JP4208330B2 - 正内圧缶用開口容易缶蓋 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、パネル部と開口片とを区画しているスコア溝を、タブを引き起こすことにより破断するとともに、開口片を缶内部に吊り下げ状態にして開缶(開蓋)する形式の正内圧缶用開口容易缶蓋に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
コーラやサイダー、ビール等に代表される炭酸含有飲料が封入された正内圧缶の缶胴に固着される缶蓋としては、開口片に固着されているタブを缶体上方に引き起こした後、開口片を上方に引っ張ることによって開蓋するプルタブ式の缶蓋と、タブを引き起こした際の梃子の原理により、開口片を缶体内方に押し込んで開蓋するステイオンタブ式の缶蓋とが例示される。
【0003】
このうち、プルタブ式の缶蓋においては、開蓋後にタブおよび開口片が、パネル部から離脱するため、開口片およびタブの散乱等により、環境への影響が憂慮される。そのため、最近では、ステイオンタブ式の缶蓋が多く使用されるようになってきている。このような缶蓋の一例が、特開昭51−82188号公報、特開昭52−29385号公報に記載されている。このステイオンタブ式の缶蓋は、プルタブ式の缶蓋とは異なり、同一のタブにより二つの梃子作用を生じさせ、パネル部と開口片とを区画している環状のスコア溝を破断するものである。そして、スコア溝を全て破断した状態においても、パネル部とタブおよび開口片とがつなぎ部により接続された状態に維持される。
【0004】
ところで、上記のような正内圧缶においては、缶内部のガスが飲料の液面上の空間に作用している。このため、ステイオンタブ式の缶蓋において、スコア溝の初期破断(ポップ)時に、ガスの排気とともに、そのガス圧により開口片が急激に上方に押し上げらてスコア溝が一瞬で破断されてしまい、その破断の勢いにより、パネル部のスコア溝以外の領域(つまり、つなぎ部)まで切断されてしまい、開口片がパネル部から分離して吹き飛ばされるという、いわゆるポップミサイル現象が生じる可能性がある。
【0005】
このポップミサイル現象に対処するための缶蓋の一例が、特開平10−101104号公報、および特開平6−321238号公報に記載されている。特開平10−101104号公報に記載された缶蓋は、端末パネルと、この端末パネルに対して環状の主刻み線を残して接続された引き裂きストリップと、端末パネルに対してリベットにより固定され、かつ、端末パネルの上面側に配置されたフィンガー部分、および引き裂きストリップの上面側に配置されたノーズ部を有する引っ張りつまみとを備えている。
【0006】
また、引っ張りつまみを引っ張ることにより、ノーズ部が引き裂きストリップを押し下げて主刻み線を破断してガス抜き領域が形成されるが、引き裂きパネルにおけるガス抜き領域と隣接する位置に、ガス抜き領域の少なくとも一部分に沿って延びる噴出作用防止刻み線が形成されている。
【0007】
そして、特開平10−101104号公報に記載された缶蓋によれば、引っ張りつまみの引っ張りによりガス抜き領域を破断する際に、噴出作用防止刻み線が、引き裂きストリップの端縁を端末パネルの下方に一時的に移動させる。この移動により、引き裂きストリップが端末パネルから迅速に分裂されることを防止し、引き裂きストリップが端末パネルから分裂して射出すること(つまりポップミサイル現象)を防止できるとされている。
【0008】
一方、特開平6−321238号公報に記載された缶蓋は、円板形状の端部パネルと、端部パネルに対してリベットを介して固着された操作タブとを有する。また、端部パネルには接続領域を残してスコアラインが形成され、このスコアラインにより、端末パネルと引きちぎりパネルとが区画されている。この引きちぎりパネルには、スコアラインと相互に平行な凹みまたは排気ビードが、圧印加工により形成されている。この特開平6−321238号公報に記載された缶蓋によれば、操作タブの操作により引きちぎりパネルを押圧してスコアラインを破断した場合に、凹みまたは排気ビードによって引きちぎりパネルの金属の一部が、スコアラインの近傍にて下方に動く傾向になる。この動作により、缶の内部圧力が排気されるまで、スコアラインの分離を妨害または遅らせ、タブの引き上げにともなう開放力を制御することができるものとされている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平10−101104号公報に記載された缶蓋においては、主刻み線の他に別途噴出作用防止刻み線を形成しなければならず、缶蓋の一部の強度が弱められてしまう問題があった。また、噴出作用防止刻み線を成形する工程を特別に設けなければならず、その工具(設備)数が増加する問題があった。
【0010】
また、最近では、缶内から容易に飲料を取り出す目的、あるいは他の商品の缶との差別化を図るという目的から、開口片の平面積を可及的に広く設定して、スコア溝の破断後に形成される開口部を広くすることの可能な缶蓋の要求が高まりつつある。しかしながら、特開平10−101104号公報に記載された缶蓋においては、開口片の平面積を広くすると、必然的にスコア溝の長さも長くなり、その開蓋性が低下する可能性がある。そこで、スコア溝を深くしてスコア溝の残存部分の厚さ(以下、残厚という)を薄く設定することにより、開蓋性を良好に維持することも考えられるが、材料コスト低減化のために板厚の薄い材料を使用した場合は、パネル部の板厚の減少もしくは残厚の減少にともなってパネル部の強度が低下し、前記ポップミサイル現象が発生しやすくなるという問題があった。
【0011】
さらに、特開平6−321238号公報においては、端末パネルを圧印加工して凹みまたは排気ビードを形成しているために、端末パネルの成形工程において、スコアラインに圧縮荷重による加工硬化などのストレスが発生する。その結果、端末パネルの内面側に歪みやくびれが発生しやすく、端末パネルの内面を保護するために施されている内面被膜が損傷するおそれがあった。
【0012】
この発明は上記の事情を背景としてなされたものであり、スコア溝以外に格別の要素を設けることなく、スコア溝の破断時に開放片がパネル部から分離することを抑制でき、かつ、開蓋性を良好に維持することができ、さらには、パネル部の内面に施されている内面被膜の損傷を防止することの可能な正内圧缶用開口容易缶蓋を提供することを目的としている。
【0013】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、円板形状のパネル部と、このパネル部に対して接続され、かつ、つなぎ部を除く開放形状のスコア溝により区画された開口片と、前記パネル部のほぼ中央で前記開口片の外側に対してリベットにより連結されるとともに、前記パネル部側に配置された持ち上げ部と、前記開口片側に配置された押し下げ部とを有するタブとを備え、前記スコア溝が、前記パネル部側の曲率中心を基準として湾曲された第1湾曲部と、この第1湾曲部における前記つなぎ部とは反対側の端部に接続され、かつ、前記開口片側の曲率中心を基準として湾曲された第2湾曲部とを有する正内圧缶用開口容易缶蓋において、前記第1湾曲部が、前記リベットの中心を通過し、かつ、前記タブの長手方向に延びる線分を境として実質的に線対称に配置されているとともに、前記第1湾曲部の両端と前記リベットの中心とを結ぶ2つの線分の前記開口片側における開き角度が110度乃至130度に形成され、前記スコア溝における前記第1湾曲部と前記第2湾曲部との間に、前記スコア溝を隔てて前記リベットの中心とは反対側の曲率中心を基準として湾曲された接続部が形成され、この接続部の曲率半径が前記第1湾曲部の曲率半径よりも小さく設定されているとともに、前記第2湾曲部における前記接続部側の近接位置に、前記スコア溝の残厚が前記スコア溝の他の部分の残厚より厚く設定されることにより、前記スコア溝の残存部分にせん断応力を作用させて破断する際の破断進行方向の先端を、前記スコア溝の幅方向に移動させる破断誘導部が設けられていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項1の発明によれば、タブの持ち上げ部を持ち上げると、押し下げ部が開口片に当接するとともに、押し下げ部と開口片との当接部分を支点とし、リベットを作用点とする梃子の原理により、パネル部の一部が上方に持ち上げられてスコア溝の第1湾曲部および接続部ならびに第2湾曲部の残存部分にせん断応力が作用してスコア溝が初期開口(ポップ)される。ここで、第1湾曲部の開き角度が110度乃至130度に設定されているため、ポップ時にスコア溝を可及的に長く破断することができ、缶内部のガス抜きが促進されてガス圧と大気圧とが迅速に平衡化される。ついで、リベットを支点とし、かつ、押し下げ部を作用点とする梃子の原理により、開口片が押し下げられて、スコア溝の破断(ティア)が進行する。また、接続部が第1湾曲部とは逆方向に湾曲されているとともに、破断誘導部が形成されているため、スコア溝の残存部分の破断進行方向の先端(以下、破断先端と略記する)がスコア溝の幅方向に移動する。このため、せん断応力が分散されてスコア溝の破断が遅延し、ガス圧により開口片が急激に上方へ押し上げられて生じるポップミサイル現象を起こす前に、ガス圧と大気圧との圧力差が解消された状態、いわゆる平衡状態にすることができる。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1の構成に加えて、前記接続部の曲率半径が1.2mm未満であることを特徴とするものである。
【0016】
請求項2の発明によれば、請求項1と同様の作用が生じるほか、第2湾曲部が、リベットの中心を通過し、かつ、タブの幅方向に延びる線分に近接して配置されることが抑制される。このため、スコア溝の第2湾曲部を破断させるためのせん断力の上昇を防ぎ、開蓋性の低下が抑制される。
【0017】
請求項3の発明は、円板形状のパネル部と、このパネル部に対して接続され、かつ、つなぎ部を除く開放形状のスコア溝により区画された開口片と、前記パネル部のほぼ中央で前記開口片の外側に対してリベットにより連結されるとともに、前記パネル部側に配置された持ち上げ部と、前記開口片側に配置された押し下げ部とを有するタブとを備え、前記スコア溝が、前記パネル部側に曲率中心を有する第1湾曲部と、この第1湾曲部における前記つなぎ部とは反対側の端部に接続され、かつ、前記開口片側に曲率中心を有する第2湾曲部とを有する正内圧缶用開口容易缶蓋において、前記第1湾曲部が、前記リベットの中心を通過し、かつ、前記タブの長手方向に延びる線分B1を境として実質的に線対称に配置されているとともに、前記第1湾曲部の両端と前記リベットの中心とを結ぶ2つの線分X1およびX2とのなす前記開口片側における開き角度が110度乃至130度に形成され、前記第1湾曲部における前記つなぎ部とは反対側の端部に、前記第1湾曲部とは反対方向に湾曲された曲率半径1.2 mm 未満の接続部と、前記第2湾曲部における前記接続部側の近接位置に前記スコア溝の底面の残厚を厚くして隆起させた隆起部とから構成される破断誘導部が配置され、前記スコア溝にせん断応力を作用させて破断する際の破断進行方向の先端が、前記接続部において前記スコア溝の外周側から内周側に移動し、前記隆起部において前記スコア溝の内周側から外周側に移動せしめることを特徴とするものである。
【0018】
請求項3の発明によれば、タブの持ち上げ部を持ち上げると、押し下げ部が開口片に当接するとともに、押し下げ部と開口片との当接部分を支点とし、リベットを作用点とする梃子の原理により、パネル部の一部が上方に持ち上げられてスコア溝にせん断力が作用し、第1湾曲部が破断されて、その破断が進行するとともに、この破断が接続部を経由して第2湾曲部まで破断が進行して初期開口(ポップ)される。ここで、第1湾曲部の開き角度が110度乃至130度に設定されているため、ポップ時にスコア溝を可及的に長く破断することができ、缶内部のガス抜きが促進されてガス圧と大気圧とが迅速に平衡化される。ついで、リベットを支点とし、かつ、押し下げ部を作用点とする梃子の原理により、開口片が押し下げられて、スコア溝の破断(ティア)が進行する。
また、前記第1湾曲部とは反対方向に湾曲された曲率半径1.2 mm 未満の接続部と、前記第2湾曲部における前記接続部側の近接位置に、前記スコア溝の底面の残厚を厚くして隆起させた隆起部とから構成される破断誘導部が形成されているため、スコア溝の残存部分の破断進行方向の先端(以下、破断先端と略記することがある)がスコア溝の幅方向に移動する。即ち、第1湾曲部でスコア溝の外周側で破断した破断先端が前記接続部に至るとスコア溝の内周側に移動し、さらに破断先端が前記隆起部に至るとスコア溝の外周側に移動する。このため、せん断応力が分散されてスコア溝の破断が遅延し、ガス圧により開口片が急激に上方へ押し上げられて生じるポップミサイル現象を起こす前に、ガス圧と大気圧との圧力差が解消された状態、いわゆる平衡状態にすることができる。
更にまた、隆起部の残厚が、第2湾曲部における隆起部以外の領域の残厚よりも厚くなっているため、開口片の押圧時に、開口片の破断面と、パネル部の破断面とが摺動する面の面積が可及的に拡大される。このため、一旦押し下げられた開口片が、内圧により上方に押し上げられるとする際に、開口片とパネル部との破断面における摩擦抵抗が高められる。したがって、開口片がガス圧により上方に押し上げられることにともなうスコア溝の破断を防ぐことができ、急激に上方へ押し上げられて生じるポップミサイル現象を起こす前に、ガス圧と大気圧との圧力差が解消された状態、いわゆる平衡状態にすることができる。
【0019】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかの構成に加えて、前記スコア溝の幅方向の中心線と、前記スコア溝に臨む前記パネル部側の傾斜面とにより設定される傾斜角度が、前記中心線と前記スコア溝に臨む前記開口片側の傾斜面とにより設定される傾斜角度よりも大きく設定されていることを特徴とするものである。
【0020】
請求項4の発明によれば、スコア溝の幅方向の中心線と、スコア溝に臨むパネル側の傾斜面とにより設定される傾斜角度を、中心線と、スコア溝に臨む開口片側の傾斜面とにより設定される傾斜角度よりも大きく設定することにより、スコア溝の残存部分に作用するせん断応力が開口片側に集中される。これにより、スコア溝のポップ時に、第1湾曲部のリベット側(スコア溝の外周側)で発生したスコア溝の破断先端が、接続部を経由して第2湾曲部にまで移動してスコア溝の破断が進行する間に、この破断先端が、スコア溝の幅方向において開口片側(スコア溝の内周側)に確実に移動される。
【0023】
【発明の実施の形態】
つぎにこの発明の実施例を図面を参照して説明する。図2は、この発明の一実施例を示すステイオンタブ式のイージーオープン缶蓋(以下、缶蓋と略記する)1の平面図である。この缶蓋1は、常温で内圧が大気圧以上になる正圧缶に適用される。この缶蓋1は、蓋部1Aと、蓋部1Aに対してリベット1Bにより固着されたタブ1Cとを有する。蓋部1Aの内面(言い換えれば下面)には、缶の内部に収容される飲料などに対応して、フェノール−エポキシ塗料、または塩化ビニルオルガノゾル塗料等の塗料を選択して塗布され、かつ、この塗料を焼き付け硬化した内面被膜(図示せず)が形成されている。
【0024】
また、図3は、タブ1Cを省略した缶蓋1の平面図である。蓋部1Aは、例えばアルミニウム合金製の厚さ0.235mm乃至0.260mmの板材をプレス成形したものである。蓋部1Aは、円板形状のパネル部2と、このパネル部2の外周に形成された環状溝3と、環状溝3の外周端に接続された環状の傾斜部4Aと、傾斜部4Aの上端に接続されたフランジ部4とを有する。環状溝3は、この缶蓋1が固定される缶胴(図示せず)側に向けてほぼU字形状に屈曲されている。また、傾斜部4Aはパネル部2から離れるにともなって拡径する方向に傾斜している。さらに、フランジ部4は、缶胴の下方および内方に向けてほぼC字形状に屈曲されている。このフランジ部4と、有底円筒状の缶胴の開口端とを、密封材(図示せず)を介して巻き締めることにより、缶胴に缶蓋1が固着された缶体が形成される。
【0025】
一方、パネル部2には、蓋部1Aのリベット中心A1よりも外側に第1補強ビード5が形成されている。この第1補強ビード5は、パネル部2の一部を厚さ方向に屈曲させて、具体的には、缶胴の内側に向けて突出させて成形したものである。この第1補強ビード5は、リベット中心A1を隔てて配置された大湾曲部6および小湾曲部7を有する。大湾曲部6および小湾曲部7は、リベット中心A1を通過する線分(直線)B1に対応する位置に配置され、大湾曲部6および小湾曲部7は、いずれも缶蓋1の外周に向けて突出する方向に湾曲されている。また、大湾曲部6および小湾曲部7の両端が、直線部8,9により相互に接続されている。さらに、小湾曲部7の内側には、平面形状が楕円形の指進入用凹部11が形成されている。上記のように構成された第1補強ビード5および直線部8,9は、線分B1を中心としてほぼ線対称に構成されている。
【0026】
前記第1補強ビード5の内側、具体的にはパネル部2のリベット中心A1と、第1補強ビード5の大湾曲部6との間の領域にはスコア溝(言い換えればスコア線)12が形成され、このスコア溝12により、缶蓋1の一部をパネル部2と開口片13とに区画している。このスコア溝12は、せん断力により缶蓋1を容易に破断して、缶蓋1の一部に開口部を形成するためのものである。
【0027】
図1は、開口片13近傍の拡大平面図であり、スコア溝12は、ほぼ環状に構成されている。具体的には、スコア溝12はつなぎ部(言い換えれば、不連続部もしくはヒンジ部)16を残してほぼC字形状に設定され、その外側が主スコア溝17により構成され、その内側が副スコア溝18により構成されている。また、主スコア溝17と副スコア溝18とが、つなぎ部16に臨む領域において、始端14および終端15により接続されている。このようにして、パネル部2と開口片13とが、スコア溝12およびつなぎ部16を介して接続されている。そして、主スコア溝17と副スコア溝18とがほぼ平行に配置されている。これに対して、始端14付近においてはスコア溝12が円弧形状に湾曲され、主スコア溝17と副スコア溝18との幅が、これ以外の領域の幅よりも広く設定されている。
【0028】
さらに、主スコア溝17は、パネル部2側の曲率中心を基準として湾曲された第1湾曲部19と、第1湾曲部19におけるつなぎ部16とは反対側の端部に接続され、かつ、第1湾曲部19とは反対方向に湾曲された接続部20と、接続部20における第1湾曲部19とは反対側の端部に接続され、かつ、第1湾曲部19の湾曲方向と反対方向に湾曲された第2湾曲部21と、第2湾曲部21と終端15との間に形成された第3湾曲部17Aとを有する。そして、第1湾曲部19の全部、および接続部20の全部、ならびに第2湾曲部21の一部が、蓋部1Aの厚さ方向におけるタブ1Cの投影領域内に配置されている。これに対して、第3湾曲部17Aは、蓋部1Aの厚さ方向におけるタブ1Cの投影領域外に配置されている。
【0029】
具体的には、第1湾曲部19の湾曲範囲が、リベット中心A1を通過する軸線B1の両側にほぼ均等に設定されているとともに、リベット中心A1と、第1湾曲部19の長手方向の両端とを結ぶ線分X1およびX2とのなす開口片13側の開き角度α1が、下限値である110度から上限値である130度の範囲に設定されている。なお、この実施形態においては、第1湾曲部19の曲率半径が、例えば2.4mmに設定されている。なお、接続部20の曲率半径は第1湾曲部19の曲率半径よりも小さく設定されている。
【0030】
さらに、前記接続部20の曲率中心C1は、主スコア溝17と副スコア溝18との間、または副スコア溝18の内側に設定されている。そして、接続部20の曲率半径は、1.2mm未満であり、かつ、0.5mm以上に設定されている。さらにまた、第2湾曲部21の曲率中心D1は副スコア溝18の内側に設定され、第2湾曲部21の曲率半径は、第1湾曲部19の曲率半径よりも大きく設定されている。このようにして、線分B1に直交し、かつ、リベット中心A1を通過する線分G1(後述する図4参照)と、第2湾曲部21における接続部20側の端部との間隔が、所定値以上離れた値になるように設定されている。
【0031】
なお、第3湾曲部17Aの基準となる曲率中心は複数あり、この曲率中心はパネル部2および開口片13上にそれぞれ設定されているが、ここではその説明を省略する。また、終端15は、第3湾曲部17Aと同方向に湾曲され、かつ、副スコア溝18に対して滑らかに接続されているが、その曲率半径は極めて小さく設定されている。なお、後述する始端14は第1湾曲部19と反対方向に湾曲しているが、その曲率半径は第1湾曲部19よりも小さく、終端15の曲率半径よりも大きく設定されている。
【0032】
つぎに、スコア溝12の幅方向の断面形状およびその深さについて具体的に説明する。図4は、図1の要部を示す拡大平面図、図5乃至図7は蓋部1Aの拡大断面図である。図5は、図4のV−V線における断面図、具体的には、蓋部1Aを線分B1に沿って切断した状態を示している。主スコア溝17および副スコア溝18の断面形状は、蓋部1Aの上面22から下面23側に向けて次第に細くなる逆台形に設定されている。具体的には、主スコア溝17の第1湾曲部19は、底面24と、底面24の両側に形成された一対の傾斜面25,26とを有する。そして、主スコア溝17の幅方向の中心線E1と、一対の傾斜面25,26のうち、リベット中心A1に近い位置に配置されている傾斜面26とのなす外側の角度(傾斜角)β1が、副スコア溝18側に配置されている傾斜面25と、中心線E1とのなす内側の角度(傾斜角)β2よりも大きく設定されている。
【0033】
これに対して、副スコア溝18は、底面27と、底面27の両側に形成された一対の傾斜面28,29とを有する。そして、副スコア溝18の幅方向の中心線F1と傾斜面28とのなす内側の角度(傾斜角)β2が、中心線F1と傾斜面29とのなす外側の角度(傾斜角)β2が同一に設定されている。また、第1湾曲部19の深さW1は、副スコア溝18の深さW2よりも深く設定されている。言い換えれば、第1湾曲部19の底面24と下面23との間の残厚t1よりも、副スコア溝18の底面27と下面23との間の残厚t2の方が厚く設定されている。
【0034】
つぎに、第2湾曲部21の断面形状について説明する。第2湾曲部21には、接続部20から離れるにともないその深さが浅くなる方向に傾斜された第1傾斜底面30と、この第1傾斜底面30に接続され、かつ、その深さがほぼ一定に設定された底面31と、この底面31に接続され、かつ、第1傾斜底面30から離れるにともないその深さが深くなる方向に傾斜した第2傾斜底面32とを有する。また、第1傾斜底面30の両側には一対の傾斜面33,34が形成され、底面31の両側には一対の傾斜面35,36が形成され、第2傾斜底面32の両側には傾斜面37,38が形成されている。
【0035】
一対の傾斜面33,34同士の幅は、一対の傾斜面35,36に近づくにともない幅広となるように設定され、一対の傾斜面35,36同士の幅は、長手方向に亘りほぼ均一に設定され、一対の傾斜面37,38同士の幅は、一対の傾斜面35,36から離れるにともない幅狭となるように設定されている。
【0036】
図6は、図4のVI−VI線における断面図であり、中心線E1と、主スコア溝17の外周側に位置している傾斜面36とのなす角度β1が、中心線E1と他方の傾斜面35とのなす角度β2よりも大きく設定されている。なお、副スコア溝18の幅方向における断面形状および寸法は、第1湾曲部19における副スコア溝18と同様に構成されている。また、底面31の深さW3は、第1湾曲部19の深さW1よりも浅く設定されている。言い換えれば、底面31と下面23との間の残厚t3は、第1湾曲部19の残厚t1よりも厚く設定されている。これら、第1傾斜底面30、底面31、第2傾斜底面32、傾斜面33,34,35,36,37,38は、蓋部1Aの厚さ方向におけるタブ1Cの投影領域内に配置されている。
【0037】
さらに、図7は、図4のVII−VII線における断面図であり、この図7は、蓋部1Aの厚さ方向におけるタブ1Cの投影領域外における主スコア溝17および副スコア溝18の断面形状を示している。主スコア溝17の第2湾曲部21は、底面39と、底面39の両側に形成された一対の傾斜面40,41とを有する。そして、中心線E1と、一対の傾斜面40,41のうち、主スコア溝17の外周側に配置されている傾斜面41とのなす角度β1が、他方の傾斜面40と中心線E1とのなす角度β2よりも大きく設定されている。なお、副スコア溝18の断面形状および寸法は、第1湾曲部19における副スコア溝18と同様に構成されている。また、第2湾曲部21の深さW4は、第1湾曲部19の深さW1よりも深く設定されている。言い換えれば、第2湾曲部21の底面39と下面23との間の残厚t4は、第1湾曲部19の残厚t1よりも薄く設定されている。
【0038】
このように、主スコア溝17は、中心線E1を中心とする幅方向の断面形状が、非対称に設定されている。また、副スコア溝18は、中心線F1を中心とする幅方向の断面形状が対称に設定されている。さらに、底面24に対応する残厚t1と、底面31に対応する残厚t3と、底面39に対応する残厚t4とが、残厚t3>残厚t1>残厚t4の関係に設定されるとともに、底面30,31,32が蓋部1Aの厚さ方向に隆起して、いわゆる隆起部R1を構成している。
【0039】
なお、スコア溝12の始端14は、第1湾曲部19とは反対方向に湾曲されて副スコア溝18に接続されている。すなわち、始端14は一旦つなぎ部16側に向けて湾曲するとともに、ついで、リベット中心A1に向けて湾曲している。そして、始端14と第1湾曲部19との接続部分から、始端14の最も大湾曲部6に近い位置、つまり点14Aの位置までの間における始端14の断面形状および寸法は、第1湾曲部19の幅方向の断面形状と寸法と同様に設定されている。この点14Aから、副スコア線18に接続される部分、つまり、ほぼ6分の1円上の点14Bまでの間における溝の深さと傾斜角とが、副スコア溝18の深さW2と傾斜角β2とに移行するように設定され、上記構成の始端14の底面および傾斜面がなだらかに接続されている。
【0040】
一方、前記開口片13には、環状の補強ビード42が形成されている。この補強ビード42は、蓋部1Aの厚さ方向におけるタブ1Cの投影領域外に設けられている。また、リベット1Bと指進入用凹部11との間における線分B1の両側には、平面形状がほぼ円形のタブアップ用突起44が形成されている。このタブアップ用突起44は、蓋部1Aの厚さ方向におけるタブ1Cの投影領域内に設けられている。
【0041】
前記タブ1Cは、蓋部1Aと同様の金属材料により構成されており、このタブ1Cは、指が掛けられる持ち上げ部45と、切り込み46により形成された舌片47と、開口片13を押圧する押し下げ部48とを有する。舌片47がリベット1Bに対して固着され、切り込み46がリベット1Bを取り囲むようにほぼU字形状に配置されている。切り込み46は指進入用凹部11側に向けて突出する方向に湾曲している。
【0042】
また、持ち上げ部45と切り込み46との間には指掛け用穴49が設けられている。持ち上げ部45と押し下げ部48とはリベット1Bを隔てて反対側に配置され、持ち上げ部45の端部からリベット中心A1までの距離よりも、押し下げ部48の端部からリベット中心A1までの距離の方が短く設定されている。また、押し下げ部48の端部の形状は、リベット中心A1の近傍を曲率中心とする円弧形状に設定されている。この押し下げ部48が前記補強ビード42の手前まで到達している。上記のタブ1Cの平面形状は、線分B1を中心として線対称に構成されている。上記のように構成された蓋部1Aは、初期開口時において、スコア溝17に作用するせん断力の作用領域が、第1湾曲部19と始端14との間の領域、および第1湾曲部19、ならびに第2湾曲部21になるように、タブ1Cの形状および寸法、主スコア溝17および副スコア溝18の曲率中心、または曲率半径などが設定されている。
【0043】
つぎに、缶蓋1を開蓋する動作を説明する。まず、タブ1Cの持ち上げ部45に指をかけるとともに、持ち上げ部45を上方に持ち上げる(缶蓋1から離れる方向に引く)。すると、押し下げ部48の端部が開口片13の上面に当接するとともに、押し下げ部48と開口片13との当接部分を支点とし、リベット1Bを作用点とする梃子の原理により、パネル部2の中央部分(リベット1B付近)が上方に持ち上げられて主スコア溝17にせん断力が作用し、第1湾曲部19が破断されて長手方向の両端まで破断が進行するとともに、この破断が接続部20を経由して第2湾曲部21にまで破断が進行して初期開口(ポップ)がおこなわれる。なお、スコア溝12が最初に破断される部位は、第1湾曲部19の底面24のうち、梃子の原理の作用点であるリベット1Bに近い領域に相当する部位(図5の底面24の右端)である。
【0044】
そして、第1湾曲部19の湾曲範囲が110度乃至130度の広範囲に設定されているため、上記ポップ時に、主スコア溝17を円弧形状に可及的に長く破断することができ、ガス抜きが促進されてガス圧と大気圧とが同じになりやすい。ところで、接続部20が、第1湾曲部19とは反対方向に湾曲されているとともに、底面30,31,32により隆起部R1が形成されているため、スコア溝17の破断進行方向の先端(つまり、破断起点)の移動軌跡が、主スコア溝17の幅方向に誘導(具体的には、第1湾曲部19で主スコア溝17の外周側で破断した破断先端が接続部に至ると、主スコア溝17の底面の外周側から内周側に移動し、さらに破断先端が隆起部R1に至ると、主スコア溝17の内周側から外周側に移動)される(言い換えればせん断応力が分散される)。その結果、主スコア溝17の破断速度が可及的に遅延される。このため、上記ガス抜きが一層促進されるとともに、缶の内圧が開口片13の内面に作用した場合においても、主スコア溝17の破断速度が低下して、一瞬でスコア溝17の全部が破断されることを回避でき、いわゆるポップミサイル現象を防止することができる。
【0045】
その後、さらに持ち上げ部45を持ち上げると、リベット1Bを支点とし、押し下げ部48を作用点とする梃子の原理により、開口片13が押し下げられて、第3湾曲部17Aが破断(ティア)される。そして、前記破断起点が終端15に到達すると、その曲率半径の急激な減少と、スコア溝12の深さの減少とによりせん断抵抗が増加して主スコア溝17の破断が終了し、つなぎ部16の破断が防止されて、開口片13とパネル部2とがつながったままに維持される。
【0046】
また、接続部20および底面30,31,32により形成されている隆起部R1は、主スコア溝17の一部であるために、缶蓋1の製造工程において、主スコア溝17の加工と同時に隆起部R1を成形することができ、工具(設備)数の増加が抑制されるとともに、主スコア溝17以外の領域の蓋部1Aの強度の低下が抑制される。
【0047】
また、接続部20の曲率半径が1.2mm未満に設定されているために、線分B1に直交し、かつ、リベット中心A1を通過する線分G1と、第2湾曲部21における接続部20側の端部との間隔が、所定値以上離れた値になるように設定されている。このため、タブ1Cから開口片13に作用する押し下げ力が第2湾曲部21側に伝達されやすくなり、主スコア溝17の開蓋性が良好に維持される。したがって、開口面積を広くするために開口片13の平面積が拡大されて主スコア溝17の長さが長くなった場合、あるいは第2湾曲部21の曲率半径が大ききくなった場合においても、開蓋性を維持することができる。なお、接続部20の曲率半径が0.5mm以上に設定されているために、主スコア溝17の破断が円滑におこなわれ、接続部20を破断する際にその破断進行方向の先端が主スコア溝17から逸脱することが抑制される。
【0048】
さらに、第2湾曲部21の底面30,31,32を、第2湾曲部21の底面の他の部位よりも隆起させて隆起部R1を形成しているため、その隆起部R1の残厚が、第2湾曲部21における隆起部R1以外の領域の残厚よりも厚くなっている。このため、開口片13の押圧時に、開口片13の破断面と、パネル部2の破断面とが摺動する面の面積が可及的に拡大され、その摩擦抵抗が上昇する。したがって、内圧により開口片13が上方に押し上げられようとする力が生じた場合でも、主スコア溝17の破断を一層確実に遅延させることができる。さらにまた、主スコア溝17の幅方向の中心線E1と傾斜面26,36,41とにより設定される傾斜角度β1が、中心線E1と傾斜面25,35,40とにより設定される傾斜角度β2よりも大きく設定されている。
【0049】
したがって、パネル部2側の傾斜角度β1を大きく設定することにより、主スコア溝17の底面の外周側にせん断応力が集中することが緩和される。このため、破断進行方向の先端が、主スコア溝17の幅方向(内周側)に移動する作用が一層促進される。またスコア溝12の始端14からつなぎ部16が破断されたり、変形したりするのを防ぐことにより、主スコア溝17の破断進行を抑制する。しかも、開口片13がタブ1Cの投影領域から外れる方向に移動することを防ぐため、タブ1Cによる押さえ込みが有効に作用する。
【0050】
さらにまた、この傾斜角度の変更は、主スコア溝17の形状自体の設計変更により達成可能であるため、蓋部1Aの製造工程において、蓋部1Aに無用な圧縮荷重や加工硬化などのストレスが作用することはなく、蓋部1Aの内面に施されている内面被膜の損傷が抑制される。
【0051】
つぎに、この実施形態の効果を確認するため、所定の特徴を有する実施例の缶蓋と比較例の缶蓋とを用意し、各種の実験をおこなった。
【0052】
(具体例1)
A.缶蓋の特徴(実施例および比較例共通)
◆缶蓋の呼び径;204径
◆缶蓋の材質;アルミニウム合金 A5182−H39 厚さ0.235mm
◆缶蓋の開口部の面積;365mm2 (通常開口部よりも約1.3倍広い)
◆主スコア溝における円周方向の各部位の残厚と底面幅(単位:μm)
【表1】
Figure 0004208330
◆第1湾曲部の曲率半径;2.4mm(曲率中心はリベットの中心から若干偏 心できる範囲)
◆第2湾曲部の曲率半径;9.4mm
◆接続部と隆起部との距離;約1.0mm(テーパの起点で)
◆缶蓋の内面被膜;ビール用のフェノール−エポキシ塗料を、35mg/dm2 の状態で塗布した後、焼き付け硬化(焼付硬化条件…180〜290℃×10〜40秒)
【0053】
B.実験結果
上記缶蓋に対して各種の実験をおこなった結果を表2に示す。
【表2】
Figure 0004208330
【0054】
この表2のように、実施例1においては、ポップミサイルが全く発生しなかったのに対して、隆起部のない比較例1においてはポップミサイル現象が生じていることがわかり、隆起部がなく開き角が小さい比較例2では、さらにその現象が強くなる傾向にあることがわかる。
【0055】
(具体例2)
A.缶蓋の特徴(実施例および比較例共通)
◆缶蓋の呼び径;202径
◆缶蓋の材質;アルミニウム合金 A5182−H39 厚さ0.235mm
◆缶蓋の開口部の面積;338mm2 (通常開口部よりも約1.2倍広い)
◆主スコア溝における円周方向の各部位の残厚と底面幅(単位:μm)
【表3】
Figure 0004208330
◆第1湾曲部の曲率半径;2.4mm(曲率中心はリベットの中心から若干偏心 できる範囲)
◆第2湾曲部の曲率半径;7.0mm
◆接続部と隆起部との距離;約1.1mm(テーパの起点で)
◆缶蓋の内面被膜;炭酸用の塩化ビニルオルガノゾル塗料を140mg/dm2 の状態で塗布した後、焼き付け硬化(焼付硬化条件…180〜285℃×10〜40秒)
【0056】
B.実験結果
上記缶蓋に対して各種の試験をおこなった結果を表4に示す。
【表4】
Figure 0004208330
【0057】
この表4のように、実施例2、3においては、ポップミサイルが全く発生しなかったのに対して、隆起部のない比較例3においてはポップミサイル現象が生じていることがわかる。また、実施例3においては内面品位が合格(○印)であるのに対して、内側傾斜角を外側傾斜角よりも大きく設定した比較例5においてはポンプミサイル現象が生じるとともに、内面品位が不合格(×印)であった。その理由は、接続部20の曲率中心が開口片13側にあり、しかも小さな曲率半径を有するとともに、さらに接続部20がリベット成形にともない加工硬化した領域にあるため、スコア溝12の開口片13側傾斜角を大きく設定すると、接続部20およびその近辺の金属の塑性流動がスコア溝12の長手方向に亘り不均一に発生し、その結果、内面塗膜にストレスが生じて内面品位が悪くなるものと推測される。なお、□印については後述する。
【0058】
つぎに、各具体例において缶蓋の機能を評価するためにおこなった各種の試験について説明する。
【0059】
*ブローオフ試験について
この試験は、ポップミサイルの有無を判定するためのものであり、まず、図8に示すように、圧力テスター100に缶蓋101をセットするとともに、圧力室102に空気を供給して缶蓋101の内面に圧力を付与する。その後、圧力室102を所定の試験耐圧(後述)に設定し、圧力室102に空気を供給している供給通路のコック(図示せず)を閉める。つぎに、タブ103の持ち上げ部104にチェーンフック105を掛けるとともに、チェーンフック105を缶蓋101の厚さ方向(上方)に引き上げる。
【0060】
このようにして、缶蓋101のスコア溝にせん断力を与えて初期開口(ポップ)させることにより、この開口部分からの空気を噴出(ブローオフ)させると同時に、ポップミサイルの有無を評価した。そして、このブローオフ試験の結果、開口片がパネル部から分離して吹き飛ぶ「ポップミサイル」が発生した缶蓋については、不良「×」と判定している。具体例1,2では、各実施例および各比較例共に20枚づつについて、この試験をおこなっている。すなわち、分母が試験個数であり、分子が不良個数を示している。なお、具体例1においては、試験耐圧が5.5kg/cm2 に設定され、具体例2においては、試験耐圧が6.3kg/cm2 に設定されている。
【0061】
*開蓋性試験について
図9に示すように、傾斜引張試験機110を使用して、鉛直線H1に対する缶蓋106の傾斜角θ3が20度になるように、缶蓋106を保持している缶蓋セット台(図示せず)を傾けるとともに、缶蓋106を、タブ107の持ち上げ部108が、図9で上方に向くようにセットする。そして、持ち上げ部108のリングにチェーンフック109を掛け、その状態で、缶蓋106を図9において右方向に水平移動させ、その開蓋の状態を確認した。この試験の結果、主スコア溝が終端(ヒンジ部直前)まで破断させることができなかった場合は、開蓋不良と判定した。ちなみに、具体例1,2では各実施例および比較例とも各20枚づつ試験をおこなった。すなわち、分母が試験個数であり、分子が不良個数を示している。
【0062】
*内面品位検査試験について
アセトン硫酸銅試験液(純水約500 mlに、界面活性剤1gと、CuSO4 を50gと、HClを35%含有する水溶液(12規定)200 mlとを加えて撹拌し、さらに純水を加えてトータル1000mlにして、これにアセトン1000mlを加えて試験液を作成)を缶蓋内面に注いで10分間浸漬し、その後、缶蓋を水洗し、実体顕微鏡によって缶蓋のスコア溝付近の内面の腐蝕状態を観察した。そして、腐蝕している箇所で所定値以下の点蝕が1点発生した場合、または発生しない場合は「○」、所定値以下の大きさの点蝕が2点または3点発生した場合や、あるいは所定値を越える大きさの点蝕が1点発生した場合は「□」と判定し、「○」または「□」と判定された缶蓋はいずれも合格と判定している。これに対して、腐食点が4つ以上発生している場合や、腐食が点でなく連続して発生している場合は、その缶蓋を不良「×」と判定した。
【0063】
ここで、上記実施形態の缶蓋において、その構成の一部を変更する例について説明する。すなわち、主スコア溝を長さ方向に断続的に形成することも可能である。ただし、開口片の押圧時に、蓋部が主スコア溝以外の箇所で破断されることのない程度にする必要がある。また、主スコア溝の幅を長手方向の全域において同一に設定し、残厚のみを異ならせることも可能である。なお、底面30,31,32は、接続部20に近接した領域、具体的には蓋部1Aの厚さ方向におけるタブ1Cの投影領域以外の領域に設けないようにすることが好ましい。その理由は、底面30,31,32を、蓋部1Aの厚さ方向におけるタブ1Cの投影領域以外の領域に設けると、タブ1Cの押圧力が底面30,31,32に作用しにくくなり、開蓋性が低下するからである。
【0064】
【発明の効果】
以上のように、請求項1の発明によれば、第1湾曲部の湾曲範囲が、リベットの中心を基準として110度乃至130度の広範囲に設定されているために、スコア溝の初期破断時にそのスコア溝を可及的に長く破断することができ、ガス抜きが促進されてガス圧と大気圧とが同じになりやすい。また、接続部が第1湾曲部とは逆方向に湾曲されているとともに、破断誘導部が形成されているため、スコア溝の破断進行方向の先端がスコア溝の幅方向に積極的に移動し、スコア溝の破断が遅延される。したがって、缶の内容物の圧力が開口片の裏面に作用したとしても、つなぎ部の破断が回避され、開口片がパネル部から離脱する、いわゆるポップミサイル現象を防止することができる。
【0065】
請求項2の発明によれば、請求項1と同様の効果を得られるほか、第2湾曲部が、リベットの中心を通過し、かつ、タブの幅方向に延びる線分に近接することが抑制されるため、スコア溝の第2湾曲部に作用して第2湾曲部を破断するためのせん断力の上昇が防止される。したがって、スコア溝の初期開口に要する荷重の増加が抑制され、開口面積を拡大した缶蓋の場合でも、開蓋性を良好に維持することができる。
【0066】
請求項3の発明によれば、第1湾曲部の湾曲範囲が、リベットの中心を基準として110度乃至130度の広範囲に設定されているために、スコア溝の初期破断時にそのスコア溝を可及的に長く破断することができ、ガス抜きが促進されてガス圧と大気圧とが同じになりやすい。また、第1湾曲部とは逆方向に湾曲された接続部と、この接続部側の近接位置にスコア溝の底面の残厚を厚くさせた隆起部とからなる破断誘導部が形成されているため、スコア溝の破断進行方向の先端がスコア溝の幅方向に積極的に移動し、スコア溝の破断が遅延される。したがって、缶の内容物の圧力が開口片の裏面に作用したとしても、つなぎ部の破断が回避され、開口片がパネル部から離脱する、いわゆるポップミサイル現象を防止することができる。
また、缶の内容物の圧力によりパネル部より下方に押し下げられている開口片が、ガスの圧力により押し上げられる際に、パネル部と開口片との破断面同士の摩擦抵抗が高められ、スコア溝の破断を一層確実に遅延させることができ、ポップミサイル現象の防止機能が向上する。
【0067】
請求項4の発明によれば、スコア溝の底面の外周側にせん断応力が集中することが緩和されるため、スコア溝のポップ時に、第1湾曲部のスコア溝の外周側で発生したスコア溝の破断先端が、接続部においてスコア溝の内周側に移動することを一層促進させることができる。また、この傾斜角度の変更は、スコア溝の形状自体の設計変更により可能であるため、缶蓋の製造工程において、缶蓋に無用な圧縮荷重や加工硬化などのストレスが作用することはなく、缶蓋の内面に施されている内面被膜の損傷が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明に係る缶蓋の部分的な平面図である。
【図2】 この発明に係る缶蓋の全体的な平面図である。
【図3】 この発明に係る缶蓋であり、タブを省略した状態の全体的な平面図である。
【図4】 この発明に係る缶蓋のリベット付近におけるスコア溝付近の拡大平面図(説明の都合上、スコア溝の幅を強調して図示している)である。
【図5】 図4のV−V線における断面図である。
【図6】 図4のVI−VI線における断面図である。
【図7】 図4のVII−VII線における断面図である。
【図8】 缶蓋の初期開口時におけるポップミサイルの有無を評価するための試験状態を示す概略断面図である。
【図9】 缶蓋の開蓋性を評価するための試験状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1…缶蓋、 1B…リベット、 1C…タブ、 2…パネル部、 13…開口片、 16…つなぎ部、 17…主スコア溝、 18…副スコア溝、 19…第1湾曲部、 21…第2湾曲部、 20…接続部、 24,31,39…底面、E1…中心線、 25,26,35,36,40,41…傾斜面、 45…持ち上げ部、 48…押し下げ部、 A1…リベット中心、 B1…線分、 C1,D1…曲率中心、 R1…隆起部、 X1,X2…線分、 t1,t2,t3t4…残厚、 β1,β2…傾斜角。

Claims (4)

  1. 円板形状のパネル部と、
    このパネル部に対して接続され、かつ、つなぎ部を除く開放形状のスコア溝により区画された開口片と、
    前記パネル部のほぼ中央で前記開口片の外側に対してリベットにより連結されるとともに、前記パネル部側に配置された持ち上げ部と、前記開口片側に配置された押し下げ部とを有するタブとを備え、
    前記スコア溝が、前記パネル部側の曲率中心を基準として湾曲された第1湾曲部と、この第1湾曲部における前記つなぎ部とは反対側の端部に接続され、かつ、前記開口片側の曲率中心を基準として湾曲された第2湾曲部とを有する正内圧缶用開口容易缶蓋において、
    前記第1湾曲部が、前記リベットの中心を通過し、かつ、前記タブの長手方向に延びる線分を境として実質的に線対称に配置されているとともに、前記第1湾曲部の両端と前記リベットの中心とを結ぶ2つの線分の前記開口片側における開き角度が110度乃至130度に形成され、
    前記スコア溝における前記第1湾曲部と前記第2湾曲部との間に、前記スコア溝を隔てて前記リベットの中心とは反対側の曲率中心を基準として湾曲された接続部が形成され、この接続部の曲率半径が前記第1湾曲部の曲率半径よりも小さく設定されているとともに、
    前記第2湾曲部における前記接続部側の近接位置に、前記スコア溝の残厚が前記スコア溝の他の部分の残厚より厚く設定されることにより、前記スコア溝の残存部分にせん断応力を作用させて破断する際の破断進行方向の先端を、前記スコア溝の幅方向に移動させる破断誘導部が設けられていることを特徴とする正内圧缶用開口容易缶蓋。
  2. 前記接続部の曲率半径が1.2mm未満であることを特徴とする請求項1に記載の正内圧缶用開口容易缶蓋。
  3. 円板形状のパネル部と、
    このパネル部に対して接続され、かつ、つなぎ部を除く開放形状のスコア溝により区画された開口片と、
    前記パネル部のほぼ中央で前記開口片の外側に対してリベットにより連結されるとともに、前記パネル部側に配置された持ち上げ部と、前記開口片側に配置された押し下げ部とを有するタブとを備え、
    前記スコア溝が、前記パネル部側に曲率中心を有する第1湾曲部と、この第1湾曲部における前記つなぎ部とは反対側の端部に接続され、かつ、前記開口片側に曲率中心を有する第2湾曲部とを有する正内圧缶用開口容易缶蓋において、
    前記第1湾曲部が、前記リベットの中心を通過し、かつ、前記タブの長手方向に延びる線分B1を境として実質的に線対称に配置されているとともに、前記第1湾曲部の両端と前記リベットの中心とを結ぶ2つの線分X1およびX2とのなす前記開口片側における開き角度が110度乃至130度に形成され、
    前記第1湾曲部における前記つなぎ部とは反対側の端部に、前記第1湾曲部とは反対方向に湾曲された曲率半径1.2 mm 未満の接続部と、前記第2湾曲部における前記接続部側の近接位置に前記スコア溝の底面の残厚を厚くして隆起させた隆起部とから構成される破断誘導部が配置され、
    前記スコア溝にせん断応力を作用させて破断する際の破断進行方向の先端が、前記接続部において前記スコア溝の外周側から内周側に移動し、前記隆起部において前記スコア溝の内周側から外周側に移動せしめることを特徴とする正内圧缶用開口容易缶蓋。
  4. 前記スコア溝の幅方向の中心線と、前記スコア溝に臨む前記パネル部側の傾斜面とにより設定される傾斜角度が、前記中心線と前記スコア溝に臨む前記開口片側の傾斜面とにより設定される傾斜角度よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の正内圧缶用開口容易缶蓋。
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