JP4205768B2 - 帯電防止剤 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、帯電防止性能の持続性に優れた高分子型帯電防止剤に関するもので、より詳細には(メタ)アクリル酸カリウム塩単位を含有する高分子系の帯電防止剤に関する。本発明は更に、帯電防止用水性被覆材組成物にも関する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチックや繊維或いは紙等を取り扱う場合、帯電によりこれらの材料が帯電し、種々の静電気障害を生じる。これを防止するために帯電防止剤が使用されている。帯電防止剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系界面活性剤等の各種の有機化合物が知られており、これらの帯電防止剤は、成型物の表面に塗布したり、或いは表面への移行性を利用して材料を構成する高分子中に配合したりして使用されている。
【0003】
また、低分子量の帯電防止剤は帯電防止性の持続性に問題があるため、高分子帯電防止剤を用いることも行われている。例えば、静電記録用紙や電子写真用基紙においては、紙の少なくとも一面に高分子型の帯電防止剤が塗布されている。このような帯電防止剤として、できるだけ低温度で表面抵抗を小さくできるものが望まれている。また種々の高分子材料の帯電防止の持続性を高めるために、高分子型の帯電防止剤を配合或いは塗布することが行われているが、高分子材料の性状を損なわないためにもできるだけ少量の使用で効果的な高分子型の帯電防止剤が望まれている。従来、このような目的に用いられる高分子型の帯電防止剤として、ポリアクリル酸エステル系4級アンモニウム塩やポリスチレン系4級アンモニウム塩などが使用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、高分子系帯電防止剤は帯電防止性の持続性に優れている反面、帯電防止性能のレベルが十分に大きいとはいえず、さらに優れた性能を有するものが望まれていた。
【0005】
従って、本発明の目的は高度な帯電防止性能とその保持性とに優れた高分子型帯電防止剤を提供することにある。本発明の他の目的は、静電記録用紙の塗布剤として優れた性能を示す高分子型帯電防止剤を提供するにある。本発明のさらに他の目的は、高分子化合物の帯電防止に有用な高分子型帯電防止剤を提供するにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(メタ)アクリル酸重合体のカルボキシル基の50%モル以上がカリウムイオンで中和されてなる(メタ)アクリル酸重合体のカリウム塩又は(メタ)アクリル酸含有量が50モル%以上を占める(メタ)アクリル酸と酢酸ビニル、及びアクリルアミドから選択された1種以上の極性ビニルモノマーとの共重合体のカルボキシル基の50モル%以上がカリウムイオンで中和されてなる(メタ)アクリル酸・極性ビニルモノマー共重合体のカリウム塩を有効成分とする帯電防止剤及び前記(メタ)アクリル酸重合体のカリウム塩又は(メタ)アクリル酸・極性ビニルモノマー共重合体のカリウム塩の水溶液からなる帯電防止用水性被覆材組成物に関する。
ここに(メタ)アクリル酸はアクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0007】
【作用】
本発明は、(メタ)アクリル酸重合体乃至共重合体のカリウム塩を種々の基体に塗布し或いは高分子化合物に含有させると、ハイレベルの帯電防止性能が発現されるという知見に基づくものである。即ち、種々の成形品、例えばシートにおける帯電性能は、このシートを環境下においたときの表面電気抵抗で評価できる。一般に、この表面電気抵抗が1013Ω以上では帯電性が顕著であり、表面抵抗が1012Ω以下では帯電防止されていると言われており、そのオーダーは約4桁にも及ぶ広いものであるが、本発明の帯電防止剤を使用すると、相対湿度40%の低湿度条件下にあっても、1010Ω以下に表面抵抗を抑制し、ハイレベルの帯電防止性能を得ることができる。
【0008】
(メタ)アクリル酸は、単独で重合可能な単量体としては、単量体重量当たりのカルボキシル基濃度の最も高い方の単量体であり、樹脂の構成単量体として(メタ)アクリル酸を選ぶことにより、樹脂中のアニオン性(酸価)を高めることができる。
【0009】
(メタ)アクリル酸重合体乃至共重合体をカリウム塩の形で使用することも重要である。(メタ)アクリル酸重合体乃至共重合体に水溶性を付与するために、この重合体乃至共重合体をアルカリ金属塩として使用することは従来から知られているが、従来のものの多くはナトリウム塩であり、カリウム塩の特性、特に帯電性能についてはよく知られていない。本発明では、(メタ)アクリル酸重合体乃至共重合体をカリウム塩とすることにより、ナトリウム塩とした場合に比して、顕著に優れた帯電性能が得られる。
【0010】
本発明者らの研究によると、(メタ)アクリル酸重合体乃至共重合体のカリウム塩は、ナトリウム塩に比して、低湿度条件下においてさえ吸湿傾向が大きく、これが低湿度条件下においても優れた帯電性を付与する理由と考えられる。これには、カリウムイオンがナトリウムイオンに比して大きいイオン半径を有していることも関係していると思われる。
【0011】
本発明に用いる重合体乃至共重合体は、50モル以上の(メタ)アクリル酸含有量を有するべきであり、(メタ)アクリル酸の含有量が上記範囲を下回ると満足すべき帯電性能を付与することができない。
又、同様の見地から、カルボキシル基の50モル%以上がカリウムイオンで中和されているべきである。
【0012】
以上述べたとおり、本発明によれば、(メタ)アクリル酸重合体乃至共重合体のカリウム塩を使用することにより、ハイレベルの帯電防止性能が持続して得られると共に、この重合体乃至共重合体は水や他の溶媒に対する溶解性に優れており、更に種々の基体に対する密着性にも優れているため、基体に対して薄い厚みで塗布することができ、しかも永続した帯電性が得られるという利点もある。
【0013】
【発明の好適態様】
本発明においてはアクリル酸又はメタクリル酸の重合体もしくはそれら相互の共重合体のカリウム塩を使用することができる。
本発明においてはまた、(メタ)アクリル酸と他のビニルモノマーとの共重合体のカリウム塩を使用することもできる。
この共重合体にあっては、(メタ)アクリル酸が少なくとも50モル%以上の割合で共重合されているものを用いる。
(メタ)アクリル酸の含有量が50モル%未満の共重合体を用いた場合には、非帯電性に優れたものを得るのが困難となる。
【0014】
これらの中でも、とくに水溶性良好なものを得たい場合には、ポリ(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸含有量が80モル%以上、好ましくは90モル%以上の(メタ)アクリル酸共重合体のカリウム塩を用いるのが好ましい。また逆に耐水性良好なものを得たい場合には、(メタ)アクリル酸含有量が80モル%未満の共重合体のカリウム塩を用いるのが好ましい。
【0015】
上記他のビニルモノマーとは、酢酸ビニル又はアクリルアミドである。
【0016】
これら重合体または共重合体におけるカリウムイオンによる中和度は、50モル%以上、好ましくは60モル%以上である。
カリウムイオンによる中和度が上記範囲より小さくなると、良好な帯電防止性能が発揮されなくなる。
カリウムイオンによる中和度が上記範囲にある限り、他の金属イオン、例えばナトリウム、リチウムのような1価金属、マグネシウム、カルシウム亜鉛などの多価金属などで中和されていてもよい。
【0017】
上記帯電防止剤となる(メタ)アクリル酸の重合体もしくは共重合体のカリウム塩は、種々の方法で製造することが可能である。例えば(メタ)アクリル酸もしくはこれと他の極性ビニルモノマーを重合もしくは共重合し、得られた重合体もしくは共重合体の(メタ)アクリル酸の重合単位を部分的もしくは完全に中和する方法、(メタ)アクリル酸のカリウム塩もしくはそれと他の極性ビニルモノマーを重合もしくは共重合する方法、(メタ)アクリル酸エステルもしくはそれと他の極性ビニルモノマーを重合もしくは共重合し、得られた重合体もしくは共重合体の(メタ)アクリル酸エステルの重合単位を部分的もしくは完全にケン化する方法等によって製造することが可能である。このような(メタ)アクリル酸エステルを使用する代わりに、(メタ)アクリロニトリルや(メタ)アクリルアミド等を使用して、同様にケン化する方法でもよい。これらの方法についてはすでに広く知られている。
【0018】
帯電防止剤として使用される(メタ)アクリル酸の重合体もしくは共重合体のカリウム塩は、その使用方法によっても異なるが、一般には製膜可能な程度の分子量を有しておればよく、例えば5000〜500000程度の数平均分子量を有していればよい。
【0019】
(メタ)アクリル酸重合体もしくは共重合体のカリウム塩は、通常、水、有機溶媒あるいはこれらの混合溶媒中で製造され、溶液としてあるいは分散液として得られる。したがって塗布型の帯電防止剤として使用する場合には、このような溶液や分散液をそのまま使用することができる。
【0020】
この場合、被塗物である基材への接着性を高めるために、接着性付与重合体を配合することができる。接着性付与重合体の例としては、例えば澱粉、ポリビニルアルコール、カルボキシルメチルセルロース、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体アイオノマーなどを例示することができる。接着性付与重合体は任意割合で配合することができる。例えば(メタ)アクリル酸重合体もしくは共重合体のカリウム塩100重量部当たり、1000重量部以下、好ましくは200重量部以下の割合で使用することができる。
【0021】
(メタ)アクリル酸重合体もしくは共重合体のカリウム塩からなる帯電防止膜の耐水性を高めるために、上記溶液又は分散液に予め架橋剤を配合しておき、帯電防止膜形成後に架橋することもできる。このような架橋剤としてはカルボキシル基と反応可能な官能基を複数個有する化合物、例えば多価エポキシ化合物、メチレンビスアクリルアミド、各種のジアミン及びアミンの高分子化合物などを例示することができる。多価エポキシ化合物のより具体的な例として、例えばポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどであり、またジアミン或いはアミン高分子化合物の例としては、ヘキサメチレンジアミン、1,3−ビスアミノシクロヘキサン、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルピロリドン、ポリアミドなどを例示することができる。
【0022】
(メタ)アクリル酸重合体もしくは共重合体のカリウム塩からなる帯電防止膜を形成させることができる基材としては、紙、金属、高分子材料などであり、これらはシート、フィルムのみならず各種形状の成形品であってもよい。高分子材料の例としては、例えばポリオレフィン、オレフィン・極性ビニル化合物共重合体、ポリエステル、ポリアミド、ABS樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、合成ゴム、熱可塑性エラストマー、フェノール樹脂、尿素樹脂、などを代表例として例示することができる。とくに紙に上記帯電防止膜を形成させたものは、静電記録用紙、電子写真用基紙として有用である。
【0023】
帯電防止膜の厚みは任意であるが、通常1〜20μ、好ましくは1〜10μ、とくに好ましくは1〜5μである。
基材と帯電防止膜との接着性を高めるために、基材に下塗りを施しておいてもよい。このような下塗り剤としては、上記した架橋剤、ポリエチレンイミン、各種カップリング剤などであってもよい。
基材上に帯電防止膜を形成させるには、この分野で公知の方法、例えばロールコーティング、刷毛塗り、スプレー塗布などを採用すればよい。
【0024】
帯電防止膜の耐水性、耐久性等を高めるために、電子線照射などにより架橋処理を施すこともできる。帯電防止膜のその他の物性の改良のために、例えば筆記性、べたつき防止、すべり性改良、色調の調整等のために、種々の添加剤、例えばクレイ、チタンホワイト、炭酸カルシウム、シリカ等の顔料や無機添加剤等を配合することもできる。
本願発明の帯電防止剤はまた、各種高分子材料に配合して用いることもできる。
【0025】
【実施例】
以下、実施例をあげ、本発明を更に詳しく説明する。
(ポリアクリル酸カリウム試料調製) ポリアクリル酸塩1=ポリアクリル酸カリウム(30%中和) 300mlビーカー中にポリアクリル酸(Mw=250000)の20重量%水溶液100gを加え、更に水酸化カリウム5.84gを冷却・攪拌しながら加えた。
カルボン酸部分の30mol%がカリウムで中和されたポリアクリル酸部分中和塩の水溶液をえた。
中和度は赤外分光器を用いて確認した。
ポリアクリル酸塩2=ポリアクリル酸カリウム(60%中和)
ポリアクリル酸塩3=ポリアクリル酸カリウム(90%中和)
同様にポリアクリル酸(Mw=250000)の20重量%水溶液にそれぞれ計算量の水酸化カリウムを加え、目的とする60%、90%の中和度のポリアクリル酸部分中和塩を得た。
また、アルカリで全く中和しない上記ポリアクリル酸(Mw=250000)を、比較用試料に用いた。
これを、ポリアクリル酸塩5=ポリアクリル酸カリウム(0%中和)とする。
ポリアクリル酸塩4=ポリアクリル酸カリウム(90%中和)
アクリル酸50gに蒸留水150g、水酸化カリウム40gを加え攪拌し、アクリル酸の90mol%をカリウムで中和したアクリル酸カリウムの水溶液を調製した。
100℃以下に発熱を抑えながら、触媒量の過硫酸カリウムを加えて重合し、ポリアクリル酸部分中和塩の水溶液を得た。
尚、上記各試料の中和度は赤外分光器を用いて確認した。
【0028】
(アクリル酸カリウム/ビニルモノマー共重合体(酸共重合体)試料調製)
酸共重合体1=アクリル酸カリウム(50)/酢酸ビニル(50)共重合体(90%中和)
酸共重合体2=アクリル酸カリウム(50)/アクリルアミド(50)共重合体(90%中和)
アクリル酸50gに蒸留水150g、水酸化カリウム40gを加え、アクリル酸の90mol%をカリウムで中和したアクリル酸部分中和塩の20重量%水溶液を調製した。
同重量のビニルモノマー(共重合体1では酢酸ビニル、共重合体2ではアクリルアミド)の20重量%水溶液を加え、発熱を抑えながら、触媒量の過硫酸カリウムを加え、攪拌しながら重合させ、アクリル酸カリウムとビニルモノマーの共重合体の20重量%水溶液を得た。
尚、上記各試料の中和度は赤外分光器を用いて確認した。
【0029】
(ポリアクリル酸ナトリウム試料調製)
ポリアクリル酸塩6=ポリアクリル酸ナトリウム(重合度2700〜7500)和光純薬(株)製(100%中和)
【0031】
【実施例1乃至5、比較例1乃至3】
(試験片の作製)
基材として厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、基材上に調製した塗布型帯電防止材(実施例1〜5及び比較例1〜3)をパーコレーターを用いて塗布した。
これを100℃〜120℃の熱風にて3分間乾燥した。
得られた試験片について表面抵抗率を評価した。
【0032】
(表面抵抗率の評価)
高抵抗抵抗率計ハイレスタIP(三菱油化製)を用い、恒温恒湿器内で所定の湿度で24時間調湿後、500V,10秒で表面抵抗率を測定した。評価結果を表2に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、高度な帯電防止性能を有する帯電防止剤を提供することができる。とくに共重合体の組成や中和度を変化させることにより、細かい品質設計が可能であり、用途に合わせた帯電防止剤を選択することができる。また、この重合体乃至共重合体は水や他の溶媒に対する溶解性に優れており、更に種々の基体に対する密着性にも優れているため、基体に対して薄い厚みで塗布することができ、しかも永続した帯電性が得られるという利点もある。
Claims (4)
- (メタ)アクリル酸重合体のカルボキシル基の50%モル以上がカリウムイオンで中和されてなる(メタ)アクリル酸重合体のカリウム塩又は(メタ)アクリル酸含有量が50モル%以上を占める(メタ)アクリル酸と酢酸ビニル、及びアクリルアミドから選択された1種以上の極性ビニルモノマーとの共重合体のカルボキシル基の50モル%以上がカリウムイオンで中和されてなる(メタ)アクリル酸・極性ビニルモノマー共重合体のカリウム塩を有効成分とする帯電防止剤。
- 紙、金属又は高分子材料の塗布用に用いられる請求項1に記載の帯電防止剤。
- 高分子材料への配合用に用いられる請求項1に記載の帯電防止剤。
- (メタ)アクリル酸重合体のカルボキシル基の50モル%以上がカリウムイオンで中和されてなる(メタ)アクリル酸重合体のカリウム塩又は(メタ)アクリル酸含有量が50モル%以上を占める(メタ)アクリル酸と酢酸ビニル、及びアクリルアミドから選択された1種以上の極性ビニルモノマーの共重合体のカルボキシル基の50モル%以上がカリウムイオンで中和されてなる(メタ)アクリル酸・極性ビニルモノマー共重合体のカリウム塩の水溶液から成ることを特徴とする帯電防止用水性被覆材組成物。
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