JP4205963B2 - 色相の優れた高純度トリエタノールアミンの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゼオライトタイプ触媒の存在下にエチレンオキシドと液体アンモニアとの反応によってトリエタノールアミン類を製造する方法に関する。さらに詳しくは、粗トリエタノールアミンを2段階の減圧蒸留して色相の優れた高純度トリエタノールアミンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エチレンオキシドとアンモニアとの反応でエタノールアミン類を製造する方法としては、工業的には、エチレンオキシドとアンモニア水とを反応させる方法が従来行われてきた(安水法)。この方法では、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンの3種類が生成する。そのため、トリエタノールアミンを取得するには、アンモニア、水、モノエタノールアミンおよびジエタノールアミンを減圧蒸留によって分離する必要がある。このようにして得られた粗トリエタノールアミンには、4〜8%のジエタノールアミンおよび0.1〜1%の高沸点物を含んでいるため、減圧蒸留を行う。減圧蒸留において回収された留出分のうち、初留分はジエタノールアミンの、後留分は高沸点化合物の濃度が高いので高純度トリエタノールアミンを得るためには収量が低くなる。
【0003】
しかし、近年エタノールアミン類の市場動向に変化が起き、安水法での品目別生産バランスでは対応しきれなくなってきている。具体的には、除草剤原料となるジエタノールアミンの需要が大幅に伸びているのに対し、トリエタノールアミンは毒性などの問題があり、その需要が減少している。この需要のバランスを解消するために、安水法に代わるエタノールアミンの製造方法が出現している。
【0004】
エタノールアミン類の製造において、ゼオライト触媒としてペンタシル型アルミノシリケート(結晶構造MFI型)を用い、アンモニア/エチレンオキシドのモル比7.9で反応をおこなうと、モノエタノール/ジエタノールアミン/トリエタノールアミンの質量比が55/41/4の反応生成物が得られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特許第3154984号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この方法で得られた反応生成物は、ジエタノールアミンの比率が高く、トリエタノールアミンが低い。この反応生成物を減圧蒸留で処理してトリエタノールアミンを得ようとすると、反応生成物中に含まれる不純物がトリエタノールアミン中に濃縮されているため高純度の製品が得られず、高品質のトリエタノールアミンを得ることができないという問題点があった。
【0007】
一方、トリエタノールアミンは化粧品、洗剤、乳化剤などの原料として使用されるため、脂肪酸アミドや高級アルキル硫酸エステルに加工される。そのため、高純度でなおかつ無水酢酸、硫酸、リン酸などの無機酸やクエン酸などの有機酸との中和反応で、できるだけ着色を示さないものが要求される。そのため、製品となるトリエタノールアミンは所定の特性を有することが求められる。
【0008】
安水法による製造方法では、トリエタノールアミンを減圧蒸留で得る際に、留出分を細かく分取することで高品質のトリエタノールアミンを得ることが必要であり、色相の優れたトリエタノールアミン収量は低かった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、上記問題点を解決した色相の優れた高純度トリエタノールアミンの製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下のような発明を完成した。
【0011】
本発明は、ゼオライトタイプ触媒の存在下にエチレンオキシドと液体アンモニアとの反応によってエタノールアミン類を製造する方法において、該エチレンオキシドと該液体アンモニアとの反応による反応生成物からアンモニア、水、モノエタノールアミン、およびジエタノールアミンを除去する低沸点物除去段階、低沸点物を除去した反応生成物を減圧蒸留して高沸点物を除去する段階、および該減圧蒸留で得られた留出液を再蒸留する段階とを含むことを特徴とするAPHAとして40以下である色相の優れた高純度トリエタノールアミンの製造方法、に関する。
【0012】
また、本発明は、ゼオライトタイプ触媒の存在下にエチレンオキシドと液体アンモニアとの反応およびエチレンオキシドとアンモニア水との反応によって、好ましくは連続的にエタノールアミン類を製造する方法において、該エチレンオキシドと該液体アンモニアとの反応による反応生成物からアンモニア、水、モノエタノールアミン、およびジエタノールアミンを除去する低沸点物除去段階、低沸点物を除去した反応生成物を減圧蒸留して高沸点物を除去する段階、および該減圧蒸留で得られた留出液を再蒸留する段階とを含むことを特徴とするAPHAとして40以下である色相の優れた高純度トリエタノールアミンの製造方法、に関する。
【0013】
【発明の実施の形態】
(ゼオライトタイプ触媒の存在下にエチレンオキシドと液体アンモニアとの反応によってエタノールアミン類を製造する方法およびゼオライトタイプ触媒の存在下にエチレンオキシドと液体アンモニアとの反応またはエチレンオキシドとアンモニア水との反応によって連続的にエタノールアミン類を製造する方法)
最初に、原料となるエタノールアミンの製造方法は、触媒としてZSM−5ゼオライトの存在下にエチレンオキシドと液体アンモニアとの反応(「触媒法」ともいう。)で得られたエタノールアミン液または、触媒法および従来のエチレンオキシドとアンモニア水との反応(「安水法」ともいう。)によって連続的に得られたエタノールアミン液との混合液である。本発明の方法では、得られたエタノールアミンの生成比率および触媒法と安水法の生産比率は異なっていても問題とならない。
【0014】
次に、a)触媒法エタノールアミンの製造方法及びb)触媒法と安水法を組み合わせたエタノールアミンの製造方法について説明する。
a)触媒法エタノールアミンの製造方法
反応は液体アンモニアとエチレンオキシドとを原料として、液相状態において加圧系固定床反応器を用いて行なう。アンモニアの使用量は、エチレンオキシド1モルに対し、通常、2〜30モルの範囲である。アンモニアの使用量がエチレンオキシドとの反応の理論量よりも過剰に用いることから、通常、反応生成物からアンモニアを分離、回収し、再度反応器へ供給する。また、反応で得られるエタノールアミンは、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンの混合物である。ジエタノールアミン、トリエタノールアミンを選択的に得る場合には、混合物を反応器へリサイクルできる。また、選択的にジエタノールアミンを得る場合には、モノエタノールアミンだけを分離し、反応器へリサイクルすることもできる。さらに、必要により、前記混合液とモノエタノールアミンを混ぜて、リサイクルしてもよい。
【0015】
反応器は固定床反応器であり、通常、反応液体をアップフローで流す。さらに、反応器は反応効率の点から断熱型反応器であることが好ましい。
【0016】
反応温度は、常温〜200℃、反応圧は8〜15MPa程度が好ましい。反応器内を流れる液量は、通常、0.1リットル/Hr以上であり、0.1〜100、000リットル/Hrの範囲が好ましい。このとき、LHSV(液空間速度)は、反応温度、触媒の種類や使用量によって変るが、通常、0.5〜100hr-1の範囲である。
【0017】
次に、触媒法エタノールアミンの製造方法に用いられる製造装置について説明する。図1は本発明で用いられる、モノエタノールアミンを反応器へリサイクルする、エタノールアミンの製造装置の一例を示す装置説明図である。図1において、液体アンモニアタンク102から液体アンモニアを予熱器103を介して反応器104に、エチレンオキシドタンク101からエチレンオキシドを反応器104にそれぞれ供給する。エチレンオキシドに対するアンモニアの添加量は、特に制限されるものではないが、エチレンオキシド1モルに対し、通常、アンモニア2〜30モルの範囲である。予熱器103の温度は、原料を反応に先立って熱して反応温度への到達を早めることを目的とするものであり、通常、20℃〜100℃の範囲が好ましい。反応は断熱反応である。
【0018】
反応器104から出る反応生成物は圧力制御弁107を経てフラッシュドラムなどのアンモニア回収塔105に送る。アンモニア回収塔105には、リボイラー109を取り付けてある。アンモニア回収塔105において、塔頂から冷却器108にアンモニアを導き、液体アンモニアとしてタンク106に回収するとともに、塔底にはボトム液としてアンモニア、エタノールアミンを混合物として得る。この回収工程で、反応生成物中に含まれるアンモニアの80〜98質量%、好ましくは85〜96質量%、さらに好ましくは90〜95質量%を液体アンモニアとしてタンク106に回収する。通常、冷却器108の冷媒には常温の冷却水を用いるため、アンモニア回収塔105の操作圧は1〜3MPa程度の加圧下で操作する。このためアンモニア回収塔105の塔底から得られるボトム液中には4〜20質量%程度のアンモニアが含まれている。
【0019】
この方法では、モノエタノールアミンをリサイクルさせるために、エタノールアミン混合物からモノエタノールアミンを得る必要がある。工程数は増加するけれども、リサイクル量を減少させることができるというメリットがある。なお、モノエタノールアミンは得られたエタノールアミンから分離され(装置は図示せず)、タンク110に貯蔵されている。
【0020】
モノエタノールアミンを反応器にリサイクルさせる位置は、反応効率の面から、予熱器の入口が好ましい。
【0021】
反応器入口のエチレンオキシド濃度は、通常、3〜35質量%、好ましくは5〜30質量%、最も好ましくは8〜25質量%の範囲である。エチレンオキシド濃度が低すぎると、生産性が悪すぎ、ジエタノールアミンの量が少なくなってしまう。
【0022】
図2は本発明で用いられる、大部分の未反応のアンモニアを除いた反応生成液の一部をリサイクルするエタノールアミンの製造装置の一例を示す装置説明図である。図2において、図1における符号の100の位を2とした符号は特に断りがない限り、図1と同一の部材、器具を示す。
【0023】
アンモニア回収塔205のボトム液または反応生成液の一部を反応器204または予熱器203へ供給する。生成液にはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンおよびアンモニアが含まれている。この混合物を反応器204へリサイクルして再度反応することにより、ジエタノールアミンの濃度を高めた反応生成物を得ることができる。
【0024】
リサイクルする反応生成液量は、全反応物量の、通常、5〜90容量%、好ましくは10〜80容量%、さらに好ましくは20〜70容量%の範囲が望ましい。リサイクル液量が少なすぎると、エチレンオキシド濃度を上げることができず、ジエタノールアミンを多く得ることができないからである。一方、リサイクル量が多すぎると、生産量に対する反応器入口流量が多過ぎて効率が悪くなってしまう。
【0025】
また、反応器で生成した反応生成液の一部を、エタノールアミンとアンモニアとを完全に分離することなく、反応器へリサイクルさせることが好ましい。アンモニアを完全に分離するには、圧力を常圧〜減圧にする必要があり、コストがかかりすぎるからである。
b)触媒法と安水法を組み合わせたエタノールアミンの製造方法
図3は触媒法と安水法を組み合わせたエタノールアミンの製造方法のフローシートの一例を示す図面である。
【0026】
図3の上部ブロック3Aには触媒法によるエタノールアミンの製造方法を用いたフローを、下部左のブロック3Bには安水法によるエタノールアミンの製造プロセスと下部中央のブロック3Cにアンモニア回収系を、下部右のブロック3Dに精製系を示す。
【0027】
原料液体アンモニアタンク302および回収液体アンモニアタンク306からそれぞれ高圧ポンプによって液体アンモニアを、原料予熱器303を経て反応器304に供給する。一方、エチレンオキシドタンク301から高圧ポンプによってEO(エチレンオキシド)を反応器304に供給する。反応器304は圧力制御弁307によって8〜15MPa程度に制御されている。制御弁307を出た反応生成物は、1〜3MPa程度に制御されたアンモニア回収塔305の中段に送られる。アンモニア回収塔305の塔頂から出たアンモニアは冷却器(冷媒は通常の冷却水)308で冷却され、液体アンモニアタンク306に回収される。一方、アンモニア回収塔305のボトム液はエタノールアミン混合物と4〜20質量%のアンモニアを含んでいる。このボトム液は安水法のアンモニア放散塔332へ送られる。
【0028】
一方、安水法であるアンモニア水を原料とするエタノールアミンを製造する方法は、従来公知の方法で行うことができる。例えば、アンモニア水溶液タンク333からアンモニア水が、原料エチレンオキシドタンク301からEOが反応器324へ送られる。使用するアンモニアとEOとの比率によって、得られるモノ−、ジ−、トリエタノールアミンの比率が変化するので、目的に応じて適宜設定することができる。例えば、EOの1モルに対し、1〜40モルまでのアンモニアが例示できる。反応は、通常、常圧〜16MPaの圧力で、反応温度は常温〜150℃の範囲で、多管式反応器で行われる。アンモニア/水/エタノールアミンを含む反応液は、前記アンモニア回収塔305のボトム液と混合して、アンモニア放散塔332の中段へ送られる。
【0029】
アンモニア放散塔332でアンモニアを塔頂から水とアンモニアが放散され、冷却器336を経てアンモニア水溶液タンク333に回収され、このアンモニア水は希釈され、安水法の反応原料として再利用される。
【0030】
アンモニア放散塔332のボトム液は、精製系3Dで精製することができる。ボトム液には水とエタノールアミンが含まれる。このボトム液は脱水塔344に投入される。脱水塔344では塔頂から水を除去し、ボトム液はモノエタノールアミン精留塔345に投入する。モノエタノールアミン精留塔345の塔頂液は、その一部をポンプを介して予熱器303に投入する。
【0031】
(反応生成物からアンモニア、水、モノエタノールアミン、およびジエタノールアミンを除去する低沸点物除去段階)
エタノールアミン混合液から、アンモニア、水、モノエタノールアミンおよびジエタノールアミンを公知の方法によって分離して、トリエタノールアミン原料液を得る。これらの分離は、公知の方法を採用できるが、例えば、次のように行う。
【0032】
混合液中のアンモニアは加圧蒸留、窒素バブリングによって除く。ここで、蒸留における温度、圧力条件は、通常、100℃〜160℃、3.0〜1.0MPaの範囲である。加圧蒸留は、通常、0.1〜2時間の範囲である。図3のアンモニア回収系3において、前記アンモニア回収塔305のボトム液から、上記の如くアンモニアを回収する。
【0033】
さらに、混合液中の水、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンは減圧蒸留によって留出させて除く。ここで、蒸留の際の減圧条件は、通常、135℃〜180℃、5.33〜0.53kPaの範囲である。減圧蒸留は、通常、0.5〜36時間の範囲である。なお、蒸留には、通常、棚段塔、充填塔、濡壁塔、スプレー塔を用いる。図3の精製系3Dにおいて、アンモニア放散塔332のボトム液は脱水塔344に投入される。脱水塔344では塔頂から水を除去し、ボトム液はモノエタノールアミン精留塔345に投入する。モノエタノールアミン精留塔345のボトム液をジエタノールアミン精留塔346に投入する。なお、モノエタノールアミン及びジエタノールアミンは、必要により、再度、蒸留してもよい。
【0034】
トリエタノールアミン原料液は、蒸留塔の塔底液として得られ、次工程である粗蒸留の原料液であり、トリエタノールアミンが96〜70質量%、ジエタノールアミンが10質量%以下、高沸点化合物が15質量%以下であることが望ましい。
【0035】
(低沸点物を除去した反応生成物を減圧蒸留して高沸点物を除去する段階)
粗蒸留によって、留出分を粗トリエタノールアミンとして得る。粗蒸留は、連続式または回分式で行う。生産性の点から、連続式が好ましい。蒸留前に、蒸留容器内および原料液を窒素、ヘリウムなどの不活性ガスで置換することが好ましい。酸素などの酸化性ガスを除去することにより、原料液のその後の反応を防止することができるからである。蒸留の際の操作温度/操作圧力は、通常、120℃〜210℃/0.05〜1.80kPa、好ましくは130℃〜200℃/0.05〜1.20kPaの範囲である。蒸留における操作時間は、通常、0.5〜36時間、好ましくは0.5〜24時間の範囲が望ましい。なお、蒸留には、棚段塔、充填塔、濡壁塔、スプレー塔などが一般的に用いられているが、例えば、充填物を充填した充填塔を用いると、高純度のトリエタノールアミンが得られないばかりでなく、その物性についても所定のものを得ることができなかった。そこで、種々の検討の結果、充填物を充填しない空塔を用いることによって、目的とするトリエタノールアミンが得られることを見出した。粗トリエタノールアミンは、トリエタノールアミンが97〜85質量%、ジエタノールアミンが10質量%以下、高沸点化合物が5質量%以下であることが望ましい。図3の精製系3Dにおいて、ジエタノールアミン精留塔346のボトム液をトリエタノールアミン粗蒸留塔347に投入する。
【0036】
(該減圧蒸留で得られた留出液を再蒸留する段階)
再蒸留は、通常、充填物を充填しない空塔を用いて回分式で行う。回分式で行うのは、初留分と後留分を効率的に除去するためである。再蒸留の原料である粗トリエタノールアミンには、トリエタノールアミンの沸点を基準としてジエタノールアミンなどの低沸点化合物、および高沸点化合物がかなり含まれている。つまり、低沸点化合物及び高沸点化合物を効率的に除去することが望まれる。そこで、連続式ではなくて回分式を採用し、低沸点化合物を初留分として、高沸点化合物を後留分として除去し、残りの中留分を目的の高品質トリエタノールアミンとして得る。この回分式蒸留においては、留出液をガスクロマトグラフなどの分析手段によって、連続的にまたは間欠的に測定することにより、得られた分析結果に基づいて生成物の純度を制御することができる。
【0037】
粗トリエタノールアミンを、蒸留装置の塔底液として仕込み、減圧蒸留で低沸点化合物を含む初留分と高沸点化合物を含む後留分を除いた中留分を高品質トリエタノールアミンとして得る。蒸留の際の操作温度/操作圧力は、通常、100℃〜200℃/0.05〜1.20kPa、好ましくは120℃〜190℃/0.05〜0.80kPaの範囲である。蒸留における操作時間は、通常、0.5〜36時間、好ましくは0.5〜24時間の範囲が望ましい。図3の精製系3Dにおいて、トリエタノールアミン粗蒸留塔347における留出液(OH液ともいう)はトリエタノールアミン再蒸留塔348に投入し、高純度トリエタノールアミンを得る。
【0038】
得られた高品質トリエタノールアミンは、通常、次の特性を示す。純度98%以上、好ましくは99%以上;色相(APHA)40以下、好ましくは25以下;リン酸呈色試験の吸光度は、波長420、510、530nmにおいて、通常、それぞれ0.12、0.06、0.08以下、好ましくは0.10、0.04、0.06以下である。
【0039】
【実施例】
以下、実施例および比較例に基づいて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【0040】
(LHSVの定義)
LHSV(/hr)=
(反応器に供給した反応液の単位時間当りの質量(kg/hr))/
(反応器内の触媒質量(kg))
(分析方法)
エタノールアミン類の組成分析は、水素炎イオン化検出器を備えたガスクロマトグラフを用いて分析を行った。カラムは、無極性キャピラリーカラムを取り付け、内部標準法で分析した。
【0041】
(色相)
APHA標準原液として試薬特級塩化第二白金酸カリウム1.245gと試薬特級塩化コバルト六水和物1.00gを精秤して1000mlメスフラスコに投入する。さらに、イオン交換水約100mlと試薬特級塩酸(36%含有)を100ml加えて加熱、溶解する。冷却後、イオン交換水で1000mlとした液はAPHA No.500に相当する。このAPHA標準原液を100mlメスフラスコにピペットで採取し、イオン交換水で希釈した液をAPHA標準液とする。APHA標準液のAPHA No.は、5xVとなる。ここで、Vは標準原液の採取量(ml)である。標準液は、0からAPHA No.5目盛りで調整する。この標準液は、蓋付きで外径25mm、内径22mm、全長250mmの石英ガラス製またはパイレックス(登録商標)製のもので、底面は平底、融着仕上げのものに底面より130mmの高さ(約50ml)に標線を引き、標線まで標準液を入れて用いる。取得したトリエタノールアミンは同一のガラス管に標線まで仕込み、白色紙上に置き、自然光で肉眼により、上方からAPHA標準液と比色して色相を測定する。
【0042】
(リン酸呈色試験)
100mlの共栓三角フラスコに取得したトリエタノールアミン27gを計り取り、イオン交換水3gを加える。そこに、プロピレングリコール7.5gと試薬特級リン酸6.0gを加え、激しく攪拌、混合する。75±1℃のウォーターバス中に20分間浸して加熱する。ウォーターバスから取り出し、激しく攪拌した後、20分間放冷する。放冷後、再び攪拌し、超音波洗浄器で脱気する。その後、50mmのガラスセラミックを用い、分光光度計で波長420,510および530nmにおける吸光度を測定する。
【0043】
(実施例1)
図1に示される触媒法エタノールアミン製造プラントにおいて、エチレンオキシド、液体アンモニアおよびモノエタノールアミンをそれぞれ18.1,70.9,11.0質量%となるように、触媒を充填した反応器に連続投入した。断熱反応下、反応圧10MPa、入口温度45℃、LHSV 5.9で反応を行った。ここで、触媒とはランタンでイオン交換されたZSM−5型ゼオライトである。このときのエチレンオキシドの転化率はほぼ100%であった。
【0044】
得られた反応液は、未反応アンモニアを加圧蒸留および窒素バブリングにより取り除いた後、減圧蒸留によってモノエタノールアミンおよびジエタノールアミンを分離して塔底液を得た。塔底液の組成は、トリエタノールアミン76.6質量%、ジエタノールアミン9.9質量%、及び高沸点化合物13.5質量%であった。
【0045】
この塔底液の400gを、毛細管を備えた500mlのガラス製3つ口フラスコに仕込み、窒素置換を十分行った。その後、加熱と減圧を行い、175℃〜180℃/0.33〜0.21kPaの条件で粗蒸留を行った。このとき留出した粗トリエタノールアミン液は348gであって、仕込み塔底液に対し、87.1%であった。また、粗トリエタノールアミン液の組成は、トリエタノールアミン88.0質量%、ジエタノールアミン7.4質量%、高沸点化合物4.6質量%であり、高沸点化合物が大幅に減少していた。表2は粗蒸留の条件、及び回収量を示す。表3は粗蒸留における各留分の濃度及び回収量を示す。
【0046】
さらに、粗トリエタノールアミン液を別にフラスコに345g仕込み、窒素置換を十分に行った。その後、加熱と減圧を行い、164℃〜173℃/0.26〜0.24kPaの条件で再蒸留を行ったところ、純度99.0%のトリエタノールアミンが187g(収量61.6%)得られた。表4は再蒸留の条件、及び回収量を示す。表5は再蒸留における各留分の濃度及び回収量を示す。
【0047】
得られたトリエタノールアミンの色相は25、リン酸呈色試験における吸光度は、波長420、510、530nmにおいて、それぞれ0.09、0.04、0.02であった。また、サンプルの外観は、無色透明浮遊物なしで、臭気において微香はあったものの刺激臭はなかった。
【0048】
(実施例2)
図3で示される装置を用いて、エタノールアミンを製造した。安水法エタノールアミン製造プラントにおいて、実施例1で得られた粗モノエタノールアミンと、エチレンオキシドと、37%アンモニア水溶液とを、エチレンオキシドとアンモニアのモル比が0.275となるように反応器に連続投入した。触媒法および安水法のエタノールアミン製造プラントにおけるエチレンオキシドの転化率の設定を100%として反応を行った。
【0049】
触媒法および安水法で得られた反応液のそれぞれから未反応アンモニアを除去した後、混合した。このときの混合比率は80:20(質量)であった。混合液は減圧蒸留によって、水、モノエタノールアミンおよびジエタノールアミンを分離し、塔底液を得た。塔底液の組成は、トリエタノールアミン85.3質量%、ジエタノールアミン9.3質量%、高沸点化合物5.4質量%であった。
【0050】
この塔底液の800gを、毛細管を備えた1,000mlのガラス製3つ口フラスコに仕込み、窒素置換を十分行った。その後、加熱と減圧を行い、170℃〜180℃/0.33〜0.31kPaの条件で粗蒸留を行った。このとき留出した粗トリエタノールアミン液は744gであって、仕込み塔底液に対し、93%であった。また、粗トリエタノールアミン液の組成は、トリエタノールアミン88.9質量%、ジエタノールアミン9.7質量%、高沸点化合物0.8質量%であり、高沸点化合物が大幅に減少していた。表6は粗蒸留の条件、及び回収量を示す。表7は粗蒸留における各留分の濃度及び回収量を示す。
【0051】
さらに、粗トリエタノールアミン液を別にフラスコに740g仕込み、窒素置換を十分に行った。その後、加熱と減圧を行い、160℃〜170℃/0.27〜0.24kPaの条件で再蒸留を行ったところ、純度99.3%のトリエタノールアミンが380g(収量57.8%)得られた。表8は再蒸留の条件、及び回収量を示す。表9は再蒸留における各留分の濃度及び回収量を示す。
【0052】
得られたトリエタノールアミンの色相は10以下、リン酸呈色試験における吸光度は、波長420、510、530nmにおいて、それぞれ0.07、0.02、0.01であった。また、サンプルの外観は、無色透明浮遊物なしで、臭気において微香はあったものの刺激臭はなかった。
【0053】
(比較例1)
実施例1で得られた塔底液の400gを、毛細管を備えた500mlのガラス製3つ口フラスコに仕込み、窒素置換を十分に行った。その後、加熱と減圧を行い、175℃〜177℃/0.27〜0.24kPaの条件で1段蒸留を行ったところ、純度95.0%のトリエタノールアミンが161g(収量40.2%)得られた。表10は1段蒸留の条件、及び回収量を示す。表11は1段蒸留における各留分の濃度及び回収量を示す。
【0054】
得られたトリエタノールアミンの色相は80、リン酸呈色試験における吸光度は、波長420、510、530nmにおいて、それぞれ1.2、0.19、0.29であった。
【0055】
(比較例2)
実施例2で得られた塔底液の800gを、毛細管を備えた1,000mlのガラス製3つ口フラスコに仕込み、窒素置換を十分に行った。その後、加熱と減圧を行い、168℃〜178℃/0.31〜0.29kPaの条件で1段蒸留を行ったところ、純度98.5%のトリエタノールアミンが358g(収量44.8%)得られた。表12は1段蒸留の条件、及び回収量を示す。表13は1段蒸留における各留分の濃度及び回収量を示す。
【0056】
得られたトリエタノールアミンの色相は35、リン酸呈色試験における吸光度は、波長420、510、530nmにおいて、それぞれ0.13、0.09、0.04であった。
【0057】
(比較例3)
実施例1で得られた塔底液の400gを、毛細管を備えた500mlのガラス製3つ口フラスコに仕込み、窒素置換を十分に行った。その後、加熱と減圧を行い、186℃〜190℃/0.30〜0.27kPaの条件で1段蒸留を行ったところ、純度93.0%のトリエタノールアミンが151g(収量37.8%)得られた。ただし、蒸留塔に充填物(Dixonパッキン、外径3mm、材質SUS316)を10cm充填した。表14は1段蒸留(充填物有り)の条件、及び回収量を示す。表15は1段蒸留(充填物有り)における各留分の濃度及び回収量を示す。
【0058】
得られたトリエタノールアミンの色相は100以上、リン酸呈色試験における吸光度は、波長420、510、530nmにおいて、それぞれ1.8、0.61、0.49であった。
【0059】
表1は、実施例1、2及び比較例1〜3における蒸留方式及び充填物有無について示す。
【0060】
(蒸留塔における蒸留状況)
【0061】
【表1】
【0062】
蒸留塔サイズ:
充填式、共通すりあわせ型
内径26mm、層長400mm
充填物:
Dixonパッキン
外径3.0mm 材質SUS316
充填層長 100mm
【0063】
【表2】
【0064】
OH−1〜9を再蒸留原料とした。
【0065】
【表3】
【0066】
DEA:ジエタノールアミン
TEA:トリエタノールアミン
【0067】
【表4】
【0068】
OH−1〜3:DEA濃度が高い。
【0069】
OH−4〜8:純度99%のTEAとして得た。
【0070】
OH−9〜10:高沸点物濃度が高い。
【0071】
【表5】
【0072】
【表6】
【0073】
OH−1〜9:再蒸留の原料とした。
【0074】
【表7】
【0075】
【表8】
【0076】
OH−1〜3:DEA濃度が高い。
【0077】
OH−4〜8:純度99%のTEAとして得た。
【0078】
OH−9〜11:高沸点物濃度が高い。
【0079】
【表9】
【0080】
【表10】
【0081】
OH−4〜7:純度95%のTEAとして得た。
【0082】
【表11】
【0083】
【表12】
【0084】
OH−4〜7:純度98.5%のTEAとして得た。
【0085】
【表13】
【0086】
【表14】
【0087】
OH−3〜6:純度93%のTEAとして得た。
【0088】
【表15】
【0089】
【発明の効果】
触媒法で得られた反応液、または触媒法と安水法を組み合わせて得られた反応液からアンモニア、水、モノエタノールアミン、およびジエタノールアミンを除去した後、2段階の減圧蒸留、すなわち粗蒸留、および再蒸留することにより、色相の優れた高純度のトリエタノールアミンを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、モノエタノールアミンを反応器へリサイクルする、触媒法エタノールアミンの製造装置の一例を示す装置説明図である。
【図2】は、触媒法エタノールアミンの製造装置の一例を示す装置説明図である。
【図3】は、触媒法と安水法を組み合わせたエタノールアミンに関する製造方法のフローシートの一例を示す図面である。
【符号の説明】
101、201…原料エチレンオキシドタンク
102、202、302…液体アンモニアタンク
306…リサイクル液体アンモニアタンク
103、203、303…予熱器
104、204、304、324…反応器
105、205、305…アンモニア回収塔(水なし)
332…アンモニア放散塔(水を含む)
106、206、306…液体アンモニアタンク
333…アンモニア水溶液タンク
108、208、308、336…冷却器
109、209、309…リボイラー
344…脱水塔
345…モノエタノールアミン精留塔
346…ジエタノールアミン精留塔
347…トリエタノールアミン粗蒸留塔
348…トリエタノールアミン再蒸留塔
Claims (6)
- ゼオライトタイプ触媒の存在下にエチレンオキシドと液体アンモニアとの反応によってエタノールアミン類を製造する方法において、該エチレンオキシドと該液体アンモニアとの反応による反応生成物からアンモニア、水、モノエタノールアミン、およびジエタノールアミンを除去する低沸点物除去段階、低沸点物を除去した反応生成物を減圧蒸留して高沸点物を除去する段階、および該減圧蒸留で得られた留出液を再蒸留する段階とを含むことを特徴とするAPHAとして40以下である色相の優れた高純度トリエタノールアミンの製造方法。
- 前記製造方法が、反応生成物の少なくとも1部をリサイクルすることを特徴とする請求項1記載の方法。
- ゼオライトタイプ触媒の存在下にエチレンオキシドと液体アンモニアとの反応およびエチレンオキシドとアンモニア水との反応によってエタノールアミン類を製造する方法において、該エチレンオキシドと該液体アンモニアとの反応による反応生成物およびエチレンオキシドとアンモニア水との反応生成物からアンモニア、水、モノエタノールアミン、およびジエタノールアミンを除去する低沸点物除去段階、低沸点物を除去した反応生成物を減圧蒸留して高沸点物を除去する段階、および該減圧蒸留で得られた留出液を再蒸留する段階とを含むことを特徴とするAPHAとして40以下である色相の優れた高純度トリエタノールアミンの製造方法。
- 前記高沸点物を除去する段階において、前記減圧蒸留に用いられる蒸留塔に充填物を充填しない空塔を用いる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記高沸点物を除去する段階において、前記減圧蒸留の前に、蒸留容器内および原料液を窒素、ヘリウムなどの不活性ガスで置換する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- 前記再蒸留を、充填物を充填しない空塔を用いて回分式で行う、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
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