この発明は、内部に収納物を収納した状態で運搬が可能な収納庫およびその監視システムに関する。
内部に収納物を収納した状態で運搬される収納庫には、様々な構造のものがある。その中でも、例えば、銀行などの金融機関に設置される現金自動取引装置に着脱自在な一括収納庫として使用されるものがある。
一括収納庫は、現金を運搬するための金庫である。一括収納庫は、銀行などの金融機関に設置される現金自動取引装置に対して着脱自在な形状となっており、現金自動取引装置に現金を補充するために、また、現金自動取引装置の内部に蓄積された現金を回収するために供される。
図4は現金自動取引装置の外観を示す斜視図である。図4に示すように、現金自動取引装置2は、紙幣入出金部4、カードリーダライタ部5、通帳記帳機部6、顧客操作部7、制御部8などを有する。紙幣入出金部4は、顧客操作により現金の入金処理や出金処理などを行なう部位である。カードリーダライタ部5は、顧客により挿入されるカードの識別処理や、入金または出金などの取引内容のカードへの書込処理、入金または出金などの取引内容のカードからの読取処理を行なう部位である。通帳記帳部6は、顧客により挿入される通帳の識別処理や、入金または出金などの取引内容の印字処理を行なう部位である。顧客操作部7は、暗証番号や、入金金額または出金金額、その他の情報を入力する操作キーや、操作案内用のイラストや文字、入金金額または出金金額、その他の情報を表示する表示部などから構成される部位である。制御部8は、これら各部の動作を制御する部位である。
一括収納庫は、紙幣入出金部4の内部に装着される。図5は紙幣入出金部4の内部構造を示す概略図である。
図5に示すように、紙幣入出金部4は、現金自動取引装置2の前方側に相当する位置(図5では右側の位置)に、接客口10が設けられている。接客口10は、入金取引時において、顧客によって投入される紙幣(以下、他の紙幣と区別する場合は、入金紙幣という)を受け入れたり、入金に適さない紙幣(以下、他の紙幣と区別する場合は、入金リジェクト紙幣という)を顧客に戻したり、または、出金取引時において、紙幣入出金部4内から繰出される紙幣(以下、他の紙幣と区別する場合は、出金紙幣という)を顧客に放出するための機構である。接客口10は、紙幣の搬送や保持を行なうためのガイド11により構成され、入金紙幣や出金紙幣を一括して保持できるようになっている。また接客口10は、回転体構造となっており、図5に実線で示す位置または一点鎖線で示す位置に停止する。図5に実線で示す位置は、一般に、顧客ポジションと称される。また、図5に一点鎖線で示す位置は、一般に、分離・集積ポジションと称される。接客口10は、上方に、開閉可能なシャッタ12が設けられている。シャッタ12は、接客口10が顧客ポジションに停止している場合に、開く。シャッタ12が開くと、紙幣入出金部4が外部に開放された状態になるので、顧客は、入金紙幣の投入や出金紙幣の取り出しが可能になる。また、シャッタ12は、接客口10が分離・集積ポジションに停止している場合に、閉じる。シャッタ12が閉じると、紙幣入出金部4が外部から遮断された状態になるので、顧客は、入金紙幣の投入や出金紙幣の取り出しが不能になる。
また紙幣入出金部4は、接客口10の近傍に、分離集積機構部13が設けられている。分離集積機構部13は、図示しない駆動手段により駆動され、接客口10に投入または集積された紙幣を1枚ずつ分離して紙幣入出金部4内の各部に送り込むとともに、紙幣入出金部4内の各部から繰出された紙幣を接客口10に集積する。
また紙幣入出金部4は、搬送路上に、紙幣を鑑別する鑑別部14が設けられている。鑑別部14は、搬送路上を搬送される紙幣の真偽、正損、表裏、重送、連鎖(接近)および斜行などを検出する。なお、ここでは、搬送路は、紙幣を搬送する搬送ベルトによって形成されているものとして説明する。
また紙幣入出金部4は、搬送路上に、紙幣の向きを揃える表裏反転機構部15が設けられている。表裏反転機構部15は、鑑別部14にて裏側と鑑別された紙幣の向きをスイッチバックして反転させる。これにより、紙幣入出金部4は、接客口10内に集積する出金紙幣の向きを一方向に揃えることができる。
また紙幣入出金部4は、搬送路上に、紙幣の搬送方向を切り替えるブレード16が設けられている。ブレード16は、鑑別部14での鑑別結果により反転する必要のある紙幣を表裏反転機構部15へ送る。
また紙幣入出金部4は、紙幣を、金種別に繰出し可能に収納する金種別カセット17a、17b、17cが設けられている。金種別カセット17aは千円紙幣用、金種別カセット17b、17cは万円紙幣用となっている。金種別カセット17a、17b、17cは、それぞれの内部に、図示しないステージが昇降可能に設けられ、この上に紙幣が集積される。また金種別カセット17a、17b、17cは、それぞれの直上方に、入出金ユニット18a、18b、18cが設けられている。入出金ユニット18a、18b、18cは、それぞれに、一時保留板19a、19b、19cや、分離集積機構部20a、20b、20c、ブレード21a、21b、21cなどが設けられている。一時保留板19a、19b、19cは、金種別カセット17a、17b、17cの上方に設けられ、図5に示す矢印方向に移動して金種別カセット17a、17b、17c上に設けられた開口を開閉する。分離集積機構部20a、20b、20cは、金種別カセット17a、17b、17cに収納された紙幣を搬送路に1枚ずつ繰出すとともに、搬送路からの紙幣を一時保留板19a、19b、19c上に集積する。ブレード21a、21b、21cは、紙幣の搬送方向を切り替える。ブレード21a、21b、21cは、鑑別部14の鑑別結果により金種別に紙幣を振り分ける。また金種別カセット17a、17b、17cは、それぞれの内部に、「紙幣無し」を検出するエンド検出器22a、22b、22c、「紙幣少量」を検出するニアエンド検出器23a、23b、23c、「紙幣満杯」を検出するフル検出器24a、24b、24cが設けられている。
また紙幣入出金部4は、入金リジェクト紙幣(すなわち、入金取引時において、鑑別部14で、真券と判定されなかった紙幣や、損券と判定された紙幣、重送または連鎖または一定以上斜行していると判定された紙幣など)を一時的に収納する入金リジェクトプール部25が設けられている。入金リジェクトプール部25は、その近傍に、分離集積機構部26が設けられている。分離集積機構部26は、入金リジェクトプール部25内の紙幣を1枚ずつ分離して搬送路に繰出すとともに、搬送路からの入金リジェクト紙幣を入金リジェクトプール部25内に集積する。
また紙幣入出金部4は、搬送モータ28、29、30、搬送路31、32、34、出金に適しない紙幣(以下、他の紙幣と区別する場合は、出金リジェクト紙幣という)を収納するリジェクトカセット33が設けられている。搬送モータ28、29、30は、図示しない駆動伝達手段を介して、現金自動取引装置2内の各搬送路31、32、34を正方向(矢印方向)または逆方向に駆動する。例えば、搬送モータ28は、時計回り方向(W方向)に回転することにより、接客口10から入金リジェクトプール部25までを連結する搬送路31を矢印方向に駆動する。また搬送モータ29は、時計回り方向(CW方向)に回転することにより、入金リジェクトプール部25から入出金ユニット18a、18b、18cまでを連結する搬送路32を矢印方向に駆動する。また搬送モータ30は、時計回り方向(CW方向)に回転することにより、鑑別部14からリジェクトカセット33までを連結する搬送路34を矢印方向に駆動する。搬送路31、32、34は、その各所に、紙幣の搬送方向を切換える切換えブレード35a〜35hが設けられている。さらに搬送路31、32、34は、その各所に、紙幣の搬送状態を監視する走行センサ36a〜36tが設けられている。走行センサ36a〜36tは、一対の発光素子と受光素子からなる。
また紙幣入出金部4は、現金自動取引装置2の後方側に相当する位置(図5では左側の位置)に、リジェクトカセット33および一括収納庫41が設けられている。
リジェクトカセット33は、顧客の取り忘れ紙幣を収納する第2種リジェクト紙幣収納部42と、入金処理時に鑑別部14で入金可能であるが出金紙幣としては再利用不可と判定された紙幣、および出金処理時に鑑別部14で出金不能と判定された紙幣を収納する第3種リジェクト紙幣収納部43とを有する。そして、第2種リジェクト紙幣収納部42と第3種リジェクト紙幣収納部43は、それぞれに収納する紙幣を集積する集積部44、45が設けられている。
一括収納庫41は、金種別カセット17a、17b、17cに対して紙幣の補充または回収を行なう金庫である。一括収納庫41は、紙幣入出金部4に対して着脱自在な形状となっている。一括収納庫41は、内部に、補充用の紙幣(以下、他の紙幣と区別する場合は、補充紙幣という)または回収した紙幣(以下、他の紙幣と区別する場合は、回収紙幣という)を収納する紙幣収納部47が設けられている。紙幣収納部47は、内部に、ステージ48、仕切り板49、クランプレバー50、第1種リジェクト紙幣収納部51、分離集積機構部52、集積部53、54、検出センサ55、56、57、58などが設けられている。ステージ48は、補充紙幣を堆積収納する。仕切り板49は、回収紙幣を堆積収納する。クランプレバー50は、回収紙幣をクランプする。第1種リジェクト紙幣収納部51は、補充時に鑑別部14で重送または斜行と判定されたリジェクト紙幣を収納する。分離集積機構部52、集積部53、54は、それぞれ、ステージ48、仕切り板49、第1種リジェクト紙幣収納部51に紙幣を集積する。検出センサ55、56、57、58は、紙幣収納部47内の紙幣の収納状態を検出する。
一括収納庫41は、以下のようにして運用される。図6は一括収納庫の運用例を示す図である。なお、ここでは、銀行の店舗外に設置されている現金自動取引装置2に紙幣1を補充する場合を例にして述べる。
銀行の店舗外に設置されている現金自動取引装置2は、各金種別カセット17a、17b、17c内に収納されている紙幣1が所定量よりも少なくなると、図5に示すニアエンド検出器23a、23b、23cによって「紙幣少量」を検出する。「紙幣少量」を検出した現金自動取引装置2は、回線網102を介して、ニアエンドとなったことを示すアラーム(以下、ニアエンドのアラームという)を、保守センタ101の監視装置104に出力する。監視装置104は、現金自動取引装置2の稼動状況を監視する装置である。監視装置104は、紙幣1を運搬するために保守センタ101に待機している保守員が操作するコンピュータからなり、回線網102を介して現金自動取引装置2から様々な情報を受けたり、一括収納庫41に紙幣1を装填する紙幣装填ユニット105を制御したり、図示せぬ表示手段によって保守員に様々な指示を出力したりする。
保守センタ101には、複数の一括収納庫41が保管されており、その中のいくつかは紙幣装填ユニット105に装着されている。紙幣装填ユニット105は、監視装置104の制御に基づいて、紙幣1を一括収納庫41に装填する部位である。保守センタ101の監視装置104は、「紙幣少量」を検出した現金自動取引装置2からニアエンドのアラームを受けると、紙幣装填ユニット105を作動させて、紙幣装填ユニット105に装着された一括収納庫41に紙幣1を装填する。
この後、保守センタ101の監視装置104は、図示せぬ表示手段に一括収納庫41の運搬を指示する通知を出力する。これにより通知を受けた保守員は、紙幣1が装填された一括収納庫41を運搬車103に積載し、保守センタ101から「紙幣少量」を検出した現金自動取引装置2が設置されている場所(以下、目的地という)まで運搬する。
保守員は、目的地に到着すると、「紙幣少量」を検出した現金自動取引装置2の紙幣入出金部4に装着されている一括収納庫41を取り外し、代わりに、運搬してきた一括収納庫41を装着する。そして、装着した一括収納庫41から各金種別カセット17a、17b、17cに、紙幣1を補充する補充動作を、現金自動取引装置2に指示する。これにより、現金自動取引装置2は、装着された一括収納庫41から各金種別カセット17a、17b、17cに紙幣1を繰出し、各金種別カセット17a、17b、17cに補充する。
なお、取り外された一括収納庫41は、運搬車103によって保守センタ101に運搬され、保守センタ101で紙幣1が装填される。そして、新たに「紙幣少量」を検出する現金自動取引装置2が出たときに、保守センタ101から運搬されて、前述と同様の手順で、「紙幣少量」を検出した現金自動取引装置2の紙幣入出金部4に装着される。このようにして一括収納庫41は再利用される。
ところで、例えば、特開2000−8711号公報(特許文献1)に開示されているように、収納庫の中には、運搬の途中で盗難にあった場合に、収納物を使用が困難な状態にする機構を設けたものがある。一括収納庫41の中にも、同様の構成のものがある。以下に、その詳細を説明する。なお、既に説明したものと同じ構成については同一の符号を付して説明を省略する。また、ここでは、収納物を使用が困難な状態にする機構として、後述の防盗インクと称されるインクを噴射するインク噴射機構を用いるものとする。
図7は、従来の一括収納庫の内部構造を示す概略図である。なお、図7には、図5に示すステージ48、仕切り板49、クランプレバー50、第1種リジェクト紙幣収納部51、検出センサ57、58などの構成が示されていないが、実際には存在する。
通常、一括収納庫41の扉(図示せず)は、適正な開錠手段によらずに扉のロックを開錠することができない構造となっている。そのため、一括収納庫41は、仮に運搬の途中で盗難にあった場合に、内部の紙幣1を取り出すために破壊されることになる。破壊は、扉をこじ開けるか、筐体の側面に穴を開けるのが一般的である。一括収納庫41は、このような行為を検出するために、一括収納庫41に何らかの衝撃が加えられ、これによって一括収納庫41が破壊されたことを検出する破壊検出センサ120を有する。破壊検出センサ120には、様々な構成のものがある。その中でも、筐体の周囲にコード(図示せず)を張り巡らし、コードの断線を検出する構成のものや、適正な開錠手段(例えば所定の鍵の使用)によらずに扉が開かれたことを検出する構成のものが一般的である。このような破壊検出センサ120は、電源121と電気的に接続されており、電源121から電力が供給される。これにより、破壊検出センサ120は、一括収納庫41が盗難にあった後も、数日間は作動し続ける。そして、作動中に、一括収納庫41が破壊されたことを検出すると、インク噴射機構を作動させる。インク噴射機構は、防盗インクを収納する容器116と、防盗インクを加圧するバルブ機構部(ガス発生機含む)117と、容器116と紙幣収納部47とを連結し、容器116から紙幣収納部47に防盗インクを導く中空管118とによって構成される。破壊検出センサ120は、一括収納庫41が破壊されたことを検出すると、電気信号をバルブ機構部117に出力する。これにより、バルブ機構部117は、高圧なガスを発生する。高圧なガスは、容器116内に収納されている防盗インクを押圧し、防盗インクを容器116から中空管118に押し出す。中空管118には、紙幣収納部47の方向に向けて適度な大きさの穴(図示せず)が開けられている。そのため、中空管118に押し出された防盗インクは、中空管118に開けられた穴から紙幣収納部47の内部に噴射される。これにより防盗インクが、紙幣収納部47内の紙幣1に付着する。
防盗インクは、付着した紙幣1からの除去が困難な特殊なインクである。防盗インクが付着した紙幣1は、現金自動取引装置2での取引ができなくなる。また、防盗インクが付着した紙幣1は、盗難にあったものであることが明確にわかるため、通常の取引に使用することが困難である。そのため、盗難にあった紙幣1の使用を防ぐことができる。防盗インクは、現在一般的に使用されているため、ここでは、その製造方法、成分などの説明を省略する。
なお、電源121は、破壊検出センサ120以外に、インク噴射機構のバルブ機構部117にも電気的に接続されている。これにより、インク噴射機構のバルブ機構部117は、一括収納庫41が盗難にあった後も、数日間は作動が可能な状態になっている。
このようにして、盗難にあった一括収納庫41は、紙幣1を使用が困難な状態にする。
特開2000−8711号公報(図7)
ところで、従来の一括収納庫41の紙幣1を使用が困難な状態にする機構は、前述の通り、外部からの衝撃を検出して作動する。そのため、一括収納庫41が落下した場合や不慮の事故が発生した場合などに、一括収納庫41の周囲に張り巡らされたコードが断線して、紙幣1を使用が困難な状態にする機構が誤作動するときがあった。
このようなときに、従来の収納庫は、盗難にあっていないにもかかわらず、紙幣などの収納物を使用できなくしてしまうことがあるという課題があった。
この発明は、前述の課題を解決するために、収納庫の現在位置が予め定められた運搬ルートから外れている場合にのみ、例えばインク噴射機構などの、内部に収納された収納物を使用が困難な状態にする手段(以下、使用防止手段という)が作動する収納庫を提供することを目的とする。係る収納庫は、例えば、以下の2通りの構成によって実現することができる。
第1の構成は、収納庫が、能動的に自身の現在位置を検出して、現在位置と運搬ルート上の位置とを比較するというものである。
具体的には、内部に収納物を収納した状態で運搬が可能な収納庫において、金融機関に設置される現金自動取引装置に着脱自在な一括収納庫として形成され、かつ、収納庫の現在位置を検出する位置検出手段と、収納庫の運搬ルートに関する位置情報を記憶するルート記憶手段と、位置検出手段によって検出された収納庫の現在位置とルート記憶手段に記憶されている運搬ルート上の位置とを比較して、収納庫の現在位置が運搬ルートから外れている場合に、運搬異常として検出する運搬異常検出手段と、収納庫に対する衝撃を検出する衝撃検出手段と、収納物を使用が困難な状態にする使用防止手段とを有し、使用防止手段は、運搬異常検出手段によって運搬異常が検出された場合で、かつ、衝撃検出手段によって所定の大きさ以上の衝撃が検出された場合にのみ、作動するというものである。
第2の構成は、収納庫の運搬状況を監視する監視装置を設け、監視装置が、収納庫の現在位置を検出して、収納庫の現在位置と運搬ルート上の位置とを比較するというものである。すなわち、例えば、内部に収納物を収納した状態で運搬が可能な収納庫と、収納庫の運搬状況を監視する監視装置とからなり、監視装置は、収納庫の現在位置が運搬ルートから外れている場合に、運搬異常として収納庫に通知し、収納庫は、監視装置から運搬異常が通知された場合に、収納物を使用が困難な状態にするというものである。
具体的には、収納庫は、金融機関に設置される現金自動取引装置に着脱自在な一括収納庫であって、現在位置を検出する位置検出手段と、監視装置と通信して現在位置を出力する通信手段と、衝撃を検出する衝撃検出手段と、収納物を使用が困難な状態にする使用防止手段とを有し、監視装置は、一括収納庫と通信する通信手段と、一括収納庫の運搬ルートに関する位置情報を記憶するルート記憶手段と、一括収納庫の現在位置と一括収納庫の運搬ルート上の位置とを比較して、一括収納庫の現在位置が運搬ルートから外れている場合に、運搬異常として検出する運搬異常検出手段と、一括収納庫の運搬目的地の現金自動取引装置への装着を検出する装着検出手段とを有するというものである。そして、監視装置は、一括収納庫の現在位置が運搬ルートから外れている場合に、運搬異常として一括収納庫に通知し、一括収納庫は、監視装置から運搬異常が通知された場合で、かつ、衝撃検出手段によって所定の大きさ以上の衝撃が検出された場合にのみ、収納物を使用が困難な状態にする。さらに、監視装置は、装着検出手段によって、一括収納庫の運搬目的地の現金自動取引装置への装着が検出された場合に、監視を完了する。
この発明に係る収納庫によれば、使用防止手段は、収納庫の現在位置が運搬ルートから外れた場合にのみ、作動する。そのため、収納庫が落下した場合や不慮の事故が発生した場合でも、誤作動しない。したがって、この発明に係る収納庫は、盗難にあっていないにもかかわらず、紙幣などの収納物を使用できなくしてしまうことを防止することができる。
しかも、この発明に係る収納庫によれば、衝撃検出手段を備え、運搬異常検出部によって、現在位置が運搬ルートから外れたことを検出し、かつ、衝撃検出手段によって、収納庫が破壊されたことを検出した場合にのみ、使用防止手段を作動させている。そのため、この発明に係る収納庫は、使用防止手段の誤作動を非常に起こしにくくすることができる。
以下に、図を参照してこの発明の実施の形態を説明する。なお、各図は、この発明を理解できる程度に概略的に示してあるに過ぎない。よって、この発明は図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
また、以下は、銀行などの金融機関に設置される現金自動取引装置に着脱自在な一括収納庫を例にして説明する。
また、以下は、銀行の店舗外に設置されている現金自動取引装置に紙幣を補充する場合を例にして述べる。
<構成>
実施例1に係る収納庫は、収納庫の現在位置を検出する位置検出手段と、収納庫の運搬ルートに関する位置情報を記憶するルート記憶手段と、位置検出手段によって検出された現在位置とルート記憶手段に記憶されている運搬ルート上の位置とを比較して、収納庫の現在位置が運搬ルートから外れている場合に、運搬異常として検出する運搬異常検出手段と、収納物を使用が困難な状態にする使用防止手段とを有する。
なお、この実施例に係る収納庫は、これらの構成要素に加え、衝撃を検出する衝撃検出手段を有する構成とする。これにより、運搬異常検出手段は、衝撃検出手段によって所定の大きさ以上の衝撃が検出された場合に、位置検出手段によって検出された現在位置とルート記憶手段に記憶されている運搬ルート上の位置とを比較することができる。そのため、この実施例に係る収納庫は、非常に誤作動を起こしにくい構成となっている。
以下に、図1を用いて実施例1に係る収納庫の構成を説明する。なお、図1は、本発明に係る一括収納庫の内部構造を示す図であり、一括収納庫の側面を示している。なお、図1には、図5に示すステージ48、仕切り板49、クランプレバー50、第1種リジェクト紙幣収納部51、検出センサ57、58などの構成が示されていないが、実際には存在する。
図1に示すように、一括収納庫41は、位置検出手段としてのGPS装置111を有する。「GPS」とは、グローバルポジショニングシステム(Global Positioning System)の略であり、移動体の位置を検出するシステムである。GPSは、以下のように、移動体である受信者が米国国防省によって打ち上げられた測地衛星から発信される電波を受信することにより、受信者の地球上での位置(経度および緯度)、移動方向、移動速度を検出する。すなわち、移動体である受信者の上空には、通常、昼夜にかかわらず、複数(約4〜12個)の測地衛星が存在する。受信者は、これら複数の測地衛星から発信される電波を受信して、電波の位相を計算し、受信者と複数の測地衛星との間で三角測量を行なう。これにより、受信者の地球上での位置(経度および緯度)を検出し、さらには、移動方向、移動速度を検出する。GPSは、車や船舶の位置を検出する装置(例えば、カーナビゲーションシステムなど)に広く用いられている。このように、GPSは現在一般的に用いられている技術であるので、ここでは、詳細な説明を省略する。
また一括収納庫41は、ルート記憶手段としてのメモリ113を有する。メモリ113は、保守センタ101の監視装置104によって作成された一括収納庫41の運搬ルートに関する位置情報を記憶する。なお、運搬ルートを作成する方法については、後述する。
また一括収納庫41は、運搬異常検出手段としての運搬異常検出部114を有する。運搬異常検出部114は、CPUからなる。運搬異常検出部114は、GPS装置111から一括収納庫41の現在位置を取得するとともにメモリ113から運搬ルートの位置情報を取得してCPU内の記憶部に記憶し、GPS装置111によって検出された一括収納庫41の現在位置とメモリ113に記憶されている運搬ルート上の位置とをCPU内の演算部で比較し、一括収納庫41の現在位置が運搬ルートから外れている場合に、これを運搬異常として検出する。なお、運搬ルートには、許容範囲が予め設定されている。許容範囲は、厳密には運搬ルート上の位置からずれた位置であっても、運搬ルート上の位置であると見なすための距離値である。運搬異常検出部114は、一括収納庫41の現在位置が運搬ルートから許容範囲を超えている場合に、運搬ルートから外れていると判定する。なお、許容範囲は、運用に応じて、適宜変えることができる。
また一括収納庫41は、使用防止手段としてのインク噴射機構を有する。インク噴射機構は、容器116とバルブ機構部117と中空管118からなる。なお、使用防止手段としては、インク噴射機構以外にも、収納物を破断する機構や、収納物に記憶された情報を消去する機構、その他を用いることができる。
また一括収納庫41は、衝撃検出手段としての破壊検出センサ120を有する。破壊検出センサ120には、様々な構成のものがある。その中でも、筐体の周囲にコード(図示せず)を張り巡らし、コードの断線を検出する構成のものや、適正な開錠手段(例えば所定の鍵の使用)によらずに扉が開かれたことを検出する構成のものが一般的である。運搬異常検出部114は、破壊検出センサ120によって所定の大きさ以上の衝撃(すなわち、破壊行為がなされているとして検出する大きさ以上の衝撃)が検出された場合に、GPS装置111によって検出された一括収納庫41の現在位置とメモリ113に記憶されている運搬ルート上の位置とを比較する。
なお、この実施例では、電源121は、メモリ113や、運搬異常検出部114、バルブ機構部117、破壊検出センサ120と同様に、GPS装置111にも電気的に接続されており、GPS装置111に電力を供給するものとする。
一括収納庫41は、従来と同様に、保守センタ101の監視装置104によって保守管理されている。ただし、この実施例では、図2に示すように、監視装置104には、運搬ルート作成部106とメモリ書込部107が付加されている。また監視装置104には、図示しないが、運搬車103のカーナビゲーションシステム(図示せず)に地図情報を出力する無線または有線の通信手段が付加されている。なお、図2は、一括収納庫の運用例を示す図である。運搬ルート作成部106は、一括収納庫41の運搬ルートを作成する部位である。運搬ルート作成部106は、複数の地区に設置されている各現金自動取引装置2の稼動状況に関する情報や現金自動取引装置2が設置されている各地区に関する情報(各地区の地図情報を含む)などを記憶する保守管理用のデータベース(図示せず)や、一括収納庫41の運搬ルートを作成するプログラムを実行するCPUなどからなり、各地区に設置されている現金自動取引装置2からニアエンドになったことを示すアラーム(以下、ニアエンドのアラームという)を受けて、一括収納庫41の運搬ルートを作成する。メモリ書込部107は、運搬ルート作成部106によって作成された一括収納庫41の運搬ルートに関する位置情報を一括収納庫41のメモリ113に書き込む部位である。メモリ書込部107は、この実施例では、紙幣装填ユニット105に設けられており、図示せぬ接続ケーブルまたは図示せぬ無線などの通信手段などを介して紙幣装填ユニット105に装着された一括収納庫41のメモリ113にアクセスし、一括収納庫41の運搬ルートに関する位置情報を一括収納庫41のメモリ113に書き込むものとする。
<動作>
以下に、図2、図3を用いて、この実施例に係る一括収納庫41の運用例を説明する。図3は、一括収納庫の運用例を示すフローチャートである。
ステップS11において、銀行の店舗外に設置されている現金自動取引装置2は、各金種別カセット17a、17b、17c内に収納されている紙幣1が所定量よりも少なくなると、図5に示すニアエンド検出器23a、23b、23cによって「紙幣少量」を検出する。
ステップS13において、「紙幣少量」を検出した現金自動取引装置2は、回線網102を介して、ニアエンドのアラームを、現金自動取引装置2を保守管理する保守センタ101の監視装置104に出力する。
保守センタ101には、複数の一括収納庫41が保管されており、その中のいくつかは紙幣装填ユニット105に装着されている。
ステップS15において、保守センタ101の監視装置104は、「紙幣少量」を検出した現金自動取引装置2からニアエンドのアラームを受けると、「紙幣少量」を検出した現金自動取引装置2からニアエンドのアラームを受けたことを示す情報(以下、ニアエンド情報という)を図示せぬ保守管理用のデータベースに記憶するとともに、紙幣装填ユニット105を作動させて、紙幣装填ユニット105に装着された一括収納庫41に紙幣1を装填する。なお、紙幣1は、予め、一括収納庫41に装填しておくようにしてもよい。
次に、ステップS17において、保守センタ101の監視装置104は、運搬ルート作成部106によって、一括収納庫41の運搬ルートを作成する。
なお、運搬ルートを作成する方法は、例えば以下の通りである。すなわち、まず、監視装置104の運搬ルート作成部106は、図示せぬ保守管理用のデータベースに記憶されたニアエンド情報を参照し、ニアエンドのアラームを出力した現金自動取引装置2が設置されている地区(以下、目的地という)の地図情報を保守管理用のデータベースから取得する。次に、運搬ルート作成部106は、取得した地図情報を参照して、運搬車103が保守センタ101から目的地までを最短時間で移動するルート(以下、最短時間移動ルートという)を抽出する。最短時間移動ルートは、通常、保守センタ101と目的地とを結ぶ幹線路となるが、幹線路が渋滞している場合や工事がなされている場合に、迂回路となる。運搬ルート作成部106は、例えば公知の交通情報システムから道路の渋滞情報や工事情報などを取得することにより、幹線路が渋滞している場合や工事がなされている場合に、迂回路を最短時間移動ルートとして抽出する。運搬ルート作成部106は、このようにして抽出した最短時間移動ルートを一括収納庫41の運搬ルートとする。
なお、保守センタ101の監視装置104は、異なる地区に設置された複数の現金自動取引装置2からニアエンドのアラームを受ける場合がある。この場合は、一台の運搬車103が、複数の一括収納庫41を積載して、各地区を巡回することになる。そのため、最初の目的地に設置された現金自動取引装置2に装着する一括収納庫(以下、他の一括収納庫と区別する場合は、最初の目的地の一括収納庫という)41の運搬ルートは、直接保守センタ101から目的地に到達するルートとなる。しかしながら、2番目以降の目的地に設置された現金自動取引装置2に装着する一括収納庫(以下、最初の目的地の一括収納庫と区別する場合は、2番目以降の目的地の一括収納庫という)41の運搬ルートは、直接保守センタ101から目的地に到達するルートではなく、各地区を経由して保守センタ101から目的地に到達するルートとなる。そこで、この場合、運搬ルート作成部106は、以下のようにして各一括収納庫41の運搬ルートを作成する。なお、以下、運搬車103が各地区を巡回するルートを巡回ルートという。
すなわち、監視装置104は、ニアエンド情報を、図示せぬ保守管理用のデータベースに記憶し続けている。運搬ルート作成部106は、所定の条件に達した時点で、各目的地の地図情報を保守管理用のデータベースから取得する。所定の条件に達した時点とは、例えば、保守管理用のデータベースに記憶されたニアエンド情報が所定の数量以上になった時点や、時刻が所定の時刻になった時点などである。運搬ルート作成部106は、取得した地図情報を参照して、運搬車103が各地区を経由して保守センタ101から最終目的地までを最短時間で移動するルートを巡回ルートとして抽出する。次に、運搬ルート作成部106は、巡回ルートの中から、個々の一括収納庫41毎に、保守センタ101から各一括収納庫41の目的地までのルートを切り出す。すなわち、運搬ルート作成部106は、最初の目的地の一括収納庫41に対して、保守センタ101から最初に到着する地区までのルートを切り出す。また、2番目の目的地の一括収納庫41に対して、保守センタ101から最初の目的地を経由して2番目に到着する地区までのルートを切り出す。同様に、3番目以降の目的地の一括収納庫41に対して、保守センタ101から3番目以降に到着するそれぞれの目的地までのルートを切り出す。そして、切り出した各ルートを各一括収納庫41の運搬ルートとする。運搬ルート作成部106は、このようにして各一括収納庫41の運搬ルートを作成する。
以下、保守センタ101の監視装置104が異なる地区に設置された複数の現金自動取引装置2からニアエンドのアラームを受けた場合を例にして説明する。なお、保守員は、監視装置104を操作することによって、このようにして作成された一括収納庫41の運搬ルートを適宜修正することも可能である。
ステップS19において、保守センタ101の監視装置104は、メモリ書込部107によって、一括収納庫41の運搬ルートに関する位置情報を、紙幣1が装填された一括収納庫41のメモリ113に記憶させる。
ステップS21において、保守センタ101の監視装置104は、図示せぬ表示手段によって、一括収納庫41の運搬を保守員に指示する。なお、このとき、例えば、各一括収納庫41にIDを設定し、IDに基づいて各一括収納庫41を運搬させるとよい。これにより、保守員は、運搬する一括収納庫41を誤りなく運搬車103に積載して運搬することができる。また、保守センタ101の監視装置104は、例えば、図示せぬ通信手段を介して、運搬車103のカーナビゲーションシステム(図示せず)に巡回ルートを示す地図情報を出力する。これにより、保守員は、図示せぬカーナビゲーションシステムに巡回ルートを表示させて、運搬車103を走行させることができる。
ステップS23において、運搬中の各一括収納庫41は、GPS装置111によって現在位置を検出する。
そしてステップS25において、運搬中の各一括収納庫41は、運搬異常検出部114によって、GPS装置111によって検出された現在位置とメモリ113に記憶されている運搬ルート上の位置とを比較し、現在位置が運搬ルート内かを判定する。このようにして各一括収納庫41は、現在位置が運搬ルートから外れると、直ちにこれを検出する。
保守員は、各地区に到着すると、「紙幣少量」を検出した現金自動取引装置2の紙幣入出金部4に装着されている一括収納庫41を取り外し、代わりに、運搬してきた一括収納庫41を装着する。なお、このとき、装着する一括収納庫41は、目的地が到着した地区となっているもの(すなわち、運搬ルートが到着した地区で終了しているもの)である。そして、装着した一括収納庫41から各金種別カセット17a、17b、17cに、紙幣1を補充する補充動作を、現金自動取引装置2に指示する。これにより、現金自動取引装置2は、装着された一括収納庫41から各金種別カセット17a、17b、17cに紙幣1を繰出し、各金種別カセット17a、17b、17cに補充する。
ステップS25の後、運搬中の各一括収納庫41は、現在位置が運搬ルート内である場合(すなわち、YESの場合)に、工程をステップS27に進め、現在位置が運搬ルート外である場合(すなわち、NOの場合)に、工程をステップS31に進める。
ステップS27において、運搬中の各一括収納庫41は、運搬異常検出部114によって、現在位置が目的地に到達したかを判定する。この後、現在位置が目的地に到達した場合(すなわち、YESの場合)に、工程をステップS29に進め、現在位置が目的地に到達していない場合(すなわち、NOの場合)に、工程をステップS23に戻す。
ステップS29において、目的地に到達した一括収納庫41は、現金自動取引装置2に装着される。このとき、現金自動取引装置2は、一括収納庫41が装着されたことを図示せぬセンサによって検出し、回線網102を介して、一括収納庫41が装着されたことを示す信号を保守センタ101の監視装置104に出力する。これにより、監視装置104は、該当の現金自動取引装置2に対する紙幣1の補充が完了したものとして、図示せぬ保守管理用のデータベースの内容を更新する。
なお、取り外された一括収納庫41は、従来と同様に、運搬車103によって保守センタ101に運搬され、保守センタ101で紙幣1が装填される。
ステップS31において、運搬中の各一括収納庫41は、衝撃検出手段である破壊検出センサ120によって、所定の大きさ以上の衝撃を検出する。この実施例では、このとき、破壊検出センサ120は、一括収納庫41が破壊されたことを示す信号を運搬異常検出部114に出力するものとする。
ステップS33において、運搬中の各一括収納庫41は、以下のようにしてインク噴射機構を作動させる。すなわち、運搬中の各一括収納庫41は、運搬異常検出部114によって、現在位置が運搬ルートから外れたことを検出し、かつ、破壊検出センサ120によって、一括収納庫41が破壊されたことを検出した場合に、運搬異常検出部114がインク噴射機構のバルブ機構部117を作動させる信号をバルブ機構部117に出力する。これによりバルブ機構部117は、高圧なガスを発生する。高圧なガスは、容器116内に収納されている防盗インクを押圧し、防盗インクを容器116から中空管118に押し出す。中空管118に押し出された防盗インクは、中空管118に開けられた図示せぬ穴から紙幣収納部47の内部に噴射される。これにより防盗インクが、紙幣収納部47内の紙幣1に付着する。
以上の通り、この実施例に係る各一括収納庫41によれば、使用防止手段であるインク噴射機構が、各一括収納庫41の現在位置が運搬ルートから外れた場合にのみ、作動する。そのため、一括収納庫41が落下した場合や不慮の事故が発生した場合でも、誤作動しない。したがって、この発明に係る収納庫は、盗難にあっていないにもかかわらず、収納物(紙幣など)を使用できなくしてしまうことを防止することができる。
しかも、この実施例に係る一括収納庫41は、衝撃検出手段である破壊検出センサ120を備え、運搬異常検出部114によって、現在位置が運搬ルートから外れたことを検出し、かつ、破壊検出センサ120によって、一括収納庫41が破壊されたことを検出した場合にのみ、インク噴射機構を作動させている。そのため、この実施例に係る一括収納庫41は、非常に誤作動を起こしにくい構成となっている。
<構成>
実施例2は、収納庫と、収納庫の運搬状況を監視する監視装置とによって監視システムを構成し、監視装置は、収納庫の現在位置が運搬ルートから外れている場合に、運搬異常として収納庫に通知し、収納庫は、監視装置から運搬異常が通知された場合に、収納物を使用が困難な状態にする。したがって、この実施例に係る監視装置は、従来技術や実施例1のように現金自動取引装置の稼動状況を監視するという役割以外に、収納庫の運搬状況を監視するという役割も負っている。
具体的には、収納庫は、現在位置を検出する位置検出手段と、監視装置と通信して現在位置を出力する通信手段と、収納物を使用が困難な状態にする使用防止手段とを有し、監視装置は、収納庫と通信する通信手段と、収納庫の運搬ルートに関する位置情報を記憶するルート記憶手段と、収納庫の現在位置と収納庫の運搬ルート上の位置とを比較して、収納庫の現在位置が運搬ルートから外れている場合に、運搬異常として検出する運搬異常検出手段とを有する構成とする。
なお、この実施例も、実施例1と同様に、収納庫は、衝撃を検出する衝撃検出手段を有する構成とする。これにより、この実施例に係る収納庫も、実施例1に係る収納庫と同様に、非常に誤作動を起こしにくい構成となっている。
図8は、実施例2に係る一括収納庫の運用例を示す図である。この実施例では、図8に示すように、各一括収納庫41には、保守センタ101の監視装置104と無線によって通信する通信手段としての無線通信部115が付加され、監視装置104には、各一括収納庫41と無線によって通信する通信手段としての無線通信部108と、各一括収納庫41の運搬ルートに関する位置情報を記憶するルート記憶手段としてのデータベース109と、各一括収納庫41の現在位置と各一括収納庫41の運搬ルート上の位置とを比較して、各一括収納庫41の現在位置が運搬ルートから外れている場合に、運搬異常として検出する運搬異常検出手段としての運搬異常検出部110とが付加されている。
なお、この実施例では、各一括収納庫41は、無線通信部115を有する以外は、図1に示す構成と同様である。すなわち、各一括収納庫41は、位置検出手段としてのGPS装置111と、メモリ113と、運搬異常検出部114と、使用防止手段としてのインク噴射機構と、衝撃検出手段としての破壊検出センサ120とを有する。ただし、メモリ113と運搬異常検出部114は、一括収納庫41から除去することも可能である。
また、この実施例では、監視装置104の無線通信部108は、運搬車103のカーナビゲーションシステム(図示せず)に地図情報を出力できるものとする。
<動作>
以下に、図8、図9を用いて、この実施例に係る一括収納庫41の運用例を説明する。図9は、一括収納庫の運用例を示すフローチャートである。
ステップS61において、銀行の店舗外に設置されている現金自動取引装置2は、各金種別カセット17a、17b、17c内に収納されている紙幣1が所定量よりも少なくなると、図5に示すニアエンド検出器23a、23b、23cによって「紙幣少量」を検出する。
ステップS63において、「紙幣少量」を検出した現金自動取引装置2は、回線網102を介して、ニアエンドのアラームを、保守センタ101の監視装置104に出力する。
保守センタ101には、複数の一括収納庫41が保管されており、その中のいくつかは紙幣装填ユニット105に装着されている。
ステップS65において、保守センタ101の監視装置104は、「紙幣少量」を検出した現金自動取引装置2からニアエンドのアラームを受けると、紙幣装填ユニット105を作動させて、紙幣装填ユニット105に装着された一括収納庫41に紙幣1を装填する。なお、紙幣1は、予め、一括収納庫41に装填しておくようにしてもよい。
またステップS67において、保守センタ101の監視装置104は、運搬ルート作成部106によって、一括収納庫41の運搬ルートを作成する。
そしてステップS69において、保守センタ101の監視装置104は、一括収納庫41の運搬ルートに関する位置情報をデータベース109に記憶する。
なお、保守センタ101の監視装置104は、異なる地区に設置された複数の現金自動取引装置2からニアエンドのアラームを受ける場合がある。そこで、この実施例に係る運搬ルート作成部106は、実施例1と同様の手順で、各一括収納庫41の運搬ルートを作成するものとする。
ステップS71において、保守センタ101の監視装置104は、図示せぬ表示手段によって、一括収納庫41の運搬を保守員に指示する。また、保守センタ101の監視装置104は、例えば、無線通信部108を介して、運搬車103のカーナビゲーションシステム(図示せず)に巡回ルートを示す地図情報を出力する。これにより、保守員は、図示せぬカーナビゲーションシステムに巡回ルートを表示させて、運搬車103を走行させることができる。
ステップS73において、運搬中の各一括収納庫41は、GPS装置111によって現在位置を検出する。
そしてステップS74において、運搬中の各一括収納庫41は、GPS装置111によって検出された現在位置を、無線通信部115によって保守センタ101の監視装置104に通知する。
ステップS75において、保守センタ101の監視装置104は、運搬異常検出部110によって、各一括収納庫41から通知された各一括収納庫41の現在位置とデータベース109に記憶している各一括収納庫41の運搬ルート上の位置とを比較し、各一括収納庫41の現在位置が運搬ルート内かを判定する。
保守員は、各地区に到着すると、「紙幣少量」を検出した現金自動取引装置2の紙幣入出金部4に装着されている一括収納庫41を取り外し、代わりに、運搬してきた一括収納庫41を装着する。なお、このとき、装着する一括収納庫41は、目的地が到着した地区となっているもの(すなわち、運搬ルートが到着した地区で終了しているもの)である。そして、装着した一括収納庫41から各金種別カセット17a、17b、17cに、紙幣1を補充する補充動作を、現金自動取引装置2に指示する。これにより、現金自動取引装置2は、装着された一括収納庫41から各金種別カセット17a、17b、17cに紙幣1を繰出し、各金種別カセット17a、17b、17cに補充する。
ステップS75の後、保守センタ101の監視装置104は、各一括収納庫41の現在位置が運搬ルート内である場合(すなわち、YESの場合)に、工程をステップS77に進め、現在位置が運搬ルート外である場合(すなわち、NOの場合)に、工程をステップS80に進める。
ステップS77において、保守センタ101の監視装置104は、各一括収納庫41が現金自動取引装置2に装着したかを判定する。この後、各一括収納庫41が現金自動取引装置2に装着した場合(すなわち、YESの場合)に、工程をステップS79に進め、各一括収納庫41が現金自動取引装置2に装着していない場合(すなわち、NOの場合)に、工程をステップS73に戻す。
ステップS79において、保守センタ101の監視装置104は、該当の現金自動取引装置2に対する紙幣1の補充が完了したものとして、データベース109の内容を更新する。
ステップS80において、保守センタ101の監視装置104は、無線通信部108によって、運搬異常を、運搬ルートから外れている一括収納庫41に通知する。
ステップS81において、監視装置104から運搬異常が通知された各一括収納庫41は、衝撃検出手段である破壊検出センサ120によって、所定の大きさ以上の衝撃を検出すると、一括収納庫41が破壊されたことを示す信号が破壊検出センサ120から運搬異常検出部114に出力される(ただし、運搬異常検出部114が除去されている場合は直ちに、工程をステップS83に進め、インク噴射機構を作動させるものとする)。
ステップS83において、監視装置104から運搬異常が通知され、かつ、破壊検出センサ120によって一括収納庫41が破壊されたことを検出した各一括収納庫41は、インク噴射機構を作動させる。
以上の通り、この実施例に係る各一括収納庫41によれば、保守センタ101の監視装置104が、各一括収納庫41の運搬状況に応じて、各一括収納庫41のインク噴射機構を制御する。そのため、実施例1と同様に、一括収納庫41が落下した場合や不慮の事故が発生した場合でも、誤作動しない。したがって、この発明に係る収納庫は、盗難にあっていないにもかかわらず、収納物(紙幣など)を使用できなくしてしまうことを防止することができる。
しかも、この実施例に係る一括収納庫41も、実施例1と同様に、衝撃検出手段である破壊検出センサ120を備え、運搬異常検出部110によって、現在位置が運搬ルートから外れたことを検出し、かつ、破壊検出センサ120によって、一括収納庫41が破壊されたことを検出した場合にのみ、インク噴射機構を作動させている。そのため、この実施例に係る一括収納庫41も、非常に誤作動を起こしにくい構成となっている。
この発明は、実施例1および2に限定されることなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の応用や変形が考えられる。
例えば、実施例1および2は、収納庫として、銀行などの金融機関に設置される現金自動取引装置に着脱自在な一括収納庫を例にしているが、この発明は、一括収納庫以外にも、収納庫として、様々なタイプのものに適用することができる。例えば、記憶媒体(ICカード、フロッピー(登録商標)ディスク、DVDなど)や、有価証券(株券、商品券、小切手など)、重要な書類(企画書、契約書など)、その他の様々な収納物を収納して運搬する、アタッシュケースやハンドバックなどの鞄型の形状をした収納庫に適用することができる。
また実施例1および2は、位置検出手段として、GPS装置111を用いているが、この発明は、GPS装置111以外にも、位置検出手段として、様々な機構を用いることができる。例えば、PHS(パーソナルハンディホンシステム;指向性の強い狭域型の電波を用いた携帯電話システム)装置や、画像撮影機構、その他の機構を用いることができる。
また実施例1および2は、使用防止手段として、インク噴射機構を用いているが、この発明は、インク噴射機構以外にも、使用防止手段として、様々な機構を用いることができる。例えば、情報を消去する機構、収納物を破断する機構や、収納物を接着する機構、その他の機構を用いることができる。
以下に、図10を用いて、実施例1の一変形例としての実施例3を示す。なお、図10は本発明に係る収納庫の構造を示す図である。なお、この実施例では、非接触式のICカード1’を収納物とする。
図10に示すように、この実施例に係る収納庫41’は、鞄型の形状となっている。収納庫41’は、ICカード1’を収納する収納部47’を有する。また収納庫41’は、位置検出手段としてのPHS装置111’と、使用防止手段としての非接触式のICカードリーダライタ119を有する。また、収納庫41’は、実施例1と同様に、メモリ113や、運搬異常検出部114、破壊検出センサ120、電源121などを有する。
この実施例に係る収納庫41’は、PHS装置111’によって現在位置を検出する。そして、運搬異常検出部114によって、PHS装置111’によって検出された現在位置とメモリ113に記憶されている運搬ルート上の位置とを比較し、現在位置が運搬ルートから外れた場合に、これを検出する。そして、現在位置が運搬ルートから外れたことを検出した場合で、かつ、破壊検出センサ120によって収納庫41’の破壊が検出された場合に、ICカードリーダライタ119によって、収納部47’に収納されたICカード1’にアクセスし、ICカード1’に記憶された情報を消去する。このようにして、この実施例に係る収納庫41’は、収納庫41’の現在位置が運搬ルートから外れた場合にのみ、収納物であるICカード1’に記憶された情報を消去する。
以上の通り、この実施例に係る収納庫41’によれば、使用防止手段であるICカードリーダライタ119が、収納庫41’の現在位置が運搬ルートから外れた場合にのみ、作動する。そのため、収納庫41’が落下した場合や不慮の事故が発生した場合でも、誤作動しない。したがって、この発明に係る収納庫は、盗難にあっていないにもかかわらず、収納物(ICカード1’に記憶された情報など)を使用できなくしてしまうことを防止することができる。
しかも、この実施例に係る収納庫41’は、衝撃検出手段である破壊検出センサ120を備え、運搬異常検出部114によって、現在位置が運搬ルートから外れたことを検出し、かつ、破壊検出センサ120によって、収納庫41’が破壊されたことを検出した場合にのみ、ICカードリーダライタ119を作動させている。そのため、この実施例に係る収納庫41’は、非常に誤作動を起こしにくい構成となっている。
本発明に係る一括収納庫の内部構造を示す概略図である。
一括収納庫の運用例を示す図である。
一括収納庫の運用例を示すフローチャートである。
現金自動取引装置の外観を示す斜視図である。
紙幣入出金部の内部構造を示す概略図である。
一括収納庫の運用例を示す図である。
従来の一括収納庫の内部構造を示す概略図である。
一括収納庫の運用例を示す図である。
一括収納庫の運用例を示すフローチャートである。
本発明に係る収納庫の構造を示す概略図である。
符号の説明
1 …紙幣
41 …一括収納庫
47 …紙幣収納部
52 …分離集積機構部
53,54 …集積部
55,56 …検出センサ
111 …GPS装置
113 …メモリ
114 …運搬異常検出部
116 …容器
117 …バルブ機構部
118 …中空管
120 …破壊検出センサ
121 …電源