JP4214582B2 - 積層型蒸発器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、入口側冷媒流路および出口側冷媒流路を並列に形成する一対の金属薄板によりチューブを構成し、このチューブを多数積層するとともに、一対の金属薄板の両端部にそれぞれ2個づつタンク部を形成し、このタンク部により各冷媒流路に冷媒を入出(冷媒の分配、集合)させるようにした積層型蒸発器に関するもので、例えば、車両用空調装置に用いて好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の積層型蒸発器として、本出願人は、先に、特開平9−170850号公報において、図8に示す冷媒流路構成を持った冷媒蒸発器1を提案している。この冷媒蒸発器1においては、その上下両端部に、入口タンク部47、48と出口タンク部43、44とを区画形成して、冷媒に吸熱して冷却される送風空気Aの流れに対して、空気上流側に冷媒出口側熱交換部3bを、また、空気下流側に冷媒入口側熱交換部3aを区画形成している。そして、下側の入口タンク部48は、仕切り部51にて第1入口タンク部aと第2入口タンク部bに、上側の出口タンク部43は、仕切り部52にて第1出口タンク部cと第2出口タンク部dにそれぞれ仕切られている。
【0003】
そして、この蒸発器1では、図11に示すように、一対の金属薄板4を最中合わせ状に接合して、冷媒が流れるチューブ2を構成しており、このチューブ2内の冷媒通路は、センターリブ49により風下側の冷媒通路2aと風上側の冷媒通路2bとに仕切られている。また、一対の金属薄板4の長手方向の両端部には、両冷媒通路2a、2bの一端、他端に連通するタンク部47、48、43、44が楕円筒状に突出形成されている。
【0004】
そして、これらのタンク部47、48、43、44には、それぞれ、隣接するタンク部47、48、43、44と連通する連通穴45、46、41、42が形成されている。
このような構成の蒸発器1では、その内部を冷媒が図8の実線矢印に示す経路により流れる。仕切り部51、52より右側では、入口側熱交換部3aと出口側熱交換部3bの冷媒流れ方向を下方向とし、仕切り部51、52より左側では、両熱交換部3a、3bの冷媒流れ方向を上方向として、冷媒の流れ方向を一致させている。このような冷媒通路構成により、気液二相冷媒の液相冷媒と気相冷媒がチューブ2内の冷媒通路2a、2bに対して不均一に分配されても、矢印A方向に流れる空気の蒸発器吹出空気温度を蒸発器1の全域にわたって均一化できる。
【0005】
ところで、上記した蒸発器1では、図11に示す金属薄板4をアルミニュウム合金で所定形状に成形して、この多数の金属薄板4を積層して所定の蒸発器形状に仮組み付けした後に、その仮組付体を治具により保持して炉内に搬送し、仮組付体の全体を炉中にて一体ろう付けするようにしている。
このような製造方法においては、金属薄板4を含むコア部の積層作業の自動組付化が生産性向上のために重要であり、そして、このためには、金属薄板4相互の位置決めを簡単に行うことが必要がある。
【0006】
そこで、従来では図12および図13に示すように、金属薄板4の両端部に形成される出口タンク部43、44の一方にプレス加工で連通穴41(42)の周縁部に所定高さを持つ筒状の突出部(いわゆるバーリング部)4Aを形成している。他方の出口タンク部43、44の連通穴41(42)は突出部4Aを嵌入できる大きさに設定し、突出部を形成しない。なお、金属薄板4は、突出部4Aを除いて上下対称形状にしてある。
【0007】
従って、金属薄板4を同一形状に成形しても、同一形状の金属薄板4の向きを交互に上下逆転させて積層し、その積層時に突出部4Aを連通穴41(42)内に嵌入することにより、突出部4Aをガイドとして金属薄板4相互の位置決めを自動的に簡単に行うことができ、これにより、金属薄板4を含むコア部の積層作業を自動組付することが可能となる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の従来技術であると、各タンク部47、48、43、44の頂部に、タンク内側方向に向かう平坦な接合面4Bを形成し、この平坦面4Bの中央部に連通穴45、46、41、42を形成するとともに、この接合面4B同士を当接して接合しているので、タンク部の冷媒流路断面積が上記の内側方向に向かう接合面4Bの存在により狭められ、冷媒流れの圧損を増大させ、蒸発器性能を低下させている。
【0009】
この冷媒流れの圧損を低減するためには、図14(特開平9−33190号公報)に示すように、各タンク部47、48、43、44の頂部にタンク外側方向に向かう接合面4Cを形成し、この接合面4C同士を当接して接合すればよい。しかし、この従来技術の場合には、金属薄板4相互の位置決めを行う嵌合形状が隣接のタンク部相互の間に形成されていないので、金属薄板4の積層作業の自動化が困難となる。
【0010】
本発明は上記点に鑑みてなされたもので、積層型蒸発器において、チューブ構成用の金属薄板の積層位置決めの容易化と、タンク部の冷媒流路の圧損低減とを両立させることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明では、蒸発器の冷媒流路のうち、冷媒入口側は冷媒出口側に比して冷媒の乾き度が小さく、冷媒の比体積が小さいので、流速が低くなり、圧損が小さいという点に着目して、冷媒入口側のタンク部だけに、金属薄板の積層位置決め手段を形成し、一方、冷媒出口側のタンク部ではタンク外側方向に向かう接合面を形成して隣接のタンク部同士を接合することにより、上記目的を達成しようとするものである。
【0012】
すなわち、請求項1ないし4に記載の発明では、一対の金属薄板(4、4)を接合して構成されるチューブ(2)内に、入口側冷媒流路(2a)と出口側冷媒流路(2b)とを並列形成し、入口側冷媒流路(2a)の一端、他端に連通する第1、第2入口タンク部(47、48)、および出口側冷媒流路(2b)の一端、他端に連通する第1、第2出口タンク部(43、44)を、金属薄板(4)の一端部、他端部において外方側へ突出するように一体成形し、チューブ(2)を多数積層し、第1、第2入口タンク部(47、48)、および第1、第2出口タンク部(43、44)を相互に連通させる積層型蒸発器において、第1、第2出口タンク部(43、44)の相互に隣接する頂部に、タンク外側方向に向かって延びる接合面(4C)を形成し、第1、第2入口タンク部(47、48)の相互に隣接する頂部に、金属薄板(4)の積層位置の位置決め手段(4A、4D)を有する接合面(4B、4E)を形成したことを特徴としている。
請求項4に記載の発明では、第1、第2出口タンク部(43、44)では、相互に隣接する頂部に形成されたタンク外側方向に向かって延びる前記接合面(4C)同士を接合するとともに、第1、第2入口タンク部(47、48)だけに、前記位置決め手段を形成したことを特徴としている。
【0013】
これによると、冷媒の比体積が小さくて圧損が小さい冷媒入口側のタンク部(47、48)だけに、金属薄板(4)の積層位置決め手段(4A、4D)を形成してあるので、積層位置決め手段(4A、4D)による圧損増加を僅少に抑制できる。しかも、冷媒の比体積が大きくて圧損の増加が発生しやすい出口側のタンク部(43、44)においては、その相互に隣接する頂部にタンク外側方向に向かって延びる接合面(4C)を形成しているから、接合面(4C)の形成により出口タンク部(43、44)の流路断面積の減少が発生せず、出口タンク部での圧損抑制を図ることができる。
【0014】
以上により、蒸発器全体として圧損の増加を効果的に抑制できる。さらには、上記の積層位置決め手段(4A、4D)により金属薄板(4)の積層位置の位置決めを行うことができるので、金属薄板4を含むコア部の積層作業の自動化が容易となる。特に、請求項1記載の発明では、第1、第2出口タンク部(43、44)の接合面(4C)に第1、第2出口タンク部(43、44)相互を連通する連通穴(41、42)を形成するとともに、第1、第2入口タンク部(47、48)の接合面(4B、4E)に第1、第2入口タンク部(47、48)相互を連通する連通穴(45、46)を形成し、第1、第2入口タンク部(47、48)の頂部の接合面として、タンク内側方向に向かって延びる接合面(4B)を形成し、この接合面(4B)から突出して隣接の連通穴(45、46)に嵌入される突出部(4A)を形成し、この突出部(4A)により位置決め手段を構成したことを特徴としている。
【0015】
このような構成によれば、突出部(4A)を第1、第2入口タンク部(47、48)のいずれか片側のみに形成することにより、金属薄板(4)の形状を1種類にすることが可能となり、金属薄板(4)を低コストで製造できる。また、請求項2記載の発明では、第1、第2入口タンク部(47、48)の頂部の接合面として、一方の頂部に形成した内側挿入部(4D)が他方の頂部の連通穴(45、46)の内周面に差し込まれる接合面(4E)を構成し、この内側挿入部(4D)の差し込み部により位置決め手段を構成したことを特徴としている。
【0016】
このような構成によれば、内側挿入部(4D)の差し込み部を第1、第2入口タンク部(47、48)のいずれか片側のみに形成することにより、金属薄板(4)の形状を1種類にすることが可能となり、金属薄板(4)を低コストで製造できる。しかも、内側挿入部(4D)の差し込み形状により位置決め手段を構成しているから、請求項1におけるタンク内側方向に向かって延びる接合面(4B)を廃止でき、この接合面(4B)による圧損分だけ、圧損を低減できる。
【0017】
また、請求項3記載の発明のように、内側挿入部(4D)の差し込み部をテーパ状に形成すれば、内側挿入部(4D)の差し込み作業を容易化できる。さらに、請求項5記載の発明は、冷媒入口側のタンク部および出口側のタンク部の両方共、その頂部にタンク外側方向に向かう接合面を形成した場合であっても、金属薄板の積層位置の位置決めを可能にして、前述の目的を達成しようとするものである。
【0018】
従って、請求項5記載の発明では、一対の金属薄板(4、4)を接合して構成されるチューブ(2)内に、入口側冷媒流路(2a)と出口側冷媒流路(2b)とを並列形成し、入口側冷媒流路(2a)の一端、他端に連通する第1、第2入口タンク部(47、48)、および出口側冷媒流路(2b)の一端、他端に連通する第1、第2出口タンク部(43、44)を、金属薄板(4)の一端部、他端部において外方側へ突出するように一体成形し、
チューブ(2)を多数積層し、第1、第2入口タンク部(47、48)、および第1、第2出口タンク部(43、44)を相互に連通させる積層型蒸発器において、
第1、第2入口タンク部(47、48)の相互に隣接する頂部に、タンク外側方向に向かって延びる接合面(4G)を形成し、第1、第2出口タンク部(43、44)の相互に隣接する頂部に、タンク外側方向に向かって延びる接合面(4C)を形成し、第1、第2入口タンク部(47、48)の接合面(4G)および第1、第2出口タンク部(43、44)の接合面(4C)の外周部に、金属薄板(4)の積層位置の位置決め手段(4H)を形成したことを特徴としている。
【0019】
これによると、冷媒入口側のタンク部(47、48)および出口側のタンク部(43、44)のいずれも、その相互に隣接する頂部にタンク外側方向に向かって延びる接合面(4C,4G)を形成しているから、接合面(4C,4G)の形成により出入口両タンク部(43、44、47、48)の流路断面積の減少が発生せず、入口側のタンク部(47、48)および出口側のタンク部(43、44)の両方で圧損抑制を図ることができる。以上により、蒸発器全体として圧損の増加をより一層効果的に抑制できる。
【0020】
さらに、両タンク部(43、44、47、48)共タンク外側方向に向かって延びる接合面(4C,4G)を形成しているが、その接合面(4C,4G)の外周部に形成した位置決め手段(4H)により金属薄板(4)の積層位置決めを行うことができるので、金属薄板4を含むコア部の積層作業の自動化が容易となる。
【0021】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示す。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図に示す実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1〜図4は本発明積層型蒸発器を自動車用空調装置の冷凍サイクルにおける冷媒蒸発器に適用した場合を示している。
【0023】
図1は蒸発器1の全体構成を示しており、蒸発器1は図1の上下方向を上下にして、図示しない自動車用空調装置の空調ユニットケース内に設置される。蒸発器1の左右方向の一端側(左端側)には、冷媒入口8aと冷媒出口8bを有する配管ジョイント8が配設されている。
この蒸発器1は、多数のチューブ2を並列配置し、このチューブ2内に図2に示すように入口側冷媒通路2aと出口側冷媒通路2bを並列に形成し、この両冷媒通路2a、2bを流れる冷媒とチューブ2の外部を流れる空調用送風空気とを熱交換させるようになっている。本例では、入口側冷媒通路2aの部位で入口側熱交換部3aを構成し、出口側冷媒通路2bの部位で出口側熱交換部3bを構成している。
【0024】
なお、蒸発器1への空調空気の送風方向は図2の矢印A方向に示す通りであり、入口側熱交換部3aは、送風空気の流れ方向の下流側に位置し、出口側熱交換部3bは送風空気の流れ方向の上流側に位置している。
上記チューブ2は、図1、2に示すように2枚(一対)の金属薄板4を最中合わせの状態に接合することにより形成される。金属薄板4は長手方向が上下方向に延びる細長の略長方形の板材であり、具体的材質としては、例えば、アルミニュウム心材(A3000番系の材料)の両面にろう材(A4000番系の材料)をクラッドした両面クラッド材(板厚:0.4〜0.6mm程度)を用いる。
【0025】
そして、この両面クラッド材を図2に示す所定形状に成形して、これを2枚1組として多数組積層した上で、ろう付けにより接合することにより多数のチューブ2を並列に形成する。
このチューブ2の内部は、センターリブ49により、風下側の入口側冷媒通路2aと風上側の出口側冷媒通路2bとに仕切られている。これら冷媒通路2a、2bは金属薄板長手方向に沿って平行に形成され、空気流れ方向Aとは直交している。
【0026】
金属薄板4の上端部、他端部には、入口側冷媒通路2aの上端、下端に連通する上側、下側(第1、第2)の入口タンク部47、48、および、出口側冷媒通路2bの上端、下端に連通する上側、下側(第1、第2)の出口タンク部43、44が形成されている。これらタンク部43、44、47、48は、金属薄板4の外方側へ楕円筒状または円筒状に突出する突出部にて形成されており、その突出端部(頂部)には、隣接するタンク部43、44、47、48相互間をそれぞれ連通させる連通穴41、42、45、46が形成されている。
【0027】
また、入口側、出口側熱交換部3a、3bにおいて、チューブ2内面の間隙(最中合わせ状の一対の金属薄板4、4相互間)にインナーフィン70、70を接合して、冷媒側の伝熱面積の拡大および耐圧強度の確保を図っている。また、入口側、出口側熱交換部3a、3bにおいて、隣接するチューブ2の外面側相互の間隙に、空気側のコルゲートフィン(フィン手段)7を接合して空気側の伝熱面積の増大を図っている。これらインナーフィン70およびコルゲートフィン7はA3003のような、ろう材をクラッドしてないアルミニュウムベア材にて波形状に成形されている。インナーフィン70の波形状により冷媒通路2a、2b内に複数の小冷媒通路が並列的に区画形成される。
【0028】
熱交換部3a、3bの金属薄板積層方向の一端部(図1、2の左端部)に位置する金属薄板からなるサイドプレート9およびこれに接合されるエンドプレート10、さらに金属薄板積層方向の他端部(図1、2の右端部)に位置する金属薄板からなるサイドプレート11およびこれに接合されるエンドプレート12も、本例では、上記金属薄板4と同様に両面クラッド材から成形されている。
【0029】
図1左端部のサイドプレート9の上下の端部には、それぞれ出口タンク部9a、入口タンク部9bが1つずつ形成されており、これらタンク部9a、9bはサイドプレート9の幅方向に沿って延びる細長の1つの椀状部から形成されており、図示しない連通穴が開口形成されている。
図1右端部のサイドプレート11の上下の端部にも、それぞれ出口タンク部11a、入口タンク部11bが形成されており、これらタンク部11a、11bもサイドプレート11の幅方向に沿って延びる細長の1つの椀状部から形成されるとともに、図示しない連通穴が開口形成されている。
【0030】
エンドプレート10は、外方側へ突出する張出部10a、10cを有しており、張出部10aと張出部10cとの間は冷媒通路的には分断されている。そして、張出部10aとサイドプレート9との間に形成される空間により入口側サイド冷媒通路15が形成され、配管ジョイント8の冷媒入口8aはこの入口側サイド冷媒通路15を介してサイドプレート9のタンク部9bに連通する。
【0031】
また、張出部10cとサイドプレート9の出口タンク部9aとの間に形成される空間により、出口側サイド冷媒通路14が形成され、この出口側サイド冷媒通路14に配管ジョイント8の冷媒出口8bが連通している。配管ジョイント8の冷媒入口には、図示しない膨張弁で減圧膨張した気液2相冷媒が流入する。また、冷媒出口8bは、図示しない膨張弁のガス冷媒通路を介して、蒸発器1で蒸発したガス冷媒を圧縮機(図示せず)の吸入側に還流させる。
【0032】
また、右端部のエンドプレート12は外方側へ突出する張出部12aを有しており、この張出部12aとサイドプレート11との間に形成される空間により、サイド冷媒通路13が形成される。蒸発器1全体としての冷媒通路構成は前述の図8と同じであるので、説明は省略する。
次に、本実施形態の冷媒蒸発器の製造方法を簡単に説明すると、最初に、金属薄板4、インナーフィン70、コルゲートフィン7、サイドプレート9、11、およびエンドプレート10、12を積層し、さらに、配管ジョイント8をエンドプレート10に組付けて、図1、2に示す所定の熱交換器構造に仮組付けする。
【0033】
次に、金属薄板4の積層方向から図示しない適宜の治具にて締めつけ力を加えて、熱交換器構造の仮組付け状態を保持する。
次に、この仮組付け状態を保持したまま、ろう付け炉内に仮組付け体を搬入し、このろう付け炉内にて、仮組付け体をアルミニュウムクラッド材のろう材の融点まで加熱して、仮組付け体各部の接合箇所を一体ろう付けする。これにより、蒸発器1全体の組付を完了する。
【0034】
ところで、本実施形態では、上記した蒸発器の仮組付け時におけるタンク同士の位置決めと、圧力損失の低減とを両立できるようにするため、次のごとき工夫をしている。
すなわち、図3、図4に示すように、隣接する出口タンク部43、44同士、および隣接する入口タンク部47、48同士を接合するに当たり、出口タンク部43、44では、その頂部にタンク外側方向に向かう平坦な接合面4Cを形成している。一方、入口タンク部47、48ではその頂部にタンク内側方向に向かう平坦な接合面4Bを形成している。
【0035】
そして、金属薄板4の長手方向両端部に形成される上下の入口タンク部47、48のうち、いずれか一方(図3の例では上側の入口タンク部47)のみに、プレス加工で連通穴45の周縁部に所定高さ(例えば、1.5mm程度)を持つ筒状の突出部(いわゆるバーリング部)4Aを形成している。他方の入口タンク部48の連通穴46は突出部4Aを嵌入できる大きさに設定し、突出部を形成しない。なお、金属薄板4は、突出部4Aを除いて上下対称形状にしてある。
【0036】
従って、金属薄板4を同一形状に成形しても、図2に示すように、同一形状の金属薄板4の向きを交互に上下逆転させて積層し、突出部4Aの位置を交互に上下逆転させることにより、金属薄板4の積層時に突出部4Aを隣接する金属薄板4の入口タンク部47(48)の連通穴45(46)内に嵌入することができる。
【0037】
これにより、突出部4Aをガイドとして金属薄板4相互の位置決めを自動的に簡単に行うことができるので、金属薄板4を含むコア部の積層作業を自動組付することが可能となる。
しかも、蒸発器1の冷媒流路のうち、冷媒入口側は冷媒出口側に比して冷媒の乾き度が小さく、冷媒の比体積が小さいので、流速が低くなり、圧損が小さい。従って、冷媒入口側のタンク部47(48)だけに、タンク内側方向に向かう平坦な接合面4Bを形成して、金属薄板4の積層位置決め手段をなす突出部4Aを連通穴45(46)の周縁部に形成することにより、金属薄板4相互の位置決め機能を突出部4Aにより良好に発揮できる。また、タンク内側方向に向かう平坦な接合面4Bを形成しても、冷媒入口側は冷媒の比体積がそもそも小さいから、圧損の増加という問題を冷媒出口側の場合に比して僅少に抑制できる。
【0038】
一方、冷媒出口側のタンク部43(44)ではタンク外側方向に向かう接合面4Cを形成して隣接のタンク部43(44)同士を接合しているから、接合面4Cの形成に起因する流路断面積の減少が発生しない。従って、比体積の大きい冷媒が流れる冷媒出口側タンク部43(44)において、接合面4Cの形成による圧損増加が全く発生しない。
【0039】
以上の結果、金属薄板4を含むコア部積層作業の自動組付化と、圧損増加の抑制とを良好に両立できる。また、金属薄板4は同一形状の1種類の板材の向きを交互に上下逆転させて積層すればよいので、金属薄板4のプレス成形コストを低減できる。また、隣接する入口側タンク部47(48)同士の接合部に、突出部4Aによる接合箇所が付加されるので、その分、接合強度を向上できる。
【0040】
なお、図3、4に示すように、入口タンク部47(48)が円筒状であるのに対して出口タンク部43(44)を楕円筒状の形状に形成して、出口側タンク部43(44)の流路断面積を入口側タンク部47(48)より十分大きくしているのは、出口タンク部43(44)における圧損低減を図るためである。入口側タンク部47(48)を円筒状とせず、必要に応じて、図2のごとく楕円筒状に形成してもよい。
【0041】
(第2実施形態)
図5、図6は第2実施形態であり、第1実施形態では冷媒入口側のタンク部47(48)の頂部にタンク内側方向に向かう平坦な接合面4Bを形成して、隣接の入口タンク部47(48)同士を接合しているが、第2実施形態では入口タンク部47(48)をその頂部まで円筒状のままにして、タンク頂部にタンク内側方向に向かう平坦な接合面4Bを設けることを廃止している。
【0042】
その代わりに、上下の入口タンク部47、48のいずれか一方(図5の例では上側の入口タンク部47)の頂部のみに小径に絞られた内側挿入部4Dを形成している。他方の入口タンク部48(47)は円筒状の径を頂部まで同一に維持して、連通穴46(45)の内径は内側挿入部4Dを嵌入できる大きさに設定している。
【0043】
従って、第2実施形態では、隣接する入口タンク部47、48の一方の内側挿入部4Dと他方の連通穴46(45)との差し込み部により、隣接する入口タンク部47、48同士の接合面4Eを構成している。また、第2実施形態においても、金属薄板4は、内側挿入部4Dを除いて上下対称形状になっている。
それ故、金属薄板4を同一形状に成形しても、同一形状の金属薄板4の向きを交互に上下逆転させて積層し、その積層時に内側挿入部4Dを連通穴45(46)の内周面に差し込むことにより、内側挿入部4Dをガイドとして金属薄板4相互の位置決めを自動的に簡単に行うことができ、これにより、金属薄板4を含むコア部の積層作業を自動組付することが可能となる。
【0044】
(第3実施形態)
図7は第3実施形態であり、第2実施形態の変形である。第2実施形態では、内側挿入部4Dが差し込まれる相手側の入口タンク部47、48をその頂部まで同一径の円筒状に成形して、内側挿入部4Dと連通穴46(45)との差し込み部を軸心と平行な円筒面にしているが、第3実施形態では図7に示すように内側挿入部4Dを先端側が先細り状に細くなっているテーパ形状としている。
【0045】
これに伴って、内側挿入部4Dが差し込まれる相手側の入口タンク部47、48の頂部近傍の径をテーパ状に拡大している。図7の4Fはその頂部近傍のテーパ状口拡部である。
第3実施形態によると、先細り状のテーパ状内側挿入部4Dを相手側の入口タンク部47、48の頂部近傍のテーパ状口拡部4Fに差し込むため、この差し込み作業の初期の段階には両者4D、4Fの間に隙間が必ず設定される。そのため、この両者4D、4Fの寸法管理を厳格に管理しなくても、上記隙間を利用して、両者4D、4Fの嵌入作業を容易に行うことができる。
【0046】
(第4実施形態)
図9、図10は第4実施形態であり、第1実施形態では冷媒入口側のタンク部47(48)の頂部にタンク内側方向に向かう平坦な接合面4Bを形成して、隣接の入口タンク部47(48)同士を接合しているが、第4実施形態では、金属薄板4相互の位置決め構造の変更により、入口タンク部47(48)の頂部にタンク外側方向に向かう平坦な接合面4Gを形成可能にしている。
【0047】
そのために、金属薄板4の長手方向両端部に形成される上下の出入口タンク部43、44、47、48のうち、上下いずれか一方(図9の例では上側の出入口タンク部43、47)のみに、金属薄板4相互の位置決め用の突起片4Hを形成している。
円筒状の入口タンク部47には、その接合面4Gの外周部において、空気流れAの下流側端部に突起片4Hが1つ形成されている。さらに、入口タンク部47の連通穴45よりも大きな連通穴41を有する楕円筒状の出口タンク部43には、その接合面4Cの外周部において、空気流れAの上流側端部に突起片4Hが1つ形成されると共に、空気流れAと直交する方向で対向して突起片4Hが2つ形成されている。
【0048】
この4つの突起片4Hの図9(a)で上下左右の間隔は、突起片を形成しない他方の出入口タンク部44、48の接合面4C、4Gの外周部が、4つの突起片4H内に嵌合できる寸法に設定している。また、これらの突起片4Hは所定の高さ(例えば、1mm程度)と幅(例えば、2〜3mm程度)をもってプレス加工にて形成される。
【0049】
第4実施形態によると、入口タンク部47(48)および出口タンク部43(44)のいずれも、頂部にタンク外側方向に向かって延びる接合面(4C、4G)を形成して隣接するタンク部同士を接合しているから、接合面(4C、4G)の形成による流路断面積の減少が発生しない。
従って、入口タンク部47(48)および出口タンク部43(44)のいずれにおいても、圧損抑制を図ることができ、蒸発器全体として圧損の増加をより一層効果的に抑制できる。
【0050】
また、第2実施形態では、金属薄板4相互の位置決め用内側挿入部4Dが入口タンク部47、48の接合面4Eを構成するため(図6参照)、接合面4Eのろう付けによるシール性を確保するうえで、内側挿入部4Dと連通穴46(45)との差し込み部の径方向クリアランスを小さくする必要があり、従って、内側挿入部4Dと連通穴46(45)の径方向寸法精度がある程度要求される。
【0051】
これに対し、第4実施形態においては、突起片4Hは金属薄板4相互の位置決め用としてのみ用いられ、シール性には直接関与しないので、突起片4Hの寸法精度や位置精度は比較的緩やかにできる。
また、金属薄板4は、突起片4Hを除いて上下対称形状になっている。それ故、金属薄板4を同一形状に成形しても、同一形状の金属薄板4の向きを交互に上下逆転させて積層し、その積層時に突起片を形成していない出入口タンク部44、48の接合面4C、4Gの外周部を、4つの突起片4H内に嵌合することにより、4つの突起片4Hをガイドとして金属薄板4相互の位置決めを自動的に簡単に行うことができ、これにより、金属薄板4を含むコア部の積層作業を自動組付することが可能となる。
【0052】
なお、突起片4Hの形成位置や数は、必要に応じて変更することができる。
(他の実施形態)
なお、前述の第2実施形態では、内側挿入部4Dが嵌入される相手側の入口タンク部47、48をその頂部まで同一径の円筒状に成形して、内側挿入部4Dと連通穴46(45)との嵌入部を軸心と平行な円筒面にしているが、内側挿入部4Dが嵌入される相手側の入口タンク部47、48の頂部近傍の径を所定長さにわたってテーパ状に拡大して、テーパ状口拡部を形成すれば、このテーパ状口拡部の形成により、内側挿入部4Dを相手側の入口タンク部47、48の連通穴46(45)に嵌入する作業を容易化できる。
【0053】
また、第2実施形態において、内側挿入部4Dの代わりに内径を相手側のタンク部の円筒形状の頂部の外径より大きくした外側嵌合部を形成し、この外側嵌合部を相手側のタンク部の円筒形状の頂部の外側に嵌合する構成とすることもできる。
また、上記各実施形態では、蒸発器1の仮組み付け状態において、最中合わせ状に接合される一対の金属薄板4、4相互間の位置決めを説明しなかったが、下記のごとき種々な方法で位置決めを行なってもよい。つまり、一対の金属薄板4、4の外周縁部を数カ所かしめて、一対の金属薄板4、4相互を係止したり、あるいは、一方の金属薄板4の外周縁部の数カ所に、他方の金属薄板4の外周縁部を係止するような切り起こし部を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係わる積層型蒸発器の正面図である。
【図2】第1実施形態に係わる蒸発器の部分的な分解斜視図である。
【図3】(a)は第1実施形態における金属薄板の一部破断正面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(a)のB−B断面図である。
【図4】第1実施形態におけるタンク部の接合構造を示す要部断面図である。
【図5】(a)は第2実施形態における金属薄板の一部破断正面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(a)のB−B断面図である。
【図6】第2実施形態におけるタンク部の接合構造を示す要部断面図である。
【図7】第3実施形態におけるタンク部の接合構造を示す要部断面図である。
【図8】本発明および従来技術の蒸発器における冷媒通路構成を示す概略斜視図である。
【図9】(a)は第4実施形態における金属薄板の一部破断正面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(a)のB−B断面図である。
【図10】第4実施形態におけるタンク部の接合構造を示す要部断面図である。
【図11】従来技術の蒸発器におけるチューブの分解斜視図である。
【図12】(a)は従来技術の蒸発器における金属薄板の一部破断正面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(a)のB−B断面図である。
【図13】従来技術の蒸発器におけるタンク部の接合構造を示す要部断面図である。
【図14】別の従来技術の蒸発器におけるタンク部の接合構造を示す要部断面図である。
【符号の説明】
2…チューブ、2a、2b…入口側、出口側冷媒流路、
3a、3b…入口側、出口側熱交換部、4…金属薄板、
41、42、45、46…連通穴、
43、44…上側、下側の出口タンク部(第1、第2出口タンク部)、
47、48…上側、下側の入口タンク部(第1、第2入口タンク部)、
4A…位置決め用突出部、4B、4C、4E、4G…接合面、
4D…位置決め用内側挿入部、4H…位置決め用突起片。
Claims (5)
- 一対の金属薄板(4、4)を接合して構成されるチューブ(2)を有し、
前記チューブ(2)内に入口側冷媒流路(2a)と出口側冷媒流路(2b)とが並列形成され、
前記入口側冷媒流路(2a)の一端、他端に連通する第1、第2入口タンク部(47、48)、および前記出口側冷媒流路(2b)の一端、他端に連通する第1、第2出口タンク部(43、44)が、前記金属薄板(4)の一端部、他端部において外方側へ突出するように一体成形されており、
前記チューブ(2)は多数積層され、前記第1、第2入口タンク部(47、48)、および前記第1、第2出口タンク部(43、44)が相互に連通される積層型蒸発器において、
前記第1、第2出口タンク部(43、44)の相互に隣接する頂部に、タンク外側方向に向かって延びる接合面(4C)を形成し、
前記第1、第2入口タンク部(47、48)の相互に隣接する頂部に、前記金属薄板(4)の積層位置の位置決め手段(4A)を有する接合面(4B、4E)を形成し、
前記第1、第2出口タンク部(43、44)の接合面(4C)に前記第1、第2出口タンク部(43、44)相互を連通する連通穴(41、42)を形成するとともに、前記第1、第2入口タンク部(47、48)の接合面(4B、4E)に前記第1、第2入口タンク部(47、48)相互を連通する連通穴(45、46)を形成し、
前記第1、第2入口タンク部(47、48)の頂部の接合面として、タンク内側方向に向かって延びる接合面(4B)を形成し、この接合面(4B)から突出して隣接の連通穴(45、46)に嵌入される突出部(4A)を形成し、この突出部(4A)により前記位置決め手段を構成したことを特徴とする積層型蒸発器。 - 一対の金属薄板(4、4)を接合して構成されるチューブ(2)を有し、
前記チューブ(2)内に入口側冷媒流路(2a)と出口側冷媒流路(2b)とが並列形成され、
前記入口側冷媒流路(2a)の一端、他端に連通する第1、第2入口タンク部(47、48)、および前記出口側冷媒流路(2b)の一端、他端に連通する第1、第2出口タンク部(43、44)が、前記金属薄板(4)の一端部、他端部において外方側へ突出するように一体成形されており、
前記チューブ(2)は多数積層され、前記第1、第2入口タンク部(47、48)、および前記第1、第2出口タンク部(43、44)が相互に連通される積層型蒸発器において、
前記第1、第2出口タンク部(43、44)の相互に隣接する頂部に、タンク外側方向に向かって延びる接合面(4C)を形成し、
前記第1、第2入口タンク部(47、48)の相互に隣接する頂部に、前記金属薄板(4)の積層位置の位置決め手段(4D)を有する接合面(4B、4E)を形成し、
前記第1、第2入口タンク部(47、48)の頂部の接合面として、一方の頂部に形成した内側挿入部(4D)が他方の頂部の連通穴(45、46)の内周面に差し込まれる接合面(4E)を構成し、
この内側挿入部(4D)の差し込み部により前記位置決め手段を構成したことを特徴とする積層型蒸発器。 - 前記内側挿入部(4D)の差し込み部をテーパ状に形成したことを特徴とする請求項2に記載の積層型蒸発器。
- 前記第1、第2出口タンク部(43、44)では、相互に隣接する頂部に形成されたタンク外側方向に向かって延びる前記接合面(4C)同士を接合し、
前記第1、第2入口タンク部(47、48)と前記第1、第2出口タンク部(43、44)とのうち前記第1、第2入口タンク部(47、48)だけに、前記位置決め手段を形成したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の積層型蒸発器。 - 一対の金属薄板(4、4)を接合して構成されるチューブ(2)を有し、
前記チューブ(2)内に入口側冷媒流路(2a)と出口側冷媒流路(2b)とが並列形成され、
前記入口側冷媒流路(2a)の一端、他端に連通する第1、第2入口タンク部(47、48)、および前記出口側冷媒流路(2b)の一端、他端に連通する第1、第2出口タンク部(43、44)が、前記金属薄板(4)の一端部、他端部において外方側へ突出するように一体成形されており、
前記チューブ(2)は多数積層され、前記第1、第2入口タンク部(47、48)、および前記第1、第2出口タンク部(43、44)が相互に連通される積層型蒸発器において、
前記第1、第2入口タンク部(47、48)の相互に隣接する頂部に、タンク外側方向に向かって延びる接合面(4G)を形成し、
前記第1、第2出口タンク部(43、44)の相互に隣接する頂部に、タンク外側方向に向かって延びる接合面(4C)を形成し、
前記第1、第2入口タンク部(47、48)の接合面(4G)および前記第1、第2出口タンク部(43、44)の接合面(4C)の外周部に、前記金属薄板(4)の積層位置の位置決め手段(4H)を形成したことを特徴とする積層型蒸発器。
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