JP4208317B2 - エレベータの荷重演算装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、かご下に設けられた複数個の荷重検出器からの荷重検出信号に基づいてかごの荷重信号を演算するエレベータの荷重演算装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の技術向上によりエレベータに対しても、様々な面で性能向上が図られている。特に、エレベータの昇降開始時における起動ショックを回避し、乗心地の品質向上を図るようにしている。これは、かご下に設けられた複数個の荷重検出器からの荷重検出信号により、かごの荷重信号を演算し、その荷重信号をエレベータ制御装置で補償制御することにより行われる。
【0003】
図4は、そのようなエレベータでの荷重補償システムの説明図である。図4では、つるべ式のローブ式エレベータの荷重補償システムを示しているが、巻胴式など他のエレベータにおいても荷重補償システムの原理は同じである。
【0004】
図4において、かご1は巻上機(モーター)2を介して釣合おもり3と対等しているが、釣合おもり3は常に一定重量なのに対して、かご1の荷重は利用乗客の増減により常時変動する。そのために、乗客の昇降の都度に荷重面でのアンバランス状態が生じている。
【0005】
エレベータ制御装置4はエレベータのかごの昇降開始に際して、巻上機2のブレーキを開放し、制御電流を印加する。この場合、かご荷重と釣合おもり3とがアンバランス状態であると、単なるブレーキ開放ではショックが大きくなる。つまり、ブレーキを開放したときに一瞬重い方に沈み込む現象が生じ、ショックが発生する。
【0006】
これの対策として、かご1下に複数個からなる荷重検出器5を設置し、かご1およびかご1内に印加された荷重量を個々に振り分けて検出している。そして、個々の荷重検出信号wの和算を行い、かご1およびかご内荷重量を演算するようにしている。すなわち、各々の荷重検出器5で検出された荷重検出信号wは荷重演算装置6に入力され、個々の荷重検出信号wの和算が行われ、さらに所定の増幅が行われて荷重信号Wとしてエレベータ制御装置4に出力される。
【0007】
エレベータ制御装置4では、荷重信号Wに基づいてかご1と釣合おもり3とのアンバランスの具体量を演算し、エレベータの起動に際してそのブレーキ解放前に巻上機2に対して荷重補償信号(電流)を印加する。これにより巻上機2には、かご1と釣合おもり3とのアンバランス状態を解消する方向に回転力(トルク)が発生し、擬似的なバランス状態が作り出される。
【0008】
この擬似的バランス状態でブレーキを開放することにより、エレベータの起動ショックが回避でき、以降電流を増減することにより安定したかごの乗り心地が実現される。
【0009】
図5は、従来の荷重演算装置6の構成図である。複数個の荷重検出器5a〜5dが検出した荷重検出信号wa〜wdは加算手段7で加算され、合計荷重検出信号wtが得られる。この合計荷重検出信号wtは、増幅器8にて増幅され荷重信号Wとして出力される。
【0010】
一般に、各々の荷重検出器5a〜5dで検出される荷重検出信号wa〜wdは微弱な信号レベルであるので、その合計値である合計荷重検出信号wtも微小な信号である。そこで、増幅器8で合計荷重検出信号wtを増幅し、エレベータ制御装置4まで伝送する過程において信号レベルの安定強化を図っている。
【0011】
小型エレベータでは、かご1下の中央部に1個の荷重検出器5を設置して、かご1の全荷重を検出するようにしたものもあるが、一般には、複数個の荷重検出器5をかご下の要所に分散配置して、精度良くかご荷重を検出するようにしている。つまり、高速エレベータ、大型エレベータ、高級エレベータでは、かご荷重の検出を精度良く行い、起動ショックを精度良く補償を行うようにしている。複数個の荷重検出器5のかご下への設置は、多くの場合、かご下の4端に配置することで、その機能を実現している。
【0012】
このようなエレベータの荷重補償システムは、エレベータの起動ショックの補償(乗心地制御への利用)の他に、群管理制御(乗降に関するアナウンス、最適号機の割付制御等)にも活用されており、制御システム上の重要なポイントを担っている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、万一、荷重検出器5に故障や不良が生じた際には、荷重補償機能に大きく狂いが生じてしまう。例えば、エレベータ起動時において、かご1と釣合おもり3との疑似バランス状態が作れなくなり、起動ショックが回避できなくなる。また、故障した荷重検出器5の出力内容によっては起動ショックを助長させる場合も起こり得る。
【0014】
起動ショックは一般にかご1の縦振動として生じるが、この縦振動はかご1内の乗客に不快感をあたえるばかりか、現象が顕著な場合には心理的に恐怖感を与えることになる。これに対して、現状では荷重検出器5からの荷重検出信号wa〜wdに基づいて荷重補償制御を行っているので、そのバックアップ機能が存在しないのが実状である。
【0015】
複数個の荷重検出器5を設置することは、検出精度向上の観点から有効であるが、荷重補償システム全体の装置の故障率の観点から考えればむしろマイナス要因となってしまう。
【0016】
本発明の目的は、荷重検出器が故障した場合に適正に対処できるエレベータの荷重演算装置を提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明に係わるエレベータの荷重演算装置は、かご下に設置された複数個の荷重検出器で検出された荷重検出信号を加算する加算手段と、前記加算手段で加算された合計荷重検出信号を増幅しエレベータ制御装置に安定した荷重信号を出力する増幅器と、前記複数個の荷重検出器の各々の荷重検出信号を監視しいずれかの荷重検出器の異常を検出したときはその旨をエレベータ制御装置に出力する異常検出手段とを備え、前記異常検出手段は、各々の荷重検出器の荷重検出信号の変化を監視し、所定量以上の変動が基準時間内に発生し、かつその現象が単位時間内に設定回数以上発生したときは、その荷重検出器を異常と判定することを特徴とする。
【0018】
請求項1の発明に係わるエレベータの荷重演算装置では、加算手段で加算された合計荷重検出信号を増幅器で増幅し、エレベータ制御装置に安定した荷重信号を出力する。この状態で、複数個の荷重検出器の各々の荷重検出信号を異常検出手段で監視し、所定量以上の変動が基準時間内に発生し、かつその現象が単位時間内に設定回数以上発生したときは、その荷重検出器を異常と判定し、いずれかの荷重検出器の異常を検出したときは、その旨をエレベータ制御装置に出力する。エレベータ制御装置は荷重検出器の異常の通知を受けたときは、予防保全制御を実施する。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係わるエレベータの荷重演算装置の構成図である。この第1の実施の形態は、図5に示した従来例に対し、複数個の荷重検出器5a〜5dの各々の荷重検出信号wa〜wdを監視し、いずれかの荷重検出器5の異常を検出したときはその旨をエレベータ制御装置4に出力する異常検出手段9が追加して設けられている。その他の構成は、図5に示した従来例と同一であるので、同一要素には同一符号を付しその説明は省略する。
【0028】
図1において、荷重検出器5a〜5dより出力される荷重検出信号wa〜wdは、加重演算装置6の加算手段7に入力されると共に、異常検出手段9にも入力される。異常検出手段9では、荷重検出信号wa〜wdをそれぞれの信号毎に解析し、何れかの信号に異常があるか否かを判定する。そして、異常があると確認された場合には故障情報出力Aをエレベータ制御装置4に出力する。
【0029】
エレベータ制御装置4は、故障情報出力Aを入力した場合には荷重検出信号wの異常により荷重補償機能に異常を来すことになるので、エレベータのサービスを中止するなどして、起動ショック状態にてエレベータが継続使用されることを阻止する。これにより、乗客の不安が倍加するといった問題を回避する。
【0030】
荷重検出信号wa〜wdに異常があるか否かを判定は、荷重検出信号wa〜wdの出力値自体が本来の出力範囲を逸脱した状態であるか否かで判定される。すなわち、荷重検出信号wa〜wdが分担するかご1のみの場合の荷重から、乗客満載の場合の荷重までの出力範囲を逸脱した状態であるか否かで判定する。
【0031】
また、荷重検出信号wa〜wdの異常検出の精度を向上させる場合には、さらに、次のような判定を行う。通常のエレベータの運転においては、複数個の荷重検出器5a〜5dは、ほぼ均等にかご1の荷重を分担して検出するようにしているので、荷重検出器5a〜5dからの荷重検出信号wa〜wd間には、極端な差は生じない。そこで、この特性を利用し、他の荷重検出信号wとの比較を実施し、当該系のみ出力特性が一定量以上外れている場合には、その荷重検出信号5を異常と判断する。これにより、出力値が本来の出力範囲内であっても特性異常が判断できる。これにより、異常検出の精度が向上する。
【0032】
さらに、荷重検出信号wa〜wdに異常検出の精度を向上させる場合には、以下の判定を行う。各々の荷重検出信号wa〜wdの値の変化を監視し、一定量以上の変動が基準時間内に発生し、かつその現象が一定時間内に設定回数以上であるか否かを判定する。そして、これらの条件が満たさせる場合には荷重検出信号wは異常と判断する。
【0033】
つまり、出力信号値はかご1内の乗客の移動により変化するので、例えば100ms毎の検出サイクルにて値の変化を監視する。この場合、連続的に徐々に値が変化することはあっても急速に一定量以上の変化が生じるとは考え難い。そこで、この現象が頻発した際には、出力信号がノイズ等の他の要因が重畳して、不安定な状態になっていると考えられるので、荷重検出信号の異常と判断する。これにより、異常検出の精度がさらに向上する。
【0034】
ところで、図1に示すように、異常検出手段9にはエレベータ制御装置4よりエレベータ運行情報Sが入力されており、異常検出手段9の動作時間をエレベータ停止時(起動直前)のみに限定するようにしている。つまり、かご1の加減速中や走行中には異常検出手段9を不動作とする。荷重検出器5a〜5dはエレベータの運転・停止に関わらず機能し続ける。従って、かご1の加減速中や走行中にも異常検出手段6を動作させる場合には、荷重検出信号wa〜wdの異常判定の基準の設定に関し、エレベータの昇降に伴う加減速時の慣性力、振動等の影饗を含めて検討しなければならないことになる。
【0035】
そこで、エレベータの停止時においてのみ異常検出手段9を動作させるようにし、純粋にエレベータの停止状態での荷重検出信号wa〜wdを監視すれば良いようにしている。これにより、エレベータの運行の影響を払拭することができる。従って、荷重検出信号wa〜wdの異常判定の判定基準をより狭めることも可能となり、より高品質な異常検出手段9が実現される。
【0036】
以下、本発明の第2の実施の形態を説明する。図2は、本発明の第2の実施の形態に係わるエレベータの荷重演算装置の構成図である。この第2の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態に対し、各々の荷重検出器5a〜5dと加算手段7との間に接点手段10a〜10dを設け、異常検出手段9は、荷重検出器5a〜5dの異常を検出したときは、その異常となった荷重検出器5を接点手段10により加算手段7から切り離し、切り離した荷重検出器5の個数に応じて増幅器8の増幅率を変更するようにしたものである。その他の構成は、図1に示した第1の実施の形態と同一であるので、同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0037】
異常検出手段9は、荷重検出器5a〜5dの荷重検出信号wa〜wd毎に解析し、何れかの荷重検出信号wに異常が確認された場合には、故障情報出力Aを出力する。その際に、異常検出手段9は異常を検出した荷重検出器5の接点手段10に対し、切離信号を出力する。
【0038】
例えば、荷重検出信号waが異常であった場合には、接点手段10aに対し切離信号を出力し、加算手段7に故障した荷重検出器5aによる荷重検出信号waが入力されるのを防止する。この場合、加算手段7に入力される荷重検出信号wの数が一系統分(a系統の荷重検出信号wa)だけ減少することになるので、合計荷重検出信号wtの出力レベルも一系統分減少することになる。
【0039】
各々の荷重検出器5a〜5dの荷重検出の分担比率がほぼ同じであるとすると、合計荷重検出信号wtは一系統減少によりほぼ3/4の出力になる。この際に、異常検出手段9は増幅器8に対して、それを補償するために4/3倍の増幅指令を出力する。すなわち、増幅器8は異常検出手段9からの増幅指令を受けて一系統分の減少を補正する分だけ増幅率を向上させ、本来の系統数に近似した出力を荷重信号Wとして継続出力する。
【0040】
もちろん、本来の系統数全てを用いた荷重信号Wに対して、その精度は若干落ちるものの、かご1内への荷重のかかり方(乗客の乗り方)に極端な偏りがない限り、複数個の荷重検出器5a〜5d)からの荷重検出信号wa〜wdに極端な差は生じないので、特に問題は生じない。
【0041】
図3は、本発明の第2の実施の形態におけるか重演算装置の異常検出手段7での演算処理内容を示すフローチャートである。まず、荷重検出信号wを入力し(S1)、その荷重検出信号wは接点手段10により加算手段7から切り離されているか否かを判定する(S2)。加算手段7から切り離されていない場合には、その荷重検出信号wは出力基準範囲になるか否かを判定する(S3)。この場合の出力基準範囲は、かご1のみの場合の荷重から乗客満載の場合の荷重までの範囲である。これらの範囲を逸脱した場合には、その荷重検出器5は異常であると判定する。
【0042】
次に、荷重検出信号wが出力基準範囲内であるときは、他の荷重検出信号wとの比較を実施し(S4)、その差が一定量以上外れているか否かを判定する(S5)。その差が一定量以上のときは、さらに、各々の荷重検出信号wa〜wdの値の変化を監視し荷重検出信号wが異常であるか否かを判定する(S6)。このステップS6では、荷重検出信号wに一定量以上の変動が基準時間内に発生し、かつその現象が一定時間内に設定回数以上であるか否かを判定する。そして、これらの条件が満たさせる場合には荷重検出信号wは異常と判断する。
【0043】
ステップS6の判定で、荷重検出信号wが異常でないと判定されたときは、すべての荷重検出信号wについて判定されたか否かを判断し(S7)、判定が完了していないときは次の荷重検出信号wの異常か否かの判定を行うべくステップS1に戻る。
【0044】
ステップS3、ステップS5、ステップS6の判定で、荷重検出信号wが異常であると判定されたときは、その荷重検出信号wが異常である旨の故障上をエレベータ制御装置4に出力する(S8)。そして、その異常となった荷重検出信号wの加算手段7への入力を阻止すべく、接点手段10に切離信号を出力すると共に(S9)、増幅器8に増幅指令信号を出力する(S10)。この増幅指令信号は、切り離した荷重検出器5の個数に応じて増幅器8の増幅率を変更するようにした指令である。
【0045】
このように、第2の実施の形態では、異常検出手段9は、故障情報出力Aの出力と共に荷重信号Wに対する補正処置がなされているので、エレベータの運転サービスは継続させることができ、しかも、エレベータ制御装置内の故障灯の点灯や遠隔監視装置を利用した監視センターへの通報等、報知手段として活用することができる。これにより、エレベータのサービスを長時間中断することなく、故障した荷重検出器5aの早期の修理交換や復旧が可能となる。
【0046】
ここで、異常検出手段9や接点手段10は、小規模の汎用マイコン、A/D・D/A変換器、小型リレー、基本ロジック回路等の組み合わせにて容易に実現可能である。従って、簡単な追加構成にてエレベータ制御装置の重要なウエイトを占める荷重補償機能に対しての信頼性向上が図れる。
【0047】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、複数個のいずれかの荷重検出器が故障した際にも、故障の検出や対策が可能となるので、エレベータの起動時に発生する起動ショックを伴った状態にてエレベータの昇降運転が継続されることがない。これにより、信頼性が向上した荷重演算装置を提供できる。また、故障に対しての早期の復旧も可能となるため、使い勝手の良いエレベータ制御装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態に係わるエレベータの加重演算装置の構成図である。
【図2】図2は、本発明の第2の実施の形態に係わるエレベータの加重演算装置の構成図である。
【図3】図3は、本発明の第2の実施の形態における荷重演算装置の異常検出手段での演算処理内容を示すフローチャートである。
【図4】図4は、従来のエレベータにおける荷重補償システムを示す構成図である。
【図5】図5は、従来の荷重演算装置の構成図である。
【符号の説明】
1 かご
2 巻上機
3 釣合おもり
4 エレベータ制御装置
5 荷重検出器
6 荷重演算装置
7 加算手段
8 増幅器
9 異常検出手段
10 接点手段
Claims (1)
- かご下に設置された複数個の荷重検出器で検出された荷重検出信号を加算する加算手段と、前記加算手段で加算された合計荷重検出信号を増幅しエレベータ制御装置に安定した荷重信号を出力する増幅器と、前記複数個の荷重検出器の各々の荷重検出信号を監視しいずれかの荷重検出器の異常を検出したときはその旨をエレベータ制御装置に出力する異常検出手段とを備え、前記異常検出手段は、各々の荷重検出器の荷重検出信号の変化を監視し、所定量以上の変動が基準時間内に発生し、かつその現象が単位時間内に設定回数以上発生したときは、その荷重検出器を異常と判定することを特徴とするエレベータの荷重演算装置。
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