JP4211265B2 - 脱リン材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、下水処理水等の排水中に含まれるリンを除去する際に用いられる脱リン材に関し、更に詳しくは、従来の脱リン材よりもリンの吸着量を向上させた脱リン材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、下水処理水等の排水中に含まれるリンを除去する方法としては、晶析法や吸着法等が知られている。これらのうち、晶析法は、下水処理水等の排水中に含まれるリンをリン酸カルシウムとして結晶種である脱リン材の表面に析出させることにより、排水中からリンを除去するものである。しかし、前記晶析法は、結晶の析出および成長現象を利用した反応操作であるため、安定した性能を持続させるためには、反応物質の濃度や排水中のpH等の制御を厳密に行う必要があった。
【0003】
一方、前記吸着法は、排水を脱リン材に接触させるだけで良いため、反応操作が比較的簡便であるという特徴がある。このような吸着法に用いられる脱リン材としては、従来、骨炭、リン鉱石または活性アルミナ等を主成分としたものが用いられていた。
【0004】
また、前記従来の脱リン材では、その表面にリンが吸着されて固定化され、リン酸カルシウムが形成される。そして、このリン酸カルシウムの生成量が化学的平衡状態に達すると、再生処理を施して再利用していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の脱リン材では、リンの除去性能(リンの吸着量)が比較的低いため、脱リン材の再生処理を頻繁に施す必要があった。
【0006】
したがって、本発明の課題は、リンの吸着量をより高くした脱リン材を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記した課題を解決するために鋭意検討した結果、酸化カルシウム、酸化アルミニウムおよび硫酸カルシウムから構成される複塩の結晶単独で構成された脱リン材を用いることにより、前記課題を解決できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明の脱リン材は、水中に含まれるリンを除去する際に用いられる脱リン材であって、酸化カルシウム、酸化アルミニウムおよび硫酸カルシウムから構成され、下記一般式(1)で表される複塩の結晶単独で構成されたことを特徴とする。
3CaO・Al2O3・3CaSO4・mH2O……(1)
一般式(1)中、mは1以上の整数である。
【0010】
このように構成することによって、リンの吸着量の高い脱リン材を得ることができる。この脱リン材は、その表面に、水中のリンが吸着すると、脱リン材から供給されるカルシウムイオンやアルミニウムイオンと反応してリン酸カルシウムやリン酸アルミニウムを形成するので、リンをリン酸カルシウムやリン酸アルミニウム等の化合物として固定化することができる。その結果、水中のリンを除去することが可能となる。
【0011】
前記複塩は、硫酸イオン含有水をアルカリ性とし、この水溶液にカルシウムイオンおよびアルミニウムイオンを添加することにより生成される、下記一般式(2)で表される。
3CaO・Al 2 O 3 ・3CaSO 4 ・6H 2 O……(2)
具体的には、次の一般式(3)に示すように反応して生成する。
6Ca2++3SO4 2-+2Al3++12OH-→3CaO・Al2O3・3CaSO4・6H2O……(3)
【0012】
この複塩は、カルシウムおよびアルミニウムを、硫酸化合物の適量と反応させて製造することもできる。また、前記硫酸イオン含有水として硫酸イオン含有排水を用いることもできる。
【0013】
本発明の脱リン材は、特に限定されるものではなく、様々な形態をとることができる。例えば、前記したように各成分を反応させて得られた複塩をそのまま用いる。あるいは、砂、リン酸カルシウム、シリカまたはゼオライト等の粒状担体の表面に前記複塩の結晶を析出させたり、または前記複塩の結晶を成長させたりしてもよい。水中のリンを除去するに当たっては、まず、本発明の脱リン材を反応槽に充填し、そこに被処理水を通水させる。また、本発明にあっては、脱リン材の充填方法について特に限定されるものではなく、例えば、固定床式、懸濁式または流動床式等の各方式が採用することができる。これらの充填方式を採用する場合には、脱リン材の粒径を適切に選択することが肝要である。
【0014】
例えば、懸濁式の反応装置により水中の脱リン処理を行う場合は、脱リン材の粒径を0.01mm〜0.1mmの粉末状にすると、脱リン材とリンとの反応速度がより高くなるので好ましい。すなわち、脱リン材を粉末状に形成して、反応槽に所定量添加し、懸濁させた状態でリン含有排水と接触させることにより、脱リン材の表面にリン含有排水中のリンを吸着させる。このようにすれば、反応槽内での脱リン材の流動率を適切な状態に保持することが容易となる。
【0015】
また、流動床式の反応装置により水中の脱リン処理を行う場合は、脱リン材の粒径を0.05mm〜0.3mmの粒状にすると、脱リン材を床内に展開することが比較的容易となり、脱リン材のリンの除去性能を最大限に発揮させることが可能となるので好ましい。すなわち、脱リン材を粒状に形成して、反応槽の流動床に所定量添加し、流動可能となる状態でリン含有排水と接触させることにより、脱リン材の表面にリン含有排水中のリンを吸着させる。このようにすれば、反応槽内での脱リン材の流動率を適切な状態に保持することが容易となる。
【0016】
また、固定床式の反応装置により水中の脱リン処理を行う場合は、脱リン材の粒径を0.2mm〜5mmの粒状にすると、通水性を適切な状態に保持したまま固定床を形成することが可能となるので好ましい。すなわち、脱リン材を粒状に形成して、反応槽の固定床に所定量添加し、固定状態でリン含有排水と接触させることにより、脱リン材の表面にリン含有排水中のリンを吸着させる。なお、リン含有排水は、上向流、下向流のいずれの方向で通水させてもよい。このようにすれば、反応槽内での通水性を適切な状態に保持することが容易となる。
【0017】
前記したいずれの方法を用いる場合でも、脱リン材は比較的大量のリンを吸着して固定化することができる。そのため、脱リン材の表面に固定化されたリンを回収して肥料などの有価物として再利用することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
本発明の脱リン材は、酸化カルシウム、酸化アルミニウムおよび硫酸カルシウムから構成され、下記一般式(1)で表される複塩の結晶単独で構成されている。
3CaO・Al2O3・3CaSO4・mH2O……(1)
なお、一般式(1)中、mは1以上の整数である。
【0021】
このように構成された脱リン材は、その表面に、水中のリンをリン酸カルシウムやリン酸アルミニウム等の化合物として析出させ、固定化することにより、水中のリンを除去すると考えられる。この脱リン材は、脱リン処理時には、水中のリン酸と次の一般式(4)に示すように反応する。
3CaO・Al2O3・3CaSO4・mH2O+6PO4 3-→2Ca3(PO4)2・Al2PO4+12OH-+3SO4 2-……(4)
【0022】
この脱リン材は、水中に含まれるリンを、懸濁式、固定床式または流動床式の吸着法により除去する際に用いられる。以下、本発明の脱リン材を用いて下水処理水等の排水中に含まれるリンを流動床式の吸着法により除去する方法の一例について、図面を参照して説明する。図1は、流動床式の脱リン装置を示す系統図である。
【0023】
図1に示すように、脱リン装置Eは、リン含有排水が配管2を介して反応槽1に下部から導入されるようになっている。また、既に反応槽1で脱リン処理された処理水の一部が、ポンプ3で反応槽1から抜き出され、配管4を介して配管2内に導入されるようになっている。そして、反応槽1の下部には配管2から導入された液を均一に流入させるためのディストリビュータ5が設けられていると共に、中央部には脱リン材の流動床6が形成されており、配管2から導入されたリン含有排水がディストリビュータ5を通過して流動床6に上向流で供給されるようになっている。
【0024】
反応槽1の流動床6には、脱リン材が所定量添加されている。このとき、脱リン材は、前記した理由で、粒径が0.05〜0.3mmの粒状であることが好ましい。この場合、脱リン材は、砂やリン酸カルシウム、シリカ、ゼオライト等の粒状担体の表面に前記複塩の結晶を析出させたり、または前記複塩の結晶を成長させることにより形成する。
【0025】
そして、反応槽1の下部から反応槽1内に供給されたリン含有排水は、流動床6の脱リン材を流動させつつ、流動床6を上向流で通水する。これにより、流動床6でリン含有排水と脱リン材が流動状態で接触させ、脱リン材の表面に水中のリンをリン酸カルシウムやリン酸アルミニウム等の化合物として析出させて、リン含有排水を脱リン処理する。
【0026】
このようにして脱リン処理された処理水は、一部が必要により配管7を介して図示しないpH調整槽に供給されてpH調整槽でpH値を中和処理された後、外部に放流され、一部がポンプ3で反応槽1から抜き出されて配管4を介して配管2内に導入されるようになっている。
【0027】
【実施例】
次に、本発明の脱リン材を用いて水中のリンを除去した実施例について、比較例と対比して説明する。
【0028】
(実施例1)
硫酸イオンを含有する水溶液をpH10のアルカリ性とし、この水溶液にカルシウムイオンおよびアルミニウムイオンを添加することにより生成した複塩3CaO・Al2O3・3CaSO4・6H2Oの結晶を、粒径0.05〜0.1mmに粉砕して脱リン材Aを製造し、この脱リン材Aをリン濃度が110mg/lである水100mlに0.1g添加し、1時間撹拌した。1時間後に水中のリン濃度を測定した結果、リン濃度は0.87mg/lであった。また、脱リン材Aのリン吸着量を計算すると、109.0mg−P/g−脱リン材Aであった。
【0029】
(実施例2)
実施例1と同じ脱リン材Aを、リン濃度が110mg/lである水100mlに0.2g添加し、1時間撹拌した。
1時間後に水中のリン濃度を測定した結果、リン濃度は0.07mg/lであった。また、脱リン材Aのリン吸着量を計算すると、55.0mg−P/g−脱リン材Aであった。
【0030】
(比較例1)
脱リン材としての有効性が知られているヨルダン産のリン鉱石を、粒径0.05〜0.1mmに粉砕して脱リン材Bを製造し、この脱リン材Bをリン濃度が110mg/lである水100mlに0.1g添加し、1時間撹拌した。
1時間後に水中のリン濃度を測定した結果、リン濃度は87.3mg/lであった。また、脱リン材Bのリン吸着量を計算すると、22.7mg−P/g−脱リン材Bであった。
【0031】
(比較例2)
比較例1と同じ脱リン材Bを、リン濃度110mg/lである水100mlに0.2g添加し、1時間撹拌した。
1時間後に水中のリン濃度を測定した結果、リン濃度は82.0mg/lであった。また、脱リン材Bのリン吸着量を計算すると、14.0mg−P/g−脱リン材Bであった。
【0032】
実施例1,2および比較例1,2の結果を、表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
以上の結果から、本発明の脱リン材Aのリンの除去性能(リン吸着量)は、脱リン材としての有効性が知られているヨルダン産のリン鉱石に比べて、極めて高いことが確認された。
【0035】
(実施例3)
実施例1と同じ脱リン材Aを、リン濃度が110mg/lである水100mlに様々な添加量で添加し、1時間撹拌した後、水中に残留したリン濃度と、脱リン材Aのリン吸着量との関係を求めた。
【0036】
(比較例3)
従来から脱リン材として用いられている活性アルミナおよびリン鉱石を、リン濃度が110mg/lである水100mlに様々な添加量で添加し、1時間撹拌した後、水中に残留したリン濃度と、脱リン材Aのリン吸着量との関係を求めた。
【0037】
実施例3および比較例3の結果を、図2に示す。
【0038】
以上の結果から、本発明の脱リン材Aのリンの除去性能(リン吸着量)は、従来の脱リン材として用いられている活性アルミナおよびリン鉱石に比べて、極めて高いことが確認された。
【0039】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明によれば、従来の脱リン材に比べて、リンの吸着量が極めて高い脱リン材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】流動床式の脱リン装置を示す系統図である。
【図2】実施例3および比較例3の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
E 脱リン装置
1 反応槽
2,4,7 配管
3 ポンプ
5 ディストリビュータ
6 流動床
Claims (2)
- 水中に含まれるリンを除去する際に用いられる脱リン材であって、
酸化カルシウム、酸化アルミニウムおよび硫酸カルシウムから構成され、下記一般式(1)で表される複塩の結晶単独で構成されたことを特徴とする脱リン材。
3CaO・Al2O3・3CaSO4・mH2O……(1)
前記一般式(1)中、mは1以上の整数である。 - 前記複塩は、硫酸イオン含有水をアルカリ性とし、この水溶液にカルシウムイオンおよびアルミニウムイオンを添加することにより生成される、下記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項1に記載の脱リン材。
3CaO・Al 2 O 3 ・3CaSO 4 ・6H 2 O……(2)
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