基材フィルム上に、無機酸化物からなる層を少なくとも1層、物理気相析出法により形成する。
本発明に使用する無機酸化物としては、SiO、SiO、Al、ZrO、TiO、TiO、Ti、Ta、TaHf、HfO、ZnO、MgO、SnO、In、In/SnO(ITOともいう)、CeO、In/CeO(ICOともいう)、Y、Yb、Sb、Sb/SnO(ATOともいう)、AiO3/ZnOおよびこれらの混合物が挙げられる。
物理気相析出法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などが挙げられる。
真空蒸着法は、10−2〜10−5Pa程度の真空中で抵抗加熱、電子ビーム加熱、レーザ光加熱、アーク放電などの方法で蒸着物質を加熱蒸発させ、熱可塑性樹脂を含有してなる基材フィルム表面に付着させて薄膜層を形成する方法である。また、スパッタリング法は、アルゴンなどの不活性ガスが存在する1〜10−1Pa程度の真空中で、グロー放電などにより加速されたArなどの陽イオンをターゲット(蒸着物質)に撃突させて蒸着物質をスパッタ蒸発させ、熱可塑性樹脂を含有してなる基材フィルム表面に薄膜層を形成させる方法である。蒸発の方法としては、DC(直流)スパッタリング、RF(高周波)スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、バイアススパッタリングなどがある。イオンプレーティング法は、上記の真空蒸着法とスパッタリング法とを組み合わせたような蒸着法である。この方法では、1〜10−1Pa程度の真空中において、加熱により放出された蒸発原子を、電界中でイオン化と加速を行い、高エネルギー状態で熱可塑性樹脂を含有してなる基材フィルム表面に付着させ、薄膜層を形成させる。
これらの中でも、幅の広い基材フィルム上に無機化合物からなる層を形成する場合、幅方向の膜厚均一性、密着性、生産性、及び歩留まりを向上することができるという点でスパッタリング法が好ましい。
本発明においては、基材フィルム上に、無機酸化物からなる層を少なくとも1層形成するものであるが、必要に応じて2層以上形成させてもよい。
無機酸化物からなる層を2層以上形成する場合は、相対的に低屈折率の薄膜と相対的に高屈折率の薄膜とが交互に積層されてなる、異種の無機酸化物からなる2層以上の複合多層膜であるのが、より高度な反射防止機能をもたせることができる点で好ましい。このような複合多層膜において、各層の厚さや屈折率等については、例えば、A.VASICEK著、「OPUTICS OF THIN FILMS」等に記載された公知技術に準じて設定することができる。
基材フィルム上に、無機酸化物からなる層を形成する装置としては、特に制限されず、公知の真空成膜装置を用いることができる。長尺の基材フィルムを用いる場合は、フィルム巻き取り式の真空成膜装置を用いることが好ましく、無機酸化物からなる層を複数層形成させる場合は、複数の成膜カソードを備えたフィルム巻き取り式の真空成膜装置を用いることが好ましい。
無機酸化物からなる層の厚みは、通常は0.001〜10μm、好ましくは0.005〜1μm、さらに好ましくは0.01〜0.5μmである。無機酸化物からなる層の厚みが0.001μm未満であると、積層フィルムの反射防止効果が発揮できなかったり、導電性が不十分となったりし好ましくない。逆に、無機酸化物からなる層の厚みが10μmを超えると塗膜の厚みにムラが生じやすくなり外観等が悪化し好ましくない。
例えば、2つの成膜カソードを備えたフィルム巻き取り式真空成膜装置を用いて、スパッタリング法によって基材フィルム上に高屈折率層と低屈折率層とを形成させる方法について、図面を用いて詳説する。図2は、スパッタリング法で2つの成膜カソードを備えたフィルム巻き取り式真空成膜装置の一例を示した模式図である。なお図2は、物理気相析出法としてスパッタリングを用いる場合の一例である。
図2に示すフィルム巻き取り式真空成膜装置は、真空室1内に、巻きだしロール2、ガイドロール3−1、3−2、3−3、3−4、成膜ロール4、ターゲット5−1を備えた成膜カソード6−1、ターゲット5−2を備えた成膜カソード6−2、巻き取りロール7、真空ポンプ8を備えている。そして、ロール状に巻かれた長尺の基材フィルム9は、巻きだしロール2に装填されている。
なお、ターゲット及び成膜カソードは図ではそれぞれ2つ備えているが、2つ以上備えていれば、特に制限されない。
まず、装填された長尺の基材フィルム9は、巻きだしロール2から巻き出された後、複数のガイドロール3−1、3−2に導かれて、成膜ロール4に外接し、さらに別のガイドロール3−3、3−4を経て、巻き取りロール7に至るようになっている。成膜ロール4の周りにターゲット5−1を備えた成膜カソード6−1と、ターゲット5−2を備えた成膜カソード6−2が設置されており、スパッタリングで成膜ロール4に巻回された基材フィルム9の表面に高屈折率層及び低屈折率層が連続的に成膜される。次いで、高屈折率層及び低屈折率層が積層された長尺の基材フィルム9は、反対側のガイドロール3−3、3−4に導かれ、巻き取りロール7により巻き取られる。
ここで、成膜ロール4の温度Ts(℃)は、基材フィルムに使用する熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTg(℃)とすると、(Tg−130)(℃)<Ts(℃)<Tg(℃)の範囲にすることが好ましい。成膜ロールの温度Tsを前記範囲とすることにより、高屈折率層及び低屈折率層を基材フィルム全面に均一に積層することができ、反射率の均一な反射防止層を形成させることができる。
このスパッタリングによる成膜の際、真空室1は、真空ポンプ8により常に排気され、図示しないが成膜に必要となる作用ガスや反応ガスがボンベにより導入される。作用ガスとしては、不活性なガスが挙げられ、具体的にはアルゴンなどの希ガスが用いられる。反応性ガスとしては、通常酸素が挙げられる。真空室内の圧力は、通常10−1〜10−5Paの範囲である。
本発明において、低屈折率層及び高屈折率層をそれぞれ2層以上形成させる場合には、図2のようなフィルム巻き取り式真空成膜装置を用いて巻き取り方向などを順次変えて(例えば、巻き取りロール7を巻きだしロールにし、巻きだしロール2を巻き取りロールにする)連続的に高屈折率層及び低屈折率層を形成させてもよいし、図2のようなフィルム巻き取り式真空成膜装置を2連に連接して連続的に低屈折率層及び高屈折率層を形成させるようにしてもよい。
本発明の製造方法によれば、基材フィルム上に成膜時の熱皺や傷の発生や、成膜ロール走行中での皺や傷の発生を起こすことなく、無機酸化物を形成することができるので、種々の積層フィルムに用いることができる。積層フィルムとしては、基材フィルムの上に無機酸化物からなる層を形成するものであれば特に制限されないが、中でも反射防止機能付偏光板保護フィルム;タッチパネル、LCD、太陽電池、ELなどに用いられる透明電極などに用いられる導電性フィルム;に好適である。
本発明の製造方法により得られる積層フィルムを反射防止機能付偏光板保護フィルムに用いる場合は、無機化合物からなる層としては、相対的に低屈折率の薄膜と相対的に高屈折率の薄膜とが交互に積層されてなるものが好ましく、異種の無機酸化物からなる2層以上の複合多層膜であるのがより好ましい。
反射機能付偏光板保護フィルムの構成は、基材フィルム、ハードコート層、無機化合物からなる層を必須成分として有する。その他に有してもいい層としては、プライマー層、防汚層、SiOx(x=1.5〜2.0)超微粒子の3次元骨格からなる高均質透明多孔体層(屈折率1.25〜1.46)などが挙げられる。また、これらの層を積層する順序、積層方法については特に制限されない。
反射防止機能付偏光板保護フィルムの厚さは、通常30〜200μm、好ましくは40〜100μmである。
本発明の製造方法により得られる積層フィルムを導電性フィルムに用いる場合は、基材フィルム、無機化合物からなる層を必須成分として有する。無機化合物からなる層として、ITO(In/SnO)、In/CeO(ICOともいう)、及びSb/SnO(ATOともいう)などが通常用いられる。その他に有してもいい層としては、プライマー層、アンカー層、防眩層、ハードコート層、防汚層、ガスバリア層、SiOx(x=1.5〜2.0)超微粒子の3次元骨格からなる高均質透明多孔体層(屈折率1.25〜1.46)などが挙げられる。また、これらの層を積層する順序、積層方法については特に制限されない。
導電性フィルムの厚さは、通常30〜300μm、好ましくは60〜200μmである。
本発明を、参考例、実施例及び比較例を示しながら、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
なお部及び%は特に断りのない限り重量基準である。
本実施例における評価は、以下の方法によって行った。
(1)静摩擦係数
ASTM D1894に準拠して、インテスコ社製、「精密万能材料試験機2005型」を用いて、試験速度を150mm/分、試験荷重を200g(ゴム付き荷重)、スリップ面をフィルム対金属(クロムメッキ鉄板)、試験方向をMD(長手)方向、試験温度を23℃の条件で行う。なお、同様の測定を5回行い、その算術平均値を静摩擦係数の代表値とする。
(2)引張弾性率
JIS K7127に準拠して、東洋ボールドウィーン社製、「テンシロン UTM−10T−PL」を用いて、試験片の形状はW=10mm、L=40mmとし、引張速度を500mm/分、荷重はロードセル50kgfで測定を行う。なお、同様の測定を5回行い、その算術平均値を引張弾性率の代表値とする。
(3)全光線透過率及びヘイズ
ASTM D1003に準拠して、日本電色工業社製、「濁度計NDH−300A」を用いて測定する。なお、同様の測定を5回行い、その算術平均値を全光線透過率及びヘイズの代表値とする。
(4)基材フィルムの基準膜厚、膜厚変動及び標準偏差
MD(長手)方向に任意の場所からフィルムをTD(幅)方向に1350mm切り出し、その切り出したフィルムについて、明産社製、「接触式ウェブ厚さ計 RC−101」を用いて、フィルムのTD方向に0.48mm毎に測定し、その測定値の算術平均値を基準膜厚T(μm)とする。膜厚変動は、前記測定した膜厚の内、最大値をTMAX(μm)最小値をTMIN(μm)として以下の式から算出する。
膜厚変動(%)=(TMAX−TMIN)/T×100
膜厚の標準偏差(μm)は、0.48mm毎に測定した全膜厚測定値より算出する。
(5)基材フィルムの長手方向に形成されるダイラインの深さ及び高さが5nm以上50nm以下のものの幅方向における山から山までの距離及び谷から谷までの距離
フィルムに光を照射して、透過光をスクリーンに映したときにスクリーン上に光の明若しくは暗の縞部分が見られる箇所(ダイライン)について、全幅に渡って観察する。このダイライン部分のフィルムを3cm角程度の大きさに切り取り、三次元表面構造解析顕微鏡(Zygo社製)を用いて、フィルム両面の表面を観察する。フィルム上の凹凸を干渉縞を発生させて測定する。
(6)傷の数
積層フィルムのTD(幅)方向に任意の場所から100mm×100mmのサイズをMD(長手)方向で10m毎に10点サンプリングして、光学顕微鏡により観察する。
[製造例1]基材フィルム1の製造
ノルボルネン系重合体(ZEONOR 1420、日本ゼオン社製;ガラス転移温度Tg136℃)のペレットを、空気を流通させた熱風乾燥機を用いて100℃で、4時間乾燥した。そしてこのペレットを、リーフディスク形状のポリマーフィルター(濾過精度30μm)を設置した50mmの単軸押出機と内面に表面粗さRa=0.15μmのクロムメッキを施した650mm幅のT型ダイスを用いて260℃で押出し、押出されたシート状のノルボルネン系重合体を第1冷却ドラム(直径250mm、温度:135℃、周速度R:25.7m/分)に密着させ、次いで第2冷却ドラム(直径250mm、温度125℃、周速度R:25.7m/分)、次いで第3冷却ドラム(直径250mm、温度100℃、周速度R:25.5m/分)に順次密着させて移送し、幅600mm、長さ300mの基材フィルム1を得た。得られた長尺の基材フィルムはロール状に巻き取った。なお、T型ダイスの開口部から押出されたシート状のノルボルネン系重合体が最初に密着する第1冷却ドラムまでをアルミ製の囲い部材で覆い、かつ前記囲い部材からシート状の溶融樹脂が最初に密着する冷却ドラムまでの距離を80mmとした。
得られた長尺の基材フィルム1の特性を表1に示す。
[製造例2]基材フィルム2の製造
第1冷却ドラムの周速度R1を10.05m/分、第2冷却ドラムの周速度R2を10.05m/s、及び第3冷却ドラムの周速度R3を9.98m/分とした他は、製造例1と同様にして長尺の基材フィルム2を得た。
得られた長尺の基材フィルム2の特性を表1に示す。
[製造例3]プライマー溶液の調製
無水マレイン酸変性スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の水素添加物(旭化成工業社製、「タフテックM1913」;メルトインデックス値は200℃、49N荷重で4.0g/10分、スチレンブロック含量30重量%、水素添加率80%以上、無水マレイン酸付加量2%)2部を、キシレン8部とメチルイソブチルケトン40部の混合溶媒に溶解し、孔径1μmのポリテトラフルオロエチレン製のフィルターでろ過して、完全な溶液のみをプライマー溶液として調製した。
[製造例4]ハードコート剤の調製
6官能ウレタンアクリレート(新中村化学社製、「NKオリゴ U−6HA」)30部、ブチルアクリレート40部、イソボロニルメタクリレート(新中村化学社製、「NKエステル IB」30部、光重合開始剤(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−14−オン)10部をホモジナイザーで混合して紫外線硬化性樹脂組成物からなるハードコート剤を調整した。
[実施例1]ITO単層膜の形成
製造例2で得られたロール状の長尺基材フィルムを図2に示す連続真空スパッタリング装置(直流マグネトロンスパッタリング装置)の巻きだしロール2にフィルムの全幅を厚さ60μmの粘着テープにより固定した状態で装填する。次いで、真空室1の圧力が1×10−5Paになるまで真空排気を開始した。ターゲットとして酸化インジウム錫(以下、「ITO」と称する)を使用し、これをターゲット5−1に装填した。
真空室内の圧力が1×10−5Paに到達した後、成膜ロール4を25℃にし、成膜中の圧力0.3Pa、ロール速度1m/分、ロール走行中のフィルムに係る張力80Nの条件で、スパッタリングにより、膜厚100nmのITO層を形成させて、巻き取りロール7に巻き取って長尺の積層フィルムAを得た。
得られた積層フィルムAの評価結果を表2に示す。
[比較例1〜3]ITO単層膜の形成
基材フィルムとして、表3に示す基材フィルム3〜5を用いた他は、実施例1と同様にスパッタリングを行い、膜厚100nmのITO層を形成した積層フィルムC〜Eをそれぞれ作製した。
得られた積層フィルムC〜Eの評価結果を表2に示す。
[実施例2]SiO単層膜の形成
ターゲットをシリコンにした他は、実施例1と同様にスパッタリングを行い、膜厚100nmの酸化珪素(SiOx、x=2)層を形成した長尺の積層フィルムBを得た。
得られた積層フィルムBの評価結果を表2に示す。
[比較例4〜6]SiO単層膜の形成
基材フィルムとして、表3に示す基材フィルム3〜5を用いた他は、実施例2と同様にスパッタリングを行い、膜厚100nmのSiO層を形成した積層フィルムF〜Hをそれぞれ作製した。
得られた積層フィルムF〜Hの評価結果を表2に示す。
[実施例3]反射防止機能付偏光板保護フィルムの製造
製造例1で得られた長尺の基材フィルム1の両面に、高周波発振機(コロナジェネレーターHV05−2、Tamtec社製)を用いて、出力電圧100%、出力250Wで、直径1.2mmのワイヤー電極で、電極長240mm、ワーク電極間1.5mmの条件で3秒間コロナ放電処理を行い、表面張力が0.072N/mになるように表面改質して長尺の基材フィルム1Aを得た。このフィルムは再度ロール状に巻き取った。
製造例3で得られたプライマー溶液を、前記基材フィルム1Aの表面改質処理を行った面のうち片面に、乾燥後のプライマー層の膜厚が0.5μmになるように、ダイコーターを用いて塗布し、80℃の乾燥炉中で5分間乾燥させて、プライマー層を有する基材フィルム1Bを得た。
基材フィルム1Bのプライマー層を有する方の面に、製造例4で得たハードコート剤を硬化後のハードコート層の膜厚が5μmになるように、ダイコーターを用いて連続的に塗布した。次いで、80℃で5分間乾燥させた後、紫外線照射(積算光量300mJ/cm)を行い、ハードコート剤を硬化させ、ハードコート層積層フィルム1Cを得た。このハードコート層積層フィルム1Cは、ロール状に巻き取った。硬化後のハードコート層の膜厚は5μm、表面粗さは0.2μmであった。
前記ハードコート層積層フィルム1Cを図2に示す連続真空スパッタ装置(直流マグネトロンスパッタリング装置)の巻きだしロール2にフィルムの全幅を厚さ60μmの粘着テープにより固定した状態で装填した。次いで、真空室1の圧力が1×10−5Paになるまで真空排気を開始した。ターゲットとして低屈折率層を構成する材料としてシリコンを用い、このターゲットには反応性ガスとして酸素を使用した。また高屈折率層を構成する材料としてITOを使用した。シリコンをターゲット5−1に、ITOをターゲット5−2に装填した。
真空室内の圧力が1×10−5Paに到達した後、成膜ロール4を25℃にし、フィルムのハードコート層を積層した面に、まずITO層を、膜厚15nmで形成させ、巻き取りロール7に巻き取った。この後、巻き取りロール7の回転方向を逆にして、巻き取りロール7から巻きだしながら、酸化珪素(SiOx、x=2)層を、膜厚35nmで形成させ、巻きだしロール2に巻き取った。さらにその後、巻きだしロール2から巻きだしながら、ITO層を膜厚134nmで形成させ、巻き取りロール7に巻き取った。その後ロール7から巻きだしながら、酸化珪素(SiOx、x=2)層を膜厚93nmで形成させて、巻きだしロール2に巻き取って反射防止層を積層した長尺のフィルム1Dを得た。なお、スパッタリング条件は、成膜中の圧力は0.3Pa、ロールの平均速度は0.8m/分、成膜ロール走行中のフィルムに係る張力は80Nとした。
次いで、防汚層としてフッ素系表面防汚コーティング剤(ダイキン工業社製、「オプツールDSX」)をパーフルオロヘキサンで0.1重量%に希釈して、ディップコート法により塗布した。塗布後、60℃で1分間加熱乾燥して厚さ5nmの防汚層を形成させて、巻き取り、長尺の反射防止機能付偏光板保護フィルム1Eを得た。
得られた偏光板保護フィルム1Eの評価結果を表4に示す。
[比較例7〜9]
基材フィルムとして、表3に示す基材フィルム3〜5を用いた他は、実施例4と同様にして、基材フィルム3〜5に対応する反射防止機能付偏光板保護フィルム3E〜5Eをそれぞれ得た。
得られた反射防止機能付偏光板保護フィルム3E〜5Eの評価結果を表4に示す。
[実施例4]導電性フィルムの製造
基材フィルムとして製造例2で得られた長尺の基材フィルム2を用い、ターゲットとしてITOのみを用い、防汚層を形成させない他は、実施例3と同様にして導電性フィルム2F(基材フィルム/プライマー層/ハードコート層/ITO層(30nm))を得た。
得られた導電性フィルム2Fの評価結果を表4に示す。
[比較例10〜12]
基材フィルムとして、表3に示す基材フィルム3〜5を用いた他は、実施例4と同様にして、導電性フィルム3F〜5Fを得た。
得られた導電性フィルム3F〜5Fの評価結果を表4に示す。
Figure 0004214878
Figure 0004214878
Figure 0004214878
Figure 0004214878
表2の結果から以下のことがわかる。
本発明によれば、実施例に示すように、基材フィルム上に、成膜時の熱皺や傷の発生、及びフィルム走行中の皺や傷の発生などの不具合なく無機酸化物からなる層を形成させることができるので、得られる積層フィルムは、ヘイズも低く、傷も少ない。一方、比較例は、成膜時の熱皺や傷の発生、及びフィルム走行中の皺や傷の発生しやすいので、得られる積層フィルムは、ヘイズが大きく、傷の数も多い。
本発明に使用する基材フィルムのダイラインの拡大部である。 フィルム巻き取り式真空成膜装置の一例を示した模式図である。
符号の説明
11:フィルムのダイライン
12:ベースライン
13:谷
14:山
15:深さ
16:高さ
17:ダイラインの山から山までの距離
1:真空室
2:巻きだしロール
3:ガイドロール
4:成膜ロール
5−1、5−2:ターゲット
6−1、6−2:成膜カソード
7:巻き取りロール
8:真空ポンプ
9:基材フィルム

Claims (5)

  1. 下記[1]〜[3]の特性を有する長尺の熱可塑性樹脂を含有してなる基材フィルム上に、無機酸化物からなる層を少なくとも1層、物理気相析出法により形成する工程を含む積層フィルムの製造方法。
    [1]フィルムの静摩擦係数が0.7以上である;
    [2]フィルムの引張弾性率が4000MPa以下である;
    [3]フィルム全幅における膜厚変動が基準膜厚の3%以内でかつ標準偏差が基準膜厚の0.7%以内である。
  2. 基材フィルムが脂環式構造を有する重合体樹脂フィルムである請求項1記載の積層フィルムの製造方法。
  3. 物理気相析出法がスパッタリング法である請求項1又は2記載の積層フィルムの製造方法。
  4. 積層フィルムが、反射防止機能付偏光板保護フィルムである請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 積層フィルムが、導電性フィルムである請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
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