JP4210442B2 - 木質セメント板 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は使用済み切符を補強材として再利用した木質セメント板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
使用済み切符は最近解繊して封筒、名刺、トイレットペーパー等の再生パルプ材料として再利用しようとする試みがなされている。しかしこれらの用途では上記使用済み切符の大部分を再利用するまでには至らず、大部分は今だに焼却処理されているのが現状である。
そこで使用済み切符を解繊して木質セメント板の補強材として再利用する試みがなされている。上記使用済み切符を解繊するには、従来、乾式解繊法か湿式解繊法が適用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
使用済み切符は裏面に磁性層としてフェライト塗布層が形成されているので、湿式解繊法ではフェライト塗布層と紙層とを分離することが難しく、均一な解繊が出来ない。そのため木質セメント板表面にフェライト塗布層を有する粗大解繊物が存在すると、塗料を塗布した際に塗膜にはじきが発生するおそれがある。また乾式解繊法によれば、解繊された繊維が細かくなりすぎて、補強効果に乏しくなってしまうという問題点がある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記従来の課題を解決するための手段として、水硬性無機材料の硬化物マトリクス中に、使用済み切符から得られた再生パルプAと、他のパルプBとを分散含有した木質セメント板であって、該再生パルプAと他のパルプBとの混合物は、使用済み切符を乾式粉砕解繊機で500μm〜1500μmのサイズに乾式粗粉砕し、該乾式粗粉砕物と他のパルプBとを混合し、更に湿式解繊機で湿式解繊することによって製造されており、カナディアンフリーネスが300〜350 cc であり、該硬化物マトリクス中に5〜20重量%含まれる木質セメント板を提供するものである。該パルプ混合物中に該再生パルプAは45重量%以下の量で含まれることが好ましい。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明を以下に詳細に説明する。
〔水硬性無機材料〕
本発明に用いられるセメント系無機材料としては、ポルトランドセメント、高炉スラグセメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、アルミナセメント等のセメント類がある。上記セメント類にはシリカ粉、ケイ砂、ケイ石粉、水ガラス、シリカヒューム、シラスバルーン、パーライト、ケイ藻土、ドロマイト等のケイ酸含有物質が混合されてもよい。
【0006】
〔補強材〕
本発明では補強材として使用済み切符から製造した再生パルプAと新聞紙や雑誌等の紙廃棄物から得られた故紙パルプやクラフトパルプ等の他のパルプBとを併用する。上記パルプ以外に木粉、木片、木質繊維束等の木質補強材や有機繊維、無機繊維等が使用されてもよい。
使用済み切符からパルプAと他のパルプBとの混合物を製造するには、上記使用済み切符をまずターボミル、ハンマーミル等の乾式粉砕解繊機で粗粉砕する。
【0007】
上記乾式粗粉砕において、乾式粗粉砕物のサイズは500μm〜1500μmとすることが望ましい。該乾式粉砕をこのような粗粉砕にとどめることで、最終的に得られる再生パルプAの繊維長が微細になり過ぎないようにする。
この乾式粗粉砕の段階では、フェライト層はまだ繊維に付着している。しかし衝撃力による粗粉砕によってフェライト層は繊維から分離し易い状態となっている。
該再生パルプAと該再生パルプA以外のパルプBとを混合する場合には、上記乾式粗粉砕物と他のパルプBとを共に湿式解繊する。上記湿式解繊にはディスク式解繊機、望ましくはダブルディスク式解繊機を使用する。
【0008】
上記したように粗粉砕物のサイズを500μm〜1500μmにとどめたことで、上記湿式解繊時にフィブリル化もおこし易く、補強効果に寄与する。また上記したように乾式粗粉砕によって、繊維から分離し易い状態となっているフェライト層が、湿式解繊時の摩擦力によって繊維と分離、粉砕される。
【0009】
上記使用済み切符の乾式粗粉砕物を更に湿式解繊した湿式解繊物とパルプBとを混合して湿式解繊してもよい。このような方法によって、再生パルプAと他のパルプBとが均一に混合される。
このような方法で得られた再生パルプAは湿式解繊後、他のパルプBと同様均一に解繊され、またフェライト塗布層の大塊は全く存在しない。
【0010】
〔第三成分〕
本発明の木質セメント板の成形材料には、上記以外の成分として、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、ギ酸カルシウム、酢酸カルシウム、アクリル酸カルシウム、水ガラス等のセメント硬化促進剤、バーミキュライト、ベントナイト等の鉱物粉末、ロウ、ワックス、パラフィン、シリコン、界面活性剤等の防水剤や撥水剤、発泡性熱可塑性プラスチックビーズ、プラスチック発泡体等が添加されてもよい。
また本発明では木質セメント板の廃材粉砕物であるリジェクトを使用してもよい。該リジェクトは衝撃式粉砕機および/または擦過式粉砕機で該木質セメント板廃材を平均粒径50〜150μm程度に粉砕することによって製造される。なお、これらの例示は本発明を限定するものではない。
【0011】
〔補強材の配合〕
本発明において、上記再生パルプA、または再生パルプAと他のパルプBとの混合物、あるいは再生パルプAと他の補強材との混合物、更には再生パルプAと他のパルプBと他の補強材との混合物からなる補強材の添加量は、木質セメント板中に5〜20重量%、好ましくは10〜15重量%になるように設定される。そして上記補強材中の45重量%以下が再生パルプAで置換されることが望ましい。
【0012】
〔木質セメント板の製造〕
上記水硬性無機材料、補強材、および所望なれば第三成分等は水に分散されてスラリーとするが、該原料混合物中における水硬性無機材料は40〜85重量%、補強材は上記したように10〜20重量%、その他の第三成分は15重量%以下含まれる。該スラリーの固形分濃度は通常10〜25重量%に設定される。
上記スラリーを抄造脱水して原料シート状体をフォーミングする。抄造法としてはフローオン法、丸網法、注型法等現行の抄造法のいずれもが使用される。このようにして抄造脱水された原料シート状体は通常1〜15層積層されて積層マットとする。
【0013】
上記抄造によって得られた積層マットは通常平プレス等によってプレスされて厚みを調節されると共に表面を平滑化あるいは所望により凹凸模様を付された後養生硬化される。養生は通常加熱・蒸気養生とオートクレーブ養生もしくは常圧養生の二段工程で行われる。一次養生である加熱・蒸気養生は通常65〜95℃、5〜10時間の条件で行われ、それに続く二次養生であるオートクレーブ養生は通常100〜200℃、5〜12時間、常圧養生の場合は40〜70℃、16時間以上の条件で行われる。
このようにして養生硬化された硬化体は乾燥、トリミング工程等を経て製品となる。
【0014】
〔実施例1〕パルプ混合物の製造
使用済み切符をターボミルによって乾式粉砕解繊し、800μm〜1200μm、平均1000μm長の粗粉砕解繊物を得た。
該粗粉砕解繊物と解繊長1〜3mmのクラフトパルプおよび古新聞紙からなるパルプBとを混合してダブルディスク式解繊機によって解繊し、カナディアンフリーネス300〜350ccのパルプ混合物を得た。
【0015】
〔実施例2〕
実施例1のパルプ混合物を補強材として使用して、表1に示す配合による原料混合物を水に投入して15重量%濃度のスラリーとし、該スラリーを使用して湿式抄造を行ない、得られた抄造マットを圧力4MPa で圧締し、一次養生80℃8時間、二次養生50℃24時間の条件で養生硬化することによって、木質セメント板試料を作成した。
【0016】
【表1】
【0017】
上記各試料について性能を測定した。その結果は表2に示される。
【表2】
【0018】
表2によれば、本発明の試料1〜5は、従来使用されている他のパルプBを使用した比較試料1に比して劣らない性能を示す。しかしパルプ混合物中の再生パルプAを45重量%を越えて使用した比較試料2では曲げ強度とヤング率が本発明の試料1〜5および比較試料1に比して劣ることが認められる。
【0019】
【発明の効果】
本発明では使用済み切符を乾式粗粉砕した後、湿式解繊するので補強効果に寄与する繊維が得られ、このようにして得られた再生パルプAには、フェライト層の大塊が存在しないのである程度多く添加しても、フェライト塗布層による塗膜のはじき現象の発生は解消される。
そして上記切符乾式粗粉砕物の湿式解繊は他のパルプBと共に行なうので、上記再生パルプAは他のパルプBと均一に混合される。
上記再生パルプAは木質セメント板に靱性を与え、また他のパルプBの代替品として機能し、原料コストを低減する。
したがって本発明では使用済み切符を大量有効再利用することが出来る。
Claims (2)
- 水硬性無機材料の硬化物マトリクス中に、使用済み切符から得られた再生パルプAと、他のパルプBとを分散含有した木質セメント板であって、
該再生パルプAと他のパルプBとの混合物は、使用済み切符を乾式粉砕解繊機で500μm〜1500μmのサイズに乾式粗粉砕し、該乾式粗粉砕物と他のパルプBとを混合し、更に湿式解繊機で湿式解繊することによって製造されており、カナディアンフリーネスが300〜350 cc であり、該硬化物マトリクス中に5〜20重量%含まれる
ことを特徴とする木質セメント板。 - 該パルプ混合物中に該再生パルプAは45重量%以下の量で含まれる
ことを特徴とする請求項1に記載の木質セメント板。
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