JP4211425B2 - X線透視撮影装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、被検体のX線透視画像あるいはX線撮影画像が得られてモニタに表示されるとともに、画像記憶手段である画像メモリに保管されるように構成されたX線透視撮影装置に係り、現在得られているX線透視画像あるいは現在得られたばかりのX線撮影画像(以下、適宜、両画像を纏めて「現在画像」という)に事前に得られて画像メモリに保管されているX線透視画像あるいはX線撮影画像(以下、適宜、両画像を纏めて「保管画像(参照画像)」という)を正確に合せ込んだ状態で重畳表示できるようにするための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、病院などの医療機関でカテーテル挿入を伴う血管造影検査において、X線透視撮影装置でX線透視をしながら被検体(患者)の血管へカテーテルを挿入する場合、術者が血管の走行状況を把握するために、現在得られているX線透視画像に、事前に造影剤を注入して撮影により取得され、画像メモリに保管されているX線透視画像あるいはX線撮影画像を重ね合わせて表示する(重畳表示する)ことが行われる。
【0003】
特に、造影剤注入前のX線撮影画像と造影剤注入後のX線撮影画像とをサブトラクション処理して血管だけが明瞭に映し出されたサブトラクション画像を現在のX線透視画像に重畳表示した場合、カテーテルの挿入状況を血管の走行状況と明確に対比したかたちで観察することができるので、カテーテルが速やかに挿入できる。(特許文献1参照)
【0004】
【特許文献1】
特開平11−151234号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のX線透視撮影装置の場合、現在得られているX線透視画像と事前に得られて画像メモリに保管されている保管画像とが正確に対応していない場合は、X線透視画像に保管画像を合せ込んだ状態で重畳表示することができない場合がある。即ち、例えば画像メモリに保管画像としてサブトラクション画像が保管されていたとしても、現在のX線透視画像との間で撮影位置または視野サイズが少し違っている時は、撮影位置または視野サイズに応じて絵ズレが起こるので、保管画像を画像が合った状態で重畳表示することが出来ないのである。
【0006】
例えば画像メモリに保管画像としてサブトラクション画像が保管されていたとしても、現在のX線透視画像との間で撮影位置または視野サイズが少しでも違っている時は、撮影位置または視野サイズに応じて絵ズレが起こる、結果、保管画像を現在画像に正確に合せ込んだ状態で重畳表示することが出来ないといったも問題がある。
【0007】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、現在画像に保管画像を正確に重畳表示することができるX線透視撮影装置を提供することを主たる目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明のX線透視撮影装置は、X線照射手段による被検体へのX線照射に伴ってX線検出手段から出力されるX線検出信号に基づいて被検体のX線透視画像あるいはX線撮影画像が得られてモニタに表示されるとともに、画像記憶手段に保管されるように構成されたX線透視撮影装置において、(a)事前に得られて画像記憶手段に保管されているX線透視画像(保管X線透視画像)あるいはX線撮影画像(保管X線撮影画像)の中から現在得られているX線透視画像(現在X線透視画像)あるいは現在得られたばかりのX線撮影画像(現在X線透視画像)に対して被検体上の撮影エリアが一致する画像重複領域の面積を撮影位置情報および視野情報に基づいて求めるとともに、求まる面積から画像重複領域の最も大きい画像を選抜する保管画像選抜手段と、(b)保管画像選抜手段で選抜されたX線透視画像(選抜X線透視画像)あるいは選抜されたX線撮影画像(選抜X線撮影画像)における画像重複領域の画像だけを現在X線透視画像または現在X線透視画像に合せ込んだ状態で重畳表示する画像重畳表示手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0009】
(作用・効果)請求項1に記載の発明の装置により撮影が実行される場合、X線照射手段による被検体へのX線照射に伴ってX線検出手段から出力されるX線検出信号に基づいて被検体のX線透視画像あるいはX線撮影画像が次々と得られてモニタに表示される。同時に、画像記憶手段に保管X線透視画像や保管X線撮影画像として保管されてゆく。
【0010】
そして、現在得られている現在X線透視画像あるいは現在得られたばかりの現在X線撮影画像に保管画像がリアルタイムで重畳表示される場合には、保管画像選抜手段によって、画像記憶手段に保管されている保管X線透視画像あるいは保管X線撮影画像の中から現在X線透視画像あるいは現在X線透視画像に対して被検体上の撮影エリアが一致する画像重複領域の面積が最も大きい画像が選抜される。
【0011】
次に、画像重畳表示手段によって、選抜X線透視画像あるいは選抜X線撮影画像(以下、適宜、両画像を纏めて「選抜画像」という)における画像重複領域の画像だけが現在画像に合せ込んだ状態で重畳表示される。
【0012】
すなわち、請求項1の発明によれば、保管画像の中から現在画像に対する撮影エリアが一致する画像重複領域の面積が最も大きくて現在画像に的確に対応する保管画像が自動的に選抜されるとともに、選抜画像における画像重複領域の画像だけが現在画像に合せ込んだ状態で自動的に重畳表示される。その結果、現在画像と保管画像とが正確に対応していなくても、現在画像に保管画像を合せ込んだ状態で重畳表示することができる。
【0013】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載のX線透視撮影装置において、(a1)保管画像選抜手段は、被検体における撮影位置情報および視野サイズ情報に基づいて画像重複領域の面積を求めるとともに、求めた面積の大小比較により選抜X線透視画像あるいは選抜X線撮影画像を選抜するように構成されており、(b1)画像重畳表示手段は、撮影位置情報および視野サイズ情報に基づいて画像重複領域の画像を部分的に抽出するとともに、抽出した画像重複領域の画像を必要に応じて倍率調整・位置合わせしてから重畳表示するように構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
(作用・効果)請求項2に記載の発明によれば、撮影位置情報および視野サイズ情報に基づいて求めた画像重複領域の面積の大小比較により選抜画像が選抜されるので、選抜画像と現在画像とが非常に的確に対応する。また、画像重複領域の画像の抽出・重畳合成を正確に行うのに必要な撮影位置情報および視野サイズ情報に基づいて画像重複領域の画像抽出が行われるとともに、必要に応じて倍率調整・位置合わせをした後に画像重複領域の画像を現在画像に重畳表示する。その結果、現在画像により的確に対応する保管画像を現在画像により正確に合せ込んだ状態で重畳表示することができる。
【0015】
また、請求項3の発明は、請求項1または2に記載のX線透視撮影装置において、造影剤注入前の画像と造影剤注入後の画像とをサブトラクション処理してサブトラクション画像を作成する画像サブトラクション手段を備えており、この画像サブトラクション手段により作成されたサブトラクション画像が画像記憶手段に保管されるように構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
(作用・効果)請求項3に記載の発明によれば、造影剤注入前の画像と造影剤注入後の画像とをサブトラクション処理して作成したサブトラクション画像が画像記憶手段に保管画像として保管されているので、現在画像にサブトラクション画像を重畳表示することが可能となる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、この発明のX線透視撮影装置の一実施例を説明する。
図1は実施例に係る医用のディジタル式X線透視撮影装置の全体構成を示すブロック図、図2は実施例装置の撮影台の概略構成を示す立面図である。
【0018】
実施例装置の場合、図1に示すように、撮影台側では天板1の上に載置された被検体MへX線を照射するX線管(X線照射手段)2と、被検体Mからの透過X線像を検出するX線検出器(X線検出手段)3とが、天板1を挟んで対向配置されている。また、撮影実行中には被検体MのX線透視画像あるいはX線撮影画像が得られてX線検出器3の後段のモニタ4に表示されるとともに、画像メモリ5(画像記憶手段)に保管されるように構成されている。以下、実施例装置の各部構成を具体的に説明する。
【0019】
天板1は、天板移動制御部6のコントロールを受けて作動する天板移動機構7により、被検体Mを載置したままで体軸方向Xまたは図2に示す体幅側方向Yに沿って移動可能に構成されている。また、被検体Mを天板1に載せたり天板1から降ろしたりする等の場合に鉛直方向Zに沿って昇降できるように構成されている。
【0020】
一方、X線管2は、X線撮影の際、X線照射制御部8の制御を受けながら被検体Mにコーンビーム状のX線を照射するように構成されている。このX線管2は、X線管移動機構9により、被検体Mの体軸方向Xあるいは体幅側方向Yに沿って往復移動可能に構成されている。なお、X線管移動機構9にはX線管2の現在位置を検出して制御側へフィードバックするセンサ(図示省略)も設けられている。
【0021】
他方、X線検出器3は、図3に示すように、被検体Mからの透過X線像を検出するX線検出面に多数のX線検出素子3aが被検体Mの体軸方向Xと体側方向Yに沿って縦横に配列された構成のフラットパネル型X線検出センサ(FPD)あるいはイメージインテンシファイア(I・I管)などが用いられる。以下、説明の便宜上、X線検出器3が例えば、縦30cm×横30cm程の広さのX線検出面に、X線検出素子3aが縦1024×横1024のマトリックスで縦横に配列されているFPDであるとして説明する。勿論、各X線検出素子3aがX線透視画像やX線撮影画像の各画素と対応関係にあることは言うまでもない。このX線検出器3も、X線検出器移動機構10により被検体Mの体軸方向Xあるいは体幅側方向Yに沿って往復移動可能に構成されている。
【0022】
さらに、X線管2とX線検出器3の移動に際しては、X線管移動機構9およびX線検出器移動機構10が照射検出系駆動制御部11の制御を受けてX線の照射中心がX線検出器3のX線検出面の中心に常に一致する状態が保たれるようにし、X線管2とX線検出器3を対向配置のままで一緒に移動させる構成となっている。
【0023】
また、図2に示すように、X線管2とX線検出器3の少なくとも一方をX線管2の焦点とX線検出器3のX線検出面の中心とを結ぶ直線Nに沿って移動させることによりX線検出器3のX線検出面上でのX線透過像の拡大率を調整できるように構成されている。
【0024】
以下、説明の便宜上、X線管2の方が移動してX線透過像の拡大率が調整されるものとして説明する。X線透過像の拡大率は〔(X線管2とX線検出器3の間隔LA)÷(X線管2と被検体Mの間隔LB)〕で表されるものであるので、X線管2が直線Nに沿って移動し間隔LA,LBが変化するのに伴ってX線透過像の拡大率が変化する。X線管移動機構9やX線検出器移動機構10にはX線管2とX線検出器3の間隔LAやX線管2と被検体Mの間隔LBを検出して制御側へフィードバックするセンサ(図示省略)も設けられていて、制御側でX線透過像の拡大率が把握できるように構成されている。
【0025】
実施例装置による撮影実行時は、X線管2による被検体MへのX線照射に伴ってX線検出器3から出力されるX線検出信号に基づきX線検出信号処理部12で被検体MのX線透視画像あるいはX線撮影画像が作成されてモニタ4に表示される。また、作成されたX線透視画像やX線撮影画像は画像メモリ5に保管される。
【0026】
通常、X線透視の場合は出力の弱いX線が連続的に照射されてX線透視画像が連続的に表示・保管され、X線撮影の場合は出力の強いX線が単発的に照射されてX線撮影画像が単発的に表示・保管される。
【0027】
さらに、実施例装置の場合、造影剤注入前の画像と造影剤注入後の画像とをサブトラクション処理してサブトラクション画像を作成する画像サブトラクション部13を備えており、画像サブトラクション部13により作成されたサブトラクション画像も画像メモリ5に保管される構成となっている。
【0028】
そして、実施例のX線透視撮影装置は、事前に得られて画像メモリ5に保管されている保管画像の中から現在画像に対して被検体M上の撮影エリアが一致する画像重複領域の面積が最も大きい画像を選抜画像として選抜する保管画像選抜部14と、保管画像選抜部14で選抜された選抜画像における画像重複領域の画像だけを現在画像に合せ込んだ状態で重畳表示する画像重畳表示部15とを備えている。
【0029】
実施例装置の場合、保管画像選抜部14は、被検体Mにおける撮影位置情報および視野サイズ情報に基づいて画像重複領域の面積を求めるとともに、求めた面積の大小比較により選抜画像を選抜するように構成されている。
【0030】
また、画像重畳表示部15は、撮影位置情報および視野サイズ情報に基づいて画像重複領域の画像を部分的に抽出すると共に抽出した画像重複領域の画像を必要に応じて倍率調整・位置合わせしてから重畳表示するように構成されている。
【0031】
つまり、保管画像はX線管2が図4中に一点鎖線で示す位置にある時に得られたものである。現在画像は、図4中に実線で示すように、X線管2が保管画像の時とは違って少し横にずれたり、被検体Mに近づいたりした位置にあったり、X線検出器3のX線検出面での使用エリアのサイズ(有効サイズ)に違いがあったりして、現在画像と保管画像の間では、被検体M上での撮影エリアの位置(撮影位置)や撮影エリアの形・大きさ(視野サイズ)に変化がある状態で得られたものである。
【0032】
このような場合、図5に示すように、現在画像と保管画像において撮影エリアが一致する画像重複領域16の面積は、撮影位置や視野サイズの違いの程度に応じて変化する。一方、保管画像と現在画像との対応の良し悪しは、現在画像における画像重複領域16の面積に比例、すなわち、面積が大きいほど良くなる。つまり、保管画像選抜部14は現在画像に対して画像重複領域16の面積が最も大きくなる保管画像を現在画像に重畳表示するのに適したものとして選抜する。
【0033】
なお、撮影位置情報としての撮影位置は、具体的に各画像撮影時に各画像と対応付けて保管されているX線管2の各画像撮影時の体軸方向Xおよび体幅側方向Yについての現在位置(座標)である。視野サイズ情報は、各画像撮影時に各画像と対応付けて保管されているX線透過像の拡大率、すなわち、〔(X線管2とX線検出器3の間隔LA)÷(X線管2と被検体Mの間隔LB)〕や、X線検出器3のX線検出面での使用エリアのサイズが用いられる。
【0034】
したがって、X線透過像の拡大率が大きいほど視野サイズが小さくなり、X線検出器3のX線検出面での使用エリアのサイズが大きいほど視野サイズが大きくなる。なお、以下、説明の便宜上、当分はX線検出器3のX線検出面での使用エリアのサイズが常にフルサイズ、すなわち、常にX線検出面の全域でX線透視画像を検出する場合を前提に説明する。
【0035】
また、保管画像と現在画像との間で撮影位置や視野サイズが違う場合、保管画像と現在画像の間で倍率・位置の相違があり、抽出した画像重複領域16の画像を単純に現在画像に重畳しても撮影位置や視野サイズに相応する絵ズレが起こる。そこで、画像重畳表示部15は、抽出した画像重複領域16の画像を必要に応じて撮影位置や視野サイズの相違の程度に応じた倍率調整・位置合わせをして絵ズレのないようにしておいてから現在画像に重畳表示する。
【0036】
保管画像選抜部14による選抜画像の選抜プロセスおよび画像重畳表示部15による画像重複領域16の選抜画像の重畳表示プロセスを、図面を参照しながらより具体的に説明する。先ず選抜画像の選抜プロセスを説明する。
【0037】
図6(a)に示す現在画像PAと図6(b)に示す保管画像Paの場合、現在画像PAと保管画像Paの間に撮影位置と視野サイズの違いがある。つまり、図6(a),(b)の両画像中には異なった位置およびサイズのサークルS,S’が表示される。
【0038】
そこで、図6(c)に示すように、保管画像Paの倍率をX線透過像の拡大率に従って調整(保管画像Paを縮小)するとともに、撮影位置が現在画像PAと一致する(画像マトリックス上の同一位置にある)ように保管画像Paに対して画像処理(マトリックス変換)を行う。その結果、マトリックス変換後の保管画像Paにおいて有効な画素(実際の画像信号のある画素)の存在する区域が、撮影エリアが一致する画像重複領域(斜線区域)16Aとなる。つまり、保管画像Paを現在画像PAと同一の倍率にするとともに、撮影位置の違いに伴う画像中心CNA,CNaの間のズレを解消するように保管画像Paを平行移動するのである。
【0039】
画像重複領域16Aは画像重複領域16Aの輪郭に沿って存在する画素の番地で特定することができる。また、画像の面積は画像の中に存在する画素の数に比例するので、現在画像PAにおける画像重複領域16Aの内にある画素の総数(全画素数)がカウントされ、画像重複領域16Aの面積が求められる。なお、視野サイズは現在画像PAや保管画像Paの画像サイズと常に一定の対応関係があるので、現在画像PAと保管画像Paを実際の視野サイズに換算せずに画像のままで必要な処理がおこなえることは言うまでもない。
【0040】
また、図7(a)に示す現在画像PAと図7(b)に示す保管画像Pbの場合、現在画像PAと保管画像Pbの間に視野サイズの違いはなく撮影位置の違いがあるだけなので、図7(c)に示すように、保管画像Pbの倍率は変えずに撮影位置が現在画像PAと一致する(画像マトリックス上の同一位置にある)ように保管画像Pbに対して画像処理(マトリックス変換)を行う。その結果、マトリックス変換後の保管画像Pbにおいて有効な画素(実際の画像信号のある画素)の存在する区域が、撮影エリアが一致する画像重複領域16B(斜線区域)となる。つまり、撮影位置の違いに伴う画像中心CNA,CNbの間のズレを解消するように保管画像Pbを平行移動するのである。そして、現在画像PAにおける画像重複領域16Bの内にある画素の総数(全画素数)をカウントして画像重複領域16Bの面積とする。
【0041】
そして、現在画像PAにおける画像重複領域16Bの内にある画素の総数(全画素数)が画像重複領域16Bの面積として求められると、先に求めた画像重複領域16Aの求めた面積と画像重複領域16Bの求めた面積とを比較して面積の大きい方の保管画像Pbを選抜画像として仮選抜する。選抜画像候補の保管画像がある限り、画像重複領域の面積を求めるとともに、仮選抜中の選抜画像との面積比較処理が繰り返され、最後に残った仮選抜中の選抜画像が適正な選抜画像として本選抜される。ここでは、全保管画像の中から保管画像Pbが選抜画像として本選抜されたものとする。
【0042】
なお、現在画像と保管画像の間に画像処理による拡大または縮小に伴う倍率の違いがある場合は、画像処理による拡大または縮小に伴う倍率の違いも視野サイズ情報のひとつとして考慮しながら、画像重複領域を求めることになる。
【0043】
また、現在画像と保管画像の間でX線検出器3のX線検出面での使用エリア(有効エリア)の違いがある場合も、X線検出器3のX線検出面での使用エリアの違いを視野サイズ情報のひとつとして考慮しながら、画像重複領域を求めることになる。
【0044】
例えば、図8(a)に示す現在画像QAの場合は、X線検出器3のX線検出面の8割ほどを使用エリア19A(一転鎖線で囲む部分)とし、図8(b)に示す保管画像Qaの場合は、X線検出器3のX線検出面の全域を使用エリア19aとする。このとき、図8(c)に示すように、現在画像QAを得た時のX線検出器3のX線検出面の周縁部の未使用エリアは画像重複領域(斜線区域)16Cから除外すように構成されている。
【0045】
次に、図7に戻り選抜画像の重畳表示プロセスを説明する。
選抜画像が保管画像Pbであるので、保管画像Pbにおける画像重複領域16Bの画像だけを抽出する(切り出す)。そして、撮影位置が現在画像PAと一致するように画像処理(マトリックス変換)を行った保管画像Pbであれば、抽出した画像をそのまま現在画像PAと加算してモニタ4の画面に表示することにより、画像重複領域16Bの画像を現在画像PAに重畳表示する。もし画像重複領域16Bの画像を、撮影位置が現在画像PAと一致するように画像処理(マトリックス変換)を行う前の保管画像Pbから抽出する場合は、抽出後に撮影位置が現在画像PAと一致するように画像処理(マトリックス変換)を行ってから現在画像PAと加算する。
【0046】
また、実施例装置の場合、サブトラクション画像が保管画像として画像メモリ5の中に保管されている場合は、現在画像にサブトラクション画像を重畳表示することができる。さらには、現在画像も保管画像もカテーテル挿入を伴う血管造影検査時のX線透視画像である場合、例えば保管画像におけるカテーテル像のみを現在画像とは違う色にする色変換処理を行ってから重畳表示することも可能な構成となっている。
【0047】
なお、図1に示す実施例装置では、天板移動制御部6やX線照射制御部8、照射検出系駆動制御部11、保管画像選抜部14、或いは、画像重畳表示部15は、操作部17から入力される指示やデータあるいはX線撮影の進行に従って主制御部18から送出される各種命令にしたがって適切な制御処理や演算処理を実行する構成となっている。また現在画像に保管画像を重畳表示する指示は、操作部17から入力することができるように構成されている。
【0048】
次に、上述した実施例装置によるカテーテル挿入を伴う血管造影検査時の撮影の場合を例に採って、図面を参照しながら具体的に説明する。
図9は実施例装置によるX線撮影の実行状況を示すフローチャートである。以下では、被検体Mを天板1に載せて検査位置にセットし、カテーテルの挿入が既に始まっている段階から説明する。
【0049】
〔ステップS1〕 カテーテル挿入位置の確認
検査術者(オペレータ)は、図10に示すように、被検体Mに挿入してゆくカテーテル20の先端がモニタ4に表示中のX線透視画像PAの中心付近となるように透視を行いながらカテーテル20を被検体Mの血管中を検査部位へ向けて挿入してゆく。
【0050】
〔ステップS2〕 サブトラクション画像の取得
カテーテルが検査部位の近くに達する迄の間、カテーテル20の先から造影剤を注入するとともに、注入前後でX線撮影画像を取得し、図11に示すように、画像サブトラクション部13で血管像21だけが映し出されたサブトラクション画像PSを作成して画像メモリ5に保管する操作を(必要に応じて何回か繰り返して)行いながらカテーテル20の挿入を続ける。
【0051】
〔ステップS3〕 サブトラクション画像の重畳表示を指示
カテーテル20が検査部位の至近まで達した時にカテーテル20が進まなくなり、血管の走行状況をチェックするべく、検査術者が現在X線撮影画像に保管中のサブトラクション画像を重畳表示する指示を操作部17で入力する。なお、サブトラクション画像の撮影時点以降、現在X線撮影画像の撮影位置および視野サイズは少し変更されているものとする。
【0052】
〔ステップS4〕 サブトラクション画像の選抜
保管画像選抜部14によって画像メモリ5に保管中のサブトラクション画像の中から現在X線透視画像に対して被検体M上の撮影エリアが一致する画像重複領域の面積が最も大きい画像(選抜サブトラクション画像)が選抜される。
【0053】
〔ステップS5〕 重畳表示の開始
画像重畳表示部15によって選抜サブトラクション画像から画像重複領域の画像が部分的に抽出されて倍率調整・位置合わせが行われたあと、図12に示すように、モニタ4の画面ではサブトラクション画像中の血管像21が現在X線透視画像PAの中にリアルタイムで重畳表示される。
【0054】
〔ステップS6〕 重畳表示の停止の有無
選抜サブトラクション画像の重畳表示の停止指示が操作部17から入力されない限り、ステップS5が引き続き実行されて選抜サブトラクション画像が現在X線透視画像に重畳表示され続ける。選抜サブトラクション画像の重畳表示の停止指示が操作部17から入力されたならば、次のステップS7へ進む。
【0055】
〔ステップS7〕 重畳表示の終了
選抜サブトラクション画像の重畳表示は終了となり、モニタ4にはX線透視画像のみが表示される。
【0056】
以上のように、実施例のX線透視撮影装置によれば、画像メモリ5の中に保管されている保管画像を得られたばかりの現在画像にリアルタイムで重畳表示する場合、保管画像選抜部14によって、保管画像の中から現在画像に対する撮影エリアが一致する画像重複領域の面積が最も大きくて現在画像に的確に対応する保管画像が自動的に選抜される。また、画像重畳表示部15によって、選抜画像における画像重複領域の画像だけが現在画像に合せ込んだ状態で自動的に重畳表示されるので、現在画像と保管画像とが正確に対応していない時でも、現在画像に保管画像を合せ込んだ状態で重畳表示することができる。
【0057】
この発明は、上記の実施例に限られるものではなく、以下のように変形実施することも可能である。
(1)実施例では、主にX線透視画像に保管X線撮影画像としてのサブトラクション画像を重畳表示する場合について説明したが、この発明の場合、現在画像に保管画像として非サブトラクション画像を重畳表示する態様、現在X線撮影画像に保管X線透視画像を重畳表示する態様、および現在X線撮影画像に保管X線撮影画像を重畳表示する態様なども可能である。
【0058】
(2)実施例のX線透視撮影装置は、医用装置であったが、この発明は、医用に限らず、非破壊検査機器などの工業用装置に適用することもできる。
【0059】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、この発明のX線透視撮影装置によれば、画像記憶手段の中に保管されている保管画像を得られたばかりの現在画像にリアルタイムで重畳表示する場合、保管画像の中から現在画像に対する撮影エリアが一致する画像重複領域の面積が最も大きくて現在画像に的確に対応する保管画像が自動的に選抜される。また、選抜画像における画像重複領域の画像だけが現在画像に画像が合った状態で自動的に重畳表示されるので、現在画像と保管画像とが正確に対応していない時でも、現在画像に保管画像を正確に合せ込んだ状態で重畳表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に係るX線透視撮影装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】実施例装置の撮影台の概略構成を示す立面図である。
【図3】実施例装置のX線検出器であるFPDの構成を示す平面図である。
【図4】現在画像および保管画像の撮影時の撮影台の状況を示す説明図である。
【図5】現在画像と保管画像の間の画像重複領域を示す説明図である。
【図6】現在画像と保管画像の画像重複領域の求める例を示す模式図である。
【図7】現在画像と保管画像の画像重複領域の他の求める例を示す模式図である。
【図8】現在画像と保管画像の画像重複領域の他の求める例を示す模式図である。
【図9】実施例装置によるX線撮影の手順を示すフローチャートである。
【図10】実施例装置により撮影された現在X線透視画像を示す模式図である。
【図11 】実施例装置により撮影されたサブトラクション画像を示す模式図である。
【図12】実施例装置において現在X線透視画像にサブトラクション画像が重畳表示された状況を示す模式図である。
【符号の説明】
2 … X線管(X線照射手段)
3 … X線検出器(X線検出手段)
4 … モニタ
5 … 画像メモリ
13 … 画像サブトラクション部(画像サブトラクション手段)
14 … 保管画像選抜部(保管画像選抜手段)
15 … 画像重畳表示部(画像重畳表示手段)
16, … 画像重複領域
16A〜16C… 画像重複領域
PA,QA … 現在画像
Pa,Pb, … 保管画像
Qa … 保管画像
PS … サブトラクション画像
M … 被検体
Claims (3)
- X線照射手段による被検体へのX線照射に伴ってX線検出手段から出力されるX線検出信号に基づいて被検体のX線透視画像あるいはX線撮影画像が得られてモニタに表示されるとともに、画像記憶手段に保管されるように構成されたX線透視撮影装置において、(a)事前に得られて画像記憶手段に保管されているX線透視画像(保管X線透視画像)あるいはX線撮影画像(保管X線撮影画像)の中から現在得られているX線透視画像(現在X線透視画像)あるいは現在得られたばかりのX線撮影画像(現在X線透視画像)に対して被検体上の撮影エリアが一致する画像重複領域の面積を撮影位置情報および視野情報に基づいて求めるとともに、求まる面積から画像重複領域の最も大きい画像を選抜する保管画像選抜手段と、(b)保管画像選抜手段で選抜されたX線透視画像(選抜X線透視画像)あるいは選抜されたX線撮影画像(選抜X線撮影画像)における画像重複領域の画像だけを現在X線透視画像または現在X線透視画像に合せ込んだ状態で重畳表示する画像重畳表示手段とを備えていることを特徴とするX線透視撮影装置。
- 請求項1に記載のX線透視撮影装置において、(a1)保管画像選抜手段は、被検体における撮影位置情報および視野サイズ情報に基づいて画像重複領域の面積を求めるとともに、求めた面積の大小比較により選抜X線透視画像あるいは選抜X線撮影画像を選抜するように構成されており、(b1)画像重畳表示手段は、撮影位置情報および視野サイズ情報に基づいて画像重複領域の画像を部分的に抽出するとともに、抽出した画像重複領域の画像を必要に応じて倍率調整・位置合わせしてから重畳表示するように構成されていることを特徴とするX線透視撮影装置。
- 請求項1または請求項2に記載のX線透視撮影装置において、造影剤注入前の画像と造影剤注入後の画像とをサブトラクション処理してサブトラクション画像を作成する画像サブトラクション手段を備えており、この画像サブトラクション手段により作成されたサブトラクション画像が画像記憶手段に保管されるように構成されていることを特徴とするX線透視撮影装置。
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