JP4208420B2 - インクジェット式印刷方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷媒体に直接印刷画像を形成する印刷方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
画像データ信号に基づき、印刷媒体に印刷画像を形成する印刷方法として、電子写真方式、昇華型及び溶融型熱転写方式、インクジェット方式などがある。電子写真方式は、感光体ドラム上に帯電及び露光により静電潜像を形成するプロセスを必要とし、システムが複雑となり高価な装置となる。熱転写方式は、装置は安価であるが、インクリボンを用いるため、ランニングコストが高くかつ廃材が出る。一方、インクジェット方式は、安価な装置で、且つ必要とされる画像部のみにインクを吐出し印刷媒体上に直接印刷を行うため、色剤を効率良く使用できランニングコストも安い。
【0003】
インクジェット方式として、例えば、電子写真学会編「イメージング part2 最新のハードコピープリンタ技術」第3章 写真工業出版社(1988)、小門宏編集「記録・記録技術ハンドブック」丸善株式会社(1992年)、等の成書に記載されているピエゾ方式、サーマルジェット方式、静電方式、放電方式等が使用できる。また、特開平10−175300号公報、特開平6−23986号公報、特開平5−131633号公報、特開平10−114073号公報、特開平10−34967号公報、特開平3−104650号公報、特開平8−300803号公報、等のそれらを応用または込み合わせた方式も好適に使用される。
【0004】
しかし、インクジェット方式は、滲み等に起因するドット外形の歪みやドット位置ズレによって画像のヌケ・ムラが発生し易く、また、印字時に物質移動を伴うために描画速度が遅い、という問題点がある。
【0005】
このため、描画速度を向上させる手段として、インク吐出量・吐出時間の調節等を利用して描画ドットの大きさを変化させ、必要階調数を保ったまま解像度を落とす試みがなされている。
【0006】
また、ドット位置ずれに因る問題点を解決する手段として、描画ドットの大きさを変化させて階調表現を行う画像形成方法を用いた装置が、例えば、特開平9−1866号公報に開示されている。この装置は、ブロック分割手段により分割された各ブロック内における画素の位置に対応する入出力特性をブロックごとに異ならせ、画像データの濃度レベルをドットの記録を行うための濃度レベルに変換し、同じ大きさのドットが記録される位置をブロックごとに変えて分散させ、目視による画像構造が目立つことなく、モアレの発生を少なくするようにしたものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記画像形成方法に関する従来技術は、基本的には、多値ディザ法を用いた擬似的な面積階調技術の一種であり、少ない離散的濃度レベルしか持たないものである。但し、上述の如き構成を採用したことにより、すなわち、記録ドットの大きさ、配置の規則性を極力弱めることにより、目視による画像構造が目立つことなく、モアレの発生を少なくするようにしたものである。
【0008】
より詳細には、画像データをR、G、Bの輝度データからC、M、Yの印刷の3原色の濃度データに変換し、このデータを基に、墨版生成および下色除去を行い、C、M、YおよびBK(黒色)データを生成する。更に、マスキング処理等の補正処理が施された後、階調処理が施される。階調処理は、前述のブロック内での各位置の画素を、例えば、奇数ラインと偶数ラインとに分けて、階調変換テーブルの特性を異ならせたものである。
【0009】
しかし、この技術では、階調変換テーブルの特性が単調なため、低濃度の記録画素が白地に形成される場合には、ザラツキが発生することは避けられないという問題点があった。また、この装置では、印刷対象は特性の安定しているものと仮定しているが、現実には、特性が必ずしも常に安定しているとは言い難い印刷対象への印刷を考慮する必要がある。つまり、インクジェット方式では、湿度・記録材料の表面荒さに依存するインクの滲み等による描画ドットの大きさ変動量の割合が、特に描画ドットが小さい場合に大きくなり、印刷結果が微妙に異なってくるという問題点がある。特に、写真画質の様な高度な画像情報を専用紙へ印刷する場合は滲みの発生も少ないが、通所の印刷用紙あるいは非吸収性媒体であるプラスチックシート等へ印刷する場合は高品位の画像が得られない。
【0010】
また、インクジェット方式は描画ドットの位置に誤差が発生し易く、特に描画ドットが小さい場合、ドット位置誤差のドット面積の偏りに対する影響は大きくなってしまう。そのため、小点によって構成される印刷画像の低濃度部ではドット位置ズレに起因する画像ムラが顕在化し易い。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、特性が必ずしも常に安定しているとは言い難い印刷対象への印刷にも使用可能であり、かつ高画質の記録画像を得るのに有効な画像形成方法を用いたインクジェット式印刷方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るインクジェット式印刷方法は、印刷媒体上に画像データの信号に基づき直接画像を形成し、該画像を定着することにより印刷物を作成するに際し、前記画像データの濃度レベルを記録ドットの大きさに変換して階調記録する画像形成方法を用い、前記印刷媒体への画像の形成をインクジェット方式で行うインクジェット式印刷方法において、前記画像形成方法が、前記画像データの濃度レベルを記録ドットの大きさに変換するときに、階調値と記録ドットの発生のためのエネルギーの関係を示す階調変換テーブルの特性曲線を少なくとも5ラインに設定し、中間調では、所定の階調値において、最大もしくは最小のエネルギーでないエネルギー値が少なくとも3種類に設定し、エネルギーが略最大になる印画点が存在する最小の階調値においてエネルギーが略最小である印画点の数を全印画点の数の半分以上に設定したものである。
【0013】
さらに、少なくとも各印刷色に対応する3種類以上の副走査周期を有し、各印刷色に対応して記録ドットの位置をそれぞれ変化させる。さらに、少なくとも一色の印画について、単位ブロック内の複数の印画点と特性曲線との関係が各ブロック毎に異ならせる。さらに、前記一色が最も低い濃度、すなわちYとする。
【0014】
また、本発明に係るインクジェット式印刷方法は、入力される画像データを大きさの異なる記録ドットに変換して階調記録する画像形成方法において、少なくとも二色の印画について、それぞれ単位ブロック内の要素数が異なり、かつこれら二色の単位ブロックの縦横長さをそれぞれ同一にする。
【0015】
さらに、上記各発明に係る画像形成方法において、少なくとも二色の印画について、それぞれ単位ブロック内の要素数が異なり、かつ単位ブロック内の複数の印画点と特性曲線との関係が各ブロック毎に異なり、かつまたこれら二色の単位ブロックの縦横長さをそれぞれ同一にしても良い。
【0016】
さらに、四色の印画について、前記少なくとも二色を除く他の一色が、最も低い濃度、すなわち、Yとする。
【0017】
本発明に係るインクジェット式印刷方法に用いる画像形成方法においては、階調値と記録ドットの発生のためのエネルギーの関係を示す階調変換テーブルの特性曲線を少なくとも5ラインに設定し、中間調では、所定の階調値において、最大もしくは最小のエネルギーでないエネルギー値が少なくとも3種類に設定することにより、滑らかな連続階調が得られ、さらに、エネルギーが略最大になる印画点が存在する最小の階調値において、エネルギーが略最小である印画点の数を全印画点の数の半分以上に設定することにより、低濃度の記録画素が白地に形成される場合にも、ザラツキの発生を著しく低減させることができる。
【0018】
なお、請求項において、「略最大」としたのは、各印刷色における最大階調での特性曲線のエネルギーを他の階調での特性曲線のエネルギーよりも高くすることを意味する。これは、「ベタ」のつぶれ性を向上させるために効果的である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るインクジェット式印刷方法に用いる画像形成方法を実現するためのカラー画像形成装置の概略構成を示す図である。図1において、10は前段のデジタルデータ出力装置、20は画像処理装置、30はインクジェット方式描画装置を示している。なお、画像処理装置20における画像処理の対象となるデータは、R、G、B各色8ビットの計24ビットである。
【0020】
画像処理装置20は、濃度変換部21、変換テーブル22、墨版生成および下色除去(UCR)部23、色補正部24、データセレクタ25、階調処理部26を有している。インクジェット方式描画装置30が起動されると、デジタルデータ出力装置10からデジタル画像データが画像処理装置20に出力される。
【0021】
画像処理装置20に入力された画像データ(R、G、Bの輝度データ)は、濃度変換部21で、変換テーブル22を用いて、印刷の3原色であるC、M、Yの濃度データに変換される。次に、C、M、Yの濃度データは、墨版生成およびUCR部23に送られ、下色除去および墨版生成が行われる。この結果、墨版生成およびUCR部23からは、C、M、YおよびBK(黒色)の濃度データが出力される。
【0022】
その後、C、M、Yの濃度データは色補正部24に入力され、マスキング等の処理が施される。なお、図1では、この処理の施されたC、M、Yの濃度データを、それぞれC’、M’、Y’と示している。C’、M’、Y’およびBKの濃度データは、次に、データセレクタ25により1色のデータのみが選択されて、階調処理部26に入力される。
【0023】
階調処理部26における処理内容は、入力データにモアレ防止のためのスクリーン角を導入する処理と、入力データを、後述する階調変換テーブルを用いて特別な濃度値に変換する処理である。モアレ防止のためのスクリーン角の導入処理については、従来から行われている処理と同様なので詳細は省略する。以下、階調変換テーブルを用いた変換処理について説明する。
【0024】
図2乃至図4に、階調変換特性の一例を示す。なお、図2はBK、図3はC、図4はMおよびYの各色の階調変換特性を示している。図2乃至図4において、横軸は入力画像の階調、縦軸は記録ドットの大きさに対応する記録パルス幅(時間)を示している。ここでは、入力画像の階調は、256レベル(0〜255)である。
【0025】
図2乃至図4に示される階調変換特性は、入力画像の階調値と記録ドットの発生のためのエネルギーの関係を示す特性曲線を少なくとも5ライン以上(図2ではA乃至Pの16ライン、図3ではA乃至Jの10ライン、図4ではA乃至Hの8ライン)に設定している。各ラインは、それぞれ記録ドットの発生閾値(ラインの最下部)からの、成長過程を指示するものとなっている。
【0026】
さらに、図2乃至図4に示される階調変換特性において、中間調領域では、所定の階調値において、最大もしくは最小エネルギー以外のエネルギー値を有する特性曲線が少なくとも3種類以上設定されている。また、最大階調(255)では、特性曲線のエネルギーが他の階調領域に比して若干高く設定されている(図2では190μs、図3では220μs、図4では300μs)。これにより、「ベタ」のつぶれ性が向上する。
【0027】
さらにまた、エネルギーが略最大になる印画点が存在する最小の階調値において、エネルギーが略最小である印画点の数が全印画点の数の半分以上に設定されている。
【0028】
図5乃至図7は、複数のエネルギー変換特性の中のどの変換曲線を選択するかを示すマトリクス(単位ブロック)であり、図5はBK、図6はC、図7はMのマトリクスである。各マトリクスはそれぞれ同一の縦横長さ、かつ副走査解像度の違いにより互いに異なるドット数から成る単位ブロックで構成されており、各ブロック内の相対位置関係によって規定される階調変換特性に従って階調変換される。その後、各階調に対してそれぞれ異なるパルス幅が割り当てられ、単位ブロック内の各印画点に印加されるエネルギーが決定される。
【0029】
各マトリクスにおいて、要素の値「X」はすべて階調に対して、エネルギーを殆んど印加しない印画点であり、「1」、「2」、「3」、…はそれぞれ図2乃至図4の特性曲線「A」、「B」、「C」、…に対応する印画点である。各色のマトリクスにおいて、主走査方向の解像度は600dpi、副走査方向の解像度は1200dpi(BK)、900dpi(C)、600dpi(M)であり、それらの要素数サイズは縦8ドット×横4ドット(BK)、縦6ドット×横4ドット(C)、縦4ドット×横4ドット(M)となっている。例えば、マトリクスBKは、副走査方向解像度が1200dpiであるから、150ブロック/インチの単位ブロックを構成した場合、単位ブロックには縦8ドット×横4ドットの32の印画点が存在するため、最大で32種類の階調変換特性が必要となる可能性がある。但し、同一の階調変換特性により変換される印画点が存在するため、32の印画点に対して17種類の階調変換特性が割り当てられている。この割り当ては、マトリクスBK、C、Mに対して一義的に行われ、マトリクスYに対して乱数的に行われる。
【0030】
なお、マトリクスYはマトリクスMと同じ要素数サイズ(縦4ドット×横4ドット)、同じ解像度(主走査方向600dpi、副走査方向600dpi)であるが、マトリクス要素の「X」以外の要素の位置がマトリクス毎に乱数的に異なるようにしたマトリクスで画像全体の印画点特性曲線を決定している。上述のように、各色マトリクスのサイズ及び解像度を設定すると、画像上でのマトリクスの実サイズ(要素数ではなく、実空間における長さ)は色によらず同一になる。
【0031】
このように、非常に多くの階調−印画エネルギー変換曲線(階調変換特性曲線)を設定し、中間調では、最大若しくは最小のエネルギーではない中間のエネルギー値の印画点が3種類以上に設定してある為、階調の連続性が容易に安定的に実現できる。
【0032】
以下に、各マトリクスの条件を示す。
マトリクスK
1.副走査解像度変換:600dpi/1200dpi
隣接補間(副走査方向隣接画素解像度値128階調以上)及び線形補間(副走査方向隣接画素解像度値128階調未満)を適用して元データ600dpiを1200dpiに変換
2.ブロック構成:副走査方向8ライン、主走査方向4ライン
3.ブロック内印画点数:32
4.階調変換特性種類:A〜P
5.印画点に対する階調変換特性の割り当て:一義的
6.階調変換:256階調/64階調
変換テーブルに従い元階調256を64階調に変換
7.パルス幅割り当て:変換テーブルに従い64階調を各パルス幅に割り当てる。
【0033】
マトリクスC
1.副走査解像度変換:600dpi/900dpi
隣接補間(副走査方向隣接画素解像度値128階調以上)及び線形補間(副走査方向隣接画素解像度値128階調未満)を適用して元データ600dpiを900dpiに変換
2.ブロック構成:副走査方向6ライン、主走査方向4ライン
3.ブロック内印画点数:24
4.階調変換特性種類:A〜L
5.印画点に対する階調変換特性の割り当て:一義的
6.階調変換:256階調/128階調
変換テーブルに従い元階調256を128階調に変換
7.パルス幅割り当て:変換テーブルに従い128階調を各パルス幅に割り当てる。
【0034】
マトリクスM
1.副走査解像度変換:変換せず
元データ600dpiのまま
2.ブロック構成:副走査方向4ライン、主走査方向4ライン
3.ブロック内印画点数:16
4.階調変換特性種類:A〜H
5.印画点に対する階調変換特性の割り当て:一義的
6.階調変換:256階調/128階調
変換テーブルに従い元階調256を128階調に変換
7.パルス幅割り当て:変換テーブルに従い128階調を各パルス幅に割り当てる。
【0035】
マトリクスY
1.副走査解像度変換:変換せず
元データ600dpiのまま
2.ブロック構成:副走査方向4ライン、主走査方向4ライン
3.ブロック内印画点数:16
4.階調変換特性種類:A〜H
5.印画点に対する階調変換特性の割り当て:印画点1〜8に各変換階調特性を排他的かつ乱数的に割り当てる。
6.階調変換:256階調/128階調
変換テーブルに従い元階調256を128階調に変換
7.パルス幅割り当て:変換テーブルに従い128階調を各パルス幅に割り当てる。
【0036】
以下、図8乃至図10を参照して階調処理部26の処理について説明する。図8はBKにおけるハイライト(64)、図9はBKにおける中間調(128)および図10はBKにおけるシャドー(192)の記録ドットの拡大図を示しており、(a)が実施の形態に係る記録ドット、(b)が従来の記録ドットを示している。
【0037】
各図において(a)、(b)の記録ドットの配列を比較すると、図8では、大きい記録ドットにより階調を再現し、かつ記録ドットの数が少ないため、ハイライトにおいて生じ易い記録ドットの抜けが目立たない。これにより、低濃度の記録画素が白地に形成される場合にも、ザラツキが発生することは避けられ、再現性が向上するという効果が得られる。
【0038】
以下、階調変換テーブルを用いた変換処理の他の例について説明する。図11乃至図14は、階調変換特性の他の例を示しており、図11はBK、図12はC、図13はM、図14はYの階調変換特性を示している。図11乃至図14において、横軸は入力画像の階調、縦軸は記録ドットの大きさに対応する記録パルス幅(時間)を示しており、入力画像の階調は、256レベル(0〜255)である。
【0039】
図11乃至図14に示される階調変換特性は、図2乃至図4に示した階調変換特性と同様に、入力画像の階調値と記録ドットの発生のためのエネルギーの関係を示す特性曲線を少なくとも5ライン以上(図11ではA乃至P及びXの17ライン、図12ではA乃至L及びXの13ライン、図13及び図14ではA乃至H及びXの9ライン)に設定している。ここで、変換特性曲線Xは、図5乃至図7に示した各マトリクスの要素「X」に割り当てられるもので、最大階調(255)のみに所定のエネルギーを印加するように設定されている。
【0040】
先の図2乃至図4に示したBK、C、M、Yの階調変換特性と異なる点は、階調変換特性曲線のラインピッチが異なることにある。すなわち、ハイライト領域からシャドウ領域にかけてラインピッチが徐々に広く設定されている。
【0041】
図11乃至図13に示した階調変換特性はそれぞれ図5乃至図7に示した各マトリクスに割り当てられる。また、図14に示したYの階調変換特性は、図7に示したマトリクスM(&Y)に割り当てられるが、このとき、マトリクス要素の「X」に対して階調変換特性Xを一義的に割り当て、「X」以外の要素の位置にそれぞれ階調変換特性A乃至Hを乱数的に割り当てている。
【0042】
以下、図15を参照して、実施の形態に係る記録ドット(実施例)及び従来の記録ドット(比較例)により印画した場合について説明する。図15は、ハイライトからシャドウまでを繰り返し印画した場合の再現性を示しており、縦軸は標準偏差を示しており、横軸は平均濃度を示している。図15に示されるように、実施例に基づく印画は標準偏差が小さく、これは繰り返し再現性は高いことを示している。
【0043】
上記実施の形態では、主としてBKにおける記録ドットについて説明したが、C、M、Yについても同様である。また、各色を重ね合わせて多色を再現する場合は、各色の副走査周期をそれぞれ異ならせて、色毎に記録ドットの位置を異ならせることにより、階調の連続性が向上するとともに、各色の重ね合わせがずれた場合でも視覚への違和感を軽減することができる。
【0044】
なお、本実施の形態と類似するものとして、特許第2608808号公報に記載された画像形成装置がある。この中で、階調変換テーブルの特性曲線が4本、また「中間調で最大もしくは最小のエネルギーではないエネルギー値」が2種類存在する例が示されている。しかし、この場合、インキ層が薄い記録材料に印画した場合は、階調連続性を安定的に実現することができなかった。すなわち、ある温湿度において、グラデーションにおけるトーンジャンプを視認レベル以下にする条件を見出したとしても、温湿度が変化した場合にトーンジャンプが視認レベルを超えてしまうため、十分な効果が得られないことが確認されている。
【0045】
そこで、インキ層が薄い記録材料に印画する場合、階調変換テーブルの特性極性を少なくとも5本に設定し、中間調で最大もしくは最小のエネルギーではないエネルギー値を少なくとも3種類に設定することにより、インキ層が薄い記録材料に対して十分な効果が得られることが確認されている。
【0046】
なお、図11乃至図14に示した階調変換特性を得るための各色マトリクスにおける変換テーブル1(階調変換用)及び変換テーブル2(パルス幅割り当て用)を表1乃至表8に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
【表5】
【0052】
【表6】
【0053】
【表7】
【0054】
【表8】
【0055】
【実施例】
実施例1
片面4色の印刷を行うWeb式印刷装置(図16参照)に搭載されるインクジェット記録装置として、シェアモードの500チャンネルピエゾインクジェット装置(Xaar社製 Xaar Jet500S)を使用し、油性インク(同社製)を用いた。ギャップ調整(ギャップ0.8mm)はテフロン製の付き当てローラにより行い、印刷すべき画像データを画像データ演算制御部に伝送し、対向ドラムを回転させながら500チャンネル吐出ヘッドを移動させることにより、印刷媒体上に同時にインクを吐出して画像を形成し、500回の印刷を行った。描画に際しては、描画解像力360dpiとし、ドットの大きさを8段階に変えることで階調表現を行った。その結果、埃による描画不良、外気温の変化による影響は全く見られなかった。印刷部数の増加によって、ドット径に多少の変化が見られたが、影響はない範囲内だった。結果、通し枚数5千枚後でも印刷画像に飛びやカスレがなく極めて鮮明なフルカラー印刷物が得られた。
【0056】
また印刷終了後には、ヘッドの吐出部分を不織紙で拭った後、カバーに格納しておくことにより、3ヶ月の間、保守作業の必要なしに、良好な印刷物を作製できた。
【0057】
なお、図16に示した印刷装置について説明すると、インク吐出描画装置113を印刷媒体Mの同じ面に印刷が行われるように4色分配置したものである。さらに印刷装置において、101は印刷媒体供給ロール、102は埃除去装置、104は対向ドラム、105は定着装置、106は印刷媒体巻き取りロールである。
【0058】
実施例2
図17に示す印刷装置に、図18に示すタイプの600dpiフルラインインクジェットヘッドを配置した。インク循環にはポンプを使用し、このポンプと吐出ヘッドのインク流入路、そして吐出ヘッドのインク回収路とインクタンクの間にそれぞれインク溜を設け、それらの静水圧差によりインク循環を行い、インク温度管理手段としてはヒータと上述のポンプを使用し、インク温度は35℃に設定し、サーモスタットでコントロールした。ここで循環ポンプは沈殿・凝集防止用の攪拌手段としても使用した。またインク流路に電導度測定装置を配置し、その出力シグナルによりインクの希釈あるいは濃縮インク投入による濃度管理を行った。印刷媒体を印刷装置の対向ドラムに同様に装着した。ナイロン製回転ブラシにより印刷媒体表面の埃除去を行った後、印刷すべき画像データを画像データ演算制御部に伝送し、対向ドラムにより印刷媒体を搬送しながらフルラインヘッドで描画させることにより、印刷媒体上に油性インクを吐出して画像を形成した。埃による描画不良等は全く見られず、また外気温の変化、印刷部数の増加によってもドット径変化等による画像劣化は全く見られず、良好な印刷が可能であった。さらにヒートローラ(300Wハロゲンランプ内包テフロンシールシリコンゴムローラ)定着よる加熱により(圧力:3kgf/cm2)画像を強固にし、印刷物を作成した。
【0059】
図17に示した印刷装置について説明すると、201−a、201−bは印刷媒体供給ロール、202は埃除去装置、203はインク吐出描画装置、204は対向ドラム、205は定着装置、206は印刷媒体巻き取りロールである。
【0060】
また、図18に示したインクジェットヘッド351について説明すると、352は画像データ演算制御部、353は吐出電極、354はインク、355、356は絶縁性基材、357は斜面部、358は上面部、359はインク流入路、360はインク回収路、361はバッキングである。
【0061】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、画像データの信号に基づき印刷媒体上に直接画像を形成し、該画像を定着することにより印刷物を作成するに際し、前記画像データの濃度レベルを記録ドットの大きさに変換して階調記録する画像形成方法を用いて、前記印刷媒体への画像の形成をインクジェット方式で行う印刷方法において、階調値と記録ドットの発生のためのエネルギーの関係を示す階調変換テーブルの特性曲線を少なくとも5ラインに設定し、中間調では、所定の階調値において、最大もしくは最小のエネルギーでないエネルギー値が少なくとも3種類に設定することにより、滑らかな連続階調が得られ、さらに、エネルギーが略最大になる印画点が存在する最小の階調値において、エネルギーが略最小である印画点の数を全印画点の数の半分以上に設定することにより、低濃度の記録画素が白地に形成される場合にも、ザラツキの発生を著しく低減させることができる。
【0062】
従って、特性が必ずしも常に安定しているとは言い難い印刷対象への印刷にも使用可能であり、かつ高画質の記録画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るインクジェット式印刷方法に用いる画像形成方法を実現するための画像形成装置の概略構成を示す図である。
【図2】階調変換テーブルの基になる変換特性(BK)を示す図である。
【図3】階調変換テーブルの基になる変換特性(C)を示す図である。
【図4】階調変換テーブルの基になる変換特性(M)を示す図である。
【図5】BK印画色のマトリクスを示す図である。
【図6】C印画色のマトリクスを示す図である。
【図7】M印画色のマトリクスを示す図である。
【図8】BKのハイライトの記録ドットを拡大して示す図である。
【図9】BKの中間調の記録ドットを拡大して示す図である。
【図10】BKのシャドーの記録ドットを拡大して示す図である。
【図11】階調変換テーブルの基になる他の変換特性(BK)を示す図である。
【図12】階調変換テーブルの基になる他の変換特性(C)を示す図である。
【図13】階調変換テーブルの基になる他の変換特性(M)を示す図である。
【図14】階調変換テーブルの基になる他の変換特性(Y)を示す図である。
【図15】印画の繰り返し再現性を示す図である。
【図16】本発明に係るインクジェット式印刷方法を実施するための印刷装置を示す概略構成図である。
【図17】本発明に係るインクジェット式印刷方法を実施するための印刷装置を示す他の概略構成図である。
【図18】図17に示した印刷装置に用いるインクジェットヘッドの概略構成図である。
【符号の説明】
10 デジタルデータ出力装置
20 画像処理装置
21 濃度変換部
22 変換テーブル
23 墨版生成および下色除去(UCR)部
24 色補正部
25 データセレクタ
26 階調処理部
30 インクジェット方式描画装置
Claims (7)
- 印刷媒体上に画像データの信号に基づき直接画像を形成し、該画像を定着することにより印刷物を作成するに際し、前記画像データの濃度レベルを記録ドットの大きさに変換して階調記録する画像形成方法を用い、前記印刷媒体への画像の形成をインクジェット方式で行うインクジェット式印刷方法において、
前記画像形成方法が、前記画像データの濃度レベルを記録ドットの大きさに変換するときに、階調値と記録ドットの発生のためのエネルギーの関係を示す階調変換テーブルの特性曲線を少なくとも5ラインに設定し、中間調では、所定の階調値において、最大もしくは最小のエネルギーでないエネルギー値が少なくとも3種類に設定し、エネルギーが略最大になる印画点が存在する最小の階調値においてエネルギーが略最小である印画点の数を全印画点の数の半分以上に設定したものであることを特徴とするインクジェット式印刷方法。 - 少なくとも各印刷色に対応する3種類以上の副走査周期を有し、各印刷色に対応して記録ドットの位置をそれぞれ変化させることを特徴とする請求項1記載のインクジェット式印刷方法。
- 少なくとも一色の印画について、単位ブロック内の複数の印画点と特性曲線との関係が各ブロック毎に異なることを特徴とする請求項1または請求項2記載のインクジェット式印刷方法。
- 前記一色が最も低い濃度であることを特徴とする請求項3記載のインクジェット式印刷方法。
- 印刷媒体上に画像データの信号に基づき直接画像を形成し、該画像を定着することにより印刷物を作成するに際し、前記画像データの濃度レベルを記録ドットの大きさに変換して階調記録する画像形成方法を用い、前記印刷媒体への画像の形成をインクジェット方式で行うインクジェット式印刷方法において、
前記画像形成方法が、前記画像データの濃度レベルを記録ドットの大きさに変換するときに、階調値と記録ドットの発生のためのエネルギーの関係を示す階調変換テーブルの特性曲線を用いるものであり、
少なくとも二色の印画について、それぞれ単位ブロック内の要素数が異なり、かつ単位ブロック内の複数の印画点と前記特性曲線との関係が各ブロック毎に異なり、かつまたこれら二色の単位ブロックの縦横長さがそれぞれ同一であることを特徴とするインクジェット式印刷方法。 - 四色の印画について、前記少なくとも二色を除く他の一色が、最も低い濃度であることを特徴とする請求項5記載のインクジェット式印刷方法。
- 前記他の一色がイエロであることを特徴とする請求項6記載のインクジェット式印刷方法。
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