JP3959868B2 - 熱交換器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は流体通路を形成するチューブ内に伝熱促進用のインナーフィンを配設する熱交換器において、インナーフィン組付の位置決め構造に関するもので、冷凍サイクルの冷媒を蒸発させる蒸発器として好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のインナーフィンを用いた熱交換器としては、特開平6−74608号公報、特開平6−123580号公報に記載されたものが知られている。これらの従来構造では、波形状のインナーフィンを偏平チューブ内に配設するに際して、インナーフィン端部に相当するチューブ側の部位に、突起を一体にプレス成形して、この突起によりインナーフィンのチューブ内流体(冷媒)流れ方向に対する位置決めを行っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来構造では、偏平チューブの偏平状横断面の側部から突起を偏平チューブ内冷媒通路の幅方向(冷媒流れ方向と直交方向)に突出させているので、偏平チューブ内冷媒通路のうち、空気流れ方向の上流側および下流側端部の通路断面積が位置決め用突起により狭められ、空気流れ方向の上流側および下流側端部での冷媒流量が減少する。
【0004】
蒸発器の空気流れ方向の上流側端部では空気と冷媒との温度差が最大となり、空気との熱交換量が最大となるにもかかわらず、この上流側端部での冷媒流量が上記理由により減少して蒸発器の冷却性能を低下させる。
また、位置決め用突起が偏平チューブ内冷媒通路の幅方向(空気流れ方向)に突出しているので、突起の突出高さが小さいと、波形状のインナーフィンの山谷の凹所内に突起が入り込み、インナーフィンの位置決めができない場合が生じる。そこで、これを防ぐためには突起の突出高さを大きくすればよいが、しかし、この突出高さを大きくすると、上記上流側端部での冷媒流量がさらに減少して蒸発器の冷却性能が一層低下してしまう。
【0005】
また、上記従来構造では、インナーフィンの長手方向の両端部において、しかも、偏平チューブ内冷媒通路の幅方向の左右両端に位置決め用突起を設けているので、インナーフィン1個当たり4個の突起を設けることになり、偏平チューブの成形コストを高くする。
また、特開平9−178383号公報には、偏平チューブを構成する金属薄板において、冷媒通路とタンク部との接続部位にインナーフィンの冷媒流れ方向端部に沿って冷媒通路の幅方向(横断面方向)に延びる段差を形成し、この段差にインナーフィンの冷媒流れ方向端部を当接させて、インナーフィンの冷媒流れ方向の位置決めを行うものが提案されている。
【0006】
しかし、この従来技術によると、インナーフィンの冷媒流れ方向端部に対向する段差を、冷媒通路の幅方向全体わたって連続的に形成しているので、段差による圧力損失の増加(冷媒流量の減少)の程度がどうしても大きくなってしまい、蒸発器の冷却性能を低下させる。
本発明は上記点に鑑みてなされたもので、チューブ内流体通路における伝熱促進用のインナーフィンの位置決めを確実に行うとともに、この位置決め手段による熱交換器性能の低下を最小限に抑制することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1〜5記載の発明では、チューブ(2)内に配設されるインナーフィン(53、54)を、チューブ(2)内の流体通路(2a、2b)の幅方向に波形状となるように成形し、
チューブ(2)を構成する一対の金属薄板(4)のうち、片側の金属薄板(4)のみに、チューブ内流体流れ方向の途中であって、かつ、チューブ内流体通路(2a、2b)の幅方向の途中部位に、インナーフィン(53、54)側へ突出する突起(70)を形成し、
この突起(70)は平坦な頂面を有する断面形状に形成し、この突起(70)の、流体通路(2a、2b)の幅方向の長さ(W)をインナーフィン(53、54)の波形状の一波長分の長さ(L)より大きくして、突起(70)の平坦な頂面をインナーフィン(53、54)の波形状の折り曲げ頂部に圧着させるようにしたことを特徴としている。
【0008】
このように、突起(70)がチューブ内流体通路の途中部位に位置し、かつ、突起(70)の長さ(W)>波形状の一波長分の長さ(L)の関係を設定することより、突起(70)の平坦な頂面を必ずインナーフィン(53、54)の波形状の折り曲げ頂部に圧着させて、この圧着部での摩擦力によりインナーフィン(53、54)の位置決めを確実に行うことができる。
【0009】
この結果、突起(70)の突出高さを低くすることができ、これに加え、突起(70)を一対の金属薄板(4)の片側のみに形成するとともに、チューブ(2)内流体流れ方向の途中であって、かつ、チューブ(2)内流体通路の幅方向の一部のみに突起(70)を形成する形態を採用できる。そのため、突起(70)の形成による圧力損失の増大(内部流体流量の減少)を最小限に抑えることができる。
さらに、突起(70)がチューブ内流体通路(2a、2b)の幅方向の途中部位に位置しているので、空気等の外部流体がチューブ内流体通路(2a、2b)の幅方向に流れる場合に、外部流体の上流端部(熱交換量の最大となる部位)での内部流体流量は何ら減少しない。
【0010】
以上の結果、位置決め用突起(70)を形成しても、熱交換器性能の低下を最小限に抑制することができ、従来技術のいずれよりも熱交換器性能を向上できる。
また、本発明構造によると、位置決め用突起(70)をインナーフィン1個当たり1個にすることも可能であり、偏平チューブ用金属薄板(4)の成形コストを低減できる。
【0011】
上記突起(70)は、請求項2に記載のように、チューブ(2)内流体通路(2a、2b)の幅方向に細長となる形状に成形することが圧力損失抑制のために、より一層好ましい。
また、上記突起(70)の突出高さ(H)は、具体的には、請求項3に記載のように、流体通路(2a、2b)の厚さの15%〜40%という僅少値でよい。
【0012】
また、チューブ(2)は請求項4に記載のように断面偏平状の偏平チューブであり、金属薄板(4)として2枚の金属薄板(4)を用い、この2枚の金属薄板(4)を接合して偏平チューブ(2)を構成することができる。
また、チューブ(2)は請求項5に記載のように断面偏平状の偏平チューブであり、金属薄板(4)として折り曲げ可能な1枚の金属薄板(4)を用い、この1枚の金属薄板(4)を折り曲げた後接合することにより偏平チューブ(2)を構成することができる。
【0013】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示す。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図に示す実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1〜図8は本発明蒸発器を自動車用空調装置の冷凍サイクルにおける冷媒蒸発器に適用した第1実施形態を示している。
【0015】
図1、図2は蒸発器1の全体構成を示しており、蒸発器1は図1、2の上下方向を上下にして、図示しない自動車用空調装置のクーリングユニットケース内に設置される。蒸発器1の左右方向の一端側(右端側)には配管ジョイント8が配設され、この配管ジョイント8の入口パイプ8aには、図示しない温度作動式膨張弁(減圧手段)の出口側配管が連結され、この膨張弁で減圧され膨張した低温低圧の気液2相冷媒が流入するようになっている。
【0016】
この蒸発器1は、多数のチューブ2を並列配置し、このチューブ2内の冷媒通路を流れる冷媒とチューブ2の外部を流れる空調用送風空気とを熱交換させる熱交換部3を備えている。図中、矢印Aは送風空気の流れ方向を示す。
上記チューブ2は、図3に示す金属薄板4の積層構造により形成されており、以下この積層構造の概略を説明すると、熱交換部3では、金属薄板4として、例えば、アルミニュウム心材(A3000番系の材料)の両面にろう材(A4000番系の材料)をクラッドした両面クラッド材(板厚:0.4〜0.6mm程度)を用い、この両面クラッド材を図3に示す所定形状に成形して、これを2枚1組として多数組積層した上で、ろう付けにより接合することにより多数のチューブ2を並列に形成する。
【0017】
従って、各チューブ2は、図7に示すように、金属薄板4を2枚1組として最中合わせの状態に接合することにより形成されており、そして、各チューブ2の内部には風上側の冷媒通路2aと風下側の冷媒通路2bが、金属薄板長手方向に沿って平行に形成される。
図3に示す金属薄板4は大部分のチューブ2を構成する基本の薄板であり、その上下両端部には、上記冷媒通路2a相互の間、冷媒通路2b相互の間をそれぞれ連通させる連通穴41、42を持った入口タンク部43、44、および連通穴45、46を持った出口タンク部47、48が2個づつ並んで形成されている。これらのタンク部43、44、47、48はそれぞれ金属薄板4の外方側へ突出する楕円筒状の突出部にて形成されている。
【0018】
そして、入口タンク部43、44の断面積は、本例では、出口タンク部47、48の断面積より小さく設定してある。49は風上側の冷媒通路2aと風下側の冷媒通路2bとを仕切るセンターリブであり、本例では冷媒通路2aと冷媒通路2bとを同一幅寸法となるように仕切っている。
風上側の冷媒通路2aと風下側の冷媒通路2bの内部には、図8に示すようにインナーフィン53、54が配置される。図8はチューブ2を空気流れ方向A(チューブ内冷媒流れ方向と直交する方向)で断面した図であり、(a)はチューブ2の組付前の分解状態を示し、(b)はチューブ2の組付後の状態を示している。インナーフィン53、54は、冷媒通路2a、2bの幅方向に波形状となるように成形されており、チューブ内冷媒流れ方向(チューブ長手方向)に対しては平行に延びている。
【0019】
ここで、インナーフィン53、54はアルミニュウム合金、例えば、A3003のような、ろう材をクラッドしてないアルミニュウムベア材にて成形され、波形状の折り曲げ頂部(山部)がチューブ2を構成する金属薄板4の内壁面に接合される。これにより、インナーフィン53、54は、冷媒側の伝熱性能を向上させるとともに、チューブ2の通路厚み方向(図8の左右方向)における補強を行って、チューブ2の耐圧強度を高める。本発明によるインナーフィン53、54の位置決め構造については後述する。
【0020】
また、熱交換部3において、隣接するチューブ2の外面側相互の間隙にコルゲートフィン(フィン手段)7を接合して空気側の伝熱面積の増大を図っている。このコルゲートフィン7はA3003のような、ろう材をクラッドしてないアルミニュウムベア材にて波形状に成形されている。
熱交換部3の金属薄板積層方向の一端部(図1の左端部、図2では右端部)に位置する金属薄板からなるサイドプレート9およびこれに接合されるエンドプレート10、さらに金属薄板積層方向の他端部(図1の右端部、図2では左端部)に位置する金属薄板からなるサイドプレート11およびこれに接合されるエンドプレート12も、本例では、上記金属薄板4と同様に両面クラッド材から成形されている。但し、これらの板材9、10、11、12は強度確保のため、上記金属薄板4より厚肉、例えば1.0〜1.6mm程度の板厚にしてある。
【0021】
エンドプレート10、12は、図4、5に示すように、外方側へ突出する複数の張出部10a、12aを有している。この張出部10a、12aは、図5の例では断面矩形状に成形されており、エンドプレート10、12の長手方向に沿って並列に成形されている。そして、この張出部10a、12aとサイドプレート9、11の平坦面との間に形成される空間により、冷媒通路(流体通路)13、15が形成される。この冷媒通路(流体通路)13、15の具体的役割については、図6により後述する。
【0022】
一方、複数の張出部10a、12aの間には帯状に延びる接合部10b、12bが形成され、この接合部10b、12bは、サイドプレート9、11の平坦面に当接し、サイドプレート9、11に接合される。
図2左端部のサイドプレート11の上下の端部には、それぞれタンク部11a、タンク部11bが形成されており、この両タンク部11a、11bはサイドプレート11の幅方向に沿って延びる細長の1つの椀状部から形成されており、かつ、タンク部11aには連通穴11cが、また、タンク部11bには連通穴11dがそれぞれ開口形成されている。
【0023】
張出部12aにより構成される冷媒通路13の下端部はサイドプレート11の下端部のタンク部11bの連通穴11dを介して、図3の金属薄板4の下端部の入口タンク部44の連通穴42と連通する。また、冷媒通路13の上端部はサイドプレート11の上端部のタンク部11aの連通穴11cを介して、図3の金属薄板4の上端部の出口タンク部47の連通穴45と連通する。
【0024】
図1左端部のサイドプレート9は上記図2左端部のサイドプレート11と略同一形状であるので、詳細な説明は省略する。また、図1左端部のエンドプレート10は、図1に示すように、配管ジョイント8の下方側に上記張出部10aが形成され、また、配管ジョイント8の上方側に別の張出部10cが形成されている。この別の張出部10cは上記張出部10aとは異なり、1つの椀状部から形成されている。
【0025】
張出部10cと張出部10aとの間は、冷媒通路的には分断されている。そして、張出部10cの内側と図1左端部のサイドプレート9との間に形成される空間により冷媒通路14(図6参照)を形成している。
この冷媒通路14は、サイドプレート9の出口タンク部9aの連通穴(図示せず)を介して金属薄板4の上側出口タンク部47の連通穴45と連通するとともに、配管ジョイント8の冷媒出口パイプ8bに連通する。下側の張出部10aにより構成される冷媒通路15の上端部は、配管ジョイント8の冷媒入口パイプ8aに連通し、冷媒通路15の下端部は、サイドプレート9の入口タンク部9bの連通穴(図示せず)を介して金属薄板4の下側入口タンク部44の連通穴42に連通する。
【0026】
ここで、サイドプレート9の出口タンク部9aおよび入口タンク部9bの形状は図1に明瞭に図示してないが、サイドプレート11の上下のタンク部11a、11bと同様の形状である。
なお、配管ジョイント8は例えば、A6000番系のアルミニュウムベア材にて冷媒入口パイプ8aと冷媒出口パイプ8bを一体成形してあり、この両パイプ8a、8bの通路端部をエンドプレート10の穴部(図示せず)内に嵌入してろう付けしている。この配管ジョイント8の冷媒入口パイプ8aには、前述した通り図示しない膨張弁の出口側冷媒配管が連結され、一方、冷媒出口パイプ8bには、蒸発器1で蒸発したガス冷媒を圧縮機(図示せず)へ吸入させる圧縮機吸入配管が連結される。
【0027】
図6は蒸発器1内における冷媒通路の構成を示す概要図であり、図2の図示状態に対応して作成してある。金属薄板4の下側入口タンク部44の途中および上側出口タンク部47の途中に、それぞれ仕切り部51、52を設けている。一方の仕切り部51は、金属薄板として、図3に示す下側入口タンク部44の連通穴42を閉塞したものを用いることにより形成できる。また、他方の仕切り部52は、金属薄板として、図3に示す上側出口タンク部47の連通穴45を閉塞したものを用いることにより形成できる。
【0028】
上記仕切り部51、52の配置により、金属薄板4の下側入口タンク部44を第1入口タンク部aと第2入口タンク部bとに仕切るとともに、金属薄板4の上側出口タンク部47を第1出口タンク部cと第2出口タンク部dとに仕切ることができる。
以上により、蒸発器1内を冷媒は、冷媒入口パイプ8a→冷媒通路15→下側入口タンク部44の第1入口タンク部a→チューブ2の冷媒通路2b→上側入口タンク部43→チューブ2の冷媒通路2b→下側入口タンク部44の第2入口タンク部b→冷媒通路13→上側出口タンク部47の第1出口タンク部c→チューブ2の冷媒通路2a→下側出口タンク部48→チューブ2の冷媒通路2a→上側出口タンク部47の第2出口タンク部d→冷媒通路14→冷媒出口パイプ8bの経路で流れる。
【0029】
このように、冷媒経路を構成することにより、矢印A方向に流れる空気の蒸発器吹出空気温度を熱交換部3の全域にわって均一化できる。なお、図6において、Xは空気流れ方向Aの下流側に位置する冷媒入口側熱交換部で、Yは空気流れ方向Aの上流側に位置する冷媒出口側熱交換部である。
本実施形態の冷媒蒸発器の製造方法を簡単に説明すると、最初に、金属薄板4、インナーフィン53、54、コルゲートフィン7、サイドプレート9、11、およびエンドプレート10、12を積層し、さらに、配管ジョイント8をエンドプレート10に組付けて、図1、2に示す所定の熱交換器構造に組付ける。
【0030】
次に、金属薄板4の積層方向に延びるワイヤー60、61によりエンドプレート10、12の外側から熱交換器構造の組付体を締めつけて、この組付体の組付姿勢を保持する。
次に、この組付姿勢を保持した状態で、ろう付け炉内に組付体を搬入し、このろう付け炉内にて、組付体をアルミニュウム両面クラッド材のろう材の融点まで加熱して、組付体各部の接合箇所を一体ろう付けする。これにより、蒸発器1全体の組付を完了する。
【0031】
次に、本発明の要部であるインナーフィン53、54の位置決め構造について詳述すると、インナーフィン53、54は前述のごとくアルミニウムベア材により波形状に成形されるものであって、その板厚は具体的には0.07〜0.1mm程度が適当であり、チューブ2を構成する金属薄板4の板厚(0.4〜0.6mm)に比して1/4〜1/9程度の薄肉になっている。また、インナーフィン53、54のチューブ内冷媒流れ方向(チューブ長手方向)の長さは、上下の入口タンク部43、44の間、および上下の出口タンク部47、48の間に形成される冷媒通路2a、2bの全長に相当する長さを持つ。
【0032】
一方、チューブ2を構成する一対の金属薄板4のうち、片側の金属薄板4には、インナーフィン53、54の位置決め用の突起70が図3、7、8に示すように一体成形されている。本実施形態では、この突起70を、チューブ2の長手方向の中央部であって、かつ、チューブ2の幅方向においても、2つの冷媒通路2a、2bのそれぞれ中央部に位置するように形成している。
【0033】
また、突起70の形状は、チューブ2内冷媒通路2a、2bの幅方向(冷媒流れ方向と直交方向)に細長い長円状の形状であり、チューブ2の内側へ(インナーフィン53、54側へ)所定高さHだけ突出するように形成されている。ここで、突起70の突出高さHは、冷媒通路2a、2bの厚さMの15%〜40%(0.26〜0.7mm)程度である。
【0034】
また、長円状の突起70の長辺方向寸法(冷媒通路2a、2bの幅方向長さ)Wは、インナーフィン53、54の波形状の1波長分の長さ(波形状の折り曲げ頂部間の距離)Lより大きくしてある。具体的寸法例としては、W=6mm程度で、L=2mm程度である。突起70の短辺方向寸法D(図3)は、3.4mm程度、冷媒通路2a、2bの厚さMは1.76mm程度である。
【0035】
ここで、チューブ2部分の組付方法の具体例について説明すると、図示しない組み立て装置に、金属薄板4の長手方向の両端に位置する4箇所のタンク部43、44、47、48の連通穴41、42、45、46に挿入される4本のガイドピンを装備しておき、このガイドピンに連通穴41、42、45、46を挿入しながら、突起70を形成した片側の金属薄板4を組み立て装置にセットする。
【0036】
次に、この金属薄板4上にインナーフィン53、54を積層する。このとき、インナーフィン53、54の長手方向の両端部は上記4本のガイドピンによりガイドされて、金属薄板4の長手方向(冷媒流れ方向)の所定位置に配置される。
次に、突起70を形成してない他の片側の金属薄板4をインナーフィン53、54の上から上記片側の金属薄板4に組み合わせる。このあと、この2枚の金属薄板4とインナーフィン53、54との組み合わせからなるチューブ2の組付体とコルゲートフィン7とを交互に積層していく。
【0037】
そして、このようなチューブ2の組付体とコルゲートフィン7との積層組付構造に対して、その積層方向から図1、2に示すワイヤー60、61により締めつけ力を加えると、突起70の長辺方向寸法Wとインナーフィン53、54の波形状の1波長分の長さLとを、W>Lの関係に設定してあるから、図8(b)に示すように上記のワイヤー締め付け過程において、突起70の頂面を必ずインナーフィン53、54の波形状の折り曲げ頂部に当接させることができる。
【0038】
そのため、図8(b)の組付終了後の状態では、金属薄板4の突起70がその突出高さHの分だけインナーフィン折り曲げ頂部を押圧変形させる。インナーフィン53、54においては、この折り曲げ頂部の押圧変形に伴ってスプリング反力が生じて、このスプリング反力によりインナーフィン53、54の折り曲げ頂部が金属薄板4の内面に強く圧着して摩擦力を発生するので、インナーフィン53、54の金属薄板4に対する位置が固定される。すなわち、インナーフィン53、54の長手方向の位置決めがなされる。
【0039】
この位置決めにより、インナーフィン53、54の端部が上下の入口タンク部43、44および出口タンク部47、48内へ突き出すことがなくなるので、インナーフィン端部の突出によりタンク部流路を閉塞して圧力損失を増大させるとか、冷媒流動音を増大させるといった不具合が発生することを防止できる。
さらに、上記したW>Lの寸法設定により、突起70をインナーフィン53、54の波形状の折り曲げ頂部に必ず当接させて、折り曲げ頂部を押圧変形させるから、突起70の突出高さHを0.3〜0.5mm程度の比較的小さいな値にしてもインナーフィン53、54の位置決めを行うことができ、その位置にインナーフィン53、54を固定できる。それ故、突起70の形成による、冷媒通路2a、2bの圧力損失の増大を最小限に抑制できる。
【0040】
また、図8(b)に示すように、チューブ内の冷媒通路2a、2bはインナーフィン53、54の波形形状により多数の小通路に区画されるが、その際に、突起70を冷媒通路2a、2bの幅方向の中央部に位置させているから、空気流れ方向の上流端の小通路を流れる冷媒の流量は突起70の形成により何ら減少しない。従って、空気と冷媒との温度差が最大となる空気流れ方向の上流端での冷媒熱交換量を良好に確保できる。
(第2実施形態)
図9は第2実施形態であり、上記した第1実施形態では、図7、8に示すように、金属薄板4を2枚1組として最中合わせの状態に接合することによりチューブ2を形成しているが、第2実施形態では図9に示すように、1枚の金属薄板4をその中央部の折り曲げ部80にて折り曲げることにより、チューブ2を形成している。このチューブ2内にセンターリブ49にて仕切られた2つの冷媒通路2a、2bを並列に形成する点は第1実施形態と同じであり、また、突起70の形成についても第1実施形態と同じ考え方で設ければよい。
(第3実施形態)
図10は第3実施形態であり、上記した第1、第2実施形態では、位置決め用突起70をチューブ2(金属薄板4)の長手方向(冷媒流れ方向)の中央部に1箇所のみ形成しているが、チューブ2(金属薄板4)の長手方向寸法が大きくなれば、それに対応して、図10に示すようにチューブ2(金属薄板4)の長手方向の途中の複数箇所に突起70を形成してもよい。
(第4実施形態)
図11は第4実施形態であり、位置決め用突起70は、上記した第1〜第3実施形態のごとくチューブ2(金属薄板4)内の風上側の冷媒通路2aと風下側の冷媒通路2bの両方に形成して、両通路2a、2bのインナーフィン53、54の位置決めを行うことが蒸発器性能の向上のために最も好ましいが、図11に示すように両通路2a、2bのうち、風上側の冷媒通路2aのみに位置決め用突起70を形成して、風上側冷媒通路2aのインナーフィン53のみの位置決めを行うようにしてもよい。
【0041】
これは、風上側の冷媒通路2aには、図6に示すように蒸発器1における冷媒出口側熱交換部Yの乾き度の大きい(すなわち、比体積の大きい)冷媒が流れるので、風下側の冷媒通路2bに比較して風上側の冷媒通路2aではインナーフィン53の位置ずれによる圧損増加の影響を受けやすい。そこで、風上側の冷媒通路2aのみにおいてインナーフィン53の位置決めを行うようにしてもよい。
【0042】
(他の実施形態)
なお、本発明の要部はインナーフィン53、54の位置決め構造にあるから、熱交換部3におけるチューブ構成等は種々変更してもよいことは勿論である。例えば、上記実施形態では、金属薄板4の両端部に、それぞれ2個ずつのタンク部43、47とタンク部44、48とを設けているが、金属薄板4の両端部に、それぞれ1個ずつのタンク部を設ける構成であってもよい。また、金属薄板4の一端部に冷媒の入口側のタンク部と冷媒の出口側のタンク部とを設けて、金属薄板4の他端部で冷媒流れをUターンさせる構成であってもよい。このように、冷媒通路構成は種々変更できる。
【0043】
また、インナーフィン53、54の波形状は、折り曲げ頂部(山部)が円弧状の滑らかな曲線形状のものに限らず、例えば、矩形状に近似した折り曲げ形状にしてもよい。
また、第1実施形態では、位置決め用突起70をチューブ2を構成する2枚の金属薄板4のうち、片側の金属薄板4のみに形成しているが、2枚の金属薄板4の両方に位置決め用突起70を形成してもよい。この場合、2枚の金属薄板4における突起70の形成位置は、対向位置ではなく、相互にずらした位置の方が冷媒通路の圧損増加抑制のために好ましい。
【0044】
同様に、第2実施形態でも、中央部の折り曲げ部80の片側だけでなく、左右両側に位置決め用突起70を形成してもよい。
また、本発明は冷媒蒸発器に限定されることなく、種々な流体の熱交換を行う熱交換器一般に広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用する蒸発器の斜視図である。
【図2】図1の蒸発器を空気流れ方向Aの反対側から見た斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態によるチューブ用金属薄板の正面図である。
【図4】図1、2のB部の拡大図である。
【図5】図1、2のC−C断面図である。
【図6】図1の蒸発器における冷媒通路構成を示す概略斜視図である。
【図7】本発明の第1実施形態によるチューブ部分の分解斜視図である。
【図8】本発明の第1実施形態によるチューブ部分の断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態を示すチューブ用金属薄板の正面図である。
【図10】本発明の第3実施形態を示すチューブ用金属薄板の正面図である。
【図11】本発明の第4実施形態を示すチューブ用金属薄板の正面図である。
【符号の説明】
2…チューブ、2a…風上側冷媒通路、2b…風下側冷媒通路、
4…金属薄板、53、54…インナーフィン、70…突起。
Claims (5)
- チューブ(2)内を流れる内部流体と前記チューブ(2)の外部を流れる外部流体とを熱交換させる熱交換部(3)を有し、
前記チューブ(2)内に、前記内部流体と前記チューブ(2)との間の伝熱を促進するインナーフィン(53、54)を配設し、
前記チューブ(2)の少なくとも一端部に、前記チューブ(2)の流体通路(2a、2b)への流体出入口部を構成するタンク部(43、44、47、48)を配置する熱交換器において、
前記インナーフィン(53、54)を、前記流体通路(2a、2b)の幅方向に波形状となるように成形し、
前記チューブ(2)を構成する一対の金属薄板(4)のうち、片側の金属薄板(4)のみに、前記チューブ(2)内流体流れ方向の途中であって、かつ、前記流体通路(2a、2b)の幅方向の途中部位に、前記インナーフィン(53、54)側へ突出する突起(70)を形成し、
前記突起(70)は平坦な頂面を有する断面形状に形成され、前記突起(70)の、前記流体通路(2a、2b)の幅方向の長さ(W)を前記インナーフィン(53、54)の波形状の一波長分の長さ(L)より大きくして、前記突起(70)の平坦な頂面を前記インナーフィン(53、54)の波形状の折り曲げ頂部に圧着させるようにしたことを特徴とする熱交換器。 - 前記突起(70)は前記流体通路(2a、2b)の幅方向に細長となる形状であることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
- 前記突起(70)の突出高さ(H)は、前記流体通路(2a、2b)の厚さの15%〜40%であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱交換器。
- 前記チューブ(2)は断面偏平状の偏平チューブであり、前記金属薄板(4)として2枚の金属薄板(4)を用い、この2枚の金属薄板(4)を接合して前記偏平チューブ(2)を構成することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の熱交換器。
- 前記チューブ(2)は断面偏平状の偏平チューブであり、前記金属薄板(4)として折り曲げ可能な1枚の金属薄板(4)を用い、この1枚の金属薄板(4)を折り曲げた後接合することにより前記偏平チューブ(2)を構成することを特徴とする請求項1ないし3に記載の熱交換器。
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