以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施の形態における液封入式防振装置100の断面図である。
この液封入式防振装置100は、自動車のエンジンを支持固定しつつ、そのエンジン振動を車体フレームへ伝達させないようにするための防振装置であり、図1に示すように、エンジン側に取り付けられる第1取付け金具1と、エンジン下方の車体フレーム側に取付けられる筒状の第2取付け金具2と、これらを連結すると共にゴム状弾性体から構成される防振基体3とを主に備えている。
第1取付け金具1は、アルミニウム合金などから略円柱状に形成され、図1に示すように、その略中央部には、取付けボルト4が上方へ向けて突設されている。また、取付けボルト4の側方には、位置決め凸部1aが凸設されている。また、第1取付け金具1の下方部分は、外径方向にフランジ状に張り出して形成されており、この張り出し部分は、防振基体3内に埋設されている。
第2取付け金具2は、防振基体3が加硫成形される筒状金具6と、その筒状金具6の下方に取着される底金具7とを備えて構成されている。図1に示すように、筒状金具6は上広がりの開口を有する筒状に、底金具7はカップ状に、それぞれ形成されている。
なお、筒状金具6は鉄鋼材料から、底金具7はアルミニウム合金から、それぞれ構成されている。また、底金具7の底部には、取付けボルト5が突設されると共に、位置決め凸部7aが凸設されている。
防振基体3は、図1に示すように、ゴム状弾性体から断面略円錐台形状に形成され、第1取付け金具1の下面側と筒状金具6の上端開口部との間に加硫接着されている。また、防振基体3の下端部には、筒状金具6の内周面を覆うゴム膜3aが連なっており、このゴム膜3aには、後述するオリフィス金具16、及び、仕切板部材17の外周部が密着されている。
防振基体3の上端部(図1上側)は、図1に示すように、第1取付け金具1の張り出し部分を覆う覆設部3bを備えており、この覆設部3bがスタビライザー金具8に当接することで、大変位時のストッパ作用が得られるように構成されている。なお、スタビライザー金具8は、筒状金具6の端部にかしめ固定されている。また、スタビライザー金具8の上面側には、ゴム状弾性体から構成されるカバー部材13が装着されている。
ダイヤフラム9は、ゴム状弾性体から部分球状を有するゴム膜状に形成されるものであり、図1に示すように、第2取付け金具2(筒状金具6と底金具7との間)に取着されている。その結果、このダイヤフラム9の上面側と防振基体3の下面側との間には、液体封入室11が形成されている。
この液体封入室11には、エチレングリコールなどの不凍性の液体(図示せず)が封入される。図1に示すように、液体封入室11は、後述する仕切り体12によって、防振基体3側(図1上側)の第1液室11Aと、ダイヤフラム9側(図1下側)の第2液室11Bとの2室に仕切られている。
なお、ダイヤフラム9は、上面視ドーナツ状の取付け板10に加硫接着されており、図1に示すように、その取付け板10が筒状金具6と底金具7との間でかしめ固定されることにより、第2取付け金具2に取着されている。
仕切り体12は、図1に示すように、ゴム状弾性体から略円板状のゴム膜状に構成される弾性仕切り膜15と、この弾性仕切り膜15を収容して内周面側の格子状の壁部で受け止めるオリフィス金具16と、このオリフィス金具16の軸方向一端側(図1上側)の開口部を覆う円板状の仕切板部材17とを備えて構成されている。
なお、仕切板部材17は、オリフィス金具16と同様に、格子状の壁部を備え、弾性仕切り膜15を受け止める。弾性仕切り膜15は、仕切板部材17の壁部とオリフィス金具16の壁部との対向面間に収容され、その変位が両側から規制されている。この変位規制により、比較的大振幅の振動入力時には、膜剛性を高めて、減衰特性の向上(高減衰特性化)を図ることができる。なお、比較的小振幅の振動入力時には、弾性仕切り膜15が往復動変形して液圧を吸収することで、動的特性の向上(低動ばね化)が図られる。
オリフィス金具16の外周面側には、第2取付け金具2(筒状金具6)の内周面を覆うゴム膜3aとの間に、図1に示すように、オリフィス25が形成されている。このオリフィス25は、第1液室11Aと第2液室11Bとを連通させるオリフィス流路である。
仕切り体12は、図1に示すように、防振基体3に設けた仕切り体受け部3cと挟持部材18とによって、第2取付け金具2の軸心O方向(図1上下方向)に挟持固定されている。挟持部材18は、第2筒部44(図7参照)がオリフィス金具16の軸心O方向他端側(図1下側)内周部に内嵌圧入され、また、その外周部側平板部41(図7参照)が第2取付け金具2(筒状金具6と底金具7との間)にかしめ固定されている。
ここで、仕切り体受け部3cは、防振基体3の下面側の全周にわたる段部として形成され、図1に示すように、その段部で仕切り体12の上端面を係止する。液封入式防振装置100の組み立て状態においては、仕切り体受け部3cが圧縮変形されており、この仕切り体受け部3cの弾性復元力が仕切り体12に保持力として作用している。これにより、仕切り体12を強固かつ安定的に挟持固定することができる。
なお、図1に示すように、挟持部材18の第2筒部44がオリフィス金具16の下端側内周部に内嵌圧入されると共に、挟持部材18の外周部側平板部41が第2取付け金具2(筒状金具6と底金具7との間)にかしめ固定されているので、挟持部材18及び仕切り体12を強固に保持することができる。その結果、大振幅や高周波数の振幅が入力された場合などでも、各部材のびびりを抑制することができるので、各部材の位置ずれや共振などに起因する動特性への影響を回避することができる。
次いで、図2から図4を参照して、仕切り体12を構成するオリフィス金具16について説明する。図2(a)は、オリフィス金具16の上面図であり、図2(b)は、図2(a)のIIb−IIb線におけるオリフィス金具16の断面図である。また、図3は、オリフィス金具16の側面図であり、図4は、オリフィス金具16の上面図である。
オリフィス金具16は、図2から図4に示すように、アルミニウム合金から、軸心Oを有し内周側が空洞の略円筒状に対し、その軸心O方向一端側を壁部により閉じて構成されている。このオリフィス金具16の軸心O方向一端側(例えば、図2(b)または図3の上側)の外周には、図2から図4に示すように、嵌合壁21が半径方向(軸心Oに略直交する方向をいう。例えば、図2(b)左右方向)に張り出して(即ち、オリフィス金具16の外周面から外方へ突出して)形成されている。嵌合壁21には、仕切板部材17の外嵌筒部31が外嵌圧入される(図1参照)。
嵌合壁21の周方向の一部には、図2から図4に示すように、切り欠き部21aが形成されており、この切り欠き部21aと後述する仕切板部材17の開口部32(図5参照)とを介して、オリフィス25の一端が第1液室11A(図1参照)に連通される。なお、オリフィス流路は、後述するように、そのオリフィス形成壁の一部が挟持部材18(中間部側平板部43)により形成される(図1参照)。また、切欠き部21aは、図4に示すオリフィス金具16の上面視において、オリフィス金具16の軸心Oと同心の円弧状に湾曲して形成されている。
嵌合壁21の一端には、図2から図4に示すように、オリフィス金具16の軸心O方向(例えば、図3上下方向)へ延びる縦壁23が連設されている。縦壁23は、オリフィス流路(オリフィス25)を周方向に区画する部位であり、オリフィス金具16の半径方向へ張り出して形成されると共に、図3に示すように、オリフィス金具16の下端面部(図3下側)まで延設されている。
オリフィス金具16の壁部は、図2から図4に示すように、その板厚方向に穿設される複数の開口部(中心側の中央開口部24aと、壁部の周方向に2列に並ぶ内側開口部24b及び外側開口部24c)を備えており、これら各開口部24a〜24cの周縁に沿って、中央環状リブ16a1等と第1〜第5内側放射状リブ16b1〜16b5等とが複数形成されている。
なお、本実施例では、図2又は図4に示すように、中央開口部24aの形状は、オリフィス金具16の軸心Oに同心の略円状に形成されている。また、内側開口部24bの形状は、オリフィス金具16の外周(第2取付け金具2の内周)に沿う環状の穴を放射状に分断して形成される。即ち、内側開口部24bは、環状の穴を、軸心Oに対して放射状に延びる5本の第1〜第5内側放射状リブ16b1〜16b5により分断することで、それぞれが異なる開口面積を有する5個の第1〜第5内側開口部24b1〜24b5を備えて構成されている。
同様に、図2又は図4に示すように、外側開口部24cの形状は、オリフィス金具16の外周(第2取付け金具2の内周)に沿う環状の穴であって、上述した内側開口部24bの外側に位置する環状の穴を放射状に分断して形成される。即ち、外側開口部24cは、環状の穴を、軸心Oに対して放射状に延びる6本の第1〜第6外側放射状リブ16c1〜16c6により分断することで、それぞれが異なる開口面積を有する6個の第1〜第6外側開口部24c1〜24c6を備えて構成されている。
ここで、複数(本実施の形態では合計12個)の各開口部(中央開口部24a、第1〜第5内側開口部24b1〜24b5及び第1〜第6外側開口部24c1〜24c6)は、図2又は図4に示すように、その開口面積がそれぞれ他の開口部の開口面積と異なる大きさに構成されている。即ち、12個の開口部が全て異なる開口面積を有して構成されている。
中央環状リブ16a1、内側環状リブ16a2及び外側環状リブ16a3は、図2又は図4に示すように、オリフィス金具16の軸心Oに対して、同心の環状により形成され、中央環状リブ16a1と内側環状リブ16a2とは第1〜第5内側放射状リブ16b1〜16b5により、内側環状リブ16a2と外側環状リブ16a3とは第1〜第6放射状リブ16c1〜16c6により、それぞれ連結されている。
なお、図2又は図4に示すように、中央環状リブ16a1及び内側環状リブ16a2は、それぞれ全周にわたって一定のリブ幅に構成されているので、第1〜第5内側放射状リブ16b1〜16b5のリブ長さ(即ち、内側開口部24bの開口幅)もそれぞれ同じ長さに構成されている。同様に、外側環状リブ16a3も全周にわたって一定のリブ幅に構成されているので、第1〜第6外側放射状リブ16c1〜16c6のリブ長さ(即ち、外側開口部24cの開口幅)もそれぞれ同じ長さに構成されている。
但し、本実施の形態では、後述するように、合計12個の開口部24a,24b1〜24b5,24c1〜24c6の開口面積が全て異なる面積値となるように、内側開口部24bの開口幅が外側開口部24cの開口幅よりも狭くされている。
図4に示すように、第1〜第5内側放射状リブ16b1〜16b5及び第1〜第6外側放射状リブ16c1〜16c6は、それぞれオリフィス金具16の軸心Oから放射直線状に延設されており、本実施の形態では、第1〜第6外側放射状リブ16c1〜16c6の開き角α(リブ幅)がα=10°に設定されている。また、図面を簡素化するべく、図示を省略するが、第1〜第5内側放射状リブ16b1〜16b5の開き角α(リブ幅)も同様にα=10°に設定されている。
図4に示すように、5本の第1〜第5内側放射状リブ16b1〜16b5は、6本の第1〜第6外側放射状リブ16c1〜16c6に対して、周方向における位置が位置ずれした状態に配設されている。即ち、各内側放射状リブ16b1〜16b5は、各外側放射状リブ16c1〜16c6の延長領域と重ならない位置に配置されている。
ここで、本実施の形態における外側開口部24cは、第1外側開口部24c1の開口角θ1がθ1=60°に、第2外側開口部24c2の開口角θ2がθ2=40°に、第3外側開口部24c3の開口角θ3がθ3=52°に、第4外側開口部24c4の開口角θ4がθ4=48°に、第5外側開口部24c5の開口角θ5がθ5=56°に、第6外側開口部24c6の開口角θ6がθ6=44°に、それぞれ設定されている。
また、本実施の形態における内側開口部24bは、第1内側開口部24b1の開口角θ7がθ7=52°に、第2内側開口部24b2の開口角θ8がθ8=72°に、第3内側開口部24b3の開口角θ9がθ9=42°に、第4内側開口部24b4の開口角θ10がθ10=87°に、第5内側開口部24b5の開口角θ11がθ11=57°に、それぞれ設定されている。
以上のように、中央開口部24a、第1〜第5内側開口部24b1〜24b5及び第1〜第6外側開口部24c1〜24c6を構成することで、これら合計12個の開口部は、全て異なる開口面積を有して構成される。
なお、第1〜第6外側開口部24c1〜24c6の内で開口面積が最小となる第2外側開口部24c2は、第1〜第5内側開口部24b1〜24b5の内で開口面積が最大となる第4内側開口部24b4よりも大きな開口面積を有して構成されている。また、中央開口部24aは、第1〜第5内側開口部24b1〜24b5の内で開口面積が最小となる第3内側開口部24b3よりも小さな開口面積を有して構成されている。
次いで、図5を参照して、仕切り体12を構成する仕切板部材17について説明する。図5(a)は仕切板部材17の上面図であり、図5(b)は、図5(a)のVb−Vb線における仕切板部材17の断面図である。
仕切板部材17は、図5に示すように、鉄鋼材料などから軸心Oを有する略円板状に形成されている。仕切板部材17の壁部(板面)は、図5に示すように、その板厚方向に穿設される複数の開口部(中心側の中央開口部34aと、壁部の周方向に2列に並ぶ内側開口部34b及び外側開口部34c)を備えており、これら各開口部34a〜34cの周縁に沿って、中央環状リブ17a1等と第1〜第5内側放射状リブ17b1〜17b5等とが複数形成されている。
なお、これら中心側の中央開口部34a及び壁部の周方向に2列に並ぶ内側開口部34b及び外側開口部34cは、上述したオリフィス金具16の中心側の中央開口部24a及び壁部の周方向に2列に並ぶ内側開口部24b及び外側開口部24cと同一に構成(即ち、位置、大きさ、範囲などが同じであり、軸心方向視において外形が一致する形状に構成)されるものであり、従って、各環状リブ17a1〜17a3及び各放射状リブ17b1〜17b5,17c1〜17c6もまたオリフィス金具16の各環状リブ16a1〜16a3及び各放射状リブ16b1〜16b3,16c1〜16c6と同様に構成されるものであるので、それらの説明は省略する。
仕切板部材17の外周部には、図5に示すように、外嵌筒部31が全周にわたって略同一の高さで立設されている。仕切板部材17は、この外嵌筒部31を上述したオリフィス金具16の軸方向一端側の外周に、即ち、オリフィス金具16の嵌合壁21に外嵌することで、オリフィス金具16に組み付けられる(図1参照)。
仕切板部材17には、外側環状リブ17b3の外側に、開口部32が板厚方向に穿設されている。この開口部32は、上述したように、オリフィス金具16の切り欠き部21a(図2から図4参照)を介して、オリフィス流路(オリフィス25)と第1液室11Aとを連通させる開口である。
開口部32は、図5(a)に示すように、周方向に沿って湾曲した略長穴形状に形成されている。開口部32は、その周方向長さがオリフィス金具16の切り欠き部21aよりも長くなるように設定されている。よって、仕切板部材17をオリフィス金具16に組み付ける場合には、その組み付け位置が周方向へ多少ずれても、オリフィス25の流路断面積が減少することを防止することができる。
次いで、図6を参照して、仕切り体12を構成する弾性仕切り膜15について説明する。図6(a)は、弾性仕切り膜15の上面図であり、図6(b)は、図6(a)のVIb−VIb線における弾性仕切膜15の断面図である。なお、図6(a)では、図面を簡素化して、理解を容易とするために、リブ群(放射状リップ15a及び環状リップ15b〜15d)の配置が一点鎖線を用いて模式的に図示されている。
弾性仕切り膜15は、上述したように、仕切り体12内(オリフィス金具16の壁部と仕切板部材17の壁部との対向面間)に収容され、第1及び第2液室11A,11B間の液圧差を緩和する作用を奏するものであり、ゴム状弾性体から均一膜厚であって軸心Oを有する略円板状に構成されている。
弾性仕切り膜15の上下両面(一面側15x1及び他面側15x2)には、凸条状のリブ群が凸設されている。なお、本実施の形態では、上面側のリブ群のパターンは、下面側のリブ群のパターンと同一に形成されている。即ち、上下両面のリブ群は、弾性仕切り膜15の厚み方向(図6(b)上下方向)中間に位置する仮想平面(図示せず)に対して、面対称となるように構成されている。
リブ群は、図6に示すように、弾性仕切り膜15の軸心Oに対して放射状に配置される放射状リップ15aと、弾性仕切り膜15の軸心Oに対して同心の環状に配置される環状リップ15b〜15dとを備えている。放射状リップ15aは、32本が周方向に略11.25度の等間隔に分散配置されている。一方、環状リップ15b〜15dは、上述した各環状リブ16a1〜16a3(図2及び図5参照)に対応する位置にそれぞれ1本ずつ合計3本が配置されている。
ここで、本実施の形態では、仕切り体12の組み立て状態(図8参照)において、放射状リップ15a及び環状リップ15b〜15dの頂部がオリフィス金具16及び仕切板部材17(各放射状リブ16b1〜17c6及び各環状リブ16a1〜17a3)に当接可能な高さ寸法に設定されている。これにより、オリフィス部材16及び仕切り部材17との衝突を抑制して、異音発生の低減を図ることができる。
また、放射状リップ15aの断面形状は、そのリップ幅が、環状リップ15b〜15dのリップ幅よりも小さな幅寸法に設定されている。これにより、放射状リップ15aを変形し易くして、弾性仕切り膜15全体としての剛性が高くなりすぎることを抑制することができるので、比較的小振幅の振動入力時の低動ばね特性を得ることもできる。
次いで、図7を参照して、挟持部材18について説明する。図7(a)は、挟持部材18の上面図であり、図7(b)は、図7(a)のVIIb−VIIb線における挟持部材18の断面図である。
挟持部材18は、防振基体3との間で仕切り体12を挟持して保持するための部材であり(図1参照)、図7に示すように、鉄鋼材料などから軸心Oを有する略円板状に形成されている。
この挟持部材18は、図7に示すように、外周部側平板部41と、ゴム膜3aの下端部に密着してシールする第1筒部42と、オリフィス金具16の下端部に押圧作用する中間部側平板部43と、オリフィス金具16の軸方向他端側の内周部に内嵌される第2筒部44とを備えて構成されている。また、挟持部材18の中心部には、ダイヤフラム9との干渉を回避するための開口部が形成されている。
中間部側平板部43は、オリフィス形成壁を兼用するように構成されている(図1参照)。即ち、上述したオリフィス金具16は、その下端部の外径寸法が中間部側平板部43の外径寸法よりも小径とされており(図1参照)、その結果、中間部平板部43は、オリフィス金具16の下端部から半径方向へ張り出す張出部として、オリフィス25(オリフィス流路)のオリフィス形成壁を兼用する。
中間部側平板部43、即ち、オリフィス形成壁には、図7(a)に示すように、周方向に沿って延びる略長円形状の開口部46が板厚方向(図7(a)紙面垂直方向)に穿設されている。オリフィス25(オリフィス流路)は、この開口部46を介して、第2液室11Bに連通される(図1参照)。
次いで、図8を参照して、仕切り体12及び挟持部材18の組み立てについて説明する。図8(a)は、仕切り体12及び挟持部材18の上面図であり、図8(b)は、図8(a)のVIIIb−VIIIb線における仕切り体12及び挟持部材18の断面図である。
仕切り体12及び挟持部材18の組み立ては、まず、弾性仕切り膜15をオリフィス金具16の壁部上に載置し、オリフィス金具16の嵌合壁21に仕切板部材17の外嵌筒部31を外嵌する。これにより、図8に示すように、弾性仕切り膜15がオリフィス金具16及び仕切板部材17の壁部の対向面間に収納され、弾性仕切り膜15の変位が弾性仕切り膜15の一面側15x1及び他面側15x2(図5(b)参照)の両面(図7(b)上下)から規制される。
次いで、オリフィス金具16の内周部に挟持部材18の第2筒部44を内嵌圧入することで、仕切り体12及び挟持部材18の組み立てが完了する。なお、オリフィス金具16に挟持部材18を内嵌圧入した後に、オリフィス金具16に仕切板部材17を外嵌圧入しても良い。また、オリフィス金具16に仕切板部材17を外嵌する場合には、オリフィス金具16の各開口部24c1等と仕切板部材17の各開口部34c1等との周方向位置が一致するように、オリフィス金具16と仕切板部材17との相対位置を位置合わせする。
次いで、図9を参照して、液封入式防振装置100の動荷重試験についての試験結果を説明する。動荷重とは、液封入式防振装置100を所定条件で加振した際に液封入式防振装置100から発生する反力を加速度で表したものであり、この大きさが小さいほど振動(弾性仕切り膜15による打音など)を伝達し難くすることができ、異音の発生を抑制する。
この動荷重試験では、上述した液封入式防振装置100(以下、「発明品」と称す。)と、液封入式防振装置100における内側開口部24b,34b及び外側開口部24c,34cの形状のみを変更したもの(以下、「従来品」と称す。)との2種類を測定して比較した。
なお、従来品は、発明品に対し、第1〜第5内側放射状リブ16b1〜16b5,17b1〜17b3及び第1〜第6外側放射状リブ16c1〜16c6,17c1〜17c6の配設位置のみを変更したものであり、5本の第1〜第5内側放射状リブ16b1〜16b5,17b1〜17b5を周方向72°等間隔に、6本の第1〜第6外側放射状リブ16c1〜16c6,17c1〜17c6を周方向60°等間隔に、それぞれ配置して構成されている。よって、内側開口部24b,34b及び外側開口部24c,34cの総開口面積は、従来品と発明品とで同等である。
動荷重試験は、エンジン支持状態と同じ荷重を液封入式防振装置100に作用させ、その状態において、所定の振動(周波数:19Hz、振幅:±0.4mm)を液封入式防振装置100に入力して加振した際の反力波形を周波数分析することにより行った。
図9は、動荷重試験の試験結果を示したものであり、縦軸が動荷重(dB)を、横軸が周波数(Hz)を、それぞれ示している。なお、0dBが1Nに対応する。また、図9は、第1液室11Aから第2液室11Bへ液体が流動する方向への振動が入力された状態における動荷重を示す。
図9に示すように、発明品では、上述したように、各開口部(中央開口部24a,34a、内側開口部24b,34b及び外側開口部24c,34c)の開口面積を全て異なる大きさによって構成することで、従来品と比較して、100Hzから160Hzの周波数領域における動荷重レベルを最大で4dB程度低減することができたことを理解できる。
次いで、図10を参照して、第2実施の形態について説明する。図10は、第2実施の形態におけるオリフィス金具216の上面図である。第2実施の形態におけるオリフィス金具216は、第1実施の形態におけるオリフィス金具16に対し、内側開口部224bの構成が異なる。なお、上記各実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
第2実施の形態におけるオリフィス金具216は、図10に示すように、内側開口部224bの形状が、上述した第1実施の形態の場合と同様に、オリフィス金具216の外周(第2取付け金具2の内周)に沿う環状の穴を放射状に分断して形成される。但し、第2実施の形態では、環状の穴を、軸心Oに対して放射状に延びる6本の第1〜第6内側放射状リブ216b1〜216b6により分断することで、それぞれが異なる開口面積を有する6個の第1〜第6内側開口部224b1〜224b6を備えて構成されている。
なお、第2実施の形態においても、複数(本実施の形態では合計13個)の各開口部(中央開口部24a、第1〜第6内側開口部224b1〜224b6及び第1〜第6外側開口部24c1〜24c6)は、図10に示すように、その開口面積がそれぞれ他の開口部の開口面積と異なる大きさに構成されている。即ち、13個の開口部が全て異なる開口面積を有して構成されている。
図10に示すように、第1〜第6内側放射状リブ216b1〜216b6は、オリフィス金具16の軸心Oから放射直線状に延設されており、本実施の形態では、第1〜第6内側放射状リブ216b1〜216b6の開き角α(リブ幅)がα=10°に設定されている。但し、図10では、図面を簡素化するべく、各内側放射状リブ216b1等の開き角αの図示が省略されている。
図10に示すように、6本の第1〜第6内側放射状リブ216b1〜216b6は、上述した第1実施の形態の場合と同様に、6本の第1〜第6外側放射状リブ16c1〜16c6に対して、周方向における位置が位置ずれした状態に配設されている。即ち、各内側放射状リブ216b1〜216b6は、各外側放射状リブ16c1〜16c6の延長領域と重ならない位置に配置されている。
ここで、本実施の形態における内側開口部24bは、第1内側開口部224b1の開口角θ17がθ17=62°に、第2内側開口部224b2の開口角θ18がθ18=38°に、第3内側開口部224b3の開口角θ19がθ19=55°に、第4内側開口部224b4の開口角θ20がθ20=45°に、第5内側開口部224b5の開口角θ21がθ21=58°に、第6内側開口部224b6の開口角θ22がθ22=42°に、それぞれ設定されている。
以上のように第1〜第6内側開口部224b1〜224b6を構成することで、合計13個の開口部(中央開口部24a、内側開口部224b及び外側開口部24c)は、全て異なる開口面積を有して構成される。
なお、第1〜第6外側開口部24c1〜24c6の内で開口面積が最小となる第2外側開口部24c2は、第1〜第6内側開口部224b1〜224b6の内で開口面積が最大となる第1内側開口部224b1よりも大きな開口面積を有して構成されている。また、中央開口部24aは、第1〜第6内側開口部224b1〜224b6の内で開口面積が最小となる第2内側開口部224b2よりも小さな開口面積を有して構成されている。
また、複数(本実施の形態では6個)の内側開口部224bは、両隣の内側開口部224bよりも大きな開口面積を有する内側開口部224b(第1、第3及び第5内側開口部224b1,224b3,224b5)と、両隣の内側開口部224bよりも小さな開口面積を有する内側開口部224b(第2、第4及び第6内側開口部224b2,224b4,224b6)とを周方向に交互に配置して構成されている。
即ち、第1内側開口部224b1の開口面積は、両隣となる第6内側開口部224b6及び第2内側開口部224b2の開口面積よりも大きく、第3内側開口部224b3の開口面積は、両隣となる第2内側開口部224b2及び第4内側開口部224b4の開口面積よりも大きく、第5内側開口部224b5の開口面積は、両隣となる第4内側開口部224b4及び第6内側開口部224b6の開口面積よりも大きい。
一方、第2内側開口部224b2の開口面積は、両隣となる第1内側開口部224b1及び第3内側開口部224b3の開口面積よりも小さく、第4内側開口部224b4の開口面積は、両隣となる第3内側開口部224b3及び第5内側開口部224b5の開口面積よりも小さく、第6内側開口部224b6の開口面積は、両隣となる第5内側開口部224b5及び第1内側開口部224b1の開口面積よりも小さい。
そして、本実施の形態では、図10に示すように、第1〜第6内側開口部224b1〜224b6を順に配列することで、両隣よりも開口面積が大きなものと、両隣よりも開口面積が小さなものとが周方向に交互に配置されている。
また、図10に示すように、外側開口部24cについても、両隣の外側開口部24cよりも大きな開口面積を有する外側開口部224b(第1、第3及び第5外側開口部24c1,24c3,24c5)と、両隣の外側開口部24cよりも小さな開口面積を有する内側開口部24c(第2、第4及び第6外側開口部24c2,24c4,24c6)とが周方向に交互に配置されている。
なお、第2実施の形態における仕切板部材17に形成される開口部は、上述したオリフィス金具216の中心側の中央開口部24a及び壁部の周方向に2列に並ぶ内側開口部224b及び外側開口部24cと同一に構成(即ち、位置、大きさ、範囲などが同じであり、軸心方向視において外形が一致する形状に構成)されるものであるので、その説明は省略する。
また、仕切り体12及び挟持部材18の組み立ては、上述した第1実施の形態の場合と同様に、オリフィス金具216の各開口部24c1等と仕切板部材17の各開口部34c1等との周方向位置が一致するように、オリフィス金具216と仕切板部材17との相対位置を位置合わせして、オリフィス金具216に仕切板部材17を外嵌する。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
上記実施の形態で挙げた数値(例えば、各構成の数量や寸法・角度など)は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
例えば、第1実施の形態では、5本の第1〜第5内側放射状リブ16b1〜16b5,17b1〜17b3と6本の第1〜第6外側放射状リブ16c1〜16c6,17c1〜17c6とを設ける場合を説明し、第2実施の形態では、6本の第1〜第6内側放射状リブ216b1〜216b6と6本の第1〜第6外側放射状リブ16c1〜16c6,17c1〜17c6とを設ける場合を説明したが、必ずしもこの本数に限られるものではなく、他の本数を採用することは当然可能である。例えば、内側放射状リブを2本とし、かつ、外側放射状リブを4本としても良い。或いは、内側放射状リブを4本以上とし、かつ、外側放射状リブを8本以上としても良い。
また、上記実施の形態では、内側及び外側放射状リブ16a1〜17c6の開き角αをα=10°とする場合を説明したが、必ずしもこの角度に限られるものではなく、他の角度を採用しても良い。同様に、内側開口部24b1〜24b5,34b1〜34b5,224b1〜224b6及び外側開口部24c1〜24c6,34c1〜34c6の開口角θ1〜θ22についても他の角度を採用しても良い。
上記各実施の形態では、各内側放射状リブ16b1〜16b5,17b1〜17b5,216b1〜216b6と各外側放射状リブ16c1〜16c6,17c1〜17c6とが周方向に位置ずれして配置される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、これらの少なくとも一部又は全部の周方向位置を一致させて配置させることは当然可能である。