図1は、本発明の一実施例における現金自動取引装置100を示す説明図である。現金自動取引装置100は、下側内部に、紙幣取扱装置10を実装している。紙幣取扱装置10は、紙幣入出金スロット20aを備えており、利用者は、紙幣入出金スロット20aを介して紙幣取扱装置10に対し紙幣の出し入れを行なう。紙幣取扱装置10は、紙幣取扱装置10内の搬送路内で紙幣が詰まる等の緊急事態が発生した場合に使用する緊急時専用出金庫70を備えている。緊急時専用出金庫70は、緊急時用出金口71を備えており、緊急時には緊急時用出金口71から紙幣が排出される。紙幣取扱装置10の構造の詳細については後述する。
現金自動取引装置100は、利用者のカードを処理し、取引明細票を印字して排出するカード・明細票処理機構102を備えている。カード・明細書処理機構102は、上部正面板101aに設けられたカードスロット102a及び取引明細書発行部102bと連通している。更に、現金自動取引装置100は、取引の内容を入力及び表示するための顧客操作部105a,105b(以下、まとめて顧客操作部105と呼ぶ)を備えている。
図2は、紙幣取扱装置10の構成を示す説明図である。また、図3は、図2の紙幣取扱装置10の構成を模式的に示した説明図である。紙幣取扱装置10は、図2に示すように、上部搬送機構10aと、下部紙幣機構10bと、緊急時専用出金庫70から構成される。上部搬送機構10aは、入出金口20と、紙幣判別部30と、一時保管庫40と、上部紙幣搬送路50とを備える。下部紙幣機構10bは、リサイクル庫80a,80b,80cと、リジェクト庫60と、各収納庫の上面に配される下部紙幣搬送路90とを備える。緊急時専用出金庫70は、緊急時紙幣保管部72と、緊急時用出金口71と、緊急時紙幣保管部72から緊急時用出金口71までの図中太線の点線で示される緊急時紙幣搬送路73と、切替ゲート705からポイントP2までの図中太線の一点鎖線で示される補充・回収用紙幣搬送路74を備える。
入出金口20は、利用者が紙幣PMの投入・取り出しを行うための凹部である。紙幣判別部30は、経路501bで示す箇所に存在する紙幣PMの判別をする。判別内容については後述する。一時保管庫40は、入金した紙幣PMを取引成立までの間一旦収納する。
リサイクル庫80a,80b,80cは、入金取引が成立した紙幣PMを収納し、また、出金取引の際には紙幣PMを出金する。リサイクル庫80a〜80cは、本発明の通常時用金庫に相当する。リジェクト庫60は、リジェクト部60aと運用リジェクト部60bとを有している。リジェクト部60aに収納されるのは、現金自動取引装置100にとって「外のリジェクト紙幣」である。「外のリジェクト紙幣」とは、銀行の紙幣PMを現金自動取引装置100内に装填する際に入出金に供しないと判定された紙幣PMや、利用者が出金したのに取り忘れた「取り忘れ紙幣」である。一方、運用リジェクト部60bに収納されるのは、現金自動取引装置100にとって「内のリジェクト紙幣」である。「内のリジェクト紙幣」とは、入金処理や出金処理時に入出金に供しないと判定された紙幣PMのことである。このように、現金自動取引装置100では、現金自動取引装置100内の紙幣枚数を明確にするため、「内の紙幣」と「外の紙幣」を分けて管理している。リジェクト庫60は、本発明の異常紙幣収納庫に相当する。
緊急時紙幣保管部72は、上部紙幣搬送路50や下部紙幣搬送路90において紙幣PMが詰まるといった障害が起きる場合に備えて、紙幣PMを保管し、その紙幣PMを出金に供する。緊急時紙幣保管部72は本発明の緊急時用金庫に相当する。緊急時用出金口71は、緊急時に紙幣PMを排出する。
一時保管庫40や緊急時紙幣保管部72は、紙幣PMを巻き取ることにより紙幣PMを保管する巻き取り式の保管装置であり、繰り出し時の重送を防ぐ重送判別機構(図示せず)を備える。重送とは、2枚以上の紙幣PMが重ねて搬送されることである。
上部紙幣搬送路50と、緊急時紙幣搬送路73と、補充・回収用紙幣搬送路74と、下部紙幣搬送路90とは、図示せぬ駆動モータにより駆動される。紙幣取扱装置10は、取引動作毎に駆動モータの回転方向を切り替えることにより、紙幣PMの搬送方向を制御する。上部紙幣搬送路50と、緊急時紙幣搬送路73と、補充・回収用紙幣搬送路74と、下部紙幣搬送路90はそれぞれ独立した駆動モータにより駆動される。
上部紙幣搬送路50と下部紙幣搬送路90はポイントP1で接続している。紙幣取扱装置10は、上部紙幣搬送路50と下部紙幣搬送路90とを用いて、紙幣PMを、入出金口20と、紙幣判別部30と、一時保管庫40と、リサイクル庫80a〜80cと、リジェクト庫60との間を搬送する。紙幣PMは、上部紙幣搬送路50および下部紙幣搬送路90において、経路501a〜501iおよび経路901a〜901d、902a〜902eに沿って移動する。各経路のうち片方向の矢印は、紙幣PMがその矢印方向にのみ搬送されることを示し、両方向の矢印は、紙幣PMが取引動作毎に双方向のいずれかに切り替えて搬送されることを示している。上部紙幣搬送路50と下部紙幣搬送路90は、リサイクル庫80a〜80cと入出金口20とを接続しており、本発明の「通常時用金庫と通常時用金庫の出金口とを接続する搬送路」に相当する。
上部紙幣搬送路50と補充・回収用紙幣搬送路74はポイントP2で接続している。この構造により、入出金口20と、紙幣判別部30と、一時保管庫40と、リサイクル庫80a〜80cと、リジェクト庫60と、緊急時専用出金庫70との間の紙幣PMのやり取りが可能となっている。ここで、下部紙幣搬送路90と、上部紙幣搬送路50と、補充・回収用紙幣搬送路74と、緊急時紙幣搬送路73の一部とは、リサイクル庫80a〜80cと緊急時紙幣保管部72とを接続しており、本発明の接続搬送路に相当する。
紙幣取扱装置10は、緊急時紙幣搬送路73により、緊急時用紙幣保管部72と、緊急時用出金口71との間で紙幣PMを搬送することができる。緊急時紙幣搬送路73は、他の搬送路とは独立して駆動させることができるので、他の搬送路で緊急事態が生じていても、緊急時紙幣搬送路73のみ駆動させることが可能である。
紙幣取扱装置10は、切替ゲート705を回転させることにより、搬送する方向を切り替えて紙幣PMを搬送することが可能である。具体的には、紙幣取扱装置10が切替ゲート705を状態705aにすると、紙幣PMは、緊急時紙幣保管部72とポイントP2との間を移動する。つまり、紙幣PMは、緊急時紙幣保管部72と切替ゲート705との間の経路701bと、切替ゲート705とポイントP2との間の経路701cに沿って移動する。一方、紙幣取扱装置10が切替ゲート705を状態705bにすると、紙幣PMは、緊急時紙幣保管部72と緊急時用出金口71との間を移動する。つまり、紙幣PMは、経路701bと、切替ゲート705と緊急時用出金口71との間の経路701aに沿って移動する。
同様に、紙幣取扱装置10は、切替ゲート502〜切替ゲート504や、切替ゲート903を回転させ、紙幣PMの搬送方向を切り替える。以下、図3により説明する。紙幣取扱装置10は、切替ゲート502を状態502aにして、紙幣PMが、入出金口20と切替ゲート502との間の経路501aと、切替ゲート502と紙幣判別部30との間の経路501bを移動するようにしたり、切替ゲート502を状態502bにして、紙幣PMが、ポイントP1と切替ゲート502との間の経路501iと、経路501bを移動するようにしたりする。
紙幣取扱装置10は、切替ゲート503を状態503aにすることで、紙幣PMが、弓形の切替ゲート503の凹部分に沿った経路501dを移動するようにし、切替ゲート503を状態503bにすることで、紙幣PMが、切替ゲート503の凸部分の下側に沿った経路501fを移動するようにし、切替ゲート503を状態503cにすることで、紙幣PMが、切替ゲート503の凸部分の上側に沿った経路501gを移動するようにする。つまり、一時保管庫40と切替ゲート503の間の経路501eを、切替ゲート503の方向に移動してきた紙幣PMは、切替ゲート503の状態に応じて、経路501dを移動し紙幣判別部30に向かって搬送されるか、経路501gに沿って移動する。また、紙幣判別部30と切替ゲート503の間の経路501cを、切替ゲート503の方向に移動してきた紙幣PMは、切替ゲート503の状態に応じて、経路501dを移動し一時保管庫40に収納されるか、経路501fに沿って移動する。
更に、紙幣取扱装置10は、切替ゲート504を状態504bにすることで、紙幣PMが、切替ゲート503と入出金口20との間の経路501hを移動するようにし、切替ゲート504を状態504aにすることで、紙幣PMが、経路501hの一部である切替ゲート503とポイントP2との間と、経路701cに沿って移動するようにする。
また、ポイントP1と切替ゲート903との間の経路901aを移動し、切替ゲート903まで搬送されてきた紙幣PMは、紙幣取扱装置10が切替ゲート903を状態903aにすることで、切替ゲート903と切替ゲート904との間の経路901bを移動し、紙幣取扱装置10が切替ゲート903を状態903bにすることで、切替ゲート903とリサイクル庫80aとの間の経路902aを移動する。経路902aを移動することにより、紙幣PMはリサイクル庫80aに保管される。リサイクル庫80bの上部に設けられた切替ゲート904や、リサイクル庫80cの上部に設けられた切替ゲートについても切替ゲート903と同様の働きをする。
図4は、現金自動取引装置100の制御関係を示す制御ブロック図である。図1で述べたようにカード・明細票処理機構102と、紙幣取扱装置10と、顧客操作部105と、緊急時専用出金庫70は、バス107aを介して本体制御部107と接続されており、本体制御部107の制御の下に必要な動作を行う。本体制御部107は、上記の他に、インタフェース部107bと、係員操作部107cと、外部記憶装置107dともバス107aで接続されており、必要なデータのやりとりを行うが、本発明の特徴には直接関係がないので詳細な説明は省略する。なお、図4には、上記各機構や、構成部分に電力を供給する電源部101eも示した。
図5は、紙幣取扱装置10の制御関係を示す制御ブロック図である。制御部15は、装置の本体制御部107とバス107aを介して接続され、本体制御部107からの指令および紙幣取扱装置10の状態検出に応じて、紙幣取扱装置10および緊急時専用出金庫70の制御を行う。また、制御部15は、紙幣取扱装置10および緊急時専用出金庫70の状態を、必要に応じて本体制御部107に送る。
制御部15は、各ユニット(入出金口20、紙幣判別部30、一時保管庫40、リジェクト庫60、リサイクル庫80a〜80c、緊急時用紙幣保管部72、緊急時用出金口71)及び各搬送路(上部紙幣搬送路50、緊急時紙幣搬送路73、補充・回収用紙幣搬送路74、下部紙幣搬送路90)の駆動モータや電磁ソレノイドやセンサと接続され、取引に応じて、センサで状態を監視しながら、アクチュエータを駆動制御する。
例えば、制御部15は、入出金口20や、紙幣判別部30や、一時保管庫40や、リサイクル庫80a〜80cや、リジェクト庫60に備えられた、紙幣PMの収納および繰り出しを検出するセンサや、上部紙幣搬送路50や下部紙幣搬送路90に備えられた紙片PMの通過状態を検知するセンサの検出結果を取得する。そして、取得した収納枚数および繰り出し枚数と、通過枚数とを、それぞれカウントし管理する。制御部15は、紙幣PMの繰り出しと紙幣PMの通過のタイミングを監視し、紙幣PMの繰り出しに対して紙幣PMが検知されない場合、紙幣搬送路内で紙詰まり等の緊急事態(以下、単にジャムと呼ぶ)が発生したと判断し、緊急時対応処理を行なう。具体的には、制御部15は、紙幣PMの繰り出しから紙幣搬送路のセンサ位置を通過するまでに要する予想時間の1.5倍経過しても、紙幣PMが通過しない場合は、紙幣PMが紙幣搬送路内のどこかで詰まったと判断する。
緊急時対応処理においては、制御部15は、紙幣取扱装置10における緊急時専用出金庫70以外の機能を停止し、利用者に対しては出金処理のみ可能であることを通知し、緊急時専用出金庫70からの出金動作のみ実行する。緊急時専用出金庫70からの出金動作を、以下では、緊急時出金動作と呼ぶ。
図6は、緊急時出金動作を示す説明図である。緊急時出金動作においては、紙幣PMは、緊急時用紙幣保管部72(図2参照)から繰り出され、経路701aを移動し、緊急時用出金口71から排出される。上述したように、緊急時紙幣搬送路73は、他の搬送路とは独立して駆動させることができるので、他の搬送路でジャムなどの緊急事態が生じていても、緊急時紙幣搬送路73のみ駆動させ、緊急時出金動作により出金をすることができる。更に、緊急時用出金口71は入出金口20と別個に設けられているので、緊急時に入出金口20から出金する場合に比べ、緊急時の出金をより確実に行なうことができる。
更に、制御部15は、リサイクル庫80a〜80cから緊急時用紙幣保管部72への紙幣PMの補充、緊急時用紙幣保管部72からリサイクル庫80a〜80cへの紙幣PMの回収も実現する。この処理を以下、補充・回収処理と呼ぶ。
図7は、制御部15の機能ブロックを示す説明図である。入出力部15aは、上記各ユニット及び各搬送路に備えられたセンサや、本体制御部107との信号の入出力を制御する。搬送制御部15eは、入出金口20と、紙幣判別部30と、一時保管庫40と、上部紙幣搬送路50と、リジェクト庫60と、リサイクル庫80a〜80cと、下部紙幣搬送路90におけるアクチュエータを駆動制御する。搬送制御部15eは、本発明の通常時出金部及び通常時入金部に相当する。監視部15fは、上記収納枚数および繰り出し枚数や、紙幣搬送路における通過枚数を管理し、紙幣の繰り出しと紙幣PMの通過のタイミングを監視する。更に、監視部15fは、ジャムが発生したか否かの判断も行なう。監視部15fは、本発明における検出部に相当する。
ガイダンス表示部15dは、紙幣PMの受取口が緊急時用出金口71に変更されたことを顧客操作部105に示す。また、ガイダンス表示部15dは、緊急時対応処理として、利用者に対して出金処理のみ可能であることを顧客操作部105に示す。緊急時搬送制御部15gは、緊急時用紙幣保管部72と、緊急時用出金口71と、緊急時紙幣搬送路73におけるアクチュエータを駆動制御し、緊急時出金動作を実現する。緊急時搬送制御部15gは、本発明の緊急時出金部に相当する。補充・回収時搬送制御部15cは、補充・回収処理において、上記各ユニット及び各搬送路のアクチュエータを駆動制御する。補充・回収時搬送制御部15cは、本発明の紙幣搬送部に相当する。主制御部15bは、以上の機能を制御して、各処理を実現する。
図8は、ジャム発生後に制御部15が実行する処理を示すフローチャートである。監視部15fは、上記各ユニット及び各搬送路のいずれかで、ジャムの発生により正常な紙幣PMの搬送が不可能となった場合、上述したセンサの検出結果により、ジャム発生箇所を特定する(ステップS10)。ジャム発生箇所が下部紙幣機構10bの場合は(ステップS20:Yes)、取引の継続不可を示すガイダンスを顧客操作部105に表示し(ステップS30)、取引を休止する(ステップS40)。なお、ジャムが発生した場合、制御部15から緊急事態発生の報告を受けた本体制御部107が、現金自動取引装置100を管理する端末に緊急事態発生の報告を伝達することが好ましい。
ジャム発生箇所が上部搬送路10aの場合は(ステップS20:No)、制御部15は、ジャムが発生した際行なっていた取引動作に応じた処理を行う。取引動作には、入金計数動作と、取消返却動作と、入金収納動作と、出金動作と、出金リジェクト動作と、取り忘れ回収動作がある。以下、各取引動作の内容と、各取引動作中にジャムが発生した際の対応を順に説明する。
図9は、入金計数動作を示す説明図である。入金計数動作とは、利用者により入金された紙幣PMの真偽や金種を判別し、入金金額を調べる動作である。入金計数動作においては、搬送制御部15eは、入出金口20に投入された紙幣PMを一枚ずつに分離し、切替ゲート502を状態502aとして、紙幣PMに経路501a,501bを通過させる。紙幣判別部30は、経路501bを通る紙幣PMの金種と、真偽を判別する。偽金ではないと判断され、かつ金種が判別された紙幣PMは、搬送制御部15eが切替ゲート503を状態503aに切り替えることにより、経路501cから経路501d,501eへと搬送され、一時保管庫40に一旦収納される。紙幣判別部30により偽金であると判断されるか金種が判別できなかった入金リジェクト紙幣、あるいは紙幣PMの傾きや紙幣PM同士の間隔に異常がある入金リジェクト紙幣は、一時保管庫40には取り込まれない。搬送制御部15eが切替ゲート503を503bに切り替えることにより、入金リジェクト紙幣は、経路501f,501hを通過し、入出金口20に収納され、利用者に返却される。
図8に戻る。以上の入金計数動作中にジャムが発生した場合(ステップS50:Yes)、取引の継続不可を示すガイダンスを顧客操作部105に表示し(ステップS30)、取引を休止する(ステップS40)。現金自動取引装置100は、まだ計数途中であるため、入金金額を判断できない。しかし、入金された紙幣を返却する必要がある。よって、本実施例では下部紙幣機構10bでジャムが発生した場合と同様に取引を休止させ、現金自動取引装置100の係員が現金自動取引装置100を調べることができるようにする。係員は、調査により入金された金額を割り出し、直接利用者に紙幣PMを返却する。これにより、利用者に、入金した分の紙幣を返却することができる。但し、入金計数動作では、下部紙幣機構10bに紙幣PMは残留しないため、係員が到着するまで緊急時出金動作による取引のみの運用を行うものとしても良い。
ジャムが発生したのは入金計数動作中ではない場合(ステップS50:No)、次のステップに移行し、他の取引動作中であるか否かを調べる。
図10は、取消返却動作を示す説明図である。取消返却動作は、入金時の利用者の確認入力の際、利用者が「取消」を選択した場合に行なわれる動作であり、入金金額分の紙幣PMを返却する動作である。取消し返却動作においては、搬送制御部15eは、切替ゲート503を状態503cに切り替え、入金計数動作により一時保管庫40に巻き取られていた紙幣PMを一時保管庫40から繰り出して、経路501e,501g,501hの順に搬送し、入出金口20に収納する。これにより、入金金額分の紙幣PMが利用者に返却される。
図8に戻る。以上の取消返却動作中に上部搬送機構10aでジャムが発生した場合(ステップS60:Yes)、一時保管庫40から入出金口20へ紙幣PMの繰出しが不可能となるため、ガイダンス表示部15dは、紙幣PMを受け取る場所が入出金口20から緊急時用出金口71に変更となる旨を伝えるガイダンスを顧客操作部105に表示する(ステップS70)。そして、緊急時搬送制御部15gが、緊急時用紙幣保管部72から、入金計数動作時に計数した金額と同額分の紙幣PMを、図6で示した緊急時出金動作により利用者に返却する(ステップS80)。このとき、緊急時用出金口71を発光させるなどして案内をすると更に良い。紙幣PMを返却し、取引が終了した後(ステップS130)、ガイダンス表示部15dは、「出金取引のみ可能」を示すガイダンスを顧客操作部105に表示し(ステップS140)、以後、係員が到着するまで、現金自動取引装置100は緊急時搬送制御部15gによる緊急時出金動作のみの運用に移行して取引を継続する(ステップS150)。ステップS140とステップS150の処理は、上記した緊急時対応処理に相当する。
ジャムが発生したのは入金計数動作中でも取消返却動作でもない場合(ステップS60:No)、次のステップに移行し、他の取引動作中であるか否かを調べる。
図11は、入金収納動作を示す説明図である。入金収納動作とは、入金計数動作後に一時保管庫40に保管していた紙幣PMをリサイクル庫80a〜80c、あるいはリジェクト庫60に収納する動作である。
入金収納動作においては、搬送制御部15eは、一時保管庫40に収納されていた紙幣PMを、入金計数動作の時とは逆方向に、経路501e,501dに送出し、経路501c,501bと搬送し、紙幣判別部30を通過させる。そして、金種、真偽を判別させる。次に、搬送制御部15eは、切替ゲート502を状態502bにして、紙幣PMに経路501i,901aを通過させ、リサイクル庫80a〜80c上部にある切替ゲートのいずれか1つを点線で示される状態に切り替え、経路902a〜902cのいずれかによりリサイクル庫80a〜80cのいずれかに紙幣PMを収納する。あるいは、リサイクル庫80a〜80c上部にある切替ゲートは実線で示される状態のままにし、紙幣PMに経路901b,901c,901dを通過させ、紙幣PMを経路902dによりリジェクト庫60の運用リジェクト部60bに収納する。
リサイクル庫80a〜80cは、金種毎の金庫である。いずれのリサイクル庫80a〜80cあるいはリジェクト庫60(以下、リサイクル庫80a〜80cとリジェクト庫60をまとめて収納庫と呼ぶ)に収納するかは、制御部15が入金収納動作中の紙幣判別部30の判別結果(金種、真偽等)に基づいて決定する。搬送制御部15eは、判別可能な紙幣PMで、リサイクル庫80a〜80cに収納できる金種の紙幣PMはリサイクル庫80a〜80cに収納し、判別不可能な紙幣PMは、リジェクト庫60の運用リジェクト部60bに収納する。なお、入金計数動作中の紙幣判別部30による全紙幣の判別結果(金種)を記憶する手段を持ち、その記憶内容に基づき、紙幣PMを搬送される収納庫を決定するものとしても良い。
一方、取り忘れ回収動作とは、出金した紙幣PM又は入金リジェクト紙幣を利用者が入出金口20から取り忘れたものと制御部15が判断した場合に実行される動作である。取り忘れ回収動作においては、現金自動取引装置100は、入出金口20内の紙幣PMを一旦一時保管庫40に収納し、それをリジェクト庫60に収納する。
取り忘れ回収動作において、入出金口20内の紙幣PMを一時保管庫40に収納する動作では、上述した入金計数動作と同じ動作が行なわれる。但し、取り忘れ回収計数動作においては、紙幣判別部30により偽金であると判断されるか金種が判別できなかったリジェクト紙幣や、紙幣PMの傾きや紙幣PM同士の間隔に異常があるリジェクト紙幣も、一時保管庫40に取り込む。
取り忘れ回収動作において、一時保管庫40に収納した紙幣PMをリジェクト庫60に収納する動作は、入金収納動作とほぼ同じであるが、紙幣判別部30の判別結果に関わらず、紙幣PMは経路902eによりリジェクト庫60のリジェクト部60aに収納する。
図8に戻る。以上の入金収納動作中、または取り忘れ回収動作中(図示せず)にジャムが発生した場合(ステップS90:Yes)、制御部15は取引終了(ステップS130)とし、ガイダンス表示部15dは、「出金取引のみ可能」を示すガイダンスを顧客操作部105に表示し(ステップS140)、以後、係員が到着するまで緊急時出金動作のみの運用に移行して取引を継続する(ステップS150)。
ジャムが発生したのは入金計数動作中でも取消返却動作でも入金収納動作中でも取り忘れ回収動作中でもない場合(ステップS90:No)、次のステップに移行し、出金動作中であるか否かを調べる。
図12は、出金動作を示す説明図である。出金動作とは、利用者の指定する出金金額に応じて、リサイクル庫80a〜80cに収納されている紙幣PMを入出金口20に搬送する動作である。
出金動作においては、搬送制御部15eは、各リサイクル庫80a〜80cから紙幣PMを経路902c,901c,902b,901b,902aにより繰り出し、経路901a,501i,501bを通過させて、紙幣判別部30で、重送の有無を判別させる。紙幣判別部30により、重送ではなく正常な出金であると判別された場合は、搬送制御部15eは、切替ゲート503を状態503bにし、経路501c,501f,501hを通過させて紙幣PMを入出金口20に収納する。これにより、出金金額分の紙幣PMが利用者に支払われる。紙幣判別部30により、正常な出金ではなく重送であると判別された場合は、搬送制御部15eは、切替ゲート503を状態503aにし、重送されている紙幣PMを経路501c,501d,501eにより搬送し、一時保管庫40に一旦収納する。この場合、搬送制御部15eは、一時保管庫40に収納された紙幣PMと、金種及び枚数が同じ分の紙幣PMを、再度リサイクル庫80a〜80cから繰り出す。なお、紙幣判別部30は重送の他に紙幣の姿勢、金種、真偽等も判定するものとしても良い。
図8に戻る。以上の出金動作中にジャムが発生した場合(ステップS100:Yes)、ガイダンス表示部15dは、紙幣PMを受け取る場所が入出金口20から緊急時用出金口71に変更となる旨を伝えるガイダンスを顧客操作部105に表示する(ステップS110)。そして、緊急時搬送制御部15gが、緊急時用紙幣保管部72から、出金金額と同額の紙幣PMを、図6で示した緊急時出金動作により利用者に返却する(ステップS120)。紙幣PMを返却し、取引が終了した後(ステップS130)、ガイダンス表示部15dは、「出金取引のみ可能」を示すガイダンスを顧客操作部105に表示し(ステップS140)、以後、係員が到着するまで緊急時出金動作のみの運用に移行して取引を継続する(ステップS150)。
ジャムが発生したのが入金計数動作中でも取消返却動作でも入金収納動作中でも取り忘れ回収動作中でも出金動作中でもない場合は(ステップS100:No)、ジャムが発生したのは出金リジェクト動作中であることになる。
図13は、出金リジェクト動作を示す説明図である。出金リジェクト動作とは、出金動作後に、一時保管庫40に保管されていた紙幣PMを、リサイクル庫80a〜80c、あるいはリジェクト庫60に収納する動作である。
出金リジェクト動作においては、搬送制御部15eは、一時保管庫40に収納されていた紙幣PMを、出金動作の時とは逆方向に、経路501e,501dに送出し、経路501c,501bと搬送し、紙幣判別部30を通過させる。そして、再度、金種、真偽を判別させる。次に、搬送制御部15eは、切替ゲート502を状態502bにして、紙幣PMに経路501i,901aを経由させ、リサイクル庫80a〜80c上部にある切替ゲートのいずれか1つを点線で示される状態に切り替え、経路902a〜902cのいずれかによりリサイクル庫80a〜80cのいずれかに紙幣PMを収納する。あるいは、リサイクル庫80a〜80c上部にある切替ゲートは実線で示される状態のままにし、紙幣PMに経路901b,901c,901dを経由させ、紙幣PMを経路902dによりリジェクト庫60の運用リジェクト部60bに収納する。
いずれの収納庫に収納するのかは、制御部15が紙幣判別部30の判別結果(金種、真偽等)に基づいて決定する。搬送制御部15eは、判別可能な紙幣PMで、リサイクル庫80a〜80cに収納できる金種の紙幣PMはリサイクル庫80a〜80cに収納し、判別不可能な紙幣PMは、リジェクト庫60の運用リジェクト部60bに収納する。出金動作時に一旦リジェクトされた紙幣PMを、再度判別して、使用可能な紙幣PMはリサイクル庫80a〜80cに収納しているので、リジェクト紙幣の枚数を低減でき、資金効率の向上を図ることができる。
図8に戻る。以上の出金リジェクト動作中にジャムが発生した場合(ステップS100:No)、制御部15は取引終了とし(ステップS130)、ガイダンス表示部15dは、「出金取引のみ可能」を示すガイダンスを顧客操作部105に表示し(ステップS140)、以後、現金自動取引装置100は係員が到着するまで緊急時出金動作のみの運用に移行して取引を継続する(ステップS150)。
次に、上記した補充・回収処理について説明する。図14は、リサイクル庫80a〜80cから緊急時用紙幣保管部72への紙幣PMの補充処理を示す説明図である。リサイクル庫80a〜80cから緊急時用紙幣保管部72への補充処理においては、補充・回収時搬送制御部15cは、リサイクル庫80a〜80cのいずれかから、所定の金種の紙幣PMを所定枚数繰り出す。繰り出された紙幣PMは、経路902a,901a,501iを経由して、紙幣判別部30で重送の有無を判別される。
紙幣判別部30により、重送ではなく正常な出金であると判別された場合は、補充・回収時搬送制御部15cは、切替ゲート503を状態503bにし、紙幣PMに経路501c,501f,501hを通過させる。次に、補充・回収時搬送制御部15cは、切替ゲート504を状態504aにし、紙幣PMに経路701cを通過させる。更に、補充・回収時搬送制御部15cは、切替ゲート705を状態705aにし、紙幣PMに経路701bを通過させ、紙幣PMを緊急時用紙幣保管部72に収納する(図2参照)。これにより、緊急時用紙幣保管部72に紙幣PMを補充することができる。
一方、紙幣判別部30により、正常な出金ではなく重送である判別された場合は、補充・回収時搬送制御部15cは、切替ゲート503を状態503aにし、重送されている紙幣PMを経路501c,501d,501eにより搬送し、一時保管庫40に一旦収納する。この場合、搬送制御部15eは、一時保管庫40に収納された紙幣PMと、金種及び枚数が同じ分の紙幣PMを、リサイクル庫80a〜80cから繰り出し、再度、緊急時用紙幣保管部72に紙幣PMを補充するものとしても良い。なお、紙幣判別部30は重送の他に紙幣の姿勢、金種、真偽等も判定するものとしても良い。
緊急時用紙幣保管部72に紙幣PMを補充する際に、一時保管庫40に一旦収納された補充リジェクト紙幣は、補充・回収時搬送制御部15cが、図13で説明した出金リジェクト動作と同様にリサイクル庫80a〜80cまたはリジェクト庫60の運用リジェクト部60bに回収する。出金リジェクト動作と同様に、一旦リジェクトされた紙幣PMを、再度判別して、使用可能な紙幣PMはリサイクル庫80a〜80cに収納しているので、リジェクト紙幣の枚数を低減でき、資金効率の向上を図ることができる。
なお、緊急時用紙幣保管部72への紙幣PMの補充は、所定のタイミングで行なわれる。例えば、現金自動取引装置100の一日における取引開始時や、あるいは所定時間おき、あるいは利用者からの取引要求が途絶えている時などである。
図15は、緊急時用紙幣保管部72からリサイクル庫80a〜80cへの紙幣PMの回収処理を示す説明図である。緊急時用紙幣保管部72からリサイクル庫80a〜80cへの回収処理においては、補充・回収時搬送制御部15cは、緊急時用紙幣保管部72から1枚ずつ紙幣PMを繰り出し、切替ゲート705を状態705aにして、繰り出した紙幣PMが経路701b,701cを通過するようにする(図2参照)。次に、補充・回収時搬送制御部15cは、切替ゲート504を状態504aにし、切替ゲート503を状態503bにして、紙幣PMに経路501h,501f,501c,501bを通過させる。紙幣判別部30は、経路501bを通過する紙幣PMの金種や真偽を判別する。補充・回収時搬送制御部15cは、判別された紙幣で、リサイクル庫80a〜80cに収納できる金種の紙幣PMは、経路501i及び経路901a〜901c,902a〜902cにより、リサイクル庫80a〜80cに収納する。判別されなかった紙幣PM、あるいはリサイクル庫に収納できない紙幣PMは、経路901d,902dによりリジェクト庫60の運用リジェクト部60bに収納する。
なお、緊急時用紙幣保管部72からの紙幣PMの回収は、所定のタイミングで行なうことが好ましい。例えば、現金自動取引装置100の一日における取引終了時や利用者からの取引要求が途絶えている時などである。
このように、本実施例では、経路701b,701aのみを使用し出金をする緊急時出金動作を実現させているので、上部搬送機構10aでジャムが発生した際も、緊急時出金動作により出金取引を継続することができる。これにより、本実施例の紙幣取扱装置10を備えた端末(実施例では現金自動取引装置100)の稼働率を上げることができる。更に、本実施例では、緊急時用紙幣保管部72への紙幣PMの補充と緊急時用紙幣保管部72からの紙幣PMの回収を自動的に行なう補充・回収処理を実現しているので、係員が緊急時用紙幣保管部72への紙幣PMの補充・回収を行なう手間を省くことができる。
また、本実施例では、補充・回収処理を行なう際の搬送路の一部として、上部紙幣搬送路50と下部紙幣搬送路90をそのまま利用することで、搬送路の全長を短くすることができた。更に、補充・回収処理を行なう際にも、紙幣判別部30により紙幣PMの判別を行ない、問題のある紙幣PMはリジェクト庫60に回収しているので、問題のある紙幣PMが出金に供される紙幣PMに混ざる可能性を低下させることができる。
その他の実施例:
(1)上記実施例では、ジャム発生位置が下部紙幣機構10bの場合は(ステップS20:YES)、取引中止(ステップS30)にしていたが、ジャム発生位置が下部紙幣機構10bの場合も、ステップS50〜ステップS150の処理を行ない、緊急時専用出金庫70からの出金を実行するものとしても良い。
(2)制御部15は、取引動作が「取消返却」または「出金」である場合、数枚の紙幣PMを入出金口20に排出した後にジャムが発生したら、残りの出金金額に相当する紙幣PMを緊急時専用出金庫70から排出する機能を備えるものとしても良い。これにより、利用者が指定した出金金額分の紙幣PMを排出することができる。
(3)上記実施例では、紙幣取扱装置10は利用者の入金要求にも応えることができる設計となっているが、出金要求のみに応えるものであっても構わない。逆に、実施例では緊急時には緊急時専用出金庫70からの出金のみ可能としているが、緊急時専用出金庫70への入金も可能であるものとしても良い。即ち、緊急時に入金も可能であるものとしても良い。その際には、入金された紙幣PMを判別する紙幣判別部を備えることが望ましい。
(4)上記実施例では、リサイクル庫80a〜80cの紙幣PMを排出する入出金口20と、緊急時紙幣保管部72の紙幣PMを排出する緊急時用出金口71とは別個に備えているが、同一の出金口から出金するものとしても良い。そのようにすると、利用者に出金口が変更されたことを伝える必要がなくなる。
(5)リサイクル庫80a〜80cと緊急時紙幣保管部72とを接続する接続搬送路は、下部紙幣搬送路90と、上部紙幣搬送路50と、補充・回収用紙幣搬送路74と、緊急時紙幣搬送路73の一部である。よって、接続搬送路の一部が、リサイクル庫80a〜80cと入出金口20とを接続する搬送路の一部としても使用されている。なお、接続搬送路の一部が、リサイクル庫80a〜80cと入出金口20とを接続する搬送路の一部として使用されている必要はなく、リサイクル庫80a〜80cと緊急時紙幣保管部72との間の紙幣PMの移動専用の接続搬送路を備えるものとしても良い。
(6)本実施例では、リサイクル庫80a〜80cと緊急時紙幣保管部72との間の紙幣の移動の例として、紙幣PMの補充・回収時の移動を示していたが、紙幣PMの移動としては補充・回収時に限らない。一方、本実施例では、紙幣PMの補充・回収を行なっていたが、補充・回収は必ずしも行なわなくても良い。更に、補充・回収の際に紙幣PMを紙幣判別部30で正常か否か判別していたが、判別も必ずしも行なわなくても良い。逆に、判別回数は1回に限らず、複数回行なうものとしても良い。複数回行なうことにより、一度異常であると判別された紙幣PMが正常であると判別しなおされる場合もある。その場合、正常、つまり使用可能な紙幣PMの枚数が増えるので、資金効率の向上を図ることができる。なお、紙幣PMが正常であるとは、紙幣PMが重送されていない、あるいは紙幣PMの姿勢が所定の許容範囲内である、あるいは紙幣PMが偽物ではない、といういずれかの条件又は全ての条件を満たすことである。
(7)上記実施例では緊急時として、紙幣が詰まった場合を例に挙げ述べているが、ジャムに限らず、リサイクル庫80a〜80cから出金不可能である場合を緊急時と判断して、緊急時紙幣保管部72から出金するものとしても良い。これにより、リサイクル庫80a〜80cから出金不可能である場合にも出金処理を継続することができる。
(8)緊急時紙幣保管部72に保管する紙幣PMの金種は問わない。千円札、二千円札、五千円札、一万円札など様々に保管可能であり、多種類の紙幣PMを保管するものとしても良い。
(9)本実施例では、現金自動取引装置100に備えられた紙幣取扱装置10について説明したが、これに限らず、紙幣PMの排出が想定される各種機器に備えられた紙幣取扱装置10についても本発明は適用可能である。紙幣取扱装置10で取り扱うものは、紙幣PMに限らず、紙葉類であっても良い。
以上、実施例に基づき本発明に係る紙幣取扱装置、紙幣取扱装置を制御する方法および紙幣取扱装置の機能を実現させるためのプログラムを説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。