JP3978537B2 - 流体封入式防振装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として自動車エンジン等の振動体を防振的に支承するのに用いられる流体封入式防振装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、流体封入式防振装置は、エンジン等の振動発生体側に取り付けられる第1取付金具と、車体フレーム等の支持側に取付固定される筒状の第2取付金具とを、ゴム材よりなる防振基体を介して結合し、上記第2取付金具の下部側に防振基体と対向してダイヤフラムを配し、防振基体とダイヤフラムとの間の内室を流体封入室とし、この流体封入室を仕切部材により防振基体側とダイヤフラム側との2室に仕切り、両室をオリフィスにより連通せしめてなり、オリフィスによる両液室間の液流動効果や防振基体の制振効果により、振動減衰機能を果たすように構成されている。
【0003】
かかる流体封入式防振装置において、仕切部材を、往復動変位する弁部材としての弾性膜と、該弾性膜の動きを制限する上下一対の格子とで構成したものが公知である。このような弾性膜を持つ防振装置は、車両走行時の路面の凹凸に起因する振動のような周波数の低い大振幅の振動下では、流体がオリフィスを通って2室間を流動することで振動減衰機能を発揮する。一方、エンジンの回転数に起因する振動のような周波数の高い微振幅の振動下では、上記オリフィスは機能せず、弾性膜の往復動変形により振動減衰機能を発揮する。
【0004】
フランス国特許公開第2674590号公報には、上下の液室を仕切る仕切部材として、上下一対の格子と、該格子間に保持された弾性膜とで構成したものが開示されている。同公報では、弾性膜は、その中央部が上下の格子間に挟持され、縁部が浮動するように設けられており、弾性膜と格子との衝突音や望ましくない騒音の発生を防止するため、弾性膜の少なくとも一方の面には格子に対向する円形突起が設けられている。この円形突起は、弾性膜の表面にリング状に並んだ状態で均等に配置されており、弾性膜の作動時に、格子に段階的に押圧され次いで弾性的に弛緩する機能を持っている。
【0005】
また、特開平6−221368号公報には、上記と同様に弾性膜と格子との衝突音や望ましくない騒音の発生を防止するため、弾性膜ではなく格子に、角度的には順次であるが、軸線の回り全体にわたって角度的に繰り返しのない不均等性のリブを設ける技術が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術の円形突起やリブは、弾性膜が上下に変位することで格子に衝突する際の衝撃音を軽減するために設けられたものであり、格子により形成される貫通孔間において、周方向や半径方向での封入液の移動を制限するものではない。そのため、上記従来の防振装置では、周波数の低い大振幅の振動下において、隣接する貫通孔間で封入液の移動(リーク)が起こり、より高い性能を発揮し難い。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、仕切部材の貫通孔間における封入流体の不必要なリークを防止して、防振性能を向上することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の流体封入式防振装置は、第1取付部材と、第2取付部材と、これら取付部材の間に介設されて両取付部材を結合するゴム材よりなる防振基体と、前記防振基体に対向させて前記第2取付部材に取り付けたダイヤフラムと、前記の防振基体とダイヤフラムとの間に設けられた流体封入室と、前記流体封入室を防振基体側の第1室とダイヤフラム側の第2室とに仕切る仕切部材と、前記の第1室と第2室を連通させるオリフィスと、を備え、前記仕切部材が、前記の第1室と第2室を仕切る弾性膜と、該弾性膜の変位を制限する一対の格子とを備えてなり、前記弾性膜の表面とこれに対向する前記格子の面との間に、該格子により形成される各貫通孔を全周にわたって取り囲む凸条が設けられ、前記凸条は、第1の振動下では隣接する貫通孔間での流体の移動を規制し、前記第1の振動よりも周波数が高くかつ振幅の小さい第2の振動下では流体が前記凸条を越えて移動するよう構成されたものである。
【0009】
本発明の流体封入式防振装置では、弾性膜とこれに対向する格子との間に各貫通孔を全周にわたって取り囲む凸条を設けたことにより、特に周波数の低い大振幅の振動下において上記凸条が隣接する貫通孔間での流体の漏れを防止する。そのため、弾性膜を各貫通孔ごとに撓ませることができ、高いロスファクターが得られる。また、周波数の高い微振幅の振動下では、流体が上記凸条を越えて移動するので、凸条を越えて移動する流体が液圧差を緩和して低動ばね定数を発揮する。
【0010】
上記凸条は、弾性膜の表面又はこれに対向する格子の面に一体に設けることができる。
【0011】
より具体的には、前記格子が、周方向に延びる複数の環状部と、半径方向に延びて前記複数の環状部を連結する連結部とからなり、該格子により周方向に複数の貫通孔を配置してなる貫通孔列が2列以上設けられ、ここで、前記連結部は前記格子の内周側と外周側とで異なるピッチで配されており、前記凸条が、前記弾性膜に設けられており、前記格子の前記環状部に対応して周方向に延びる複数の環状凸部と、前記格子の前記連結部に対応して放射状に延びる複数の放射状凸部とからなり、前記放射状凸部は、前記弾性膜の半径方向の略全長にわたって、かつ、均等な角度で放射状に延びている場合がある。この場合、放射状凸部の中には格子の連結部上に載らないものもあるが、このように格子から外れた凸条であっても弾性膜の各貫通孔ごとの撓み挙動を妨げることはない。そのため、弾性膜の軸線回りで均等に配置した凸条でも機能に支障を与えない。
【0012】
弾性膜に上記凸条を設ける場合、弾性膜に位置決め用凸部を設けるとともに、前記格子に該凸部が嵌合する位置決め用凹部を設けて、両者を嵌合させることで前記弾性膜を回転方向で位置決めしてもよい。これにより、弾性膜に設けた放射状凸部を格子の連結部上に確実に載せることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0014】
図1は本発明の1実施形態に係る流体封入式防振装置の縦断面図、図2はその分解図である。この防振装置は、エンジン等の振動発生体側に取り付けられる第1取付金具10と、車体フレーム等の支持側に取付固定される筒状の第2取付金具12とを、ゴム材よりなる防振基体14を介して結合してなる。
【0015】
第2取付金具12は、筒状金具16と、その下端16aにかしめ手段により締結された底金具18とからなり、底金具18に取付用ボルト19が突設されている。
【0016】
第1取付金具10は、第2取付金具12の軸心部上方に所要の間隔をおいて配された板状部材であり、その中央部に取付用ボルト20が上方に向けて突設されている。
【0017】
防振基体14は、外形が略截頭円錐形をなし、その上面に第1取付金具10が加硫成形手段により固着され、下端外周部に第2取付金具12の上端部が加硫成形手段により固着されている。図の場合、筒状金具16の上端部16bがテーパ状に拡径形成されており、該上端部16bに防振基体14の下部外周が加硫接着されている。第2取付金具12の内壁面には、防振基体14から薄膜状に延設された薄膜ゴム部14aが設けられている。
【0018】
第2取付金具12の下部側には、防振基体14と対向するようにゴム膜よりなるダイヤフラム22が装着されている。ダイヤフラム22は、外周部にリング状の補強金具24を備え、この補強金具24が筒状金具16と底金具18とのかしめ部にかしめ固定されることで第2取付金具12に取り付けられている。
【0019】
第2取付金具12の内側には、ダイヤフラム22と防振基体14との間に密閉された流体封入室26が形成されており、この流体封入室26に流体としての液体が封入されている。流体封入室26における第2取付金具12の内周には、外周にオリフィス28を有する円盤状の仕切部材30が液密に嵌着されている。流体封入室26は、この仕切部材30により防振基体側の第1室26aとダイヤフラム側の第2室26bとに仕切られており、両室26a,26bがオリフィス28により連通せしめられている。
【0020】
仕切部材30は、第1室26aと第2室26bとを仕切る弁部材としての円板状のゴム膜32と、外周にオリフィス28を形成するための溝34を備えるオリフィス部材36と、オリフィス部材36の外周縁部を防振基体14側に押圧する仕切板38とで構成されている。
【0021】
オリフィス部材36は、金属又は樹脂のモールド成形体であって、外周面には周方向に上下2周にわたって延びる溝34が形成されている。この溝34と防振基体14の薄膜ゴム部14aとで囲まれた空間がオリフィス28とされている。
【0022】
仕切板38は、金属板のプレス成形体であって、上方に突出した円板状の中央棚部38aを備える。仕切板38は、外周縁部38bが筒状金具16と底金具18とのかしめ部にかしめ固定されることで第2取付金具12に取り付けられている。
【0023】
オリフィス部材36と仕切板38には、オリフィス28を第1室26aと第2室26bに連通させるための開口37,39がそれぞれ設けられている。
【0024】
オリフィス部材36と仕切板38にはそれぞれ中央部に、ゴム膜32の上下方向の変位を制限する外形が円形の格子40,42が設けられている。ゴム膜32は、第1室26aに面したオリフィス部材36の格子40と第2室26bに面した仕切板38の格子42との間で形成される隙間(収容空間)44内に配されて、両格子40,42間でその変位が制限される。隙間44の寸法(高さ)は、ゴム膜32の厚みよりも若干大きく設定されており、これにより、ゴム膜32の上下動変位を可能にしている。
【0025】
両格子40,42は同一の格子形状を持っている。図4に示すように、仕切板38の中央棚部38aに設けられた格子42は、周方向に延びる3本の同心状の環状部42aと、半径方向に延びて隣接する2つの環状部間を連結する連結部42bとからなる。連結部42bは、格子42の内周側と外周側とで異なるピッチで配されており、図の場合、内周側の連結部42bは90°間隔で4本、外周側の連結部42bは45°間隔で8本設けられている。また、内周側の連結部42bと外周側の連結部42bとが全て一致しないように、両者は位相を22.5°ずらして設けられている。この格子42により、周方向に複数の長穴状の貫通孔46を配置してなる貫通孔列が内周側と外周側との2列に設けられるが、上記のように連結部42bのピッチを変えたことにより、貫通孔46は内周側で4個、外周側で8個が設けられる。このように内周側で貫通孔46の数を少なくすることで、内周側の各貫通孔46の開口面積を、外周側と同程度に、大きく確保することができる。オリフィス部材36の格子40も上記した仕切板38の格子42と同一形状であり、かつ、両者36,38は互いの貫通孔46が一致した位置に配されるように組付けられる。
【0026】
ゴム膜32の表面には、上記格子40,42の対向する面に当接して各貫通孔46の外周を全周にわたって取り囲む凸条48が一体に突出形成されている。凸条48は、図3に示すように、ゴム膜32の上下両面に同一形状にて設けられている。具体的には、図4に示すように、凸条48は、格子42の環状部42aに対応して周方向に延びる3本の同心状の環状凸部48aと、格子42の連結部42bに対応して放射状に延びる放射状凸部48bとからなる。この放射状凸部48bは、ゴム膜32の中心から半径方向の略全長にわたって延びている。また、放射状凸部48bは、格子42の全ての連結部42bに少なくとも1本が載るように、かつ、均等な角度で放射状の延びるように、22.5°間隔で設けられている。
【0027】
以上よりなる本実施形態の防振装置であると、周波数の低い大振幅(例えば±0.3mm以上)の振動下では、流体がオリフィス28を通って2室26a,26b間を流動することにより振動減衰機能が発揮される。また、ゴム膜32に設けた凸条48が相対する格子40,42の支承面に当接することにより、周方向又は半径方向に隣接する貫通孔46間での流体の漏れが防止される。そのため、ゴム膜32を各貫通孔46ごとに撓ませることができ、高いロスファクターが得られる。一方、周波数の高い微振幅(例えば±0.1mm以下)の振動下では、上記オリフィス28は機能せず、凸条48を越えて移動する流体により第1室26aと第2室26bとの液圧差が緩和されて低動ばね定数が発揮される。このように本実施形態の防振装置であると、振幅依存性をなくしつつ高いロスファクターと低動ばね定数を達成することができ、異なる振幅下において十分な性能を発揮させることができる。
【0028】
なお、格子40,42の連結部の配設ピッチを内周側と外周側で変えたことにより、軸線回りに均等に配設した放射状凸部48bでは、格子40,42の連結部上に載らないものも存在する。但し、このように格子40,42から外れた凸条48であってもゴム膜32の各貫通孔46ごとの撓み挙動を妨げることはないため、上記した性能に支承を与えない。
【0029】
図5は、上記実施形態にゴム膜32の回転方向での位置決めのための構成を追加した例を示したものである。すなわち、この例では、ゴム膜32は、仕切板38側に突出する楕円形状の位置決め用凸部50を備える。該凸部50はゴム膜32の中央部に設けられている。また、仕切板38は、中央棚部38aの中心に上記凸部50が嵌合する位置決め用凹部52を備える。該凹部52は、この実施形態では凸部50の外形形状に対応する長孔からなる。
【0030】
この場合、ゴム膜32を仕切板38上に組付ける際に、ゴム膜32の凸部50を仕切板38の凹部52に嵌合させながら、ゴム膜32を仕切板38の格子42上に載せることにより、ゴム膜32に設けた放射状凸部48bを格子42の連結部42b上に確実に載せることができる。
【0031】
なお、凸部50及び凹部52の形状は、回転方向での位置決めが可能であれば上記した楕円形には限定されず、多角形状など種々の形状を採用することができる。また、位置決め用凸部と凹部を2つずつ設けて2組の嵌合により位置決めしてもよい。
【0032】
以上の実施形態では、ゴム膜32に凸条48を設けたが、凸条は格子40,42に一体に設けてもよい。この場合、格子40,42に設けた凸条がゴム膜32に当接することで隣接する貫通孔46間での流体の漏れが防止される。
【0033】
【発明の効果】
本発明の流体封入式防振装置であると、弾性膜とこれに対向する格子との間に各貫通孔を全周にわたって取り囲む凸条を設けたことにより、特に周波数の低い大振幅の振動下において隣接する貫通孔間での流体の漏れを防止することできる。また、周波数の高い微振幅の振動下では、流体が上記凸条を越えて移動するので、該移動する流体が液圧差を緩和して低動ばね定数を発揮する。よって、防振性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施形態に係る防振装置の縦断面図である。
【図2】同防振装置を分解して示す断面図である。
【図3】図2のA部拡大図である。
【図4】(a)は仕切板の斜視図、(b)はゴム膜の斜視図、(c)は仕切板とゴム膜を組み合わせた状態での平面図である。
【図5】(a)は他の実施形態における仕切板とゴム膜を組み合わせた状態での平面図、(b)はそのB−B断面図である。
【符号の説明】
10……第1取付金具
12……第2取付金具
14……防振基体
22……ダイヤフラム
26……流体封入室
28……オリフィス
30……仕切部材
32……ゴム膜
40,42……格子
42a……環状部
42b……連結部
48……凸条
48a……環状凸部
48b……放射状凸部
Claims (4)
- 第1取付部材と、第2取付部材と、これら取付部材の間に介設されて両取付部材を結合するゴム材よりなる防振基体と、前記防振基体に対向させて前記第2取付部材に取り付けたダイヤフラムと、前記の防振基体とダイヤフラムとの間に設けられた流体封入室と、前記流体封入室を防振基体側の第1室とダイヤフラム側の第2室とに仕切る仕切部材と、前記の第1室と第2室を連通させるオリフィスと、を備え、
前記仕切部材が、前記の第1室と第2室を仕切る弾性膜と、該弾性膜の変位を制限する一対の格子とを備えてなり、
前記弾性膜の表面とこれに対向する前記格子の面との間に、該格子により形成される各貫通孔を全周にわたって取り囲む凸条が設けられ、前記凸条は、第1の振動下では隣接する貫通孔間での流体の移動を規制し、前記第1の振動よりも周波数が高くかつ振幅の小さい第2の振動下では流体が前記凸条を越えて移動するよう構成された
ことを特徴とする流体封入式防振装置。 - 前記凸条が、前記弾性膜の表面又はこれに対向する前記格子の面に一体に設けられたことを特徴とする請求項1記載の流体封入式防振装置。
- 前記格子が、周方向に延びる複数の環状部と、半径方向に延びて前記複数の環状部を連結する連結部とからなり、該格子により周方向に複数の貫通孔を配置してなる貫通孔列が2列以上設けられ、ここで、前記連結部は前記格子の内周側と外周側とで異なるピッチで配されており、
前記凸条が、前記弾性膜に設けられており、前記格子の前記環状部に対応して周方向に延びる複数の環状凸部と、前記格子の前記連結部に対応して放射状に延びる複数の放射状凸部とからなり、
前記放射状凸部は、前記弾性膜の半径方向の略全長にわたって、かつ、均等な角度で放射状に延びていることを特徴とする請求項1又は2記載の流体封入式防振装置。 - 前記弾性膜に位置決め用凸部を設けるとともに、前記格子に該凸部が嵌合する位置決め用凹部を設けて、両者を嵌合させることで前記弾性膜を回転方向で位置決めしたことを特徴とする請求項3記載の流体封入式防振装置。
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