JP4214792B2 - 遷移金属化合物、オレフィン重合用触媒成分及びα−オレフィン重合体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、遷移金属化合物、当該遷移金属化合物から成るα−オレフィン重合用触媒成分とこれを含むα−オレフィン重合用触媒、およびそれを使用したα−オレフィン重合体の製造方法に関するものである。さらには、塩素のようなハロゲン原子を含有せず、プロピレン重合体系基材に対し優れた接着性や塗装性を有するα−オレフィン重合体の製造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プロピレン重合体やプロピレン・α−オレフィン共重合体は安価であり、しかも、機械的物性、耐熱性、耐薬品性、耐水性などに優れていることから、広い分野で使用されている。しかしながら、こうしたプロピレン系重合体は、分子中に極性基を持たないため一般に低極性であり、塗装や接着が困難であるという欠点を有している。この欠点を改善するために、該プロピレン系重合体からなる成形体の表面を薬剤などで化学的に処理したり、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理などの手法で成形体表面を酸化処理するといった種々の手法が試みられてきている。しかるに、これらの方法では、特殊な装置が必要であるばかりでなく、また、塗装性や接着性の改良効果が十分であるとは言えない。
【0003】
そこで、比較的簡便な方法で、プロピレン系重合体と良好な塗装性や接着性を有するものとして、いわゆる塩素化ポリプロピレンが開発されてきた。塩素化ポリプロピレンは、一般にトルエンやキシレンのような炭化水素溶媒に可溶であり、しかも、基材となるプロピレン系重合体との接密着性が比較的良好である。また、分子に炭素−塩素結合に由来する極性が付与されていることにより、該塩素化ポリプロピレンの炭化水素溶液を、基材となるプロピレン系重合体表面に塗布し、溶媒を除去するという比較的簡単な手法で、プロピレン系重合体表面にこの塩素化プロピレンの被膜を形成し、これを介して塗装を行ったり、他の樹脂を接着することができる。なお、塩素化ポリプロピレンを、さらに極性モノマーのグラフト共重合により変性した変性塩素化ポリプロピレンは、塗装性や接着性の改良効果がさらに優れていることが知られている。
【0004】
このように、塩素化ポリプロピレンや変性塩素化ポリプロピレンにより、プロピレン系重合体の塗装性や接着性を、比較的簡便に改良することができるが、問題点として、塩素化ポリプロピレンが塩素を大量に含有している点が挙げられる。近年、焼却にともない有害物質が発生するとして、塩化ビニル樹脂の使用が社会的問題となっており、塩素化ポリプロピレンについても、同様の問題が指摘されている。従って塩素化ポリプロピレンの代替樹脂の製造法の開発が強く望まれている。
【0005】
塩素を含有せず、しかもポリプロピレンに対して塗装性および接着性を有する樹脂は、当初、チーグラー・ナッタ触媒を用いたプロピレンの重合によって得られたポリプロピレンの溶剤抽出によって得られた(例えば、特許文献1参照)。また、アイソタクティックポリプロピレン(iPP)を水素雰囲気且つ高温下で、パラジウム触媒等を用いてエピメリ化することによっても同様の樹脂が得られると報告されている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、これらの方法で得られる重合体は、溶解性度が充分ではなかったり、タック性が悪いものであった。
【0006】
α−オレフィン、特にプロピレンの重合において、メタロセン錯体は、その反応場を制御することで立体特異的重合が可能であったり、重合活性が高かったり、また、狭い分子量分布の重合体を与えることが出来ることが報告されている。このため、様々なメタロセン錯体が開発されてきた。
たとえば、架橋C2対称性錯体であるジクロロ{1,1'−ジメチルシリレンビス[2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4H−アズレニル]}ハフニウムを用いてプロピレンを重合して、非常に重合活性が高く、シャープな分子量分布の重合体を製造したこと(例えば、特許文献2参照)、またアズレン骨格に環がもう一つ縮合した配位子を有するC1対称性錯体2,2−プロピリデン(3−t−ブチルシクロペンタジエニル)(10−(5−フェニル−5−ヒドロベンズ[a]アズレニル)ジルコニウムジクロリドを用いた重合例(例えば、特許文献3参照)が報告されている。
【0007】
さらに、シクロペンタジエン環に環状の置換基を有し、少なくとも一方がアズレン環である錯体、ジクロロ{1,1'−ジメチルシリレンビス[2,4−ジメチル−4H−アズレニル]}ジルコニウムを用いた重合例(例えば、特許文献4参照)、少なくとも一方がアズレン環である錯体、ジクロロ{1,1'−ジメチルシリレン[2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル]}ジルコニウムを用いた重合例(例えば、特許文献5参照)も報告されている。
【0008】
【特許文献1】
米国特許第3175999号明細書
【特許文献2】
特開2000−95791号公報
【特許文献3】
特開2000−319315号公報
【特許文献4】
特開平6−239914号公報
【特許文献5】
特開平10−226712号公報
【非特許文献1】
J.Am.Chem.Soc.、1975年、第97巻、p.1018-
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の金属錯体によって得られた重合体は非常に結晶性が高く、室温ではトルエンなどの溶媒にはほとんど溶解せず、接着性、塗装性が悪い等の問題点があった。
更に、多くの架橋C2対称性錯体や、両方のシクロペンタジエニル環が架橋位に対して非対称なC1対称性錯体は、ラセミ・メソ(アンチ・シン)の構造異性体を有していて、その分離は非常に困難であったり、所望の構造異性体の収率が非常に低いという欠点あった。また、構造異性体を分離しないと、これを用いて得られた重合体の物性が低い場合がしばしばあった。
【0010】
本発明は上記の問題点に鑑みて、塩素のようなハロゲンを含有しなくても基材としてのプロピレン系重合体に対して良好な接着性、塗装性を有するα−オレフィン重合体製造方法の提供を課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、アズレンの4位に比較的小さい置換基を有するアズレニル基と、架橋位に対して対称な置換基を有してもよいシクロペンタジエニル基とが架橋した新規な構造を有するC1対称性の遷移金属化合物を触媒成分とすることによって、驚くべきことに、塩素のようなハロゲンを含有せず、しかも基材としてのプロピレン系重合体に対して良好な接着性、塗装性を有するα−オレフィン重合体を効率よく製造できることを見出し、本発明を達成した。
【0012】
すなわち、本発明の第1の要旨は、下記一般式(I)で表されるC1対称性の遷移金属化合物に存する。
【0013】
【化4】
【0014】
一般式(I)中、R1、R2及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基である。隣接するR1及びR2は互いに環を形成してもよい;
R3は、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基;
R5は炭素数4〜9の飽和または不飽和の二価の炭化水素基;
R6は、水素原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基;
R7は、炭素数1〜5の、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基;
nは、0またはR5の炭素数の2倍以下の整数(ただし、nが2以上の場合、R6同士が任意の位置で結合して環構造を形成していてもよい。);
Qは炭素数1〜20の二価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいオリゴシリレン基、及び炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいゲルミレン基から選ばれる架橋基であり、前記のシリレン基、オリゴシリレン基またはゲルミレン基上に2個の炭化水素基が存在する場合は、それらが互いに結合して環構造を形成していてもよい;
X及びYは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基または窒素含有炭化水素基から選ばれるMとσ結合を形成する配位子であって、前記の炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基または窒素含有炭化水素基の炭素数は1〜20である;
Mは周期律表第4〜6族の遷移金属を、各々示す。
【0015】
本発明の第2の要旨は、下記一般式(II)で表される新規なC1対称性の遷移金属化合物に存する。
【0016】
【化5】
【0017】
一般式(II)中、R1、R2及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基である。隣接するR1及びR2 は互いに環を形成してもよい;
R3は、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基;
R7は、炭素数1〜5の、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基;
R8〜R11はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基。隣接するR8〜R11は互いに環を形成してもよい;
Qは炭素数1〜20の二価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいオリゴシリレン基、及び炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいゲルミレン基から選ばれる架橋基であり、前記のシリレン基、オリゴシリレン基またはゲルミレン基上に2個の炭化水素基が存在する場合は、それらが互いに結合して環構造を形成していてもよい;
X及びYは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基または窒素含有炭化水素基から選ばれるMとσ結合を形成する配位子であって、前記の炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基または窒素含有炭化水素基の炭素数は1〜20である;
Mは周期律表第4〜6族の遷移金属を、各々示す。
【0018】
本発明の第3の要旨は、下記一般式(III)で表される新規なC1対称性の遷移金属化合物に存する。
【0019】
【化6】
【0020】
一般式(III)中、R1、R2及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基である。隣接するR1及びR2は互いに環を形成してもよい;
R3は、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基;
R7は、炭素数1〜5の、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基;
R12〜R19はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基。隣接するR12〜R19は互いに環を形成してもよい;
Qは炭素数1〜20の二価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいオリゴシリレン基、及び炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいゲルミレン基から選ばれる架橋基であり、前記のシリレン基、オリゴシリレン基またはゲルミレン基上に2個の炭化水素基が存在する場合は、それらが互いに結合して環構造を形成していてもよい;
X及びYは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基または窒素含有炭化水素基から選ばれるMとσ結合を形成する配位子であって、前記の炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基または窒素含有炭化水素基の炭素数は1〜20である;
Mは周期律表第4〜6族の遷移金属を、各々示す。
【0021】
本発明の第4の要旨は、上記の一般式(I)、(II)又は(III)で表されるC1対称性の遷移金属化合物から成ることを特徴とするオレフィン重合用触媒成分に存する。
本発明の第5の要旨は、次の成分(A)及び(B)と任意に成分(C)を含むことを特徴とするα−オレフィン重合用触媒に存する。
【0022】
成分(A):上述の一般式(I)、(II)又は(III)で表されるC1対称性の遷移金属化合物
成分(B):有機アルミニウムオキシ化合物、成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸からなる群より選ばれる化合物
成分(C):微粒子担体
本発明の第6の要旨は、次の成分(A)及び(D)と任意に成分(E)を含むことを特徴とするα−オレフィン重合用触媒に存する。
【0023】
成分(A):上述の一般式(I)、(II)又は(III)で表されるC1対称性の遷移金属化合物
成分(D):珪酸塩を除くイオン交換性層状化合物または無機珪酸塩からなる群より選ばれる化合物
成分(E):有機アルミニウム化合物
そして、本発明の第7の要旨は、上記の何れかの触媒とα−オレフィンとを接触させて重合または共重合を行うことを特徴とするα−オレフィン重合体の製造方法に存する。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係るC1対称性の遷移金属化合物は、下記一般式(I)で表され、このものはα−オレフィンの重合触媒成分として好適に用いられる。
【0025】
【化7】
【0026】
一般式(I)中、2つのR1及び2つのR2はそれぞれ同一であり、必要以上に嵩高くないものであればよく、例えば水素原子、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基である。炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基の炭素数は通常1〜10であり、1〜8が好ましく、1〜6が最も好ましい。
【0027】
炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル等のアルキル基、ビニル、プロペニル、シクロヘキセニル等のアルケニル基、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル等のアリールアルキル基、trans−スチリル等のアリールアルケニル基、フェニル、トリル、ジメチルフェニル、エチルフェニル、トリメチルフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル等のアリール基などが挙げられる。
【0028】
ケイ素含有炭化水素基の具体例としては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、t−ブチルジメチルシリル等のトリアルキルシリル基、トリメチルシリルメチル、トリエチルシリルメチル等のトリアルキルシリルメチル基、ジメチルフェニルシリルメチル、ジメチルトリルシリルメチル等のジ(アルキル)(アリール)シリルメチル基などが挙げられる。
【0029】
ハロゲン化炭化水素基のハロゲン原子は特に限定されないが、通常フッ素、塩素または臭素であり、塩素またはフッ素が好ましい。ハロゲン化炭化水素基としては、ハロゲン原子が上記の炭化水素基の任意の位置に置換した化合物が挙げられる。その具体例としては、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチル、トリブロモメチル、ヨードメチル、2, 2, 2−トリフルオロエチル、1,1,2,2,−テトラフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、ペンタクロロエチル、ペンタフルオロプロピル、ノナフルオロブチル、トリフルオロビニル、1,1−ジフルオロベンジル、1,1,2,2,−テトラフルオロフェニルエチル、2−、3−、4−フルオロフェニル、2−、3−、4−クロロフェニル、2−、3−、4−ブロモフェニル、2, 4−、3, 5−、2, 6−、2, 5−ジフルオロフェニル、2, 4−、3, 5−、2, 6−、2, 5−ジクロロフェニル、2, 4, 6−トリフルオロフェニル、2, 4, 6−トリクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、ペンタクロロフェニル、4−フルオロナフチル、4−クロロナフチル、2,4−ジフルオロナフチル、ヘプタフルオロ−1−ナフチル、ヘプタクロロ−1−ナフチル、2−、3−、4−トリフルオロメチルフェニル、2−、3−、4−トリクロロメチルフェニル、2, 4−、3, 5−、2, 6−、2, 5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル、2, 4−、3, 5−、2, 6−、2, 5−ビス(トリクロロメチル)フェニル、2, 4, 6−トリス(トリフルオロメチル)フェニル基などが挙げられる。(なお、本明細書中において、化合物の表示は誤解を生じない限り、一部省略した表示を用いることがある。例えば「2−、3−、4−フルオロフェニル」は、「2−フルオロフェニル」、「3−フルオロフェニル」、「4−フルオロフェニル」の3つの化合物を意味している。)
これらの中では、R1及びR2としては、水素原子、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル等のアルキル基、フェニル等のアリール基、トリメチルシリル、トリエチルシリル等のトリアルキルシリル基、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、2, 2, 2−トリフルオロエチル、1, 1,2,2−テトラフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、ペンタクロロエチル、ペンタフルオロプロピル、ノナフルオロブチル、2−、3−、4−フルオロフェニル、2−、3−、4−クロロフェニル等のハロゲン化炭化水素基が好ましく、水素原子、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、シクロヘキシル等のアルキル基、フェニル基、トリメチルシリル基、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチルのハロゲン化炭化水素基が更に好ましく、水素原子、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、シクロヘキシル等のアルキル基、フェニル基、トリメチルシリル基が特に好ましい。
【0030】
R1及びR2のうち隣接するものは互いに結合して環を形成してもよい。ただし、シクロペンタジエン環上のR1とR2が2組ともに結合して環を形成する場合は、架橋位に対して対称となる同一な環を形成する。シクロペンタジエン環の2つの置換基が結合して形成した2価基は、炭素数3〜9、好ましくは炭素数4〜6の飽和または不飽和の2価の炭化水素基である。従って、形成される環は5〜11員環であって、好ましくは6〜8員環である。
【0031】
ペンタジエン環の2つの置換基が結合して形成した2価基の具体例としては、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン等の2価の飽和炭化水素基、プロペニレン、2−ブテニレン、1, 3−ブタジエニレン、1−ペンテニレン、2−ペンテニレン、1, 3−ペンタジエニレン、1, 4−ペンタジエニレン、1−ヘキセニレン、2−ヘキセニレン、3−ヘキセニレン、1, 3−ヘキサジエニレン、1, 4−ヘキサジエニレン、1, 5−ヘキサジエニレン、2, 4−ヘキサジエニレン、2, 5−ヘキサジエニレン、1, 3, 5−ヘキサトリエニレン等の2価の不飽和炭化水素基などが挙げられる。これらのうち、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロペニレン基、1, 3−ブタジエニレン基、ペンタメチレン基、1, 3−ペンタジエニレン基、1, 4−ペンタジエニレン基または1, 3, 5−ヘキサトリエニレン基が好ましく、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロペニレン基、1, 3−ブタジエニレン基が更に好ましく、テトラメチレン基または1, 3−ブタジエニレン基が特に好ましい。
【0032】
R3は炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基を示す。R3は小さい方が良く、その炭素数は通常1〜10であり、1〜8が好ましく、1〜6が更に好ましく、1〜4が特に好ましい。
R3が示す炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のアルキル基、ビニル、プロペニル、シクロヘキセニル等のアルケニル基の他、フェニル基などが挙げられる。
【0033】
R3が示すケイ素含有炭化水素基の具体例としては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、t−ブチルジメチルシリル等のトリアルキルシリル基などが挙げられる。
R3が示すハロゲン化炭化水素基は、上記の炭化水素基の任意の位置にハロゲン原子が置換したものであり、ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のいずれであってもよい。その具体例としては、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチル、トリブロモメチル、ヨードメチル、2, 2, 2−トリフルオロエチル、1,1,2,2,−テトラフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、ペンタクロロエチル、ペンタフルオロプロピル、ノナフルオロブチル、トリフルオロビニル、2−、3−、4−フルオロフェニル、2−、3−、4−クロロフェニル、2−、3−、4−ブロモフェニル、2, 4−、3, 5−、2, 6−、2, 5−ジフルオロフェニル、2, 4−、3, 5−、2, 6−、2, 5−ジクロロフェニル、2, 4, 6−トリフルオロフェニル、2, 4, 6−トリクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、ペンタクロロフェニルなどが挙げられる。
【0034】
これらの中でもメチル、エチル、プロピル、ブチル等の炭素数1〜4の炭化水素基が特に好ましい。
R4は、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基であり、特に水素が好ましい。
また、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基のなかでは、炭化水素基が好ましい。大きさは必要以上に嵩高くないものであればよく、炭素数は通常1〜6であって、1〜4が好ましい。
【0035】
R4が示す炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のアルキル基、ビニル、プロペニル、シクロヘキセニル等のアルケニル基の他、フェニル基などが挙げられる。
【0036】
R5は、炭素数4以上の飽和または不飽和の二価の炭化水素基である。通常は炭素数4〜9の飽和または不飽和の2価の炭化水素基であり、従って形成される縮合環は7〜12員環となる。好ましくはこの縮合環は7〜10員環である。
R6は、特に嵩高い基で無ければよく、例えば水素原子、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基を示す。炭化水素基およびケイ素含有炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基の炭素数は通常1〜10であり、1〜8が好ましく、1〜6が最も好ましい。
【0037】
炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル等のアルキル基、ビニル、プロペニル、シクロヘキセニル等のアルケニル基、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル等のアリールアルキル基、trans−スチリル等のアリールアルケニル基、フェニル、トリル、ジメチルフェニル、エチルフェニル、トリメチルフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル等のアリール基などが挙げられる。
【0038】
ケイ素含有炭化水素基の具体例としては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、t−ブチルジメチルシリル等のトリアルキルシリル基、トリメチルシリルメチル、トリエチルシリルメチル等のトリアルキルシリルメチル基、ジメチルフェニルシリルメチル、ジメチルトリルシリルメチル等のジ(アルキル)(アリール)シリルメチル基などが挙げられる。
【0039】
ハロゲン化炭化水素基は、ハロゲン原子が上記の炭化水素基の任意の位置に置換した化合物である。ハロゲンはフッ素、塩素または臭素が好ましく、中でもフッ素または塩素が好ましい。ハロゲン価炭化水素の具体例としては、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチル、トリブロモメチル、ヨードメチル、2, 2, 2−トリフルオロエチル、1,1,2,2,−テトラフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、ペンタクロロエチル、ペンタフルオロプロピル、ノナフルオロブチル、トリフルオロビニル、1,1−ジフルオロベンジル、1,1,2,2−テトラフルオロフェニルエチル、2−、3−、4−フルオロフェニル、2−、3−、4−クロロフェニル、2−、3−、4−ブロモフェニル、2, 4−、3, 5−、2, 6−、2, 5−ジフルオロフェニル、2, 4−、3, 5−、2, 6−、2, 5−ジクロロフェニル、2, 4, 6−トリフルオロフェニル、2, 4, 6−トリクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、ペンタクロロフェニル、4−フルオロナフチル、4−クロロナフチル、2,4−ジフルオロナフチル、ヘプタフルオロ−1−ナフチル、ヘプタクロロ−1−ナフチル、2−、3−、4−トリフルオロメチルフェニル、2−、3−、4−トリクロロメチルフェニル、2, 4−、3, 5−、2, 6−、2, 5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル、2, 4−、3, 5−、2, 6−、2, 5−ビス(トリクロロメチル)フェニル、2, 4, 6−トリス(トリフルオロメチル)フェニル基などが挙げられる。
【0040】
R6として好ましいのは、水素原子、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル等のアルキル基、フェニル等のアリール基、トリメチルシリル、トリエチルシリル等のトリアルキルシリル基、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、2, 2, 2−トリフルオロエチル、1,1,2,2,−テトラフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、ペンタクロロエチル、ペンタフルオロプロピル、ノナフルオロブチル、2−、3−、4−フルオロフェニル、2−、3−、4−クロロフェニル等のハロゲン化炭化水素基である。中でも水素原子、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、シクロヘキシル等のアルキル基、フェニル基、トリメチルシリル基、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチルのハロゲン化炭化水素基が更に好ましく、水素原子、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、シクロヘキシル等のアルキル基、フェニル基、トリメチルシリル基が特に好ましい。
【0041】
R7は、嵩高くない有機基である。それは小さい方が良く、具体的には、炭素数1〜5、特に1〜3の、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基である。
炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、シクロプロピル、シクロペンチル等のアルキル基、ビニル、プロペニル等のアルケニル基などが挙げられる。
【0042】
ハロゲン化炭化水素基は、ハロゲン原子が上記の炭化水素基の任意の位置に置換したものであり、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のいずれであってもよい。ハロゲン化炭化水素の具体例としては、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチル、トリブロモメチル、ヨードメチル、2, 2, 2−トリフルオロエチル、1,1,2,2,−テトラフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、ペンタクロロエチル、ペンタフルオロプロピル、ノナフルオロブチル、トリフルオロビニル基などが挙げられる。
【0043】
ケイ素含有炭化水素基の具体例としては、トリメチルシリル等のトリアルキルシリル基、トリメチルシリルメチル等のトリアルキルシリルメチル基などが挙げられる。
これらの中では、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、ビニル、プロペニル、シクロプロピル、シクロペンチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチル、トリブロモメチル、ヨードメチル、2, 2, 2−トリフルオロエチル、1,1,2,2,−テトラフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、ペンタクロロエチル、ペンタフルオロプロピル、ノナフルオロブチル、トリフルオロビニル、トリメチルシリル基が好ましく、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロプロピル、シクロペンチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、2, 2, 2−トリフルオロエチル、1,1,2,2,−テトラフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、ペンタクロロエチル、ペンタフルオロプロピル、ノナフルオロブチル基が更に好ましく、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、2, 2, 2−トリフルオロエチル、1,1,2,2,−テトラフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、ペンタクロロエチル、ペンタフルオロプロピル、ノナフルオロブチルが特に好ましい。
【0044】
R7が結合している炭素とR5とで形成されるシクロペンタジエニル環に縮合している置換基の具体例としては、ペンタメチレン、ヘキサメチレン等の2価の飽和炭化水素基、1−ペンテニレン、2−ペンテニレン、1, 3−ペンタジエニレン、1, 4−ペンタジエニレン、1−ヘキセニレン、2−ヘキセニレン、3−ヘキセニレン、1, 3−ヘキサジエニレン、1, 4−ヘキサジエニレン、1, 5−ヘキサジエニレン、2, 4−ヘキサジエニレン、2, 5−ヘキサジエニレン、1, 3, 5−ヘキサトリエニレン等の2価の不飽和炭化水素基などが挙げられる。これらのうち、ペンタメチレン基、1, 3−ペンタジエニレン基、1, 4−ペンタジエニレン基または1, 3, 5−ヘキサトリエニレン基が好ましく、ペンタメチレン基、1, 3−ペンタジエニレン基または1, 4−ペンタジエニレン基が更に好ましく、ペンタメチレン基、1, 3−ペンタジエニレン基が特に好ましい。
【0045】
nは0またはR5の炭素数の2倍以下の整数であって、0〜5が好ましい。nが2以上の整数の場合は、複数の基R6は、互いに同一でも異なっていても構わない。また、nが2以上の整数の場合は、それぞれ、R6同士が連結して新たな環構造を形成してもよい。
Qは架橋基であって、その具体例としては、二価の炭化水素基、または炭化水素基を有していてもよい、シリレン基、オリゴシリレン基、もしくはゲルミレン基であって、好ましくは、炭素数1〜20の二価の炭化水素基、または炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基、オリゴシリレン基、もしくはゲルミレン基の何れかである。上述のシリレン基、オリゴシリレン基またはゲルミレン基上に2個の炭化水素基が存在する場合は、それらが互いに結合して環構造を形成していてもよい。
【0046】
Qの具体例としては、メチレン、ジメチルメチレン、1,2−エチレン、1,3−トリメチレン、1,4−テトラメチレン、1,2−シクロへキシレン、1,4−シクロへキシレン等のアルキレン基;ジフェニルメチレン等のアリールアルキレン基;シリレン基;ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジ(n−プロピル)シリレン、ジ(i−プロピル)シリレン、ジ(シクロヘキシル)シリレン等のアルキルシリレン基;ジフェニルシリレン等のアリールシリレン基;テトラメチルジシリレン等のアルキルオリゴシリレン基;ゲルミレン基;上記の2価の炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基のケイ素をゲルマニウムに置換したアルキルゲルミレン基;アリールゲルミレン基などを挙げることが出来る。これらの中では、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基、または、炭素数1〜20の炭化水素基を有するゲルミレン基が好ましく、ジメチルメチレン基、1,2−エチレン、1,4−テトラメチレン、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジフェニルシリレン、ジメチルゲルミレン、ジエチルゲルミレン、ジフェニルゲルミレンが特に好ましい。
【0047】
X及びYは、それぞれ独立して、Mとσ結合を形成する配位子である。その具体例としては、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、アミノ基、置換アミノ基または窒素含有炭化水素基等である。炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、置換アミノ基、窒素含有炭化水素基の炭素数は1〜20が好ましい。
【0048】
ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のいずれであってもよい。
炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル等のアルキル基、ビニル、プロペニル、シクロヘキセニル等のアルケニル基、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル等のアリールアルキル基、trans−スチリル等のアリールアルケニル基、フェニル、トリル、ジメチルフェニル、エチルフェニル、トリメチルフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、アセナフチル、フェナントリル、アントリル等のアリール基が挙げられる。
【0049】
酸素含有炭化水素基の具体例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、シクロプロポキシ、ブトキシ等のアルコキシ基、フェノキシ、メチルフェノキシ、ジメチルフェノキシ、ナフトキシ等のアリロキシ基、フェニルメトキシ、ナフチルメトキシ等のアリールアルコキシ基、フリル基などの酸素含有複素環基などが挙げられる。
【0050】
置換アミノ基または窒素含有炭化水素基の具体例としては、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ等のアルキルアミノ基、フェニルアミノ、ジフェニルアミノ等のアリールアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ等のN−アルキル−N−アリールアミノ基、ピラゾリル、インドリル等の窒素含有複素環基などが挙げられる。
【0051】
ハロゲン化炭化水素基としては、上記の炭化水素基の任意の位置にハロゲン原子が置換したものが挙げられ、ハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のいずれであってもよい。具体例としては、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチル、トリブロモメチル、ヨードメチル、2, 2, 2−トリフルオロエチル、1,1,2,2,−テトラフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、ペンタクロロエチル、ペンタフルオロプロピル、ノナフルオロブチル、トリフルオロビニル、1, 1−ジフルオロベンジル、1, 1, 2, 2−テトラフルオロフェニルエチル、2−、3−、4−フルオロフェニル、2−、3−、4−クロロフェニル、2−、3−、4−ブロモフェニル、2, 4−、3, 5−、2, 6−、2, 5−ジフルオロフェニル、2, 4−、3, 5−、2, 6−、2, 5−ジクロロフェニル、2, 4, 6−トリフルオロフェニル、2, 4, 6−トリクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、ペンタクロロフェニル、4−フルオロナフチル、4−クロロナフチル、2, 4−ジフルオロナフチル、ヘプタフルオロ−1−ナフチル、ヘプタクロロ−1−ナフチル、2−、3−、4−トリフルオロメチルフェニル、2−、3−、4−トリクロロメチルフェニル、2, 4−、3, 5−、2, 6−、2, 5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル、2, 4−、3, 5−、2, 6−、2, 5−ビス(トリクロロメチル)フェニル、2, 4, 6−トリス(トリフルオロメチル)フェニル、4−トリフルオロメチルナフチル、4−トリクロロメチルナフチル、2, 4−ビス(トリフルオロメチル)ナフチル基などが挙げられる。
【0052】
ケイ素含有炭化水素基の具体例としては、トリメチルシリルメチル、トリエチルシリルメチル等のトリアルキルシリルメチル基、ジメチルフェニルシリルメチル、ジエチルフェニルシリルメチル、ジメチルトリルシリルメチル等のジ(アルキル)(アリール)シリルメチル基などが挙げられる。
好ましいX及びYは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、または炭素数1〜20の置換アミノ基もしくは窒素含有炭化水素基である。これらの中でも水素原子、塩素原子、メチル基、i−ブチル基、フェニル基、ベンジル基、ジメチルアミノ基またはジエチルアミノ基が特に好ましい。
【0053】
Mは、周期表第4〜6族の遷移金属を示し、好ましくは、チタン、ジルコニウム、ハフニウムの4族の遷移金属、更に好ましくはジルコニウム又はハフニウムである。
本発明に係るC1対称性の遷移金属化合物の中でも、以下の一般式(II)または及び(III)で表される、R5の炭素数が4である、C1対称性の遷移金属化合物が好ましい。
【0054】
【化8】
【0055】
一般式(II)中、R1〜R4、R7、Q、XおよびYは、一般式(I)と同義である。R8〜R11はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、またはハロゲン化炭化水素基であり、隣接する置換基は互いに環を形成してもよい。Mは周期律表第4〜6族の遷移金属であって4族が好ましい。
【0056】
【化9】
【0057】
一般式(III)中、R1〜R4、R7、Q、XおよびYは、一般式(I)と同義である。R12〜R19はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、またはハロゲン化炭化水素基であり、隣接する置換基は互いに環を形成してもよい。Mは周期律表第4〜6族の遷移金属であって4族が好ましい。
本発明に係る上記一般式(II)または(III)で示される化合物のうち、のMがハフニウムであるものの具体例としては、次の(1)〜(156)の遷移金属化合物が挙げられる。これらの中でも特に好ましいのは、下記式(IV)で示される化合物である。
【0058】
【化10】
【0059】
(1) ジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(2) ジクロロ[ジメチルシリレン(2,5−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(3) ジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2−メチル−4−イソプロピル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(4) ジクロロ[ジメチルシリレン(2,5−ジエチル−1−シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(5) ジクロロ[ジメチルシリレン(3,4−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(6) ジクロロ[ジメチルシリレン(9−フルオレニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(7) ジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2−エチル−4−メチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(8) ジクロロ[ジメチルシリレン(2,5−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2−エチル−4−メチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(9) ジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2−エチル−4−イソプロピル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(10) ジクロロ[ジメチルシリレン(9−フルオレニル)(2−エチル−4−メチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(11) ジクロロ[ジメチルシリレン(3,4−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2−エチル−4−メチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(12) ジクロロ[ジメチルシリレン(9−フルオレニル)(2−メチル−4−イソプロピル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(13) ジクロロ[ジメチルシリレン(9−フルオレニル)(2−エチル−4−イソプロピル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(14) ジクロロ[ジメチルシリレン(3,4−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2−n−プロピル−4−メチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(15) ジクロロ[ジメチルシリレン(9−フルオレニル)(2−n−プロピル−4−メチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(16) ジクロロ[エチレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(17) ジクロロ[エチレン(2,5−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(18) ジクロロ[エチレン(シクロペンタジエニル)(2−メチル−4−イソプロピル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(19) ジクロロ[エチレン(2,5−ジエチル−1−シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(20) ジクロロ[エチレン(3,4−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(21) ジクロロ[エチレン(9−フルオレニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(22) ジクロロ[エチレン(シクロペンタジエニル)(2−エチル−4−メチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(23) ジクロロ[エチレン(2,5−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2−エチル−4−メチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(24) ジクロロ[エチレン(シクロペンタジエニル)(2−エチル−4−イソプロピル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(25) ジクロロ[エチレン(9−フルオレニル)(2−エチル−4−メチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(26) ジクロロ[エチレン(3,4−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2−エチル−4−メチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(27) ジクロロ[エチレン(9−フルオレニル)(2−メチル−4−イソプロピル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(28) ジクロロ[エチレン(9−フルオレニル)(2−エチル−4−イソプロピル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(29) ジクロロ[エチレン(3,4−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2−n−プロピル−4−メチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(30) ジクロロ[エチレン(9−フルオレニル)(2−n−プロピル−4−メチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(31) ジクロロ[ジメチルシリレン(2,5−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2−エチル−4−イソプロピル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(32) ジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2−n−プロピル−4−メチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(33) ジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2−イソプロピル−4−メチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(34) ジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2−n−ブチル−4−メチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(35) ジクロロ[ジメチルシリレン(2,5−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2−n−プロピル−4−メチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(36) ジクロロ[ジメチルシリレン(2,5−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2−イソプロピル−4−メチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(37) ジクロロ[ジメチルシリレン(2,5−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2−n−ブチル−4−メチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(38) ジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4,8−トリメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(39) ジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−8−イソプロピル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(40) ジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−8−エチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(41) ジクロロ[ジメチルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(42) ジクロロ[ジメチルメチレン(2,5−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(43) ジクロロ[ジメチルメチレン(3,4−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(44) ジクロロ[ジメチルメチレン(9−フルオレニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(45) ジクロロ[ジメチルゲルミレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(46) ジクロロ[ジメチルゲルミレン(2,5−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(47) ジクロロ[ジメチルゲルミレン(3,4−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(48) ジクロロ[ジメチルゲルミレン(9−フルオレニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(49) ジクロロ[ジメチルゲルミレン(シクロペンタジエニル)(2−エチル−4−メチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(50) ジクロロ[ジメチルゲルミレン(シクロペンタジエニル)(2−n−プロピル−4−メチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(51) ジクロロ[ジメチルゲルミレン(シクロペンタジエニル)(2−イソプロピル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(52) ジクロロ[ジメチルゲルミレン(シクロペンタジエニル)(2−n−ブチル−4−メチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(53) ジクロロ[ジメチルゲルミレン(2,5−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2−エチル−4−メチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(54) ジクロロ[ジメチルゲルミレン(3,4−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2−エチル−4−メチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(55) ジクロロ[ジメチルゲルミレン(9−フルオレニル)(2−エチル−4−メチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(56) ジクロロ[ジメチルゲルミレン(2,5−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2−n−プロピル−4−メチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(57) ジクロロ[ジメチルゲルミレン(3,4−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2−n−プロピル−4−メチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(58) ジクロロ[ジメチルゲルミレン(9−フルオレニル)(2−n−プロピル−4−メチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(59) ジクロロ[ジメチルシリレン(3,4−ビス(トリメチルシリル)−1−シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(60) ジクロロ[ジメチルシリレン(3,4−ビス(トリメチルシリル)−1−シクロペンタジエニル)(2−エチル−4−メチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(61) ジクロロ[ジメチルゲルミレン(3,4−ビス(トリメチルシリル)−1−シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(62) ジクロロ[ジメチルゲルミレン(3,4−ビス(トリメチルシリル)−1−シクロペンタジエニル)(2−エチル−4−メチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(63) ジメチル[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(64) ジメチル[ジメチルシリレン(2,5−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(65) ジメチル[ジメチルシリレン(3,4−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(66) ジメチル[ジメチルシリレン(9−フルオレニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(67) ジヒドリド[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(68) ジヒドリド[ジメチルシリレン(2,5−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(69) ジヒドリド[ジメチルシリレン(3,4−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(70) ジヒドリド[ジメチルシリレン(9−フルオレニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(71) ビス(ジメチルアミド)[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(72) ビス(ジメチルアミド)[ジメチルシリレン(2,5−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(73) ビス(ジメチルアミド)[ジメチルシリレン(3,4−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(74) ビス(ジメチルアミド)[ジメチルシリレン(9−フルオレニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(75) ジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2−メチル−4−クロロメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(76) ジクロロ[ジメチルシリレン(2,5−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2−メチル−4−クロロメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(77) ジクロロ[ジメチルシリレン(3,4−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2−メチル−4−クロロメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(78) ジクロロ[ジメチルシリレン(9−フルオレニル)(2−メチル−4−クロロメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム
(79) ジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(80) ジクロロ[ジメチルシリレン(2,5−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(81) ジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2−メチル−4−イソプロピル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(82) ジクロロ[ジメチルシリレン(2,5−ジエチル−1−シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(83) ジクロロ[ジメチルシリレン(3,4−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(84) ジクロロ[ジメチルシリレン(9−フルオレニル)(2,4−ジメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(85) ジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2−エチル−4−メチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(86) ジクロロ[ジメチルシリレン(2,5−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2−エチル−4−メチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(87) ジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2−エチル−4−イソプロピル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(88) ジクロロ[ジメチルシリレン(9−フルオレニル)(2−エチル−4−メチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(89) ジクロロ[ジメチルシリレン(3,4−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2−エチル−4−メチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(90) ジクロロ[ジメチルシリレン(9−フルオレニル)(2−メチル−4−イソプロピル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(91) ジクロロ[ジメチルシリレン(9−フルオレニル)(2−エチル−4−イソプロピル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(92) ジクロロ[ジメチルシリレン(3,4−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2−n−プロピル−4−メチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(93) ジクロロ[ジメチルシリレン(9−フルオレニル)(2−n−プロピル−4−メチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(94) ジクロロ[エチレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(95) ジクロロ[エチレン(2,5−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(96) ジクロロ[エチレン(シクロペンタジエニル)(2−メチル−4−イソプロピル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(97) ジクロロ[エチレン(2,5−ジエチル−1−シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(98) ジクロロ[エチレン(3,4−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(99) ジクロロ[エチレン(9−フルオレニル)(2,4−ジメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(100) ジクロロ[エチレン(シクロペンタジエニル)(2−エチル−4−メチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(101) ジクロロ[エチレン(2,5−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2−エチル−4−メチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(102) ジクロロ[エチレン(シクロペンタジエニル)(2−エチル−4−イソプロピル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(103) ジクロロ[エチレン(9−フルオレニル)(2−エチル−4−メチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(104) ジクロロ[エチレン(3,4−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2−エチル−4−メチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(105) ジクロロ[エチレン(9−フルオレニル)(2−メチル−4−イソプロピル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(106) ジクロロ[エチレン(9−フルオレニル)(2−エチル−4−イソプロピル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(107) ジクロロ[エチレン(3,4−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2−n−プロピル−4−メチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(108) ジクロロ[エチレン(9−フルオレニル)(2−n−プロピル−4−メチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(109) ジクロロ[ジメチルシリレン(2,5−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2−エチル−4−イソプロピル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(110) ジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2−n−プロピル−4−メチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(111) ジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2−イソプロピル−4−メチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(112) ジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2−n−ブチル−4−メチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(113) ジクロロ[ジメチルシリレン(2,5−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2−n−プロピル−4−メチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(114) ジクロロ[ジメチルシリレン(2,5−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2−イソプロピル−4−メチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(115) ジクロロ[ジメチルシリレン(2,5−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2−n−ブチル−4−メチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(116) ジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4,8−トリメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(117) ジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−8−イソプロピル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(118) ジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−8−エチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(119) ジクロロ[ジメチルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(120) ジクロロ[ジメチルメチレン(2,5−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(121) ジクロロ[ジメチルメチレン(3,4−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(122) ジクロロ[ジメチルメチレン(9−フルオレニル)(2,4−ジメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(123) ジクロロ[ジメチルゲルミレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(124) ジクロロ[ジメチルゲルミレン(2,5−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(125) ジクロロ[ジメチルゲルミレン(3,4−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(126) ジクロロ[ジメチルゲルミレン(9−フルオレニル)(2,4−ジメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(127) ジクロロ[ジメチルゲルミレン(シクロペンタジエニル)(2−エチル−4−メチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(128) ジクロロ[ジメチルゲルミレン(シクロペンタジエニル)(2−n−プロピル−4−メチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(129) ジクロロ[ジメチルゲルミレン(シクロペンタジエニル)(2−イソプロピル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(130) ジクロロ[ジメチルゲルミレン(シクロペンタジエニル)(2−n−ブチル−4−メチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(131) ジクロロ[ジメチルゲルミレン(2,5−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2−エチル−4−メチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(132) ジクロロ[ジメチルゲルミレン(3,4−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2−エチル−4−メチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(133) ジクロロ[ジメチルゲルミレン(9−フルオレニル)(2−エチル−4−メチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(134) ジクロロ[ジメチルゲルミレン(2,5−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2−n−プロピル−4−メチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(135) ジクロロ[ジメチルゲルミレン(3,4−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2−n−プロピル−4−メチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(136) ジクロロ[ジメチルゲルミレン(9−フルオレニル)(2−n−プロピル−4−メチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(137) ジクロロ[ジメチルシリレン(3,4−ビス(トリメチルシリル)−1−シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(138) ジクロロ[ジメチルシリレン(3,4−ビス(トリメチルシリル)−1−シクロペンタジエニル)(2−エチル−4−メチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(139) ジクロロ[ジメチルゲルミレン(3,4−ビス(トリメチルシリル)−1−シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(140) ジクロロ[ジメチルゲルミレン(3,4−ビス(トリメチルシリル)−1−シクロペンタジエニル)(2−エチル−4−メチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(141) ジメチル[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(142) ジメチル[ジメチルシリレン(2,5−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(143) ジメチル[ジメチルシリレン(3,4−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(144) ジメチル[ジメチルシリレン(9−フルオレニル)(2,4−ジメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(145) ジヒドリド[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(146) ジヒドリド[ジメチルシリレン(2,5−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(147) ジヒドリド[ジメチルシリレン(3,4−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(148) ジヒドリド[ジメチルシリレン(9−フルオレニル)(2,4−ジメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(149) ビス(ジメチルアミド)[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(150) ビス(ジメチルアミド)[ジメチルシリレン(2,5−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(151) ビス(ジメチルアミド)[ジメチルシリレン(3,4−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(152) ビス(ジメチルアミド)[ジメチルシリレン(9−フルオレニル)(2,4−ジメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(153) ジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2−メチル−4−クロロメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(154) ジクロロ[ジメチルシリレン(2,5−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2−メチル−4−クロロメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(155) ジクロロ[ジメチルシリレン(3,4−ジメチル−1−シクロペンタジエニル)(2−メチル−4−クロロメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
(156) ジクロロ[ジメチルシリレン(9−フルオレニル)(2−メチル−4−クロロメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム
【0060】
本発明に係るC1対称性の遷移金属化合物を重合触媒成分として用いるには、前述の(1)〜(156)の遷移金属化合物の中でも、ジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム、ジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウム、ジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2−エチル−4−メチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム、ジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2−エチル−4−メチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)]ハフニウムが好ましく、また、ジクロロ[ジメチルシリレン(9−フルオレニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム、ジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2−n−プロピル−4−メチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム、 ジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2−イソプロピル−4−メチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウム、ジクロロ[ジメチルゲルミレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)]ハフニウムも好ましい。
【0061】
本発明に係るC1対称性の遷移金属化合物を重合触媒成分として用いる場合には2種以上組み合わせて用いてもよく、その態様としては2種以上を混合して用いても、またその1種を用いて重合を開始し、重合の第1段階終了時や第2段階の重合開始前に、新たに他の遷移金属化合物を追加して重合を続行してもよい。また、上に例示した(1)〜(156)式の化合物の中心金属Mがハフニウムの代わりに、チタン、ジルコニウムに代わった化合物も、同様に重合触媒成分として用いることができる。
【0062】
遷移金属化合物の合成方法
本発明に係るC1対称性の遷移金属化合物は、置換基ないし結合の様式に関して合目的的な公知の任意の方法によって合成することが出来る。代表的な合成経路は次の反応式に示す通りである。なお、反応式中の H2Ra 及び H2Rbは、それぞれ、次の様な構造を示す。
【0063】
【化11】
【0064】
(R1〜R7及びnは一般式(I)で定義したものと同義である通り。)
【0065】
【化12】
H2Ra+n-C4H9Li→HRaLi+C4H10
H2Rb+n-C4H9Li→HRbLi+C4H10
HRbLi+QCl2 →Cl−Q−HRb+LiCl
HRaLi+Cl−Q−HRb+LiCl→HRa−Q−HRb+2LiCl
(又は、H2RaのNa塩であるHRaNaと反応させてもよい。
HRaNa+Cl−Q−HRb+LiCl→HRa−Q−HRb+LiCl+NaCl)
HRa−Q−HRb+2n-C4H9Li→LiRa−Q−LiRb+2C4H10
LiRa−Q−LiRb+HfCl4→(Ra−Q−Rb)HfCl2+2LiCl
【0066】
また、上記の HRaLi 及び HRbLi の様なシクロペンタジエニル化合物の金属塩は、例えば、ヨーロッパ特許第697418号公報に記載の様に、アリール基などの付加反応を伴う方法で合成してもよい。具体的には、不活性溶媒中、アルキルリチウム化合物とアズレン化合物とを反応させてジヒドロアズレニル化合物のリチウム塩を生成させる。アルキルリチウム化合物としては、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム等が使用される。また、不活性溶媒としては、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン又はこれらの混合溶媒などが使用される。
【0067】
また、一般式(III)の化合物は一般式(II)の化合物を水素化することによっても得られる。水素化の際使用される溶媒は、それ自身が水素化を受けたり、一般式(II)の化合物を分解しないものならよい。例えば、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素が好ましい。
反応温度、反応圧力および反応時間に特に制限はないが、通常は、以下の範囲から生産性やプロセスの能力を考慮して、最適な設定を行うことができる。反応温度は通常0℃以上、好ましくは10℃以上であって、通常70℃以下、好ましくは50℃以下である。また、反応圧力は、通常0.01MPa以上、好ましくは0.03MPa以上、最も好ましくは0.05MPa以上であって、通常20MPa以下、好ましくは10MPa以下、最も好ましくは8MPa以下である。反応時間は、通常0.1時間以上、好ましくは0.2時間以上、最も好ましくは0.3時以上であって、通常30時間以下、好ましくは25時間以下、最も好ましくは20時間以下である。水素化触媒としては白金、酸化白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム又は従来公知の遷移金属触媒を用いることができる。
【0068】
オレフィン重合用触媒
本発明に係るC1対称性の遷移金属化合物は、オレフィン重合用触媒成分として用いることができ、特にα−オレフィン重合体製造用の触媒成分に好適に用いられる。α−オレフィン重合体製造用の触媒として用いるためには、助触媒として、(1)有機アルミニウムオキシ化合物、(2)本発明に係るC1対称性の遷移金属化合物と反応して、該成分をカチオンに交換することが可能なイオン性化合物、(3)ルイス酸、(4)ケイ酸塩を除くイオン交換性層状化合物または無機ケイ酸塩、からなる群より選択される一種以上の物質を用いるのが好ましい。
【0069】
また、次の成分(A)及び(B)と任意に成分(C)とを含むことを特徴とするα−オレフィン重合用触媒がより好ましい。
成分(A):本発明に係るC1対称性の遷移金属化合物
成分(B):有機アルミニウムオキシ化合物、成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸からなる群より選ばれる1種類以上の化合物
成分(C):微粒子担体
以下、成分(B)および成分(C)について説明する。
【0070】
成分(B):有機アルミニウムオキシ化合物、成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸からなる群より選ばれる1種類以上の化合物;
(1)有機アルミニウムオキシ化合物
有機アルミニウムオキシ化合物として、具体的には、次の一般式(V)、(VI)、(VII)で表される化合物が挙げられる。
【0071】
各一般式中、R20は、水素原子または炭化水素残基、好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは、炭素数1〜6の炭化水素残基を示す。また、複数のR20はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。またpは0〜40、好ましくは2〜30の整数を示す。
【0072】
【化13】
【0073】
一般式(V)及び(VI)で表される化合物は、アルミノキサンとも呼ばれる化合物であって、一種類のトリアルキルアルミニウムまたは二種類以上のトリアルキルアルミニウムと水との反応により得られる。具体的には、(a)一種類のトリアルキルアルミニウムと水とから得られる、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、プロピルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、(b)二種類のトリアルキルアルミニウムと水とから得られる、メチルエチルアルミノキサン、メチルブチルアルミノキサン、メチルイソブチルアルミノキサン等が挙げられる。これらの中では、メチルアルミノキサン、メチルイソブチルアルミノキサンが好ましい。上記のアルミノキサンは、複数種併用することも可能である。そして、上記のアルミノキサンは、公知のように様々な条件下に調製することができる。
【0074】
一般式(VII)で表される化合物は、一種類のトリアルキルアルミニウムまたは二種類以上のトリアルキルアルミニウムと下記一般式(VIII)で表されるアルキルボロン酸との10:1〜1:1(モル比)の反応により得ることができる。一般式(VII)式および(VIII)中、R21は、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6の炭化水素残基またはハロゲン化炭化水素基を示す。
R21B(OH)2 (VIII)
具体的には、以下の様な反応生成物、すなわち、(a)トリメチルアルミニウムとメチルボロン酸の2:1の反応物、(b)トリイソブチルアルミニウムとメチルボロン酸の2:1反応物、(c)トリメチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムとメチルボロン酸の1:1:1反応物、(d)トリメチルアルミニウムとエチルボロン酸の2:1反応物、(e)トリエチルアルミニウムとブチルボロン酸の2:1反応物などを挙げることができる。
【0075】
(2)遷移金属化合物と反応して、該成分をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物
下記一般式(IX)で表される化合物が挙げられる。
[K]e+[Z]e- (IX)
一般式(IX)中、Kはカチオン成分であって、例えば、カルボニウムカチオン、トロピリウムカチオン、アンモニウムカチオン、オキソニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ホスフォニウムカチオン等が挙げられる。また、それ自身が還元されやすい金属の陽イオンや有機金属の陽イオン等も挙げられる。
【0076】
上記のカチオンの具体例としては、トリフェニルカルボニウム、ジフェニルカルボニウム、シクロヘプタトリエニウム、インデニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、N,N−ジメチルアニリニウム、ジプロピルアンモニウム、ジシクロヘキシルアンモニウム、トリフェニルホスホニウム、トリメチルホスホニウム、トリス(ジメチルフェニル)ホスホニウム、トリス(ジメチルフェニル)ホスホニウム、トリス(メチルフェニル)ホスホニウム、トリフェニルスルホニウム、トリフェニルスルホニウム、トリフェニルオキソニウム、トリエチルオキソニウム、ピリリウム、銀イオン、金イオン、白金イオン、銅イオン、パラジウムイオン、水銀イオン、フェロセニウムイオン等が挙げられる。
【0077】
上記の一般式(IX)中、Zは、アニオン成分であり、遷移金属化合物が変換されたカチオン種に対して対アニオンとなる成分(一般には非配位の成分)である。Zとしては、例えば、有機ホウ素化合物アニオン、有機アルミニウム化合物アニオン、有機ガリウム化合物アニオン、有機ヒ素化合物アニオン、有機アンチモン化合物アニオン等が挙げられ、具体的には次の化合物が挙げられる。すなわち、(a)テトラフェニルホウ素、テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ホウ素、テトラキス{3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル}ホウ素、テトラキス{3,5−ジ(t−ブチル)フェニル}ホウ素、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素等、(b)テトラフェニルアルミニウム、テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)アルミニウム、テトラキス{3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル}アルミニウム、テトラキス{3,5−ジ(t−ブチル)フェニル}アルミニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミニウム等が挙げられる。
【0078】
また、(c)テトラフェニルガリウム、テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ガリウム、テトラキス{3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル}ガリウム、テトラキス{3,5−ジ(t−ブチル)フェニル}ガリウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガリウム等、(d)テトラフェニルリン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)リン等、(e)テトラフェニルヒ素、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ヒ素等、(f)テトラフェニルアンチモン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)アンチモン等、(g)デカボレート、ウンデカボレート、カルバドデカボレート、デカクロロデカボレート等も挙げられる。
【0079】
(3)ルイス酸
特に遷移金属化合物をカチオンに変換可能なルイス酸としては、種々の有機ホウ素化合物、金属ハロゲン化合物、固体酸などが例示され、その具体例としては次の化合物が挙げられる。すなわち、(a)トリフェニルホウ素、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ホウ素、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素等の有機ホウ素化合物、(b)塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、塩化臭化マグネシウム、塩化ヨウ化マグネシウム、臭化ヨウ化マグネシウム、塩化マグネシウムハイドライド、塩化マグネシウムハイドロオキシド、臭化マグネシウムハイドロオキシド、塩化マグネシウムアルコキシド、臭化マグネシウムアルコキシド等の金属ハロゲン化合物、(c)アルミナ、シリカ・アルミナ等の固体酸などを挙げることができる。
【0080】
成分(C):微粒子担体
任意成分として微粒子担体を共存させてもよい。微粒子担体は、無機または有機の化合物からなり、通常5μm以上好ましくは10μm以上であって通常5mm以下好ましくは2mm以下の粒径を有する微粒子状の担体である。
無機担体としては、例えば、SiO2、Al2O3、MgO、ZrO、TiO2、B2O3、ZnO等の酸化物、SiO2−MgO、SiO2−Al2O3、SiO2−TiO2、SiO2−Cr2O3、SiO2−Al2O3−MgO等の複合金属酸化物などが挙げられる。
【0081】
有機担体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等の炭素数2〜14のα−オレフィンの(共)重合体、スチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族不飽和炭化水素等の(共)重合体、などからなる多孔質ポリマーの微粒子担体が挙げられる。これらの比表面積は、通常20m3/g以上好ましくは50m3/g以上であって、通常1000m3/g以下好ましくは700m3/g以下である。細孔容積は、通常0.1cm2/g以上、好ましくは0.3cm2/g以上、更に好ましくは0.8cm2/g以上である。
【0082】
また、次の成分(A)及び成分(D)と任意に成分(E)とを含むことを特徴とするα−オレフィン重合用触媒も好ましく用いられる。
成分(A):本発明に係るC1対称性の遷移金属化合物
成分(D):珪酸塩を除くイオン交換性層状化合物または無機珪酸塩からなる群より選ばれる化合物
成分(E):有機アルミニウム化合物
以下、成分(D)および成分(E)につき説明する。
【0083】
成分(D):珪酸塩を除くイオン交換性層状化合物または無機珪酸塩からなる群より選ばれる化合物
ケイ酸塩を除くイオン交換性層状化合物は、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとる化合物であり、含有するイオンが交換可能なものを言う。
【0084】
ケイ酸塩を除くイオン交換性層状化合物としては、六方最密パッキング型、アンチモン型、CdCl2 型、CdI2型等の層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物等を例示することができる。具体的には、α−Zr(HAsO4)・H2O、α−Zr(HPO4)2、α−Zr(KPO4)・3H2O、α−Ti(HPO4)2、α−Ti(HAsO4)2 ・H2O、α−Sn(HPO4)2・H2O、γ−Zr(HPO4)2、γ−Ti(HPO4)2、γ−Ti(NH4PO4)2・H2O等の多価金属の結晶性酸性塩があげられる。
【0085】
また、無機ケイ酸塩としては、粘土、粘土鉱物、ゼオライト、珪藻土等が挙げられる。これらは、合成品を用いてもよいし、天然に産出する鉱物を用いてもよい。
粘土、粘土鉱物の具体例としては、アロフェン等のアロフェン族、ディッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイト等のカオリン族、メタハロイサイト、ハロイサイト等のハロイサイト族、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト等のスメクタイト、バーミキュライト等のバーミキュライト鉱物、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母鉱物、アタパルジャイト、セピオライト、パイゴルスカイト、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、ヒシンゲル石、パイロフィライト、リョクデイ石群等が挙げられる。これらは混合層を形成していてもよい。
【0086】
人工合成物としては、合成雲母、合成ヘクトライト、合成サポナイト、合成テニオライト等が挙げられる。
これら具体例のうち好ましくは、ディッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイト等のカオリン族、メタハロサイト、ハロサイト等のハロサイト族、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト等のスメクタイト、バーミキュライト等のバーミキュライト鉱物、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母鉱物、合成雲母、合成ヘクトライト、合成サポナイト、合成テニオライトが挙げられ、特に好ましくはモンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト等のスメクタイト、バーミキュライト等のバーミキュライト鉱物、合成雲母、合成ヘクトライト、合成サポナイト、合成テニオライトが挙げられる。
【0087】
これら、ケイ酸塩を除くイオン交換性層状化合物、または無機ケイ酸塩は、そのまま用いてもよいが、塩酸、硝酸、硫酸等による酸処理および/または、LiCl、NaCl、KCl、CaCl2 、MgCl2 、Li2SO4、MgSO4、ZnSO4、Ti(SO4)2、Zr(SO4)2、Al2 (SO4)3等の塩類処理を行ったほうが好ましい。なお、処理にあたり、対応する酸と塩基を混合して反応系内で塩を生成させて処理を行ってもよい。また、粉砕や造粒等の形状制御を行ってもよく、粒子流動性に優れた固体触媒成分を得るためには、造粒することが好ましい。また、上記成分は、通常脱水乾燥してから用いる。これら助触媒成分としては、重合活性等の触媒性能の面で、(4)のケイ酸塩を除くイオン交換性層状化合物または無機ケイ酸塩を用いることが好ましい。
【0088】
成分(E):有機アルミニウム化合物
本発明に係るの重合触媒において、助触媒の任意成分である。このような有機アルミニウム化合物は、AlR22 mZ3-m(式中、R22は、炭素数1〜20の炭化水素基、Zは、水素、ハロゲン、アルコキシ基もしくはアリールオキシ基、mは0<m≦3の数)で示される化合物である。
【0089】
具体的にはトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、またはジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムエトキシド等のハロゲンもしくはアルコキシ含有アルキルアルミニウム、または、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等の水素含有有機アルミニウム化合物である。またこの他、メチルアルミノキサン等のアルミノキサン等も使用できる。これらのうち、特に好ましいのはトリアルキルアルミニウムである。これら任意成分は2種以上組み合わせて用いてもよい。また、重合開始後等に、新たに該任意成分を追加してもよい。
【0090】
オレフィン重合用触媒の製造方法
本発明の触媒は、上記の各成分の接触によって得られるが、その接触方法については特に限定がない。この接触は、触媒調製時だけでなく、プロピレンの予備重合時または重合時に行ってもよい。
また、触媒各成分の接触時、または接触後にポリプロピレン重合体、シリカ、アルミナ等の無機酸化物の固体を共存させるか、もしくは接触させてもよい。
【0091】
接触は窒素等の不活性ガス中で行ってもよいし、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の不活性炭化水素溶媒中で行ってもよい。これらの溶媒は、水や硫黄化合物などの被毒物質を除去する操作を施したものを使用するのが好ましい。接触温度は、−20℃ないし、使用する溶媒の沸点の間で行い、特には、室温から使用する溶媒の沸点の間で行うのが好ましい。
【0092】
触媒各成分の使用比に特に制限はないが、助触媒成分として、ケイ酸塩を除くイオン交換性層状化合物、または無機ケイ酸塩を用いる場合は、助触媒成分1gあたり、遷移金属化合物が0.0001〜10mmol、好ましくは0.001〜5mmolであり、任意成分である有機アルミニウム化合物が0〜10,000mmol、好ましくは0.01〜100mmolとなるように設定することにより、重合活性などの点で好適な結果が得られる。また、遷移金属化合物中の遷移金属と任意成分である有機アルミニウム化合物中のアルミニウムの原子比が1:0〜1,000,000、好ましくは、1:0.1〜100,000となるように制御することが、同様に重合活性などの点で好ましい。
【0093】
このようにして得られた触媒は、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、トルエン、キシレン等の不活性炭化水素溶媒で洗浄して使用してもよいし、洗浄せずに用いてもよい。
洗浄の際に、必要に応じて、新たに上述の有機アルミニウム化合物を組合せて用いてもよい。この際に用いられる有機アルミニウム化合物の量は、遷移金属化合物中の遷移金属に対する有機アルミニウム化合物中のアルミニウムの原子比で1:0〜10,000になるようにするのが好ましい。
【0094】
触媒として、エチレン、プロピレン等の分子量の小さいα−オレフィンを予備的に重合し、必要に応じて洗浄した予備重合体を使用することもできる。この予備重合は窒素等の不活性ガス中、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、トルエン、キシレン等の不活性炭化水素溶媒中で行ってもよい。
【0095】
α−オレフィンの重合方法
原料のα−オレフィンとしては、炭素数が通常2〜20、好ましくは2〜10のα−オレフィンが使用され、その具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセンおよび1−エイコセン等が挙げられ、中でも好ましい例としてエチレン、プロピレンおよび1−ブテンが挙げられる。
【0096】
α−オレフィンと共重合可能な他の単量体としては、例えば、ブタジエン、1, 4−ヘキサジエン、1, 5−ヘキサジエン、7−メチル−1, 6−オクタジエン、1, 8−ノナジエン、1, 9−デカジエンの様な共役および非共役ジエン類、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、ノルボルネン、ジシクロペンタジエンの様な環状オレフィンが挙げられる。また、重合に際しては、多段階に条件を変更するいわゆる多段重合、例えば、一段目にプロピレンの重合を行い、二段目にエチレンとプロピレンの共重合を行う所謂ブロック共重合も可能である。
【0097】
反応には溶媒を用いても用いなくてもよいが、溶媒を用いた方が好ましい。溶媒の具体例としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサンのような炭化水素類、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼンのようなハロゲン化炭化水素類、n−ブチルアセテート、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジメチルスルホキシドのような極性溶媒類を挙げることができる。これらのうち、炭化水素類が好ましく、特に芳香族炭化水素類が好ましい。また、ここで記載した化合物の混合物を溶媒として使用してもよい。
【0098】
反応方式は特に限定されないが、溶液およびバルク重合が好ましい。
触媒濃度は特に限定されないが、例えば反応方式が溶液重合の場合、反応液1Lに対して、通常100g以下であって、50g以下が好ましく、25g以下が最も好ましい。通常0.01mg以上であって、0.05mg以上が好ましく、0.1mg以上が最も好ましい。
【0099】
重合温度、重合圧力および重合時間に特に制限はないが、通常は、以下の範囲から生産性やプロセスの能力を考慮して、最適な設定を行うことができる。すなわち、重合温度は通常−20℃以上、好ましくは0℃以上であって、通常150℃以下、好ましくは100℃以下である。また、重合圧力は、通常0.01MPa以上、好ましくは0.05MPa以上、最も好ましくは0.1MPa以上であって、通常100MPa以下、好ましくは20MPa以下、最も好ましくは5MPa以下である。重合時間は、通常0.1時間以上、好ましくは0.2時間以上、最も好ましくは0.3時間以上であって、通常30時間以下、好ましくは25時間以下、より好ましくは20時間以下、最も好ましくは15時間以下である。
【0100】
本発明のオレフィン重合用触媒を用いることにより、溶解性、接着性を有するオレフィン重合体を得ることができるが、そのためにはオレフィン重合体が以下の(1)〜(3)の条件を満たす必要がある。
(1)分子量は通常2千以上、好ましくは5千以上、より好ましくは1万以上、最も好ましくは3万以上であって、通常40万以下、好ましくは30万以下、最も好ましくは25万以下であること(インキバインダー用としては5千以上10万以下が好ましく、コーティング用としては2万以上30万以下が好ましい。)(2)13C-NMRにて、head to tail結合からなるプロピレン単位連鎖部のメチル基の炭素原子に由来するピークを観測し、mmmmで表されるペンタッドに帰属されるピークのピークトップのケミカルシフトを21.8 ppmとした場合、19.8 ppmから22.2 ppmに現れるピークの総面積Sに対し、21.8 ppmをピークトップとするピークの面積S1の比率が10%以上かつ60%以下であること
(3)2,1−挿入したプロピレン単量体および/または1,3−挿入したプロピレン単量体に基づく位置不規則単位が主鎖中に存在し、全プロピレン挿入に対する2,1−挿入と1,3−挿入に基づく位置不規則単位の比率の和が0.05%以上であること
生成するオレフィン重合体がこれらの条要件を満足するようにするには、公知のメタロセン触媒を用いて重合を行う場合に用いられる従来公知の方法を使用することができる。すなわち、分子量を調節するためには、重合温度を制御して分子量を調節する方法、モノマー濃度を制御して分子量を調節する方法、連鎖移動剤を使用して分子量を制御する方法等が挙げられる。連鎖移動剤を使用する場合には、水素が好ましい。また、ペンタッドを調節するためには、反応温度、原料濃度、などを調節すればよい。
【0101】
本発明に係る触媒によって製造されたプロピレン重合体を基材に塗布した際に形成される塗膜は、基材であるオレフィン系重合体に対して良好な密着性を示す。したがって、本発明に係る触媒によって製造されたプロピレン重合体は、オレフィン系重合体に対する接着性樹脂として使用することができる。なお、良好な密着性を得るためには、塗布後に加熱することが好ましい。加熱温度に特に制限はないが、実用性を考慮して50〜150℃、さらには60〜130℃とするのが好ましい。塗布の方法にも特に制限はなく、スプレーで塗布する方法、ローラーで塗布する方法、刷毛で塗布する方法など、従来公知の方法が使用できる。
【0102】
本発明に係る重合体をオレフィン系重合体に塗布する場合、基材として用いるオレフィン系重合体としては、高圧法ポリエチレン、中低圧法ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、ポリ−1−ブテン、ポリスチレン等のオレフィン系重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン共重合体、プロピレン・ブテン共重合体等のオレフィン共重合体等が挙げられる。これらのオレフィン系重合体のうち、プロピレン系重合体が好ましく用いられる。
【0103】
また、本発明に係る触媒によって製造されたプロピレン重合体は溶媒に可溶であるため、溶媒中で極性モノマーをグラフト共重合させ、グラフト変性プロピレン系重合体の製造に使用することが可能である。グラフト変性に用いられるモノマーとしては、モノオレフィンジカルボン酸およびその無水物、ならびにモノオレフィンジカルボン酸のモノアルキルエステルが挙げられる。該モノオレフィンジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、クロロマレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、3−メチル−2−ペンテン二酸、2−メチル−2−ペンテン二酸、2−ヘキセン二酸等が挙げられる。これらのうち、マレイン酸が好ましい。また、これらのモノオレフィンジカルボン酸の無水物、および、そのカルボキシル基のひとつがアルキルアルコールによりエステル化されたもの、すなわちモノオレフィンジカルボン酸のモノアルキルエステルも、グラフト変性に用いられるモノマーの具体例として挙げられる。
【0104】
本発明に係る触媒によって製造されたプロピレン重合体をこの様にグラフト変性して得られたグラフト変性プロピレン系重合体も溶媒に可溶であり、結晶性を有するオレフィン系重合体の成形体(基材)に塗布することができる。塗布により形成される塗膜は、基材と良好な密着性を示す。基材としては前記と同様なオレフィン系重合体を使用することができるが、その他、ポリプロピレンと合成ゴムとからなる成型品、ポリアミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂等からなる成型品、例えば自動車用バンパー等の成型品、さらには鋼板や電着処理用鋼板等の表面処理にも用いることができる。さらに、ポリウレタン樹脂、脂肪酸変性ポリエステル樹脂、オイルフリーポリエステル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等を主成分とする塗料、プライマー、接着剤等を塗布した表面に下塗りし、その表面への塗料等の付着性を改善すると共に、鮮映性、低温衝撃性等にも優れた塗膜を形成するためにも用いることができる。
【0105】
本発明に係る触媒によって製造されたプロピレン重合体を極性モノマーでグラフト変性して得られた変性プロピレン重合体を塗布し、塗膜を形成した成形品の表面には、静電塗装、吹き付け塗装、刷毛塗り等の方法によって、塗料を塗布することができる。
塗料の塗布は、下塗りした後、上塗りする方法で行ってもよい。塗料を塗布した後、ニクロム線、赤外線、高周波等によって加熱する通常の方法に従って塗膜を硬化させて、所望の塗膜を表面に有する成形品を得ることができる。塗膜を硬化させる方法は、成形品の材質、形状、使用する塗料の性状等によって適宜選ばれる。
【0106】
また、本発明に係るプロピレン重合体を極性モノマーでグラフト変性して得られた変性プロピレン重合体は、付着性、剥離強度および耐水性に優れる特徴を生かして、上記の成形品のプライマーとしての用途以外にも、広範囲の用途に適用可能なものであり、例えば、接着剤や塗料のための添加剤等の用途にも適用可能であることは言うまでもない。
【0107】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の諸例において、触媒合成工程および重合工程は、全て精製窒素雰囲気下で行い、溶媒は、モレキュラーシーブ(MS−4A)で脱水した後に精製窒素でバブリングして脱気して使用した。
また、得られた重合体の物性を評価するために、分子量、融点および13C−NMRスペクトルを以下(1)〜(3)に記載の条件で測定した。重合体より得られた塗膜の物性を評価するために、層間密着性試験および/または光沢度を以下(4)および(5)に記載の条件で測定した。
【0108】
(1) 分子量の測定:
GPCにより得られた重量平均分子量を測定した。GPC装置は、Waters社製「150CV型」を使用した。溶媒はオルトジクロルベンゼンを使用し、測定温度は135℃とした。
(2) 融点の測定:
DSC(デュポン社製「TA2000型」)を使用し、10℃/分で20〜200℃までの昇降温を1回行った後の2回目の昇温時の測定により求めた。
【0109】
(3) 13C−NMRスペクトルの測定:
試料100〜500mgを、10mmφのNMR用サンプル管中で、約2.2mlのオルトジクロロベンゼンを用いて完全に溶解させる。次いで、ロック溶媒として約0.2mlの重水素化ベンゼンを加え、均一化させた後、130℃でプロトン完全デカップリング法により測定を行う。測定条件は、フリップアングル90°、パルス間隔5T1以上(T1は、メチル基のスピン−格子緩和時間のうち最長の値)とする。プロピレン重合体において、メチレン基およびメチン基のスピン−格子緩和時間はメチル基のそれよりも短いので、この測定条件では、すべての炭素の磁化の回復は99%以上である。
【0110】
(i)ペンタッドの測定(本文中の結果の単位はモル%)
ケミカルシフトは、頭−尾(head to tail)結合からなるプロピレン単位連鎖部の10種類のペンタッド(mmmm,mmmr,rmmr,mmrr,mmrm,rmrr,rmrm,rrrr,rrrm,mrrm)のうち、メチル分岐の絶対配置がすべて同一である、すなわち、mmmmで表されるプロピレン単位5連鎖の第3単位目のメチル基にもとづくピークのケミカルシフトを21.8ppmとして設定し、これを基準として他の炭素ピークのケミカルシフトを決定する。この基準では、例えば、その他のプロピレン単位5連鎖の場合、第3単位目のメチル基にもとづくピークのケミカルシフトはおおむね次のようになる。すなわち、mmmr:21.5〜21.7ppm、rmmr:21.3〜21.5ppm、mmrr:21.0〜21.1ppm、mmrmおよびrmrr:20.8〜21.0ppm、rmrm:20.6〜20.8ppm、rrrr:20.3〜20.5ppm、rrrm:20.1〜20.3ppm、mrrm:19.9〜20.1ppmである。なお、これらのペンタッドに由来するピークのケミカルシフトは、NMRの測定条件によって多少の変動があること、および、ピークは必ずしも単一ピーク(single peak)ではなく、微細構造にもとづく複雑な分裂パターン(split pattern)を示すことが多い点に注意して帰属を行う必要がある。
【0111】
(ii)2,1−挿入及び1,3−挿入の測定
プロピレンの重合は、メチレン基が触媒の活性サイトと結合する1,2−挿入で進行するのが普通であるが、まれに、2,1−挿入あるいは1,3−挿入することがある。2,1−挿入で重合されたプロピレン単量体は、重合体主鎖中において、下記部分構造(I)および(II)で表される位置不規則単位を形成する。また、1,3−挿入で重合されたプロピレン単量体は、重合体主鎖中において、下記部分構造(III)で表される位置不規則単位を形成する。
【0112】
【化14】
【0113】
全プロピレン挿入に対する2,1−挿入したプロピレン単量体の割合、および、1,3−挿入したプロピレン単量体の割合は、下記式で計算される。
【0114】
【数1】
【0115】
式中、ΣI(x−y)は、13C−NMRスペクトルにおいて、xppmからyppmに現れる信号の積分強度和を表し、ΣI(CH3)は、末端を除く全メチル基に由来する信号の積分強度和である。これは、次の式で求められる。
【0116】
【数2】
【0117】
なお、14.5〜18.0ppmに現れる信号は、2,1−挿入したプロピレンのメチル基の炭素に由来するものであり、19.5〜24.4ppmに現れる信号は、1,2−挿入したプロピレンのメチル基の炭素に由来するものである。また、27.5〜28.0ppmに現れる信号は、1,3−挿入したプロピレン中の2個のメチレン炭素に由来するものである。
【0118】
(4) 層間密着性試験は、JIS K 5400に記載されている碁盤目試験の方法に準じて、碁盤目を付けた試験片を作成し、ニチバン社製粘着テープを、試験片の碁盤目上に張り付けた後、これを速やかに垂直方向に引っ張って剥離させ、碁盤目100個のうちで剥離されなかった碁盤目の数を数え、密着性の指標とした。
(5) 光沢度は、光沢計(日本電飾工業社製)を用い、角度60度にて測定した。
【0119】
[実施例1]
(i)ジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)ハフニウムの合成
(i)−1:配位子合成
2−メチルアズレン(12.10g、0.085mol)をテトラヒドロフラン(168mL)に溶解し、アイスバスにて5℃に冷却した後、同温度でメチルリチウムのジエチルエーテル溶液(1.04mol/L、83mL、0.086mol)を滴下した。滴下終了後、アイスバスを外して3時間攪拌した。この溶液を、アイスバスにて5℃に冷却したジメチルシリルジクロリド(22.5mL,0.185mol)のテトラヒドロフラン溶液(420mL)にゆっくり滴下した。滴下終了後、アイスバスを外して3時間攪拌した後、減圧下に溶媒および未反応のジメチルシリルジクロリドを留去した。テトラヒドロフラン(240mL)を加えて0℃まで冷却し、シクロペンタジエニルナトリウム(2.1mol/L, 81mL, 0.160mol)を徐々に滴下し、滴下終了後、室温で昼夜撹拌した。攪拌終了後、水を加え、ジエチルエーテルで目的とする化合物を抽出した。抽出溶液を硫酸マグネシウムで脱水した後、乾固することにより目的配位子の未精製品を得た。
【0120】
(i)−2:錯体合成
(i)−1で得られた配位子(23.54g)をテトラヒドロフラン(310mL)に溶解し、アイスバスにて5℃に冷却した。ここに同温度で、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.59mol/L, 106mL、0.168mol)を、ゆっくり滴下した。滴下終了後、アイスバスをはずして3時間攪拌し、減圧下に溶媒を留去した。留去後得られた残渣にトルエン(280mL)とTHF(15mL)を加えた後、−78℃に冷却した。ここに、−78℃に冷却したハフニウムテトラクロリド(26.90g、0.084mol)のトルエン(380mL)懸濁液をゆっくり添加した。その後、冷却浴をはずして終夜攪拌した。攪拌終了後、反応液をG3フリットで濾過した。フリット上の固体をさらにトルエンで洗浄し、濾液を濃縮することにより、褐色の粉末が得られた。この褐色の粉末から、トルエン/ヘキサン(100mL/200mL、50mL/100mL(3回))で目的錯体を抽出した。抽出溶液を乾固させた後、得られた固体をn−ヘキサン(40mL×5回)で懸濁洗浄した後、エーテル(50mL×3)で懸濁洗浄し、減圧下で乾燥した。得られた粉末にトルエンを加え、沈殿物を濾別した後、濾液を濃縮した。得られた粉末をヘキサン(25mL×3)、エーテル(25mL×3)で洗浄ことにより、目的とするジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)ハフニウム(8.0g)を得た(収率18%)。
1H-NMR (CDCl3): δ0.85 (s, 3H), 0.86 (s, 3H), 1.47 (d, J = 7.1 Hz, 3H), 2.25 (s, 3H), 3.42-3.52 (m, 1H), 5.42 (dd, J = 4.7, 10.1 Hz, 1H), 5.80-5.85 (m, 2H), 5.90-5.95 (m, 1H), 6.16-6.20 (m, 2H), 6.65 (d, J = 11.4 Hz, 1H), 6.80-6.85 (m, 1H), 6.98-7.02 (m, 1H)。
NCI-MS(M)(528)。
【0121】
(ii)粘土鉱物の化学処理
1,000mL丸底フラスコに、脱塩水(110mL)、硫酸マグネシウム・7水和物(22.2g)および硫酸(18.2g)を採取し、攪拌下に溶解させた。この溶液に、市販の造粒モンモリロナイト(水澤化学社製;ベンクレイSL, 16.7g)を分散させ、2時間かけて100℃まで昇温し、100℃で2時間攪拌を行った。その後、1時間かけて室温まで冷却し、得られたスラリーを濾過してウェットケーキを回収した。回収したケーキを1,000ml丸底フラスコにて、脱塩水(500mL)にて再度スラリー化し、濾過を行った。この操作を2回繰り返した。最終的に得られたケーキを、窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥し、化学処理モンモリロナイト(13.3g)を得た。
【0122】
(iii)重合
実施例1(ii)で得られた化学処理モンモリロナイト(0.44g)に、トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.4mmol/mL, 2.0mL)を加え、室温で1時間攪拌した。この懸濁液にトルエン(8mL)を加え、攪拌後、上澄みを除いた。この操作を2回繰り返した後、トルエンを加えて、粘土スラリー(スラリー濃度=99mg粘土/mL)を得た。
【0123】
別のフラスコに、東ソー・アクゾ社製トリイソブチルアルミニウム(0.114mmol)を採取し、ここで得られた粘土スラリー(3.8mL)および実施例1(i)−2で得られた錯体(6.02mg, 11.4μmol)のトルエンでの希釈液を加え、室温で10分間撹拌し、触媒スラリーを得た。
次いで、内容積2リッターの誘導攪拌式オートクレーブ内に、トルエン(750mL)、トリイソブチルアルミニウム(1.9mmol)および液体プロピレン(180mL)を導入した。室温で、上記触媒スラリーを全量導入し、60℃まで昇温し、同温度で1時間攪拌を継続した。攪拌終了後、未反応プロピレンをパージして重合を停止した。オートクレーブを開放してポリマーのトルエン溶液を一部回収し、希塩酸で処理し、分液、有機相を硫酸マグネシウムで脱水、G3グラスフィルターを用いて濾過によって硫酸マグネシウム及び粘土残渣を除去し、溶媒を留去したところ、6.8gのプロピレン重合体が得られた。
Mw(110,000)、mmmm(42)、mmmr(16)、rmmr(2)、mmrr(15)、mmrm+rmrr(9)、rmrm(4)、rrrr(2)、rrrm(3)、mrrm(7)、Tm(観測されず)、2,1−挿入(0.61%)、1,3−挿入(0.63%)
【0124】
(iv) 物性評価
実施例1(iii)で得られたプロピレン重合体を、室温でトルエンに溶解させ10wt.%溶液を調製した。溶解性は良好で、不溶成分は存在しなかった。ここで得られたトルエン溶液を、日本ポリケム社製高結晶性ポリプロピレンMA3Uの射出成形片(イソプロピルアルコールで表面を清拭したもの)に塗布し(塗布量:6.7g/m2)、90℃で30分間処理した後、形成された塗膜の密着性を評価した。得られた塗膜は表面平滑性に優れ、べたつきもなく、碁盤目試験の結果、剥離した碁盤目はなく、基材であるMA3Uへの密着性も良好であった。光沢度は86であった。
【0125】
[実施例2]
(i) 重合
重合時の全圧を0.7MPaで一定に保持し、反応終了後濾過し、重合で得られたポリマーを全量回収した以外は、実施例1(iii)と同様にして重合を行い、プロピレン重合体23.2gを得た。
Mw(110,000)、mmmm(41)、mmmr(16)、rmmr(2)、mmrr(16)、mmrm+rmrr(9)、rmrm(4)、rrrr(2)、rrrm(3)、mrrm(8)、Tm(観測されず)、2,1−挿入(0.52%)、1,3−挿入(0.61%)
【0126】
(ii) プロピレン重合体の無水マレイン酸変性
温度計、攪拌機のついたステンレス耐圧反応容器中に、トルエン(200mL)および実施例2(i)で得られたプロピレン重合体(20g)を加え、容器内を窒素ガスで置換し、125℃に昇温した。昇温後、ポンプを用いて、無水マレイン酸のトルエン溶液(0.1g/mL)およびジクミルペルオキシドのトルエン溶液(0.015g/mL)を、別々の導管から6時間供給し、最終的に無水マレイン酸1.2gおよびジクミルペルオキシド0.18gを系内に供給して反応を行った。反応終了後、系を室温付近まで冷却し、アセトンを加えて、沈殿したポリマーを濾別した。さらにアセトンで沈殿・濾別を繰り返し、最終的に得られたポリマーをアセトンで洗浄した。洗浄後に得られたポリマーを減圧乾燥することにより、白色粉末状の変性樹脂が得られた。この変性樹脂の赤外線吸収スペクトル測定および中和滴定等を行った結果、無水マレイン酸基の含量は、1.0wt.%であった。
【0127】
ここで得られた無水マレイン酸変性プロピレン重合体15gにトルエン135gを加え、100℃に昇温し、1時間かけて溶解させた。得られた溶液を室温付近まで冷却した後、#400のSUS金網を通して、無水マレイン酸変性プロピレン重合体の10 wt.%溶液を調製した。
【0128】
(iii) 変性プロピレン重合体の物性評価
日本ポリケム社製高結晶性ポリプロピレンMA3Uの射出成形片(イソプロピルアルコールで表面を清拭したもの)に、実施例2(ii)で得られた無水マレイン酸変性プロピレン重合体のトルエン溶液を噴霧塗布した。なお、塗布量は、3〜5g/m2とした。次にこの成形片を25℃にて1時間静置した後、セーフベンドライヤー中にて80℃、30分間乾燥させた。次いで、この乾燥品を25℃にて1時間静置させた後、その塗膜の上からベースコートとしてアクリルポリオールウレタン塗料ウレタンPG80III(関西ペイント社製)を、所定量の硬化剤を配合し、フォードカップ4番にて専用シンナーで粘度調整を行い、粘度が12〜13秒となるように調整した後、乾燥塗布量が50〜60gになるように噴霧塗装し、セーフベンドライヤー中にて100℃、30分間焼き付けを行った。さらに、25℃にて10日間静置した後、層間密着性試験を行った。試験の結果、剥離した碁盤目はなく、実施例2(ii)で得られた無水マレイン酸変性プロピレン重合体は、基盤である高結晶性ポリプロピレンおよびベースコート塗料の両者に対して、優れた密着性を有していた。また、塗膜のべたつきもなかった。
【0129】
[実施例3]
フラスコに、東ソー・アクゾ社製トリイソブチルアルミニウム(0.11mmol)を採取し、実施例1(iii)で得られた粘土スラリー(3.8mL)および実施例1(i)−2で得られた錯体(5.96mg, 11.4μmol)のトルエンでの希釈液を加え、室温で10分間撹拌し、触媒スラリーを得た。
【0130】
触媒量、重合時の温度を40℃、全圧を0.5MPaで一定に保持した以外は、実施例2(i)と同様にして重合を行い、プロピレン重合体15gを得た。
Mw(220,000)、mmmm(48)、mmmr(15)、rmmr(2)、mmrr(14)、mmrm+rmrr(8)、rmrm(4)、rrrr(1)、rrrm(3)、mrrm(7)、Tm(観測されず)、2,1−挿入(0.09%)、1,3−挿入(0.05%)
【0131】
[実施例4]
重合時の温度を50℃、全圧を0.5MPaで一定に保持した以外は、実施例2(i)と同様にして重合を行い、プロピレン重合体80gを得た。
Mw(150,000)、mmmm(45)、mmmr(14)、rmmr(2)、mmrr(15)、mmrm+rmrr(8)、rmrm(4)、rrrr(2)、rrrm(3)、mrrm(8)、Tm(観測されず)、2,1−挿入(0.09%)、1,3−挿入(0.08%)
【0132】
[実施例5]
重合時の温度を70℃、全圧を0.72MPaで一定に保持した以外は、実施例2(i)と同様にして重合を行い、プロピレン重合体80gを得た。
Mw(100,000)、mmmm(40)、mmmr(16)、rmmr(2)、mmrr(16)、mmrm+rmrr(9)、rmrm(4)、rrrr(2)、rrrm(3)、mrrm(8)、Tm(観測されず)、2,1−挿入(0.10%)、1,3−挿入(0.25%)
【0133】
[実施例6]
重合時の温度を80℃、全圧を0.82MPaで一定に保持した以外は、実施例2(i)と同様にして重合を行い、プロピレン重合体93gを得た。
Mw(77,000)、mmmm(37)、mmmr(16)、rmmr(3)、mmrr(16)、mmrm+rmrr(9)、rmrm(5)、rrrr(2)、rrrm(4)、mrrm(8)、Tm(観測されず)、2,1−挿入(0.14%)、1,3−挿入(0.33%)
【0134】
[実施例7]
重合初期に水素をあらかじめ0.002MPa入れたこと以外は、実施例4と同様にして重合を行い、プロピレン重合体82gを得た。
Mw(81,000)、mmmm(41)、mmmr(16)、rmmr(2)、mmrr(15)、mmrm+rmrr(9)、rmrm(4)、rrrr(2)、rrrm(3)、mrrm(8)、Tm(観測されず)、2,1−挿入(0.12%)、1,3−挿入(0.27%)
【0135】
[実施例8]
重合初期に水素をあらかじめ0.004MPa入れたこと以外は、実施例2(i)と同様にして重合を行い、プロピレン重合体30gを得た。
Mw(54,000)、mmmm(41)、mmmr(16)、rmmr(2)、mmrr(15)、mmrm+rmrr(9)、rmrm(4)、rrrr(2)、rrrm(3)、mrrm(8)、Tm(観測されず)、2,1−挿入(0.09%)、1,3−挿入(0.21%)
【0136】
[実施例9]
別のフラスコに、東ソー・アクゾ社製トリイソブチルアルミニウム(0.34mmol)を採取し、ここで得られた粘土スラリー(11.4mL)および実施例1(i)−2で得られた錯体(17.7mg, 34.2μmol)のトルエンでの希釈液を加え、室温で10分間撹拌し、触媒スラリーを得た。
次いで、内容積2リッターの誘導攪拌式オートクレーブ内に、トルエン(1,300mL)、トリイソブチルアルミニウム(0.5mmol)および液体プロピレン(150mL)を導入した。室温で、上記触媒スラリーを全量導入し、70℃まで昇温し、0.45MPaに保ちながら、同温度で1時間攪拌を継続した。攪拌終了後、未反応プロピレンをパージして重合を停止した。溶媒ならびに粘土残渣を除去したところ、50gのプロピレン重合体が得られた。
Mw(83,000)、mmmm(35)、mmmr(16)、rmmr(3)、mmrr(17)、mmrm+rmrr(10)、rmrm(5)、rrrr(2)、rrrm(4)、mrrm(8)、Tm(観測されず)、2,1−挿入(0.09%)、1,3−挿入(0.44%)
【0137】
[実施例10]
トルエン(1,350mL)、液体プロピレン(90mL)、定圧(0.31MPa)、重合時間2時間以外は、実施例9と同様にして重合を行い、プロピレン重合体45gを得た。
Mw(69,000)、mmmm(30)、mmmr(16)、rmmr(4)、mmrr(16)、mmrm+rmrr(12)、rmrm(6)、rrrr(2)、rrrm(5)、mrrm(9)、Tm(観測されず)、2,1−挿入(0.08%)、1,3−挿入(0.24%)
【0138】
[実施例11]
(i)ジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2−エチル−4−メチル−4H−1−アズレニル)ハフニウムの合成
(i)−1:配位子合成
2−エチルアズレン(5.08g、0.0325mol)をテトラヒドロフラン(70mL)に溶解し、アイスバスにて5℃に冷却した後、同温度でメチルリチウムのジエチルエーテル溶液(1.20mol/L、27.8mL、0.0334mol)を滴下した。滴下終了後、アイスバスを外して2時間攪拌した。この溶液を、アイスバスにて5℃に冷却したジメチルシリルジクロリド(14mL,0.115mol)のテトラヒドロフラン溶液(120mL)にゆっくり滴下した。滴下終了後、アイスバスを外して3時間攪拌した後、減圧下に溶媒および未反応のジメチルシリルジクロリドを留去した。テトラヒドロフラン(150mL)を加えて0℃まで冷却し、シクロペンタジエニルナトリウム(2.45mol/L, 26.5mL, 0.065mol)を徐々に滴下し、滴下終了後、室温で昼夜撹拌した。攪拌終了後、水を加え、ジエチルエーテルで目的とする化合物を抽出した。抽出溶液を硫酸マグネシウムで脱水した後、乾固することにより目的配位子の未精製品を得た。
【0139】
(i)−2:錯体合成
(i)−1で得られた配位子(9.21g、0.0313mol)をテトラヒドロフラン(60mL)に溶解し、アイスバスにて5℃に冷却した。ここに同温度で、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.59mol/L, 39mL、0.062mol)を、ゆっくり滴下した。滴下終了後、アイスバスをはずして2時間攪拌し、減圧下に溶媒を留去した。留去後得られた残渣にトルエン(150mL)とTHF(5mL)を加えた後、粉末のハフニウムテトラクロリド(10.03g、0.0313mol)をゆっくり添加した。その後、冷却浴をはずして終夜攪拌した。攪拌終了後、反応液をG3フリットで濾過した。フリット上の固体をさらにトルエンで洗浄し、濾液を濃縮することにより、褐色の粉末が得られた。この褐色の粉末から、トルエン/ヘキサン(100mL/200mL)で目的錯体を抽出した。抽出溶液を乾固させた後、得られた固体を更にn−ヘキサン(40mL)で抽出及び乾固した。得られた固体を更にエーテル(20mL)で抽出及び乾固した後、更にペンテン(50mL)で洗浄した。、最後にエーテル/ヘキサン(5mL/25mL)で抽出・溶媒除去後、減圧下で乾燥することにより、目的とするジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2−エチル−4−メチル−4H−1−アズレニル)ハフニウム(0.5g)を得た(収率3%)。
1H-NMR (CDCl3): δ0.86 (s, 3H), 0.88 (s, 3H), 1.18 (t, J = 7.5 Hz, 3H), 1.46 (d, J = 7.1 Hz, 3H), 2.56 (q, J = 7.5 Hz, 2H), 3.45-3.60 (m, 1H), 5.45 (dd, J = 4.1, 10.1 Hz, 1H), 5.75-5.82 (m, 2H), 5.89-5.92 (m, 1H), 6.10-6.20 (m, 2H), 6.64 (d, J = 11.4, 1H), 6.83-6.87 (m, 1H), 7.00-7.02 (m, 1H)。
NCI-MS(M)(542)。
【0140】
(ii)重合
フラスコに、東ソー・アクゾ社製トリイソブチルアルミニウム(0.02mmol)を採取し、ここで得られた粘土スラリー(1.9mL)および実施例1211(i)−2で得られた錯体(3.1mg, 5.7μmol)のトルエンでの希釈液を加え、室温で10分間撹拌し、触媒スラリーを得た。
【0141】
次いで、内容積2リッターの誘導攪拌式オートクレーブ内に、トルエン(1,100mL)、トリイソブチルアルミニウム(0.35mmol)および液体プロピレン(264mL)を導入した。室温で、上記触媒スラリーを全量導入し、60℃まで昇温し、同温度で0.75MPaに保つようにプロピレンを追加しながら1時間攪拌を継続した。攪拌終了後、未反応プロピレンをパージして重合を停止した。オートクレーブを開放して、重合溶液をG3グラスフィルターを用いて濾過し、溶媒を留去したところ、28gのプロピレン重合体が得られた。
Mw(130,000)、mmmm(31)、mmmr(17)、rmmr(3)、mmrr(17)、mmrm+rmrr(12)、rmrm(6)、rrrr(2)、rrrm(4)、mrrm(8)、Tm(観測されず)、2,1−挿入(0.04%)、1,3−挿入(0.06%)
【0142】
[実施例12]
(i)ジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)ハフニウムの合成実施例1の(i)−2で合成したジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)ハフニウム(484mg、0.90μmol)をジクロロメタン (25mL) に溶かし、酸化白金(25mg)を加えた。この混合物を、水素下 (0.5 MPa)、20℃で1時間撹拌した。得られた懸濁液をセライトで濾過し、塩化メチレン (15 mL) で洗浄し,濾液を濃縮した。粗生成物をペンタン(10mL)で2回洗浄する減圧下乾固し、ジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−5,6,7,8−テトラヒドロ−1−アズレニル)ハフニウム(413mg、85%収率)を得た。
1H-NMR (CDCl3): δ0.83 (s, 3H), 0.84 (s, 3H), 1.05-1.22 (m, 2H), 1.21 (d, J = 6.9 Hz, 3H), 1.50-1.68 (m, 2H), 1.70-1.98 (m, 3H), 2.22 (s, 3H), 2.72 (dd, J = 6.6, 14.2 Hz, 1H), 2.95-3.05 (m, 1H), 5.60-5.61 (m, 1H), 5.85-5.86 (m, 1H), 6.25 (s, 1H), 6.79-6.80 (m, 1H), 7.00-7.02 (m, 1H)。
NCI-MS(M)(532)。
【0143】
(ii)重合
使用した錯体を実施例12(i)で得られた錯体に変えた以外は実施例11(ii)と同様に行い、34gのプロピレン重合体が得られた。
Mw(210,000)、mmmm(54)、mmmr(15)、rmmr(1)、mmrr(15)、mmrm+rmrr(4)、rmrm(2)、rrrr(1)、rrrm(1)、mrrm(7)、Tm(観測されず)、2,1−挿入(0.09%)、1,3−挿入(0.18%)
【0144】
[実施例13]
(i)ジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)ジルコニウムの合成
(i)錯体合成
実施例1の(i)−1で得られた配位子(10.56g、0.038mol)をテトラヒドロフラン(90mL)に溶解し、アイスバスにて5℃に冷却した。ここに同温度で、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.59mol/L, 47.3mL、0.075mol)を、ゆっくり滴下した。滴下終了後、アイスバスをはずして2時間攪拌し、減圧下に溶媒を留去した。留去後得られた残渣にトルエン(200mL)とTHF(10mL)を加えた後、−78℃に冷却した。ここに、ジルコニウムテトラクロリド(8.73g、0.038mol)をゆっくり添加した。その後、冷却浴をはずして終夜攪拌した。攪拌終了後、反応液をG3フリットで濾過した。フリット上の固体をさらにトルエンで洗浄し、濾液を濃縮することにより、褐色の粉末が得られた。この褐色の粉末から、トルエン/ヘキサン(70mL/100mL)で目的錯体を抽出した。抽出溶液を乾固させた後、得られた固体をn−ヘキサン(200mL×2回)で懸濁洗浄した後、エーテル(15mL×3)で懸濁洗浄した。この操作をもう一度繰り返した後、減圧下で乾燥することより、目的とするジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)ジルコニウム(2.3g)を得た(収率14%)。
1H-NMR (CDCl3): δ0.86 (s, 3H), 0.87 (s, 3H), 1.48 (d, J = 7.0 Hz, 3H), 2.17 (s, 3H), 3.30-3.42 (m, 1H), 5.42 (dd, J = 4.8, 10.1 Hz, 1H), 5.80-5.89 (m, 2H), 5.95-6.02 (m, 1H), 6.15-6.25 (m, 1H), 6.32 (s, 1H), 6.58 (d, J = 11.6 Hz, 1H), 6.88-6.92 (m, 1H), 7.08-7.10 (m, 1H)。
NCI-MS(M)(438)。
【0145】
(ii)重合
実施例1(ii)で得られた化学処理モンモリロナイト(0.15g)に、トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.4mmol/mL, 0.5mL)を加え、室温で1時間攪拌した。この懸濁液にトルエン(1mL)を加え、攪拌後、上澄みを除いた。この操作を2回繰り返した後、トルエンを加えて、粘土スラリー(スラリー濃度=66mg粘土/mL)を得た。
【0146】
別のフラスコに、東ソー・アクゾ社製トリイソブチルアルミニウム(0.03mmol)を採取し、ここで得られた粘土スラリー(1.5mL)および実施例13(i)で得られた錯体(1.3mg, 3.0μmol)のトルエンでの希釈液を加え、室温で10分間撹拌し、触媒スラリーを得た。
次いで、内容積1リッターの誘導攪拌式オートクレーブ内に、トリイソブチルアルミニウム(0.25mmol)および液体プロピレン(700mL)を導入した。室温で、上記触媒スラリーを全量導入し、80℃まで昇温し、同温度で30分間攪拌を継続した。攪拌終了後、未反応プロピレンをパージして重合を停止した。オートクレーブを開放して、ポリマーをトルエンに溶かし、そのトルエン溶液をG3グラスフィルターを用いた濾過によって粘土残渣を除去し、溶媒を留去したところ、12.5gのプロピレン重合体が得られた。
Mw(11,000)、mmmm(33)、mmmr(17)、rmmr(5)、mmrr(16)、mmrm+rmrr(11)、rmrm(4)、rrrr(2)、rrrm(3)、mrrm(9)、Tm(観測されず)、2,1−挿入(0.14%)、1,3−挿入(0.19%)
【0147】
[比較例1]
(i) ジクロロ{1,1'−ジメチルシリレンビス[2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4H−アズレニル]}ハフニウムのラセミ体の合成
2−フルオロ−4−ブロモビフェニル(6.35g, 25.3mmol)を、ジエチルエーテル(50mL)とn−ヘキサン(50mL)の混合溶媒に溶かし、t−ブチルリチウムのn−ペンタン溶液(33mL,50.6mmol,1.54N)を−78℃で滴下した。−10℃で2時間攪拌し、この溶液に2−エチルアズレン(3.55g,22.8mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。n−ヘキサン(30mL)を加え、上澄みをデカンテーションで除去した。さらに、この操作をもう一度繰り返した。得られた黄色沈殿に、0℃でn−ヘキサン(30mL)とテトラヒドロフラン(40mL)を加えた。次いで、N−メチルイミダゾール(50μL)とジメチルジクロロシラン(1.4mL, 11.4mmol)を加え、室温まで昇温し、室温で1時間攪拌した。この後、希塩酸を加え、分液して後有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下に溶媒を留去すると、ジメチルシリレンビス(2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニル)−1,4−ジヒドロアズレン)の粗生成物(8.3g)が得られた。
【0148】
次に、上記で得られた粗生成物をジエチルエーテル(30mL)に溶かし、−70℃でn−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(14.9mL,22.8mmol,1.53N)を滴下し、徐々に昇温して、室温で一夜攪拌した。さらに、トルエン(200mL)を加え、−70℃に冷却し、四塩化ハフニウム(3.6g,11.4 mmol)を加え、徐々に昇温し、室温で4時間攪拌した。得られたスラリーから、減圧下に大部分の溶媒を留去し、ジエチルエーテル(50mL)を加え、得られたスラリーを濾過した。ジエチルエーテル(5mL×2)、エタノール(15mL×2)、n−ヘキサン(10mL×2)で洗浄すると、ジクロロ{1,1'−ジメチルシリレンビス[2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4H−アズレニル]}ハフニウムのラセミ・メソ混合物(4.53g, 収率42%)が得られた。得られたラセミ・メソ混合物を1H−NMRで分析した結果、ラセミ体76.6%、メソ体23.4%の混合物であることがわかった。
【0149】
ここで得られたラセミ・メソ混合物(4.5g)をジクロロメタン(35mL)に懸濁し、高圧水銀灯(100W)を用いて1時間光照射した。減圧下に溶媒を留去し、得られた固体にトルエン(25mL)とジクロロメタン(11mL)を加え、60℃に加熱すると均一溶液となった。減圧下にジクロロメタンを留去すると結晶が析出した。得られた結晶を濾過して、ヘキサン(5mL)で2回洗浄し、減圧下乾燥すると、ラセミ体(1.79g)が得られた。
【0150】
(ii) 粘土鉱物の化学処理
500mL丸底フラスコに、脱塩水55.85gと硫酸32.70gおよび水酸化リチウム8.01gを加えて攪拌した後、モンモリロナイト(水澤化学社製:水澤スメクタイト)51.65gを添加し、昇温して還流下に140分間処理した。脱塩水300mLを加えて吸引濾過した後、脱塩水600mLに固体成分を分散させて吸引濾過した。この操作をさらにもう1度繰り返した。濾過して得られた残留物を100℃で乾燥し、酸および金属塩処理モンモリロナイトを得た。
【0151】
ここで得られた酸および金属塩処理モンモリロナイト1.05gを100mL丸底フラスコに採取し、減圧下、200℃で2時間加熱乾燥させた。これに、トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.5mmol/mL)を、精製窒素下で4.0mL添加して、室温で30分反応させた後、トルエン30mLで2回洗浄し、化学処理モンモリロナイトを含有するトルエンスラリーを得た。
【0152】
(iii) 予備重合
上記(ii)で得られたスラリー(固形分として914.2mg含有)からトルエンを抜き出し、残存トルエン量を1.0mLとした。このスラリーに、トリイソブチルアルミニウムのトルエン溶液(0.5mmol/mL, 0.5mL)を加え、さらに、比較例1(1)で合成したジクロロ{1,1'−ジメチルシリレンビス[2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4H−アズレニル]}ハフニウムのラセミ体のトルエン溶液(3.0mmol/mL, 9.2mL)を加え、室温で1時間攪拌し、触媒スラリーを得た。
【0153】
2リッターの誘導攪拌式オートクレーブに、精製窒素下、トルエン40mLと上記触媒スラリー全量を導入した。攪拌下にプロピレン11.0gを導入し、30℃で2時間、次いで50℃で0.5時間予備重合を行った。予備重合後、未反応のプロピレンをパージし、精製窒素0.5MPaで2回加圧置換した後予備重合触媒を取り出した。このものは、化学処理モンモリロナイト成分1gあたり9.7gの重合体を含有していた。
【0154】
(iv) 重合
いかり型攪拌翼を内蔵する2リッターの誘導攪拌式オートクレーブを精製窒素で置換し、次いで、25℃で液化プロピレン750gを装入した。トリイソブチルアルミニウムのトルエン溶液(0.1mmol/mL,5.0mL)を同温度で圧入後、70℃まで昇温した。水素を、気相中の水素濃度で0.2mol%になるように加えた後、70℃で、上記(iii)で得られた予備重合触媒を30.0mg加え、重合を開始した。1時間後、未反応のプロピレンをパージし、重合を終了した。得られたプロピレン系重合体の量は384gであった。
Mw(110,000)、mmmm(99)、mmmr(1)、rmmr(観測されず)、mmrr(観測されず)、mmrm+rmrr(観測されず)、rmrm(観測されず)、rrrr(観測されず)、rrrm(観測されず)、mrrm(観測されず)、Tm(156.5℃)、2,1−挿入(0.11%)、1,3−挿入(0.17%)
【0155】
(v)物性評価
上記(iv)で得られたプロピレン重合体を、室温でトルエンに溶解させようと試みたが、該重合体は実質的にトルエンに溶解しなかった。
[比較例2]
(i)2,2−プロピリデン(3−t−ブチルシクロペンタジエニル)(10−(5−フェニル−5−ヒドロベンズ[a]アズレニル)ジルコニウムジクロリドの合成
(i)−1 2−t−ブチル−6,6−ジメチルフルベンの合成窒素雰囲気下、t−ブチルシクロペンタジエン(二重結合の位置異性体の混合物)7.33g(60.0mmol)の乾燥メタノール(60mL)溶液に、室温下、アセトン4.4mLを加え、さらにピロリジン7.51mL(90mmol)を8分かけて滴下した。室温で27時間撹拌後、酢酸10.8mLを加えた。この反応混合物に水300mLとエーテル300mLを加えて有機相と水相とに分けた。水相をエーテルで抽出し、抽出溶媒と有機相を合わせて水及び飽和食塩水で洗った。 硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去し、残渣を蒸留して橙色の液体を得た。このものの沸点は116℃(38mmHg)、収量は3.24g、収率は33%であった。
【0156】
(i)−2 2,2−プロピリデン(3−t−ブチルシクロペンタジエニル){(10−(5−フェニル−5−ヒドロベンズ[a]アズレニル))ジルコニウムジクロリドの合成窒素雰囲気下、0.63g(3.53mmol)のベンズ[a]アズレンの乾燥テトラヒドロフラン(10mL)溶液に、−23℃でフェニルリチウムのシクロヘキサン−エーテル溶液(0.94mol/L)3.8mlを5分かけて滴下した。滴下終了後30分この温度で撹拌し、その後反応溶液を−78℃にて2−t−ブチル−6,6−ジメチルフルベン0.57g(3.51mmol)の乾燥テトラヒドロフラン(5mL)溶液を10分かけて滴下した。滴下終了後、温度を徐々に室温まで上げながら、15時間撹拌し、その後飽和塩化アンモニウム水溶液40mlを加えて反応を停止した。
【0157】
有機相を分液後、水相をエーテルで抽出し、抽出溶媒と有機相を合わせて水及び飽和食塩水で洗った。硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧下室温で留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン)で精製してアモルファス状の(2−t−ブチル−4−メチルシクロペンタジエン−1−イル)ジメチル(5−フェニル−5,10−ジヒドロベンズ[a]アズレン−10−イル)シラン及びその二重結合の位置異性体の混合物0.37gを得た。
【0158】
(i)−3 これを乾燥エーテル(10mL)に溶かして−78℃に冷却し、これにn−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.54mol/L)1.45mLを5分かけて滴下した。反応液を徐々に室温まで昇温しながら15時間撹拌した後、溶媒を減圧下室温で留去した。残渣を乾燥トルエン(14.5mL)及び乾燥エーテル(0.5mL)の混合溶媒に懸濁し、−78℃で四塩化ジルコニウム0.25g(1.1mmol)を1分かけて加えた。
【0159】
反応混合物を室温まで徐々に昇温しながら9時間撹拌した後、溶媒を減圧下室温で留去した。残渣を乾燥塩化メチレンに懸濁して窒素雰囲気下濾過し、濾液を減圧下室温で5mlに濃縮した。これに乾燥n−ヘキサン30mLを加え、析出した沈殿を窒素下濾別し、さらに沈殿を乾燥n−ヘキサンで洗った。濾液と洗液の溶媒を減圧下室温で留去し、残渣を最小量の乾燥塩化メチレンに溶かしてこれに乾燥n−ヘキサンを加えて沈殿を析出させた。窒素雰囲気下沈殿を濾別し、これを乾燥n−ヘキサンで洗った。得られた濾液と洗液を合わせて溶媒を減圧下室温で留去し、黄色の固体を得た。質量分析測定により、目的物(2,2−プロピリデン(3−t−ブチルシクロペンタジエニル){(10−(5−フェニル−5−ヒドロベンズ[a]アズレニル))ジルコニウムジクロリド}を得た。
【0160】
(ii)重合:窒素下、室温で内容積1リットルのオートクレーブにMMAO(15mmol)のトルエン溶液(7.9mL)、比較例2(i)−3で得られた錯体(5.2μmol)のトルエン溶液(3.0mL)、をこの順に加えた後、液体プロピレン700mlを加え、70℃に昇温して1時間重合を行った。得られたポリマーを熱風下で乾燥した。ポリマーの収量は9.8gであった。
mmmm(99)、mmmr(1)、rmmr(観測されず)、mmrr(観測されず)、mmrm+rmrr(観測されず)、rmrm(観測されず)、rrrr(観測されず)、rrrm(観測されず)、mrrm(観測されず)、Tm(153.8℃)、2,1−挿入(0.20%)、1,3−挿入(0.10%)
【0161】
(iii)物性評価
上記(ii)で得られたプロピレン重合体を、室温でトルエンに溶解させようと試みたが、該重合体は実質的にトルエンに溶解しなかった。
【0162】
[比較例3]
(i) 固体触媒成分の製造
攪拌翼、温度計、ジャケット、冷却コイルを備えた100リッターの反応器に、Mg(OEt)2:30molを仕込み、次いで、Ti(OBu)4を、仕込んだMg(OEt)2中のマグネシウムに対して、Ti(OBu)4/Mg=0.60(モル比)となるように仕込んだ。さらに、トルエンを19.2kg仕込み、攪拌しながら昇温した。139℃で3時間反応させた後、130℃に降温して、MeSi(OPh)3のトルエン溶液を、先に仕込んだMg(OEt)2中のマグネシウムに対して、MeSi(OPh)3/Mg=0.67(モル比)になるように添加した。なお、ここで用いたトルエン量は、7.8kgであった。添加終了後、130℃で2時間反応させ、その後、室温に降温し、Si(OEt)4を添加した。Si(OEt)4の添加量は、先に仕込んだMg(OEt)2中のマグネシウムに対して、Si(OEt)4/Mg=0.056(モル比)となるようにした。
【0163】
次に、得られた反応混合物に対して、マグネシウム濃度が、0.58(mol/L-TOL)になるように、トルエン(TOL)を添加した。さらに、フタル酸ジエチル(DEP)を、先に仕込んだMg(OEt)2中のマグネシウムに対して、DEP/Mg=0.10 (モル比)になるように添加した。得られた混合物を、引き続き攪拌しながら−10℃に冷却し、TiCl4を2時間かけて滴下して均一溶液を得た。なお、TiCl4は、先に仕込んだMg(OEt)2中のマグネシウムに対して、TiCl4/Mg=4.0(モル比)になるようにした。TiCl4添加終了後、攪拌しながら0.5℃/minで15℃まで昇温し、同温度で1時間保持した。次いで、再び0.5℃/minで50℃まで昇温し、同温度で1時間保持した。さらに、1℃/minで118℃まで昇温し、同温度で1時間処理を行った。処理終了後、攪拌を停止し、上澄み液を除去した後、トルエンで、残液率=1/73になるように洗浄し、スラリーを得た。
【0164】
次に、ここで得られたスラリーに、室温で、トルエンとTiCl4を添加した。なお、TiCl4は、先に仕込んだMg(OEt)2中のマグネシウムに対して、TiCl4/Mg(OEt)2=5.0(モル比)となるようにした。また、トルエンは、TiCl4濃度が、2.0(mol/L-TOL)になるように調製した。このスラリーを攪拌しながら昇温し、118℃で1時間反応を行った。反応終了後、攪拌を停止し、上澄み液を除去した後、トルエンで、残液率=1/150となるように洗浄し、固体触媒成分のスラリーを得た。
【0165】
(ii)固体触媒成分の処理
100mLなすフラスコに、比較例3(i)で得られた固体触媒成分のスラリーを、固体触媒成分として117.3mg採取した。このスラリーを攪拌しながら0.27mmolのトリエチルアルミニウムを室温で滴下した。滴下終了後、引き続き室温で30分間攪拌した。
【0166】
(iii)プロピレンの重合
誘導攪拌式オートクレーブ(容量:2リットル)に、室温、窒素気流下で、トリエチルアルミニウム:2.0mmolと、t−BuEtSi(OMe)2:0.05mmolを仕込んだ。ついで、液体プロピレン:750gを仕込んだ後、水素を、70℃における気相の水素濃度で、13mol%になるように加えた。攪拌しながら70℃に昇温し、70℃になった時点で、比較例3(ii)において、トリエチルアルミニウムで処理した固体触媒成分を、固体触媒成分として11.6mg添加して重合を開始した。70℃で1時間重合を行った後、余剰のプロピレンをパージして重合を停止した。得られたプロピレン重合体は、505gであった。また、得られたプロピレン重合体を分析したところ、MFR=118.5(g/10min)であった。また、13C−NMRで分析したところ、プロピレンの2,1−挿入と1,3−挿入は観測されなかった。
【0167】
(iv)プロピレン重合体の変性
U. W. Suter et al., J. Am. Chem. Soc., 14, 528 (1981) を参考にして以下の反応を行った。
上記(iii)で得られたプロピレン重合体2.0gを容量50mLのミクロオートクレーブに採取し、ついで、n−ヘプタン(8.0mL)、およびPd/C(0.5g)を加え、水素圧5.0MPaのもと、320℃で5時間反応させた。反応終了後、触媒を濾別し、溶媒を減圧下に除去して変性プロピレン重合体2.0gを得た。
【0168】
Mw(100,000)、mmmm(18)、mmmr(12)、rmmr(6)、mmrr(12)、mmrm+rmrr(23)、rmrm(10)、rrrr(5)、rrrm(10)、mrrm(4)、Tm(150.7℃)、2,1−挿入(観測されず)、1,3−挿入(観測されず)
【0169】
(v) 物性評価
上記(iv)で得られた変性プロピレン重合体を、実施例1(iv)と同様にして物性評価を行った。室温でトルエンに溶解させ10wt.%溶液を調製したところ、溶解性は良好で、不溶成分は存在しなかった。ここで得られたトルエン溶液を、日本ポリケム社製高結晶性ポリプロピレンMA3Uの射出成形片(イソプロピルアルコールで表面を清拭したもの)に塗布し(塗布量:6.7g/m2)、90℃で30分間処理した。形成された塗膜は、正常な密着性試験が実施できないほどべたつきが顕著であった。
以上より、一般式(I)を満たさない遷移金属化合物を触媒成分として用いて得られた重合体は塗装用に好適な物性が得られないことが明らかである。
【0170】
[比較例4]
(i)ジクロロ[ジメチルシリレン(2−メチルインデニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)ジルコニムの合成
(i)−1:配位子合成
2−メチルアズレン(1.99g)をテトラヒドロフラン(28mL)に溶解し、アイスバスにて4℃に冷却した後、同温度でメチルリチウムのジエチルエーテル溶液(1.14mol/L、12.4mL、14.1mol)を滴下した。滴下終了後、アイスバスを外して2時間攪拌した。この溶液を、アイスバスにて5℃に冷却したジメチルシリルジクロリド(17.2ml, 0.142mol)のテトラヒドロフラン溶液(70mL)にゆっくり滴下した。滴下終了後、アイスバスを外して3時間攪拌した後、減圧下に溶媒および未反応のジメチルシリルジクロリドを留去した。テトラヒドロフラン(60ml)を加えて5℃まで冷却し、別途合成した2−メチルインデニルリチウム塩(14.2mmol)のTHF(20mL)溶液を徐々に滴下し、滴下終了後、室温で昼夜撹拌した。攪拌終了後、水を加え、ジエチルエーテルで目的とする化合物を抽出した。抽出溶液を硫酸マグネシウムで脱水した後、乾固することにより目的配位子の未精製品を得た。それをカラムクロマトグラフィー(シリカゲル(100g)、ヘキサン)で精製することにより、目的配位子を得た(2.04g、42%収率)。
【0171】
(i)−2:錯体合成
(i)−1で得られた配位子(2.04g)をテトラヒドロフラン(30mL)に溶解し、アイスバスにて5℃に冷却した。ここに同温度で、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.56mol/L, 7.6mL、11.9mol)を、ゆっくり滴下した。滴下終了後、アイスバスをはずして2時間攪拌し、減圧下に溶媒を留去した。留去後得られた残渣にトルエン(40mL)を加えた後、−78℃に冷却した。ここに、−78℃に冷却したジルコニウムテトラクロリド(1.29g、5.53mol)のトルエン(45mL)懸濁液をゆっくり添加した。その後、冷却浴をはずして終夜攪拌した。攪拌終了後、反応液をG3フリットで濾過した。フリット上の固体をさらにトルエンで洗浄し、濾液を濃縮することにより、褐色の粉末が得られた。この褐色の粉末から、トルエン/ヘキサン(10mL/50mL、5mL/25mL(2回))で目的錯体を抽出した。抽出溶液を乾固させた後、得られた固体をn−ヘキサン(40mL×5回)で懸濁洗浄、乾燥することにより、ジクロロ[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4−ジメチル−4H−1−アズレニル)ハフニウム(0.5g)を得た(収率17%)(3/1)(アンチ/シンの混合物)。
1H-NMR (CDCl3)(主成分): δ 1.11 (s, 3H), 1.20 (s, 3H), 1.37 (d, J = 7.1 Hz, 3H), 2.28 (s, 3H), 2.45 (s, 3H), 3.05-3.18 (m, 1H), 5.32 (dd, J = 4.8, 10.1 Hz, 1H), 5.75-5.85 (m, 1H), 6.05-6.10 (m, 1H), 6.15 (s,1H), 6.85 (s,1H), 6.90 (d, J = 11.6 Hz, 1H), 6.95-7.06 (m, 2H), 7.15-7.40 (m, 2H), 7.60-7.72 (m, 2H)。
(副成分): δ 1.11 (s, 3H), 1.20 (s, 3H), 1.40 (d, J = 7.0 Hz, 3H), 2.12 (s, 3H), 2.35 (s, 3H), 3.43-3.52 (m, 1H), 5.40 (dd, J = 4.8, 10.1 Hz, 1H), 5.80-5.88 (m, 1H), 6.18-6.27 (m, 1H), 6.28 (s,1H), 6.83 (s,1H), 6.92 (d, J = 11.6 Hz, 1H), 6.89-7.06 (m, 2H), 7.15-7.40 (m, 2H), 7.60-7.72 (m, 2H)。
【0172】
(ii)重合
実施例1(ii)で得られた化学処理モンモリロナイト(0.173g)に、トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.4mmol/mL, 2.0mL)を加え、室温で1時間攪拌した。この懸濁液にトルエン(8mL)を加え、攪拌後、上澄みを除いた。この操作を2回繰り返した後、トルエンを加えて、粘土スラリー(スラリー濃度=99mg粘土/mL)を得た。
【0173】
別のフラスコに、東ソー・アクゾ社製トリイソブチルアルミニウム(0.075mmol)を採取し、上記で得られた粘土スラリー(1.8mL)および比較例4(i)−2で得られた錯体(4.04mg, 8.0μmol)のトルエンでの希釈液を加え、室温で10分間撹拌し、触媒スラリーを得た。
次いで、内容積2リッターの誘導攪拌式オートクレーブ内に、トルエン(1,100mL)、トリイソブチルアルミニウム(0.5mmol)および液体プロピレン(264mL)を導入した。室温で、上記触媒スラリーを全量導入し、70℃まで昇温し、同温度で45分攪拌を継続した。攪拌終了後、未反応プロピレンをパージして重合を停止した。オートクレーブを開放してポリマーのトルエン白濁溶液を回収した。溶媒ならびに粘土残渣を除去したところ、90gのプロピレン重合体が得られた。得られたポリマーはトルエンに完全溶解しなかった。
Mw(42,000)、mmmm(39)、mmmr(15)、rmmr(2)、mmrr(15)、mmrm+rmrr(10)、rmrm(5)、rrrr(3)、rrrm(5)、mrrm(6)、Tm(観測されず)、2,1−挿入(0.15%)、1,3−挿入(0.12%)
【0174】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明の触媒によれば、適度な分子量、適度なmmmm値及び適度な2,1−誤挿入+1,3−誤挿入量のオレフィン重合体が得られ、トルエンやキシレンのような炭化水素溶媒に可溶で、プロピレン系重合体に対して良好な接着性、塗装性を付与する重合体を製造可能にした。
Claims (12)
- 下記一般式(I)で表されるC1対称性の遷移金属化合物。
R3は、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基;
R5は炭素数4〜9の飽和または不飽和の二価の炭化水素基;
R6は、水素原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基;
R7は、炭素数1〜5の、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基;
nは、0またはR5の炭素数の2倍以下の整数(ただし、nが2以上の場合、R6同士が任意の位置で結合して環構造を形成していてもよい。);
Qは炭素数1〜20の二価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいオリゴシリレン基、及び炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいゲルミレン基から選ばれる架橋基であり、前記のシリレン基、オリゴシリレン基またはゲルミレン基上に2個の炭化水素基が存在する場合は、それらが互いに結合して環構造を形成していてもよい;
X及びYは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基または窒素含有炭化水素基から選ばれるMとσ結合を形成する配位子であって、前記の炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基または窒素含有炭化水素基の炭素数は1〜20である;
Mは周期律表第4〜6族の遷移金属を、各々示す。) - R5の炭素数が4である請求項1に記載のC1対称性の遷移金属化合物。
- 下記一般式(II)で表されるC1対称性の遷移金属化合物。
R3は、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基;
R7は、炭素数1〜5の、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基;
R8〜R11はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基。隣接するR8〜R11は互いに環を形成してもよい;
Qは炭素数1〜20の二価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいオリゴシリレン基、及び炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいゲルミレン基から選ばれる架橋基であり、前記のシリレン基、オリゴシリレン基またはゲルミレン基上に2個の炭化水素基が存在する場合は、それらが互いに結合して環構造を形成していてもよい;
X及びYは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基または窒素含有炭化水素基から選ばれるMとσ結合を形成する配位子であって、前記の炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基または窒素含有炭化水素基の炭素数は1〜20である;
Mは周期律表第4〜6族の遷移金属を、各々示す。) - R4、R8、R9、R10が水素原子である請求項3に記載のC1対称性の遷移金属化合物。
- 下記一般式(III)で表されるC1対称性の遷移金属化合物。
R3は、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基;
R7は、炭素数1〜5の、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基;
R12〜R19はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基。隣接するR12〜R19は互いに環を形成してもよい;
Qは炭素数1〜20の二価の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基、炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいオリゴシリレン基、及び炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいゲルミレン基から選ばれる架橋基であり、前記のシリレン基、オリゴシリレン基またはゲルミレン基上に2個の炭化水素基が存在する場合は、それらが互いに結合して環構造を形成していてもよい;
X及びYは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基または窒素含有炭化水素基から選ばれるMとσ結合を形成する配位子であって、前記の炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基または窒素含有炭化水素基の炭素数は1〜20である;
Mは周期律表第4〜6族の遷移金属を、各々示す。) - R4、R12〜R18が水素原子である請求項5に記載のC1対称性の遷移金属化合物。
- Mが周期律表第4族の遷移金属である請求項1〜6の何れか1項に記載のC1対称性の遷移金属化合物。
- X及びYで表わされる炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基が、下記(1)〜(5)より選ばれる請求項1〜7の何れか1項に記載のC1対称性の遷移金属化合物。
(1) アルキル基、アルケニル基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、及びアリール基から選ばれる炭化水素基、
(2) 前記(1)の炭化水素基の任意の位置にハロゲン原子が置換したハロゲン化炭化水素基、
(3) トリアルキルシリルメチル基、ジ(アルキル)(アリール)シリルメチル基から選ばれるケイ素含有炭化水素基、
(4) アルコキシ基、アリロキシ基、アリールアルコキシ基、及び酸素含有複素環基から選ばれる酸素含有炭化水素基、
(5) 窒素含有複素環基である窒素含有炭化水素基。 - 請求項1〜8の何れか1項に記載のC1対称性の遷移金属化合物を含むオレフィン重合用触媒成分。
- 次の成分(A)及び(B)と任意に成分(C)を含むことを特徴とするα−オレフィン重合用触媒。
成分(A):請求項1〜8の何れか1項に記載のC1対称性の遷移金属化合物
成分(B):有機アルミニウムオキシ化合物、成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸からなる群より選ばれる化合物成分(C):微粒子担体 - 次の成分(A)及び(D)と任意に成分(E)を含むことを特徴とするα−オレフィン重合用触媒。
成分(A):請求項1〜8の何れか1項に記載のC1対称性の遷移金属化合物
成分(D):珪酸塩を除くイオン交換性層状化合物または無機珪酸塩からなる群より選ばれる化合物
成分(E):有機アルミニウム化合物 - 請求項10または11に記載のオレフィン重合用触媒とα−オレフィンとを接触させて重合または共重合を行うことを特徴とするα−オレフィン重合体の製造方法。
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