JP4210890B2 - 機械式過給機付き内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸入空気を過給する機械式過給機を備えた機械式過給機付き内燃機関の制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エンジンの高出力化等のために設けられる過給機は、排気圧力により駆動される排気タービン式過給機(ターボチャージャ)と、エンジン動力で直接駆動される機械式過給機(スーパーチャージャ)とに大別され、機械式過給機は、排気タービン式過給機のようなターボラグ(ターボの応答遅れ)がないため、加速応答性や低速時の過給特性に優れるという利点がある。機械式過給機は、スロットルバルブの下流側に設けられて、スロットルバルブを通過した吸入空気を過給機で加圧してシリンダ内に充填するので、エンジン制御パラメータとして用いる吸気圧としては、過給機下流側に設けた圧力センサで、加圧後の吸気圧(過給圧)を検出するようにしている。
【0003】
近年の自動車は、燃料タンクから蒸発する燃料蒸発ガス(エバポガス)が大気中に放出されるのを防止するために、燃料蒸発ガスをキャニスタ内に吸着して、エンジン運転状態に応じてキャニスタ内に吸気圧を作用させてキャニスタ内の燃料蒸発ガスを吸気管内にパージ(放出)するようにしているが、過給機付きエンジンでは、過給動作中は、過給機下流側よりも過給機上流側の方が吸気圧が低くなるため、燃料蒸発ガスのパージ通路を過給機の上流側の吸気管に接続するようにしている。
【0004】
このような燃料蒸発ガスパージシステムでは、燃料蒸発ガスパージ実行中に、吸気管内に吸入される燃料蒸発ガスパージ量が過給機上流側の吸気圧に応じて変化するため、パージガス中に含まれる燃料量を考慮して空燃比を精度良く制御するためには、過給機上流側の吸気圧を検出する必要がある。そのために、過給機下流側の圧力センサの他に、過給機上流側にも圧力センサを設ける構成にすると、吸気系に2つの圧力センサを設けることになり、コストアップとなる。
【0005】
そこで、特開平4−28412号公報に示すように、1つの圧力センサの圧力導入管を電磁切換弁を介して2本の導入管に分岐して、各導入管をそれぞれ過給機の上流側と下流側に接続し、圧力センサに導入する圧力を電磁切換弁で切り換えることで、過給機の上流側の吸気圧と下流側の吸気圧を1つの圧力センサで選択的に検出できるようにしたものがある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記公報の構成では、圧力センサと過給機の上流側とを接続する圧力導入管や電磁切換弁を追加する必要があるため、部品点数が増加して構成が複雑化し、コストアップするという事情は変わらない。
【0007】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、従ってその目的は、構成簡単化、低コスト化の要求を満たしながら、過給機上流側の吸気圧を検出することができる機械式過給機付き内燃機関の制御装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の機械式過給機付き内燃機関の制御装置は、圧力センサで機械式過給機の下流側の吸気圧(以下「過給機下流側吸気圧」という)を検出し、少なくとも過給機下流側吸気圧と機関回転速度とに基づいてスロットルバルブと機械式過給機との間の吸気圧(以下「過給機上流側吸気圧」という)を過給機上流側吸気圧推定手段によって推定することを第1の特徴とし、更に、前記機械式過給機をバイパスするバイパス通路と、前記バイパス通路を開閉するエアバイパスバルブとを備え、前記エアバイパスバルブの開閉状態に応じて過給機上流側吸気圧の推定方式を切り換えることを第1の特徴とする。この場合、請求項6のように、過給機下流側吸気圧と機関回転速度と過給機上流側吸気圧との関係を用いて、少なくとも圧力センサで検出した過給機下流側吸気圧と機関回転速度とに基づいて過給機上流側吸気圧を推定するようにしても良い。
【0009】
機械式過給機は、内燃機関の動力で直接駆動されるため、機械式過給機の回転速度(過給状態)は機関回転速度に応じて変化する。その結果、過給機上流側吸気圧と機関回転速度(過給状態)と過給機下流側吸気圧は、所定の相関関係を持って変化する。従って、予め、過給機上流側吸気圧と機関回転速度と過給機下流側吸気圧との関係を、実験、シミュレーション等で求めてマップ化又は数式化しておけば、過給機下流側吸気圧と機関回転速度から過給機上流側吸気圧を推定することができる。この構成では、過給機上流側吸気圧を検出するための新たな部品を必要としないため、従来よりも部品点数を削減して構成を簡単化することができ、低コスト化の要求を満たすことができる。
【0010】
この場合、機械式過給機をバイパスするバイパス通路と、このバイパス通路を開閉するエアバイパスバルブとを設けたシステムでは、エアバイパスバルブの開閉状態によって機械式過給機を通過する過給空気量とバイパス空気量との割合が変化するため、エアバイパスバルブの開閉状態によって過給機上流側吸気圧と機関回転速度と過給機下流側吸気圧との関係が変化する。
【0011】
そこで、請求項1のように、エアバイパスバルブの開閉状態に応じて過給機上流側吸気圧の推定方式を切り換えるようにすると良い。このようにすれば、エアバイパスバルブの開閉状態によって過給機上流側吸気圧と機関回転速度と過給機下流側吸気圧との関係が変化するのに対応して過給機上流側吸気圧の推定方式を適正な推定方式に切り換えることができる。
【0012】
この場合、過給機下流側吸気圧を利用してエアバイパスバルブを開閉制御するシステムでは、過給機下流側吸気圧に応じてエアバイパスバルブの開閉状態が自動的に切り換わるため、請求項2のように、過給機下流側吸気圧に応じて過給機上流側吸気圧の推定方式を切り換えるようにしても良い。このようにすれば、エアバイパスバルブの開閉状態を直接検出しなくても、エアバイパスバルブの開閉状態によって過給機上流側吸気圧と機関回転速度と過給機下流側吸気圧との関係が変化するのに対応して過給機上流側吸気圧の推定方式を適正な推定方式に切り換えることができる。
【0013】
更に、過給機下流側吸気圧と大気圧の差圧を利用してエアバイパスバルブを開閉制御するシステムでは、大気圧が変化すると、エアバイパスバルブの開閉状態が切り換わるときの過給機下流側吸気圧、つまり、過給機上流側吸気圧の推定方式を切り換える際の判定圧力も変化する。
【0014】
このような事情を考慮して、請求項3のように、エアバイパスバルブを過給機下流側吸気圧と大気圧の差圧を利用して開閉制御するシステムでは、過給機下流側吸気圧に応じて過給機上流側吸気圧の推定方式を切り換える際の判定圧力を、大気圧に応じて設定すると良い。このようにすれば、大気圧の変化に応じて判定圧力を適正値に設定することができる。
【0015】
ところで、本発明者の研究結果によれば、過給機下流側吸気圧が判定圧力より低い領域では、図4に示すように、過給機下流側吸気圧に対する過給機上流側吸気圧の変化特性がほぼリニアになるが、過給機下流側吸気圧が判定圧力以上の領域では、この過給機上流側吸気圧の変化特性がリニアにならず、しかも、その変化特性が大気圧によっても異なってくる。
【0016】
従って、過給機下流側吸気圧が判定圧力以上の領域では、過給機上流側吸気圧を推定するパラメータとして、過給機下流側吸気圧と機関回転速度の他に、大気圧を追加しても良いが、請求項4のように、過給機下流側吸気圧と判定圧力との差圧と、大気圧と、機関回転速度とに基づいて過給機上流側吸気圧を推定するようにしても良い。本発明者の研究結果によれば、過給機下流側吸気圧が判定圧力以上の領域では、過給機上流側吸気圧を推定するパラメータとして、過給機下流側吸気圧の代わりに、過給機下流側吸気圧と判定圧力との差圧を用いた方が、大気圧によって変化する過給機上流側吸気圧の変化特性をより精度良くマップや数式に表すことができ、過給機上流側吸気圧を精度良く推定することができる。
【0017】
前述したように、過給機下流側吸気圧(又は過給機下流側吸気圧と大気圧との差圧)を利用してエアバイパスバルブを開閉制御するシステムでは、過給機下流側吸気圧(又は差圧)に応じてエアバイパスバルブの開閉状態が切り換わるが、エアバイパスバルブの開閉制御に用いる圧力を制御する電磁弁を設けたシステムでは、過給機下流側吸気圧や大気圧とは関係なく、電磁弁によってエアバイパスバルブを任意に開閉制御することが可能である。
【0018】
従って、請求項5のように、エアバイパスバルブの開閉制御に用いる圧力を制御する電磁弁を設けたシステムでは、電磁弁の制御状態に応じて過給機上流側吸気圧の推定方式を切り換えるようにしても良い。このようにすれば、電磁弁の制御状態によってエアバイパスバルブの開閉状態が切り換わるのに対応して過給機上流側吸気圧の推定方式を適正な推定方式に切り換えることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
[実施形態(1)]
以下、本発明の実施形態(1)を図1乃至図4に基づいて説明する。まず、図1に基づいてエンジン制御システム全体の概略構成を説明する。内燃機関であるエンジン11の吸気管12の最上流部には、エアクリーナ13が設けられ、このエアクリーナ13の下流側には、スロットルバルブ14と、スロットル開度を検出するスロットル開度センサ15と、スロットルバルブ14をバイパスする空気量を制御するアイドルスピードコントロールバルブ16とが設けられている。
【0020】
更に、スロットルバルブ14の下流側には、吸入空気を過給する機械式過給機17(スーパーチャージャ)が設けられている。この機械式過給機17は、エンジン11の動力で直接駆動される。また、機械式過給機17の下流側には、サージタンク18が設けられ、このサージタンク18に、機械式過給機17の下流側の吸気圧(過給機下流側吸気圧)を検出する圧力センサ19と、吸気温を検出する吸気温センサ20とが設けられている。
【0021】
また、吸気管12には、機械式過給機17をバイパスするバイパス通路21が設けられ、このバイパス通路21の途中に、バイパス通路21を開閉するエアバイパスバルブ22が設けられている。このエアバイパスバルブ22の内部は、ダイアフラム23によって上側気圧室24と下側気圧室25とが仕切り形成されると共に、バイパス空気通過ポート26を開閉する弁体27がダイアフラム23に連結され、上側気圧室24内のコイルスプリング28によってダイアフラム23を介して弁体27がバイパス空気通過ポート26を閉弁する方向に付勢されている。上側気圧室24には、常時、過給機17下流側の吸気圧が導入される。一方、下側気圧室25に導入される圧力は、電磁三方弁29(電磁弁)のオン/オフによって切り換えられ、電磁三方弁29のオフ時には、下側気圧室25に大気圧が導入され、電磁三方弁29がオンに切り換えられると、下側気圧室25に過給機17下流側の吸気圧が導入される。
【0022】
サージタンク18には、エンジン11の各気筒に空気を導入する吸気マニホールド30が設けられ、各気筒の吸気マニホールド30の吸気ポート近傍に、燃料を噴射する燃料噴射弁31が取り付けられている。燃料タンク32内から燃料ポンプ33で汲み上げられた燃料が、燃料配管34を介して燃料噴射弁31に供給される。また、各気筒のシリンダヘッドに取り付けられた点火プラグ35には、点火タイミング毎に点火装置36で発生した高電圧が印加される。また、エンジン11のシリンダブロックには、冷却水温を検出する水温センサ37、エンジン回転速度を検出するクランク角センサ38、ノッキングを検出するノックセンサ39等が取り付けられている。
【0023】
一方、エンジン11の排気管40の途中には、排出ガスを浄化する三元触媒等の触媒41が設けられ、この触媒41の上流側に、排出ガスの空燃比又はリッチ/リーンを検出する空燃比センサ42(リニアA/Fセンサ、酸素センサ等)が設けられている。
【0024】
また、燃料タンク32には、燃料蒸発ガス通路43を介してキャニスタ44が接続され、このキャニスタ44に吸着された燃料蒸発ガスを吸気系にパージ(放出)するためのパージ通路45が、スロットルバルブ14と機械式過給機17との間の吸気管12に接続されている。このパージ通路45の途中には、パージ流量を調整するパージ制御弁46が設けられている。
【0025】
また、エンジン制御回路(以下「ECU」と表記する)47の回路基板には、大気圧を検出する大気圧センサ48が設けられている。これら各種センサの出力信号は、ECU47に入力される。このECU47は、マイクロコンピュータを主体として構成され、内蔵されたROM(記憶媒体)に記憶された各種のエンジン制御プログラムを実行することで、エンジン11の運転を制御する。
【0026】
エンジン運転中は、エンジン動力で機械式過給機17が駆動されると共に、後述するエアバイパスバルブ22の開閉制御によって、バイパス通路21を流れるバイパス空気量と、機械式過給機17を通過する過給空気量との割合が制御されて、過給圧が制御される。
【0027】
通常時は、ECU47によって電磁三方弁29がオフ状態に維持されて、エアバイパスバルブ22の下側気圧室25に大気圧PAが導入される。この場合、上側気圧室24に導入される過給機17下流側の吸気圧PMが、図3に示す判定圧力PMJGよりも小さい領域(低負荷領域)では、ダイアフラム23が上方(開側)に押されて弁体27が開弁状態に保持され、エアバイパスバルブ22が全開状態に保持されて、過給効果が最も小さくなる。ここで、判定圧力PMJGは、エアバイパスバルブ22が全開状態から閉じ始める吸気圧PMであり、エアバイパスバルブ22の下側気圧室25に導入される大気圧PAから所定値(コイルスプリング28等による閉弁方向の機械的なセット荷重)を差し引いた圧力が判定圧力PMJGとなる。図3及び図4の吸気圧変化特性図においては、変曲点の吸気圧PMが判定圧力PMJGとなる。
【0028】
一方、エアバイパスバルブ22の上側気圧室24に導入される過給機17下流側の吸気圧PMが判定圧力PMJG以上の領域(高負荷領域)では、過給機17下流側の吸気圧PMが大きくなるに従って、ダイアフラム23が下方(閉側)に押されて弁体27が閉弁方向に徐々に移動し、エアバイパスバルブ22が全開状態から徐々に閉じられて最終的に全閉状態となり、過給圧が高められる。
【0029】
また、低負荷領域でも過給圧が要求される場合、又は、高負荷領域で過給圧を下げる必要がある場合は、ECU47によって電磁三方弁29がオン状態に切り換えられて、エアバイパスバルブ22の下側気圧室25に過給機17下流側の吸気圧PMが導入される。この場合、図3に示すように、過給機17下流側の吸気圧PMが低い領域(低負荷領域)では、ダイアフラム23が下方(閉側)に押されて弁体27が閉弁し、エアバイパスバルブ22が閉じられて過給圧が上げられる。一方、過給機17下流側の吸気圧PMが高い領域(高負荷領域)では、エアバイパスバルブ22の下側気圧室25に過給機17下流側の吸気圧PMが導入されると、ダイアフラム20が上方(開側)に押されて弁体27が開弁し、エアバイパスバルブ22が開かれて、過給圧が下げられる。
【0030】
また、ECU47は、エンジン運転状態に応じてパージ制御弁46の開度(デューティ比)を制御して、キャニスタ44内の燃料蒸発ガスのパージ量を制御する。この場合、過給機17の上流側の吸気圧PXに応じて吸気管12内に導入される燃料蒸発ガスパージ量が変化するため、パージガス中に含まれる燃料量を考慮して空燃比を精度良く制御するためには、過給機17上流側の吸気圧PXを検出する必要がある。
【0031】
そこで、ECU47は、図2の過給機上流側吸気圧推定プログラムを実行することで、過給機17下流側の吸気圧PMと、過給機17の過給状態を反映するパラメータであるエンジン回転速度NE等に基づいて過給機17上流側の吸気圧PXを推定する。その際、図3に示すように、電磁三方弁29のオン時とオフ時とで、過給機17下流側の吸気圧PMに対する過給機17上流側の吸気圧PXの変化特性が異なるため、電磁三方弁29のオン時とオフ時とで、過給機17上流側の吸気圧PXの推定方式を切り換える。
【0032】
更に、電磁三方弁29がオフされている時は、過給機17下流側の吸気圧PMに対する過給機17上流側の吸気圧PXの変化特性が、エアバイパスバルブ22の開閉状態が切り換わる圧力(判定圧力PMJG)を境にして大きく変化するため、過給機17下流側の吸気圧PMが判定圧力PMJGよりも低い領域か否かによって、過給機17上流側の吸気圧PXの推定方式を切り換える。
【0033】
以下、図2の過給機上流側吸気圧推定プログラムの具体的な処理内容を説明する。図2の過給機上流側吸気圧推定プログラムは、所定時間毎又は所定クランク角毎に実行され、特許請求の範囲でいう過給機上流側吸気圧推定手段に相当する役割を果たす。本プログラムが起動されると、まず、ステップ101で、エンジン運転状態(エンジン回転速度NE、過給機下流側吸気圧PM、大気圧PA、冷却水温TW等)を検出し、次のステップ102で、電磁三方弁29がオフされているか否かを判定する。
【0034】
電磁三方弁29がオフされている場合は、図3に示すように、過給機17下流側の吸気圧PMに対する過給機17上流側の吸気圧PXの変化特性が、判定圧力PMJGを境にして大きく変化すると共に、この判定圧力PMJGが、図4に示すように、大気圧PAによって変化するため、まず、ステップ103で、判定圧力PMJGを、大気圧PAから所定値(コイルスプリング28等によって定まる値)を差し引いて求める。
PMJG=PA−所定値
【0035】
この後、ステップ104に進み、現在の過給機17下流側の吸気圧PMが判定圧力PMJGよりも低いか否かを判定する。過給機17下流側の吸気圧PMが判定圧力PMJGよりも低い領域(エアバイパスバルブ22が全開状態の領域)では、図3に示すように、過給機17下流側の吸気圧PMとエンジン回転速度NEに応じて過給機17上流側の吸気圧PXが変化するため、ステップ105に進み、第1の算出方法で、過給機17下流側の吸気圧PMとエンジン回転速度NEに基づいて過給機17上流側の吸気圧PXを算出する。
【0036】
この第1の算出方法は、予め、実験、シミュレーション等によって、電磁三方弁29のオフ時に過給機17下流側の吸気圧PMが判定圧力PMJGよりも低い領域にある場合の過給機17下流側の吸気圧PMとエンジン回転速度NEと過給機17上流側の吸気圧PXとの関係を求めて、過給機17上流側の吸気圧PXを算出する二次元マップ又は数式を作成し、この二次元マップ又は数式により、現在の過給機17下流側の吸気圧PMとエンジン回転速度NEに応じた過給機17上流側の吸気圧PXを算出する。
PX=f1 (PM,NE)
【0037】
これに対して、過給機17下流側の吸気圧PMが判定圧力PMJG以上の領域(エアバイパスバルブ22が閉じ始めから全閉状態の領域)では、図4に示すように、大気圧PAによって過給機17下流側の最大吸気圧が変化すると共に、この最大吸気圧と判定圧力PMJGの差圧も変化して、過給機17下流側の吸気圧PMと過給機17上流側の吸気圧PXとの関係が変化するため、過給機17上流側の吸気圧PXを推定するパラメータとして、過給機17下流側の吸気圧PMと判定圧力PMJGとの差圧と、大気圧PAと、エンジン回転速度NEを用いることが望ましい。
【0038】
そこで、現在の過給機17下流側の吸気圧PMが判定圧力PMJG以上の場合は、ステップ106に進み、大気圧PAに応じた大気圧換算係数KPAを算出した後、次のステップ107で、過給機17下流側の吸気圧PMと判定圧力PMJGの差圧(PM−PMJG)に大気圧換算係数KPAを乗算して、差圧(PM−PMJG)を基準大気圧(例えば100kPa)の状態下での基準差圧DPMに換算する。
DPM=KPA×(PM−PA)
【0039】
この後、ステップ108に進み、第2の算出方法で、過給機17上流側の吸気圧PXを算出する。この第2の算出方法では、まず、基準差圧DPMとエンジン回転速度NEに基づいて、大気圧PAと過給機17上流側の吸気圧PXとの差圧(PA−PX)を算出する。つまり、予め、実験、シミュレーション等によって、電磁三方弁29のオフ時に過給機17下流側の吸気圧PMが判定圧力PMJG以上の領域にある場合の基準差圧DPMとエンジン回転速度NEと差圧(PA−PX)との関係を求めて、差圧(PA−PX)を算出する二次元マップ又は数式を作成し、このマップ又は数式により、現在の基準差圧DPMとエンジン回転速度NEに応じた大気圧PAと過給機17上流側の吸気圧PXとの差圧(PA−PX)を算出する。
PA−PX=f2 (DPM,NE)
【0040】
この差圧(PA−PX)から次式により過給機17上流側の吸気圧PXを求める。
PX=PA−f2 (DPM,NE)
【0041】
一方、上記ステップ102で、電磁三方弁29がオンと判定された場合は、図3に示すように、過給機17下流側の吸気圧PMの全領域で、過給機17下流側の吸気圧PMとエンジン回転速度NEに応じて過給機17上流側の吸気圧PXが変化するため、ステップ109に進み、第3の算出方法で、過給機17下流側の吸気圧PMとエンジン回転速度NEに基づいて過給機17上流側の吸気圧PXを算出する。この第3の算出方法は、予め、実験、シミュレーション等によって、電磁三方弁29のオン時の過給機17下流側の吸気圧PMとエンジン回転速度NEと過給機17上流側の吸気圧PXとの関係を求めて、過給機17上流側の吸気圧PXを算出する二次元マップ又は数式を作成し、このマップ又は数式により、現在の過給機17下流側の吸気圧PMとエンジン回転速度NEに応じた過給機17上流側の吸気圧PXを算出する。
PX=f3 (PM,NE)
【0042】
以上説明した本実施形態(1)によれば、過給機17下流側の吸気圧PMと、機械式過給機17の過給状態を反映するパラメータであるエンジン回転速度NE等に基づいて過給機17上流側の吸気圧PXを推定するようにしたので、新たに部品を追加することなく、過給機17上流側の吸気圧PXを推定することができて、部品点数を削減することができ、構成簡単化及び低コスト化を実現することができる。
【0043】
また、本実施形態(1)では、電磁三方弁29のオン時とオフ時とで、過給機17上流側の吸気圧PXの推定方式を切り換えるようにしたので、電磁三方弁29のオン時とオフ時とで、過給機17下流側の吸気圧PMに対する過給機17上流側の吸気圧PXの変化特性が変化するのに対応して過給機17上流側の吸気圧PXの推定方式を適正な推定方式に切り換えることができる。
【0044】
しかも、電磁三方弁29がオフされている時は、過給機17下流側の吸気圧PMが、判定圧力PMJG(エアバイパスバルブ22の開閉状態が切り換わる圧力)よりも低い領域か否かによって、過給機17上流側の吸気圧PXの推定方式を切り換えるようにしたので、エアバイパスバルブ22の開閉状態を直接検出しなくても、エアバイパスバルブ22の開閉状態によって過給機17下流側の吸気圧PMに対する過給機17上流側の吸気圧PXの変化特性が変化するのに対応して過給機17上流側の吸気圧PXの推定方式を適正な推定方式に切り換えることができる。
【0045】
更に、本実施形態(1)では、大気圧PAが変化すると、判定圧力PMJG(エアバイパスバルブ22の開閉状態が切り換わる圧力)も変化する特性を考慮して、判定圧力PMJGを大気圧PAに応じて設定するようにしたので、大気圧PAの変化に応じて判定圧力PMJGを適正値に設定することができ、過給機17上流側の吸気圧PXの推定精度を更に向上することができる。
【0046】
尚、上記実施形態(1)では、エアバイパスバルブ22の下側気圧室25に導入する圧力を、電磁三方弁29で切り換える構成としたが、電磁三方弁29を省略して、エアバイパスバルブ22の下側気圧室25に常時、大気圧を導入する構成としても良く、この場合は、図2のステップ102,109を省略したプログラムを実行すれば良い。
【0047】
[実施形態(2)]
上記実施形態(1)では、過給機17下流側の吸気圧を利用して開閉制御されるダイアフラム式のエアバイパスバルブ22を用いたが、本発明の実施形態(2)では、電子制御式のエアバイパスバルブ(電磁弁等)を用いて、吸気圧に関係なく任意にエアバイパスバルブの開閉を制御できる構成としている。その他のシステム構成は、上記実施形態(1)と同じである。
【0048】
本実施形態(2)では、図5の過給機上流側吸気圧推定プログラムを実行する。本プログラムでは、まず、ステップ201で、エンジン運転状態を検出した後、ステップ202に進み、電子制御式のエアバイパスバルブが全開状態であるか否かを判定する。
【0049】
エアバイパスバルブが全開状態の場合は、ステップ203に進み、第4の算出方法で、過給機17下流側の吸気圧PMとエンジン回転速度NEと大気圧PAに基づいて過給機17上流側の吸気圧PXを算出する。この算出方法は、予め、実験、シミュレーション等によって、エアバイパスバルブ全開時の過給機17下流側の吸気圧PMとエンジン回転速度NEと大気圧PAと過給機17上流側の吸気圧PXとの関係を求めて、過給機17上流側の吸気圧PXを算出する二次元マップ又は数式を作成し、このマップ又は数式により、現在の過給機17下流側の吸気圧PMとエンジン回転速度NEと大気圧PAに応じた過給機17上流側の吸気圧PXを算出する。
PX=f4 (PM,NE,PA)
【0050】
これに対して、エアバイパスバルブが全閉状態の場合は、ステップ204に進み、第5の算出方法で、過給機17下流側の吸気圧PMとエンジン回転速度NEと大気圧PAに基づいて過給機17上流側の吸気圧PXを算出する。この算出方法は、予め、実験、シミュレーション等によって、エアバイパスバルブ全閉時の過給機17下流側の吸気圧PMとエンジン回転速度NEと大気圧PAと過給機17上流側の吸気圧PXとの関係を求めて、過給機17上流側の吸気圧PXを算出する二次元マップ又は数式を作成し、このマップ又は数式により、現在の過給機17下流側の吸気圧PMとエンジン回転速度NEと大気圧PAに応じた過給機17上流側の吸気圧PXを算出する。
PX=f5 (PM,NE,PA)
【0051】
以上説明した本実施形態(2)によれば、電磁制御式のエアバイパスバルブの開閉状態によって過給機17下流側の吸気圧PMとエンジン回転速度NEと大気圧PAと過給機17上流側の吸気圧PXとの関係が変化するのに対応して過給機17上流側の吸気圧PXの推定方式を適正な推定方式に切り換えることができ、過給機17上流側の吸気圧PXを精度良く推定することができる。
【0052】
[その他の実施形態]
上記実施形態(1)の構成において、電磁三方弁29をデューティ制御して、そのデューティ比に応じてエアバイパスバルブ22の開度を複数段階に制御する場合や、上記実施形態(2)の構成において、電子制御式のエアバイパスバルブの開度を複数段階に制御する場合は、予め、エアバイパスバルブの各開度毎の過給機17上流側の吸気圧PXの変化特性を求めておき、これらの変化特性を補間することによって過給機17上流側の吸気圧PXを算出するようにしても良い。
【0053】
また、図1のシステム構成では、スロットルバルブ14と機械式過給機17との間の吸気管12にパージ通路45を接続したが、ブレーキブースタの吸気圧導入パイプを接続するようにしても良い。この場合も、過給機17上流側の吸気圧PXを上記実施形態の方法で推定すれば、ブレーキブースタに導入する吸気圧PXが適正範囲内であるか否かを判断することができ、もし、ブレーキブースタの吸気圧導入時期に吸気圧PXが適正範囲でなければ、吸気圧PXを適正範囲内に調整するようにエアバイパスバルブの開閉を制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態(1)を示すエンジン制御システム全体の概略構成図
【図2】実施形態(1)の過給機上流側吸気圧推定プログラムの処理の流れを示すフローチャート
【図3】電磁三方弁のオン時とオフ時の過給機上流側の吸気圧変化特性を示す図
【図4】大気圧の変化に対する過給機上流側の吸気圧変化特性を示す図
【図5】本発明の実施形態(2)の過給機上流側吸気圧推定プログラムの処理の流れを示すフローチャート
【符号の説明】
11…エンジン(内燃機関)、12…吸気管(吸気通路)、14…スロットルバルブ、17…機械式過給機、19…圧力センサ、21…バイパス通路、22…エアバイパスバルブ、23…ダイアフラム、24…上側気圧室、25…下側気圧室、29…電磁三方弁(電磁弁)、44…キャニスタ、45…パージ通路、46…パージ制御弁、47…ECU(過給機上流側吸気圧推定手段)、48…大気圧センサ。
Claims (6)
- スロットルバルブよりも下流側の吸気通路に、吸入空気を過給する機械式過給機と、この機械式過給機の下流側の吸気圧(以下「過給機下流側吸気圧」という)を検出する圧力センサとを設けた機械式過給機付き内燃機関の制御装置において、
少なくとも前記圧力センサで検出した過給機下流側吸気圧と機関回転速度とに基づいて前記スロットルバルブと前記機械式過給機との間の吸気圧(以下「過給機上流側吸気圧」という)を推定する過給機上流側吸気圧推定手段と、
前記機械式過給機をバイパスするバイパス通路と、
前記バイパス通路を開閉するエアバイパスバルブとを備え、
前記過給機上流側吸気圧推定手段は、前記エアバイパスバルブの開閉状態に応じて過給機上流側吸気圧の推定方式を切り換えることを特徴とする機械式過給機付き内燃機関の制御装置。 - 前記エアバイパスバルブは、過給機下流側吸気圧を利用して開閉制御され、
前記過給機上流側吸気圧推定手段は、前記圧力センサで検出した過給機下流側吸気圧に応じて過給機上流側吸気圧の推定方式を切り換えることを特徴とする請求項1に記載の機械式過給機付き内燃機関の制御装置。 - 前記エアバイパスバルブは、過給機下流側吸気圧と大気圧との差圧を利用して開閉制御され、
前記過給機上流側吸気圧推定手段は、前記圧力センサで検出した過給機下流側吸気圧に応じて過給機上流側吸気圧の推定方式を切り換える際の判定圧力を、大気圧に応じて設定することを特徴とする請求項2に記載の機械式過給機付き内燃機関の制御装置。 - 前記過給機上流側吸気圧推定手段は、前記圧力センサで検出した過給機下流側吸気圧が前記判定圧力以上のときに、前記過給機下流側吸気圧と前記判定圧力との差圧と、大気圧と、機関回転速度とに基づいて過給機上流側吸気圧を推定することを特徴とする請求項3に記載の機械式過給機付き内燃機関の制御装置。
- 前記エアバイパスバルブの開閉制御に用いる圧力を制御する電磁弁を備え、
前記過給機上流側吸気圧推定手段は、前記電磁弁の制御状態に応じて過給機上流側吸気圧の推定方式を切り換えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の機械式過給機付き内燃機関の制御装置。 - 前記過給機上流側吸気圧推定手段は、過給機下流側吸気圧と機関回転速度と過給機上流側吸気圧との関係を用いて、少なくとも前記圧力センサで検出した過給機下流側吸気圧と機関回転速度とに基づいて過給機上流側吸気圧を推定することを特徴とする請求項1に記載の機械式過給機付き内燃機関の制御装置。
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