JP4214800B2 - 光学レンズの成形方法及び光学レンズ用金型 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学ガラス素材を用いて光学レンズ(例えば、対物レンズ)を成形する際に、光学レンズの第1面の中心と、第2面の中心とが位置ズレしない光学レンズの成形方法及び光学レンズ用金型に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、光ディスクは、映像情報とか音声情報やコンピュータデータなどの情報信号を円盤状のディスク基板上で螺旋状又は同心円状に形成したトラックに高密度に記録し、且つ、記録済みのトラックを再生する際に所望のトラックを高速にアクセスできることから多用されている。
【0003】
この種の光ディスクとしてCD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)は既に市販されているが、最近になって光ディスクに対してより一層高密度化を図るため、CD,DVDよりも情報信号を超高密度に記録及び/又は再生できる超高密度光ディスクの開発が盛んに行われている。
【0004】
これに伴って、超高密度光ディスクを記録及び/又は再生するための次世代光ピックアップの開発も行われており、この次世代光ピックアップでは波長が400nm近辺のブルー・レーザー光を開口数(NA)が0.75以上の対物レンズで絞ってブルー・レーザービームを得て、このブルー・レーザービームをレーザービーム入射面から信号面までの厚みが0.1mm〜0.15mm程度の超高密度光ディスクに照射して記録及び/又は再生するものであるが、次世代光ピックアップ用の対物レンズとして光学ガラス素材を用いて少なくとも一つの面が非球面に形成された単玉型の対物レンズがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、光学レンズ素材を用いて高精度な光学レンズを研磨不要で安定に成形することができる成形金型がある(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開2003−5032号公報(第9−10頁、第3図)
【0007】
【特許文献2】
特開2001−270724号公報(第4−5頁、第1図,第2図)
図17は従来例における光学レンズの成形金型の構造を示す模式図、
図18は従来例において、成形完了時での光学レンズの成形金型の状態図である。
【0008】
図17及び図18に示した従来例における光学レンズの成形金型100は、上記した特許文献2(特開2001−270724号公報)に開示されているものであり、ここでは特許文献2を参照して簡略に説明する。
【0009】
図17に示した如く、従来例における光学レンズの成形金型100では、下型101と、上型102とを胴型103の摺動用孔103a内に挿入する構造形態を採用している。
【0010】
まず、上記した下型101の成形部には、光学レンズの第1面を非球面又は球面に形成するために凹状に超精密加工された第1光学有効面成形部101aと、光学レンズをレンズホルダに保持するための成形部となる外周規制成形部101bと、余剰な光学レンズ素材104を保持するために設けられた空間(キャビティ)用の外周遊び成形部101cと、光学レンズの厚みを所定値に規制するための環状凸部101dとが同心的に形成されている。また、下型101の非成形部には、胴型103に対して下型101を位置決めするためのフランジ鍔部101eが形成されている。
【0011】
次に、上記した上型102の成形部には、光学レンズの第2面を形成するために凹状に超精密加工された第2光学有効面成形部102aと、下型101の環状凸部101dに当接し、光学レンズの厚みを所定値に規制する環状平面部102bとが同心的に形成されている。また、上型102の非成形部には、胴型103に対して上型102を上下に移動させるためのフランジ鍔部102cが形成されている。
【0012】
そして、上記構成による光学レンズの成形金型100を用いて、光学レンズを成形する際には、下型101の第1光学有効面成形部101a上に球状の光学レンズ素材104を載置する。この際、球状の光学レンズ素材104は、例えばフツ隣酸系ガラス(ガラス転移点:Tg340℃、ガラス屈伏点:At410℃)を用いて、直径がφ3.32mmのボール研磨ガラスに予め形成されている。
【0013】
また、上型102を上方から胴型103の摺動用孔103a内に挿入し、上型102の第2光学有効面成形部102aを光学レンズ素材104に当接させて加熱加圧しながら上型102の環状平面部102bが下型101の環状凸部101dに当接すると、図18に示した状態になる。この図18に示した状態では光学レンズ素材104が溶融変形して光学レンズ105として成形される。そして、冷却後に光学レンズ105の第1面105a及び第2面105bの形状は、下型101の第1光学有効面成形部101a及び上型102の第2光学有効面成形部102aの形状がそれぞれ転写され、且つ、光学レンズ105の厚みも設計時の厚みを確保できると共に、仕上げ研磨を必要としないので、光学レンズ性能のうちコマ収差を低減できる旨が開示されている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記した従来例における光学レンズの成形金型100を用いれば、下型101の第1光学有効面成形部101aと、レンズ厚み規制用の環状凸部101dとを同時に精密加工することが可能となり、金型精度の向上と、光学レンズ性能のうちコマ収差を低減できるものの、下型101及び上型102を胴型103の摺動用孔103a内に挿入して摺動させる時には摺動用クリアランス(図示せず)を必要とする。また、光学レンズの成形金型100は高温な金型温度によっても上記した摺動用クリアランスの寸法が変化する。
【0015】
この際、上記した摺動用クリアランスに伴って下型101及び上型102がガタツクことにより位置ずれしてしまう現象が生じる。
【0016】
この結果、下型101の第1光学有効面成形部101aの中心と、上型102の第2光学有効面成形部102aの中心とが位置ズレを起こし、成形後に光学レンズ105の第1面105aの中心と、第2面105bの中心とが位置ズレすることで、光学レンズ性能を低減させるなどの問題が発生する。
【0017】
とくに、前記したように波長が400nm近辺のブルー・レーザービームを用いて記録及び/又は再生する超高密度光ディスク用の対物レンズは、CD用又はDVD用の対物レンズに比べて寸法精度を一段と高く要求され、また、上記した特許文献1に開示されている対物レンズ(図示せず)では第1面及び第2面が共に非球面に形成されているので、第1面の中心と第2面の中心との位置ズレがあると、コマ収差とか色収差が発生してしまい、超高密度光ディスクの記録及び/又は再生に影響を及ぼしてしまう。
【0018】
そこで、光学ガラス素材を用いて少なくとも一つの面が非球面を有する光学レンズ(例えば、対物レンズ)を成形する際、光学レンズの第1面の中心と第2面の中心とが位置ズレしない光学レンズの成形方法及び光学レンズ用金型が望まれている。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、第1の発明は、光学レンズの第1面を転写するために第1コアの円筒部の端部に形成した第1レンズ転写面と、前記光学レンズの第2面を転写するために前記第1コアの円筒部と同径な第2コアの円筒部の端部に形成した第2レンズ転写面とを同一中心軸上で互いに離間して対向させるステップと、
前記第1コアの第1レンズ転写面上に球状の光学ガラス素材を載置するステップと、
前記第1コアの第1レンズ転写面上に球状の光学ガラス素材を載置した後に、前記第2コアの円筒部を嵌め込み且つ第1,第2コアの径方向に弾性変位可能な予圧付加部材内に前記第1コアの円筒部を挿入し、前記予圧付加部材内で前記第2コアの円筒部の端部に前記第1コアの円筒部の端部を突き合わせた際に、前記予圧付加部材を前記第1,第2コアの径方向に弾性変位させて前記第1,第2コアの各円筒部に予圧を付加することで、前記予圧付加部材内への前記第1,第2コアの各円筒部の摺動用クリアランスを無くすステップと、
前記光学ガラス素材を前記第1,第2レンズ転写面間で軟化させた後に冷却して前記光学レンズを成形するステップとを有する光学レンズの成形方法である。
【0020】
また、第2の発明は、光学レンズの第1面を転写するために第1コアの円筒部の端部に形成した第1レンズ転写面と、前記光学レンズの第2面を転写するために前記第1コアの円筒部と同径な第2コアの円筒部の端部に形成した第2レンズ転写面とを同一中心軸上で互いに離間して対向させ、且つ、前記第1コアの第1レンズ転写面上に球状の光学ガラス素材を載置した後に、前記第2コアの円筒部の端部に前記第1コアの円筒部の端部を突き合わせて、前記光学ガラス素材を前記第1,第2レンズ転写面間で軟化させた後に冷却して前記光学レンズを成形する光学レンズ用金型において、
前記第1コアを取り付けた第1金型と、
前記第2コアを円筒部の有底孔内に取り付けた第2金型と、
前記第2金型の有底孔内で第1,第2コアの径方向に弾性変位可能に取り付けられ、一端側に前記第2コアの円筒部を嵌め込み、且つ、他端側に前記第1コアの円筒部の挿入を許容する予圧付加部材とを備え、
成形時に、球状の前記光学ガラス素材を前記第1レンズ転写面上に載置した前記第1コアの円筒部を前記予圧付加部材の他端側から挿入して、前記予圧付加部材内で前記第2コアの円筒部に前記第1コアの円筒部を突き合わせた際に、前記予圧付加部材を前記第1,第2コアの径方向に弾性変位させて前記第1,第2コアの各円筒部に予圧を付加することで、前記予圧付加部材内への前記第1,第2コアの各円筒部の摺動用クリアランスを無くしたことを特徴とする光学レンズ用金型である。
【0021】
また、第3の発明は、光学レンズの第1面を転写するために第1コアの円筒部の端部に形成した第1レンズ転写面と、前記光学レンズの第2面を転写するために前記第1コアの円筒部と同径な第2コアの円筒部の端部に形成した第2レンズ転写面とを同一中心軸上で互いに離間して対向させ、且つ、前記第1コアの第1レンズ転写面上に球状の光学ガラス素材を載置した後に、前記第2コアの円筒部の端部に前記第1コアの円筒部の端部を突き合わせて、前記光学ガラス素材を前記第1,第2レンズ転写面間で軟化させた後に冷却して前記光学レンズを成形する光学レンズ用金型において、
前記第1コアを取り付けた第1金型と、
前記第2コアを円筒部の有底孔内に取り付けた第2金型と、
複数のボールベアリングを支持した円筒状のリテーナーの内周側及び外周側に各ボールベアリングの一部を回転可能に露出させた状態で前記第2金型の有底孔の内周面に沿って複数の前記ボールベアリングを転動可能に嵌め込み、且つ、成形前の初期状態時に前記リテーナーの一端側のいくつかの前記ボールベアリングが前記第2コアの円筒部に添接するも、前記リテーナーの他端側に位置する残りの前記ボールベアリングに対して前記第1コアの円筒部の挿入を許容するボールベアリング体とを備え、
成形時に、球状の前記光学ガラス素材を前記第1レンズ転写面上に載置した前記第1コアの前記ボールベアリング体内への挿入動作に伴って、リテーナーと一体に複数の前記ボールベアリングが前記第2金型の有底孔の内周面及び第1,第2コアの各円筒部に沿って前記第1,第2コアの各円筒部を突き合わせた側に移動すると共に、複数の前記ボールベアリングを前記第1,第2コアの径方向に弾性変位させて前記第1,第2コアの各円筒部に予圧を付加することで、複数の前記ボールベアリングへの前記第1,第2コアの各円筒部の摺動用クリアランスを無くしたことを特徴とする光学レンズ用金型である。
【0022】
また、第4の発明は、光学レンズの第1面を転写するために第1コアの円筒部の端部に形成した第1レンズ転写面と、前記光学レンズの第2面を転写するために前記第1コアの円筒部と同径な第2コアの円筒部の端部に形成した第2レンズ転写面とを同一中心軸上で互いに離間して対向させ、且つ、前記第1コアの第1レンズ転写面上に球状の光学ガラス素材を載置した後に、前記第2コアの円筒部の端部に前記第1コアの円筒部の端部を突き合わせて、前記光学ガラス素材を前記第1,第2レンズ転写面間で軟化させた後に冷却して前記光学レンズを成形する光学レンズ用金型において、
前記第1コアを取り付けた第1金型と、
前記第2コアの円筒部の長さより長尺な孔を貫通して形成し、且つ、一端側の孔内に前記第2コアの円筒部を嵌め込み、且つ、他端側の孔内に前記第1コアの円筒部の挿入を許容する薄肉リング状スリーブと、
円筒部の有底孔内でこの有底孔の天面と前記薄肉リング状スリーブを嵌め込んだ前記第2コアの一端面との間に圧縮バネを介装して、成形前の初期状態時に前記圧縮バネの付勢力で前記第2コアを嵌め込んだ前記薄肉リング状スリーブの他端側を前記有底孔から突出させた状態で、前記薄肉リング状スリーブと一体に前記第2コアを前記有底孔内に移動可能に取り付けた第2金型と、
複数のボールベアリングを支持した円筒状のリテーナーの内周側及び外周側に各ボールベアリングの一部を回転可能に露出させた状態で前記第2金型の有底孔の内周面に沿って複数の前記ボールベアリングを転動可能に嵌め込み、且つ、複数の前記ボールベアリングを前記薄肉リング状スリーブの外周面に添接させたボールベアリング体とを備え、
成形時に、球状の前記光学ガラス素材を前記第1レンズ転写面上に載置した前記第1コアの円筒部を前記薄肉リング状スリーブの他端側の孔内に挿入して、この孔内で前記第1コアの円筒部を前記第2コアの円筒部に突き当てながら前記圧縮バネに抗して前記薄肉リング状スリーブが前記第2金型の有底孔内の天面側に向かって移動する動作に伴って、前記リテーナーと一体に複数の前記ボールベアリングが前記第2金型の有底孔の内周面及び前記薄肉リング状スリーブの外周面に沿って第1,第2コアの各円筒部を突き合わせた側に移動すると共に、複数の前記ボールベアリングを前記第1,第2コアの径方向に弾性変位させて前記薄肉リング状スリーブを介して前記第1,第2コアの各円筒部に予圧を付加することで、前記薄肉リング状スリーブの孔内への前記第1,第2コアの各円筒部の摺動用クリアランスを無くしたことを特徴とする光学レンズ用金型である。
【0023】
また、第5の発明は、光学レンズの第1面を転写するために第1コアの円筒部の端部に形成した第1レンズ転写面と、前記光学レンズの第2面を転写するために前記第1コアの円筒部と同径な第2コアの円筒部の端部に形成した第2レンズ転写面とを同一中心軸上で互いに離間して対向させ、且つ、前記第1コアの第1レンズ転写面上に球状の光学ガラス素材を載置した後に、前記第2コアの円筒部の端部に前記第1コアの円筒部の端部を突き合わせて、前記光学ガラス素材を前記第1,第2レンズ転写面間で軟化させた後に冷却して前記光学レンズを成形する光学レンズ用金型において、
前記第1コアを取り付けた第1金型と、
前記第2コアの円筒部の長さより長尺な孔を貫通して形成し、且つ、一端側の孔内に前記第2コアの円筒部を嵌め込み、且つ、他端側の孔内に前記第1コアの円筒部の挿入を許容する薄肉リング状スリーブと、
前記薄肉リング状スリーブに嵌め込んだ前記第2コアを円筒部の有底孔内に取り付けた第2金型と、
前記第2金型の有底孔内に設けられ、且つ、前記第2コアを嵌め込んだ前記薄肉リング状スリーブの外周部を中央貫通孔内に嵌め込むと共に、円錐状外周面を第1,第2コアの径方向に弾性変位可能に形成した円錐状コレットと、
前記第2金型の有底孔内で前記円錐状コレットの円錐状外周面に嵌め込まれ、且つ、前記第1金型側に設けた押し上げ手段によって前記円錐状コレットの円錐状外周面に沿って移動するコレット締め上げ部材とを備え、
成形時に、球状の前記光学ガラス素材を前記第1レンズ転写面上に載置した前記第1コアの円筒部を前記薄肉リング状スリーブの他端側の孔内に挿入して、この孔内で第1,第2コアの各円筒部を突き合わせた際に、前記押し上げ手段で前記コレット締め上げ部材を前記円錐状コレットの円錐状外周面に沿って押し上げながら前記円錐状コレットの円錐状外周面を前記第1,第2コアの径方向に締め上げて、前記薄肉リング状スリーブを介して前記第1,第2コアの各円筒部に予圧を付加することで、前記薄肉リング状スリーブの孔内への前記第1,第2コアの各円筒部の摺動用クリアランスを無くしたことを特徴とする光学レンズ用金型である。
【0024】
更に、第6の発明は、上記した第2〜第5のいずれかの発明の光学レンズ用金型において、
前記第1金型上で前記第1コアを軸方向に対して直角な方向に移動可能に取り付けて、前記第1コアの挿入動作に伴って前記第1コアの円筒部を前記第2コアの円筒部に対して芯だし可能にしたことを特徴とする光学レンズ用金型である。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下に本発明に係る光学レンズの成形方法及び光学レンズ用金型の一実施例を図1乃至図16を参照して<第1実施例>〜<第3実施例>の順に詳細に説明する。
【0026】
本発明に係る光学レンズの成形方法及び光学レンズ用金型を説明する前に、これを適用して成形される光学レンズの設計仕様を先に説明する。
【0027】
図1は本発明に係る光学レンズの成形方法及び光学レンズ用金型を適用して成形される光学レンズを説明するための図である。
【0028】
図1に示した如く、本発明に係る光学レンズの成形方法及び光学レンズ用金型を適用して成形される光学レンズ1は、波長が400nm近辺のブルー・レーザービームを用いて超高密度光ディスク2を記録及び/又は再生すための対物レンズとして開発したものである。
【0029】
この光学レンズ(以下、対物レンズと記す)1は、光学ガラス素材(例えば、NBF1…ホヤガラス社製)を用いて互いに対向する第1面1aと第2面1bとが共に非球面に形成されており、且つ、開口数(NA)が0.75以上の単玉レンズである。
【0030】
ここで、対物レンズ1は波長が400nm近辺のブルー・レーザー光Laを第1面1aから入射して屈折させ、更に第2面1bで屈折させて絞り込んだブルー・レーザービームLbを超高密度光ディスク2のレーザービーム入射面2aから入射して信号面2bに結像させている。この際、超高密度光ディスク2は、レーザービーム入射面2aから信号面2bまでの厚みが0.1mm〜0.15mm程度に設定されている。
【0031】
また、対物レンズ1の第1面1a及び第2面1bを非球面に形成する際、以下の多項式を用いて非球面を表すものとする。
Z=CY2/(1+(1−(1+K)C2Y2)×0.5)+aY4
+bY6+cY8+dY10+eY12+fY14
但し、Zは各面1a,1bの頂点からの距離、Cは各面1a,1bの曲率(曲率半径分の1)、Yは光軸からの高さ、Kはコーニック定数、a〜fは4次から14次の非球面係数である。例えば、aはYの4乗の係数に相当する。
【0032】
ここで、対物レンズ1及び超高密度光ディスク2の仕様の一例を下記の表1に示す。
【0033】
【表1】
また、対物レンズ1及び超高密度光ディスク2の設計値の一例を下記の表2に示す。
【0034】
【表2】
また、対物レンズ1の第1面1aの非球面係数の一例を下記の表3に示す。
【0035】
【表3】
また、対物レンズ1の第2面1bの非球面係数の一例を下記の表4に示す。
【0036】
【表4】
そして、上記のように対物レンズ1の各値を設定して設計した時に、理論上でのコマ収差,色収差を押さえることができるもの、成形時に対物レンズ1の第1面1aの中心と、第2面1bの中心との位置ズレ量(偏心量)は光学レンズ用金型の構造形態により左右される。ここで、超高密度光ディスク2の信号面2bが1層構造の場合に、上記した位置ズレ量(偏心量)は設計上で±3μm以下が要求されており、更に、ここでの図示を省略するものの超高密度光ディスク2の信号面が第1信号面と、この第1信号面から僅かの間隔を隔てた第2信号面とからなる2層構造の場合もあり、この2層構造の場合に上記した位置ズレ量(偏心量)は設計上で±1μm以下が要求されている。
【0037】
上記した位置ズレ量(偏心量)の要求に伴って、本発明に係る光学レンズの成形方法及び光学レンズ用金型について以下説明する。
【0038】
<第1実施例>
図2は本発明に係る第1実施例の光学レンズの成形方法及び光学レンズ用金型を説明するために、第1金型(下型)と第2金型(上型)とを分離させた成形前の状態を模式的に示した縦断面図、
図3は本発明に係る第1実施例において、第1金型と第2金型とを合体させて光学レンズを成形する状態を模式的に示した縦断面図、
図4は本発明に係る第1実施例において、図2及び図3に示したボールべアリング体と、第1コア(下コア)と、第2コア(上コア)とをそれぞれ示した斜視図、
図5は本発明に係る第1実施例において、第2金型の有底孔内に嵌め込んだボールべアリング体のリテーナーに支持した複数のボールべアリングに沿って第1コアを挿入した際に、第1コアの移動量と最下部のボールべアリングの移動量とを説明するために模式的に示した図である。
【0039】
図2及び図3に示した如く、本発明に係る第1実施例の光学レンズ用金型10Aは、主として光学ガラス素材を用いて少なくとも一つの面が非球面を有する光学レンズ(例えば、対物レンズ)を成形するにあたって、光学レンズの第1面の中心と、第2面の中心とが位置ズレすることなく成形できるように構成されているものである。
【0040】
即ち、図2に示した如く、本発明に係る第1実施例の光学レンズ用金型10Aでは、第1金型(下型)20に固着させた第1コア(下コア)21の円筒部21cの上端部21dに非球面を有して形成した第1レンズ転写面21eと、第2金型(上型)30に固着させた第2コア(上コア)31の円筒部31cの下端部31dに非球面を有して形成した第2レンズ転写面31eとを同一中心軸上で互いに離間して対向させ、且つ、光学レンズ1の成形時に第2金型30の有底孔30e内に嵌め込んだ円筒状のボールベアリング体BBのリテーナー33に支持した複数のボールべアリング34を第1,第2コア21,31の径方向に弾性変位させて第1,第2コア21,31の円筒部21c,31cの外周面に予圧をかけることで、複数のボールべアリング34への第1,第2コア21,31の円筒部21c,31cの摺動用スキマを無くすように成したものである。そして、成形前の初期状態時に、第1コア21を第2コア31の下方で待機させ、一方、成形時には第1コア21を第2コア31に対して第1,第2金型20,30間に設けた不図示のガイドシャフトにより位置決めしながら上動させて第1,第2金型20,30同士を合体可能に構成したものである。
【0041】
尚、この第1実施例では、第1金型(下型)20を可動側とし、且つ、第2金型(上型)30を固定側として以下説明するものの、第1金型20を固定側とし、第2金型30を可動側とすることで、第2金型30を第1金型20に向けて下動させても良いものである。
【0042】
まず、上記した第1金型20は、下面20a側に大径な鍔部20bが形成され、且つ、鍔部20bの上方に鍔部20bより小径な円筒部20cが同心的に上方に向かって短尺に形成されている。また、第1金型20の円筒部20cの上面20dの中心部に有底孔20eが穿設されている。
【0043】
また、第1金型20に穿設した有底孔20e内に、第1コア21の下面21a側に形成した鍔部21bがクリアランスなく嵌め込まれて、第1コア21の下面21aを第1金型20の下面20a側からネジ22により第1金型20に対して固着している。
【0044】
また、第1コア21は、下面21a側に形成した鍔部21bの上方に円筒部21cが、鍔部21bより小径な軸径D2で寸法精度良く第2金型30側に向かって長尺に形成されていると共に、この円筒部21cの上端部21dのコーナーを僅かにR取り又は面取りし、且つ、上端部21dの中心部に第1レンズ転写面21eが所定の厚みを持って凹状に形成されている。この第1コア21の第1レンズ転写面21eは、超硬合金又はセラミックスなど硬質耐熱材を用いて、研削加工を施した上で光学ガラス素材23が付着しないように耐摩耗性のある表面処理を行って、レンズ設計仕様に合わせた非球面となるように仕上げられている。この際、第1コア21の第1レンズ転写面21eは、成形前に質量を管理しながら予め真球に研磨加工を施した球状の光学ガラス素材23が載置されると共に、成形時に先に図1を用いて説明した対物レンズ1の第1面1aを転写するためのものである。
【0045】
次に、上記した第2金型30は、上面30a側に大径な鍔部30bが形成され、この下方に鍔部30bより小径な円筒部30cが鍔部30bに対して同心的に第1金型20側に向かって長尺に形成されていると共に、円筒部30cの中心部に下面30dから鍔部30bに向かって有底孔30eが寸法精度良く長尺に穿設されている。
【0046】
また、第2金型30に穿設した有底孔30e内の上方部位に、第2コア31の上面31a側に形成した鍔部31bがクリアランスなく嵌め込まれて、第2コア31の上面31aを第2金型30の上面30a側からネジ32により第2金型30に対して固着している。
【0047】
また、第2コア31は、上面31a側に形成した鍔部31bの下方に円筒部31cが、鍔部31bより小径で且つ第1コア21の円筒部21cと同径な軸径D2で寸法精度良く形成されていると共に、第2金型30の有底孔30eの長さの略半分程度の長さで有底孔30eに対して同心的に第1金型20側に向かって形成されている。また、第2コア31の円筒部31cの下端部31dのコーナーを僅かにR取り又は面取りをし、且つ、下端部31dの中心に第2レンズ転写面31eが凹状に形成されている。この第2コア31の第2レンズ転写面31eも、超硬合金又はセラミックスなど硬質耐熱材を用いて、研削加工を施した上で光学ガラス素材23が付着しないように耐摩耗性のある表面処理を行って、レンズ設計仕様に合わせた非球面となるように仕上げられている。この際、第2コア31の第2レンズ転写面31eは、成形時に先に図1を用いて説明した対物レンズ1の第2面1bを転写するためのものである。
【0048】
また、第2金型30に穿設した有底孔30e内には、予圧付加部材となる円筒状のボールべアリング体BBが嵌め込まれている。このボールべアリング体BBは、第1実施例の要部を構成するものであり、円筒状のリテーナー33の周面に沿ってボール径D3に形成した複数のボールべアリング34が支持されていると共に、リテーナー33の周面の内周側と外周側とに各ボールべアリング34の一部を回転可能に露出させた状態で、複数のボールべアリング34が第2金型30に穿設した有底孔30eの内周面に沿って転動可能に嵌め込まれている。
【0049】
そして、成形前の初期状態時に、ボールべアリング体BBはリテーナー33の上端側に支持したボールべアリング34のいくつかを第2コア31の円筒部31cのうちで下端部31d側の外周面に添接させると共に、リテーナー33の下端部をリテーナー支持板35に当接させて、リテーナー33の下端側に位置する残りのボールべアリング34に対して第1コア21の円筒部21cの挿入を許容している。
【0050】
ここで、図4に示した如く、ボールべアリング体BBは、リテーナー33及び複数のボールべアリング34に対して成形時の金型温度に対して耐熱性を有する材料を用いている。更に、ボールべアリング体BBは、複数のボールべアリング34を円筒状のリテーナー33の周面に沿って支持させる際に、複数のボールべアリング34をリテーナー33の軸方向に対して所定の角度傾斜した傾斜列に沿って配列させている。これにより、第1コア21の円筒部21c及び第2コア31の円筒部31cを両端側から挿入した時に、リテーナー33の内周側及び外周側に露出した複数のボールべアリング34が第2金型30に穿設した有底孔30eの内周面及び第1,第2コア21,31の円筒部21c,31cの外周面に略均等の間隔で接することができるようになっている。
【0051】
また、図5に示した如く、成形開始時に、第2金型30の有底孔30e内に嵌め込んだボールべアリング体BB内に第1コア21を挿入した時に、第1コア21の円筒部21cの上端部21dがリテーナー33に支持した複数のボールべアリング34のうちで最下部のボールべアリング34に当接した位置を起点位置とすると、この場合、第2金型30の有底孔30eの内周面は最下部のボールべアリング34は勿論のこと残り複数のボールべアリング34に対して転動用の固定壁として機能し、且つ、第1コア21の円筒部21cの上端部21dが最下部のボールべアリング34に当接した起点位置から最下部のボールべアリング34が矢印方向に回転を始め、その後、第1コア21の円筒部21cに添接しながら回転を続けるので、動滑車の原理と同様に、第1コア21の挿入動作に伴って第1コア21の円筒部21cの上端部21dが起点位置から第2コア31の円筒部31cの下端部31dに突き当たるまでの移動量をM1とした時に、最下部のボールべアリング34の移動量M2は上記した第1コア21の移動量M1の1/2以下となり、即ち、M2≦M1/2が成立する。
【0052】
そして、図2に示したように、対物レンズ1の成形開始時に、第1コア21を第2コア31側(矢印S1側)に向かって上動させ、第1コア21の円筒部21cを第2金型30の有底孔30e内に嵌め込んだボールべアリング体BB内に挿入する動作に伴って、リテーナー33と一体に複数のボールべアリング34が、第2金型30の有底孔30eの内周面及び第1,第2コア21,31の円筒部21c,31cに沿って第1,第2コア21,31の円筒部21c,31cを突き合わせた側に上動し、且つ、第2コア31の円筒部31cの下端部31dに第1コア21の円筒部21cの上端部21dを突き合わせた時には、図3に示したように、複数のボールべアリング34が第2コア31の円筒部31cの外周面及び第1コア21の円筒部21cの外周面に添接する。
【0053】
この際、図3に示したように、リテーナー33に支持した複数のボールべアリング34を第1,第2コア21,31の径方向に弾性変位させることにより、第1,第2コア21,31の円筒部21c,31cに予圧(プリロード)を加えている。
【0054】
より具体的には、第2金型30に穿設した有底孔30eの孔径をD1とし、且つ、第1コア21の円筒部21cの軸径及び第2コア31の円筒部31cの軸径をD2とし、ボールべアリング34のボール径をD3とした時に、ボールべアリング34に対して第1,第2コア21,31の径方向に弾性変位内で予圧をかけることで、D1<D2+2×D3が成立することになるので、複数のボールべアリング34を第1,第2コア21,31の径方向に弾性変位させて第1,第2コア21,31の円筒部21c,31cに予圧を付加し、複数のボールべアリング34と第1,第2コア21,31の円筒部21c,31cの外周面との間で摺動用クリアランスが全く生じない状態となる。
【0055】
これにより、対物レンズ1の成形時に、第1コア21に形成した第1レンズ転写面21eの中心と、第2コア31に形成した第2レンズ転写面31eの中心とが位置ズレしないようになっている。
【0056】
ここで、上記のように構成した第1実施例の光学レンズ用金型10Aを用いて先に図1を用いて説明した対物レンズ1を成形する動作について、図1及び図2を併用しながら新な図6を用いて説明する。
【0057】
図6は第1実施例の光学レンズの成形方法を説明するための動作フロー図である。
【0058】
図6に示した如く、ステップS10では、光学レンズ用金型10Aの初期状態時に、第1金型20に固着させた第1コア21を、第2金型30に固着させた第2コア31の下方で待機させている。
【0059】
次に、ステップS11では、第1コア21に形成した第1レンズ転写面21e上に予め研磨加工を施した球状の光学ガラス素材23を載置する。
【0060】
次に、ステップS12では、光学ガラス素材23を第1レンズ転写面21e上に載置した状態で第1コア21を上動させ、この第1コア21の円筒部21cを第2金型30の有底孔20d内に嵌め込んだボールべアリング体BBのリテーナー33に支持した複数のボールべアリング34に沿って挿入する。
【0061】
次に、ステップS13では、ヒータ又は遠赤外線などの不図示の加熱手段により光学ガラス素材23のガラス軟化点温度まで第1,第2コア21,31を昇温させて光学ガラス素材23を軟化させながら、第1コア21の円筒部21cの上端部21dが第2コア31の円筒部31cの下端部31dに突き当たるまで第1コア21を上動させると図3に示した状態に至る。この際、第1コア21の起点位置からの移動量M1(図5)に伴って、複数のボールべアリング34がリテーナー33と一体に移動量M2≦M1/2(図5)だけ第2金型30の有底孔30の内周面及び第1,第2コア21,31の円筒部21c,31cに沿って上動し、言い換えると、複数のボールべアリング34は第1,第2コア21,31の円筒部21c,31cを突き合わせた側に移動して、複数のボールべアリング34を第1,第2コア21,31の径方向に弾性変位させることにより第1,第2コア21,31の円筒部21c,31cの外周面に予圧(プリロード)を加えている。
【0062】
次に、ステップS14では、第1コア21の円筒部21cの上端部21dを第2コア31の円筒部31cの上端部31dに突き合わせた後に、第1コア21に形成した第1レンズ転写面21eと、第2コア31に形成した第2レンズ転写面31eとの間で光学ガラス素材23が軟化した状態となる。
【0063】
次に、ステップS15では、第1,第2コア21,31を不図示の冷却手段で冷却すると対物レンズ1が成形され、この際、第1コア21の第1レンズ転写面21eで対物レンズ1の第1面1a(図1)が非球面として転写され、且つ、第2コア31の第2レンズ転写面31eで対物レンズ1の第2面1b(図1)も非球面として転写される。
【0064】
次に、ステップS16では、第1コア21を下動させて初期状態まで戻し、対物レンズ1を取り出す。この時、第1コア21の下動に伴って、複数のボールべアリング34を支持したリテーナー33は元の初期状態まで下動する。
【0065】
上記の動作工程中で、複数のボールべアリング34を第1,第2コア21,31の径方向に弾性変位させて第1,第2コア21,31の円筒部21c,31cの外周面に予圧(プリロード)を加えているために、複数のボールべアリング34への第1,第2コア21,31の円筒部21c,31cの摺動用クリアランスが全く生じない状態となるために、第1コア21に形成した第1レンズ転写面21eの中心と、第2コア31に形成した第2レンズ転写面31eの中心とが位置ズレしない。この結果、成形した対物レンズ1の第1面1a(図1)の中心と第2面1b(図1)の中心とが位置ズレしないで位置ズレ量(偏心量)を±1μm以下に抑えることができ、これにより上記した対物レンズ1は信号面が1層構造の超高密度光ディスク2(図1)は勿論のこと、信号面が2層構造の超高密度光ディスク(図示せず)にも対応可能となる。
【0066】
次に、本発明に係る第1実施例を一部変形させた変形例について図7を用いて簡略に説明する。
【0067】
図7は本発明に係る第1実施例を一部変形させた変形例において、第1金型と第2金型とを合体させて対物レンズを成形する状態を模式的に示した縦断面図である。
【0068】
尚、説明の都合上、先に第1実施例で示した構成部材と同一構成部材に対しては同一の符号を付して図示のみとし、且つ、第1実施例と異なる構成部材に新たな符号を付す共に、この変形例では第1実施例と異なる点を中心に説明する。
【0069】
図7に示した如く、本発明に係る第1実施例を一部変形させた変形例の光学レンズ用金型10Bは、第1金型(下型)20の一部が第1実施例に対して異なっており、第2金型(上型)30は第1実施例と同じである。
【0070】
この変形例では、第1金型20に第1コア21を固着させずに、第1コア21を第1金型20の軸中心に対して直角の方向に移動可能に取り付けている。
【0071】
即ち、第1金型20の上面20dの中心部に、第1コア21の鍔部21bの径より僅かに大径の有底孔20fが穿設されている。
【0072】
また、第1コア21の下面21aの中心部に円錐状凹部21fが形成され、この円錐状凹部21f内と第1金型20の有底孔20fの底面との間にスチールボール24を介挿することで、第1コア21の円筒部21cをこの軸方向に対して直角方向に移動自在に支持している。
【0073】
また、第1金型20の上面20dに、第1コア21の円筒部21cが進入するための逃げ孔25aを貫通させた押さえ板25を取り付けることで、第1コア21の鍔部21bが第1金型20の有底孔20f内から脱落したり、又は、第1コア21が傾倒することを防止している。
【0074】
従って、第1コア21の円筒部21cを、第2金型30の有底孔30e内に嵌め込んだボールべアリング体BBのリテーナー33に支持した複数のボールべアリング34に沿って挿入する場合に、第1コア21の円筒部21cの上端部21dのコーナーを僅かにR取り又は面取りした部位がリテーナー33内又は最下部のボールべアリング34に添接する動作に伴って、第1コア21の鍔部21bがスチールボール24を介して左右方向(矢印方向)に移動することで第1コア21の円筒部21cの第2コア31の円筒部31cへの芯だしが容易になるものである。
【0075】
<第2実施例>
図8は本発明に係る第2実施例の光学レンズの成形方法及び光学レンズ用金型を説明するために、第1金型(下型)と第2金型(上型)とを分離させた成形前の状態を模式的に示した縦断面図、
図9は本発明に係る第2実施例において、第1金型と第2金型とを合体させて光学レンズを成形する状態を模式的に示した縦断面図である。
【0076】
図8及び図9に示した如く、本発明に係る第2実施例の光学レンズ用金型40Aも、主として光学ガラス素材を用いて少なくとも一つの面が非球面を有する光学レンズ(例えば、対物レンズ)を成形するにあたって、光学レンズの第1面の中心と、第2面の中心とが位置ズレすることなく成形できるように構成されているものである。
【0077】
この第2実施例の光学レンズ用金型40Aでは、第1実施例と異なって、第1金型(下型)20に固着させた第1コア(下コア)21の円筒部21cの上端部21dに非球面を有して形成した第1レンズ転写面21eと、第2金型(上型)30の有底孔30e内で圧縮バネ42を介して上下動可能に支持され且つ薄肉リング状スリーブ41の孔41a内に嵌め込んだ第2コア(上コア)31の円筒部31cの下端部31dに非球面を有して形成した第2レンズ転写面31eとを同一中心軸上で互いに離間して対向させ、且つ、光学レンズ1の成形時に第2金型30の有底孔30e内に嵌め込んだ円筒状のボールべアリング体BBのリテーナー33に支持した複数のボールべアリング34を第1,第2コア21,31の径方向に弾性変位させて薄肉リング状スリーブ41を介してこの薄肉リング状スリーブ41内に挿入した第1,第2コア21,31の円筒部21c,31cの外周面に予圧をかけることで、薄肉リング状スリーブ41の孔41a内への第1,第2コア21,31の円筒部21c,31cの摺動用スキマを無くすように成したものである。そして、成形前の初期状態時に、第1コア21を薄肉リング状スリーブ41の下方で待機させ、一方、成形時には第1コア21を第2コア31に対して第1,第2金型20,30間に設けた不図示のガイドシャフトにより位置決めしながら上動させて第1,第2金型20,30同士を合体可能に構成したものである。
【0078】
上記に伴って、第2金型(上型)30の構造が第1実施例に対して一部改良されているものの、第1金型(下型)20の構造は第1実施例と同じであるので、説明の都合上、第1実施例と同じ機能を有する構成部材に対して同一の符号を付して適宜説明し、且つ、第1実施例と異なる構成部材に新たな符号を付す共に、この第2実施例では第1実施例と異なる点を中心に説明する。
【0079】
まず、図9に示したように、第1金型20は、第1実施例と同様に、下面20a側に形成した鍔部20bと、この鍔部20bの上方に鍔部20bより小径に形成した円筒部20cと、円筒部20cの上面20dの中心部に形成した有底孔20eとからなり、有底孔20e内に第1コア21の下面21a側に形成した鍔部21bがクリアランスなく嵌め込まれて、第1コア21がネジ22により第1金型20に固着されている。
【0080】
また、第1コア21は、第1実施例と同様に、下面21a側に形成した鍔部21bと、この鍔部21bの上方に鍔部21bより小径で長尺に形成した円筒部21cと、円筒部21cの上端部21dの中心部に光学ガラス素材23(図8)を載置すると共に所定の厚みで非球面を有して形成した第1レンズ転写面21eとからなっている。
【0081】
次に、図8及び図9に示したように、第2金型30は、上面30a側に大径な鍔部30bが形成され、この下方に鍔部30bより小径な円筒部30cが鍔部30bに対して同心的に第1金型20側に向かって第1実施例よりも長尺に形成されていると共に、円筒部30cの中心部に下面30dから鍔部30bに向かって有底孔30eが寸法精度良く第1実施例よりも長尺に穿設されている。
【0082】
また、第2金型30に穿設した有底孔30e内には、第1実施例と異なって、第2コア31が第2金型30に固着されずに、薄肉リング状スリーブ41の孔41a内に第2コア31の円筒部31cを嵌め込んだ状態で第2コア31が圧縮バネ42を介して上下動可能に支持されている。
【0083】
また、第2コア31は、上面31a側に第2金型30の有底孔30eの孔径よりも一回り小径に形成した鍔部31bと、この鍔部31bの下方に鍔部31bよりも小径で且つ第1コア21と同径で長尺に形成した円筒部31cと、円筒部31cの下端部31dの中心部に非球面を有して形成した第2レンズ転写面31eとが第1実施例と略同じ構成であるものの、第2コア31の円筒部31cの外周面にこの円筒部31cの長さよりも略倍の長さに形成した薄肉リング状スリーブ41が嵌め込まれていると共に、第2コア31の上面31aと第2金型30の有底孔30e内の天面との間に介装した圧縮バネ42を支持するための凹孔31fが穿設されている点が第1実施例に対して異なっている。
【0084】
この際、薄肉リング状スリーブ41は、弾性変位可能な燐青銅などを用いて薄肉リング状に貫通して第2コア31の円筒部31cの長さの略倍の長さで長尺に形成され、孔41a内の上方側の約半分の長さ部位に第2コア31の円筒部31cが予め嵌め込まれ、且つ、孔41a内の下方側の約半分の長さ部位は第1コア21の円筒部21cの挿入が許容されるようになっている。
【0085】
また、第2金型30の有底孔30eの内周面と、薄肉リング状スリーブ41の外周面41bとの間にボールべアリング体BBが嵌め込まれている。このボールべアリング体BBは、第1実施例と同様に構成されており、円筒状のリテーナー33の周面に沿って複数のボールべアリング34が支持されている。この第2実施例では、薄肉リング状スリーブ41と、円筒状のボールべアリング体BBとで予圧付加部材が構成されている。そして、複数のボールべアリング34を第2コア31の径方向に弾性変位させることにより薄肉リング状スリーブ41を介して孔41a内に嵌め込まれた第2コア31の円筒部31cに予圧が付加されているので、孔41aに対して円筒部31cが略圧入状態となっている。
【0086】
上記したボールべアリング体BBのリテーナー33に支持した複数のボールべアリング34は、後述するように、薄肉リング状スリーブ41の孔41a内に第1コア21の円筒部21cが挿入された時に第1コア21と一体に薄肉リング状スリーブ41が第2金型30の有底孔30e内の天面側に向かって上動する動作に伴って、薄肉リング状スリーブ41の移動量の1/2以下上動しながら複数のボールべアリング34を第1,第2コア21,31の径方向に弾性変位させることにより薄肉リング状スリーブ41を介して第1,第2コア21,31の円筒部21c,31cに予圧を付加するものである。
【0087】
また、第2金型30の円筒部30cの下面30dに、薄肉リング状スリーブ41の進入を許容するための逃げ孔35aを穿設したリテーナー支持板35が取り付けられている。
【0088】
そして、成形前の初期状態では、図8に示したように、第2金型30の有底孔30e内に介装した圧縮バネ42の付勢力により第2コア31の円筒部31cを嵌め込んだ薄肉リング状スリーブ41が第1金型20側に押圧されて薄肉リング状スリーブ41の下端部41dが第2金型30の有底孔30eの外に突出して第1コア21の円筒部21cの挿入を待機している。
【0089】
また、成形前の初期状態では、薄肉リング状スリーブ41の下動に伴ってリテーナー33は下端部がリテーナー支持板35に当接し、且つ、上端部が薄肉リング状スリーブ41の鍔部41cに当接している。更に、薄肉リング状スリーブ41に嵌め込んだ第2コア31の円筒部31cの下端部31dは、リテーナ33に支持した複数のボールべアリング34のうちで最下部のボールべアリング34の近傍に位置している。
【0090】
次に、ここで、上記のように構成した第2実施例の光学レンズ用金型40Aを用いて先に図1を用いて説明した対物レンズ1を成形する動作について、図8及び図9を併用しながら新な図10を用いて説明する。
【0091】
図10は第2実施例の光学レンズの成形方法を説明するための動作フロー図である。
【0092】
図10に示した如く、ステップS20では、光学レンズ用金型40Aの初期状態時に、第1金型20に固着させた第1コア21を、第2金型30の有底孔30e内で圧縮バネ42の付勢力により第1金型20側に移動し且つ第2コア31の円筒部31cを嵌め込んだ薄肉リング状スリーブ41の下方で待機させている。
【0093】
次に、ステップS21では、第1コア21に形成した第1レンズ転写面21e上に予め研磨加工を施した球状の光学ガラス素材23を載置する。
【0094】
次に、ステップS22では、光学ガラス素材23を第1レンズ転写面21e上に載置した状態で第1コア21を上動させ、この第1コア21の円筒部21cを薄肉リング状スリーブ41の孔41a内に挿入して、第1コア21の円筒部21cの上端部21dを第2コア31の円筒部31cの下端部31dに突き当てると図9に示した状態に至る。この際、薄肉リング状スリーブ41の孔41a内で第1コア21の円筒部21cと第2コア31の円筒部31cとを突き合わせた時に、内部が密閉状態となるために、例えば第1コア21の円筒部21cの側面に0.05mm程度のガス逃げ溝(図示せず)を設けている。
【0095】
次に、ステップS23では、ヒータ又は遠赤外線などの不図示の加熱手段により光学ガラス素材23のガラス軟化点温度まで第1,第2コア21,31を昇温させて光学ガラス素材23を軟化させながら、第1コア21の上動に伴って第2コア31を嵌め込んだ薄肉リング状スリーブ41が圧縮バネ42の付勢力に抗して第2金型30の有底孔30e内の天面側に向かって上動し、薄肉リング状スリーブ41の鍔部41cが第2金型30の有底孔30e内の天面に当接する。そして、薄肉リング状スリーブ41の移動量に伴って、リテーナー33と一体に複数のボールべアリング34が上記した移動量の1/2以下だけ第2金型30の有底孔30の内周面及び第1,第2コア21,31の円筒部21c,31cの外周面に沿って上動し、言い換えると、複数のボールべアリング34は第1,第2コア21,31の円筒部21c,31cを突き合わせた側に移動して、複数のボールべアリング34を第1,第2コア21,31の径方向に弾性変位させることにより薄肉リング状スリーブ41を介して第1,第2コア21,31の円筒部21c,31cに予圧(プリロード)を加えている。
【0096】
次に、ステップS24では、第1コア21の円筒部21cの上端部21dを第2コア31の円筒部31cの上端部31dに突き合わせた後に、第1コア21に形成した第1レンズ転写面21eと、第2コア31に形成した第2レンズ転写面31eとの間で光学ガラス素材23が軟化した状態となる。
【0097】
次に、ステップS25では、第1,第2コア21,31を不図示の冷却手段で冷却すると対物レンズ1が成形され、この際、第1コア21の第1レンズ転写面21eで対物レンズ1の第1面1a(図1)が非球面として転写され、且つ、第2コア31の第2レンズ転写面31eで対物レンズ1の第2面1b(図1)も非球面として転写される。
【0098】
次に、ステップS26では、第1コア21を下動させて初期状態まで戻し、対物レンズ1を取り出す。この時、圧縮バネ42の付勢力により第2コア31を嵌め込んだ薄肉リング状スリーブ41が下動し、これに伴って複数のボールべアリング34を支持したリテーナー33は元の初期状態まで下動する。
【0099】
上記の動作工程中で、複数のボールべアリング34を第1,第2コア21,31の径方向に弾性変位させて薄肉リング状スリーブ41を介して第1,第2コア21,31の円筒部21c,31cの外周面に予圧(プリロード)を加えているために、薄肉リング状スリーブ41の孔41a内への第1,第2コア21,31の円筒部21c,31cの摺動用クリアランスが全く生じない状態となるために、第1コア21に形成した第1レンズ転写面21eの中心と、第2コア31に形成した第2レンズ転写面31eの中心とが位置ズレしない。この結果、成形した対物レンズ1の第1面1a(図1)の中心と、第2面1b(図1)の中心とが位置ズレしないで位置ズレ量(偏心量)を±1μm以下に抑えることができる。更に、第1実施例と異なって、薄肉リング状スリーブ41を用いることで、第1,第2コア21,31の円筒部21c,31cをボールべアリング体BB内に挿入する時に、複数のボールべアリング34に第1,第2コア21,31の円筒部21c,31cが直接添接することがなくなるので、複数のボールべアリング34を傷つけることがなく、更に、複数のボールべアリング34に光学ガラス素材23のカケラなどが付着することもなくなるなどの改善を図ることができる。
【0100】
次に、本発明に係る第2実施例を一部変形させた変形例について図11を用いて簡略に説明する。
【0101】
図11は本発明に係る第2実施例を一部変形させた変形例において、第1金型と第2金型とを合体させて対物レンズを成形する状態を模式的に示した縦断面図である。
【0102】
図11に示した如く、本発明に係る第2実施例を一部変形させた変形例の光学レンズ用金型40Bは、第1金型(下型)20の一部が第2実施例に対して異なっており、第2金型(上型)30は第2実施例と同じである。
【0103】
この変形例では、第1金型20に第1コア21を固着させずに、第1コア21を第1金型20の軸中心に対して直角の方向に移動可能に取り付けている。
【0104】
即ち、第1金型20の上面20dの中心部に、第1コア21の鍔部21bの径より僅かに大径の有底孔20fが穿設されている。
【0105】
また、第1コア21の下面21aの中心部に円錐状凹部21fが形成され、この円錐状凹部21f内と第1金型20の有底孔20fの底面との間にスチールボール24を介挿することで、第1コア21の円筒部21cをこの軸方向に対して直角方向に移動自在に支持している。
【0106】
また、第1金型20の上面20dに、第1コア21の円筒部21cが進入するための逃げ孔25aを貫通させた押さえ板25を取り付けることで、第1コア21の鍔部21bが第1金型20の有底孔20f内から脱落したり、又は、第1コア21が傾倒することを防止している。
【0107】
従って、第1コア21の円筒部21cを、第2コア31を嵌め込んだ薄肉リング状スリーブ41の孔41a内に挿入する場合に、第1コア21の円筒部21cの上端部21dのコーナーを僅かにR取り又は面取りした部位が薄肉リング状スリーブ41の孔41a内に添接する動作に伴って、第1コア21の鍔部21bがスチールボール24を介して左右方向(矢印方向)に移動することで第1コア21の円筒部21cの第2コア31の円筒部31cへの芯だしが容易になるものである。
【0108】
<第3実施例>
図12は本発明に係る第3実施例の光学レンズの成形方法及び光学レンズ用金型を説明するために、第1金型(下型)と第2金型(上型)とを分離させた成形前の状態を模式的に示した縦断面図、
図13は本発明に係る第3実施例において、第1金型と第2金型とを合体させて光学レンズを成形する状態を模式的に示した縦断面図、
図14は図12及び図13に示した円錐状コレットを示した斜視図である。
【0109】
図12及び図13に示した如く、本発明に係る第3実施例の光学レンズ用金型50Aも、主として光学ガラス素材を用いて少なくとも一つの面が非球面を有する光学レンズ(例えば、対物レンズ)を成形するにあたって、光学レンズの第1面の中心と、第2面の中心とが位置ズレすることなく成形できるように構成されているものである。
【0110】
この第3実施例の光学レンズ用金型50Aでは、第1金型(下型)60に固着させた第1コア(下コア)66の円筒部66cの上端部66dに非球面を有して形成した第1レンズ転写面66eと、第2金型(上型)70に固着させ且つ薄肉リング状スリーブ71の孔71a内に嵌め込んだ第2コア(上コア)72の円筒部72cの下端部72dに非球面を有して形成した第2レンズ転写面72eとを同一中心軸上で互いに離間して対向させ、且つ、薄肉リング状スリーブ71の外周面71bに第1,第2コア66,72の径方向に弾性変位可能な円錐状コレット74を嵌め込んで、光学レンズ1の成形時に円錐状コレット74をコレット締め上げ部材75で第1,第2コア66,72の径方向に締め上げながら薄肉リング状スリーブ71を介してこの薄肉リング状スリーブ71の孔71a内に挿入した第1,第2コア66,72の円筒部66c,72cの外周面に予圧をかけることで、薄肉リング状スリーブ71の孔71a内への第1,第2コア66,72の円筒部66c,72cの摺動用スキマを無くすように成したものである。そして、成形前の初期状態時に、第1コア66を第2コア72を嵌め込んだ薄肉リング状スリーブ71の下方で待機させ、一方、成形時には第1コア66を第2コア72に対して第1,第2金型60,70間に設けた不図示のガイドシャフトにより位置決めしながら上動させて第1,第2金型60,70同士を合体可能に構成したものである。
【0111】
まず、図12に示したように、第1金型60は、大径ベース61の上面61a上に小径ベース62の下面62aが分離可能に同心的に積層されて、使用時に図示しない締結手段により両ベース61,62が一体化されている。
【0112】
また、大径ベース61の上面61aの中心部には大径有底孔61bが穿設されており、この大径ベース61の外周側から空気又はオイルを挿脱するための挿脱孔61cが大径有底孔61bに連通して穿設されている。
【0113】
また、大径ベース61の大径有底孔61b内には、Oリング63を外周に嵌着したピストン64が空気圧又は油圧により上下動可能に嵌め込まれており、且つ、ピストン64上に押し棒65が円周に沿って複数本植設されて、複数の押し棒65が小径ベース62に穿設した複数の貫通孔62d内に上下動可能に進入している。この際、ピストン64上に植設した複数本の押し棒65は、後述する第2金型70内に設けたコレット締め上げ部材75に対して接離自在になっている。
【0114】
また、小径ベース62の上面62bの中心部に有底孔62cが穿設されており、この有底孔62c内に第1コア66の下面66a側に形成した鍔部66bがクリアランスなく嵌め込まれて、第1コア66の下面66aを小径ベース62の下面62b側からネジ67により小径ベース62に対して固着している。
【0115】
また、第1コア66は、下面66a側に形成した鍔部66bと、この鍔部66bの上方に鍔部66bより小径で長尺に形成した円筒部66cと、円筒部66cの上端部66dの中心部に光学ガラス素材23を載置すると共に所定の厚みで非球面を有して形成した第1レンズ転写面66eとからなっている。
【0116】
次に、第2金型70は、上面70a側に大径な鍔部70bが形成され、この下方に鍔部70bより小径な円筒部70cが鍔部70bに対して同心的に第1金型60側に向かって長尺に形成されていると共に、円筒部70cの中心部に下面70dから鍔部70bに向かって大径有底孔70eと小径有底孔70fとが階段状に同心的に穿設されている。
【0117】
また、第2金型70の小径有底孔70f内には、薄肉リング状スリーブ71の孔71a内に嵌め込んだ第2コア72の上面72a側に形成した鍔部72bがクリアランスなく嵌め込まれて、第2コア72の上面72aを第2金型70の上面70a側からネジ73により第2金型70に対して固着している。
【0118】
また、第2コア72は、上面72a側に形成した鍔部72bと、この鍔部72bの下方に鍔部72bよりも小径で且つ第1コア66の円筒部66cと同径で長尺に形成された円筒部72cと、円筒部72cの下端部72dの中心部に非球面を有して形成した第2レンズ転写面72eとからなっており、円筒部72cの外周面にこの円筒部72cの長さよりも長尺に形成した薄肉リング状スリーブ71が上端を第2コア72の鍔部72bに当接させて嵌め込まれており、且つ、薄肉リング状スリーブ71の下端は後述する落下防止板76に当接している。
【0119】
この際、薄肉リング状スリーブ71は、弾性変位可能な燐青銅などを用いて薄肉リング状に貫通して第2コア72の円筒部72の長さよりも略倍の長さに形成され、孔71a内の上方側の約半分の長さ部位に第2コア72の円筒部72cが予め嵌め込まれ、且つ、孔71a内の下方側の約半分の長さ部位は第1コア72の円筒部72cの挿入が許容されるようになっている。
【0120】
また、薄肉リング状スリーブ71の外周面71bは、弾性変位可能な燐青銅などを用いて円錐状に形成した円錐状コレット74の中央貫通孔74a内に嵌め込まれている。この際、円錐状コレット74は、第2金型とは別体で着脱自在に形成されている。
【0121】
上記した円錐状コレット74は、図14に示した如く、上面74c側及び下面74d側から第2スリット74e及び第1スリット74fを円錐状外周面74bに沿って交互に複数箇所形成することで、円錐状コレット74の円錐状外周面74bが第1,第2コア66,72の径方向に弾性変位可能になっている。
【0122】
図12に戻り、円錐状コレット74の円錐状外周面74bは、この円錐状外周面74bに沿って上下動可能に設けたコレット締め上げ部材75の中央円錐孔75a内に嵌め込まれており、この第3実施例では、薄肉リング状スリーブ71と、円錐状コレット74と、コレット締め上げ部材75とで予圧付加部材が構成されている。
【0123】
また、第2金型70の円筒部70cの下面70dに取り付けた落下防止板76によって薄肉リング状スリーブ71及び円錐状コレット74並びにコレット締め上げ部材75が下方に落下することを防止されている。この際、落下防止板76の中心部に貫通して穿接した逃げ孔76aは第1コア66の円筒部66cの挿入を許容し、且つ、中周部位に穿接した複数の逃げ孔76bは第1金型60側に設けた複数の押し棒65の挿入を許容している。
【0124】
そして、成形前の初期状態では、第2金型70の大径有底孔70e内で、円錐状コレット74の円錐状外周面74bに嵌め込んだコレット締め上げ部材75の下面75bは落下防止板76上に当接していると共に、第2コア72を嵌め込んだ薄肉リング状スリーブ71が第1コア66の円筒部66cの挿入を待機している。
【0125】
また、成形前の初期状態では、第1金型60側に設けたピストン64上に植設した複数の押し棒65は下降している。
【0126】
ここで、上記のように構成した第3実施例の光学レンズ用金型50Aを用いて先に図1を用いて説明した対物レンズ1を成形する動作について、図12及び図13を併用しながら新な図15を用いて説明する。
【0127】
図15は第3実施例の光学レンズの成形方法を説明するための動作フロー図である。
【0128】
図15に示した如く、ステップS30では、光学レンズ用金型50Aの初期状態時に、第1金型60の小径ベース62に固着させた第1コア66を、第2金型70に固着させた第2コア72の円筒部72cを嵌め込んだ薄肉リング状スリーブ71の下方で待機させている。
【0129】
次に、ステップS31では、第1コア66に形成した第1レンズ転写面66e上に予め研磨加工を施した球状の光学ガラス素材23を載置する。
【0130】
次に、ステップS32では、光学ガラス素材23を第1レンズ転写面66e上に載置した状態で第1コア66を上動させ、この第1コア66の円筒部66cを薄肉リング状スリーブ71の孔71a内に挿入して、第1コア66の円筒部66cの上端部66dを第2コア72の円筒部72cの下端部72dに突き当てると図13に示した状態に至る。この際、薄肉リング状スリーブ71の孔71a内で第1コア66の円筒部66cと第2コア72の円筒部72cとを突き合わせた時に、内部が密閉状態となるために、例えば第1コア66の円筒部66cの側面に0.05mm程度のガス逃げ溝(図示せず)を設けている。
【0131】
次に、ステップS33では、ヒータ又は遠赤外線などの不図示の加熱手段により光学ガラス素材23のガラス軟化点温度まで第1,第2コア66,72を昇温させて光学ガラス素材23を軟化させながら、第1コア66の上動に伴ってピストン64を介して押し棒65を上動させ、この押し棒65でコレット締め上げ部材75を円錐状コレット74の円錐状外周面74bに沿って押し上げながら円錐状コレット74の円錐状外周面74bを第1,第2コア66,72の径方向に締め上げることで、円錐状コレット74の中央貫通孔74a内に嵌め込んだ薄肉リング状スリーブ71を介して第1,第2コア66,72の円筒部66c,72cに予圧(プリロード)を加えている。
【0132】
次に、ステップS34では、第1コア66の円筒部66cの上端部66dを第2コア72の円筒部72cの上端部72dに突き合わせた後に、第1コア66に形成した第1レンズ転写面66eと、第2コア72に形成した第2レンズ転写面72eと間で光学ガラス素材23が軟化した状態となる。
【0133】
次に、ステップS35では、第1,第2コア66,72を不図示の冷却手段で冷却すると対物レンズ1が成形され、この際、第1コア66の第1レンズ転写面66eで対物レンズ1の第1面1a(図1)が非球面として転写され、且つ、第2コア72の第2レンズ転写面72eで対物レンズ1の第2面1b(図1)も非球面として転写される。
【0134】
次に、ステップS36では、第1コア66を下動させて初期状態まで戻し、対物レンズ1を取り出す。この時、ピストン64を介して押し棒65を下動してコレット締め上げ部材75から離間させている。
【0135】
上記の動作工程中で、コレット締め上げ部材75を円錐状コレット74の円錐状外周面74bに沿って押し上げながら円錐状コレット74を第1,第2コア66,72の径方向に締め上げることで、薄肉リング状スリーブ71を介して第1,第2コア66,72の円筒部66c,72cの外周面に予圧(プリロード)を加えているために、薄肉リング状スリーブ71の孔71a内への第1,第2コア66,72の円筒部66c,72cの摺動用クリアランスが全く生じない状態となるために、第1コア66に形成した第1レンズ転写面66eの中心と、第2コア72に形成した第2レンズ転写面72eの中心とが位置ズレしない。この結果、成形した対物レンズ1の第1面1a(図1)の中心と第2面1b(図1)の中心とが位置ズレしないで位置ズレ量(偏心量)を±1μm以下に抑えることができる。更に、第1,第2実施例と異なって、高価なボールべアリング体BBを用いていないので、光学レンズ用金型50Aを安価に作製できる。
【0136】
次に、本発明に係る第3実施例を一部変形させた変形例について図16を用いて簡略に説明する。
【0137】
図16は本発明に係る第3実施例を一部変形させた変形例において、第1金型と第2金型とを合体させて対物レンズを成形する状態を模式的に示した縦断面図である。
【0138】
図16に示した如く、本発明に係る第3実施例を一部変形させた変形例の光学レンズ用金型50Bは、第1金型(下型)60の一部が第3実施例に対して異なっており、第2金型(上型)70は第3実施例と同じである。
【0139】
この変形例では、第1金型60の小径ベース62に第1コア66を固着させずに、第1コア66を小径ベース62の軸中心に対して直角の方向に移動可能に取り付けている。
【0140】
即ち、第1金型60の小径ベース62の上面62bの中心部に、第1コア66の鍔部66bの径より僅かに大径の有底孔62eが穿設されている。
【0141】
また、第1コア66の下面66aの中心部に円錐状凹部66fが形成され、この円錐状凹部66f内と小径ベース62の有底孔62eの底面との間にスチールボール68を介挿することで、第1コア66の円筒部66cをこの軸方向に対して直角方向に移動自在に支持している。
【0142】
また、小径ベース62の上面62bに、第1コア66の円筒部66cが進入するための逃げ孔69a及び複数の押し棒65が進入するための逃げ孔69bを貫通させた押さえ板69を取り付けることで、第1コア66の鍔部66bが小径ベース62の有底孔62e内から脱落したり、又は、第1コア66が傾倒することを防止している。
【0143】
従って、第1コア66の円筒部66cを、第2コア72を嵌め込んだ薄肉リング状スリーブ71の孔71a内に挿入する場合に、第1コア66の円筒部66cの上端部66dのコーナーを僅かにR取り又は面取りした部位が薄肉リング状スリーブ71の孔71a内に添接する動作に伴って、第1コア66の鍔部66bがスチールボール68を介して左右方向(矢印方向)に移動することで第1コア66の円筒部66cの第2コア72の円筒部72cへの芯だしが容易になるものである。
【0144】
【発明の効果】
以上詳述した本発明に係る光学レンズの成形方法及び光学レンズ用金型によると、光学レンズの第1面を転写するために第1コアの円筒部の端部に形成した第1レンズ転写面と、光学レンズの第2面を転写するために第1コアの円筒部と同径な第2コアの円筒部の端部に形成した第2レンズ転写面とを同一中心軸上で互いに対向させて、第2コアの円筒部を嵌め込み且つ第1,第2コアの径方向に弾性変位可能な予圧付加部材内に第1コアの円筒部を挿入し、予圧付加部材内で第2コアの円筒部の端部に第1コアの円筒部の端部を突き合わせた際に、予圧付加部材を第1,第2コアの径方向に弾性変位させて第1,第2コアの各円筒部に予圧を付加することで、予圧付加部材内への第1,第2コアの各円筒部の摺動用クリアランスを無くし、これにより、第1コアに形成した第1レンズ転写面の中心と、第2コアに形成した第2レンズ転写面の中心とが位置ズレしない。この結果、成形した光学レンズ(対物レンズ)の第1面の中心と第2面の中心とが位置ズレしないで位置ズレ量(偏心量)を±1μm以下に抑えることができる。これにより、光学レンズを例えば超高密度光ディスク用の対物レンズとして成形した場合に、成形した対物レンズの第1面の中心と第2面1bの中心との位置ズレ量(偏心量)を±1μm以下に抑えることで、信号面が1層構造の超高密度光ディスクは勿論のこと、信号面が2層構造の超高密度光ディスクにも対応可能となる。
【0145】
この際、上記した予圧付加部材は、請求項3に記載したように、円筒状のリテーナーの周面に沿って複数のボールベアリングを支持したボールベアリング体を用い、複数のボールベアリングを互いに突き合わせた第1,第2コアの各円筒部に直接添接させ、且つ、複数のボールベアリングを第1,第2コアの径方向に弾性変位させて第1,第2コアの各円筒部に予圧を付加する構造でも良い。
【0146】
また、上記した予圧付加部材は、請求項4に記載したように、薄肉リング状スリーブと、円筒状のリテーナーの周面に沿って複数のボールベアリングを支持したボールベアリング体とを用い、薄肉リング状スリーブの孔内で第1,第2コアの各円筒部を突き合わせた際に、複数のボールベアリングを薄肉リング状スリーブの外周面に添接させ、且つ、複数のボールベアリングを第1,第2コアの径方向に弾性変位させて薄肉リング状スリーブを介して第1,第2コアの各円筒部に予圧を付加する構造でも良い。
【0147】
また、上記した予圧付加部材は、請求項5に記載したように、薄肉リング状スリーブと、円錐状コレットと、コレット締め上げ部材とを用い、薄肉リング状スリーブの外周部に第1,第2コアの径方向に弾性変位可能な円錐状コレットを嵌め込むと共に、円錐状コレットの円錐状外周面に沿ってコレット締め上げ部材を移動可能に設けて、薄肉リング状スリーブの孔内で第1,第2コアの各円筒部を突き合わせた際に、コレット締め上げ部材で円錐状コレットを第1,第2コアの径方向に締め上げて、薄肉リング状スリーブを介して第1,第2コアの各円筒部に予圧を付加する構造でも良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光学レンズの成形方法及び光学レンズ用金型を適用して成形される光学レンズを説明するための図である。
【図2】本発明に係る第1実施例の光学レンズの成形方法及び光学レンズ用金型を説明するために、第1金型(下型)と第2金型(上型)とを分離させた成形前の状態を模式的に示した縦断面図である。
【図3】本発明に係る第1実施例において、第1金型と第2金型とを合体させて光学レンズを成形する状態を模式的に示した縦断面図である。
【図4】本発明に係る第1実施例において、図2及び図3に示したボールべアリング体と、第1コア(下コア)と、第2コア(上コア)とをそれぞれ示した斜視図である。
【図5】本発明に係る第1実施例において、第2金型の有底孔内に嵌め込んだボールべアリング体のリテーナーに支持した複数のボールべアリングに沿って第1コアを挿入した際に、第1コアの移動量と最下部のボールべアリングの移動量とを説明するために模式的に示した図である。
【図6】第1実施例の光学レンズの成形方法を説明するための動作フロー図である。
【図7】本発明に係る第1実施例を一部変形させた変形例において、第1金型と第2金型とを合体させて対物レンズを成形する状態を模式的に示した縦断面図である。
【図8】本発明に係る第2実施例の光学レンズの成形方法及び光学レンズ用金型を説明するために、第1金型(下型)と第2金型(上型)とを分離させた成形前の状態を模式的に示した縦断面図である。
【図9】本発明に係る第2実施例において、第1金型と第2金型とを合体させて光学レンズを成形する状態を模式的に示した縦断面図である。
【図10】第2実施例の光学レンズの成形方法を説明するための動作フロー図である。
【図11】本発明に係る第2実施例を一部変形させた変形例において、第1金型と第2金型とを合体させて対物レンズを成形する状態を模式的に示した縦断面図である。
【図12】本発明に係る第3実施例の光学レンズの成形方法及び光学レンズ用金型を説明するために、第1金型(下型)と第2金型(上型)とを分離させた成形前の状態を模式的に示した縦断面図である。
【図13】本発明に係る第3実施例において、第1金型と第2金型とを合体させて光学レンズを成形する状態を模式的に示した縦断面図である。
【図14】図12及び図13に示した円錐状コレットを示した斜視図である。
【図15】第3実施例の光学レンズの成形方法を説明するための動作フロー図である。
【図16】本発明に係る第3実施例を一部変形させた変形例において、第1金型と第2金型とを合体させて対物レンズを成形する状態を模式的に示した縦断面図である。
【図17】従来例における光学レンズの成形金型の構造を示す模式図である。
【図18】従来例において、成形完了時での光学レンズの成形金型の状態図である。
【符号の説明】
1…光学レンズ(対物レンズ)、1a…第1面1a、1b…第2面、
2…超高密度光ディスク、2a…レーザービーム入射面、2b…信号面、
10A…第1実施例の光学レンズ用金型、
10B…第1実施例を一部変形させた変形例の光学レンズ用金型、
20…第1金型(下型)、20a…下面、20b…鍔部、20c…円筒部、
20d…上面、20e…有底孔、20f…有底孔、
21…第1コア(下コア)、21a…下面、21b…鍔部、21c…円筒部、
21d…上端部、21e…第1レンズ転写面、
23…球状の光学ガラス素材、24…スチールボール、25…押さえ板、
30…第2金型(上型)、30a…上面、30b…鍔部、30c…円筒部、
30d…下面、30e…有底孔、
31…第2コア(上コア)、31a…上面、31b…鍔部、31c…円筒部、
31d…下端部、31e…第2レンズ転写面、
33…リテーナー、34…ボールべアリング、
35…リテーナー支持板、
40A…第2実施例の光学レンズ用金型、
40B…第2実施例を一部変形させた変形例の光学レンズ用金型、
41…薄肉リング状スリーブ、41a…孔、41b…外周面、
42…圧縮バネ、
50A…第2実施例の光学レンズ用金型、
50B…第2実施例を一部変形させた変形例の光学レンズ用金型、
60…第1金型(下型)、
61…大径ベース、61a…上面、61b…大径有底孔、61c…挿脱孔、
62…小径ベース、62a…下面、62b…上面、62c…有底孔、
63…Oリング、64…ピストン、65…押し棒、
66…第1コア(下コア)、66a…下面、66b…鍔部、66c…円筒部、
66d…上端部、66e…第1レンズ転写面、
68…スチールボール、69…押さえ板、
70…第2金型(上型)、70a…上面、70b…鍔部、70c…円筒部、
70d…下面、70e…大径有底孔、7f…小径有底孔、
71…薄肉リング状スリーブ、71a…孔、71b…外周面、
72…第2コア(上コア)、72a…上面、72b…鍔部、72c…円筒部、
72d…下端部、72e…第2レンズ転写面、
74…円錐状コレット、74a…中央貫通孔、74b…円錐状外周面、
74c…上面、74d…下面、74e…第1スリット、74f…第2スリット、 75…コレット締め上げ部材、75a…中央円錐孔、
76…落下防止板、
BB…ボールべアリング体。
Claims (6)
- 光学レンズの第1面を転写するために第1コアの円筒部の端部に形成した第1レンズ転写面と、前記光学レンズの第2面を転写するために前記第1コアの円筒部と同径な第2コアの円筒部の端部に形成した第2レンズ転写面とを同一中心軸上で互いに離間して対向させるステップと、
前記第1コアの第1レンズ転写面上に球状の光学ガラス素材を載置するステップと、
前記第1コアの第1レンズ転写面上に球状の光学ガラス素材を載置した後に、前記第2コアの円筒部を嵌め込み且つ第1,第2コアの径方向に弾性変位可能な予圧付加部材内に前記第1コアの円筒部を挿入し、前記予圧付加部材内で前記第2コアの円筒部の端部に前記第1コアの円筒部の端部を突き合わせた際に、前記予圧付加部材を前記第1,第2コアの径方向に弾性変位させて前記第1,第2コアの各円筒部に予圧を付加することで、前記予圧付加部材内への前記第1,第2コアの各円筒部の摺動用クリアランスを無くすステップと、
前記光学ガラス素材を前記第1,第2レンズ転写面間で軟化させた後に冷却して前記光学レンズを成形するステップとを有する光学レンズの成形方法。 - 光学レンズの第1面を転写するために第1コアの円筒部の端部に形成した第1レンズ転写面と、前記光学レンズの第2面を転写するために前記第1コアの円筒部と同径な第2コアの円筒部の端部に形成した第2レンズ転写面とを同一中心軸上で互いに離間して対向させ、且つ、前記第1コアの第1レンズ転写面上に球状の光学ガラス素材を載置した後に、前記第2コアの円筒部の端部に前記第1コアの円筒部の端部を突き合わせて、前記光学ガラス素材を前記第1,第2レンズ転写面間で軟化させた後に冷却して前記光学レンズを成形する光学レンズ用金型において、
前記第1コアを取り付けた第1金型と、
前記第2コアを円筒部の有底孔内に取り付けた第2金型と、
前記第2金型の有底孔内で第1,第2コアの径方向に弾性変位可能に取り付けられ、一端側に前記第2コアの円筒部を嵌め込み、且つ、他端側に前記第1コアの円筒部の挿入を許容する予圧付加部材とを備え、
成形時に、球状の前記光学ガラス素材を前記第1レンズ転写面上に載置した前記第1コアの円筒部を前記予圧付加部材の他端側から挿入して、前記予圧付加部材内で前記第2コアの円筒部に前記第1コアの円筒部を突き合わせた際に、前記予圧付加部材を前記第1,第2コアの径方向に弾性変位させて前記第1,第2コアの各円筒部に予圧を付加することで、前記予圧付加部材内への前記第1,第2コアの各円筒部の摺動用クリアランスを無くしたことを特徴とする光学レンズ用金型。 - 光学レンズの第1面を転写するために第1コアの円筒部の端部に形成した第1レンズ転写面と、前記光学レンズの第2面を転写するために前記第1コアの円筒部と同径な第2コアの円筒部の端部に形成した第2レンズ転写面とを同一中心軸上で互いに離間して対向させ、且つ、前記第1コアの第1レンズ転写面上に球状の光学ガラス素材を載置した後に、前記第2コアの円筒部の端部に前記第1コアの円筒部の端部を突き合わせて、前記光学ガラス素材を前記第1,第2レンズ転写面間で軟化させた後に冷却して前記光学レンズを成形する光学レンズ用金型において、
前記第1コアを取り付けた第1金型と、
前記第2コアを円筒部の有底孔内に取り付けた第2金型と、
複数のボールベアリングを支持した円筒状のリテーナーの内周側及び外周側に各ボールベアリングの一部を回転可能に露出させた状態で前記第2金型の有底孔の内周面に沿って複数の前記ボールベアリングを転動可能に嵌め込み、且つ、成形前の初期状態時に前記リテーナーの一端側のいくつかの前記ボールベアリングが前記第2コアの円筒部に添接するも、前記リテーナーの他端側に位置する残りの前記ボールベアリングに対して前記第1コアの円筒部の挿入を許容するボールベアリング体とを備え、
成形時に、球状の前記光学ガラス素材を前記第1レンズ転写面上に載置した前記第1コアの前記ボールベアリング体内への挿入動作に伴って、リテーナーと一体に複数の前記ボールベアリングが前記第2金型の有底孔の内周面及び第1,第2コアの各円筒部に沿って前記第1,第2コアの各円筒部を突き合わせた側に移動すると共に、複数の前記ボールベアリングを前記第1,第2コアの径方向に弾性変位させて前記第1,第2コアの各円筒部に予圧を付加することで、複数の前記ボールベアリングへの前記第1,第2コアの各円筒部の摺動用クリアランスを無くしたことを特徴とする光学レンズ用金型。 - 光学レンズの第1面を転写するために第1コアの円筒部の端部に形成した第1レンズ転写面と、前記光学レンズの第2面を転写するために前記第1コアの円筒部と同径な第2コアの円筒部の端部に形成した第2レンズ転写面とを同一中心軸上で互いに離間して対向させ、且つ、前記第1コアの第1レンズ転写面上に球状の光学ガラス素材を載置した後に、前記第2コアの円筒部の端部に前記第1コアの円筒部の端部を突き合わせて、前記光学ガラス素材を前記第1,第2レンズ転写面間で軟化させた後に冷却して前記光学レンズを成形する光学レンズ用金型において、
前記第1コアを取り付けた第1金型と、
前記第2コアの円筒部の長さより長尺な孔を貫通して形成し、且つ、一端側の孔内に前記第2コアの円筒部を嵌め込み、且つ、他端側の孔内に前記第1コアの円筒部の挿入を許容する薄肉リング状スリーブと、
円筒部の有底孔内でこの有底孔の天面と前記薄肉リング状スリーブを嵌め込んだ前記第2コアの一端面との間に圧縮バネを介装して、成形前の初期状態時に前記圧縮バネの付勢力で前記第2コアを嵌め込んだ前記薄肉リング状スリーブの他端側を前記有底孔から突出させた状態で、前記薄肉リング状スリーブと一体に前記第2コアを前記有底孔内に移動可能に取り付けた第2金型と、
複数のボールベアリングを支持した円筒状のリテーナーの内周側及び外周側に各ボールベアリングの一部を回転可能に露出させた状態で前記第2金型の有底孔の内周面に沿って複数の前記ボールベアリングを転動可能に嵌め込み、且つ、複数の前記ボールベアリングを前記薄肉リング状スリーブの外周面に添接させたボールベアリング体とを備え、
成形時に、球状の前記光学ガラス素材を前記第1レンズ転写面上に載置した前記第1コアの円筒部を前記薄肉リング状スリーブの他端側の孔内に挿入して、この孔内で前記第1コアの円筒部を前記第2コアの円筒部に突き当てながら前記圧縮バネに抗して前記薄肉リング状スリーブが前記第2金型の有底孔内の天面側に向かって移動する動作に伴って、前記リテーナーと一体に複数の前記ボールベアリングが前記第2金型の有底孔の内周面及び前記薄肉リング状スリーブの外周面に沿って第1,第2コアの各円筒部を突き合わせた側に移動すると共に、複数の前記ボールベアリングを前記第1,第2コアの径方向に弾性変位させて前記薄肉リング状スリーブを介して前記第1,第2コアの各円筒部に予圧を付加することで、前記薄肉リング状スリーブの孔内への前記第1,第2コアの各円筒部の摺動用クリアランスを無くしたことを特徴とする光学レンズ用金型。 - 光学レンズの第1面を転写するために第1コアの円筒部の端部に形成した第1レンズ転写面と、前記光学レンズの第2面を転写するために前記第1コアの円筒部と同径な第2コアの円筒部の端部に形成した第2レンズ転写面とを同一中心軸上で互いに離間して対向させ、且つ、前記第1コアの第1レンズ転写面上に球状の光学ガラス素材を載置した後に、前記第2コアの円筒部の端部に前記第1コアの円筒部の端部を突き合わせて、前記光学ガラス素材を前記第1,第2レンズ転写面間で軟化させた後に冷却して前記光学レンズを成形する光学レンズ用金型において、
前記第1コアを取り付けた第1金型と、
前記第2コアの円筒部の長さより長尺な孔を貫通して形成し、且つ、一端側の孔内に前記第2コアの円筒部を嵌め込み、且つ、他端側の孔内に前記第1コアの円筒部の挿入を許容する薄肉リング状スリーブと、
前記薄肉リング状スリーブに嵌め込んだ前記第2コアを円筒部の有底孔内に取り付けた第2金型と、
前記第2金型の有底孔内に設けられ、且つ、前記第2コアを嵌め込んだ前記薄肉リング状スリーブの外周部を中央貫通孔内に嵌め込むと共に、円錐状外周面を第1,第2コアの径方向に弾性変位可能に形成した円錐状コレットと、
前記第2金型の有底孔内で前記円錐状コレットの円錐状外周面に嵌め込まれ、且つ、前記第1金型側に設けた押し上げ手段によって前記円錐状コレットの円錐状外周面に沿って移動するコレット締め上げ部材とを備え、
成形時に、球状の前記光学ガラス素材を前記第1レンズ転写面上に載置した前記第1コアの円筒部を前記薄肉リング状スリーブの他端側の孔内に挿入して、この孔内で第1,第2コアの各円筒部を突き合わせた際に、前記押し上げ手段で前記コレット締め上げ部材を前記円錐状コレットの円錐状外周面に沿って押し上げながら前記円錐状コレットの円錐状外周面を前記第1,第2コアの径方向に締め上げて、前記薄肉リング状スリーブを介して前記第1,第2コアの各円筒部に予圧を付加することで、前記薄肉リング状スリーブの孔内への前記第1,第2コアの各円筒部の摺動用クリアランスを無くしたことを特徴とする光学レンズ用金型。 - 請求項2〜請求項5のうちいずれか1項記載の光学レンズ用金型において、
前記第1金型上で前記第1コアを軸方向に対して直角な方向に移動可能に取り付けて、前記第1コアの挿入動作に伴って前記第1コアの円筒部を前記第2コアの円筒部に対して芯だし可能にしたことを特徴とする光学レンズ用金型。
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