JP4206848B2 - 幼児用シートの取付構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は幼児用シートの取付構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両のシートへの幼児用シートの取付けに関し、取付け作業方法の統一化を図りユーザーの誤取付けを防止することを狙いとして、車両に本来配置されている車両用シート側の構造と後付けされる幼児用シート側の構造並びにその取付け方法を自動車メーカー及び幼児用シートメーカーの間で規格化することが行われている。ISO-FIXと称するものはそのような規格であり、車両用シート側のシートバックとシートクッションとの隙間に所定の間隔だけ離間して形成された一対のロアアンカを車体側に設けるとともに、ロアアンカに係合可能なロックを幼児用シート側に設けることを規定している。それで、ISO-FIXに準拠した幼児用シートはISO-FIXに準拠した車両用シートに対し、ロアアンカにロックを係合させることにより固定される。また、その様な構造に加え、幼児用シートの上部にトップテザーを設けるとともに、トップテザーの端部に設けられたトップテザー固定部が係合可能なテザーアンカを車体側に設け、トップテザー固定部をテザーアンカに係合させることにより幼児用シート上部の変位を防止する、ということが行われている。
【0003】
ISO-FIXに準拠したロアアンカを車体に設ける場合、ロアアンカを直接車体フロアに取り付けるか、或いは車幅方向に伸びるとともに車体フロアに固定されたクロスメンバに取り付ける、といった方法が知られている(例えば、下記特許文献1を参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−130452号公報
一方で、車室内に複数のシート列を有する車両においては、2列目シートが左右のシートが一体となったいわゆるベンチシートの形態に構成されるのが一般的である。また、幼児用シートは安全性を考慮して2列目シートに取り付けられる場合が多い。それで、その様にベンチシートの形態の2列目シートに幼児用シートを取り付けるに際しては、幼児用シートを2列目シートに固定する車幅方向位置に関して、以下のような状況が考えられる。すなわち、例えば右ハンドル車において、停車時に運転席から容易に幼児の世話を行うことが出来る様に幼児用シートを2列目シートの左側に固定したり、助手席から容易に幼児の世話を行うことが出来る様に幼児用シートを2列目シートの右側に固定したり、或いは2列目シートの後方に3列目シートが設けられている場合には2列目シートの左側のシートバックのみ前方に倒伏させることで3列目シートに乗員がアクセスしやすいように幼児用シートを2列目シートの右側に固定したり、といった状況である。つまり、2列目シートに対して幼児用シートが取り付けられる位置は、望ましい位置が状況により異なる、ということである。
【0005】
上記特許文献1においては、2列目シートの左側と右側に対応してそれぞれ幼児用シート用のロアアンカを設けている。しかしながらこのような構造においては、2列目シート上で幼児用シートの位置を変更するのに、幼児用シートのロックの係合を解除して幼児用シートを移動させ、その後新たにロアアンカとの係合を行うという作業を行う必要が生じ、作業性上好ましくない。
【0006】
また、このような問題は、ISO-FIXに準拠した車両用シート及び幼児用シートに限らず、自動車メーカーと幼児用シートメーカーとの間での独自の取り決めなどに基づいて設計された、少なくとも幼児用シート側に設けられたロックを車両側に設けられたアンカに係合させる形式の取付構造においても、同様に生じるものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、幼児用シートに設けられたロックを車両側に設けられたアンカに係合させることにより車両用シートに固定される幼児用シートの取付構造において、容易に幼児用シートの位置を移動させることが出来る構造を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するにあたり、本発明においては以下のような構成としてある。すなわち、本発明の第1の構成は、車室内に設けられた車両用シートに対し、幼児用シートの下部に設けられた少なくとも一対のロックを介して当該幼児用シートを取り付けるための、幼児用シートの取付構造であって、上記車両用シートの後下方において車幅方向に延びるとともに車体に固定されたスライドレールと、上記スライドレールにより車幅方向に摺動案内されるスライダとを有しており、上記幼児用シートの上部には、該幼児用シートが上記車両用シートに取り付けられた状態で該幼児用シートの上部から該車両用シートの上端面及び背面に沿って下方に延びるトップテザーが設けられており、上記スライダの前部には、上記幼児用シートに設けられた上記一対のロックと係合可能な一対のロアアンカが、それぞれ車幅方向に離間し且つ上記スライドレールよりも前方に突出するように固定されている一方、上記スライダの後部には、上記トップテザーが係合可能なテザーアンカが固定されており、上記一対のロアアンカと上記テザーアンカとは、互いの相対的位置関係を保ったまま上記スライダの摺動に伴って車幅方向に移動することを特徴とするものである。
【0009】
上記の構成によれば、幼児用シートを車両用シートにロック及びロアアンカを介して固定した状態であっても幼児用シートをスライドレール及びスライダを介して車幅方向に摺動させることが出来、容易に幼児用シートの位置を変更することが出来る。
【0010】
また、幼児用シートは、車両用シートに取り付けられた状態においてその下部がロック及びロアアンカにより固定されるとともに、その上部がテザーアンカ及びトップテザーにより固定される。しかもロアアンカとテザーアンカがともにスライドレール及びスライダを介して車幅方向に摺動可能であるため、幼児用シートがその下部と上部で確実に支持された状態のまま、その車幅方向位置を変更することが出来る。
【0011】
本発明の第2の構成は、上記車両用シートの後下方において、上記車両のフロア上方に少なくとも一部が上記フロアから離間するとともに車幅方向に延びるクロスメンバが設けられており、上記スライドレール及び上記車両用シートの少なくとも一部が、上記クロスメンバに支持されており、上記クロスメンバが、上記車両用シートの少なくとも一部が取り付けられる車幅方向位置近傍において、上記車両のフロアに固定されていることを特徴とするものである。
【0012】
上記の構成によれば、上記スライドレールが車両用シートの後下方において車両のフロア上から離間して設けられるクロスメンバに支持されているため、車体のフロアの形状によらず(例えば車両用シートの後方にスペアタイヤ収納用の凹部などが形成される場合でも)上記のような車幅方向に摺動可能な幼児用シートの取付構造を実現することが出来、幼児用シートの取り付けに対応した車種とそのような対応を行わない車種との間で、プラットフォームの共通化を図ることが出来る。更に、クロスメンバに車両用シートの少なくとも一部が取り付けられる車幅方向位置とクロスメンバの車両のフロアへの取付け位置が近いため、車両用シートに荷重が作用してもその荷重がスライドレールの変形に寄与することなく車両のフロアに伝達され、スライドレールの変形を最大限に防止することが出来る。
【0013】
本発明の第3の構成は、上記スライダに、上記車両用シートのシートクッションとシートバックとの隙間から露出するように構成されたスライダ位置指示部材が設けられていることを特徴とするものである。
【0014】
上記の構成によれば、スライダ位置指示部材により乗員がスライダの位置を容易に認識出来るため、幼児用シートを車両用シートに取り付ける際にスライダの位置を視認しながら確実に幼児用シートを取り付けることが出来る。
【0015】
本発明の第4の構成は、上記トップテザーが、幼児用シートの上部から、上記車両用シートの上端及び背面に沿って延び、上記スライダに設けられた上記テザーアンカに係合可能とされており、上記車両用シートの上端に、上記スライダの摺動方向と平行に延びる案内部材と、該案内部材の上方で該案内部材により上記スライダの長手方向に摺動案内される摺動部材が設けられていることを特徴とするものである。
【0016】
上記の構成によれば、トップテザーをシートの上端から背面に回りこませて、スライダに設けられたテザーアンカに係合させることにより幼児用シートを固定した場合でも、トップテザーが案内部材及び摺動部材により摺動案内されるため、幼児用シートは安定して固定された状態を保ったまま車幅方向に摺動することが出来る。すなわち、上記の様なトップテザーの構成の場合、幼児用シートを安定して固定するにはトップテザーはシート上端に対して下方に押し付けられた状態となっているが、上記の構成によれば、トップテザーは摺動部材に押し付けられることになり、幼児用シートの摺動に伴いトップテザーが摺動部材により摺動案内されるためである。
【0017】
本発明の第5の構成は、上記車両が、車両進行方向に沿って3つのシート列を有するものであり、上記車両用シートが、上記シート列のうち2列目シートであるとともに、該2列目シートのシートバックが、少なくとも上記幼児用シートの車幅方向長さと同じかそれより長い車幅方向長さ部分と残りの長さ部分とに分割されていてそれぞれ独立して前方に倒伏可能とされていることを特徴とするものである。
【0018】
上記の構成によれば、乗員が3列目シートに乗り込む際に、幼児用シートを、分割されたシートバックのうち幼児用シートの車幅方向長さ以上の長さ部分を有する側に移動させることで、分割されたシートバックの他方の部分を前方に倒伏させることが出来る。従って、そのようなシートバックの一部の倒伏により、乗員は容易に3列目シートに乗り込むことが出来る。
【0019】
【発明の効果】
上記の構成によれば、幼児用シートに設けられたロックを車両側に設けられたアンカに係合させることにより車両用シートに固定される幼児用シートの取付構造において、容易に幼児用シートの位置を移動させることが出来る。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、本発明が適用された車両の車室内を示す概略斜視図である。車室内には通常カーペットやトリム、或いは他の装備品が設けられているが、それらの図示を省略している。図示したシートは2列目シート2を示すもので、その前方には運転席と助手席からなる1列目シートが設けられており、またその後方には荷室が形成されている。また、2列目シート2のシートバック2Bについてはクッションの図示を省略し、シートバックフレームのみ図示している(以下、便宜上シートバックフレームをシートバック2Bとして説明する)。更に、2列目シート2のシートクッションについても、図示を省略している。
【0022】
また、詳細は後述するが、2列目シート2に対して、例えばISO-FIXの規格に準拠した幼児用シート取付用ロアアンカ11(以下、ロアアンカ)が設けられており、当該規格に準拠した幼児用シートの取付けを可能としている。また、その様な構造に加え、幼児用シートの上部から延びるトップテザーを固定するテザーアンカ12が設けられている。
【0023】
2列目シート2は、車室の車幅方向長さに亘って一体に形成されたシートクッション(不図示)と、シートクッションの後端付近において下端が、ロアアンカ11及びテザーアンカ12を車幅方向に摺動案内するとともに、2列目シート2の後下方においてフロアFに直接固定されたスライドレール10(詳細は後述)を介して回動可能に軸支されたシートバック2Bからなる。シートバック2Bは更に、車室内の車幅方向で右側部分2Rと左側部分2Lとに2分割されており、それぞれが独立して前後に回動可能に構成されていて、2列目シート2はいわゆる分割型ベンチシートの形態となっている。
【0024】
2列目シート2に幼児用シートを固定するためのロアアンカ11は、一対のものが車幅方向に離間して配置されているとともに、スライドレール10に対して前方に突出してシートクッションとシートバック2Bの隙間部分に位置するよう構成されている。また、スライドレール10に対して後方に突出するようテザーアンカ12が設けられている。一対のロアアンカ11及びテザーアンカ12はスライドレール10により車幅方向に摺動案内されるスライダ13に固定されていて、それらの相対的な位置関係を保ったまま車幅方向の位置を変更することが出来る。
【0025】
スライドレール10には、図1に示す様に、その両端部において、上述の様に分割されたシートバック2Bの各車幅方向外側位置を回動可能に軸支するブラケット3が固定されている。また、スライドレール10の上面における車幅方向略中央部には、分割されたシートバック2R、2Lの車幅方向内側位置を回動可能に軸支するブラケット4が設けられている。なお、スライダ13には、スライダ13をスライドレール10に対して所定の位置に固定するスライダロック15が設けられているが、図1においては図示を省略している。
【0026】
図2を参照しながら、スライドレール10、スライダ13、ロアアンカ11、及びテザーアンカ12を含むスライドレール組立体1の構成について詳細に説明する。スライドレール10は車幅方向に車室の車幅方向長さに亘って延びるアッパレール10Uとロアレール10Lとから構成されている。アッパレール10Uは下方に開いた略コ字状の断面を有して車幅方向に亘って延びる。また、ロアレール10Lは上方に開いた略コ字状の断面を有して車幅方向に亘って延びる。アッパレール10U及びロアレール10Lは別体に形成されており、上述の様に両端部においてブラケット3に固定されることで、アッパレール10Uとロアレール10Lの間にスライダ13が位置する空間を残した状態で車体に固定されることになる。
【0027】
スライダ13は、コ字状断面に成形された上部13U及び下部13L、ハット状断面に成形された前部13F及び後部13Rとから構成される。上部13U、下部13L、前部13F、及び後部13Rはいずれも長手方向に延びていて、上部13Uがその断面の開放部分が下向きに、下部13Lがその断面の開放部分が上向きに、前部13Fがその凸部が前方に突出する様に、そして後部13Rがその凸部が後方に突出する様に、それぞれ配置されて互いに接合されていて、全体として略王字状の断面を有する。スライダ13の長手方向の長さは、スライドレール10の長手方向の長さよりも短くされている。上部13Uはアッパレール10Uにより案内されるとともに、下部13Lはロアレール10Lにより案内される。すなわち、スライダ13は、その上部13Uと下部13Lとでアッパレール10U及びロアレール10Lによりそれぞれ案内され、安定して車幅方向に摺動することが出来る。スライダ13の上下方向略中央部においてアッパレール10Uとロアレール10Lの隙間から前後にそれぞれ突出する前部13Fの凸部と後部13Rの凸部には、ロアアンカ11及びテザーアンカ12がそれぞれ固定されている。それで、ロアアンカ11及びテザーアンカ12は、スライダ13の車幅方向の摺動により、それらの車幅方向位置を変更することが出来る。
【0028】
一方、アッパレール10Uの前面にはその長手方向に沿って所定間隔で切欠14が形成されている(1つのみ図示符号を付す)。また、スライダ13の前部13Fの凸部における車幅方向所定位置には、スライダロック15が設けられている。スライダロック15は、一端がスライダ13に回動可能に支持されていて、その回動により切欠14との係合及びその解除が可能となっている。それで、スライダロック15を所定の切欠14に係合させることによりスライダ13はスライドレール10に対して所定位置に固定され、スライダロック15を切欠14から退避させて係合を解除することで、スライダ13をスライドレール10に沿って摺動させることが出来る。
【0029】
具体的には、図2のA−A矢視断面図である図3に示す様に、スライダロック15は側面視で略L型の形状であり、その一端がスライダ13の前部13Fの凸部に回動可能に軸支されているとともに、不図示のバネにより矢印Bの方向に付勢されている。また、布製のストラップ16がスライダロック15に固定されており、そのストラップ16をバネの付勢力に逆らって引っ張ることで、スライダロック15と切欠14との係合を解除することが出来る。
【0030】
スライダロック15のロアアンカ11に対する相対位置については、取り付ける幼児用シートの車幅方向長さにもよるが、周知の手順にて幼児用シートの下部に設けられたロックをロアアンカ11に固定した際に、ストラップ16が幼児用シートによって隠れない程度に、スライダロック15とロアアンカ11がオフセットされている。すなわち、幼児用シートを2列目シート2に取り付けた状態であってもストラップ16の引っ張り操作が可能とされていて、乗員が幼児用シートをロアアンカ11から取り外すことなくその車幅方向位置の変更が出来るようになされている。
【0031】
再度図2を参照すると、前部13Fの凸部における一対のロアアンカ11の間には、スライダ位置視認シート17が取り付けられている。幼児用シート位置視認シート17は、一例として布製のもので、乗員がスライダ13の位置を視認できるようシートクッションとシートバック2の隙間から突出する長さを有し、乗員は幼児用シートを取り付ける際に、スライダ13の位置を確認しつつ確実に幼児用シートをロアアンカ11に係合させることが出来る。
【0032】
それで、本実施形態が適用された2列目シート2は、スライダ13が車両進行方向左側に位置している場合、図4に示す様な外観となる。すなわち、2列目シート2のシートクッションとシートバック2Bとの間の車幅方向左側部分に、所定間隔で一対のロアアンカ11が位置するとともにその中央部付近にスライダ位置視認シート17が露出している。またその車両進行方向右側にオフセットして、ストラップ16が位置する。ロアアンカ11は実際にはシートバック2Bとシートクッションとの隙間に位置しているため視認することは出来ないが、図4においては便宜上太線にてその位置を示している。
【0033】
ところで、本実施形態における幼児用シートは、その下部に設けられたロックが上述の様にロアアンカ11に係合することにより、車両用シートに取り付けられる。更に、幼児用シートの上部に設けられたトップテザーが車体側、具体的には2列目シート2の背面下部に設けられたテザーアンカ12に係合する。従って、幼児用シートが取り付けられた状態においては、トップテザーは、2列目シート2の上部から背面に沿って延びテザーアンカ12に至る状態となる、つまりトップテザーが2列目シート2の上部に、具体的にはシートバック上部に押し付けられた状態となり、幼児用シートを2列目シート2に取り付けた状態のままではトップテザーとシートバック上部との間の摩擦によって幼児用シートをスムーズに摺動出来ない恐れがある。本実施形態においては、トップテザーをシートバック2に対してスムーズに摺動させるべく工夫が施されており、以下その構成について再度図1及び図5を参照しながら説明する。
【0034】
図1に示す様に、シートバックフレーム2B上部には不図示のヘッドレストを着脱可能に取り付けるためのヘッドレスト取付部20が設けられている。ヘッドレスト取付部20には、当該ヘッドレスト取付部20に受け入れられるよう対応して設けられたステイ50を介して、トップテザースライドユニット5が装着可能とされている。
【0035】
トップテザースライドユニット5は、上述のステイ50が設けられた下部アタッチメント51と、下部アタッチメント51により摺動可能に案内される上部アタッチメント52とからなるものである。下部アタッチメント51は、2列目シート2のシートバック2Bの上面部における車幅方向長さとほぼ同じ車幅方向長さを有して車幅方向に延びるとともに、その前面と後面には長手方向に沿って溝部53が形成されている。上部アタッチメント52は、上方から下部アタッチメント51に形成された溝部に係合している。それで、上部アタッチメント52は、下部アタッチメント51の溝部に係合した状態のまま、長手方向、すなわちスライダ13の摺動方向と平行に、車幅方向に摺動可能とされている。
【0036】
幼児用シートの2列目シート2への取り付けは、トップテザースライドユニット5をヘッドレスト取付部20に装着した状態で行われる。上述の様に、幼児用シートのトップテザーは、幼児用シートを2列目シート2に取り付けた後にはトップテザースライドユニット5に押し付けられた状態となっており、幼児用シートを2列目シート2に取り付けた状態で車幅方向に移動させる場合、トップテザーはトップテザースライドユニット5により車幅方向に案内されるため、幼児用シート本体と一体に車幅方向に移動することが出来る。尚、テザーアンカ12を車室内における上方(ピラー部やルーフなど)に固定しておくことで上記のような幼児用シート移動時のトップテザーとシートバック2B上部の間の抵抗の問題を解決できるものの、幼児用シートの位置を変更する際にトップテザー長さの再調整を行うという作業が必要となる。すなわち、テザーアンカ12もロアアンカ11とともに車幅方向に摺動可能とした上で、上記の様なトップテザースライドユニット5を設けることは、滑らかに幼児用シートを移動させつつトップテザーの長さ調整の手間を省くことが出来るという点でも有利である。
【0037】
それで、図4に示す状態の2列目シート2への幼児用シートの取付けは、以下のような手順で行われる。乗員はまず、スライダ位置視認シート17の位置を確認してスライダ13の位置すなわちロアアンカ11の位置を確認し、続いて幼児用シートをスライダ13の付近にあてがって幼児用シートに設けられたロックをロアアンカ11に係合させる。その後、シートバック2Bの上部に取り付けられているヘッドレストを取り外してトップテザースライドユニット5を取り付ける。そして、幼児用シート上部に設けられたトップテザーを2列目シート2の上部からシートバック2Bの背面に取り回してトップテザーをテザーアンカ12に係合させた後、トップテザーの長さを調節してトップテザーがトップテザースライドユニット5に押し付けられた状態とし、幼児用シートの取り付けを完了する。
【0038】
取付け完了状態の概略側面図である図5に示す様に、幼児用シート9は、その下部にてロック90とロアアンカ11との係合により、またその上部にてトップテザー91の端部とテザーアンカ12との係合により2列目シート2に押し付けられた状態で固定される。幼児用シート9に設けられたロック90及びトップテザー91の構成については周知のものであるためそれらの詳細な説明は省略する。上述の様に、ロアアンカ11とテザーアンカ12は車幅方向に摺動可能に構成されていること、及びトップテザー91はトップテザースライドユニット5により車幅方向にスムーズに摺動可能とされているため、幼児用シート9を2列目シート2に取り付けた後の状態においても、幼児用シート9を車幅方向に移動させることが出来る。また、その際、ストラップ16を引っ張り操作してスライダ13のロックを解除する必要があるが、ストラップ16の位置は幼児用シート9がロアアンカ11に固定された状態では幼児用シート9に隠れない程度にロアアンカ11の位置に対して車幅方向にオフセットされており、幼児用シート9の取り付け状態においてもストラップ16の操作によるスライダ13のロック解除を行うことが出来る。
【0039】
なお、2列目シート2のシートバック2Bは、上述の様に分割可倒式のものである。この様に分割可倒式のシートバック2Bと本発明の幼児用シートの取付け構造を組み合わせるにあたっては、シートバック2Bの分割された部分2R、2Lのうち少なくとも一方側の車幅方向長さが幼児用シートの車幅方向長さと同じかそれより長くなる様に設定するとともに、トップテザースライドユニット5をシートバック2Bの分割に対応して車幅方向に分割した構成とするのが好ましい。この様な設定とすることで、幼児用シートを、分割された各シートバック2R、2Lのうち幼児用シートの車幅方向長さより大きい車幅方向寸法を有する側に移動させることで、分割されたシートバックの他方の部分を幼児用シートとの干渉を生じることなく前方に倒伏させることが出来、車室内と荷室とを連通させることが出来る。また、2列目シート2の後方に3列目シートが設けられている場合には、上記のようなシートバック2Bの倒伏により、3列目シートへのアクセスが容易になるという利点が得られる。
【0040】
2列目シート2の後方に形成される荷室のフロアFにおいて、特に車両の前後方向長さが比較的短く2列目シート2の直後にスペアタイヤ収納用の凹部などが形成されている場合には、2列目シート2の後方のフロア部分に直接スライドレール10を取り付けるのが困難となるため、2列目シート2の後方に車幅方向に伸びるクロスメンバを設け、該クロスメンバを介してスライドレール10を取り付ける様にすると良い。このような構成とすることで、車両前後方向長さが比較的短い車両において、幼児用シートの取り付けに対応した車種とそのような対応を行わない車種との間で、プラットフォームの共通化を図ることが出来る。以下、この様な構成について第2実施形態として図6及び図7を参照しながら説明する。図6は、第1実施形態を示す図1に対応した斜視図であり、第1実施例と異なる構成を中心に説明する。
【0041】
2列目シート2は、第1実施形態のものとは異なり、シートバック2Bが分割されていない形態のものである。すなわち、シートバック2B全体が一体に車両前後方向に回動可能となっている。
【0042】
2列目シート2のシートバック2Bの下方には、車幅方向に延びるクロスメンバ6が、その車幅方向両端部にてブラケット7を介して荷室のフロアFに固定されている。クロスメンバ6は、フロアFからは離間した状態でブラケット7により支持されており、フロアFに形成された凹部や凸部に関わらず、車幅方向に延びる。両端部のブラケット7は、更に上方に延びており、2列目シート2のシートバック2Bの車幅方向両端部を回動支持する。
【0043】
図7は、図6のC−C矢視断面図である。図7に示す様に、クロスメンバ6は、ブラケット7に形成されたフロアFへの取り付け用フランジ70よりも高い位置でフロアFから離間して設けられているとともに、その上面にスライドレール組立体1が取り付けられている。
【0044】
シートバック2Bを回動支持するブラケット7は、スライドレール組立体1の支持をも行うものであるため、シートバック2Bからの荷重がブラケット7に作用しても、その荷重は荷室のフロアFに直ちに伝達されスライドレール組立体1の曲げには寄与しない。従って、シートバック2Bに加わる荷重によるスライドレール組立体1の変形が最大限に防止される。なお、上述の様に一体のブラケット7にてスライドレール組立体1の支持とシートバック2Bの支持を行わせる代わりに、スライドレール組立体1を支持するブラケット7をフロアFに固定するとともに、シートバック2Bを支持するブラケットを、スライドレール組立体1が支持される車幅方向位置近傍でスライドレール組立体1に固定する様にしても良く、この場合も同様にシートバック2Bに加わる荷重によるスライドレール組立体1の変形を防止することが出来る。スライダレール組立体1の構成については、第1実施形態と同様のものであるため、説明を省略する。
【0045】
シートバック2Bは、第1実施形態と同様に分割構造とし、それぞれが独立して倒伏可能に構成しても良い。この場合には、分割部分、すなわちシートバック2Bの車幅方向内側の端部を支持するブラケットを新たに設けてスライドレール組立体1に固定するとともに、その車幅方向位置の近傍にてスライドレール組立体1をフロアFに固定すれば、シートバック2Bに加わる荷重によるスライドレール組立体1の変形を最大限に防止することが出来る。更に、シートバック2Bを分割式にする場合には、第1実施形態と同様にシートバック2Bの分割された各部分2R、2Lのうち少なくとも一方側の車幅方向長さが幼児用シートの車幅方向長さと同じかそれより長くなる様に設定し、かつトップテザースライドユニット5をシートバック2Bの分割に対応して車幅方向に分割した構成とするのが望ましい。
【0046】
以上、本発明を好適な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでも無い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用された車両の車室内を示す概略斜視図である。
【図2】スライドレール組立体を示す斜視図である。
【図3】図2のA−A矢視断面図である。
【図4】本実施形態が適用された2列目シートの概略斜視図である。
【図5】幼児用シート取付け完了状態の概略側面図である。
【図6】本発明の第2実施形態を示す、図1に相当する図である。
【図7】図6のC−C矢視断面図である。
【符号の説明】
2 2列目シート(車両用シート)
2B シートバック
2R、2L シートバックの分割部分
6 クロスメンバ
9 幼児用シート
10 スライドレール
10U アッパレール(スライドレール)
10L ロアレール(スライドレール)
11 ロアアンカ
12 テザーアンカ
13 スライダ
17 スライダ位置視認シート(スライダ位置指示部材)
52 上部アタッチメント(摺動部材)
51 下部アタッチメント(案内部材)
91 トップテザー
90 ロック
F フロア
Claims (5)
- 車室内に設けられた車両用シートに対し、幼児用シートの下部に設けられた少なくとも一対のロックを介して当該幼児用シートを取り付けるための、幼児用シートの取付構造であって、
上記車両用シートの後下方において車幅方向に延びるとともに車体に固定されたスライドレールと、
上記スライドレールにより車幅方向に摺動案内されるスライダとを有しており、
上記幼児用シートの上部には、該幼児用シートが上記車両用シートに取り付けられた状態で該幼児用シートの上部から該車両用シートの上端面及び背面に沿って下方に延びるトップテザーが設けられており、
上記スライダの前部には、上記幼児用シートに設けられた上記一対のロックと係合可能な一対のロアアンカが、それぞれ車幅方向に離間し且つ上記スライドレールよりも前方に突出するように固定されている一方、上記スライダの後部には、上記トップテザーが係合可能なテザーアンカが固定されており、
上記一対のロアアンカと上記テザーアンカとは、互いの相対的位置関係を保ったまま上記スライダの摺動に伴って車幅方向に移動することを特徴とする、幼児用シートの取付構造。 - 上記車両用シートの後下方において、上記車両のフロア上方に少なくとも一部が上記フロアから離間するとともに車幅方向に延びるクロスメンバが設けられており、
上記スライドレール及び上記車両用シートの少なくとも一部が、上記クロスメンバに支持されており、
上記クロスメンバが、上記車両用シートの少なくとも一部が取り付けられる車幅方向位置近傍において、上記車両のフロアに固定されていることを特徴とする、請求項1に記載の幼児用シートの取付構造。 - 上記スライダに、上記車両用シートのシートクッションとシートバックとの隙間から露出するように構成されたスライダ位置指示部材が設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の幼児用シートの取付構造。
- 上記トップテザーが、幼児用シートの上部から、上記車両用シートの上端及び背面に沿って延び、上記スライダに設けられた上記テザーアンカに係合可能とされており、
上記車両用シートの上端に、上記スライダの摺動方向と平行に延びる案内部材と、該案内部材の上方で該案内部材により上記スライダの長手方向に摺動案内される摺動部材が設けられていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の幼児用シートの取付構造。 - 上記車両が、車両進行方向に沿って3つのシート列を有するものであり、
上記車両用シートが、上記シート列のうち2列目シートであるとともに、該2列目シートのシートバックが、少なくとも上記幼児用シートの車幅方向長さと同じかそれより長い車幅方向長さ部分と残りの長さ部分とに分割されていてそれぞれ独立して前方に倒伏可能とされていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の幼児用シートの取付構造。
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