JP4212727B2 - 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は強度及び面衝撃性に優れたガラス繊維を含有した芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に関する。更に詳しくは、芳香族ポリカーボネート樹脂が本来有する特性を生かし、且つ特定量の付着物を有するガラス繊維を加えることで剛性等の特性を向上させた上、強度、面衝撃性および耐湿熱疲労特性に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性などの機械的特性に優れ、しかも耐熱性、透明性などにも優れており、広く用いられている。このような芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法としては、ビスフェノールAなどの二価フェノールにホスゲンを直接反応させる方法(界面重合法)、あるいはビスフェノールなどの二価フェノールとジフェニルカーボネートなどのジアリルカーボネートとを溶融状態でエステル交換反応させ重合する方法(以下、溶融法と称することがある。)などが知られている。このような製造方法のなかで、二価フェノールとジアリルカーボネートとのエステル交換反応させる方法は、界面重合法による製造に比べて、ホスゲンやメチレンクロライド等のハロゲン化合物を使用する問題がなく、環境に対する負荷が少なく且つ安価に製造できる利点があり、有望な技術である。芳香族ポリカーボネート樹脂とガラスフィラーを用いた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が、特許2683662号公報に記載されている。この芳香族ポリカーボネート樹脂は実質的に溶融法で製造された芳香族ポリカーボネート樹脂である。この組成物は溶液法の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物よりアイゾット耐衝撃性に優れていることが開示されている。しかしながら、かかる組成物は強度、面衝撃性、耐湿熱疲労特性が十分ではない。
【0003】
また、芳香族ポリカーボネート樹脂又は他の熱可塑性樹脂を含有した芳香族ポリカーボネート樹脂と無機強化用フィラー及びホスホニウム塩を用いた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が、特開平10−60248号公報に記載されている。この芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のホスホニウム塩の役割は、ポリカーボネート樹脂に無機強化用フィラーを添加した時の起る不具合、即ち分子量低下、外観不良等を抑制することであり、かかる組成物の強度、面衝撃強度は十分に改良されない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、芳香族ポリカーボネート樹脂が本来有する特性を生かし、且つガラス繊維を加えることで剛性等の特性を向上させた上、強度、面衝撃性及び耐湿熱疲労特性に優れたガラス繊維を含有した芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を提供することにある。
【0005】
我々は樹脂組成物を鋭意検討した結果、かかる芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基が、芳香族ポリカーボネート樹脂の全末端を100モル%とした時、10〜70モル%であり、且つ二価フェノールとカーボネートエステルとをエステル交換反応させて得られた芳香族ポリカーボネート樹脂と特定量の有機付着物を有するガラス繊維を加えることで剛性等の特性を向上させた上、強度、面衝撃性および耐湿熱疲労特性に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基が、芳香族ポリカーボネート樹脂の全末端を100モル%とした時、10〜70モル%であり、且つ二価フェノールとカーボネートエステルとをエステル交換反応させて得られた芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部および(B)シランカップリング剤単独、又はウレタン及びシランカップリング剤の付着量が0.40〜1.2重量%であり、かつ平均繊維径が1〜25μmであるガラス繊維5〜200重量部からなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、によって達成される。
【0007】
本発明で使用される芳香族ポリカーボネート樹脂は、通常二価フェノールとカーボネートエステルとを溶融法で反応させて得られるものである。ここで使用される二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、1,6−ジヒドロキシナフタリン、2,6−ジヒドロキシナフタリン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−ブロモ−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−クロロ−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、4−ブロモレゾルシノール、2,2−ビス{(3−イソプロピル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−フェニル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−エチル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−n−プロピル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−メトキシ−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジブロモ−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1−ジクロロ−2,2−ビス{(3−フェノキシ−4−ヒドロキシ)フェニル}エチレン、エチレングリコールビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)イソブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス{(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシ)フェニル}スルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエステルなどがあげられ、これらは単独または2種以上を混合して使用できる。
【0008】
なかでもビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、エチレングリコールビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス{(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシ)フェニル}スルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、および4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトンからなる群より選ばれた少なくとも1種のビスフェノールより得られる単独重合体または共重合体が好ましく、特に、ビスフェノールAの単独重合体が好ましく使用される。
【0009】
カーボネートエステルとしては、具体的には、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m―クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネートなどが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、ジフェニルカーボネートを使用する。これら炭酸エステルもまた、単独で用いてもよく、また二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0010】
上記二価フェノールとカーボネートエステルを溶融法によって反応させてポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールの酸化防止剤等を使用してもよい。またポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂であっても、芳香族または脂肪族の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂であってもよく、また、得られたポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
【0011】
三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、フロログルシン、フロログルシド、または4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキジフェニル)ヘプテン−2,2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、4−{4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}−α,α−ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノール、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)ケトン、1,4−ビス(4,4−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、又はトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸及びこれらの酸クロライド、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3’−フェノキシカルボニル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3’−カルボキシ−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン等が挙げられ、中でも1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましく、特に1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。
【0012】
溶融法による反応は、通常二価フェノールとカーボネートエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールとカーボネートエステルとを加熱しながら混合して、生成するアルコールまたはフェノールを留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノールの沸点等により異なるが、通常120〜350℃の範囲である。反応後期には系を10〜0.1Torr程度に減圧して生成するアルコールまたはフェノールの留出を容易にさせる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
【0013】
また、溶融法において重合速度を速めるために重合触媒を用いることができ、かかる重合触媒としては、例えば(i)アルカリ金属化合物或はアルカリ土類金属化合物および/または(ii)含窒素塩基性化合物よりなる触媒を用いて縮合される。
【0014】
触媒として用いられるアルカリ金属化合物或はアルカリ土類金属化合物としては、例えばアルカリ金属或はアルカリ土類金属化合物の水酸化物、炭化水素化物、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、亜流酸塩、シアン酸塩、チオシアン酸塩、ステアリン酸塩、水素化ホウ素塩、安息香酸塩、リン酸水素化物、ビスフェノール、フェノールの塩等が挙げられる。特にアルカリ金属化合物が好ましい。
【0015】
アルカリ金属化合物の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸リチウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸リチウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸リチウム、シアン酸ナトリウム、シアン酸カリウム、シアン酸リチウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、水酸化ホウ素ナトリウム、水酸化ホウ素リチウム、水素化ホウ素カリウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、リン酸水素ジナトリウム、リン酸水素ジカリウム、リン酸水素ジリチウム、ビスフェノールAのジナトリウム塩、ジカリウム塩、ジリチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩などが挙げられる。特にナトリウム化合物が好ましい。
【0016】
触媒としてのアルカリ金属化合物は、二価フェノール1モルに対し10-8〜10-5モルの範囲が好ましい。更に好ましくは10-8〜10-6モル、最も好ましくは10-7〜10-6モルの範囲である。上記の使用範囲を逸脱すると、得られるポリカーボネートの諸物性に悪影響を及ぼしたり、また、エステル交換反応が充分に進行せず高分子量のポリカーボネートが得られない等の問題が起こることがある。
【0017】
また、触媒としての含窒素塩基性化合物としては、例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(Me4NOH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(Et4NOH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(Bu4NOH)、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(φ―CH2(Me)3NOH)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシドなどのアルキル、アリール、アルキルアリール基などを有するアンモニウムヒドロオキシド類、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ヘキサデシルジメチルアミンなどの3級アミン類、あるいはテトラメチルアンモニウムボロハイドライド(Me4NBH4)、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド(Bu4NBH4)、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート(Bu4NBPh4)、テトラメチルアンモニウムテトラフェニルボレート(Me4NBPh4)などの塩基性塩などを挙げることができる。これらの中で、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(Me4NOH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(Et4NOH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(Bu4NOH)が好ましく、特にテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(Me4NOH)が好ましい。
【0018】
上記含窒素塩基性化合物は、含窒素塩基性化合物中のアンモニウム窒素原子が二価フェノール1モル当り1×10-5〜1×10-3当量となる割合で用いるのが好ましい。より好ましい割合は同じ基準に対し2×10-5〜7×10-4当量となる割合である。特に好ましい割合は同じ基準に対し5×10-5〜5×10-4当量となる割合である。
【0019】
本発明においては所望により、アルカリ金属やアルカリ土類金属のアルコキシド類、アルカリ金属やアルカリ土類金属の有機酸塩類、亜鉛化合物類、ホウ素化合物類、アルミニウム化合物類、珪素化合物類、ゲルマニウム化合物類、有機スズ化合物類、鉛化合物類、オスミウム化合物類、アンチモン化合物類、マンガン化合物類、チタン化合物類、ジルコニウム化合物類などの通常エステル化反応、エステル交換反応に使用される触媒を用いることができる。触媒は単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせ使用してもよい。これらの重合触媒の使用量は、原料の二価フェノール1モルに対し、好ましくは1×10-9〜1×10-5当量、より好ましくは1×10-8〜5×10-6当量の範囲で選ばれる。
【0020】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基は、芳香族ポリカーボネート樹脂の全末端を100モル%とした時、10〜70モル%であり、好ましくは15〜65モル%、さらに好ましくは20〜60モル%、最も好ましくは20〜45モル%に制御することがよい。ここで芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基のモル%は、常法により1H―NMRにより決定できる。
【0021】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基の割合は、原料である二価フェノールとカーボネートエステル(代表的にはジフェニルカーボネート)の仕込み比によってコントロールすることができる。重合温度、重合時の真空度等の重合条件によっても異なるが、一般的にはジフェニルカーボネート/二価フェノールの比が1以上にすると非水酸基末端よりも末端水酸基が少なくなり、1未満の場合は非水酸基末端よりも末端水酸基が多くなる。また、かかる重合反応において、末端水酸基を減少するために、重縮反応の後期あるいは終了後に、芳香族ポリカーボネート樹脂に末端封鎖剤を添加し、一部の末端水酸基を封鎖することにより、末端水酸基量をコントロールすることもできる。
【0022】
かかる末端封鎖剤としては、例えばフェノール、p−t−ブチルフェノール、p−t−ブチルフェニルフェニルカーボネート、p−t−ブチルフェニルカーボネート、p−クミルフェノール、p−クミルフェニルフェニルカーボネート、p−クミルフェニルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、ビス(ブロモフェニル)カーボネート、ビス(ニトロフェニル)カーボネート、ビス(フェニルフェニル)カーボネート、クロロフェニルフェニルカーボネート、ブロモフェニルフェニルカーボネート、ニトロフェニルフェニルカーボネート、ジフェニルカーボネート、メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート、2,2,4−トリメチル−4−(4−ヒドロキシフェニル)クロマン2,4,4−トリメチル−2−(4−ヒドロキシフェニル)クロマンおよびエトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート等の化合物が挙げられる。なかでも2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよび2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートが好ましく、特に2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートが好ましく使用される。
【0023】
本発明では、芳香族ポリカーボネート樹脂中の触媒の活性を中和する失活剤を用いることが好ましい。この失活剤の具体例としては、例えばベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸ブチル、ベンゼンスルホン酸オクチル、ベンゼンスルホン酸フェニル、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸エチル、p−トルエンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸オクチル、p−トルエンスルホン酸フェニルなどのスルホン酸エステル;さらに、トリフルオロメタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、スルホン化ポリスチレン、アクリル酸メチル‐スルホン化スチレン共重合体、ドデシルベンゼンスルホン酸−2−フェニル−2−プロピル、ドデシルベンゼンスルホン酸−2−フェニル−2−ブチル、オクチルスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、デシルスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラエチルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラヘキシルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラオクチルホスホニウム塩、デシルアンモニウムブチルサルフェート、デシルアンモニウムデシルサルフェート、ドデシルアンモニウムメチルサルフェート、ドデシルアンモニウムエチルサルフェート、ドデシルメチルアンモニウムメチルサルフェート、ドデシルジメチルアンモニウムテトラデシルサルフェート、テトラデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェート、テトラメチルアンモニウムヘキシルサルフェート、デシルトリメチルアンモニウムヘキサデシルサルフェート、テトラブチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェート、テトラエチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェート、テトラメチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェート等の化合物を挙げることができるが、これらに限定されない。これらの化合物を二種以上併用することもできる。
【0024】
失活剤の中でホスホニウムもしくはアンモニウム塩型の失活剤はそれ自身200℃以上でも特に安定である。そしてその失活剤を芳香族ポリカーボネート樹脂に添加した場合すみやかに重縮合反応触媒を中和し、目的とする芳香族ポリカーボネート樹脂を得ることができる。即ち、重合封鎖反応後に生成するポリカーボネートに対し、失活剤を好ましくは0.01〜500ppmの割合で、より好ましくは0.01〜300ppm、特に好ましくは0.01〜100ppmの割合で使用される。
【0025】
また、かかる失活剤は、重縮合反応触媒に対する割合では、重縮合反応触媒1モル当り0.5〜50モルの割合で用いるのが好ましい。失活剤を末端封鎖後の芳香族ポリカーボネート樹脂に添加する方法には特に限定されない。例えば、反応生成物である芳香族ポリカーボネート樹脂が溶融状態にある間にこれらを添加してもよいし、一旦芳香族ポリカーボネート樹脂をペレタイズした後再溶融して添加してもよい。前者においては、末端封鎖反応が終了して得られる溶融状態にある反応器内または押出機内の反応生成物である芳香族ポリカーボネート樹脂が溶融状態にある間に、これらを添加して芳香族ポリカーボネート樹脂を形成した後、押出機を通してペレタイズしてもよいし、また、重合封鎖反応で得られた芳香族ポリカーボネート樹脂が反応器から押出機を通ってペレタイズされる間に、失活剤を添加して混練することによって芳香族ポリカーボネート樹脂を得ることができる。
【0026】
芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は、粘度平均分子量(M)で12,000〜30,000が好ましく、14,000〜27,000がより好ましく、15,000〜25,000が特に好ましい。かかる粘度平均分子量を有する芳香族ポリカーボネート樹脂は、組成物として十分な強度が得られ、また、成形時の溶融流動性も良好であり成形歪みが発生せず好ましい。本発明でいう粘度平均分子量は塩化メチレン100mLにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液から求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-4M0.83
c=0.7
【0027】
本発明で使用するガラス繊維は、Aガラス、Cガラス、Eガラス等のガラス組成を特に限定するものでなく、場合によりTiO2、SO3、P2O5等の成分を含有するものであってもよい。但しより好ましくは、Eガラス(無アルカリガラス)が芳香族ポリカーボネート樹脂に悪影響を及ぼさない点で好ましい。本発明のガラス繊維は溶融ガラスを種々の方法にて延伸しながら急冷し、所定の繊維状にしたものである。かかる場合の急冷および延伸条件についても特に限定されるものでない。また断面の形状は一般的な真円状の他に、真円状の繊維を平行に重ね合わせた異形断面形状のものを使用してもよい。さらに真円状と異形断面形状の混合したガラス繊維であってもよい。このガラス繊維は、その形状で大別してチョップドストランド(チョップドファイバー)とミルドファイバー(パウダー)の2種類である。
【0028】
かかるガラス繊維は、シランカップリング剤単独、又はウレタン及びシランカップリング剤の付着量が0.40〜1.2重量%であり、好ましくは0.50〜1.00重量%、更に好ましくは0.55〜0.90重量%、0.60〜0.90重量%である。付着させている有機物としては現在公知のウレタン系集束剤、またシランカップリング剤の表面処理剤が挙げられる。付着量の測定は JIS R3420「ガラス繊維一般試験方法」に準じて測定した値である。即ち、ガラス繊維を110℃×1時間乾燥後、その重量を基準とし600℃×30分間加熱した時の減量を重量%で表した。
【0029】
また、このガラス繊維は、平均繊維径が1〜25μmであり、好ましくは5〜17μmであり、平均繊維径が1μm未満のガラス繊維を使用したのでは、成形加工性がそこなわれ、平均繊維径が25μmより大きいガラス繊維を使用したのでは、外観が損なわれ、強度、耐衝撃性の効果も十分ではない。
【0030】
更に、このガラス繊維に導電性等を付与するために、繊維表面に金属コートを施しうる。この金属コートガラス繊維の直径は6〜20μmが特に好ましい。金属コートガラス繊維は、ガラス繊維に公知のメッキ法及び蒸着法等でニッケル、銅、コバルト、銀、アルミニウム、鉄等及びこれらの合金等の金属をコーティングしたものである。かかる金属は導電性、耐食性、生産性、更に経済性の観点からニッケル、銅及びコバルトから選ばれる1種または2種以上の金属が好ましい。
【0031】
これらの繊維は、現在公知のエポキシ系、ウレタン系、アクリル系などの各種化合物により集束処理することができ、また後述するシランカップリング剤等で表面処理されたものが好ましい。
【0032】
本発明で使用するチョップドストランドは、平均繊維径が1〜25μmであり、好ましくは5〜17μmである。そのカット長は1〜15mmが好ましく、より好ましくは1〜10mm、最も好ましくは2〜6mmである。嵩密度は0.4g/cm3以上が好ましく、0.55〜0.80g/cm3がより好ましい。また、チョップドストランドは成形途中で破砕される。その破砕されたガラス繊維の平均繊維長は成形品中で150〜400μmが好ましく、より好ましくは200〜300μmである。
【0033】
本発明で使用するミルドファイバーは、L/D≦10のものであり、ガラス繊維のロービング又はチョップドストランドを切断又はボールミル等により所定の長さになるまで粉砕して得られたものであり、本発明の組成物から得られる成形品外観を向上させようとする場合に好ましく使用できる。ここにLはミルドファイバーの繊維軸方向の長さ、Dは断面方向の繊維径を表す。ガラス繊維としては上記に示したガラス繊維と同じものが使用できる。これらの粉末は、ガラス繊維同様シランカップリング剤等で表面処理されたものが好ましい。該ガラスミルドファイバーとしては、平均繊維径が1〜25μmであり、好ましくは6〜23μmであり、より好ましくはが5〜17μmである。平均繊維長は0.02〜0.1mmのものが好ましい。
【0034】
本発明におけるガラス繊維の配合割合は、芳香族ポリカーボネート樹脂100重両部に対して、5〜200重量部、好ましくは10〜100重量部である。5重量部未満だと、組成物の剛性が不十分であり、200重量部を超えると、得られる組成物の押出が困難であり、実用的でない。
【0035】
また、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には熱安定剤を配合することができる。かかる熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられ、具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、4,4’−ビフェニレンジホスホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。なかでも、トリスノニルフェニルホスファイト、4,4’−ビフェニレンジホスホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、トリメチルホスフェート、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトおよびベンゼンホスホン酸ジメチルが好ましく使用される。これらの熱安定剤は、単独でもしくは2種以上混合して用いてもよい。かかる熱安定剤の配合量は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物100重量部に対して0.0001〜1重量部が好ましく、0.0005〜0.5重量部がより好ましく、0.001〜0.1重量部が更に好ましい。
【0036】
また、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、酸化防止の目的で通常知られた酸化防止剤を配合することもできる。かかる酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、グリセロール−3−ステアリルチオプロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ビフェニレンジホスホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。これら酸化防止剤の配合量は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物100重量部に対して0.0001〜0.5重量部が好ましい。
【0037】
また、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には溶融成形時の金型からの離型性をより向上させるために、本発明の目的を損なわない範囲で離型剤を配合することも可能である。かかる離型剤としては、オレフィン系ワックス、カルボキシル基及び/またはカルボン酸無水物基を含有するオレフィン系ワックス、シリコーンオイル、オルガノポリシロキサン、一価又は多価アルコールの高級脂肪酸エステル、パラフィンワックス、蜜蝋等が挙げられる。かかる離型剤の配合量は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物100重量部に対し、0.01〜5重量部が好ましい。
【0038】
オレフィン系ワックスとしては、特にポリエチレンワックスおよび/または1−アルケン重合体の使用が好ましくきわめて良好な離型効果が得られる。ポリエチレンワックスとしては現在一般に広く知られているものが使用でき、エチレンを高温高圧下で重合したもの、ポリエチレンを熱分解したもの、ポリエチレン重合物より低分子量成分を分離精製したもの等が挙げられる。また分子量、分岐度等は特に制限されるものではないが、分子量としては数平均分子量で1,000以上が好ましい。
【0039】
1−アルケン重合体としては炭素数5〜40の1−アルケンを重合したものが使用できる。1−アルケン重合体の分子量としては数平均分子量で1,000以上が好ましい。
【0040】
カルボキシル基及び/またはカルボン酸無水物基を含有するオレフィン系ワックスとは、オレフィン系ワックスを後処理により、カルボキシル基及び/またはカルボン酸無水物基を含有させた化合物、好ましくはマレイン酸及び/または無水マレイン酸で後処理により変性したものが挙げられる。更にエチレン及び/または1−アルケンを重合または共重合する際にかかるモノマー類と共重合可能なカルボキシル基及び/またはカルボン酸無水物基を含有する化合物、好ましくはマレイン酸及び/または無水マレイン酸を共重合したものも挙げられ、かかる共重合をしたものはカルボキシル基及び/またはカルボン酸無水物基が高濃度かつ安定して含まれるので好ましい。このカルボキシル基やカルボン酸無水物基は、このオレフィン系ワックスのどの部分に結合してもよく、またその濃度は特に限定されないが、オレフィン系ワックス1g当り0.1〜6meq/gの範囲が好ましい。かかるカルボキシル基及び/またはカルボン酸無水物基を含有するオレフィン系オレフィン系ワックスは、市販品としては例えばダイヤカルナ−PA30[三菱化学(株)の商品名]、ハイワックス酸処理タイプの2203A、1105A[三井石油化学(株)の商品名]等が挙げられ、これら単独でまたは二種以上の混合物として用いられる。
【0041】
本発明、およびさらに他の無機充填材を配合する場合には、カルボキシル基及び/またはカルボン酸無水物基を含有するオレフィン系ワックスを添加することは、溶融成形時の金型からの離型性をより向上させる為だけではなく、無機充填材配合による衝撃強度低下を抑制する効果も発現し好ましく使用できるものである。
【0042】
高級脂肪酸エステルとしては、炭素原子数1〜20の一価又は多価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステル又は全エステルであるのが好ましい。かかる一価又は多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステル又は全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート、ビフェニルビフェネ−ト、ソルビタンモノステアレート、2−エチルヘキシルステアレート等が挙げられ、なかでも、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレートが好ましく用いられる。
【0043】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、光安定剤を配合することができる。かかる光安定剤としては、例えば2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)等が挙げられる。かかる光安定剤の配合量は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物100重量部に対して0.01〜2重量部が好ましい。
【0044】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、帯電防止剤を配合することができる。かかる帯電防止剤としては、例えばポリエーテルエステルアミド、グリセリンモノステアレート、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩、アルキルスルホン酸ナトリウム塩、無水マレイン酸モノグリセライド、無水マレイン酸ジグリセライド等が挙げられる。
【0045】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の目的が損なわれない量の難燃剤を配合することができる。難燃剤としては、ハロゲン化ビスフェノールAのポリカーボネート型難燃剤、有機塩系難燃剤、芳香族リン酸エステル系難燃剤、あるいは、ハロゲン化芳香族リン酸エステル型難燃剤等があげられ、それらを一種以上配合することができる。具体的にハロゲン化ビスフェノールAのポリカーボネート型難燃剤は、テトラクロロビスフェノールAのポリカーボネート型難燃剤、テトラクロロビスフェノールAとビスフェノールAとの共重合ポリカーボネート型難燃剤テトラブロモビスフェノールAのポリカーボネート型難燃剤、テトラブロモビスフェノールAとビスフェノールAとの共重合ポリカーボネート型難燃剤等である。具体的に有機塩系難燃剤は、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウム、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、2,4,5−トリクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム、2,4,5−トリクロロベンゼンスルホン酸カリウム、ビス(2,6−ジブロモ−4−クミルフェニル)リン酸カリウム、ビス(4−クミルフェニル)リン酸ナトリウム、ビス(p−トルエンスルホン)イミドカリウム、ビス(ジフェニルリン酸)イミドカリウム、ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)リン酸カリウム、ビス(2,4−ジブロモフェニル)リン酸カリウム、ビス(4−ブロモフェニル)リン酸カリウム、ジフェニルリン酸カリウム、ジフェニルリン酸ナトリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウムあるいはカリウム、ヘキサデシル硫酸ナトリウムあるいはカリウム等である。具体的にハロゲン化芳香族リン酸エステル型難燃剤は、トリス(2,4,6−トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(2,4−ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(4−ブロモフェニル)ホスフェート等である。具体的に芳香族リン酸エステル系難燃剤は、トリフェニルホスフェート、トリス(2,6−キシリル)ホスフェート、テトラキス(2,6−キシリル)レゾルシンジホスフェート、テトラキス(2,6−キシリル)ヒドロキノンジホスフェート、テトラキス(2,6−キシリル)−4,4’−ビフェノールジホスフェート、テトラフェニルレゾルシンジホスフェート、テトラフェニルヒドロキノンジホスフェート、テトラフェニル−4,4’−ビフェノールジホスフェート、芳香環ソースがレゾルシンとフェノールでありフェノール性OH基を含まない芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがレゾルシンとフェノールでありフェノール性OH基を含む芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがヒドロキノンとフェノールでありフェノール性OH基を含まない芳香族ポリホスフェート、同様のフェノール性OH基を含む芳香族ポリホスフェート、(以下に示す「芳香族ポリホスフェート」は、フェノール性OH基を含む芳香族ポリホスフェートと含まない芳香族ポリホスフェートの両方を意味するものとする)芳香環ソースがビスフェノールAとフェノールである芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがテトラブロモビスフェノールAとフェノールである芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがレゾルシンと2,6−キシレノールである芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがヒドロキノンと2,6−キシレノールである芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがビスフェノールAと2,6−キシレノールである芳香族ポリホスフェート、芳香環ソースがテトラブロモビスフェノールAと2,6−キシレノールである芳香族ポリホスフェート等である。
【0046】
これらの難燃剤の中で、ハロゲン化ビスフェノールAのポリカーボネート型難燃剤として、テトラブロモビスフェノールAのポリカーボネート型難燃剤、テトラブロモビスフェノールAとビスフェノールAとの共重合ポリカーボネートが好ましく、更にテトラブロモビスフェノールAのポリカーボネート型難燃剤が好ましい。有機塩系難燃剤としてはジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウム、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、2,4,5−トリクロロベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい。芳香族リン酸エステル系難燃剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルフスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、レズルシノールビス(ジキシレニルホスフェート)、ビス(2,3ジブロモプロピル)ホスフェート、トリス(2,3ジブロモプロピル)ホスフェートが好ましい。これらの中でも、オゾン層破壊しない芳香族リン酸エステル系難燃剤であるトリフェニルホスフェート、トリクレジルフスフェート、レズルシノールビス(ジキシレニルホスフェート)が最も好ましい。
【0047】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、他の樹脂を本発明の目的が損なわれない範囲であれば配合することもできる。
【0048】
かかる他の樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリメタクリレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。
【0049】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を製造するには、任意の方法が採用される。例えばタンブラー、V型ブレンダー、スーパーミキサー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等で混合する方法が適宜用いられる。こうして得られる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、そのまま又は溶融押出機で一旦ペレット状にしてから、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法等の通常知られている方法で成形品にすることができる。なお、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の混和性を高めて安定した離型性や各物性を得るためには、溶融押出において二軸押出機を使用するのが好ましい。更に無機充填材を配合する場合には直接押出機ホッパー口あるいは押出機途中から投入する方法、芳香族ポリカーボネート樹脂や芳香族ポリエステル樹脂と予め混合する方法、一部の芳香族ポリカーボネート樹脂や芳香族ポリエステル樹脂と予め混合してマスターを作成し投入する方法、かかるマスターを押出機途中から投入する方法のいずれの方法も取ることができる。
【0050】
かくして得られた本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、パソコン、ワープロ、ファクス、コピー機、プリンター等のOA機器のハウジング及びシャーシ、CD−ROMのトレー、シャーシー、ターンテーブル、ピックアップシャーシ、各種ギア等のOA内部部品、テレビ、ビデオ、電気洗濯機、電気乾燥機、電気掃除機等の家庭電器製品のハウジングや部品、電気鋸、電動ドリル等の電動工具、望遠鏡鏡筒、顕微鏡鏡筒、カメラボディ、カメラハウジング、カメラ鏡筒等の光学機器部品、ドアーハンドル、ピラー、バンパー、計器パネル等の自動車用部品に有用である。特に機械的強度、耐薬品性、湿熱疲労性などが要求される自動車部品(アウタードアハンドル、インナードアハンドルなど)や機械部品(電動工具カバーなど)に有用である。
【0051】
【実施例】
以下に実施例をあげて更に説明する。実施例中の「部」または「%」は重量部または重量%を示し、また評価項目および組成物中の各成分の記号は下記の内容を意味する。
【0052】
(1)末端水酸基濃度
サンプル0.02gを0.4mlのクロロホルムに溶解し、20℃で1H−NMR(日本電子社製EX−270)を用いて末端水酸基および末端フェニル基を測定し、下記式(i)により末端水酸基濃度を測定した。
末端水酸基濃度(モル%)=(末端水酸基数/全末端数)×100 …(i)
(2)湿熱疲労性
図1に示したいわゆるC型の測定用サンプルを用いて、80℃、90%RHの雰囲気で、正弦波で振動数1Hz、最大荷重2kgの条件で、以下の疲労試験機[(株)島津製作所製 島津サーボパルサー EHF−EC5型]を用いて、測定用サンプルが破断するまでの回数を測定した。
(3)面衝撃性
縦15cm、横15cm、厚み2mmの測定用の角板を用いて、JIS K−7211の試験方法に従い、以下の条件にて測定した。
おもり:直径約63mm、重量1kgの球形
試験温度:40℃
5cm間隔でおもりの落下させる高さを上げて、測定用の角板におもりを落下させ試験片にクラックが発生する高さ(cm)を測定した。
(4)剛性
ASTM D790により、曲げ弾性率を測定した。
(5)引張強度
ASTM D638に従い、引張試験を実施し、引張破断強度を測定した。
【0053】
(a)芳香族ポリカーボネート樹脂
▲1▼EX−PC
[参照例1]本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造
撹拌機及び蒸留塔を備えた反応器に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン228部(約1モル)、ジフェニルカーボネート(バイエル社製)223部(約1.06モル)及び触媒として水酸化ナトリウム0.000024部(約6×10-7モル/ビスフェノールA1モル)とテトラメチルアンモニウムヒドロキシド0.0073部(約8×10-5モル/ビスフェノールA1モル)を仕込み、窒素置換した。この混合物を200℃まで加熱して撹拌しながら溶解させた。次いで、減圧度を30Torrとして加熱しながら1時間で大半のフェノールを留去し、更に270℃まで温度を上げ、減圧度を1Torrとして2時間重合反応を行った。次に溶融状態のままで、触媒中和剤としてドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩0.0035部(約6×10-6モル/ビスフェノールA1モル)添加して270℃、10Torr以下で反応を継続し、粘度平均分子量23,300、末端水酸基濃度34モル%の芳香族ポリカーボネート樹脂を得た。この芳香族ポリカーボネート樹脂をギアポンプでエクストルーダーに送った。エクストルーダー途中でトリスノニルフェニルホスファイトを0.003重量%、トリメチルホスフェートを0.05重量%加え、芳香族ポリカーボネート樹脂ペレットを得た。
【0054】
▲2▼CEX−PC
[参照例2]比較のための芳香族ポリカーボネート樹脂の製造
ジフェニルカーボネート(バイエル社製)を209部(約0.95モル)に変更した以外は参照例1と同様な条件で芳香族ポリカーボネート樹脂を製造した。尚、この芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量23,100、末端水酸基濃度78モル%であった。
【0055】
(b)ガラス繊維
CS−A:チョップドストランド、ウレタン集束処理、シランカップリング剤表面処理(有機物付着量:0.7%、繊維径13μm、カット長3mm、嵩密度0.65g/cm3)
CS−B:チョップドストランド、ウレタン集束処理、シランカップリング剤表面処理(有機物付着量:1.5%、繊維径13μm、カット長13mm、嵩密度0.51g/cm3)
MF:ミルドファイバー、シランカップリング剤表面処理(有機物付着量:0.6%、繊維長さ(L)40μm、繊維径(D)9.5μm、L/D=4.2)
【0056】
[実施例1〜4、比較例1〜3]
上記で得られた芳香族ポリカーボネート樹脂及び表1記載の各成分を、タンブラーを使用して均一に混合した後、30mmφベント付き二軸押出機(神戸製鋼(株)製KTX−30)により、シリンダー温度270℃、10mmHgの真空度で脱気しながらペレット化し、得られたペレットを120℃で5時間乾燥後、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG150U型)を使用して、シリンダー温度330℃、金型温度100℃の条件で測定用の成形板を作成した。
【0057】
【表1】
【0058】
【発明の効果】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート樹脂が本来有する特性を生かし、且つ特定量の有機物を付着させたガラス繊維を加えることで剛性等の特性を向上させた上、強度、面衝撃性および湿熱疲労特性に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】湿熱疲労性を評価するために使用した、いわゆるC型サンプルの正面図である。なおサンプルの厚みは3mmである。符号6で示される孔の部分に試験機の治具を通し、符号7で示される垂直方向に所定の荷重をかけて試験を行う。
【符号の説明】
1 C型形状の二重円の中心
2 二重円の内側円の半径(20mm)
3 二重円の外側円の半径(30mm)
4 治具装着用孔の位置を示す中心角(60°)
5 サンプル端面の間隙(13mm)
6 治具装着用孔(直径4mmの円であり、サンプル幅の中央に位置する)
7 疲労試験時におけるサンプルに課される荷重の方向
Claims (2)
- (A)芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基が、芳香族ポリカーボネート樹脂の全末端を100モル%とした時、10〜70モル%であり、且つ二価フェノールとカーボネートエステルとをエステル交換反応させて得られた芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部および(B)シランカップリング剤単独、又はウレタン及びシランカップリング剤の付着量が0.40〜1.2重量%であり、かつ平均繊維径が1〜25μmであるガラス繊維5〜200重量部からなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- シランカップリング剤単独、又はウレタン及びシランカップリング剤の付着量が0.50〜1.00重量%のガラス繊維である請求項1記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
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