JP4337303B2 - 硫酸イオンの除去方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、硫酸イオンの除去方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体工場、火力発電所、医薬品工場、食品製造加工工場、飲料水製造工場、紙パルプ工場、繊維紡績工場等から排出されるプロセス排水、総合排水は、その水質に応じて、放流基準や自主管理基準、あるいは、回収再利用に要求される水質を満足するように、凝集処理、沈澱処理、生物処理、酸化分解、ろ過、蒸発、イオン交換等の方法を、単独に又は組み合わせて処理される。
【0003】
近年、放流水質基準が厳しくなったり、地域によっては水資源の枯渇、製造コストに占める上下水道費用の高騰、環境ISOへの取り組み等から、工場内での水の再利用が進んでいる。
【0004】
生物処理は、水中の比較的濃度の高い有機物を分解処理するのに適しており、好気性処理、嫌気性処理等を組み合わせてCOD成分の低減や、窒素成分の除去に幅広く用いられている。
【0005】
嫌気性処理は、汚泥の発生量が少ないために、好気性処理と比較して高い有機物濃度の排水の処理に適している。しかし、嫌気性処理を行う場合に水中に硫酸イオンが数百〜数千mg/Lの濃度で存在すると、硫酸イオンが還元されて硫化水素が発生する。硫化水素は、悪臭が強く、有毒であるのみならず、装置や配管の腐食をもたらし、あるいは、ガスを有効利用する際の障害となる。バイオガス中の硫化水素の除去には、大量の吸着剤やアルカリ剤が必要となる為に、低コストで嫌気性処理を行っても、ガス処理のコストのために、結果的に嫌気性処理が適用できないという排水が多い。硫酸イオンは数百mg/Lでも前記の問題が発生するために、100mg/L以下の濃度まで減少させることが望まれるが、硫酸カルシウムの析出による処理(硫酸カルシウム法)では、数千mg/Lの硫酸イオンが排水中に残留する。イオン交換処理は、硫酸イオンの濃度が高い場合は再生頻度が高くなり、また再生廃液の処理が必要となる為に実用的ではない。
【0006】
さらに、硫酸カルシウムが飽和濃度(約2000mg/L)に近い濃度で水中に存在すると、その水を使用する系では、温度、pH等の環境の微妙な変化により硫酸カルシウムがスケールとして析出し、配管、機器等にスケール障害をもたらすことになる。このため排水中に含まれる硫酸イオンを効果的に除去することができる処理方法の開発が望まれていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような問題点に鑑みなされたものであり、硫酸イオンが含まれる排水中から、硫酸イオンを効率的に除去することができる硫酸イオンの除去方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討の結果、前記課題を解決するために、硫酸イオンを含む被処理水にカルシウムイオン及びアルミニウムイオンを共存させて、pHを所定範囲に保つことで、前記硫酸イオンを硫酸含有化合物として析出させ、前記被処理水中の硫酸イオン濃度を低下させることが可能であるとの知見に基づき本発明の硫酸イオンの除去方法を完成した。
【0009】
請求項1に記載の発明は、硫酸イオンを含む被処理水にカルシウム含有化合物及びアルミニウム含有化合物を添加して、pHを所定範囲に保って、前記硫酸イオンをエトリンジャイト(3CaSO 4 ・3CaO・Al 2 O 3 ・nH 2 O(ここでnは正の整数))様の硫酸含有化合物として析出させ、前記被処理水中の硫酸イオン濃度を低下させる硫酸イオンの除去方法であって、前記カルシウム含有化合物が、炭酸カルシウム及び/又はヒドロキシアパタイトであり、前記アルミニウム含有化合物が、カオリン、ハロイサイト及びアロフェンからなる群から選択される1以上の粘土化合物、又はアルミン酸ナトリウムであり、前記カルシウム含有化合物及び前記アルミニウム含有化合物のうちの少なくともいずれか一方が晶析核となる不溶部分を有し、かつ、前記pHの所定範囲が6〜9.5であることを特徴とする硫酸イオンの除去方法である。
【0015】
被処理水中の硫酸イオンが硫酸含有化合物として析出する際には、被処理水中の硫酸イオン、アルミニウムイオン及びカルシウムイオンとが、下記(1)式の反応を生じ、水に難溶性のエトリンジャイト(3CaSO4・3CaO・Al2O3・nH2O(ここでnは正の整数))様の硫酸含有化合物が生成する。
【0016】
6Ca2++3SO4 2-+2Al3++12OH-→3CaSO4・3CaO・Al2O3・6H2O・・・・・(1)
【0017】
本発明者らの調査によれば、前記(1)式は、被処理水中に晶析核を存在させない場合には、前記pHの所定範囲が9〜13の条件で、実用上許容できる速度で反応が右辺に進行することが明らかとなった。
【0018】
被処理水中の硫酸イオンを充分に低減するためには、カルシウムイオンのモル濃度は硫酸イオンのモル濃度に対して、少なくとも1.5倍以上、より好適には2倍以上であることが望ましい。カルシウムイオンの濃度をこの範囲とすることで、被処理水中の硫酸イオンは化学量論比に基づいて硫酸含有化合物として析出し、被処理水中から除かれる。
【0019】
また、アルミニウムイオンのモル濃度は、硫酸イオンのモル濃度に対して2/3倍以上であることが望ましい。アルミニウムイオンの濃度をこの範囲とすることで被処理水中の硫酸イオンは化学量論比に基づいて硫酸含有化合物として析出し、被処理水中から除かれる。
【0020】
さらに、被処理水のpHは、9〜13であることが望ましい。被処理水のpHが9以上であれば、(1)式を右辺に進行させるために必要なOH-は、実用上許容できる濃度となる。また、被処理水のpHが13以下であれば、硫酸イオンの除去処理を行った後の処理水のpHが高くなりすぎることはなく、処理水の中和作業に手間が掛かることがない。
【0021】
反応((1)式)の進行し易さ及び処理水の後処理の容易さを勘案すると、被処理水のpHは9.5〜12.5であればより一層望ましい。
【0022】
また、請求項1に記載のように、被処理水中のカルシウムイオン及び/又はアルミニウムイオンの濃度が、(1)より予想される化学量論係数よりも小さい場合であっても、前記被処理水を、不溶部分を有するカルシウム含有化合物及び/又は不溶部分を有するアルミニウム含有化合物に接触させ、前記pHの所定範囲を5〜13とすることで、被処理水中の硫酸イオンを除去することが可能となる。
【0023】
これは、被処理水中に添加されたカルシウム含有化合物及び/又はアルミニウム含有化合物が一部溶解して、カルシウムイオン及び/又はアルミニウムイオンを被処理水に供給するとともに、これらの化合物の不溶部分が晶析核となることにより、前記した硫酸含有化合物が、この晶析核に析出するためである。
【0024】
この場合には、前記(1)式の反応は被処理水のpHが5〜13の範囲で右辺に進行する。被処理水中に晶析核を存在させない場合には、pHが9〜13のときに(1)式は右辺に反応が進行したが、晶析核が存在する条件では、被処理水が弱酸性〜弱アルカリ性の範囲でも硫酸イオンを硫酸含有化合物として被処理水から除去することが可能となる。
【0025】
(1)式からは、被処理水のpHが高ければ高いほど硫酸含有化合物が析出し易いことが予想されるが、晶析核が存在する条件においては、pHが6〜9.5の範囲であれば、硫酸イオンの除去効果は好ましいレベルである。
【0026】
ここで、カルシウム含有化合物としては、不溶部分を有し、被処理水中で、硫酸含有化合物の晶析核となるものであれば特に制限はないが、特に、炭酸カルシウム及び/又はヒドロキシアパタイトが好適である。これらのカルシウム含有化合物は、水に対する溶解度が小さいため、被処理水中で未溶解のまま懸濁して硫酸含有化合物の晶析核となる。
ここで、カルシウム含有化合物は、粒径が0.05〜5mmの粉末状態及び粒状態で用いることが可能である。
【0027】
炭酸カルシウムとしては、石灰岩、サンゴ化石、貝殻等を破砕して所定粒径として用いることができる。また、ヒドロキシアパタイトとしては、化学合成により所定の粒径に調製したものや、リン鉱石、骨炭等を破砕して用いることができる。また、天然ゼオライト等の表面にヒドロキシアパタイトを析出担持させたものを用いることができる。
【0028】
カルシウム含有化合物と被処理水との接触方法は、カルシウム含有化合物の表面が被処理水中の硫酸イオンと接触し、前記した(1)式の反応が充分に進行する方法であれば特に制限はない。
例えば、カルシウム含有化合物を被処理水に懸濁して撹拌する懸濁反応装置や、カルシウム含有化合物を被処理水に懸濁して流動させて、カルシウム含有化合物と被処理水との接触を図る流動層式反応装置、及び、反応装置の一部に比較的粒径の大きなカルシウム含有化合物を充填した固定層を設け、そこに、被処理水を通水する固定層式反応装置を用いることができる。
【0029】
用いられるカルシウム含有化合物の粒径は、前記した接触方法により好適な値が異なり、懸濁反応装置の場合には、被処理水との接触面積を高めるために、粒径は0.05〜0.2mmであることが望ましい。また、流動層式反応装置の場合には、被処理水との接触面積を高めるために、粒径は0.05〜0.3mmであることが望ましい。また、固定層式反応装置の場合には、カルシウム含有化合物を固定する必要上、若干粒径が大きな粒子が用いられ、粒径は0.2〜5mmであることが望ましい。
【0030】
また、アルミニウム含有化合物としては、被処理水中で少なくとも一部が溶解して、アルミニウムイオンを発生しうるものであれば特に制限はないが、カオリン、ハロイサイト及びアロフェンからなる群から選択される1以上の粘土化合物を用いることが好ましい。
【0031】
ここで、粘土化合物の水に対する溶解度は小さいので、粘土化合物は、一部分は溶解して被処理水中にアルミニウムイオンを供給するとともに、未溶解の部分は、被処理水中で懸濁して、硫酸含有化合物の晶析核となる。
【0032】
これらの粘土化合物とともにアルミン酸ナトリウムを併用することで被処理水中から硫酸イオンをより効果的に除去することが可能となる。つまり、アルミン酸ナトリウムは、水に容易に溶けて、被処理水中にアルミニウムイオンを供給するので、(1)式の反応は右辺に進行しやすくなる。
【0033】
【発明の実施の形態】
続いて、より具体的に、本発明の硫酸イオンの除去方法について説明する。図1は、本発明の硫酸イオンの除去方法を利用した硫酸イオン除去装置の第1の実施形態を示すブロック図である。本実施の形態では、晶析核を用いない硫酸イオン除去装置の装置構成を示している。
【0034】
硫酸イオン除去装置は、反応塔1、イオン交換カラム2、中和槽3、pH計4等からなる。
被処理水は、反応塔1に導入される前に、流路中に設けられたpH計6によりpHが測定され、その結果はデータ処理部18に送信される。被処理水のpHが規定範囲(9〜13)よりも低い場合には、データ処理部18により開閉度が制御される可変バルブ7が開閉し、アルカリタンク8に貯蔵されている高濃度の水酸化ナトリウム等が被処理水に導入され、被処理水のpHが規定範囲(9〜13)に調整される。
尚、図1において、データ処理部18から可変バルブ7への制御線は図面が煩雑となるために図示を省略した。可変バルブ11,14,17についても同様である。
【0035】
次に、流路中に設けられたSO4 2-計9により被処理水中の硫酸イオン濃度が測定される。このSO4 2-計9で測定された硫酸イオン濃度は、データ処理部18に送信され、被処理水中のカルシウムイオン濃度及びアルミニウムイオン濃度を調整するために用いられる。
【0036】
次に、流路中に設けられたCa2+計10により被処理水中のカルシウムイオン濃度が測定される。ここで測定されたカルシウムイオン濃度はデータ処理部18に送信され、カルシウムイオン濃度が、SO4 2-計9で測定された硫酸イオン濃度に対して少ない場合には、データ処理部18からの指令により開閉度が制御される可変バルブ11が開閉し、Ca2+タンク12に貯蔵されているカルシウムイオン含有溶液が被処理水中に導入され、被処理水中のカルシウムイオン濃度(モル濃度)が、硫酸イオン濃度(モル濃度)に対して少なくとも1.5倍、好適には2倍以上の濃度に調整される。
【0037】
続いて、流路中に設けられたAl3+計13により、被処理水中のアルミニウムイオン濃度が測定される。ここで測定されたアルミニウムイオン濃度が、同様にデータ処理部18に送信され、SO4 2-計9で測定された硫酸イオン濃度に対して少ない場合には、データ処理部18からの指令により開閉度が制御される可変バルブ14が開閉し、Al3+タンク15に貯蔵されているアルミン酸ナトリウム水溶液等のアルミニウムイオン含有溶液が被処理水中に導入され、被処理水中のアルミニウムイオン濃度(モル濃度)が、硫酸イオン濃度(モル濃度)に対して少なくとも2/3倍以上の濃度に調整される。
尚、ここで、pH調整、カルシウムイオン濃度調整及びアルミニウムイオン濃度調整は、必ずしもこの順序で行う必要はなく、適宜順序を変更しても構わない。
【0038】
続いて、pH、カルシウムイオン濃度及びアルミニウムイオン濃度が調整された被処理水は反応塔1に底部から導入され、反応塔1内部で、前記した(1)式に示した硫酸イオンの晶析反応が進行する。尚、この際、反応塔1に循環路16を設けて、一部の被処理水を反応塔1内部で循環するように構成してもよい。被処理水の循環処理を行うことで、(1)式の反応が充分に右辺に進行し、被処理水中の硫酸イオンを効果的に析出させることが可能となる。
【0039】
このようにして硫酸イオンが除去された被処理水は、不図示のフィルタ等により、硫酸含有化合物が除去された上で処理水となり、イオン交換カラム2に導入される。イオン交換カラム2中には、H形陽イオン交換樹脂が充填されており、処理水はイオン交換樹脂を通過することで余分なNa+等のカチオンが除去された上で中和槽3に導入される。
【0040】
イオン交換カラム2を通過した処理水は酸性であるので、それを中和するために、処理水は中和槽3に導入される。中和槽3には、pH計4が設置されており中和槽3中の処理水のpHが測定されている。処理水が酸性である場合には、このpH計4のデータに基づいてデータ処理部18から信号が送られ、可変バルブ17が開閉し、反応塔1から放出される処理水(アルカリ性)が中和槽3に導入され、これにより中和槽3中の処理水(酸性)の中和を行う。
【0041】
図2は、本発明の硫酸イオンの除去方法を利用した硫酸イオン除去装置の第2の実施形態を示すブロック図である。本実施の形態では、晶析核を用いる硫酸イオン除去装置の装置構成を示しており、請求項1に記載の発明に対応するものである。
【0042】
第2実施形態の硫酸イオン除去装置においては先ず、流路中に設けられたpH計6により被処理水のpHが測定される。この情報はデータ処理部18に送信され、被処理水のpHが所定範囲(5〜13)以外の場合には、この情報に基づいて開閉度が制御される可変バルブ19a,19bが開閉し、アルカリタンク18a又は酸タンク18bに貯蔵されているアルカリ水溶液又は酸水溶液が被処理水に導入され、被処理水のpHが規定範囲(5〜13)に調整される。
尚、図2において、データ処理部18から可変バルブ19a,19bへの制御線は図面が煩雑となるために図示を省略した。可変バルブ14についても同様である。
【0043】
続いて、晶析核となる適当な粒径(0.05〜0.3mm)を有する炭酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト等の不溶部分を有するカルシウム含有化合物が、カルシウム含有化合物タンク20から被処理水中に適宜導入される。
【0044】
尚、本実施の形態では、晶析核としてカルシウム含有化合物を被処理水に導入したが、晶析核としては、カオリン、ハロイサイト、アロフェン等の不溶部分を有するアルミニウム含有化合物を用いることが可能である。また、晶析核として、カルシウム含有化合物とアルミニウム含有化合物とを混合して用いることも可能である。
【0045】
そして、被処理水中の硫酸イオン濃度及びアルミニウムイオン濃度がそれぞれ、SO4 2-計9及びAl3+計13により測定され、データ処理部18に情報が送信される。ここで測定されたアルミニウムイオン濃度が、SO4 2-計9で測定された硫酸イオン濃度に対して少ない場合には、データ処理部からの信号で開閉度が制御される可変バルブ14が開閉し、Al3+タンク15に貯蔵されているアルミン酸ナトリウム水溶液等のアルミニウムイオン含有溶液が被処理水中に導入され、被処理水中のアルミニウムイオン濃度(モル濃度)が、硫酸イオン濃度(モル濃度)に対して少なくとも2/3倍以上の濃度に調整される。
【0046】
このようにして、晶析核を含みpHが所定範囲に調整された被処理水は、反応塔1に底部から導入される。本実施の形態においては、反応塔1内部には、(1)式の晶析反応を促進するために、粒径が0.2〜5mmのカルシウム含有化合物(炭酸カルシウム及び/又はヒドロキシアパタイト)が充填されている。
【0047】
このように、被処理水中に晶析核となる物質を分散させ、さらに、反応塔1内部にカルシウム含有化合物を充填することにより、被処理水のpHが6〜9.5の範囲であっても(1)式の反応を充分に右辺に進行させることが可能となり、被処理水中の硫酸イオンを効果的に析出させることが可能となる。
【0048】
またこの際、第1の実施形態と同様に、反応塔1に循環路16を設けて一部の被処理水を反応塔1内部で循環するように構成してもよい。
【0049】
このようにして、硫酸イオンが除去された被処理水は、不図示のフィルタ等により析出物がろ過され、被処理水のpHに応じて第1の実施形態に示したような中和処理がなされる。尚、本実施の形態においては、被処理水に晶析核を投入しているので、被処理水が中性(pH≒7)であっても、充分に被処理水中の硫酸イオンを除去することが可能であり、反応塔1に導入される被処理水のpHを7程度に調整しておけば、第1の実施形態に示したような処理水の中和処理の手間が省けより好適である。
【0050】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこの実施例にのみ限定されるものではない。
【0051】
(実施例1)
この実施例は、晶析核として炭酸カルシウム粒子を用いるものであり、請求項1に対応するものである。
【0052】
硫酸イオン2070mg/L、カルシウムイオン560mg/Lを含む被処理水を用いて、本発明の硫酸イオン除去方法の実験を行った。
内径40mm、高さ2320mmのカラムを反応塔に用い、この反応塔に粒径が0.3〜0.5mmのカルサイト型結晶構造を有する炭酸カルシウム粒子1000mLを充填し、被処理水を反応塔底部より10L/hの流量の上向流で通水した。
【0053】
この際、反応塔底部から150mmに設けた枝管より炭酸ナトリウム水溶液を連続的に添加して反応塔出口部における被処理水のpHが9.5に保たれるように制御した。また、反応塔底部より100mmに設けた枝管よりアルミン酸ナトリウム水溶液を被処理溶液中におけるアルミニウムイオン濃度が400mg/Lで一定となるように連続的に注入した。
【0054】
そして、反応塔の高さ2000mmの位置から、被処理水の一部を抜き出し、反応塔底部に45L/hで循環させた。
このような条件で硫酸イオンの除去を行い、通水開始後20時間後に反応塔出口部より処理水を採取し、硫酸イオン濃度及びカルシウムイオン濃度をイオンクロマトグラフィーにより測定した。その結果を表1に示す。
【0055】
(比較例1)
アルミン酸ナトリウムの注入を行わない以外は実施例1と同様にして被処理水中の硫酸イオンの除去効果を確認した。その結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
表1から、硫酸イオンを含む被処理水にカルシウム含有化合物及びアルミニウム含有化合物を共存させた実施例1においては、処理水の硫酸イオンの濃度は669mg/L(除去率68%)となっており、硫酸カルシウムの溶解度未満まで硫酸イオンが除去されている。
それに対し、アルミニウム含有化合物(アルミン酸ナトリウム)を共存させない比較例1においては、処理水における硫酸イオンの除去率は6%であり、殆ど硫酸イオンが除去されていないことが明らかである。
【0058】
比較例1において僅かながら硫酸イオンが除去されたのは、処理水中に元々含まれていたアルミニウムイオンが、前記した(1)式の反応を右辺に進行させ、硫酸イオンが硫酸含有化合物として晶析されたためと推測される。
【0059】
この結果は、被処理水中から硫酸イオンを効果的に除去するためには、アルミニウムイオンが存在することが重要であることを示している。
【0060】
(実施例2)
この実施例は、晶析核としてヒドロキシアパタイト粉末を用いるものであり、請求項1に対応するものである。
【0061】
硫酸イオンを1000mg/L、カルシウムイオンを830mg/Lを含むpH8.5に調整された被処理水200mLにアルミン酸ナトリウム0.35gとヒドロキシアパタイト粉末(粒径0.05〜0.2mm)10gを添加して、3時間撹拌した後に、30分静置してヒドロキシアパタイト粉末を沈降分離して上澄み液(処理水)中の硫酸イオン濃度及びカルシウムイオン濃度をイオンクロマトグラフィーにより測定した。その結果を表2に示す。
【0062】
(比較例2)
ヒドロキシアパタイト粉末を添加しない以外は実施例2と同様にして硫酸イオンの除去効果を確認した。その結果を表2に示す。
【0063】
【表2】
【0064】
カルシウム含有化合物(ヒドロキシアパタイト)を添加しない比較例2においては硫酸イオンの除去率は0%であった。
実施例2及び比較例2の結果より、被処理水中から硫酸イオンを効果的に除去するためには、被処理水中にカルシウムイオンとともに、晶析核となる物質が存在することが重要であることを示している。
また、比較例2の結果より、晶析核を用いない場合には、例え充分な量のカルシウムイオン及びアルミニウムイオンが被処理水中に存在したとしても、pHが9未満となると、(1)式の反応は殆ど進行せず、硫酸イオンが除去されないことが明らかとなった。
【0065】
(実施例3)
この実施例は、晶析核としてヒドロキシアパタイト粉末を用いるものであり、請求項1に対応するものである。
【0066】
硫酸イオンを2000mg/L、カルシウムイオンを1660mg/Lを含み、pHを6.0〜9.0まで5段階に変化させた被処理水200mLにアルミン酸ナトリウム0.70gとヒドロキシアパタイト粉末(粒径0.05〜0.2mm)10gを添加して、3時間撹拌した後に、30分静置してヒドロキシアパタイト粉末を沈降分離して上澄み液(処理水)中の硫酸イオン濃度及びカルシウムイオン濃度をイオンクロマトグラフィーにより測定した。その結果を表3に示す。
【0067】
【表3】
【0068】
表3より、硫酸イオンの除去効果は、pH6.0〜9.0の範囲で殆ど変化が無いことが明らかとなり、本発明の硫酸イオンの除去方法は、弱酸性〜弱アルカリ性の条件でも効果を発揮することが明白である。
【0069】
(実施例4)
この実施例は、晶析核としてアロフェン粉末を用いるものであり、請求項1に対応するものである。
【0070】
硫酸イオンを1000mg/L、カルシウムイオンを830mg/Lを含むpH8.5に調整された被処理水200mLにアルミン酸ナトリウム0.35gとアルミニウムの含水ケイ酸塩であるアロフェン(粒径0.05〜0.2mm)10gを添加して、3時間撹拌した後に、30分静置してアロフェン粉末を沈降分離して上澄み液(処理水)中の硫酸イオン濃度及びカルシウムイオン濃度をイオンクロマトグラフィーにより測定した。その結果を表4に示す。
【0071】
【表4】
【0072】
実施例4においては、被処理水中に元々存在するカルシウムイオンが消費されることで、硫酸含有化合物が生成されて晶析核であるアロフェン粉末(アルミニウム含有化合物)に析出したものと考えられる。
【0073】
(参考例)
この参考例は、晶析核を用いず、被処理水中に存在する硫酸イオン、カルシウムイオン及びアルミニウムイオンのみで硫酸イオンを除去するものである。
【0074】
硫酸イオン500mg/L(約5.2mmol/L)、カルシウムイオン100mg/L(約2.5mmol/L)を含む被処理水を用いて、本発明の硫酸イオン除去方法の実験を行った。
【0075】
まず、被処理水中の硫酸イオンの濃度に対して、カルシウムイオンの濃度が不足していたために、塩化カルシウム水溶液を所定量添加することで、被処理水中のカルシウムイオン濃度を400mg/L(約10.0mmol/L)と、硫酸イオンのモル濃度の2倍程度の濃度とした。
【0076】
内径30mm、高さ2320mmのカラムを反応塔に用い、カルシウムイオン濃度を調整した被処理水を水酸化ナトリウムによりpHを12.2に調整し、反応塔底部より6L/hの流量の上向流で通水した。
【0077】
この際、反応塔底部から100mmに設けた枝管からアルミニウムイオン濃度が1000mg/Lに調整されたアルミン酸ナトリウム水溶液を0.5L/hの速度で注入した。
【0078】
そして、反応塔の高さ2000mmの位置から、被処理水の一部を抜き出し、反応塔底部に25.8L/hで循環させた。
このような条件で硫酸イオンの除去を行なったところ、約 時間後に被処理水の水質が安定した。そのときの、水質を表5に示す。
【0079】
【表5】
【0080】
表5に示したように、硫酸イオンの濃度は216mg/Lであり、硫酸カルシウムの溶解度(約2000mg/L)の1/10程度にまで減少している。このことより、晶析核が存在しない条件でもpHを適切な範囲(9〜13)に調整することにより被処理水中の硫酸イオンを効果的に除去できることが明らかとなった。
【0081】
その後、反応塔の処理水をH形弱酸性陽イオン交換樹脂(バイエル社製、レバチットCNP−80)1Lを充填したイオン交換カラム(内径40mm、高さ1000mm、充填高さ800mm)へ、5L/hの流速で通水した。
【0082】
イオン交換カラムからの出口水は、pH3.8から徐々に上昇し、30時間後にはpH7.0を越えた。酸性である出口水を中和するために、イオン交換カラムの出口に中和槽を設け、この中和槽のpHに基づき、反応塔からの処理水(pH11.5)を中和槽に直接導入することで、出口水の中和を行った。
出口水のpHが7.0を越えた時点で、イオン交換樹脂を定法に従い再生し、再利用した。
【0083】
【発明の効果】
本発明は以下のような顕著な効果を奏する。
本発明の硫酸イオンの除去方法によれば、適切なpHに調整された被処理水中において硫酸イオン、カルシウムイオン及びアルミニウムイオンを反応させて水に難溶性のエトリンジャイトを晶析することで硫酸イオンを除去する。よって、被処理水中のカルシウムイオン及びアルミニウムイオンの濃度を適切に調整すれば、処理水中の硫酸イオンの濃度を硫酸カルシウムの溶解度(約2000mg/L)未満にまで低減することが可能となる。
【0084】
従来、硫酸イオンの除去に用いられていた硫酸カルシウム法では、処理水中に残留する硫酸イオン及びカルシウムイオンの濃度が高いため配管等にスケールが発生するという問題点が存在したが、本発明において硫酸カルシウムの溶解度未満にまで硫酸イオンを低減することが可能となったので配管等へのスケールの析出を抑制することが可能となった。
【0085】
また、処理水中に残留する硫酸イオンの濃度を従来に比べて格段に小さくすることが可能となったので、微生物による嫌気性処理の際に発生する硫化水素の発生量を減少することが可能となり、硫化水素による配管の腐食等の問題を解決することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の硫酸イオンの除去方法を利用した硫酸イオン除去装置の第1の実施形態のブロック図である。
【図2】本発明の硫酸イオンの除去方法を利用した硫酸イオン除去装置の第2の実施形態のブロック図である。
【符号の説明】
1 反応塔
2 イオン交換カラム
3 中和槽
4,6 pH計
7,11,14,17,19a,19b 可変バルブ
8,18a アルカリタンク
9 SO4 2-計
10 Ca2+計
12 Ca2+タンク
13 Al3+計
15 Al3+タンク
16 循環路
18b 酸タンク
20 カルシウム含有化合物タンク
Claims (1)
- 硫酸イオンを含む被処理水にカルシウム含有化合物及びアルミニウム含有化合物を添加して、pHを所定範囲に保って、前記硫酸イオンをエトリンジャイト(3CaSO 4 ・3CaO・Al 2 O 3 ・nH 2 O(ここでnは正の整数))様の硫酸含有化合物として析出させ、前記被処理水中の硫酸イオン濃度を低下させる硫酸イオンの除去方法であって、
前記カルシウム含有化合物が、炭酸カルシウム及び/又はヒドロキシアパタイトであり、
前記アルミニウム含有化合物が、カオリン、ハロイサイト及びアロフェンからなる群から選択される1以上の粘土化合物、又はアルミン酸ナトリウムであり、
前記カルシウム含有化合物及び前記アルミニウム含有化合物のうちの少なくともいずれか一方が晶析核となる不溶部分を有し、かつ、
前記pHの所定範囲が6〜9.5である
ことを特徴とする硫酸イオンの除去方法。
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