JP4207819B2 - 非球面光学素子の製作方法 - Google Patents

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Description

本発明は、各種計測装置に用いられる非球面光学素子の製作方法に関するものである。
従来より非球面光学素子を安価に製作するには、樹脂によるレプリカ法が用いられている。この方法は、まずマスター型となる高精度に研磨加工された非球面光学素子の表面を剥離剤で処理し、ネガ型母材となる球面もしくは平面基板上に付加した樹脂によりマスター型の反転形状を転写する方法によりネガ型を製作する。その後、このネガ型を用いて再度球面もしくは平面基板上に付加した樹脂上にネガ型の反転形状を転写することによりマスター型と同じ形状の非球面光学素子を製作する。
同じく樹脂によるレプリカ法であるが、所望の非球面光学素子の反転形状のネガ型を直接製造し、この反転形状を球面もしくは平面基板上の樹脂に転写することにより非球面光学素子を製作する方法もある。
また、高精度を得るために製品の基板そのものを粗い非球面にする方法(例えば、特許文献1参照)やネガ型をマスター型の反転形状とした方法が提唱されている。(例えば、特許文献2参照)。
特開昭63-157103号公報 特願2003-362489
マスター型となる光学素子の非球面形状と近似の球面もしくは平面基板を用いて樹脂によるレプリカ法により非球面光学素子を製作する場合、型と基板間の形状の差が大きくなると、樹脂の硬化収縮により、製作された非球面光学素子の精度が得難くなる。このとき精度のずれの概算値は、形状の差に硬化収縮率を掛けたものになる。例えば、形状の差が30μmで、硬化収縮率が2%の樹脂を用いた場合、硬化収縮のみで30×2÷100=0.6μmも精度が悪化してしまう。この精度が悪化したものをネガ型として用い、もう一度レプリカ法により反転形状をとるので製品の面精度は一層悪化する。
これを解決するために、前記特許文献1に記されているように製品の基板そのものを粗い非球面にした場合は、いかに粗い非球面とは言え平面や球面に比較すると製造工程が複雑化することは避けられず、全ての製品に非球面基板を用いることはコストの面で得策ではない。
また、前記特許文献2に記されているようにネガ型の基板をマスター型と凹凸反転した非球面にする方法もあるが、これでもまだ、樹脂の硬化収縮による面精度の悪化は残ってしまう。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、マスター型からネガ型へレプリカとネガ型から非球面光学素子へのレプリカの2回のレプリカにより、樹脂の収縮率を打ち消しあうようにネガ型の基板の形状を決定する。このネガ型の基板を用いることで、より高精度な非球面光学素子を安価に製作する方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明方法では、ネガ型基板に数式1で表される形状を持たせる。
[数式1] FN=−(2×FM−FR−s×FM)/(1−s)
N:ネガ型基板の形状を表す関数
M:マスター型となる高精度に研磨加工された非球面光学素子の形状を表す関数
R:最終製品となる非球面光学素子の基板となる球面もしくは平面の形状を表す関数
s:樹脂の収縮率
数式1にて表される形状の基板を用いて樹脂によるレプリカ法でネガ型を製作する。マスター型とネガ型基板との間の樹脂厚さに樹脂の収縮率を掛けた硬化収縮の大きさと、次にネガ型より樹脂によるレプリカ法により最終製品となる非球面光学素子基板との間の樹脂厚さに樹脂の収縮率を掛けた硬化収縮の大きさとを打ち消しあわせることで面精度の悪化を防ぐことが可能になる。
上述のように、本発明により製作されるネガ型の基板は計算により求められる非球面形状であって加工コストはやや高くなるが、一度レプリカ法によりネガ型を製作すれば何度も繰り返し利用できるため、製品の基板そのものを非球面にした従来法に比べて格段に安く非球面光学素子を製作することができる。即ち、本発明になる製作方法は、より高精度な非球面光学素子を低コストで量産することができるという優れた効果を有する。
以下、本発明の実施の形態を図1及び図2に従って説明する。
図1はマスター型1からネガ型23を製作する過程を示したもので、先ず、マスター型1となる高精度に研磨加工された非球面光学素子表面を剥離剤で処理しておく。次に、図1Aのように数式1の形状に製作したネガ型基板3とマスター型1との間に樹脂層2を挟み、熱や光などの樹脂硬化手段6により樹脂層2を硬化させる。樹脂層2と非球面基板3とは接合されてネガ型23となる。樹脂層2が硬化した後に、図1Bのようにマスター型1からネガ型23を分離する。このとき樹脂層2の表面はマスター型1の反転形状から樹脂の硬化収縮により変形して転写される。
図2は、上記により製作されたネガ型23を用いて製品となる非球面光学素子45を製作する過程を示したものである。このネガ型23の表面を前記マスター型1の場合と同じように剥離剤で処理した後、図2Aのように球面もしくは平面基板5とこのネガ型23との間に樹脂層4を挟み、樹脂硬化手段6により樹脂層4を硬化させる。このとき硬化することにより接合された樹脂層4と球面もしくは平面基板5とが合わさったものが本発明により製作される非球面光学素子45となる。樹脂層4が硬化した後に、図2Bのようにネガ型23から非球面光学素子45を分離する。このとき樹脂層4はネガ型23の反転形状から樹脂の硬化収縮により変形して転写される。このときの変形と、ネガ型23を製作するときの変形が数式1の形状の場合に打ち消しあうことが出来る。
このようにして、球面もしくは平面基板5の表面に樹脂層4を付加することにより非球面光学素子45を製作する。
一方の面が回転対称非球面であるガラスレンズの製作方法について説明する。
まず、マスター型となる高精度に研磨加工された非球面レンズを用意する。このレンズの非球面側の面にUV硬化樹脂との剥離性をもつ物質をディップ法や蒸着法などにより積層する。この時表面を保護するために剥離層とマスターとの間に保護層を設けてもよい。
次に、マスター型と球面ガラス基板および樹脂の硬化収縮率から数式1を用いて非球面ネガ型基板全面での形状を計算する。このとき、NC(数値制御,Numerical Control)加工機の能力により、計算のために基板全面を分割する大きさは決められる。この計算された形状となるように、NC旋盤により非球面ネガ基板を製作する。この時非球面ネガ型基板の表面は、必ずしも鏡面に仕上がっている必要はない。また、この形状の計算は、先に計算を行っておく必要はなく、NC加工中に逐次計算を行うこともできる。
非球面ネガ型基板表面にUV硬化樹脂を滴下し、マスター型で挟み込み、UV光を照射して樹脂を硬化させ、その後、マスター型と非球面ネガ型基板を分離する。非球面ネガ型基板表面はUV硬化樹脂により、マスター型の表面が樹脂の硬化収縮による変形量分だけ変形して反転転写される。このとき面粗さもネガ型表面の樹脂に転写される。この非球面ネガ型基板と樹脂層とが接合されたもの全体をネガ型として使用するので、その表面にマスター型と同様に剥離層を設ける。
別途、一般的な研磨法により非球面と近似の球面にしてあるガラス基板を製作しておき、ネガ型表面に滴下したUV硬化樹脂をこの球面ガラス基板で挟み込み、UV光を照射し樹脂を硬化させる。その後、樹脂層が接合された球面ガラス基板からネガ型を分離すれば、ネガ型より樹脂の硬化収縮による変形量分だけ変形して反転転写され、変計量が打ち消しあうことによりマスター型と同形の非球面レンズが得られる。
両面が非球面の場合は、同様の工程を両面に対して行うことで対応することができる。
次に、軸外楕円面鏡の製作方法について説明する。
マスター型となる高精度に研磨加工された軸外楕円面鏡を用意し、マスター型の表面に金を蒸着し剥離層とする。次に、NC研削機によりによりマスター型と球面ガラス基板および樹脂の硬化収縮率を用いて数式1より計算された形状の非球面ネガ型基板を製作する。
軸外楕円面基板表面に熱硬化樹脂を滴下し、マスター型の軸外楕円面で挟み込み加熱し、樹脂を硬化させる。その後、マスター型と軸外楕円面基板を分離する。軸外楕円面基板表面は熱硬化樹脂により、マスター型の表面が樹脂の硬化収縮による変形量分だけ変形して反転転写される。このとき面粗さもネガ型表面の樹脂に転写される。この非球面ネガ基板と樹脂層とが接合したもの全体をネガ型として使用するため、その表面に金を蒸着し剥離層を設けておく。続いて、軸外楕円面鏡の基板となる金属材料を機械加工により軸外楕円面と近似の球面形状にしておく。
ネガ型表面に熱硬化樹脂を滴下し、上記球面金属基板で挟み込み加熱し、樹脂を硬化させる。その後、ネガ型と球面金属基板を分離する。分離後の球面金属基板表面の熱硬化樹脂上にアルミや金を蒸着することにより、軸外楕円面鏡を製作する。
本発明の非球面光学素子の製作方法は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることにより広範囲の利用可能性がある。
本発明において非球面マスター型からネガ型を製作する過程を示す断面図 本発明においてネガ型から製品となる非球面光学素子を製作する過程を示す断面図
符号の説明
1 マスター型
2 樹脂層
3 ネガ型基板
4 樹脂層
5 球面もしくは平面基板
6 樹脂硬化手段
23 ネガ型
45 非球面光学素子

Claims (1)

  1. 非球面形状を有するマスター型の該非球面形状を、樹脂によるレプリカ法でネガ型の表面に反転転写した後、前記ネガ型表面に形成された樹脂層に反転転写した前記マスター型の非球面形状を、同じく樹脂によるレプリカ法で最終製品となる光学素子基板の球面もしくは平面部に反転転写することによって、非球面光学素子を製作する方法であって、前記マスター型から前記ネガ型への反転転写時に前記マスター型の非球面形状と前記ネガ型の表面との間に形成される樹脂層の厚さに樹脂の収縮率を掛けた硬化収縮による変形量と、前記ネガ型から前記光学素子基板への反転転写時に前記ネガ型の表面に形成された樹脂層と光学素子基板の球面もしくは平面部との間に形成される樹脂層の厚さに樹脂の収縮率を掛けた硬化収縮による変形量とが打ち消しあうように前記ネガ型の表面形状を製作することを特徴とする、非球面光学素子の製作方法。
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