JP4205783B2 - 帯電防止用水性分散液及びその利用 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、広い湿度領域で優れた帯電防止効果を示す塗布膜を形成することが可能な帯電防止用水性分散液及びこれを用いた帯電防止被覆の形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチック、繊維、紙等を取り扱う場合、これらが帯電することにより、種々の静電気障害を起こすことがある。これを防止するために、一般には帯電防止剤が使用されている。帯電防止剤として、アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤のような低分子型有機化合物が知られており、これらは、成形物の表面に塗布したり、あるいは表面への移行性を利用して、材料を構成する高分子化合物に配合したりして、使用されている。
【0003】
このような低分子型帯電防止剤は、効力の持続性に問題があるため、高分子型帯電防止剤を使用することも行われている。この場合も、材料を構成する高分子化合物に配合する方法と共に、成形物表面に薄い帯電防止性膜を形成するために、液状の帯電防止剤を塗布する方法が採用されている。
【0004】
液状の帯電防止剤を塗布する手法は、材料を構成する高分子化合物に配合する方法に較べ、幾つかの優位点がある。例えば、高分子型帯電防止剤を配合した場合には、その相溶性不良により成形品の物性が大きく変化してしまう可能性が高く、場合によっては成形加工そのものが不可能になる場合がある。これに対し、塗布タイプの帯電防止剤は、成形品のモルホロジーに全く影響することなく、表面にのみ充分な非帯電性を与えることができる。また配合タイプでは、加工品に対して大量の帯電防止剤を使用する必要があるのに対して、塗布タイプのものを使用すれば、実際に必要なのは、表層数μmの層を形成するのに必要な少量で足りる。このような有利な点をもつ塗布型帯電防止剤、とくに環境、ハンドリング性を考慮した水性分散液は、様々な帯電防止用途が期待でき、様々な種類の帯電防止分散液が開発されてきた。
【0005】
このような液状の高分子型帯電防止剤の一つとして、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカリウム塩の水性分散液が知られている。この水性分散液は、帯電防止効果の持続性が優れた塗布膜を形成することが可能であるが、乾燥状態では非帯電性が低下するという欠点を有している。このような欠点を改善する目的で、ポリオキシアルキレングリコールや多価水酸基含有化合物を水性分散液に添加しておく方法が、特開平4−339849号や特開平8−231791号の各公報で提案されており、かなりの成果を挙げている。しかしながら、使用分野によっては未だ充分に要求を満たしているとはいえず、使用分野拡大のため一層の改善が求められていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明者は、低湿度領域における非帯電性が一層優れ、また高湿度領域においても高度な非帯電性を示す塗布膜を生成することが可能な水性分散液を求めて、鋭意検討を行った。その結果、少量のアルカノールアミン類を共存させる方法が有効であることを見いだすに至り、本発明に到達した。
尚、一般的なアイオノマーの水性分散液の製法において、アルカリ金属イオンとアルカノールアミン類を併用する方法は、例えば特表平5−505644号公報において知られているが、この提案においては非分散物の少ない水性分散液を得ることを目的としており、帯電防止被膜形成用の水性分散液を意図したものではない。そして本願発明におけるような帯電防止被膜を形成しうるような水性分散液については、まったく記載も示唆もしていない。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、不飽和カルボン酸含量が10〜35重量%のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体の水性分散液であって、該共重合体のカルボキシル基を基準にして、70〜100モル%に相当する量のカリウムイオンと、1モル%以上に相当する量であって、カリウムイオンとの合計量で130モル%以下に相当する量のアルカノールアミンとを含有し、固型分濃度が5〜40重量%の範囲にある帯電防止用水性分散液に関する。
本発明はまた、上記帯電防止用水性分散液と、平均粒子径が0.1〜10000nm、固型分濃度が2〜75重量%、pHが7以上の他の重合体水性分散液とを、固型分換算(重量比)で10/90〜90/10の割合で配合されてなる混合水性分散液に関する。
本発明はまた、上記帯電防止用水性分散体又は上記混合水性分散液を基材に塗布し、乾燥することを特徴とする帯電防止被覆の形成方法にも関する。
【0008】
【発明の実施形態】
本発明の帯電防止用水性分散液は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体の水性分散液から成るが、カチオン種として、カリウムイオンとアルカノールアミンとを特定の量で含有することが特徴であり、これにより優れた分散性を維持しながら、低湿度領域から高湿度領域にわたって、優れた帯電防止性能が維持される。
【0009】
即ち、カリウムイオン中和タイプの共重合体分散液は高湿度条件においてはかなり良好な帯電防止性を示すが、低湿度条件では帯電防止性能が低下するという欠点がある(後述する比較例1参照)。一方、アルカノールアミン中和タイプの共重合体分散液は低湿度条件下でより優れた帯電防止性を示すが、高湿度条件下での帯電防止性能が未だ十分ではない(比較例5参照)。これに対して、カリウムイオン及びアルカノールアミンの組み合わせで中和した共重合体分散液は、低湿度から高湿度の広い範囲にわたって満足すべき帯電防止性能を示すと共に、何れか単独使用の場合に比して、帯電性能も向上している(実施例1乃至10)。
【0010】
カリウムイオンとアルカノールアミンとは、上記の量比で存在することも重要であり、カリウムイオンがカルボキシル基に対して100モル%を越える場合(比較例2)、両者の合計がカルボキシル基に対して130モル%を越える場合(比較例4)の何れも、安定な分散状態が得られなくなるが、本発明で規定した範囲では、安定した分散性が得られ、分散液は無色透明なものとなる。
【0011】
[ベースポリマー]
本発明の水性分散液のベースポリマーとなるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体としては、不飽和カルボン酸含有量が10〜35重量%、好ましくは12〜30重量%の共重合体である。共重合体における不飽和カルボン酸含量が少なすぎると、水分散性良好な分散液を得ることが難しく、また帯電防止性良好な塗布膜を形成することが困難となる。一方、不飽和カルボン酸含量が上記範囲より多い共重合体を使用すると、安定な水性分散液が得られないのみならず、形成される塗布膜の耐水性、機械的強度の低下が起こるので好ましくない。
【0012】
このようなエチレン・不飽和カルボン酸共重合体は、エチレンと不飽和カルボン酸の二元共重合体のみならず、任意に他の単量体が共重合された多元共重合体であってもよく、任意の他の単量体は、例えば、0〜40重量%、好ましくは0〜20重量%の量で共重合されていてもよい。
【0013】
ここに、不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチルなどを例示することができる。とくに好ましいのは、アクリル酸又はメタクリル酸である。
【0014】
上記の任意に共重合されていてもよい他の単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸nブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルなどの不飽和カルボン酸エステル、一酸化炭素、二酸化硫黄などを例示することができる。
【0015】
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体としてはまた、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが1〜2000g/10分、好ましくは10〜1500g/10分の範囲のものを使用するのが望ましい。すなわち、メルトフローレートの非常に低いものを用いた場合には、良好な水性分散液を得ることが難しく、またその値が非常に大きいものを使用すると、水性分散液から得られる塗布膜の強度が不足するので好ましくない。
【0016】
これらエチレン共重合体は、構成する単量体を、高圧ラジカル重合法によって共重合することにより、得ることができる。
【0017】
[中和成分]
本発明の水性分散液は、上記エチレン共重合体のカルボキシル基を基準にして、70〜100モル%、好ましくは80〜99モル%に相当する量のカリウムイオンと、1モル%以上、好ましくは5〜35モル%に相当し、かつカリウムイオンとの合計量で130モル%以下、好ましくは120モル%以下となる量のアルカノールアミン類とを含むものである。
【0018】
すなわち、カリウムイオンの代わりに、リチウムイオンやナトリウムイオンを用いても帯電防止性に優れた塗布膜を生成しうる水性分散液を得ることができない。またカリウムイオンの量が前記範囲より少なくなると、同様に帯電防止性良好な塗布膜を形成しうる水性分散液を得ることはできず、またその量が100モル%を越えると、安定な水性分散液を得ることはできない。
【0019】
またアルカノールアミンの量が少なすぎると、低湿度下において充分な非帯電性を示す塗布膜を形成することができる水性分散液を得ることはできない。またカリウムイオンとアルカノールアミンの合計量が上記範囲を越えると、安定性良好な水性分散液を得ることはできない。
【0020】
尚、本発明においてカリウムイオンとともに使用されるアルカノールアミン類としては、窒素原子に直結する置換又は非置換のアルカノール基を少なくとも1個有する化合物である。その代表的なものとしては、一般式(1)
R(3−n)N(R1OH)n、又は
R(3−n)N〔(R2O)mH〕n (1)
(Rは、水素原子、置換又は非置換のアルキル基、R1、R2は、置換又は非置換のアルキレン基、nは1〜3の整数、mは整数、例えば1〜10程度の整数であり、それぞれの基が複数個ある場合には、それぞれが同一のものでも異なるものであってもよい。)
で示されるものを挙げることができる。
【0021】
より具体的には、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノ(イソプロパノール)アミン、ジ(イソプロパノール)アミン、トリ(イソプロパノール)アミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、ジ(ポリオキシエチレン)ラウリルアミン、ジ(ポリオキシエチレン)ステアリルアミン、ジ(ポリオキシエチレン)オレイルアミン、N−ラウリルジエタノールアミン、N−ステアリルジエタノールアミン、N−オレイルジエタノールアミン、N−シクロヘキシルジエタノールアミン、N,N−ジラウリルエタノールアミン、N,N−ジステアリルエタノールアミン、N,N−ジオレイルエタノールアミン、N,N−ジシクロヘキシルエタノールアミン等を代表例として示すことができる。
これらの中では、エチレン共重合体との相溶性や熱安定性等の観点から、N−アルキルジエタノールアミンやジエタノールアミン等のジエタノールアミン基を有する化合物を使用するのが好ましい。
【0022】
[水性分散液]
本発明の水性分散液を製造するには、次の方法がある。すなわち、原料のエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体と、カリウム化合物及びアルカノールアミン類とを、各所定量使用し、80℃以上、好ましくは95℃以上の温度で、撹拌しながら、水中で反応させることによって得られる。ここに、カリウム化合物としては、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、カルボン酸塩などを例示することができる。
【0023】
この方法においては、水と、固型分濃度が5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%となる量の上記した性状のエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体と、該共重合体のカルボキシル基を基準にしてその70〜100モル%をイオン化する量の上記カリウム化合物と、該共重合体のカルボキシル基の1モル%以上、好ましくは5〜35モル%に相当し、かつカリウム化合物との合計量で130モル%以下となる量の上記アルカノールアミン類とを、例えば撹拌機付きのオートクレーブ中、所定温度で剪断力をかけながら反応させることによって、水性分散体を得ることができる。反応時間は、反応温度やその他反応条件によっても異なるが、30〜120分程度である。
【0024】
また、予めエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体の中和度が70〜100モル%のカリウムアイオノマーを調製しておき、これとアルカノールアミン類とを、水中で、同様に反応させることによって、同様な水性分散液を製造することが可能である。
【0025】
かくして得られる水性分散液は、例えば、平均粒径が1〜500nm、好ましくは5〜400nmの範囲にあり、また粘度が10〜2000mPa・s、好ましくは50〜1000mPa・sの範囲にあり、長期保存においても、粒径や粘度が大幅に変化することはない。
粘度が2000mPa・sを越える分散液は、ハンドリングが非常に困難で、基材に均一に塗布することが難しい。また高粘度の分散液は、長期保存安定性にも劣り、経時で増粘していく場合もあり、実用性に乏しい。
また、粒径についても同様のことが言え、粒径の大きい分散液は、長期保存するうちに再凝集してしまうことがあり、やはり実用性に欠ける。上記のような平均粒径及び粘度を有する分散液を用いることによって、優れたハンドリング性及び長期安定性が得られ、均一な塗布膜を生成させることが可能となる。
【0026】
本発明の水性分散液には、任意に種々の添加剤を配合することができる。このような添加剤の例としては、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールのような多価アルコール、水溶性エポキシ化合物、メタノール、エタノール、nプロパノール、イソプロパノールのような低級アルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、プロピレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノアセテートのようなエステル類、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、顔料、染料、滑剤、ブロッキング防止剤、接着剤、抗菌剤、架橋剤、筆記性改良剤、無機充填剤、発泡剤などを挙げることができる。
【0027】
本発明の水性分散液は、コーティング剤、接着剤、インク材料などとして種々の基材に塗布することにより、被膜を形成することができる。
【0028】
本発明の水性分散液はまた、耐水性、耐水密着性、基材密着性などの改良の目的で他の重合体分散液により改質され、また他の重合体分散液の帯電防止性等を改良する目的で、他の重合体分散液と任意割合で配合することができる。一般には、固型分換算(重量比)で10/90〜90/10、とくに20/80〜80/20の割合で配合するのがよい。
【0029】
このような他の重合体水性分散液としては、pHが7以上のもの、あるいはアンモニア水等でpHを7以上にしたものであって、本発明の水性分散液と混合したときにゲル化しないようなものを選択する必要がある。またその固型分濃度が2〜75重量%、好ましくは5〜75重量%程度のものであって、その平均粒子径が0.1〜10000nm、好ましくは1〜5000nmのものを選択することが望ましい。
【0030】
このような他の重合体水性分散液としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、水溶性アクリル樹脂、アクリルアミド樹脂、メタアクリルアミド樹脂、アクリロニトリル樹脂、メタアクリロニトリル樹脂、スチレン・アクリル酸共重合体、水溶性ポリウレタン樹脂、水溶性スチレン・マレイン酸共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、ハイインパクトポリスチレン樹脂、ブタジエン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、ポリエチレン、酸化ポリエチレン、プロピレン・エチレン共重合体、無水マレイン酸グラフトポリオレフィン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、EPDM、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の水性分散液を挙げることができる。これらは勿論、2種以上使用してもよい。
【0031】
本発明の水性分散液、あるいはこれと他の重合体水性分散液の混合水性分散液は、任意の基材に塗布することができる。このような基材としては、高−、中−、低−密度ポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体又はそのアイオノマー、エチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸エステル共重合体又はそのアイオノマー、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテンようなオレフィン重合体又は共重合体、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、ABS型樹脂、スチレン・ブタジエンブロック共重合体又はその水素添加物のようなスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル、ナイロン6、ナイロン66のようなポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル及びこれらの任意割合の混合物などの熱可塑性重合体、天然ゴム、合成ゴムのようなゴム材料、フェノール樹脂、ポリウレタンのような熱硬化性樹脂、鉄、銅、アルミニウム、ステンレスのような金属、木材、紙、レーヨン、皮革等の天然素材などを例示することができる。熱可塑性重合体にあっては、フィルム、シート、中空成形品、射出成形品、織布、不織布、合成皮革など種々の成形品に適用することができる。
【0032】
基材に水性分散液を塗布するには、公知の方法、例えばロールコーティング、バーコーター、エアナイフコーター、刷毛塗り、スプレー塗布などによりコーティングしたり、あるいは基材を水性分散液に浸漬する方法等を採用することができる。基材には、接着性等を改良する目的で下塗り剤を塗布しておいてもよく、またコロナ処理等の表面処理を施しておいてもよい。塗布膜の厚みは任意であるが、通常1〜20μm、好ましくは1〜10μmである。塗布膜には、耐水性、耐久性等を改良する目的で、電子線照射による架橋処理を施してもよい。
【0033】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
なお、実施例において用いた水性分散体を構成する各成分の種類及び物性の測定法は次の通りである。
【0034】
(他の重合体水性分散液)
(1)無水マレイン酸グラフトポリプロピレン(無水マレイン酸を0.7重量%グラフトしたメルトフローレート(230℃、2160g荷重)150g/10分のもの)の水性分散液
(2)エチレン・酢酸ビニル共重合体エマルジョン(ケミパールV−100、三井化学株式会社製)
(3)塩素化ポリプロピレンエマルジョン(HARDLEN EH−202、東洋化成株式会社製)
(4)酢酸ビニル・エチレン共重合体エマルジョン(スミカフレックス S−467、住友化学株式会社製)・・・アンモニア水によりpHを8に調整して使用(5)ポリエステルエマルジョン(ペスレジン A−120、高松油脂株式会社製)
各重合体水性分散液の性状を表1に示す。
【表1】
【0035】
基材として100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、基材上に調製した塗布液をバーコレータを用いて塗布した。これを100〜150℃の熱風にて3分間乾燥した。得られた試験片について表面抵抗率を評価した。
高抵抗・抵抗率計 三菱化学製「ハイレスタIP」を用い、恒温恒湿槽内で23℃/所定の湿度で24時間調湿後、500V、10秒で表面抵抗率を測定した。
【0036】
(実施例1)
300mLオートクレーブ中に酸共重合体1、蒸留水、KOH、及びアルカノールアミン1を表2に示す量供給し、130℃で60分間撹拌した。固型分濃度は25wt%。分散性及び塗膜の表面抵抗率評価結果を表3にまとめた。
【0037】
(実施例2)
実施例1に於いて、アルカノールアミン1を酸共重合体のカルボン酸の30モル%に相当する量用いた。分散性及び塗膜の表面抵抗率評価結果を表3にまとめた。
【0038】
(実施例3〜7)
実施例1において、アルカノールアミン1の代わりにアルカノールアミン2〜6をそれぞれ表2に示す量用いた。分散性及び塗膜の表面抵抗率評価結果を表3にまとめた。
【0039】
(実施例8〜10)
実施例1において、酸共重合体1の代わりに酸共重合体2〜4をそれぞれ用いた。分散性及び塗膜の表面抵抗率評価結果を表3にまとめた。
【0040】
(比較例1)
実施例1において、アルカノールアミンを用いなかった。分散性及び塗膜の表面抵抗率評価結果を表3にまとめた。
【0041】
(比較例2、3)
実施例1において、KOHを表2に示す量用いた。分散性及び塗膜の表面抵抗率評価結果を表3にまとめた。
【0042】
(比較例4)
実施例1において、アルカノールアミン1を表2に示す量用いた。分散性及び塗膜の表面抵抗率評価結果を表3にまとめた。
【0043】
(比較例5)
実施例1において、KOHを用いずに、アルカノールアミン1を酸共重合体のカルボン酸の75モル%に相当する量用いた。分散性及び塗膜の表面抵抗率評価結果を表3にまとめた。
【0044】
(比較例6)
実施例1において、KOHを用いずに、アルカノールアミン2を酸共重合体のカルボン酸の75モル%に相当する量用いた。分散性及び塗膜の表面抵抗率評価結果を表3にまとめた。
【0045】
(比較例7)
300mLオートクレーブ中に酸共重合体1、蒸留水、及びKOHを表2に示す量供給し、130℃で60分間撹拌した。固型分濃度は25wt%。得られた分散体組成物に添加剤1を表2に示す量加えた。分散性及び塗膜の表面抵抗率評価結果を表3にまとめた。
【0046】
(比較例8)
比較例7において、添加剤1の代わりに添加剤2を用いた。分散性及び塗膜の表面抵抗率評価結果を表3にまとめた。
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
(実施例11〜17)
実施例10の水性分散液(A)と表1記載の重合体水性分散液を表4に示す割合で混合した混合水性分散液から得られる塗膜の表面抵抗率を同様にして測定した。尚、表面抵抗率の測定は、40%RHにおいて24時間調湿したサンプルについて行った。
また、塗膜密着性及び耐水性については次のようにして測定した。
[塗膜密着性の評価]
JIS K5400準拠(碁盤目法 残数/100目を示す)
コロナ処理OPET又はOPPを基材として使用。
製膜条件は150℃/0.5分。
[耐水性]
23℃の水道水に、1時間浸漬した後の塗膜の外観を評価。
評価基準は下記のとおりである。
○:基材から膜は剥離しない。
×:基材から膜が剥離する。
これらの結果を表4に合わせて示した。
【0050】
(比較例9〜13)
表1記載の重合体水性分散液から得られる塗膜についても、上記実施例と同様な評価を行った。結果を表4に合わせて示した。
【0051】
【表4】
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、高湿度から低湿度に渡って、非帯電性に優れた塗布膜を形成することが可能で、保存安定性に優れた水性分散液を提供することができる。このような塗布膜は、成膜直後から非帯電性を示し、10%RH程度の低湿度領域でも非帯電性を示す点において優れている。また、水性分散液の粘度が適当であること、塗布膜からアルコールアミン類がブリードアウトしないこと、非帯電性が半永久的に持続するという長所を備えている。
このような特長を生かし、本発明の帯電防止用水性分散液は、プラスチック等の基材の帯電防止膜形成用に使用できるほか、導電性を利用した電子材料分野、その他選択透過膜、イオン交換膜、電池セパレーター、インク、接着剤などに使用することができる。
Claims (3)
- 不飽和カルボン酸含量が10〜35重量%のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体の水性分散液であって、該共重合体のカルボキシル基を基準にして、70〜100モル%に相当する量のカリウムイオンと、1モル%以上に相当する量であって、カリウムイオンとの合計量で130モル%以下に相当する量のアルカノールアミンとを含有し、固型分濃度が5〜40重量%の範囲にある帯電防止用水性分散液。
- 請求項1の帯電防止用水性分散液と、平均粒子径が0.1〜10000nm、固型分濃度が2〜75重量%、pHが7以上の他の重合体水性分散液とを、固型分換算(重量比)で10/90〜90/10の割合で配合されてなる混合水性分散液。
- 請求項1記載の水性分散液又は請求項2記載の混合水性分散液を基材に塗布し、乾燥することを特徴とする帯電防止被覆の形成方法。
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