JP4205162B2 - 粘膜血管アドレシンおよびその用途 - Google Patents
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Description
本願は、1995年9月1日に出願された米国出願番号08/523,004(代理人事件番号LKS94−04A)の一部継続出願である、1995年2月20日に出願された米国出願番号08/386,857(代理人事件番号LKS94−04)の一部継続出願であり、それらの教示は全て、それぞれ参考として本明細書の一部を構成する。
発明の背景
循環系からリンパ組織へのリンパ球の帰還と、炎症部位へのリンパ球の移動は、二次リンパ組織(例えば腸間膜リンパ小節やパイエル斑(PP)に見られる高内皮性後毛細管小静脈(HEV)を含む後毛細管小静脈で発現したレセプターとの相互作用によって調節される。Bevilacqua,M.P.,Ann.Rev.Immunol.,11:767−804(1993);Butcher,E.C.,Cell,67:1033−1036(1991);Picker,L.J.ら,Ann.Rev.Immunol.,10:561−591(1992);及びSpringer,T.A.,Cell,76:301−314(1994))。これらの相互作用は本質的に組織特異的である。
炎症(慢性炎症など)は、リンパ球、リンパ芽球及び単核食細胞などの白血球による、冒された組織の浸潤を特徴とする。通常の循環中や炎症中に、白血球が種々の組織に選択的に移動する際の著しい選択性は、Butcherその他が提唱するところによると、複数のレセプター−リガンド相互作用が関与する一連の接着と活性化によってもたらされる(Butcher,E.C.,Cell,67:1033−1036(1991);vonAdrian,U.H.ら,Proc.Natl.Acad.Sic.USA,88:7538(1991);Mayadas,T.N.ら,Cell,74:541(1993);Springer,T.A.,Cell,76:301(1994))。初期段階として、白血球と内皮の間に一過性の回転相互作用があるが、これはセレクチン類(場合によってはα4インテグリンも関与)とその炭水化物リガンドとの相互作用によってもたらされる。血流方向への回転を特徴とするこの相互作用は、公知の方法で評価できる(Lawrence,M.B.及びT.A.Springer,Cell,65:859(1991);WO92/21746,Springerら(1992年12月10日))。この相互作用に続いて、ケモカインのような化学誘引物質とそのレセプターによって媒介される活性化が起こり、それがインテグリン接着性の活性化事象を引き起こし、血管壁を通過する白血球の移動方向に影響を与える。このような二次シグナルが、今度は、白血球インテグリンとその内皮リガンド(Ig様レセプターとECM)を介して内皮に対する白血球の強固な接着と、それに続く、血管内皮を横切って起こる循環系からの経内皮移動とを誘発する。
パイエル斑(PP)やリンパ小節(例えば末梢リンパ小節(PLN))などの二次リンパ組織では、白血球の通行と帰還が、白血球表面の帰還レセプターと後毛細管小静脈を裏打ちする内皮細胞(特に高内皮性後毛細管小静脈(HEV))との相互作用によって調節される(Gowans,J.L.及びE.J.Knight,Proc.R.Soc.Lond.,159:257(1964))。血管アドレシン(vascular addressin)と呼ばれるレセプター群は、内皮細胞表面に存在し、白血球亜集合の移動とそれに続く管外溢出を調節する。血管アドレシンは制限された発現パターンを示し、その組織特異的発現は、白血球通行の特異性に重要な貢献をしている(Picker,L.J.ら,およびE.C.Butcher,Ann.Rev.Immunol.,10:561−591(1992);Berg,E.L.ら,Cellular and molecular mechanism of inflamination,2:111(1991);Butcher,E.C.,Cell,67:1033−1036(1991))。
粘膜血管アドレシンMAdCAM−1(粘膜アドレシン細胞接着分子−1)はリンパ球に対する免疫グロブリンスーパーファミリー接着レセプターであり、VCAM−1やICAM−1とは異なる。MAdCAM−1は、リンパ球管外溢出部位に選択的に発現される約60kd糖蛋白質として、マウスで同定された。具体的に述べると、MAdCAM−1の発現は、パイエル斑や小腸及び大腸の基底膜の後毛細管小静脈のような腸−関連組織またはリンパ器官を含む粘膜組織の血管内皮細胞、および泌乳性乳線で報告されているが、末梢リンパ小節では報告されていない。MAdCAM−1は、パイエル斑に対するリンパ球の結合に関与する(Streeter,P.R.ら,Nature,331:41−46(1988);Nakache,M.ら,Nature,337:179−181(1989);Picker,L.J.ら,Annu.Rev.Immunol.,10:561−591(1992);Briskin,M.J.ら,Nature,363:461(1993);Berg,E.L.ら,Nature,366:695−698(1993);Berlin,C.ら,Cell,74:185−195(1993))。MAdCAM−1は、プロ炎症刺激によって、インビトロで誘導されうる(Sikorski,E.E.ら,J.Immunol.151:5239−5250(1993))。
MAdCAM−1は、パイエル斑への帰還に関与するリンパ球帰還レセプターであるリンパ球インテグリンα4β7(LPAM−1(マウス)、α4βp(マウス)とも呼ばれる)と特異的に結合する(Berlin,C.ら,Cell,80:413−422(1994);Berlin,C.ら,Cell,74:185−195(1993);およびErle,D.J.ら,J.Immunol.,153:517−528(1994))。α4β1とα4β7の両方と相互作用するVCAM−1およびフィブロネクチン(Berlin,C.ら,Cell,74:185−195(1993);Strauch,U.S.ら,Int.Immunol.,6:263(1994))とは対照的に、MAdCAM−1はα4β7に対する選択的レセプターである。
例えば潰瘍性結腸炎やクローン病のような炎症性腸疾患(IBD)は、胃腸管の炎症が関与する衰弱性及び進行性の疾患でありうる。米国だけでも推定200万人の人々を冒している症状には、腹痛、さしこみ、下痢および直腸出血などがある。IBD治療には、抗炎症剤(コルチコステロイドおよびスルファサラジンなど)、免疫抑制剤(6−メルカプトプリン、シクロスポリンおよびアザチオプリンなど)及び外科手術(結腸切除など)などが用いられている。Podolsky,New Engl.J.Med.,325:928−937(1991)及びPodolsky,New Engl.J.Med.,325:1008−1016(1991)。
いくつかの研究によって、細胞接着分子ICAM−1が、白血球表面リガンド、すなわちMac−1またはLFA−1に対する接着を介して、炎症部位への白血球補充を媒介することが示唆されている(Springer,Nature,346:425−434(1990))。また、α4β1インテグリン(VLA−4)を認識する血管細胞接着分子−1(VCAM−1)は、インビボにおける白血球補充に役割を果たしているとも報告されている(Silberら,J.Clin.Invest.93:1554−1563(1994))。ICAM−1とLFA−1またはMac−1との相互作用や、VCAM−1とα4β1との相互作用を阻害することによって、IBDを治療できるとの提案がある(例えばWO93/15764)。しかしながら、これらの治療標的は複数の器官の炎症プロセスに関与すると思われ、機能の阻害は全身的な免疫機能不全を引き起こしかねない。
VCAM−1やICAM−1とは対照的に、MAdCAMは胃腸管に選択的に発現され、リンパ球上に認められるα4β7インテグリンを結合し、これらの細胞の、粘膜部位(腸壁のパイエル斑など)への帰還に関与する(Hamannら,Journal of Immunology,152:3282−3293(1994))。MAdCAMの、そのレセプターα4β7との結合に対して阻害因子を使用することは、これまで提案されていない。さらに、ヒトのα4及びα7の遺伝子と蛋白質は同定されているが(Yuanら,Int.Immunol.2:1097−1108(1990);Erleら,J.Biol.Chem.,266:11009−11016(1991);Bevilacqua,M.P.,Annu.Rev.Immunol.,11:767−804(1993);Springer,T.A.,Cell,76:301−314(1994))、ヒトまたは霊長類MAdCAM−1はまだクローン化や特徴づけがなされていない。
発明の要約
本発明は、以下、単離及び/又は組換え(例えば本質的に純粋な)霊長類MAdCAMと呼ぶ、蛋白質またはポリペプチドに関する。一態様として、霊長類MAdCAMは、α4β7インテグリンを発現する細胞(具体的にはリンパ球)に選択的に結合できる。本発明の組換え蛋白質は変異体を含み、本明細書に記載の宿主細胞で生産できる。さらに、例えば、霊長類MAdCAMまたはその変異体を免疫原として用いることにより、本発明の蛋白質と反応する抗体を生産することができる。このような抗体またはその断片は、治療、診断及び研究に有用である。例えば、これらの抗体は、MAdCAMの精製と研究、MAdCAMを発現する細胞の同定、試料中のMAdCAMの検出または定量などに使用できる。
さらに本発明は、霊長類MAdCAM(ヒトMAdCAMなど)をコードする単離及び/又は組換え(例えば本質的に純粋な)核酸に関する。さらに他の側面として、本発明は、本発明の蛋白質またはその一部をコードする核酸を含有する、プラスミドやレトロウイルスベクターなどの組換え核酸構築物に関する。該核酸と構築物を、組換え霊長類MAdCAMを製造するために使用することができる。他の態様として、本発明の核酸は、霊長類MAdCAMをコードする二番目の核酸とハイブリッド形成することができ、かつ、(例えば細胞中に導入された場合に)その蛋白質の発現を阻害できるアンチセンス核酸をコードする。
また、MAdCAM機能のリガンド及び/又は阻害因子(例えばアンタゴニスト)を同定する方法も、本発明に包含される。例えば、MAdCAMとそのリガンドα4β7インテグリンとの結合を阻害するアンタゴニストを同定するために設計されたアッセイ法(例えば接着アッセイ法)に、霊長類MAdCAM(変異体を含む)を使用できる。
さらに本発明は、治療法(MAdCAM分子を発現する腸−関連内皮に対する白血球結合の結果として起こる胃腸管や他の組織への白血球(リンパ球や単球など)補充に関連する疾患に冒された個体の治療法を含む)であって、その個体(例えば、霊長類などの哺乳類)に、内皮MAdCAMに対する白血球の結合を阻害する薬物または化合物(抗体など)の有効量を投与することを含む治療法にも関係する。抗体はモノクローナル抗体、キメラ及び/又は人体に適合させた抗体またはその抗原結合性断片であることが好ましく、β7鎖を含有するインテグリン(α4β7など)を発現する白血球の、MAdCAMを発現する内皮への接着を阻害する。ある態様では、そのようなモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片が、FIB21、FIB30、FIB504及びACT−1からなる群より選択されるモノクローナル抗体の抗原特異性を持つ。本願の請求された方法によって、炎症性腸疾患、例えば潰瘍性結腸炎、クローン病、窩炎(Pouchitis)、腹腔疾患、微細(microscopic)またはコラーゲン蓄積大腸炎及び好酸球性胃腸炎などを、ただしこれらに限られるわけではないが、治療できる。
従って、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)霊長類MAdCAMをコードする単離された核酸、
(2)単離された核酸が組換え体である、前記(1)記載の単離された核酸、
(3)該核酸がストリンジェントな条件下で二番目の核酸とハイブリダイズし、該二番目の核酸が図1(配列番号:1)、図2(配列番号:3)または図3(配列番号:5)に示されるヌクレオチド配列を有する、前記(1)記載の単離された核酸、
(4)該核酸が本質的に純粋である、前記(3)記載の単離された核酸、
(5)該核酸が図1(配列番号:2)に示されるポリペプチド、図2(配列番号:4)に示されるポリペプチド、図3(配列番号:6)に示されるポリペプチドまたは対応する成熟蛋白質をコードする、前記(1)記載の単離された核酸、
(6)組換え核酸である、前記(5)記載の単離された核酸、
(7)該核酸が本質的に純粋である、前記(5)記載の単離された核酸、
(8)図1(配列番号:1)に示されるヌクレオチド配列、図2(配列番号:3)に示されるヌクレオチド配列、図3(配列番号:5)に示されるヌクレオチド配列およびコード配列を含有してなる前記のいずれかの一部からなる群より選ばれたヌクレオチド配列を有する前記(5)記載の単離された核酸、
(9)前記(1)記載の核酸を含有してなる組換え核酸構築物、
(10)組換え核酸が発現制御配列に実施可能に連結している、前記(9)記載の組換え核酸構築物、
(11)該核酸が図1(配列番号:2)、図2(配列番号:4)、図3(配列番号:6)に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする、核酸を含有してなる前記(9)記載の組換え核酸構築物、
(12)核酸が発現制御配列に実施可能に連結している、前記(11)記載の組換え構築物、
(13)単離された霊長類MAdCAM、
(14)霊長類MAdCAMがヒトMAdCAMであり、ストリンジェントな条件下で二番目の核酸にハイブリダイズする核酸によりコードされ、該二番目の核酸が図1(配列番号:1)または図2(配列番号:3)に示されるヌクレオチド配列を有する、前記(13)記載の単離された霊長類MAdCAM、
(15)霊長類MAdCAMが図1(配列番号:2)、図2(配列番号:4)に示されるヒトMAdCAMまたは前記のいずれかの対応する成熟蛋白質である、前記(13)記載の単離された霊長類MAdCAM、
(16)霊長類MAdCAMがアカゲザルMAdCAMであり、ストリンジェントな条件下で二番目の核酸にハイブリダイズする核酸によりコードされ、該二番目の核酸が図3(配列番号:5)に示されるヌクレオチド配列を有する、前記(13)記載の単離された霊長類MAdCAM、
(17)霊長類MAdCAMが図3(配列番号:6)に示されるアカゲザルMAdCAMまたは対応する成熟蛋白質である、前記(13)記載の単離された霊長類MAdCAM、
(18)図1(配列番号:2)の19〜406、図2(配列番号:4)の19〜382または図3(配列番号:6)の22〜346のアミノ酸からなるアミノ酸配列を本質的に有する前記(15)記載の単離された霊長類MAdCAM、
(19)α4β7インテグリンへの結合および細胞接着の媒介からなる群より選ばれた1以上の機能を有する単離された霊長類MAdCAM、
(20)細胞接着がα4β7インテグリン依存性である、前記(19)記載の単離された霊長類MAdCAM、
(21)結合がα4β7に対して選択的である、前記(20)記載の単離された霊長類MAdCAM、
(22)前記(2)記載の組換え核酸を含む宿主細胞、
(23)核酸が発現制御配列に実施可能に連結し、それによって宿主細胞を発現に適した条件下で維持した時に霊長類MAdCAMが発現される、前記(22)記載の宿主細胞、
(24)霊長類MAdCAMを含有してなる融合蛋白質、
(25)第1部分および第2部分を含有してなり、該第1部分が霊長類MAdCAMであり、該第2部分が少なくとも免疫グロブリン鎖またはその変異体の一部である、前記(24)記載の融合蛋白質、
(26)該第1部分がそれのC末端で第2部分のN末端に結合している、前記(25)記載の融合蛋白質、
(27)第1部分が全細胞外ドメインを含むヒトMAdCAMの断片および2つのN末端免疫グロブリンドメインを含むヒトMAdCAMの断片からなる群より選ばれた、前記(25)記載の融合蛋白質、
(28)第2部分が少なくとも免疫グロブリン重鎖定常部またはその変異体の一部である、前記(25)記載の融合蛋白質、
(29)免疫グロブリン重鎖がIgGクラスである、前記(28)記載の融合蛋白質、
(30)第2部分が免疫グロブリン重鎖のヒンジ、CH2およびCH3ドメインを含有する、前記(28)記載の融合蛋白質、
(31)前記(25)記載の融合蛋白質を含有してなるハイブリッド免疫グロブリン、
(32)該ハイブリッド免疫グロブリンがホモ二量体である、前記(31)記載の融合蛋白質を含有してなるハイブリッド免疫グロブリン、
(33)必要に応じてコード配列が発現制御配列に実施可能に連結している、前記(24)記載の融合蛋白質をコードするコード配列を含む核酸を含有してなる核酸構築物、
(34)必要に応じてコード配列が発現制御配列に実施可能に連結している、前記(25)記載の融合蛋白質をコードする配列を含む核酸を含有してなる、核酸構築物、
(35)下記工程からなる霊長類MAdCAMの製造方法:
(a)宿主細胞に霊長類MAdCAMをコードする核酸を含有してなる核酸構築物を導入し、それによって少なくとも1つの発現制御配列に実施可能に連結された該コード配列を有する組換え宿主細胞を製造する工程;および
(b)工程(a)において製造された宿主細胞を核酸が発現される条件下で適した培地中で維持する工程、
(36)さらに霊長類MAdCAMを単離する工程を有する、前記(35)記載の方法、
(37)霊長類MAdCAMをコードする組換え核酸を含む宿主細胞を核酸の発現に適した条件下で維持し、それによって霊長類MAdCAMが製造される工程からなる霊長類MAdCAMの製造方法、
(38)さらに霊長類MAdCAMを単離する工程を有する前記(37)記載の方法、
(39)霊長類MAdCAMに結合する抗体またはその機能的部分、
(40)該抗体が霊長類MAdCAMの1以上の機能を阻害することができる、前記(39)記載の抗体、
(41)該抗体が選択的にα4β7依存性接着を阻害することができる、前記(39)記載の抗体、
(42)霊長類がヒトである、前記(40)記載の抗体、
(43)下記工程からなる試料中の選択された霊長類MadCAMの検出方法:
a)選択された霊長類MAdCAMへの該抗体の特異的結合に適した条件下で単離された霊長類MAdCAMと結合する抗体に試料を接触させる工程;および
c)抗体−MAdCAM複合体を検出する工程、
(44)単離された霊長類MAdCAMに対するリガンドの結合に適した条件下で試験される薬物を単離された霊長類MAdCAMと組み合わせて(combining)、該薬物および霊長類MAdCAM間の複合体の形成を検出または測定する工程からなる、霊長類MAdCAMのリガンドまたは霊長類MAdCAMと結合する薬物の検出または同定方法、
(45)下記工程からなる霊長類MAdCAMのリガンドまたは霊長類MAdCAMと結合する薬物の検出または同定方法、
a)組換え霊長類MAdCAMに対するリガンドの結合に適した条件下で試験される薬物を組換え霊長類MAdCAMを発現する宿主細胞と組み合わせる(combining)工程;および
b)該薬物および霊長類MAdCAM間の複合体の形成を検出または測定する工程、
(46)下記工程からなる霊長類MAdCAMのそのリガンドへの結合の阻害剤の検出方法:
a)霊長類MAdCAMに対するリガンドの結合に適した条件下で試験される薬物を霊長類MAdCAMのリガンドおよび単離されたおよび/または組換え霊長類MAdCAMを含有してなる組成物と組み合わせる(combining)工程;および
b)霊長類MAdCAMおよびリガンド間の結合を検出または測定し、それによって適したコントロールと比較して減少した結合が該薬物が阻害剤であることを示す工程、
(47)単離されたおよび/または組換え霊長類MAdCAMが融合蛋白質である、前記(46)記載の方法、
(48)単離されたおよび/または組換え霊長類MAdCAMを含有してなる組成物が組換え霊長類MAdCAMを発現している宿主細胞を含む、前記(46)記載の方法、
(49)下記工程からなる、MAdCAMにより媒介される細胞接着の阻害剤の検出方法:
a)試験される薬物、組換え霊長類MAdCAMを発現している第1細胞およびα4β7インテグリンを有している第2細胞を該第1細胞の該第2細胞への接着に適した条件下で組み合わせる(combining)工程;および
b)該第1および第2細胞間の接着を検出または測定し、それによって適したコントロールと比較して減少した接着が該薬物が阻害剤であることを示す工程、
(50)薬物が抗体または抗体断片である前記(49)記載の方法、
(51)白血球のMAdCAMへの結合を阻害できる有効量の抗体を個体に投与する工程からなる、分子MAdCAMを発現している組織の白血球浸潤と関連する疾患を有する個体の治療方法、
(52)疾患が分子MAdCAMを発現する腸−関連内皮への白血球の結合の結果としての胃腸管または他の組織への白血球補充と関連する疾患であり、抗体が白血球の内皮MAdCAMへの結合を阻害できる前記(51)記載の方法、
(53)抗体がモノクローナル抗体またはその抗原結合断片である前記(52)記載の方法、
(54)モノクローナル抗体またはその抗原結合断片がβ7鎖を含んでいるインテグリンを発現している白血球およびMAdCAMを発現している内皮の接着を阻害する前記(53)記載の方法、
(55)モノクローナル抗体またはその抗原結合断片がα4β7インテグリンと結合する前記(54)記載の方法、
(56)モノクローナル抗体またはその抗原結合断片がβ7と結合する前記(55)記載の方法、
(57)モノクローナル抗体またはその抗原結合断片がMAdCAMと結合する前記(56)記載の方法、
(58)モノクローナル抗体またはその抗原結合断片がFIB 21、FIB 30、FIB 504およびACT−1からなる群より選ばれたモノクローナル抗体の抗原特異性を有する前記(54)記載の方法、
(59)モノクローナル抗体またはその抗原結合断片がFIB 21、FIB 30、FIB 504およびACT−1からなる群より選ばれ、またはその抗原結合断片である前記(58)記載の方法、
(60)モノクローナル抗体がACT−1である前記(59)記載の方法、
(61)モノクローナル抗体がキメラ抗体およびヒトに適合させた抗体からなる群より選ばれる前記(54)記載の方法、
(62)白血球がリンパ球である前記(54)記載の方法、
(63)白血球が単球である前記(54)記載の方法、
(64)疾患が炎症性の腸疾患である前記(54)記載の方法、
(65)疾患が潰瘍性結腸炎である前記(64)記載の方法、
(66)疾患がクローン病(Crohn’s disease)である前記(64)記載の方法、
(67)疾患が腹腔疾患、セロネガティブ関節症に関連する腸疾患、微細もしくはコラーゲン蓄積大腸炎、好酸球性胃腸炎、または窩炎である前記(64)記載の方法、
(68)モノクローナル抗体またはその抗原結合断片がα4β7と結合する前記(64)記載の方法、
(69)モノクローナル抗体またはその抗原結合断片がMAdCAMと結合する前記(64)記載の方法、
(70)モノクローナル抗体またはその抗原結合断片がFIB 21、FIB 30、FIB 504およびACT−1からなる群より選ばれたモノクローナル抗体の抗原特異性を有する前記(64)記載の方法、
(71)モノクローナル抗体またはその抗原結合断片がFIB 21、FIB 30、FIB 504およびACT−1からなる群より選ばれ、またはその抗原結合断片である前記(70)記載の方法、
(72)モノクローナル抗体がACT−1である前記(71)記載の方法、
(73)モノクローナル抗体がキメラ抗体およびヒトに適合させた抗体からなる群より選ばれる前記(64)記載の方法、
(74)白血球の内皮MAdCAMへの結合を阻害する1以上のモノクローナル抗体が投与される前記(64)記載の方法、
(75)白血球の内皮リガンドへの結合を阻害する1以上のモノクローナル抗体が投与される前記(64)記載の方法、
(76)少なくとも1のモノクローナル抗体がMAdCAM以外の内皮リガンドへの白血球の結合を阻害する前記(75)記載の方法、
(77)内皮MAdCAMまたはα4β7インテグリンと結合する有効量の抗体を個体に投与する工程からなる個体における炎症性の腸疾患の治療方法、
(78)抗体がモノクローナル抗体またはその抗原結合断片である前記(77)記載の方法、
(79)モノクローナル抗体またはその抗原結合断片がα4β7インテグリンと結合する前記(78)記載の方法、
(80)モノクローナル抗体またはその抗原結合断片がβ7と結合する前記(79)記載の方法、
(81)モノクローナル抗体またはその抗原結合断片がMAdCAMと結合する前記(78)記載の方法、
(82)モノクローナル抗体またはその抗原結合断片がFIB 21、FIB 30、FIB 504およびACT−1からなる群より選ばれたモノクローナル抗体の抗原特異性を有する前記(78)記載の方法、
(83)モノクローナル抗体またはその抗原結合断片がFIB 21、FIB 30、FIB 504およびACT−1からなる群より選ばれ、またはその抗原結合断片である前記(82)記載の方法、
(84)モノクローナル抗体がACT−1である前記(83)記載の方法、
(85)モノクローナル抗体がキメラ抗体およびヒトに適合させた抗体からなる群より選ばれる前記(78)記載の方法、
(86)疾患が潰瘍性結腸炎である前記(78)記載の方法、
(87)疾患がクローン病(Crohn’s disease)である前記(78)記載の方法、
(88)疾患が腹腔疾患、セロネガティブ関節症に関連する腸疾患、微細もしくはコラーゲン蓄積大腸炎、好酸球性胃腸炎、または窩炎である前記(78)記載の方法、
(89)霊長類MAdCAMに対して特異性を有する抗体の有効量を投与する工程からなる、分子MAdCAMを発現している組織の白血球浸潤と関連する疾患を有する霊長類の治療方法、
(90)抗体が霊長類MAdCAMのα4β7インテグリンとの相互作用を阻害することができる、前記(89)記載の方法、
(91)疾患が分子MAdCAMを発現する腸−関連内皮への白血球の結合の結果としての組織の白血球浸潤と関連する疾患である、前記(89)記載の方法、
(92)霊長類MAdCAMと結合する抗体の有効量を霊長類に投与する工程からなる、霊長類における炎症性腸疾患の治療方法、
(93)抗体が霊長類MAdCAMのα4β7インテグリンとの相互作用を阻害できる、前記(92)記載の方法、
(94)霊長類MAdCAMの有効量または霊長類MAdCAMを含有してなるハイブリッド免疫グロブリンの有効量を投与する工程からなる、分子MAdCAM−1を発現している組織の白血球浸潤と関連する疾患を有する霊長類の治療方法、
(95)霊長類MAdCAMまたは霊長類MAdCAMを含有してなるハイブリッド免疫グロブリンが、霊長類MAdCAMのα4β7インテグリンとの相互作用を阻害することができる、前記(94)記載の方法、
(96)該ハイブリッド免疫グロブリンが融合蛋白質を含み、第1部分および第2部分を含有してなり、該第1部分が霊長類MAdCAMであり、該第2部分が少なくとも免疫グロブリン鎖の一部である、前記(94)記載の方法、
(97)疾患が分子MAdCAMを発現する腸−関連内皮への白血球の結合の結果としての組織の白血球浸潤と関連する疾患である、前記(94)記載の方法、
(98)霊長類MAdCAMの有効量または霊長類MAdCAMを含有してなるハイブリッド免疫グロブリンの有効量を霊長類に投与する工程からなる、霊長類における炎症性の腸疾患の治療方法、
(99)霊長類MAdCAMまたは霊長類MAdCAMを含有してなるハイブリッド免疫グロブリンが、霊長類MAdCAMのα4β7インテグリンとの相互作用を阻害することができる、前記(98)記載の方法、
(100)該ハイブリッド免疫グロブリンが融合蛋白質を含み、第1部分および第2部分を含有してなり、該第1部分が霊長類MAdCAMであり、該第2部分が少なくとも免疫グロブリン鎖の一部である、前記(98)記載の方法。
【図面の簡単な説明】
図1は、ヒトMAdCAM−1をコードするcDNAクローン体4のサブクローン体から決定したヌクレオチド配列(配列番号1)と、そのオープンリーディングフレームによってコードされる予想される蛋白質の配列(MAdCAM−1;配列番号2)を表す図である。予想されるシグナルペプチドと膜貫通領域に太い下線を引いてある。2つのIg様ドメインのシステイン残基を、潜在的N結合型グリコシル化部位と同様に囲んである。71アミノ酸からなり、PPDTTS(Q/P)E反復を含有するムチンドメインを、細い線で囲んである。
図2は、ヒトMAdCAM−1をコードするcDNAクローン体20のサブクローン体から決定したヌクレオチド配列(配列番号3)と、そのオープンリーディングフレームによってコードされる予想蛋白質の配列(MAdCAM−1;配列番号4)を示す図である。予想されるシグナルペプチドと膜貫通領域に太い下線を引いてある。2つのIg様ドメインのシステイン残基を、潜在的N結合型グリコシル化部位と同様に囲んである。47アミノ酸からなり、PPDTTS(Q/P)E反復を含有するムチンドメインを、細い線で囲んである。
図3は、アカゲザルMAdCAM−1をコードするcDNAクローン体31Dのサブクローン体から決定した核酸配列(配列番号5)と、そのオープンリーディングフレームによってコードされる予想される蛋白質の配列(MAdCAM−1;配列番号6)を示す図である。予想されるシグナルペプチドと膜貫通領域に太い下線を引いてある。2つのIg様ドメインのシステイン残基を囲んである。PPDTTS(Q/P)E反復を一つだけ含有するムチンドメインを、細い線で囲んである。
図4A〜4Bは、ヒトMAdCAM−1を形質導入した細胞の、α4β7を発現するリンパ球に対する選択的結合を表すヒストグラムである。図4Aは、α4β7を発現する(α4β1は発現しない)RPMI8866細胞(0.5×106/ウェル)が、ネズミまたはヒトMAdCAM−1を発現するCHO/P細胞には結合するが、ヒトVCAM−1を形質導入したCHO/P細胞や、pcDNA−3を形質導入したCHO/P細胞には結合しないという実験結果を示している。図4Bは、ヒトVCAM−1を形質導入したCHO/P細胞が、Jurkat細胞(これは高レベルのα4β1を発現する)には結合するが、ネズミまたはヒトMAdCAM−1を形質導入したCHO/P細胞や、対照としてのpcDNA−3を形質導入したCHO/P細胞には結合し得なかったという実験結果を示している。結合は、CHO/P細胞1個あたりに結合したRPMI8866細胞数(図4A)か、CHO/P細胞1個あたりに結合したJurkat細胞の数を、少なくとも4つの視野(10×対物レンズ)の平均値±標準誤差として示してある。表に示すように、結合反応には、対照IgG、抗α4β7(モノクローナル抗体ACT−1)、または抗ネズミMAdCAM−1(モノクローナル抗体MECA−367)を含めた。
図5は、クローン体4及び20によってコードされているヒトMAdCAM−1がRPMI8866細胞を結合し、その結合がACT−1抗体によって阻害されることを示すヒストグラムである。棒は、1回の実験の4つの視野の平均値を、標準偏差と共に表している。
図6は、ネズミ及びヒトMAdCAM−1の推定ドメイン構造を表す図である。細胞接着に関係する、ジスルフィド結合で結合した2つのN末端免疫グロブリンドメイン(輪で示した部分)、膜貫通領域及び細胞質テイルが、ネズミ、アカゲザル及びヒト蛋白質に存在する。ヒトMAdCAM−1は、より長い細胞質テイルを持つ。ムチンドメインに認められる8アミノ酸反復は、ヒトイソ型には4または8コピー存在するが、ネズミとアカゲザルには1回しか現れない。
図7A及び7Bは、飲用水中のDSSに10日間さらされたマウスの左(下行)及び右(上行)結腸から得た、炎症活性と上皮損傷の組織学値を表すグラフである。無関係なラットIgG2a抗体、FIB21抗体またはFIB30抗体を与えた3群のマウスを示す。
図8は、飲用水中のDSSを10日間与えたマウスから得た、1分あたりのγカウント(cpm)(±1SEM)を、総投入カウントの百分率として表すグラフである。水のみを与えた陰性対照群、DSSのみを与えた陽性対照群、無関係なラットIgG2a抗体、FIB21、MECA−367またはFIB21とMECA−367を与えた試験群からなる6群を示す。
図9は、2mg/kg/日のACT−1モノクローナル抗体による処置の前及び14日後の普通のマーモセットの空腸生検試料から得た、絨毛融合に関する組織学的値(±1SEM)を表すグラフである。
図10は、2mg/kg/日のACT−1モノクローナル抗体による処置の前及び14日後の普通のマーモセットの空腸生検試料から得た、絨毛萎縮に関する組織学的値(±1SEM)を表すグラフである。
図11は、ACT−1抗体で処置した結腸炎動物(コットントップタマリン)の糞の粘稠度を表す図である。
図12は、ACT−1抗体で処置した結腸炎動物(コットントップタマリン)における炎症活性を組織学的に評価した図である。
図13は、ACT−1抗体による慢性結腸炎コットントップタマリンの治療の実験手順を表す図である。
図14は、慢性結腸炎コットントップタマリンにACT−1抗体(−●−)または無関係なイソ型適合抗体(−○−)を投与した場合の、糞の粘稠度に対する治療効果を表すグラフである。
図15は、ACT−1抗体または無関係な対照モノクローナル抗体で処置した慢性結腸炎(colitic colitic)コットントップタマリンにおける、結腸の炎症活性に対するACT−1免疫療法の治療効果を示すヒストグラムである。各棒は、第0日における同じ動物の値と特定の時点における値とを比較することによって各動物について計算した、炎症活性の絶対変化の、一処置群内の平均±1SEMを表す。
図16は、ACT−1抗体で処置した結腸炎コットントップタマリンの末梢循環プールにおけるα4β7+リンパ球の絶対数を表すヒストグラムである。各棒は、ACT−1によって検出されるα4β7+細胞の血中濃度の平均(±1SEM)を表す。
図17A〜17Eは、MAdCAM−IgキメラによるHut78細胞の特異的染色を示す、FACS分析の結果を表すプロットである。ヒトMAdCAM−Igキメラ構築物で仮トランスフェクションしたCOS細胞(4回の独立したトランスフェクションから得た)の上清を、2mM Mn2+の存在下にHut78細胞と共に培養し、結合したキメラを、ヒトIgG1に特異的なフィコエリトリン結合抗体を用いて検出した。図17A,培地対照;図17B〜17C,クローン体21(ヒトMAdCAMの全細胞外ドメインを含む)を形質導入した細胞の上清;図17D〜17E,細胞クローン体38(ヒトMAdCAMの2つのN末端Igドメインを含む)の上清。細胞を培地のみで予備培養した後の結合(右側)。抗β7MAbFIB504と共に細胞を予備培養することによって、結合が阻害された(左側)。
図18は、1×106CD45RBhiT細胞(■)で復元した重症複合免疫不全症(scid)マウスの体重と、同数のBALB/c脾臓に由来するCD45RBloT細胞(▲)で復元した対照scidマウスとの体重の相違を表すグラフである。疾患の進行を評価するため、毎週、受容マウスの体重を測定した。
図19は、CD45RBhiT細胞で復元したscidマウスに静脈内注射した111In−標識腸間膜リンパ小節細胞の、結腸における蓄積量が、同数のCD45RBloT細胞で復元したscidマウスの結腸における蓄積量より増大することと、抗β7モノクローナル抗体(FIB504)と抗MAdCAM(MECA−367)モノクローナル抗体の組み合わせ(combination)による2週間の治療で、蓄積が阻害されることを表すヒストグラムである。結果は、膵臓のカウント/分(CPM)に対して正規化し、かつ、バックグラウンドについて補正した%CPMとして、表してある。
図20は、scidマウスの結腸における111In−標識細胞(静脈内注射したもの)の蓄積が、FIB504、MECA−367またはFIB504+MECA−367による4ヶ月間(復元時から開始)の処置で、完全に阻害されることを示すヒストグラムである。左から右へ:CD45RBloT細胞で復元され、無関係なイソ型適合対照ラットIgG2aを投与されたscidマウス;CD45RBhiT細胞で復元され、無関係なイソ型適合対照ラットIgG2a、FIB504、MECA−367またはFIB504+MECA−367のいずれかを投与されたscidマウス。
図21は、FIB504とMECA−367の組み合わせで14日間処置したscidマウスの上行(右)または下行(左)結腸におけるCD4+T細胞の数(マウスCD4に特異的なラット抗体で左及び右結腸の凍結切片を染色することによって決定)が、イソ型適合対照ラットIgG2a抗体で処置されたマウスと比較して減少することを示すヒストグラムである。
発明の詳細な説明
蛋白質とペプチド
本発明は、霊長類MAdCAM(粘膜アドレシン細胞接着分子)と呼ばれる単離及び/又は組換え(例えば本質的に純粋なものを含む)蛋白質またはポリペプチドと、霊長類MAdCAMの変異体に関する。好ましい態様では、本発明の単離及び/又は組換え蛋白質が、(本明細書に規定する)霊長類MAdCAMの特性、活性または機能的特徴、例えば結合機能(例えばα4β7インテグリンと結合する能力)及び/又は細胞接着分子機能(例えばインビトロ及び/又はインビボでα4β7依存性接着などの細胞接着を媒介する能力)及び/又は本明細書に規定する免疫学的特性などの少なくとも1つの性質を有する。例えば、本発明蛋白質のいくつかは、α4β7インテグリンと選択的に結合することができ、それによって、白血球などのα4β7インテグリンを保持する細胞(特にT細胞またはB細胞などのリンパ球)に対するα4β7依存性細胞接着を、インビトロ及び/又はインビボで媒介する。一側面として、本発明の蛋白質は、異型細胞接着(例えば、リンパ球などの白血球に対する内皮細胞の異型細胞接着)を媒介できる。
もう1つの態様として、本発明の蛋白質は、同じ霊長類種または異なる霊長類種に由来する霊長類α4β7インテグリンを結合し、かつ/または、細胞接着分子機能(例えば、インビトロ及び/又はインビボにおける、α4β7依存性接着などの細胞接着を媒介する能力)を持つことができる。例えば、本明細書に示すように、cDNAクローン体の発現によって哺乳類細胞で生産したヒトとアカゲザルのMAdCAM−1蛋白質は、ヒトリンパ球上に存在するα4β7インテグリンに選択的に結合でき、α4β7インテグリンを保持する細胞に対する選択的接着を媒介できる細胞接着分子として機能できる。
本明細書でいう「単離(された)」蛋白質またはポリペプチドとは、哺乳類細胞内に存在する時の状態よりも精製された蛋白質またはポリペプチドである。「単離(された)」蛋白質またはポリペプチドとしては、本明細書に記述する方法や類似の方法もしくは他の適切な方法で得られる蛋白質またはポリペプチドが挙げられ、本質的に純粋な蛋白質またはポリペプチド、化学合成によって生産された蛋白質またはポリペプチド(例えば合成ペプチド)、生物学的方法と化学的方法の組み合わせで生産された蛋白質またはポリペプチド、単離された組換え蛋白質またはポリペプチドなどが含まれる。蛋白質は、少なくとも約50重量%の単離された状態で、好ましくは少なくとも約75重量%の単離された状態で、より好ましくは本質的に純粋な状態で、得ることができる。本明細書でいう「組換え」蛋白質またはポリペプチドとは、組換え核酸の発現によって生産された蛋白質またはポリペプチドである。
本明細書で「霊長類MAdCAM」とは、天然に存在する若しくは内因性の霊長類MAdCAM蛋白質、天然に存在する若しくは内因性の対応する霊長類MAdCAMと同じアミノ酸配列を持つ蛋白質(例えば組換え蛋白質)、及び上記いずれかの機能的変異体(例えば、突然変異及び/又は組換え技術によって生産された機能的断片及び/又は変異体)をいう。したがって、本明細書に定義するように該用語は、成熟霊長類MAdCAM、グリコシル化または非グリコシル化MAdCAM蛋白質、霊長類MAdCAMの多形または対立遺伝子変異体、及び他のイソ型(例えば、択一的スプライシングまたは他の細胞内プロセスによって生産されるもの、並びに機能的断片を包含する。
天然に存在する若しくは内因性の霊長類MAdCAM蛋白質としては、霊長類(例えば、ヒトまたはアカゲザル、コットントップタマリンなどの他の非ヒト霊長類)に自然に存在する成熟MAdCAM、多形または対立遺伝子変異体及び他のイソ型が挙げられる。このような蛋白質は、霊長類MAdCAMを自然に生産する供給源から回収できる。これらの蛋白質、及び天然に存在するまたは内因性の対応する霊長類MAdCAMと同じアミノ酸配列を持つ霊長類MAdCAM蛋白質は、その対応する霊長類の名前で呼ばれる。例えば、対応する霊長類がヒトなら、その蛋白質はヒトMAdCAM蛋白質(例えば、適当な宿主細胞で生産された組換えヒトMAdCAM)と称する。
霊長類MAdCAMの「機能的変異体」としては、機能的断片、機能的変異蛋白質及び/又は機能的融合蛋白質が挙げられる。一般に、本発明が包含する霊長類MAdCAMの断片または一部としては、成熟霊長類MAdCAMと比較してアミノ酸(すなわち1以上のアミノ酸)の欠失(すなわち1以上の欠失)をもつもの(例えばN末端欠失体、C末端欠失体または内部欠失体)が挙げられる。成熟霊長類MAdCAMに関連する、隣接するアミノ酸だけが欠失している断片または一部や、隣接しないアミノ酸が欠失している断片または一部も想定される。
一般に、本発明が包含する霊長類MAdCAMの変異体または誘導体としては、1以上の隣接するアミノ酸残基若しくは不連続なアミノ酸残基が相違する天然の若しくは人工的な変異体や、1以上の残基が修飾されている修飾ポリペプチド、及び1以上の修飾残基を含む変異体が挙げられる。好ましい変異体は、1以上の隣接する若しくは隣接しないアミノ酸残基の付加、欠失及び/又は置換によって相違する霊長類MAdCAMの天然の若しくは人工的な変異体である。
霊長類MAdCAMの「機能的断片または一部」、「機能的変異体」及び/又は「機能的融合蛋白質」とは、霊長類MAdCAMの特性、活性及び/又は結合機能など(例えばα4β7インテグリンを結合する能力)の機能的特徴、及び/又は細胞接着分子機能(例えば、α4β7依存的接着のような細胞接着を、インビトロ及び/又はインビボで媒介できる能力)などの少なくとも1つを持ち、および/または、霊長類MAdCAMの免疫学的特性の少なくとも1つを保持する、単離及び/又は組換え蛋白質またはオリゴペプチドをいう。
本明細書において、霊長類MAdCAMの「免疫学的特性の少なくとも1つ」を有する蛋白質、ポリペプチドまたはオリゴペプチドとは、(a)選択されたエピトープ特異性を持つ抗体であって、天然に存在するまたは内因性の霊長類MAdCAMに結合するか、あるいは天然に存在するまたは内因性の霊長類MAdCAM(例えばヒトMAdCAM−1)と同じアミノ酸配列を有する蛋白質に結合する抗体の、少なくとも1つによって結合されるもの、及び/又は(b)選択されたエピトープ特異性を持つ抗体であって、天然に存在するまたは内因性の霊長類MAdCAMに結合するか、あるいは天然に存在するまたは内因性の霊長類MAdCAMと同じアミノ酸配列を持つ蛋白質に結合する抗体の、適当な動物における形成を誘導できる免疫原であるものをいう。例えば、適当な断片は、単離された霊長類MAdCAMに対して生じる及び/又は単離された霊長類MAdCAMと反応する抗体と、交差反応できる。
適当な断片または変異体は、スクリーニングによって同定できる。例えば、蛋白質のN末端、C末端または内部領域を段階的に欠失させることができ、その結果生じる蛋白質を、本明細書に記述するアッセイのような適当な結合または接着アッセイで、スクリーニングすることができる。生じた蛋白質がそのアッセイで活性を示す場合、その生じた蛋白質(「断片」)は機能的である。本明細書に示す霊長類MAdCAMの構造と機能に関する情報及びネズミのMAdCAMと他の接着分子の構造と機能に関する情報は、霊長類MAdCAMを機能ドメインに分割するための基礎を与える(下記参照)。
変異体という用語は、霊長類MAdCAM(例えば成熟ヒトMAdCAM−1)を第1部分とし、それに、自然界にみられる霊長類MAdCAMには存在しない第2部分が結合してなる融合蛋白質をも包含する。したがって、該第2部分は、アミノ酸、オリゴペプチドまたはポリペプチドであってもよい。第1部分は、その融合蛋白質のN末端位置、C末端位置または内部にあってもよい。一態様として、融合蛋白質は、第1部分としてのヒトMAdCAMまたはその一部と、リンカー配列とアフィニティーリガンド(例えば酵素、抗原、エピトープタグなど)を含む第2部分とを含有する。
別の態様は、融合蛋白質が、例えば、霊長類MAdCAM部分のC末端で、免疫グロブリン部分(1以上の免疫グロブリン定常領域など)、好ましくは霊長類のもののN末端に融合してなるハイブリッドであり、Caponら,米国特許第5,428,130号及び同第5,225,538号、これらの特許の教示は全て参考文献として本明細書の一部を構成する、などに従って製造されるものなど)などのハイブリッド免疫グロブリンである。ハイブリッド免疫グロブリンとしては、免疫グロブリン鎖の少なくとも一部、好ましくは完全な免疫グロブリンドメイン(例えばCH1やヒンジ)の少なくとも1つを含有する融合蛋白質またはポリペプチドが挙げられる。「免疫アドヘシン(immunoadhesin」の他の例は、既に報告されている(Watson,S.R.ら,Nature,349:164−167(1991);Martin,S.ら,J.Virol.,67:3561−3568(1993);Staunton,D.E.ら,J.Exp.Med.,176:1471−1476(1992);Capon,D.J.ら,Nature,337:525−531(1989);Jakubowskiら,J.Immunol.,155:938−946(1995))。例えば、霊長類(例えばヒト)MAdCAMの全部または一部と、免疫グロブリン重鎖または軽鎖定常領域またはその一部とを含有する融合蛋白質を、(例えばその融合蛋白質をコードする核酸を調製することによって)調製することができる。融合物は、一般的には、MAdCAMのC末端が免疫グロブリン定常領域のN末端につながるように構築される。しかしながらMAdCAMのN末端が免疫グロブリン定常領域のC末端につながっている融合蛋白質も作成できる。好ましくは、リガンド(例えばα4β7インテグリン)に結合する能力がある霊長類MAdCAMの一部であり、完全な細胞外ドメインまたは2つの膜貫通領域を欠くN末端免疫グロブリンドメインを含む一部などを使用することが好ましい(例えば実施例3を参照)。
選択した定常領域のタイプと、融合ポリペプチドに使用する部分(例えば軽鎖定常領域、重鎖定常領域(IgG、IgA、IgD、IgEまたはIgMから得られるγ1、γ2、γ3、γγ4、α1、α2、δ、ε及びμ定常領域など)及びその一部)に応じて、またそれらを、互いに及び/又は他のハイブリッド免疫グロブリンまたは免疫グロブリン鎖と、多量体型に集合させるかどうかによって、様々なハイブリッド免疫グロブリン分子(例えば単量体型、ホモ二量体型、ヘテロ二量体型、ホモ四量体型、ヘテロ四量体型)を生産することができる(Caponら,米国特許第5,428,130号及び同第5,225,538号を参照)。好ましい態様として、融合蛋白質は、完全な重鎖定常領域を含むか、あるいは少なくとも、機能的に活性なヒンジ領域、CH2及びCH3ドメインを含む。エフェクター機能を仕立てるために、特定の定常領域(例えばIgG1)、その誘導体または一部を選択してもよい。例えば、Fcレセプターへの結合を最小限に抑え(実施例3;Winterら,GB2,209,757B;及びMorrisonら,WO89/07142)、および/または補体を固定する(WO94/29351,1994年12月22日)などのために、変異した定常領域(変異体)を融合蛋白質に組込むことができる。
「霊長類MAdCAM」蛋白質の例としては、本発明のヒトまたはアカゲザルMAdCAM−1核酸によってコードされる蛋白質、例えば図1(配列番号2)、図2(配列番号4)または図3(配列番号6)に記載の、若しくは実質上それらに記載されているに等しい、アミノ酸配列を持つ蛋白質とその機能的な一部が挙げられる。好ましい態様では、霊長類MAdCAMまたは誘導体が、図1(配列番号2)、図2(配列番号4)または図3(配列番号6)に示す蛋白質に対して、少なくとも約55%、より好ましくは少なくとも約75%、さらに好ましくは少なくとも約90%類似するアミノ酸配列を持つ。
MAdCAM構造
免疫グロブリンスーパー遺伝子ファミリーの構成要素であるネズミMAdCAM−1は、免疫グロブリン関連配列とムチン様配列の両方を持つマルチドメイン分子である(Briskin,M.J.ら,Nature,363:461(1993))。図6に示すように、ネズミ型は、Ig様接着レセプターICAM−1及びVCAM−1のドメインと相同であり、インテグリン結合に関係する2つのアミノ末端免疫グロブリン型ドメインを含有する。第3の(膜近位)免疫グロブリン型ドメインは、このクラスの接着レセプターとは無関係であるが、他の粘膜関連免疫グロブリンスーパーファミリー構成要素であるIgAとの相同性を持つ。上記3つの免疫グロブリン型ドメインに加えで、ネズミMAdCAM−1は、第2Ig様ドメインと第3のIg様ドメインの間に、セリン/スレオニンリッチなムチン型ドメインを持つ。これらの構造要素は、MAdCAM−1が細胞接着カスケードにおいて2以上の機能を促進することを示唆しており、ネズミMAdCAM−1に関する最近の研究は、MAdCAM−1がセレクチン結合とインテグリン結合の両方に役割を果たすことを支持している(Moore,K.L.ら,J.Cell.Biol.,118:445(1992);Bargatze,R.F.ら,Immunity,3:99−108(1995))。またこれに関連して、腸間膜リンパ小節で発現したネズミMAdCAM−1は、末梢小節アドレシンエピトープMECA−79に関連するL−セレクチン結合性炭水化物を提示できると報告されている(Berg,E.L.ら,Nature,366:695(1993))。
本明細書に記述するように、ヒト及びアカゲザルMAdCAM−1蛋白質は、ネズミMAdCAM−1の2つのアミノ末端免疫グロブリン様インテグリン結合性ドメインと相同な、2つの免疫グロブリン様(Ig様)ドメインを持つ(図1〜3、6)。しかし、ネズミMAdCAM−1のムチン/IgAドメインに相同な領域内の配列の類似性は、はるかに少ない。ヒト及びアカゲザルレセプターの膜近位領域は、ムチン様配列の長さと近位Ig(IgA様)ドメインの欠失に関して、(互いに、若しくはネズミMAdCAM−1と比較して)かなりの変動を示す。
ヒトMAdCAM−1には、1つのアミノ酸多形と、ムチン領域内のセリン/スレオニン/プロリンリッチな反復のコピー数の変動とを示す2つのイソ型が同定された。これら2つのイソ型はゲノムDNAにコードされているようであり、この配列の異なるプロセシング及び/又は対立遺伝子変異を示唆している。これら2つのイソ型は、α4β7結合親和性の調節機構及び/又はセレクチン結合用の炭水化物の提示機構の選択肢として機能するだろう。本明細書に記述する霊長類MAdCAMに、これらのIg様ドメインとムチンドメインが存在することは、インテグリン結合ばかりでなくセレクチン結合におけるその役割とも合致する。
ネズミMAdCAM−1で最近行われたドメイン交換実験では、MAdCAM−1のドメイン1はα4β7を弱く結合できるものの、強いインテグリン活性化が無ければ、接着が乏しいことが示された。2つのアミノ末端Ig様ドメイン(これらはICAM−1及びVCAM−1のドメインと類似する)かあれば、野生型ネズミMAcDAM−1に匹敵する活性化非依存的なα4β7結合活性を示し得る。
ネズミMAdCAM−1のドメイン1に存在する短いモチーフ(GLDTSL)は、ICAM−1、ICAM−2及びICAM−3のドメイン1、VCAM−1のドメイン1及び4を含む他のIg様接着レセプターに保存されており、それらのインテグリン結合に必要である(Staunton,D.E.,Cell,52:925−33(1988);Staunton,D.E.ら,Nature,339:61(1989);Osborn,L.ら,Cell,59:1203(1989);Fawcett,J.ら,Nature,360:481(1992))。G−(I/L)−(D/E)−(T/S)−(P/S)−Lというこの配列は、これらのインテグリン結合ドメインのβシートcとdの間に位置する。該GLDTSLモチーフは、本発明が特徴づけた霊長類MAdCAMにも認められた。
ICAM−1のドメイン1のこのモチーフ内のE34(Glu34)(上記下線部)と、VCAM−1内のD40(Asp40)(上記太字部分)の突然変異誘発は、それぞれLFA−1とα4β1の結合に著しい影響を与えた(Osborn,L.ら,J.Cell.Biol.,124:601−608(1994);Renz,M.E.ら,J.Cell.Biol.,125:1395−1406(1994);Staunton,D.E.ら,Cell,61:243−254(1990);Vonderheide,R.H.ら,J.Cell.Biol.,125:215−222(1994))。さらに最近になって、2つのN末端ドメインを含むVCAM−1の断片が結晶学的構造決定をされた(Jones,E.Y.ら,Nature,373:539−544(1995);Wang,J−Hら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,92:5714−5718(1995))。VCAM−1中の保存されたモチーフ(QIDSPL)は、第1IgドメインのCDループのN末端部分で、インテグリンが容易に接近できそうな位置に、高度に露出されているようである。
ネズミMAdCAM−1のこのモチーフ内で、アミノ酸61をロイシンからアルギニンに変える(L61→R61)ヌクレオチド置換を施すと、α4β7を発現する休止リンパ球とMAdCAM−1との相互作用が破壊される。したがってネズミMAdCAM−1も、そのインテグリンリガンド(α4β7)を結合するために、この保存されたアミノ酸モチーフ(GLDTSL)を、そのN末端ドメインのコンピューターで予測されるCDループ内に必要とする。
ヒトMAdCAMcDNAクローン体4と20(図1及び2)を比較すると、アミノ末端の225アミノ酸がクローン体4と20で同一であることがわかった。この領域は、予想される18アミノ酸疎水性リーダーまたはシグナル配列と、2つの免疫グロブリン型ドメインとを含む。霊長類及びネズミMAdCAM−1を用いてこの領域を整列させると、次の保存性が示される:(1)予想シグナルペプチド(ヒト蛋白質間で同一、アカゲザル及びネズミシグナルペプチドと類似);(2)第1Ig様ドメイン内の2対のシステイン残基、各対のシステイン間には3アミノ酸が介在する;(3)Ig様ドメイン1の予想C−Dループ中の9アミノ酸からなる配列(「LDTSL」モチーフを含む)、一般的なインテグリン認識部位と考えられる(各霊長類クローン体間で同一);(4)異常に大きい第2免疫グロブリン型ドメイン。システイン残基に挟まれた約70アミノ酸を持つ第2Ig様ドメインは、そのサイズから考えて、Ig様接着レセプターにより典型的に認められるC2型(定常)ドメインではなく、「V」(可変)型ドメインに分類されるだろう(Hunkapiller,T.ら,Adv.in Immunol.,44:1−62(1989);Williams,A.F.ら,Annu.Rev.Immunol.,6:381−405(1988))。このドメインには、負に荷電した残基を豊富に含む伸長C’−Eループがあり、これは特徴づけられた霊長類、ネズミ及びヒトMAdCAM−1クローン体のそれぞれに共通するが、関連する接着レセプターには認められない。
クローン体4と20に認められる次の領域は、セリン、スレオニン及びプロリン残基の出現率(クローン体4で69%、クローン体20で76%)の点で、ネズミMAdCAM−1のムチンドメインに似ている(図1と図2の囲んだ部分)。この領域は、ネズミMAdCAM−1とアミノ酸組成は似ているが、ネズミMAdCAM−1とは著しく異なる。したがって、インテグリン結合性Ig様ドメインの保存に関する選択は、ムチン配列のそれよりも強いようである。ヒトMAdCAM−1ドメインはクローン体4では71アミノ酸長、クローン体20では47アミノ酸長である。また、この領域は2つの多形を含む:(1)アミノ酸240の多形、これはクローン体4ではプロリン(P)、クローン体20ではセリン(S)である;(2)アミノ酸242の多形、これはクローン体4ではアスパラギン(N)、クローン体20ではアスパラギン酸(D)である。さらに、ヒトムチンドメインは、PPDTTS(Q/P)Eという配列からなる8アミノ酸の反復を含み、この反復配列はクローン体4では8回、クローン体20では5回現れる。
ヒトムチンドメインは高度に反復性であるので、クローン体4と比べてクローン体20中の反復が3つ欠如しているのは、オープンリーディングフレームを維持し、インテグリン結合に関して機能的なレセプターを与える択一的スプライシングまたは突然変異(例えば異常型組換え)などのプロセスの結果であろう。このことは、ムチン配列の一部または全部がインテグリン結合にとって重要でないことを示唆している。また、α4β7に対する活性化非依存性接着には、ネズミMAdCAM−1のIg様ドメイン1及び2だけでも十分であることがわかっており、これもまた、ネズミムチン配列がインテグリン結合にとって重要でないことを示している。この点に関して興味深いのは、単離したアカゲザルクローン体がこの反復領域のほとんどを欠くことである。
残りのC末端側の110アミノ酸(47アミノ酸に続いて、20アミノ酸からなる予想疎水性膜貫通領域があり、それに続いて43アミノ酸の細胞質テイルがある)は、クローン体4と20の間で同一である。ムチン領域のC末端直後の47アミノ酸は、ネズミMAdCAM−1のIgA型Igドメインに対応する領域である。ヒト蛋白質とアカゲザル蛋白質はこの領域が似ているが、それらはネズミMAdCAM−1とは異なる。ネズミMAdCAM−1と比較すると、ヒト蛋白質はこの領域が59アミノ酸短く、Ig様ドメインの特徴を何ら持たない。全てのレセプターの膜貫通領域は類似しているが、細胞質テイルはヒト(霊長類では26、マウスでは20)MAdCAM−1の方がかなり長い(43アミノ酸)。
組換え蛋白質の製造法
本発明のもう1つの側面は、霊長類MAdCAMまたはその誘導体(例えば一部)を製造する方法に関する。組換え蛋白質は、例えば、霊長類MAdCAMまたはその誘導体をコードする組換えDNA分子の、適当な宿主細胞における発現などによって得ることができる。
霊長類MAdCAMまたはその変異体の発現に適した構築物も提供する。この構築物は適当な宿主細胞に導入することができ、組換え霊長類MAdCAMまたはその変異体を発現する細胞を生産し、それを培養中に維持することができる。このような細胞は種々の目的に有用であり、接着アッセイ(例えば、リガンド及び/又はMAdCAMが媒介する接着の阻害因子候補をスクリーニングするためのアッセイ)や、特徴づけ、単離及び/又は精製(例えばアフィニティー精製)用の蛋白質の生産などに使用したり、免疫原などとして使用できる。好適な宿主細胞としては、原核細胞(これには大腸菌、枯草菌及び/又は他の適当な細菌などの細菌細胞が含まれる)や、真核細胞、例えばカビ細胞や酵母細胞(例えばピチア パストリス、アスペルギルス種、サッカロミセス セルビジエ、シゾサッカロミセス ポンベ、ニューロスポラ クラッサ)または他の下等真核細胞、および昆虫由来の細胞(例えばSf9昆虫細胞)や哺乳類由来の細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、COS細胞、HuT78細胞、293細胞)などの高等真核細胞を挙げることができる(例えばAusbel,F.M.ら編,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates and John Wiley & Sons Inc.,(1993)を参照。)。一態様として、膜結合成熟蛋白質を発現することのできる宿主細胞を使用する。他の態様として、C末端膜貫通領域と細胞質テイルを欠く可溶型MAdCAMなどの可溶型MAdCAMを分泌できる宿主細胞を使用する。
組換え霊長類MAdCAMまたはその誘導体を生産する宿主細胞は次のように作成できる。例えば、所望の蛋白質のコード配列の全部または一部をコードする核酸は、核酸ベクター、例えばプラスミド、ウイルスまたは他の適当な発現用レプリコンなどのDNAベクターなどに挿入できる。種々のベクターを利用することができ、それらには単一コピーまたは多コピーとして維持されるベクターや、宿主細胞染色体に組込まれるベクターなどが含まれる。
MAdCAM−1遺伝子の転写および/または翻訳シグナルを使用して、発現を制御することができる。別法として、所望の蛋白質のコード配列の全部または一部をコードする核酸の発現に適した発現ベクターも利用できる。適切な発現ベクターはいくつかの成分を含有でき、それらには次の1以上が含まれるが、これらに限られるわけではない:複製起点、選択可能マーカー遺伝子、1以上の発現制御因子、例えば転写制御因子など(例えばプロモーター、エンハンサー、ターミネーターなど)、および/または1以上の翻訳シグナル、(霊長類または異種霊長類若しくは非霊長類種由来の)膜標的(targeting)または分泌のシグナル配列またはリーダー配列。構築物中、シグナル配列は、該ベクターから提供されるものであってもよいし、その霊長類MAdCAMコード配列、または他の供給源から提供されるものであってもよい。
プロモーターは適切な宿主細胞での発現用に供給される。プロモーターは構成的であってもよいし、誘導性であってもよい。ベクターでは、該プロモーターが、霊長類MAdCAMまたはその誘導体をコードする核酸に実施可能に連結しており、コードされているポリペプチドの発現を支配できる。原核生物宿主に適した種々のプロモーター(例えば大腸菌にはlac、tac、T3、T7プロモーター)および真核生物宿主に適した種々のプロモーター(例えば酵母アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH1)、SV40、CMV)を、利用できる。
さらに、発現ベクターは通例、該ベクターを保持する宿主細胞を選択するための選択可能マーカーおよび複製可能発現ベクターの場合、起点または複製(an origin or replication)を含む。抗生物質耐性または薬物耐性を付与する産物をコードする遺伝子は一般的な選択可能マーカーであり、原核細胞(例えばβ−ラクタマーゼ遺伝子(アンピシリン耐性)、テトラサイクリン耐性用のTet遺伝子)中および真核細胞(例えばネオマイシン(G418またはゲネチシン)、gpt(ミコフェノール酸)、アンピシリン、またはハイグロマイシン耐性遺伝子)中で、使用できる。ジヒドロ葉酸レダクターゼマーカー遺伝子は、メトトレキセートによる選択を、種々の宿主で可能にする。宿主の栄養要求性マーカーの遺伝子産物をコードする遺伝子(例えばLEU2、URA3、HIS3)は、酵母における選択可能マーカーとしてしばしば使用される。ウイルス(例えばバキュロウイルス)やファージベクター、及び宿主細胞のゲノムに組み込むことができるレトロウイルスベクターなどのベクターの使用も予想される。また本発明は、これらの発現ベクターを保持する細胞にも関する。
例えば、霊長類MAdCAMまたはその誘導体をコードする核酸をベクターに取り込み、1以上の発現制御因子に実施可能に連結し、その構築物を、発現に適した条件下に維持される宿主細胞に導入することによって、コードされているポリペプチドを生産することができる。構築物は、選択した宿主細胞に適した方法(例えば形質転換、形質導入、エレクトロポレーション、感染など)で細胞に導入できる。蛋白質の生産には、上記構築物を含有する宿主細胞を、発現に適した条件下(例えば、誘導物質、適当な塩類、成長因子、抗生物質、栄養補給物などを補足した培地の存在下)に維持する。コードされた蛋白質(例えばヒトMAdCAM−1)は、その宿主細胞または培地から単離できる。
融合蛋白質もこの方法で生産できる。例えば、いくつかの態様は、霊長類MAdCAM cDNAまたはその一部を、例えばBluescriptII SK+/−(ストラタジーン)、pGEX−4T−2(ファルマシア)、pcDNA−3(インビトロジェン)及びpET−15b(ノバ−ジェン)などの適当な発現ベクターに挿入することによって生産できる。次に、得られた構築物を、発現に適した宿主細胞に導入する。発現後、適当なアフィニティーマトリックス担体を利用して、細胞溶解液から融合蛋白質を単離または精製できる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausbel,F.M.ら編,第2巻,増補26,16.4.1〜16.7.8頁(1991)を参照)。さらに、アフィニティーラベルは、融合蛋白質の検出手段となる。例えば、抗原またはエピトープアフィニティーラベルを含有する融合蛋白質の細胞表面発現またはその特定の細胞画分における存在は、適当な抗体を利用して検出できる。
核酸、構築物およびベクター
本発明は、本明細書に記載の霊長類MAdCAMまたはその変異体をコードする配列を持つ単離されたおよび/または組換え(例えば、本質的に純粋なものを含む)核酸に関する。
本明細書でいう「単離された」核酸とは、その起源の細胞RNAまたはゲノムDNA(例えば細胞中や、ライブラリーのような核酸の混合物中に存在する場合など)から分離された核酸であり、さらなるプロセシングを受けていてもよい。「単離された」核酸としては、本明細書に記載の方法、類似の方法または他の適当な方法で得られる核酸が挙げられ、例えば本質的に純粋な核酸、化学合成によって生産された核酸、生物学的方法と化学的方法の組み合わせによって生産された核酸、及び単離された組換え核酸などがある(例えば、Daugherty,B.L.ら,Nucleic Acid Res.,19(9):2471−2476(1991);Lewis,A.P及びJ.S.Crowe,Gene,101:297−302(1991)を参照)。本明細書でいう「組換え」核酸とは、組換えDNA法によって生産された核酸であり、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および/または制限酵素を用いたベクターへのクローニングなどといった人工的組換え法による操作で作成される核酸を含む。また「組換え」核酸は、細胞の天然の機構を介して起こる組換え事象によってもたらされる核酸であって、所望の組換え事象を許容し、それを起こりやすくするように設計された核酸の、細胞への導入後に選択される核酸であってもよい。
一態様として、上記核酸またはその一部は、(本明細書に規定する)霊長類MAdCAMの特性、活性または機能的特徴、例えば結合活性(例えば、α4β7インテグリンを結合する能力)及び/又は細胞接着分子機能(例えば、α4β7依存性接着などの細胞接着を、試験管内及び/又は生体内で媒介する能力)及び/又は本明細書に規定する免疫学的特性などの、少なくとも1つを持つ蛋白質またはポリペプチドをコードする。
より具体的に述べると、本発明は、ヒトまたはアカゲザルMAdCAM−1またはその変異体をコードする配列を持つ、単離されたおよび/または組換え核酸またはその一部に関する。
さらに本発明は、以下を特徴とする、単離された及び/又は組換え核酸に関する:
(1)以下の核酸にハイブリダイズできること:(a)霊長類MAdCAMをコードする核酸、例えば、図1(配列番号1)、図2(配列番号3)または図3(配列番号5)に記載のヌクレオチド配列、若しくは実質上そこに記載されているに等しいヌクレオチド配列を持つ核酸;(b)(a)のうちいずれかの相補鎖;若しくは(c)前記核酸の一部(読み取り枠を含む一部など);あるいは、
(2)霊長類MAdCAM(例えば、配列番号2、配列番号4または配列番号6)のアミノ酸配列を持つポリペプチドをコードできること;あるいは、
(3)上記の両特徴を持つこと。
一態様として、該核酸は、図1、図2または図3、(それぞれ配列番号1、3または5)に示すヌクレオチド配列のいずれか、若しくはそのMAdCAMコード領域の1つと、少なくとも約50%のヌクレオチド配列類似性を共有する。より好ましくは、該核酸は、図1、図2または図3(それぞれ配列番号1、3または5)のいずれか、若しくはそのMAdCAMコード領域と、少なくとも約75%のヌクレオチド配列類似性、さらにより好ましくは少なくとも約90%のヌクレオチド配列類似性を共有する。
これらの基準に合致する単離されたおよび/または組換え核酸としては、天然に存在する霊長類MAdCAMの配列若しくはその天然に存在する配列の変異体と同一の配列を持つ核酸が挙げられる。そのような変異体としては、1以上の残基の付加、欠失または置換によって相違する突然変異体、1以上の残基が修飾されている修飾核酸(DNAまたはRNAアナログなど)および1以上の修飾残基を含む突然変異体などが挙げられる。
本発明の核酸は、前記の選択した核酸にハイブリダイズするものを含めて、例えば高ストリンジェント条件または中ストリンジェント条件下で、検出または単離できる。核酸ハイブリダイゼーションに関する「高ストリンジェント条件」と「中ストリンジェント条件」は、Current Protocols in Molecular Biology(Ausbel,F.M.ら編,第1巻,増補26,1991)の2.10.1−2.10.16頁(特に2.10.8−11を参照)と6.3.1−6頁に説明され、その教示は参照により本明細書に取り込まれる。プローブ長、塩基組成、ハイブリダイズする配列間のミスマッチ率、温度およびイオン強度などの因子が、核酸ハイブリッドの安定性に影響を与える。したがって高または中ストリンジェント条件は、一部には、既知の核酸(例えばDNA)の特徴と、その既知核酸に対するハイブリダイゼーションを評価しようとする他の核酸の特徴に応じて、実験的に決定できる。
(a)霊長類MAdCAMをコードする核酸(例えば図1(配列番号1)、図2(配列番号3)及び図3(配列番号5)に記載の核酸)、(b)そのような核酸の相補鎖、若しくは(c)その一部に、(例えば高または中ストリンジェント条件下で)ハイブリダイゼーションできることを特徴とする単離されたおよび/または組換え核酸は、さらに、(本明細書に規定する)霊長類MAdCAMの特性、活性または機能的特徴、例えば結合機能(例えば、α4β7インテグリンを結合する能力)及び/又は細胞接着分子機能(例えば、α4β7依存性接着などの細胞接着を、試験管内及び/又は生体内で媒介する能力)及び/又は本明細書に規定する免疫学的特性などの少なくとも1つを持つ蛋白質またはポリペプチドをコードしてもよい。好ましい核酸は、少なくとも約40ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも約50ヌクレオチド、さらに好ましくは少なくとも約75ヌクレオチドの長さを持つ。
本発明の核酸によってコードされる霊長類MAdCAMまたはその変異体の結合機能は、リガンド結合に関する標準的なアッセイ(例えば、単離された及び/又は組換えMAdCAMとα4β7インテグリンの間の複合体の形成をモニターするアッセイ)または標準的な接着アッセイ(例えば、組換え霊長類MAdCAMを発現する第1細胞と、α4β7インテグリンを保持する第2細胞の間の接着をモニターするアッセイ)または他の適当な方法で検出できる。結合及び/又は接着アッセイ若しくは他の適当な方法を、本発明のポリペプチドをコードする核酸の同定及び/又は単離操作に使用することもできる(例えば実施例1を参照)。本発明の核酸がコードする蛋白質またはポリペプチドの抗原特性は、霊長類MAdCAMに結合する抗体を用いる免疫学的方法(例えば免疫ブロッティング、免疫沈降法及びイムノアッセイ(放射線イムノアッセイやELISAなど))によって決定できる。
本発明の核酸は、蛋白質またはポリペプチドの生産に使用できる。例えば、前記のように霊長類MAdCAMをコードする核酸(例えばDNA)を、さらなる配列操作若しくはコードされているポリペプチドの適当な宿主細胞における生産のために作成される、種々の構築物およびベクターに組込むことができる。
本発明のさらなる態様は、センス鎖を含む標的分子に全部または一部が相補的で、その標的分子とハイブリダイゼーションできるアンチセンス核酸である。標的はDNAであってもよいし、そのRNA体(すなわちDNAのT残基がRNA体ではU残基である)であってもよい。細胞に導入されると、アンチセンス核酸は、そのセンス鎖がコードする遺伝子の発現を阻害できる。アンチセンス核酸は標準的な技術で生産できる。
ある態様として、このアンチセンス核酸は、ある標的核酸に対して完全にまたは部分的に相補的で、該標的核酸とハイブリダイズすることができ、該標的核酸は、図1(配列番号2)、図2(配列番号3)または図3(配列番号5)に示す上段の鎖の相補鎖の配列を持つ核酸にハイブリダイゼーションできる。例えば、アンチセンス核酸は、図1(配列番号1)、図2(配列番号3)または図3(配列番号5)の読み取り枠の上段の鎖に示す配列を持つ標的核酸若しくはハイブリダイズするに足るその一部に、相補的であってもよい。もう1つの態様として、アンチセンス核酸は、哺乳類MAdCAMをコードする標的核酸に対して完全にまたは部分的に相補的で、その標的核酸とハイブリダイズできる。
また、本発明の核酸は、炎症性腸疾患(IBD)(または他の症状)と、冒された組織における霊長類MAdCAM発現の増大との間の関係を評価するための(例えば、in situハイブリダイゼーションにおける)プローブとしても使用できる。また本発明の核酸は、例えば霊長類から得た試料(炎症を起こした組織など)中の多形または対立遺伝子変異体を(RNAまたはDNAとのハイブリダイゼーションなどによって)検出及び/又は単離するためのプローブとしても使用できる。さらに、1以上の冒された霊長類から得た試料中の特定の変異体の存在または出現頻度を、正常な霊長類由来の試料と比較すれば、それは炎症性腸疾患(IBD)(または他の症状)と特定の変異体との間に存在する関係の指標となり、ひいてはそれを、その症状の診断に使用することができる。
実施例に記述するように、アカゲザルMAdCAM−1をコードするcDNAクローン体を発現クローニングによって単離し、そのcDNAをプローブとして、ヒトcDNAライブラリーをスクリーニングした。ヒトMAdCAM−1をコードする2種類の核酸が単離され、それらを特徴づけた。さらなるヒト、アカゲザルまたは他の霊長類遺伝子もしくはcDNAを得ることもできる。例えば、本明細書に記載の遺伝子やその十分な一部は、それが単離された及び/又は組換え体あるいは合成物であるかどうかにかかわらず、霊長類MAdCAMまたはその変異体をコードするさらなる核酸を、適当な供給源(例えば霊長類のゲノムライブラリーやcDNAライブラリー)から、本明細書に記載の方法または他の適当な方法に従って(例えばハイブリダイゼーション、PCR、発現クローニング若しくは他の適当な技術によって)検出及び/又は回収するための、プローブまたはプライマーとして使用できる。
一態様として、霊長類MAdCAMをコードする核酸は、PCR増幅のような方法で生産できる。例えば、本明細書に記載の霊長類MAdCAM cDNAの一部に相補的もしくは実質上相補的な配列を含む適当なプライマー(例えば一対のプライマーや、ネステッド(入れ子型)プライマー)を設計することができる。例えば、コード配列の5’−または3’−末端及び/又はコード配列に隣接する5’−または3’−末端に相補的なプライマーを設計できる。このようなプライマーを、適当な鋳型核酸と共にポリメラーゼ連鎖反応に使用することにより、例えば霊長類MAdCAMをコードする核酸を得ることができる。好適な鋳型としては、例えば本明細書に記述する構築物(pcD3PMAd、pcD3HuMAd−4またはpcD3HuMAd−20など)、cDNAライブラリー、霊長類(例えばヒト)cDNAまたはゲノムDNAの他の適当な供給源が挙げられる。プライマーは、鋳型として選択した構築物の隣接配列に相補的な部分を、適宜、含有してもよい。
さらなる遺伝子またはcDNAは、本明細書に記載の用途に対応する用途を持つ霊長類MAdCAMの発現に使用でき、また、本明細書に記載の方法を用いて構築物、宿主細胞及び抗体を生産する際にも使用できる。本明細書に記載の方法には、アカゲザル及びヒトMAdCAM−1を単離し、操作するための方法、ベクター及び宿主株を構築するための方法、蛋白質を生産及び使用するための方法、抗体を生産するための方法などがあり(ただしこれらに限られない)、これらは他の霊長類にも適用できる。
治療法と組成物
本発明は、(1)「霊長類MAdCAM」を試験管内及び/又は生体内で結合でき、およびかつ/または、(2)「霊長類MAdCAM」の活性または機能的特徴、例えば結合機能(例えば、α4β7インテグリンを結合する能力)及び/又は細胞接着分子機能(例えば、α4β7依存性接着などの細胞接着を、試験管内及び/又は生体内で媒介する能力)を阻害できる、抗体をも提供する。そのような抗体としては、cDNAクローン体4、cDNAクローン体20またはcDNAクローン体31DによってコードされるヒトまたはアカゲザルMAdCAMを結合できる抗体などが挙げられる。また、天然に存在する若しくは内在性の霊長類MAdCAM(例えばヒトMAdCAM)を結合できる抗体も包含される。抗体は、試験管内及び/又は生体内で霊長類MAdCAMを選択的に結合できる(例:(例えば免疫組織学的に評価したときに)粘膜組織及び/又は脾臓で発現される霊長類MAdCAMに選択的に結合する)ことが好ましい。
一態様として、本発明の抗体は、霊長類MAdCAMを結合し、かつ、(例えばヒトの)α4β7インテグリンに対する「霊長類MAdCAM」の結合を阻害することによって、MAdCAMが媒介する細胞接着を(好ましくは選択的に)阻害できる。このような抗体は、試験管内及び/又は生体内で、α4β7インテグリンを保持する細胞、例えば白血球(特にT細胞やB細胞のようなリンパ球)に対するα4β7依存性接着を、阻害できる。例えば、MAdCAM-1に対するRPMI8866細胞の接着を特異的に阻害する抗体を産出する11種類のハイブリドーマが同定された(実施例2,10G4、8C1、10G3、9G12、9E4、7H12、10F2、10A6、1E5、2F5、7G11と命名したハイブリドーマ)。したがって、α4β7インテグリンを保持する細胞の、粘膜組織(腸−関連組織またはリンパ器官を含む)内の血管内皮細胞に対する細胞接着を阻害できる抗体は、本発明の抗体に包含される。
該抗体は、霊長類MAdCAMを高い親和性(例えば、Kaが約1〜10nMもしくはKdが約1×10-8〜1×10-10mol-1)で結合できることが好ましい。
本発明の抗体は、加工、研究、診断及び治療などを含む様々な用途に有用である。例えば、これらを使用して、霊長類MAdCAMまたはその変異体を(例えばアフィニティー精製や他の適当な方法によって)単離されたおよび/または精製したり、MAdCAMの構造(例えばコンフォメーション)と機能を研究することができる。
本発明の抗体は、(例えば試験管内での)診断的用途や治療的応用において、MAdCAM機能を調節するためにも使用できる。例えば、抗体は、阻害因子として作用して、本明細書に記述するように、霊長類MAdCAMの結合機能及び/又は細胞接着分子機能を阻害(軽減または防止)することができる。
さらに、本発明の抗体を用いて、試料(例えば組織または体液(炎症性滲出物、血液、血清、腸液など)または本発明の核酸でトランスフェクションされた細胞)中の霊長類MAdCAMを検出し、かつ/または、そのレベルを測定することができる。例えば、試料(組織及び/又は体液など)を霊長類から得て、適当な免疫学的方法を用いて、霊長類MAdCAMレベルを検出及び/又は測定することができる。その免疫学的方法としては、例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、化学発光アッセイ、放射線免疫アッセイ及び免疫組織学などが挙げられる。一態様として、試料中の選択した霊長類MAdCAMを検出する方法であって、単離された霊長類MAdCAMを結合する抗体を、選択した霊長類MAdCAMに対する該抗体の特異的結合に適した条件下で、試料と接触させ、形成される抗体−MAdCAM複合体を検出することを含む方法を提供する。
該方法の応用として、ある霊長類MAdCAM−1と反応する抗体を用いて、ヒト及び非ヒト霊長類中の正常組織と炎症組織とを、霊長類MAdCAMの反応性及び/又は発現について、(例えば免疫組織学的に)対比、分析することができる。したがって、本発明の抗体は、正常組織と炎症組織における霊長類(例えばヒトMAdCAM−1)の発現を対比、評価する免疫学的方法を与え、それによって、疾患の存在、疾患の進行及び/又は抗霊長類MAdCAM−1療法の炎症性疾患における効力を評価できる。
また本発明は、本明細書に定義する「霊長類MAdCAM」(機能的な変異体、例えば可溶型霊長類MAdCAM(例えば、分泌された蛋白質のように膜貫通領域と細胞質テイルの全部または一部を欠くもの)及び機能的な融合蛋白質(例えば、霊長類MAdCAM部分のC末端と免疫グロブリン部分のN末端とが融合してなるハイブリッド免疫グロブリン)などを含む)をも提供する。これらの分子は、加工、研究、診断および治療など、種々の応用に有用である。
例えば、霊長類MAdCAM、MAdCAM−Ig融合蛋白質または他の組換え可溶型霊長類MAdCAM分子は、霊長類MAdCAM:α4β7相互作用のリガンドまたは阻害因子(例えば遮断性抗体)を同定するためのアッセイに使用できる。本明細書において阻害因子とは、リガンド(α4β7インテグリンを含む)に対する霊長類MAdCAM−1の結合を阻害(軽減または防止)し、および/または、該リガンドによって媒介される細胞応答の誘引を阻害する化合物をいう。有効量とは、霊長類MAdCAM−1に対する結合または接着の阻害及び/又はシグナリングの阻害を達成するに足る量(例えば、霊長類MAdCAM一1リガンド(α4β7インテグリン(ヒトα4β7インテグリンとその霊長類相同体など)を含む)を保持する細胞の、単離された及び/又は組換え霊長類MAdCAMに対する接着を阻害するに足る量)をいう。
一側面として、霊長類MAdCAMのリガンドまたは霊長類MAdCAMを結合する薬物を検出または同定する方法であって、試験すべき1以上の薬物(またはリガンド候補)を、本明細書に定義する単離された及び/又は組換え「霊長類MAdCAM」(「機能的変異体」を含む)と、該MAdCAMに対するリガンドの結合に適した条件下に接触させ、該薬物と霊長類MAdCAMとの間の複合体の形成を検出することを含む方法を提供する。一態様として、試験すべき薬物を、組換え霊長類MAdCAMまたはその機能的変異体を発現する宿主細胞と、該MAdCAMまたはその機能的変異体に対するリガンドの結合に適した条件下に混合する。また一態様として、霊長類MAdCAMまたはその機能的変異体を適当なラベル(例えば蛍光ラベル、同位体ラベル)で標識し、そのラベルの検出によって結合を決定する。結合の特異性は、例えば標識していない薬物、標識していない単離された及び/又は組換え霊長類MAdCAMまたはその機能的変異体、若しくは霊長類MAdCAMの第2リガンドなどを競争因子として用いる競争または置換によって評価できる。
もう1つの側面として、霊長類MAdCAMによって媒介される細胞接着の阻害因子を検出する方法も提供する。一態様として、試験すべき薬物を、霊長類MAdCAMのリガンド並びに単離された及び/又は組換え霊長類MAdCAMまたはその機能的変異体(例えば融合蛋白質)と、リガンドと該MAdCAMまたはその機能的変異体との結合に適した条件下に混合する。リガンドと霊長類MAdCAMまたはその機能的変異体との間の複合体の形成をモニターする。適当な対照(例えば薬物の不在下における結合)と比べて薬物の存在下にリガンドの結合が減少したら、それはその薬物が阻害因子であるという指標になる。例えば、実施例3に記載のアッセイと融合蛋白質を使用して、阻害剤を検出することができる。試験すべき薬物を、組換え霊長類MAdCAMを発現する第1細胞及びα4β7インテグリンを保持する第2の細胞と、該第2細胞に対する該第1細胞の接着に適した条件下に、混合することができる。該第1細胞と該第2細胞との接着をモニターし、適当な対照と比べて接着が減少(軽減または完全に破壊)したら、それはその薬物が阻害因子であるという指標になる。MAdCAM-1のリガンドを自然に発現する細胞または細胞群(例えば白血球(α4β7+Bリンパ球、Tリンパ球など))若しくはMAdCAM−1のリガンドを発現する他の細胞(例えば組換え細胞)を使用できる。
実施例3に記述するようなアッセイを用いると、結合を阻害する化合物を試験管内で同定できる。本明細書に示すように、霊長類MAdCAM部分を持つ融合蛋白質(2つのキメラMAdCAM−Ig融合物)は、溶液中で、α4β7陽性リンパ球に結合することができる。したがって、霊長類MAdCAM(機能的変異体を含む)、特に可溶型霊長類MAdCAM分子及び融合蛋白質(実施例3に記載のキメラMAdCAM−Ig融合物など)は、α4β7:MAdCAM相互作用の阻害因子候補及び生体内における炎症部位に対するリンパ球補充の阻害因子候補となり、それは後述するように、治療において有効でありうる。これらの分子の生体内効力は、本明細書に記述する方法(例えば実施例4及び5を参照)または他の適当な方法を用いて評価できる。例えば、実施例5に記載のような霊長類モデルを使用できる。CD45RBHi/SCIDモデルは、クローン病及び潰瘍性大腸炎の両方と類似性を持つマウスモデルとなる(実施例4、Powrie,F.ら,Immunity,1:553−562(1994))。このモデルにおける効力は、モノクローナル抗体に用いた実験手順と同様の手順で評価できる(実施例4)。投与(例えば、静脈内(i.v.)、腹腔内(i.p.)及び経口(p.o.))後の、111In−標識細胞の結腸に対する補充の阻害や、大腸基底膜中のCD+Tリンパ球数の減少などといったパラメーターを評価できる。ヒトの炎症性腸疾患と類似する腸障害を発生させるノックアウトマウスも既に記述されており(Strober,W.及びEhrhardt,R.O.,Cell,75:203−205(1993))、またNODマウスは、インスリン依存性真性糖尿病の動物モデルとなる。
さらに本発明は、α4β7インテグリンに対するMAdCAM結合及び/又はα4β7が媒介する細胞応答の誘発を阻害することによって、胃腸路または他の粘膜組織に対する白血球補充に関連する疾患(例えばIBD)を治療できるという発見に関する。結合を阻害する化合物または薬物としては、本明細書に定義する「霊長類MAdCAM」(可溶型霊長類MAdCAM分子及び融合蛋白質を含む)や、MAdCAM及び/又はα4β7インテグリンを結合する抗体またはその抗原結合性断片を挙げることができる。この方法に使用できる抗体としては、組換え型または非組換え型のポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒトに適合させたおよび/または抗イディオタイプ抗体が挙げられる。
MAdCAMまたはα4β7を結合するモノクローナル抗体は既に記述されている。例えば、MECA−367はIgG2aサブタイプの抗MAdCAM抗体であり、Gallatinら,Nature,304:30(1983)及びMichieら,Am.J.Pathol.,143:1688−1698(1993)に記述されている。ACT-1は、α4β7インテグリンを結合するモノクローナル抗体である(Lazarovitsら,J.Immunol,133:1857(1984);Schweighofferら,J.Immunol.,151:717-729(1993))。FIB21はβ7鎖を結合し、Berlinら,Cell,74:184-195(1993)やAndrew,D.P.ら,J.Immunol.,153:3847-3861(1994)に記述、特徴づけがなされている。
他のポリクローナルまたはモノクローナル抗体、例えば前記の抗体と同じまたは類似のエピトープに結合する抗体などは、本明細書に記載の方法、当該技術分野で公知の方法、または他の適当な方法(例えばKohlerら,Nature,256:495-497(1975)、Harlowら,1988,Antibodies:A Laboratory Manual,(ニューヨーク州コールドスプリングハーバー)またはCurrent Protocols in Molecular Biology,第2巻(増補27,1994年夏),Ausubelら編(John Wiley & Sons:ニューヨーク州ニューヨーク),第11章(1991))に従って作成できる。また、α4β7インテグリン(好ましくはヒトα4β7インテグリン)を保持する細胞に対する結合に関して、10G4、8C1、10G3、9G12、9E4、7H12、10F2、10A6、1E5、2F5または7F11と命名されたハイブリドーマ細胞株によって生産される抗体のいずれか1つと、競争できる抗体を作成することもできる。
例えば、適当な哺乳類(マウス、ラット、ウサギ、ヒツジなど)中で適当な免疫原に対して抗体を生じさせることができる。免疫原としては、例えば、MAdCAM、α4β7、またはそれらの免疫原性断片を挙げることができる。例えば、ある霊長類MAdCAMまたはその変異体を生産し、それを免疫原として、適当な免疫化法で抗体を生じさせることができる。
抗体産生細胞(リンパ球など)は、例えば感作動物のリンパ小節または脾臓から単離できる。次に、これらの細胞を適当な不死化細胞(例えば骨髄腫細胞株)と融合することによって、ハイブリドーマを形成させる。融合細胞は、選択培養技術を使用して単離できる。所望の特異性を持つ抗体を産生する細胞は、適当なアッセイ(例えばELISA)によって選択できる(例えば実施例2を参照)。
一態様として、免疫原を、例えばMAdCAM、α4β7またはそれらの免疫原性断片を結合する抗体としてもよい。これによって生じた抗体は抗イディオタイプ抗体であることができ、これもまた本発明で使用できる(米国特許第4,699,880号)。
単鎖抗体、キメラ、ヒトに適合させたまたは霊長類に適応させた(例えばEP0,592,406;Padlanら,1994年4月13日などに従ってCDR移植または再表面処理した)抗体ならびに異なる種に由来する部分を含むキメラまたはCDR移植単鎖抗体が、本発明で使用できる。これらの抗体の様々な部分は、従来の技術を用いて、互いに化学的に結合するか、若しくは遺伝子操作技術を用いて、一つの連続的蛋白質として調製することができる。例えば、キメラまたはヒトに適合させた鎖をコードする核酸を発現させることによって、連続的蛋白質を製造することができる。例えばCabillyら,米国特許第4,816,567号、Cabillyら,欧州特許第0,125,023B1号、Bossら,米国特許第4,816,397号、Bossら,欧州特許第0,120,694B1号、Neuberger,M.S.ら,国際特許第86/01533号、Neuberger,M.S.ら,欧州特許第0,194,276B1号、Winter,米国特許第5,225,539号およびWinter,欧州特許第0,239,400B1号を参照のこと。また、霊長類に適応させた抗体については、Newman,R.ら,BioTechnology,10:1455−1460(1992)を、単鎖抗体についてはLanderら,米国特許第4,946,778号とBird,R.E.ら,Science,242:423−426(1988)をも参照のこと。
さらに、抗体の機能的断片(キメラ、ヒトに適合させた、霊長類に適応させたまたは単鎖抗体の断片を含む)も製造できる。前記の抗体の機能的断片は、それらが由来する完全長抗体の結合機能の少なくとも1つを保持し、好ましくは、相互作用を阻害する能力を保持する。例えば、α4β7インテグリン、MAdCAMまたはそれらの一部に結合できる抗体断片としては、Fv、Fab、Fab’およびF(ab’)2断片が挙げられるが、これらに限定されるものではない。このような断片は、酵素的切断や組換え技術によって生産できる。例えば、パパインまたはペプシン切断によって、それぞれFabまたはF(ab’)2断片を生成させることができる。別法として、天然の停止部位の上流に1以上の停止コドンが導入されている抗体遺伝子を用いて、種々の先端欠失型抗体を生産することもできる。例えば、F(ab’)2重鎖部分をコードするキメラ遺伝子を、重鎖のヒンジ領域とCH1ドメインをコードするDNA配列を含むように設計することができる。
本願に係る方法に使用できる抗体及びその抗原結合性断片としては、MAdCAM及び/又はα4β7に結合する抗体、例えば抗β7鎖抗体などが挙げられる。例えば、FIB21、FIB30、FIB504及びACT−1ならびにそれらの混合物からなる群より選ばれる抗体を、投与することができる。別法として、もしくはそれに加えて、これらの抗体の抗原断片を投与することもできる。
MAdCAMとα4β7インテグリンの結合を阻害する化合物または薬物は、MAdCAM−1分子を発現する組織の白血球(リンパ球、単球など)浸潤(組織における白血球の補充及び/又は蓄積を含む)に関係する疾患の治療において、本願に係る方法に従って投与することができる。そのような疾患を治療するには、(1以上の)化合物または薬物の有効量を個体(例えば哺乳類(ヒトや他の霊長類など))に投与する。例えば、炎症性疾患(胃腸路(腸−関連内皮を含む)、他の粘膜組織、若しくはMAdCAM−1分子を発現する組織(例えば、小腸大腸の基底膜の細静脈のような腸−関連組織、乳腺(泌乳性乳腺など))の白血球浸潤に関連する疾患を含む)を、本願方法に従って治療できる。さらに、MAdCAM−1分子を発現する細胞(例えば内皮細胞)に対する白血球結合の結果として起こる、組織の白血球浸潤に関連する疾患を持つ個体を、本発明に従って治療できる。
特に好ましい態様では、そのように治療できる疾患として、炎症性腸疾患(IBD)、例えば潰瘍性大腸炎、クローン病、回腸炎、腹腔疾患、非熱帯性スプルー、セロネガティブ関節症に関連する腸疾患、微細またはコラーゲン性大腸炎、好酸球性胃腸炎、若しくは直腸結腸切除術や回腸肛門吻合術後に起こる窩炎(pouchitis)などが挙げられる。
膵炎とインシュリン依存性真性糖尿病は、本発明の方法を用いて治療できるその他の病気である。MAdCAM−1は、NOD(非肥満糖尿病)マウス、ならびにBALB/cマウス及びSJLマウスの外分泌腺・膵臓中のいくつかの血管によって発現されると報告されている。MAdCAM−1の発現は、NODマウスの膵臓の炎症を起こした島の内皮上で誘導されると報告されており、またMAdCAM−1は、インスリン炎の初期段階にNOD島内皮によって発現される主要アドレシンであった(Hanninen,A.ら,J.Clin.Invest.,92:2509−2515(1993))。さらに、島内にはα4β7を発現するリンパ球の蓄積が認められ、MAdCAM−1は、炎症を起こした島の血管に対する(α4β7による)リンパ球細胞の結合と関係した(Hanninen,A.ら,J.Clin.Invest.92:2509−2515(1993))。
本発明方法に従って治療できる粘膜組織関連炎症性疾患の例としては、乳腺炎(乳腺)、胆嚢炎、胆管炎または胆管周辺炎(胆管と肝臓周辺の組織)、慢性気管支炎、慢性副鼻腔炎、喘息及び(例えば胃腸路における)対宿主性移植片病などが挙げられる。クローン病に見られるように、炎症はしばしば粘膜表面を超えて広がるので、間質性繊維症をもたらす胚の慢性炎症性疾患、例えば過敏性肺炎、コラーゲン病、類肉腫症及び他の突発性疾患なども治療できる。
化合物は、α4β7インテグリンに対するMAdCAMの結合を阻害する有効量で投与される。治療の場合、有効量とは、所望の治療及び/又は予防効果を達成するに足る量(例えば、MAdCMAが媒介する結合及び/又はシグナリングを軽減または予防することによって、白血球の接着と浸潤及び/又は関連する細胞応答を阻害するに足る量)になるだろう。化合物は、1回量で投与してもよいし、多数回量で投与してもよい。用量は、当該技術分野で知られる方法によって決定でき、例えば患者の年齢、感受性、耐性及び総合的健康状態などに依存する。抗体の好適な用量としては、1処置あたり0.1〜1.0mg/kg−体重が考えられる。
化合物または薬物は、本発明に従って、単独で、若しくはもう1つの薬物と組み合わせて、個体(例えばヒト)に投与できる。化合物または薬物は、その追加薬物投与の前、追加薬物投与と同時または追加薬物投与後に投与できる。一態様として、内皮MAdCAMに対する白血球の結合を阻害する1以上のモノクローナル抗体を投与する。あるいは、内皮リガンドに対する白血球の結合を阻害するモノクローナル抗体を、抗MAdCAM抗体または抗β7抗体に加えて投与する。例えば、MAdCAM以外の内皮リガンドに対する白血球の結合を阻害する抗体(例えば抗ICAN−1抗体や抗VCAM−1抗体など)を投与することもできる。もう1つの態様として、追加の薬学的に活性な成分(例えばスルファサラジン、抗炎症性化合物、ステロイド系抗炎症性化合物または他の非ステロイド系抗炎症性化合物)を、前記化合物または薬物(例えば本発明の抗体)と組み合わせて投与してもよい。
様々な投与経路が可能であり、治療すべき状態または疾患に応じて、腸管外投与法(静脈内注射、動脈内注射、筋肉内注射、皮下注射など)、経口投与法(食餌法など)、局所投与法、吸入投与法(気管支内吸入、鼻孔内吸入または経口吸入、鼻孔内滴剤など)、直腸投与法などが挙げられるが、必ずしもこれらに限られるわけではない。腸管外投与が好ましい投与法である。
投与すべき化合物の製剤は、選択した投与経路に応じて変化するだろう(例えば液剤、乳剤、カプセル剤など)。投与すべき化合物を含む適当な組成物を、生理学的に許容される担体または賦形剤中に調製することができる。液剤や乳剤の場合は、適当な担体として、例えば食塩水や緩衝培地などの水溶液、アルコール/水溶液、乳液、懸濁液などが挙げられる。腸管外用の賦形剤としては、食塩溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸化リンゲルまたは脂肪油などを挙げることができる。静脈内用の賦形剤としては、種々の添加物、保存剤、液体、栄養または電解物質補充剤などを挙げることができる(一般的にはRemington’s Pharmaceutical Science,第16版,Mack編,1980を参照のこと)。吸入法の場合は、化合物を可溶化し、適当な投与用ディスペンサー(アトマイザー、ネブライザーまたは加圧エアゾールディスペンサーなど)に入れることができる。
実施例
以下、実施例によって本発明を説明するが、本発明は、これらの実施例等によりなんら限定されるものではない。
概論
ネズミMAdCAM DNAプローブとズー ブロットとを用いる低ストリンジェント条件下でのハイブリダイゼーション解析によって、ネズミMAdCAM−1とそれより高等な種との間には、ヌクレオチド保存があまりないことが示された。霊長類及びヒトホモログのクローン化には機能発現法を使用し、それによって、MAdCAM−1リガンド(α4β7)を高レベルに発現する標的リンパ球細胞株への接着能を付与するcDNAを形質導入した細胞を同定し、そのcDNAを回収した。ヒト組織供給源は少なかったので、まず、MAdCAM−1の霊長類相同体を同定した。
発現クローニングのために、アカゲザルの腸間膜リンパ小節由来の霊長類cDNA発現ライブラリーを、真核発現ベクターpRSVsport(ギブコ(Gibco)/BRL製)中に作成した。CHO/P細胞株を用いる高効率形質導入株(Heffernan,M.及びJ.D.Dennis,Nucleic Acids Res.,19:85−92(1991))を使用した。ライブラリーを分離し、個々のプール(約1,500クローン体に相当)を24ウェル組織培養プレートのウェル内で形質導入した。細胞接着アッセイを行なって、MAdCAM−1の既知のリガンドであるα4β7インテグリンを発現するT及びB細胞株に対する接着表現型を付与するcDNAを同定した。接着は、形質導入された細胞に対するT及びB細胞株のロゼット形成によって、顕微鏡的に同定した。所望の表現型を付与するプールを、さらに細分化し続けることによって、単一の完全長cDNAクローン体(クローン体31Dと命名)を同定した。このcDNAのアミノ末端部分のDNA配列決定によって、ネズミMAdCAM−1(Briskin,M.J.らNature(Lond.),363:461−464(1993))に対する該アカゲザルクローン体の相同性が、蛋白質レベルでも核酸レベルでも明らかになった。
一過性トランスフェクションによってCHO/P細胞に導入すると、クローン体31Dから得たcDNA挿入物は、α4β7を発現する2つの細胞株、すなわち(1)TK1,ネズミT細胞リンパ腫(Butcher,E.C.ら,Eur.J.of Immunol.10:556−561(1980))と(2)RPMI8866,ヒトB細胞リンパ腫(Erle,D.J.ら,J.Immunol.,153:517−528(1994))に対する結合を媒介できる蛋白質の発現を指示した。アカゲザルcDNAを形質導入した細胞に対するTK1細胞の結合は、α4(MAb PS/2)またはβ7(MAb FIB504)インテグリンのいずれかに対する抗体によって遮断することができ、アカゲザルcDNA(pSV−SPORT中のクローン体31D)を一過性トランスフェクションしたCHO/P細胞に対するRPMI8866の結合は、抗α4β7MAbであるACT−1によって遮断された。対照実験において、ヒトVCAM−1をコードするcDNAは、RPMI8866ヒトB細胞株に結合できなかった。α4β1を発現するがα4β7を発現しないT細胞株であるJurkat細胞は、VCAM−1を結合するが、アカゲザルcDNAを発現する形質導入体を結合できないことがわかった。
ネズミMAdCAM−1の霊長類(アカゲザル)ホモログをコードするcDNAをプローブとして、ハイブリダイゼーション法によって、ヒトホモログをコードするクローン体を得た。ヒトMAdCAM−1クローン体を得るために、2つのcDNAライブラリー(1つは組織学的に正常なヒト腸間膜リンパ小節(MLN)に由来し、もう1つはクローン病患者から得た炎症を起こしたMLNリンパ小節に由来する)を、ギブコ(Gibco)/BRL製のλZiploxファージベクター中に構築した。上記アカゲザルクローン体から得たcDNAを用いて、これらのライブラリーをスクリーニングした。よく似たサイズを持つ2種類のヒトcDNAが単離された。予備的な配列分析によると、これらのクローン体は、それぞれ完全長であるようだった。ヒト及びアカゲザルMAdCAM−1 cDNAの分析は、コードされている蛋白質のそれぞれが、疎水性リーダーと推定される配列(図1〜3の下線部)と、それぞれ推定成熟ヒトまたはアカゲザルMAdCAM−1に相当する蛋白質からなる残余部分とを持つことを示す。
機能を評価するために、ヒトcDNA挿入物をpCDNA3発現ベクター(インビトロジェン)中にサブクローニングし、一過性発現アッセイを用いて機能を立証した。ヒトcDNAは機能的蛋白質として発現させることができ、α4β7を発現する細胞に対する特異的な結合を媒介できる。したがって、これら2つのヒトcDNAクローン体をヒトMAdCAM−1 cDNAと呼ぶ。
霊長類cDNAとヒトcDNA両方の安定な形質導入体を、マウスプレB細胞株L1−2及びCHO細胞中に作成した。L1−2形質導入体を用いてマウスを免疫化し、ヒトMAdCAM−1に対するモノクローナル抗体を作成した。MAdCAM−1とα4β7の間の相互作用を阻害できる抗体を同定した。ヒトMAdCAM−1に対する遮断性抗体の生産は、意義深い進歩である。なぜなら、ヒトホモログとの交差反応性を持つこのような遮断性抗体をネズミMAdCAM−1を用いて生産しようとした過去の試みは失敗に終わっているからである。
実施例1 アカゲザルとヒトMAdCAM−1のcDNAのクローニング
RNAの単離とメッセージの選抜
全RNAは、(a)霊長類(アカゲザル)腸間膜リンパ小節(MLN);(b)組織学的に正常なヒト腸間膜リンパ小節;(c)クローン病の患者由来のヒト腸間膜リンパ小節(回腸小節);および(d)組織培養細胞からCsTFATM(トリフルオロ酢酸セシウム)試薬(ファルマシア;Cat.#17−087−02)の使用により単離された。腸間膜リンパ小節由来の全RNAは、アカゲザルの2種(マカク ファサイキュラリス、およびマカク ムラッタ)から得られ、ポリ−A RNAの単離前に併合した。組織培養細胞(1−5×108)はリン酸緩衝生理的食塩水(PBS)で一度洗浄し、ピペッティングにより均質化すると同時に、組織は、最初に、液体窒素中で瞬間冷凍し、5.5M イソチオシアン酸グアニジン、25mM クエン酸ナトリウム、0.5% ラウレルサルコシンナトリウム、および0.2M 2−メルカプトエタノールを含有する溶液中でダウンスホモジナイゼーションに付された。不純物を除去した分離物は、CsTFAの緩衝物上に重層するとともに、全RNAを20時間、30,000RPMの遠心分離によりペレットにした。
mRNAはプロメガ社のpolyATract mRNA アイソレーションシステムで選抜した。該システムは、ビオチン化したオリゴ(dT)プライマーを、真核生物のメッセージのポリA末端とハイブリダイズするために(溶液中で)使用する。ハイブリッドは、微磁気粒子および磁気分離スタンドと共役したストレプトアビジンを用いて、高いストリジェンシーで得、洗浄した。mRNAは、このシステム中で一回の精製で選抜し、収率は、全RNA収率の1−2%の範囲であった。全RNAおよびmRNAの両方のインテグリティーはゲル電気泳動および臭化エチジウム染色により解析した。
cDNA合成
cDNAは、スーパースクリプトTMラムダシステム(SuperscriptTM lamda system)(Cat.#18256−016)を、ヒトライブラリーの場合は、λZiploxTMベクター(ギブコ/ビーアールエル(Gibco/BRL)、ガイゼルスブルグ(Gaithersburg)、MD、Cat.#19643−014)と、または、アカゲザルライブラリーの場合は、pSV−SPORT−1ベクター(ギブコ/ビーアールエル(Gibco/BRL)、Cat.#15388−010)とのいずれかと共に使用することによって合成された。通常のプロトコールから下記の改良をした。cDNAは第1鎖か第2鎖にのみ(しかし両方でない)をα32P−dCTPでラベルし、量の推定は、等分量のcDNAフラクションの臭化エチジウム染色の検査により行った。
DNAシークエンシング
アカゲザルおよびヒトMAdCAM−1の完全なcDNAは、それぞれ、まず最初にライブラリーベクターpSV−SPORT−1とpZL1(λZiploxTMから取り出した)から単離した。制限地図に基づき、cDNAの内部領域からのシークエンシングを行いやすくするため、断片をブルースクリプト(Bluwscript)ベクター(ストラタジーン)にサブクローン化した。これらのクローン体のシークエンス解析の後、シークエンスを相補するようにオリゴヌクレオチドプライマーを作成した。両鎖のオーバーラップする配列を得た。シークエンス解析は、シーケナーゼ バージョン2.0 T7 DNA ポリメラーゼ(ユナイテッド ステーツ バイオケミカル)と35S−dCTP(アマシャム ライフ サイエンス アンド ニュー イングランド ニュークリアー)と共に、シーケナーゼTM 7−デアザ−dGTP DNAシークエンシングキットを利用した。G−Cリッチな配列には、デルタTAQシークエンシングキット(USB)とガンマ32P−ATP(アマシャム社製)G−Cリッチ シークエンスを用いた。
シークエンスは、Lasergeneシステム(DNASTAR社)を用いて入力し解析した。ヌクレオチド配列のアラインメントは、ウェートされた残基のウェート表による、ギャップ ペナルティー(gap penalty)10およびギャップ レングス ペナルティー(gap length penalty)10、およびデフォルトパラメーター(default parameter)(アラインメントパラメーター(alignment parameter)と対をなすものに関しては:ktuple=2、ギャップ ペナルティー(gap penalty)=5、ウインドー(window)=4、およびダイアゴナルセーブド(diagonal saved)=4である)を用いたクラスタルメソッドにより行った。
アミノ酸配列アラインメントはPAM250残基重量表で、ギャップ ペナルティー(gap penalty)10およびギャップ レングス ペナルティー(gap length penalty)10、およびデフォルトパラメーター(default parameter)(アラインメントパラメーター(alignment parameter)と対をなすものに関しては:ktuple=1、ギャップ ペナルティー(gap penalty)=3、ウインドー(window)=4、およびダイアゴナルセーブド(diagnal saved)=5である)を用いたクラスタルメソッドにより行った。
アカゲザル発現ライブラリーの調製
サイズフラクション手順は、大きい挿入断片(>1.5kb)を確保するアカゲザル発現ライブラリーの構築のために、またわずかに改良した。一巡の分画の後、一番目の(最も大きい)cDNAの画分のみを取って置き、残りの画分は貯めておき次の一巡の分画にかけた。次の一巡の一番目の画分は、前の一巡の一番目の画分と共に貯めておき、この一巡の二番目の画分もまた使用した。これらの2つの画分を沈澱させ、pSV−SPORT−1ベクターとのライゲーションに加え、そしてそれぞれのライゲーションの画分は、ライブラリーのタイターおよび平均挿入断片サイズの両方を評価するために、エレクトロコンピテントDH10Bバクテリア(ギブコ(GIBCO))に形質転換した。一番目の最も大きいcDNAフラクションのみのライゲーションの評価は、平均1.9kbの挿入断片サイズおよび中間値が2kbのサイズを持つ240万個の独立なクローン体を作ることの可能性を示した。
実際のスクリーニングされたライブラリーは、100枚の50μg/mlのアンピシリンのLB寒天プレートに1,500クローン体/プレートの密度でプレーティングし(100個の1,500クローン体/プールを生じさせる)、37℃で一晩培養した150,000の独立クローン体を含有した。個々のプールの精製のために、それぞれのプレートに約2mlのルリア培地(LB)を重層し、各々のプレートのコロニーを標準組織培養細胞スクラッパーでこそぎ落とし、またバクテリアの懸濁物を微量遠心チューブに移した。精製の前に、各々のプールからグリセロールストックを作成した。プラスミドDNAはQIAprepスピンカラム(QIAGEN)を製造業者の使用説明書に従って用いて精製した。
形質導入
CHO/P細胞(ヘッファナン、M.およびJ.D.デニス、Nucleic Acids.Res.、19:85−92(1991))を、形質導入に約24時間先立って、40,000細胞/ウェルの密度で24ウェルプレートに接種した。LipofectAMINETM試薬(ギブコ(GIBCO);Cat.#18324−012)を用いて、推薦された、プロトコールに基本的に従って、24ウェルプレートに以下のように最適化して、DNAを一過性に形質導入した:
200ngのDNA(プラスミドプールまたは精製された対照のDNAを示す)をOpti−MEM1還元血清培地(ギブコ(GIBCO))で20μlに希釈し、18μlのOpti−MEM1と2μlのLipofectAMINETM試薬からなる20μlの混合物に希釈した。このリポソーム混合物は、さらに約30分間、周囲の温度でインキュベートし、その後、200μlのOpti−MEM1を添加し、完全な混合物を、さらにCHO/P細胞のウェルに重層し、インキュベーターに戻した。37℃で2.5時間のインキュベートの後、20%ウシ胎児血清(FCS)を有する240μlのMEM−α(ギブコ(GIBCO))培地をと共に各々のウェルに添加し、細胞をさらに18−24時間、37℃でインキュベートした。培地は、さらに10%FCSを含む標準MEM−αに変え、約20−24時間後、接着アッセイを行った。
発現クローニングのための接着アッセイ
発現クローニングスクリーニングにおける接着アッセイのために、高レベルのα4β7を発現するネズミT細胞リンパ腫TK1(ブッチャー,E.C.等、ヨーロピアン ジャーナル オブ イムノロジー(Eur.J.Immunol.)、10:556−561(1980))を接着の表現型を授ける能力があるcDNAを導入したCHO/P細胞を検出する為に使用した。TK1細胞は2%ウシ胎児血清、20mM HEPES、pH7.3、2mM Mg2+、および2mM Ca2+を補ったHBSS(ハンクス バランスド塩溶液、Ca2+またはMg2+は無し)からなる、アッセイ緩衝液中、2×106/mlの密度で再懸濁された。DNAプールにより形質導入した各々のウェルは、VCAM−1(それは、初期リンパ小節中に高レベルで発現する)により仲介される接着、あるいは、ネズミMAdCAM−1発現プラスミドの潜在的な混入を除去するため、ヒトVCAM−1(MAB 2G7;グラバー、N.T.、等.、J.Immunol.、145:819−830(1990))およびネズミMAdCAM−1(MAb MECA−367;アメリカン タイプ カルチャー コレクション(ロックバイル、MD)、アクセッションNo.HB9478;ストリーター、P.R.、等、ネーチャー、331:41(1988));ブッチャーのU.S.Patent No.5,403,919も参照せよ)の両方に対するモノクローナル抗体を含有する混ぜた上清0.25mlと共にプレインキュベートした。4℃で15分間のインキュベーションの後、0.25mlのTK1細胞懸濁物(5×105TK1細胞)を、各々のウェルに添加し、振盪台上でのインキュベーションを、さらに30分間、4℃で続けた。プレートを、リン酸緩衝生理的食塩水(PBS)の大きいビーカー中で、緩やかに反転することにより洗浄し、続いて、最低限1時間の固定のために、1.5%グルタルアルデヒドの入ったPBSのビーカーで反転した。ウェルは、さらに顕微鏡的(10×対物レンズ)にTK1細胞のロゼッティングを調べた。
アカゲザルクローン体の精製
1種以上のTK1ロゼットを産生するプールをさらに以下のプロトコールで再分画した。:陽性プールを示すDNAでDH10Bを再び形質転換し、96枚の100mmペトリ皿に約200コロニー/プレートの密度でプレーティングした。ニトロセルロース膜をレプリカプレートの作成に使用し、各々のプレートの1セットをさらに前記のDNA精製および続く接着アッセイに付した。陽性プールを示すレプリカプレートは、そしてさらに、レプリカプレートを行い、アンピシリンを含むLB培地で一晩培養した5個のコロニーのプールにサブフラクションした。一巡以上のDNA精製と接着アッセイの後、個々のクローン体を、さらに培養することができ、TK1細胞の接着を授与するクローン体を同定した。
MAdCAM−1をコードすることを示す完全長のクローン体を得、クローン体31Dと称した。pSV−SPORT−1(P25)で構築した、クローン体31Dは、5’−SalIからNotI−3’cDNA挿入断片を含有する。クローン体31Dを有するE.coli DH10B株の形質転換体を得た。安定な細胞株における発現のため、本cDNAを、G418選抜に適したneo耐性遺伝子を持つ発現ベクターpcDNA−3(インビトロゲン(Invitrogen))にサブクローン化した。特に、クローン体31Dの挿入断片はEcoRI(5’)およびNotIによる消化により切り離し、EcoRIおよびNotIで切断したpcDNA−3に挿入しpcD3pMAdを得た。
結果
1,500個の独立クローン体のプールに分割した、cDNA発現ライブラリーは、アカゲザル腸間膜リンパ小節(MLN)から精製したmRNAから構築した。各々のプールは、一過性にCHO/P細胞株に形質導入し、形質導入後48時間後、細胞接着アッセイを、ネズミT細胞リンパ腫TK1を用いて行った。VCAM−1がMLNで発現したので、アッセイを、抗−VCAM−1 MAb 2G7(グラバー,N.T.、等、J.Immunol.、145:819−830(1990))の存在下で行った。さらに、ICAM cDNAにより仲介された接着を評価するために4℃で試験を行った(TK1細胞は、高レベルのLFA−1を発現し、LFA−1は4℃では機能しない)。該アッセイの顕微鏡検査によると、TK1細胞の顕著なロゼッティングを有するいくつかのウェルが示された。形質導入を繰り返し、プールにより仲介された結合が、抗−β7または抗−α4 MAbsにより阻害されうるかどうかを決定することによるさらなる解析のために、二つのウェルを選んだ。プールの中の一つへのTK1の結合は、抗−α4 MAb PS/2または抗−β7 MAb FIB 504いずれかとのTK1細胞のプレインキュベーションによって完全に阻害される。このプールは、31Dと呼ぶ1つのクローン体を、単離するまで3巡のサブフラクションに付された。精製したクローン体31Dは、抗−α4または抗−β7抗体によって阻害されうるTK1細胞結合を仲介した。
クローン体31Dの挿入断片の大きさは約1.8kbであった。アミノ−末端のシークエンシングは、ネズミMAdCAM−1の霊長類のホモログと一致する幾つかの特徴を示した。シグナルペプチドは両方とも21アミノ酸の長さであった。アミノ酸の類似性はわずか48%であることがわかったが、非−保存置換を考慮すれば、相同性は71%であった。さらに、クローン体31Dによってコードされる蛋白質は、Ig−ファミリー接着レセプターに独特の特徴:最初の免疫グロブリンドメイン中の3−4(本件では3)アミノ酸離れた二対のシステインを有する。最終的に、最初の二つのシステインに対して8アミノ酸C末端側は、ネズミMAdCAM−1の配列と同一である9アミノ酸の範囲である。この領域の中には、LDTSL配列があり、それはインテグリン/Igファミリーメンバーの相互作用のコンセンサスモチーフを配列する。このモチーフは、ICAM−1、ICAM−2、ICAM−3およびVCAM−1(オズボーン,L.等、J.Cell.Biol、124:601−608(1994);レンツ,M.E.等、J.Cell.Biol、125:1395−1406(1994))等の他のIg接着レセプターに関係する一般的な保存を有するが、この正確な配列が、ネズミMAdCAM−1にのみに、以前に見つけられた。本モチーフの機能的な重要性は、ネズミMAdCAM−1におけるモチーフのアミノ酸61の最初のL(ロイシン)からR(アルギニン)へ変換させたポイント変異がMAdCAM−1:α4β7結合に劇的な影響を有する事実により示唆される(示されていない)。これらの配列の特徴に伴う機能的研究は、クローン体31Dが、ネズミMAdCAM−1に対する霊長類のホモログをコードすることを示す。
ヒトファージライブラリーのスクリーニングとヒトクローン体の精製
ヒトファージcDNAライブラリーをλZiploxTMベクター(ギブコ(GIBCO)/BRL)において構築した。ヒトcDNAも、前記の正常または炎症を起こした腸間膜リンパ小節(MLN)のどちらかから単離したRNAから作成した。cDNAは前記のように合成し、該ファージベクターに連結し、細菌株Y1090(ZL)(”ZL”=Ziplox)でのタイターを測定した。正常およびクローンMLNファージライブラリー両方由来の約500,000個の独立のクローン体(50,000個クローン体/フィルター)の複製のフィルターを32Pラベルした全長アカゲザルMAdCAM−1c DNAでスクリーニングした。
プローブを調製するために、約1.7kbのEcoRI−NotI断片を、クローン体31Dから切り出し、GeneClean(BIO 101)を用いて単離した。該断片は、ランダムヘキサマーを用いてプライミングして、α32P−dCTPでラベルした(マニアティス.等、モレキュラー クローニング中(コールド スプリング ハーバー ラボラトリー、コールド スプリング ハーバー、ニューヨーク、1990))。
スクリーニング条件は下記のようである:50,000ファージクローン体を、NZYCM寒天(ギブコ(GIBCO)/BRL)を含む150mmのペトリ皿にプレーティングした。7−16時間にわたってインキュベーションした後、プレートに132mmのニトロセルロースフィルター(シュライチャーおよびシュエル,キーン,NH)を2分間重ね合わせ、次いで5分間、ファージクローン体の1番目および2番目の(複製)リフトに、個々に、移した。フィルターは、次いで5分間、変性溶液(1.5M塩化ナトリウム、0.5N水酸化ナトリウム)に浸し、次いで1.5M塩化ナトリウム、0.5M Tris−HCl、pH7.5中で中和した。フィルターは15分間、風乾し、次いで2時間、80℃、減圧下で焼き付けた。
フィルターを、2M Na2HPO4、0.5% SDS、5×デンハート(1×デンハート溶液は0.02%ウシ血清アルブミン、0.02%フィコール、および0.02%ポリビニル−ピロリドンである)、1mM EDTA、および50μg/ml 変性サケ精子DNA中で、2時間、55℃でプレハイブリダイゼーションし、その後、同じ緩衝液中で、一晩55℃でハイブリダイズした。フィルターは、2×SSC、0.1% SDS(1×SSCは、0.15M塩化ナトリウム、0.015Mクエン酸ナトリウムである)中で、室温で一度洗浄し、次いで、65℃で、0.1×SSCおよび0.1% SDS中で、3から4回の洗浄を行った。フィルターは、バックグラウンドを減らすことを見るためにガイガーカウンターでモニターされた。
陽性クローン体はプラーク精製し、cDNA挿入断片を含むプラスミドpZL1をCRE LOXレコンビネーション システム(ギブコ(GIBCO))を用いて切り離した(プラスミドpZL1はラムダZiploxベクター本体中に含まれる)。特に、精製したファージプラークを200μlのファージ緩衝液(20mM Tris−HCl、pH7.5、145mM NaCl、8mM MgSO4・7H2O、0.01%ゼラチン)中、5分間、室温で懸濁した。次いで、20μlのファージ懸濁液を100μlのDH10B(ZL)の一晩培養液に添加し、さらに5分間インキュベートした。混合物の希釈液を、次いでアンピシリン50μg/mlおよび10mM MgCl2を補ったLBプレートにプレーティングし、30℃で一晩インキュベートした。pZL1ベクター中に挿入したcDNAを含む、単一のコロニーを標準一晩培養液として培養し、プラスミドをQiagenプラスミド精製試薬を用いて精製した。
はっきりした機能のヒトMAdCAM−1cDNAクローン体の同定
組織学的に正常なヒト腸間膜リンパ小節、およびクローン病の患者由来の炎症を起こした腸間膜リンパ小節由来の二つのヒトcDNAライブラリーを、完全なアカゲザルMAdCAM−1cDNAをプローブとして用いてスクリーニングした。1つのクロス−ハイブリダイするクローン体を正常なライブラリーから単離し、2つのクロス−ハイブリダイするクローン体をクローン病のライブラリーから単離した。クローン病のライブラリーから単離した2つクローン体のうち1つは約1.3kbであり、5’−末端で不完全であるように見え、シークエンスを行わなかった。正常なライブラリー由来のクローン体(クローン体4)は、クローン病のライブラリーから単離した、より長いクローン体(1558bp)(クローン体20)より、わずかに大きかった(1624bp)。これらの2つのcDNAは、大きさで約100bp異なるが、それらの5’および3’非翻訳配列は、ほとんど同じ長さであった。それらは両方がアカゲザル配列とほとんど同一であるアミノ−末端シグナル配列を含んでいるので、各々のクローン体は全長を示した。
さらに、予備的なシークエンシングは、霊長類cDNAと同じアミノ−末端のIg−様ドメインの顕著な特徴を示した。これらのクローン体の大きさの差は、非翻訳配列の長さに帰することができないので、おそらく変化はコード領域に帰するであろう。
各々のクローン体が、機能的なヒトMAdCAM−1をコードするかどうかを決定するために、各々のクローン体の挿入断片をG418選抜に適切であるneo耐性遺伝子を持つpCDNA−3発現ベクター(インビトロゲン、サンディエゴ、CA)にサブクローン化した。ヒトcDNA(3’−末端にNotIオリゴ−dTプライマー、および5’−末端にSalIアダプターを用いて作成された)を、プラスミドpZL1を含有するλZiploxベクターに連結した。cDNA挿入断片を有するpZL1ベクターは、前記のように切り離した。サブクローニングのためにクローン体4および20の挿入断片をEcoRIおよびNotIを用いてpZL1骨格から消化により切り離した。該EcoRI−NotI(5’→3’)断片を1%アガロースゲルで電気泳動を行った後、ジーンクリーン(Bio101)で単離し、該断片を、EcoRIおよびNotIを用いて切断したpcDNA−3に連結した。ライゲーション混合物は、DH10B E.coli マックスエフェシェンシー株(ギブコ(GIBCO))を形質転換するために用い、形質転換体を50μg/ml アンピシリン(AmP)を補ったLB寒天で選抜を行って得た。pcD3huMAd4(クローン体4由来の挿入断片)およびpcD3huMAd20(クローン体20由来の挿入断片)で示されるプラスミドを得、制限消化により解析した。
クローン体pcD3huMAd4(クローン体4由来の挿入断片)またはpcD3huMAd20(クローン体20由来の挿入断片)を一過性にCHO/P細胞へ形質導入した。CHO/P形質導入体のヒトB細胞リンパ腫RPMI8866(図5)またはTK1細胞(示していない)への接着により評価されるように、各々のクローン体は結合および接着をを仲介しうる機能的な蛋白質の発現を指示する。
CHO/P形質導入体のRPMI8866細胞への接着は、対照IgGによるのではなく、抗−α4β7 MAb ACT−1を用いてプレインキュベートすることにより阻害された。形質導入体のTK1細胞への接着は、抗−β7 MAb FIB 504により阻害された。これらの結果は、クローン体4(正常な腸間膜小節ライブラリー由来)およびクローン体20(クローン病のライブラリー由来)各々が、機能的なMAdCAM−1蛋白質をコードすることを示す。さらにこれらのはっきりしたcDNAを特徴付けるために、両方のクローン体を完全にシークエンスした。
結果
ヒトMAdCAM−1をコードするクローン体4および20由来のcDNAは、それぞれ、1628bpおよび1543bpの長さである。クローン体4由来のcDNA(図1;配列番号:1)は、406アミノ酸の推定される蛋白質(配列番号:2)をコードする1218bpの読み枠、および410bpの3’非翻訳領域を含むが、5’非翻訳領域は、含まなかった。クローン体20由来のcDNA(図2;配列番号:3)は、4bpの5’非翻訳配列、382アミノ酸の予想される蛋白質(配列番号:4)をコードする1146bpの読み枠、および393bpの3’非翻訳領域を含む。推定される18アミノ酸のシグナル配列の切断後、コードされる蛋白質の推定される分子量は、40,910(クローン体4)および38,375(クローン体20)ダルトンである。
複数のアラインメントは、MAdCAM−1の異なるクローン化された種間の相同性の程度を解析するために行われた。ヌクレオチドのアライメントは、マウスとラットのMAdCAM−1cDNA間では81.9%の相同性、マウスとアカゲザルcDNA間では41.8%の相同性、ネズミとヒト(クローン体4)MAdCAM−1cDNA間では42.1%の相同性、およびネズミとヒト(クローン体20)MAdCAM−1cDNA間では41.8%の相同性を示した。ヒトクローン体4およびクローン体20cDNAとのアカゲザルMAdCAM−1のヌクレオチド配列のアライメントは、それぞれ70.7%および75.0%の相同性を示した。
アミノ酸配列相同性はマウスとラットMAdCAM−1間では78.5%、マウスとアカゲザルでは44.3%、およびネズミとヒトクローン体4がコードするMAdCAM−1間では39%であることが決定された。
cDNAクローン体4および20の比較は、セリン、スレオニンおよびプロリン残基の頻度(クローン体4が69%、クローン体20が76%)による(図1と図2で囲まれた)、ネズミMAdCAM−1のムチンドメインとの相同性がある領域を示した。この領域は、ネズミMAdCAM−1にアミノ酸組成において似ているが、ネズミMAdCAM−1とは高く異なる。該ドメインは、クローン体4では71アミノ酸の長さ、およびクローン体20では47アミノ酸の長さである。該領域は、2つの多型も含んでいる。:(1)アミノ酸240における多型であり、それがクローン体4においてはプロリン(P)でありクローン体20においてはセリン(S)である;および(2)アミノ酸242における多型であり、それがクローン体4においてはアスパラギン(N)でありクローン体20においてはアスパラギン酸(D)である。さらに、ヒトムチンドメインが、配列PPDTTS(Q/P)Eからなる8アミノ酸の繰り返しを含み、それが、クローン体4では8回およびクローン体20では5回現れる。
クローン体4および20の起源を評価するため、該繰り返しの側に位置するPCRプライマーを、ヒトゲノムDNAを増幅するために使用した。下記のプライマーを使用した。:
該プライマーは、ネステッドプライマーである。一回目の反応においては、プライマー1および2を使用した。二回目の増幅反応には、一回目の反応の1:1000希釈物を調製し、1μlをプライマー3および4と共に使用した。増幅反応は、0.5μgのゲノムDNA、10ピコグラムの対照プラスミド(pcD3HuMAd4またはpcD3HuMAd20)、または前にZiploxライブラリーのために調製した約1mgの二本鎖cDNAのいずれかを含んだ。ゲノムDNAは3つの供給源から得た(プロメガ、クロンテック、およびジャーカット細胞から精製したもの)。増幅の条件は:94℃で5分を1サイクル;94℃で45秒、60℃で45秒、72℃で1分を25サイクルし、72℃で5分を1サイクル行った。
ゲノムDNAからの増幅反応により、テンプレートとしてクローン体4およびクローン体20cDNAのいずれかを用いてPCR反応の個々の産物に由来する2つのバンドを得た。このデータから2つのcDNAクローン体はゲノムDNAによりコードされるイソ型であり、恐らく択一的スプライシング、または2つの異なる対立遺伝子からの転写により生じるのであろう。拡大した多型および配列の発散は他のムチン配列において証明されている(例えば、ヒルケンス,J、等.、Trends,Biochem.Sci、17:359−363(1992))。例えば、腸のムチンの反復部分は、ネズミとヒトの間に良く保存されてはいない(ガム,J.G.等、J.Biol.Chem.、266:22733−22738(1991))。一つの予告は、ネズミゲノム構造の解析に基づいて、ヒトゲノムDNAはこの領域にイントロンを含むことができることである。もしそうであれば、本実験に用いたPCRプライマーは、イントロンにわたるであろうし、ヒトゲノムDNAの増幅は、cDNA対照の増幅により産生されるものと同じ大きさのバンドを産生することが期待されないであろう。ヒトMAdCAM−1ゲノムクローン体の単離および解析は結果的にクローニングアーチファクトの可能性を除いた。クローン体20イソ型および炎症病または活性間に相互関係があるかどうかを決定するために、正常および/または正常な個人およびIBD、クローン病または他の炎症の条件を有する患者由来の炎症を起こした組織の評価を行うことができる。
ネズミ、アカゲザル、およびヒトMAdCAM−1の2つのイソ型の比較は、これらのレセプターのアミノ末端部分がおそらくα4β7認識に関与するドメイン構造を提示することを示唆する。対照的に、ネズミMAdCAM−1のムチン/IgAドメインの位置に一致する位置のこれらのレセプターの領域は、アミノ酸組成が似ているが(セリン、スレオニン、プロリン−リッチなムチン領域)、他からさらに発散する。
ヒトMAdCAM−1 RNAの発現
ヒトの複数の組織のノーザンIおよびII(クロンテック,パロ オルト市、カリフォルニア州により市販調製された)、または前記のようにして調製された細胞株および組織由来の2μgのポリA+RNAを用いて、ノーザン解析を行った。RNAは1%アガロース ホルムアルデヒドゲルにより変性し、電気泳動し、PVDF膜(イモビロン、ミリポア)へ標準キャピラリーブロット法によって転写した。RNA試料は、細胞または組織RNAそれぞれの質および量が均等であることを最初に確かめるために臭化エチジウムで染色した。転写後、RNAはUVクロスリンキング(ストラタリンカー、ストラタジーン)により膜に固定し、このブロットおよび市販調製されたブロットをExpressHyb(クロンテック)中68℃で1時間プレハイブリダイズした。クローン体4由来のcDNA挿入断片を、ランダムヘキサマーを用いたプライミングによりα32P−dCTPでラベルした(マニアティス等、モレキュラー クローニング:ア ラボラトリー マニュアル、コールド スプリング ハーバー、コールド スプリング ハーバー ラボラトリーズ、ニューヨーク、(199))。ハイブリダイゼーションは2×106cpm/mlの濃度の変性プローブを用いてExpressHyb中68℃で1時間行った。
ブロットは、次いで0.1×SSC、0.1% SDS中、60分間65℃で、30分で洗浄の一回の交換をして洗浄した。露光時間は、増感スクリーンを用いて48時間した。この露光の後、該ブロットは0.5% SDS中10分間の洗浄ではがし、同じ条件下でβ−アクチンcDNAを用いて再ハイブリダイズした。露光時間は2時間した。
結果
プローブとしてクローン体4由来の完全なcDNA挿入断片を用いてMAdCAM−1発現についてノーザンブロットを調べた。約1.6kbの単一のRNA種が、小腸中で高度に発現し、結腸および脾臓中で、より少ない程度で発現した。顕著な発現は、これらの条件下でアッセイした、胸腺、前立腺、卵巣、精巣および末梢血液白血球(PBL)を含む他の組織において観察されなかった。この発現の組織特異的パターンは、パイエル板、MLN(腸間膜リンパ小節)、腸の粘膜固有層におけるMAdCAM−1の制限された発現および脾臓中の脾性白髄小節の周りの洞縁(the marginal sinus arpund splenic white pulp nodules)における若干の発現(ヘムラー、M.E.、Annu.Rev.Immunol.、8:365(1990);ベルグ,E.L.等、炎症化の細胞内分子機構(セルラー アンド モレキュラー メカニズムズ オブ インフラムメーション)、2:lll(1991);ブリスキン,M.J.等、ネーチャー、363:461(1993))を示すマウスにおける研究と一致する。顕著な発現は、心臓、脳、胎盤、肺、肝臓、骨格筋、または腎臓を含むアッセイされた他の組織において観察されなかった。;しかしながら、低レベルの発現が、膵臓において検出された。これらのデータは、ヒトMAdCAM−1発現が、粘膜組織および脾臓における発現に組織特異的であることを示す。;詳細な組織分布の免疫組織化学的解析はヒトMAdCAM−1に対するモノクロナール抗体を用いて行うことができる(下記を参照)。
実施例2.MAdCAM−1クローン体の特徴付け
機能的接着アッセイ
プラスミド:
以下のプラスミドを機能的接着アッセイに用いた:(1)pSV−SPORT−1(Gibco/BRL製)またはpcDNA−3(Invitrogen製)を対照として用いた;(2)pCDM8中のネズミMAdCAM−1(pCDMAD−7;ブリスキン(Briskin,M.J.),ら,Nature,363:461(1993));(3)pcDNA3中の7ドメインヒトVCAM−1(ポルテ(Polte,T.),ら,Nucleic Acids Res.,18:5901(1990))(pCD3VCAM);および(4)pcDNA−3中のヒトMAdCAM−1(pCDhuMAd4)(前記参照)。
モノクローナル抗体:
以下のモノクローナル抗体(MAb)を機能的接着アッセイに用いた:(1)抗ネズミMAdCAM−1 MAb MECA−367(アメリカン タイプ カルチャー コレクション(American Type Culture Collection)(ロックビル,メリーランド州),寄託番号HB9478;ストリーター(Streeter,P.R.),ら,Nature,331:41(1988);およびブッチャー(Butcher)に対する米国特許番号5,403,919);(2)抗ヒトVCAM−1 MAb 2G7(アメリカン タイプ カルチャー コレクション(ロックビル,メリーランド州);グラバー(Graber,N.T.),ら,J.Immunol.,145:819−830(1990));(3)抗ネズミα4β7 MAb DATK 32(アンドリュー(Andrew,D.P.),ら,J.Immunol.,153:3847−3861(1994));(4)抗ネズミβ7 MAb FIB 504(アンドリュー(Andrew,D.P.),ら,J.Immunol.,153:3847(1994));(5)抗ヒトα4β7 MAb ACT−1(ラザロビッツ(Lazarovits,A.I.),ら,J.Immunol.,133:1857(1984));(6)抗ヒトインテグリンβ1(CD29)(Becton Dickinson製;サンホゼ,カリフォルニア州,カタログ番号#550034);ならびに(7)無関係の対照としてネズミIgG1およびラットIgG2A。
細胞株
以下の細胞株を機能的接着アッセイに用いた:
(1)ネズミT細胞リンパ腫TK1(ブッチャー(Butcher,E.C.),ら,Eur.J.Immunol.,10:556−561(1980);ブッチャー(E.Butcher)(スタンフォード,カリフォルニア州);(2)RPMI 8866、α4β7(そしてα4β1ではない)を発現するヒトB細胞リンパ腫株(アメリカン タイプ カルチャー コレクション(ロックビル,メリーランド州);アール(Erle,D.J.),ら,J.Immunol.,153:517(1994);アール(D.Erle)からの供与物);(3)JURKAT、α4β1(そしてα4β7ではない)を発現するヒトT細胞株(アメリカン タイプ カルチャー コレクション(ロックビル,メリーランド州));および(4)Ramos、α4β1(そしてα4β7ではない)を発現するヒト(Bリンパ球)バーキットリンパ腫細胞株(アメリカン タイプ カルチャー コレクション(ロックビル,メリーランド州),寄託番号ATCC CRL 1596)。
機能的接着アッセイ:
機能的接着アッセイのために、以下のように変えて前記(実施例1)のように、様々な種のMAdCAM−1、ヒトVCAM−1をコードするプラスミド、および対照プラスミドを、一過性トランスフェクションによりCHO/P細胞に導入した。数個のウェルが抗体阻害実験のためにトランスフェクションされるので、トランスフェクションされる複数のウェルの原リポソーム混合物を、まず各プラスミドに対して作製した。これは、いくつかのリポソーム混合物が各ウェルにトランスフェクションされることを確実にした。
トランスフェクションの48時間後、培地を除いた。抗体上清(0.25ml)(抗ヒトVCAM−1 MAb 2G7または抗ネズミMAdCAM−1 MAb MECA−367のいずれかを含む)、もしくは対照として0.25mlの接着アッセイ緩衝液を加え、そして該混合物を4℃で15分間プレインキュベーションした。
並行して、リンパ球細胞株(RPMI 8866またはJurkat)をスピンして沈殿させ、そして2%子ウシ血清、20mM HEPES pH 7.3、2mM Mg++および2mM Ca++を補ったHBSS(Ca++またはMg++なし)からなるアッセイ緩衝液で、2×106/mlの密度で再懸濁した。これらのRPMI 8866またはJURKAT細胞懸濁物の0.25mlのアリコート(5×105細胞)を、少量の様々な精製抗体と共に、または等量のDATK 32上清と共に4℃で15分間プレインキュベーションした。DATK 32を細胞株とのプレインキュベーションに用いた場合、アッセイの開始に先立って、接着アッセイのために合計0.5mlの量を得るために、ウェル(トランスフェクタント(transfectant)を含む)中に存在する上清または緩衝液を吸引した。
プレインキュベーションのために、精製抗体(ACT 1、FIB 504抗β1)および対照IgG抗体を20μg/mlの濃度で用いた。0.25mlの抗ヒトVCAM−1(MAb 2G7)または抗ネズミMAdCAM−1(MAb MECA−367)を含む抗体上清(無希釈で用いた)をプレインキュベーションに用いた。0.25mlのDATK 32の抗体上清をプレインキュベーションに用いた。
プレインキュベーション後、細胞株(JurkatまたはRPMI 8866)をウェル中でトラスフェクタント(tranfectants)と組み合わせて、そしてロッキングプラットフォーム上でインキュベーションをさらに30分間4℃で続けた。
アッセイを前記のように固定した。プレートをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)の大きなブレーカー中で穏やかに反転させて洗浄し、続いて、固定のために1.5%グルテルアルデヒド(gluteraldehyde)を含むPBSのブレーカー中で最低1時間反転させた。20×倍率で視野中のリンパ球およびCHO細胞の両方を数えて、接着を評価した。各アッセイに対して、CHO/P細胞当たりの結合したリンパ球の数を、標準誤差を有する4つの視野の最小値として平均化した。各場合における結果は、同様の結果を有する3つの行われた実験の1つからのものである。
結果
ネズミMAdCAM−1は、α4β7(そしてα4β1ではない)を発現するリンパ球を特異的に結合する。ヒトMAdCAM−1リンパ球の相互作用の特異性を決定するために、接着アッセイを行って、ヒトMAdCAM−1を発現する一過性トランスフェクションされたCHO/P細胞の、α4β7しか発現しないRPMI 8866細胞株(アール(Erle,D.J.),ら,J.Immunol.,153:517(1994))へ、またはα4β1を独占的に発現するT細胞株Jurkatへ結合する能力を評価した。これらの細胞株の結合を、ネズミMAdCAM−1およびヒトVCAM−1を発現する一過性トランスフェクションされたCHO/P細胞の結合と比較した。結果は図4A〜4Bに示す。
RPMI 8866細胞は対照トランスフェクタントには結合しなかったが、ヒトまたはネズミMAdCAM−1を発現するトランスフェクタントには貪欲に結合した。この結合は抗α4β7 MAb ACT−1とのプレインキュベーションにより完全に阻害された(図4A)。VCAM−1トランスフェクタントはRPMI 8866に結合しなかった。このことは、α4β7/VCAM−1相互作用が活性化依存であるという以前の証明(ポスティゴ(Postigo,A.A.),ら,J.Immunol.,151:2471−2483(1993);ルエッグ(Ruegg,C.),ら,J.Cell.Biol.,117:179−189(1992))と一致している。抗VCAM−1 MAb 2G7を用いたFACS分析が約60%のトランスフェクション効率を示したように、RPMI 8866細胞がVCAM−1トランスフェクタントを結合しないのは、発現の欠乏によるものではなかった。さらに、同じVCAM−1トランスフェクタントはJurkat細胞を結合でき、そして結合は抗VCAM−1または抗β1 MAbのいずれかとのプレインキュベーションにより完全に阻害された(図4B)。ネズミおよびヒトMAdCAM−1トランスフェクタントはJurkat細胞(α4β1陽性株)を結合しなかった。これらのデータは、ヒトMAdCAM−1が選択的にα4β7インテグリンを発現するヒト白血球リンパ球と結合することができることを実証している。
L1−2およびCHO細胞トランスフェクタント
マウスL1−2細胞株は前Bリンパ腫由来であり、ユージン・ブッチャー(Eugene Butcher)博士(スタンフォード大学、スタンフォード、カリフォルニア州)から得た。MAdCAM−1に対するアカゲザルまたはヒトcDNAをいずれかコードする遺伝子を、前記のようにpcDNA−3ベクター(Invitrogen製)にサブクローニングした。生じたプラスミド(pcD3HuMAd4、pcD3HuMAd20、またはpCD3PMad(アカゲサル))を、以下のようなトランスフェクションによりL1−2細胞に導入した:L1−2細胞を約106/mlの密度になるまで増やした。50、25または12.5×106個いずれかの細胞をHBSSで洗浄し、それから20mM HEPES、pH7.05を補ったHanks平衡化塩溶液からなる0.8mlの緩衝液に再懸濁した。最終量200μlにした20μgの鎖状プラスミド、500μgのtRNAおよびHBSSからなる溶液を、細胞懸濁物に加えて合計量1mlにした。室温で10分インキュベーションの後、細胞/DNA混合物をエレクトロポレーションキュベット(BioRad製、リッチモンド、カリフォルニア州)に移し、BioRad遺伝子パルサー中で250ボルト、960mFでエレクトロポレーションした。続いてさらに室温で10分インキュベーションし、標準L1−2成長培地(RMPI 1640、10% Hyclone ウシ胎児血清、50U/ml ペニシリン/ストレプトマイシン(Styreptomycin)(Gibco製)および0.29mg/ml Lグルタミン(Gibco製)で細胞を25mlに希釈し、そして37℃のインキュベーターに戻した。48時間後、細胞を遠心分離によりペレットにし、0.8mg/mlでG418(ジェネティシン;Gibco製)を補った50mlのL1−2培地に再懸濁した。細胞懸濁物の希釈物を96−ウェルマイクロタイタープレートにプレートし、単一コロニーを成長させ、MAdCAM−1の発現を分析した。
MAdCAM−1を発現するL1−2細胞クローン体は、TK1細胞への付着により検出できた。L1−2(非トランスフェクション細胞)およびTK1細胞は両方、単一細胞懸濁物として成長する。MAdCAM−1の表面発現は、TK1細胞上に発現したα4β7との相互作用の効能により接着を媒介する能力によって検出することができる。この相互作用の特異性を、抗β7 MAb FIB 504を用いたTK1細胞の前処理による阻害によりさらに立証した。
アカゲザルまたはヒトいずれかのMAdCAM−1クローン体で安定にトランスフェクションしたCHO細胞(中国ハムスター卵巣細胞;アメリカン タイプ カルチャー コレクション(ロックビル,メリーランド州))を、以下の例外と共に、L1−2細胞に対して前記したようなエレクトロポレーションにより調整した。CHO細胞成長用培地はデオキシリボヌクレオシド(Gibco製)および10%ウシ胎児血清(Gibco製)および50U/ml ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco製)および0.29mg/ml Lグルタミン(Gibco製)を含むα−MEMであった。選択培地は、0.55mg/ml G418(Gibco製)を含む同じ培地からなっていた。単一クローンを成長させ、細胞をアッセイの1日前に24ウェルプレートにウェル当たり50,000細胞でプレートした点を除き、前記(一過性について)の機能的接着アッセイを用いてRPMI 8866細胞のα4β7依存結合を示す能力について分析した。この基準を用いて、CHO HuMAd 4と呼ぶ株を設立した。
接着を阻害する力のあるモノクローナル抗体
ヒトMAdCAM−1に対するモノクローナル抗体を、C57BL/6マウスをL1−2 MAdCAM−1トランスフェクタントで免疫して作製した。マウスをHBSSに再懸濁した1000万個の細胞で、2週間間隔で3回腹腔内に免役し、そして最後の4回目の免疫(HBSSに再懸濁した1000万個の細胞)を静脈内に注射した。最初の免疫を、アカゲザルMAdCAM−1を発現する2つのクローン体(L1−2細胞クローン体23およびクローン体19)の混合物で行った。残りの投与は、ヒトMAdCAM−1を発現する単一のL1−2クローン体(L1−2クローン体HuMAD4/17)で行った。
約5,000個のハイブリドーマを生じる好結果の融合を行った。最後の静脈内注射の4日後、脾臓を除き、単一細胞懸濁物を無血清DMEM培地中で調整した。ガルフレ(Galfre)ら(ガルフレ(Galfre,G.),ら,Nature,299:550−552(1997))の方法にしたがって、これらの細胞を融合パートナーSP2/0と融合させた。20mlの脾臓細胞および20mlのSP2/0細胞を組み合わせて、800gで5分間スピンして、培地を吸引により除いた。37℃にプレウォームした50%ポリエチレングリコール1500(PEG1500)(ベーリンガーマンハイム製、インディアナポリス、インディア州)溶液を細胞ペレットに2分間かけて加え、続いて10mlのDMEM培地を3分間かけて加えた。細胞懸濁物を600gで3分間スピンし、上清を除いた。ペレットを、20%ウシ胎児血清、2mM L−グルタミン、100U/ml ペニシリン、100μg/ml ストレプトマイシン硫酸塩、およびHAT選択培地(Sigma製、セントルイス、ミズーリ州)を含むDMEM培地に穏やかに再懸濁した。細胞を、10個の96ウェル平底マイクロタイタープレートに200μl/ウェルでプレートした。
融合の10日後、蛍光染色により、ウェル由来の上清をCHOヒトMAdCAM−1トランスフェクタント(CHO HuMAd 4細胞)に対する反応性についてスクリーンした。試料あたり500,000個の細胞の染色を、50μlの各上清および50μlの細胞を用いて、本質的に既述のように行った(ハーロー(E.Harlow)およびレーン(D.Lane),1989,Antibodies:A Laboratory Manual,コールドスプリングハーバー研究所,コールドスプリングハーバー,ニューヨーク州)。二次抗体は、1:200に希釈したFITC−標識抗ネズミIgG(H+L)(Jackson Labs製)であった。強い反応性は、非トランスフェクションCHO細胞と比較して、蛍光の2〜3対数の増加として判断した。
48個の抗体上清を、CHO HuMAd 4細胞に対する強い反応性について選択した。それから、これらの抗体上清を、CHO HuMAd 4細胞のRPMI 8866細胞への接着をブロックするそれらの能力についてスクリーンした。特異的抗ヒトMAdCAM−1 MAbにより影響されないので、対照として、Ramos細胞がVCAM−1トランスフェクタントと結合するのを阻害する上清の能力を試験した。ブロッキング抗ヒトMAdCAM−1モノクローナル抗体を同定するために、以下のアッセイを行った。対照トランスフェクタントを供給するために、CHO/P細胞を前記のようにpCD3VCAMでトランスフェクションし、そしてトランスフェクションの48時間後アッセイした。接着阻害アッセイの48時間前に、ウェル当たり40,000個のVCAM−1一過性トランスフェクタント細胞を24ウェルプレートにプレートした。アッセイの24時間前に、ウェル当たり50,000個のCHOHuMAd 4トランスフェクタント細胞を、24ウェルプレートにプレートした。アッセイの日に、各抗ヒトMAdCAM−1上清(0.25ml)をCHOHuMAD 4トランスフェクタントまたはVCAM−1トランスフェクタントのいずれかを含むウェルに加え、そして混合物を4℃で15分間プレインキュベートした。(1)RPMI 8866細胞をMAdCAM−1トランスフェクタントと共に、または(2)Ramos細胞(α4β1を発現するヒトB細胞株)をVCAM−1トランスフェクタントと共に用いて、接着アッセイを行った。
並行して、細胞(RPMI 8866またはRamos)を2×106/mlの密度で、2%子ウシ血清、20mM HEPES pH7.3、2mM Mg++および2mM Ca++を補ったHBSS(Ca++またはMg++なし)からなるアッセイ緩衝液に再懸濁した。抗体と共にトランスフェクタントをプレインキュベーションした後、0.25mlのRPMI 8866またはRamos細胞懸濁物(5×105細胞)を各ウェルに加え、そしてロッキングプラットフォーム上でのインキュベーションを4℃でさらに30分間続けた。前記のようにウェルを洗浄し、固定し、そして試験して、結合の阻害を評価した。
試験した48個のハイブリドーマ上清中11個が、RPMI 8866細胞のMAdCAM−1を発現しているトランスフェクタントへの接着を阻害し、実質的なブロッキング活性を示した。Ramos細胞のVCAM−1を発現しているトランスフェクタントへの接着は影響されず、α4β7媒介相互作用の選択的阻害を示した。選択したブロッキングハイブリドーマを、限定希釈によりサブクローン化した。
結果
アカゲザルまたはヒトMAdCAM−1を発現する安定細胞株を、ネズミ前Bリンパ腫L1−2中に作製した。これらの細胞を用いて、C57BL/6マウスを免疫し、ハイブリドーマを調製した。ヒトMAdCAM−1を発現するCHO HuMAd 4トランスフェクタントの免疫蛍光染色により、生じた融合をスクリーンした。約1,000個のウェルのスクリーニングにより、CHO HuMAd 4トランスフェクタントに対して強い反応性を示す48個の上清が製造されたが、しかるに非トランスフェクションCHO細胞は陰性であった。続いて、RPMI 8866細胞のヒトMAdCAM−1トランスフェクタントへの接着を特異的にブロックするそれらの能力について、これらの上清を試験した。
試験した48個のハイブリドーマ上清中11個が、RPMI 8866細胞のMAdCAM−1への接着を特異的に阻害することができたが、しかるにRamos細胞(α4β1を発現する)のVCAM−1トランスフェクタントへの接着は、同じ上清により影響されなかった。これらのハイブリドーマを、10G4、8C1、10G3、9G12、9E4、7H12、10F2、10A6、1E5、2F5、7G11と名付けた。
実施例3.ヒトMAdCAM−1−IgGキメラの設計および機能的分析
MAdCAM−IgGキメラの構築
pcD3huMAd4(実施例1)と呼ばれる、pCDNA3(Invitrogen製、サンディエゴ、カリフォルニア州)中のヒトMAdCAM−1クローン体4 cDNAを、ヒトMAdCAM−1の細胞外領域のPCR増幅のための鋳型として用いて、ヒトIgGlの定常領域と融合させた。ヒトMAdCAM−1コード配列(ATGコドン、太字)の5’末端を含む、プライマーHUMADIG4/2(配列番号:11)を合成した:
この5’プライマーをHUMADIG2(配列番号:12)と名付けた3’プライマーと共に用いて、ヒトMAdCAM−1の2つのアミノ末端免疫グロブリン様(Ig)ドメインをコードする領域を増幅した。プライマーHUMADIG2(配列番号:12)は、配列番号:1のコード鎖ヌクレオチド667〜683に相補的な部分を含み、以下の配列を有している:
あるいは、5’プライマーを3’プライマーHUMADIG3と共に用いて、ヒトMAdCAM−1の全細胞外ドメインをコードする領域を増幅した(クローン体4)。3’プライマーHUMADIG2(配列番号:12)は、配列番号:1のコード鎖ヌクレオチド992〜1010に相補的な部分を含み、以下の配列を有している:
プライマーは、示されているように、5’HindIII部位または3’SpeI部位を有するように設計された。Invitrogen(サンディエゴ、カリフォルニア州)製のPCR最適化キット(optimizer kit)を用い、これらのプライマーを用いて、2つの異なるMAdCAM断片をPCR増幅した。PCR産物を酵素HindIIIおよびSpeIで消化して、クローニング用末端を生じさせた。続いて、該産物をGlassmax DNA単離システム(isolation system)(Gibco製、ベテスダ、メリーランド州)を用いて、ゲル電気泳動により精製した。
CH1、H(ヒンジ)、CH2およびCH3領域を含む約1kbの断片を、SpeIおよびEcoRIでの消化により、Fc変異ヒト定常領域を持つヒト免疫グロブリンγ1重鎖をコードする構築物から切り出した。この構築物によりコードされる抗体を、これより後イソタイプ適合の無関係な対照として用いた。この構築物中のヒト定常領域は、シムズ(Sims,M.J.)ら(J.Immunol.,151:2296−2308(1993))およびウォルドマン(Waldmann)ら(国際公開第93/02191号パンフレット,2月4日,1993(23頁))により述べられているように、最初CAMPATH−1H重鎖のPCR増幅により得られ(レイクマン(Reichmann,L.)ら,Nature,322:323−327(1988))、この説明は各々全体において参照により本明細書に取り込まれる。この構築物の定常領域の変異(Leu234→Ala234およびGly237→Ala237)はヒトFcγレセプターとの結合を減少するように設計され、オリゴヌクレオチド定方向突然変異誘発により製造された。このように、製造されたMAdCAM−Ig融合は、Leu234→Ala234およびGly237→Ala237変異の導入を除き、シムズ(Sims)ら(J.Immunol.,151:2296−2308(1993))およびウォルドマン(Waldmann)ら(国際公開第93/02191号パンフレット)により述べられたSpeI−EcoRI定常領域断片を含む。
Fc変異IgG1定常領域をコードする1kbのSpeI−EcoRI断片をGlassmax DNA単離システム(isolation system)(Gibco製、ベテスダ、メリーランド州)を用いて、ゲル電気泳動により精製した。(a)2つのMAdCAM−1のN末端Igドメインまたは(b)全細胞外ドメインのいずれかを含むHindIII−SpeI断片であるこの定常領域断片を、3ウェイライゲーションにより、HindIIIおよびEcoRIで消化したベクターpEE12(ステファンス(Stephens,P.L.)およびコケット(M.L.Cockett),Nucl.Acids Res.,17:7110(1989)ならびにベービントン(Bebbington,C.R.)およびヘンシェル(C.C.G.Hentschel),1987,The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells,(Academic Press,ニューヨーク州))にライゲーションした。微生物株DH10Bの形質転換体を得た。コロニーを成長させ、ミニプラスミドプレップを制限地図を作製して分析した。Fc変異IgG1定常領域に融合させたMAdCAM−1の全細胞外ドメイン(構築物HuMAdIg21)または2つのN末端Igドメイン(構築物HuMAdIg31またはHuMAdIg38)のいずれかからなる融合蛋白質をコードする3つの構築物を、全MAdCAM−1部分を通じて配列決定し、セグメントの正しい融合およびPCR導入変異の非存在を確認した。
最初の試験のために、標準条件(960μF、250V)下でBiorad Gene Pulserでのエレクトロポレーションを用い、各構築物を1mlのRPMI緩衝液(無血清)および25μgのプラスミド中の単層の5×107個のCOS細胞上で一過性トランスフェクションした。トランスフェクションの72〜96時間後、上清を集め、0.45μフィルターに通し、0.05%アジ化ナトリウムの存在下4℃で保存した。キメラの製造は、抗ヒトIgG1抗体を捕捉抗体として、およびアルカリンフォスファターゼに結合した同じ抗体を2次抗体として用い、サンドイッチELISAにより確認した。無関係な対照抗体(同一の定常領域を有する)を標準として用いた。また、キメラは抗ヒトMAdCAM−1モノクローナル抗体を用いたウェスタンブロットによっても分析し、約200kdに泳動することが分かり、ホモ二量体の大きさと一致していた。
溶解性ヒトMAdCAM−Igキメラは特異的にα4β7陽性細胞に結合する
以前にMn++の存在下でのみMAdCAM−1を結合することが示されたT細胞株HuT 78を染色する能力について、4つの異なるトランスフェクション由来の上清をアッセイした。それに応じて、このアッセイに用いた各溶液は2mM Mn++を含んでいた。HuT 78細胞(ヒトT細胞リンパ腫株;(アメリカン タイプ カルチャー コレクション、寄託番号ATCC TIB 161)は、α4β7を持つ細胞である。キメラの結合特異性を試験するために、HuT 78細胞を培地単独(2% FCSを含むRPMI 1640)、または培地および10μg/mlの抗β7抗体FIB 504のいずれかと共にプレインキュベートした。約100,000個の細胞を氷上で15分間インキュベートし、それから2% FCS/2mM Ca++/2mM Mn++を含むHBSSで洗浄した。それから、細胞を氷上で20分間培地と共にもう一度、または4つの独立したトランスフェクションの1つ由来の上清と共に(2つはMAdCAM−1の全細胞外ドメインを含むキメラ(クローン体21)と共に、そして2つは2つのN末端Igドメインを含む切断型のMAdCAM(クローン体38)と共に)20分間インキュベーションした。洗浄後、それから細胞をフィコエリトリン(phycoerythrin)と結合させた抗ヒトIgG抗体と共にインキュベーションし、バックグラウンド以上の染色をフローサイトメトリー(FACScan)により評価した。キメラ上清と共にインキュベーションした細胞しかバックグラウンド以上に染色されなかったが、しかるにβ7 MAbとのプレインキュベーションはこの染色をバックグラウンドレベルまで減少され、キメラのα4β7インテグリンとの特異的相互作用を示した(図17A〜17E)。
ヒトMAdCAM−Igキメラを分泌する永久NSO細胞株をエレクトロポレーションによるトランスフェクション後、既述(コケット(Cockett,M.L.),ら,Bio/Technology,8:662−667(1990))のように無グルタミン培地中での成長により選択した。クローン体株を攪拌培養での成長に採用した。これらのクローン体株の3つ由来の上清(試料B〜D)、および部分精製キメラ(クローン体21、プロテインAとの結合により精製した、試料A)を、B細胞株RPMI 8866の接着を維持する能力について試験した。簡単に言えば、NEN maxisorbプレートを100μl/ウェルの炭酸緩衝液、pH9.5中の20μg/mlのプロテインAと共に4℃で一晩インキュベーションした。それから、プレートをRPMI 1640培地(無血清)で2度洗浄した。100μlのキメラ(またはRPMIの一連の希釈物)をウェルに37℃で2時間結合させ、それから1度洗浄した。それから、ウェルをFCSを用いて1時間37℃でブロックし、1度洗浄し、そしてそれから、対照として抗ヒトVCAM−1 MAb(2G7)または抗ヒトMAdCAM−1 MAb 10G3(実施例2)のいずれかを含む組織培養上清と共にプレインキュベーションした。2G7および10G3 MAbを細胞の添加前に除いた。RPMI 8866細胞をBCECF−AM染色(BCECF−AM;2’,7’−ビス−(2−カルボキシエチル)−5−(および−6)−カルボキシフルオレセイン(carboxyflourescein),アセトキシメチルエステル;Molecular Probes製)とのプレインキュベーションにより蛍光標識し、100μlの細胞を各ウェルに加え(最終濃度105細胞/ウェル)、そしてロータリーシェーカーで30分間室温でインキュベーションした。RPMI 8866細胞の固定キメラへの結合を、Fluorescence Concentration Analyzer(IDEXX)を用いて蛍光値を読むことにより評価した。抗ヒトMAdCAM−1 MAbのみが細胞のMAdCAM−Igキメラとの結合をブロックできたので、特異的結合は立証された(表1)。
これらおよび他のこのようなキメラ融合蛋白質を、剤(例えば、低分子)のキメラとのα4β7の結合をブロックする能力を評価するために用いて、α4β7−MAdCAM相互作用の阻害剤を同定することができる。さらに、キメラ融合蛋白質は溶液中のα4β7陽性リンパ球と結合することができるので、それらは炎症部位へのin vivoリンパ球補充の候補阻害剤を供給する。
実施例4.結腸へのリンパ球補充の阻害
A.マウスにおける結腸炎のDSS−誘導
既述(Lab.Invest.69:238−249,1993)のように、BALB/cマウスをそれらの飲み水中の5%デキストランナトリウム硫酸塩(DSS)溶液に10日の期間の間接触させた。この期間の間に、マウスは軟便および観血性下痢を含む結腸炎の臨床的症状を発達させた。ヒトにおける潰瘍結腸炎に似た、多病巣性上皮傷害および潰瘍は、作用させたマウス由来の結腸粘膜の組織学的実験における証拠である。さらに、作用させたマウスは10日目までに最初の体重の20〜30%を失った。
β7およびMAdCAM相互作用の抗体妨害
結腸へのリンパ球の補充をブロックするときにおけるβ7−特異的抗体の効率を決定するために、既に特徴付けられて既述されているように(ベルリン(Berlin,C.),ら,Cell 74:185−195,1993;ミシェ(Michie,S.A.),ら,Am.J.Pathol.143:1688−1698,1993;ハマン(Hamann,A.),ら,J.Immunol.152:3282−3293,1994)、生理食塩水中のFIB21またはFIB30のいずれかからなる100μgのβ7に対するモノクローナル抗体、もしくは同量のイソタイプ適合対照ラットモノクローナル抗体(アンドリュー(Andrew)ら,前述)を、DSS処理の10日の経過期間にわたって、BALB/cマウスに毎日腹膜内(i.p.)に注射した。
評価方法
2つの方法を用いて、結腸炎マウスにおける白血球浸潤および粘膜傷害を阻害する抗体療法の効率を評価した。最初の方法では、上皮傷害および白血球細胞質浸潤の程度を評価するために評点システムを用いて、2人の知らされていない観察者により組織学的に処理を判断した(表2)。この評価のために、結腸組織を最初に10%中性緩衝化ホルマリン中で固定し、脱水し、パラフィン中に包埋し、切片にし、そして実験の前に切片をヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。
β7インテグリンを発現するリンパ球およびMAdCAMを発現する粘膜細静脈の検出および半定量のために免疫組織化学を用いて、さらなる組織学的評価を行なった。既述(リングラー(Ringler,D.J,),ら,Am.J.Pathol.,134:373−383(1989))のように、結腸組織をまずOCT化合物中でスナップ凍結し、凍結中に切片にし、そして切片を続いてアセトン中で10分間4℃で固定した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄後、非特異的抗体結合部位をPBSで希釈した10%正常ウサギ血清で10分間ブロックし、続いて、連続して、30分間室温(RT)で、PBSで20μg/mlにしたFIB21抗体、ビオチニル化ウサギ抗ラットポリクローナル抗体、アビジン−ペルオキシダーゼ複合体、ならびに最後にTris緩衝液で希釈したクロモゲン、ジアミノベンジジンおよび過酸化水素で洗浄した。
次の方法では、同系のドナーマウス由来の放射腺標識腸間膜リンパ節リンパ球を用いて、リンパ球の結腸への補充を定量的に評価した。BALB/cマウスを5% DSSに9(10の代わり)日間置いて、8日目に、マウスに100μgの生理食塩水中のFIB21(抗β7)、MECA−367(抗MAdCAM)、両者の混合物、またはイソタイプ適合対照モノクローナル抗体をi.p.注射したことを除き、動物実験の実験計画は、前記のものと同様であった。9日目に、腸間膜リンパ節細胞をドナー同系BALB/cマウスから単離し、51Crで標識し、そして5.0×106細胞/マウスを30分間37℃で、生理食塩水中の500μgの対照抗体、250μgのMECA−367、500μgのFIB21、または両者(合計量は750μgである)と共にインキュベーションした。それから、標識細胞および抗体をDSS−処理受容マウスに静脈(i.v.)注射した。注射の1時間後、全長の結腸を全実験動物から集め、そしてγ−放射をγ−カウンターを用いて測定した。
データ分析
動物の各グループに対して得た平均値間の違いを、1対のT検定を用いて、統計上の有為さについて評価した。P<0.05の時に、平均間の違いは有為であると見なした。
結果
組織学的に、粘膜に対する浸潤および上皮傷害は、下行結腸、直腸および盲腸において最も激しかった。免疫組織化学による結腸の凍結組織切片の分析により、最も有為なβ7+リンパ球の補充が右結腸にあることが示された。さらに、粘膜血管アドレシン(addressin)、MAdCAM−1の発現のレベルは、DSS処理初期(3日)の腸粘膜の血管においては低レベルでしか発現しないが、DSS処理の9日後、劇的に増加することが分かった。このことは、β7およびMAdCAM−1の相互作用がDSS誘導結腸炎の間の結腸粘膜における炎症過程に関連しているという結論を支持している。
DSSに10日間曝したマウスおよびβ7特異的抗体を用いた日々の治療の組織学的評価は、等量の対照抗体を受けた動物と比較して、白血球補充(FIB30に対してP<0.01およびFIB21に対してP<0.001)ならびに上皮傷害(P<0.05)の実質的な減少が右(上行)結腸で起きたことを示した(図7Aおよび7B)。さらに、これらの動物由来の凍結切片の免疫組織化学を用いた分析により、DSS処理の間に結腸の他の部分ではなく右結腸に補充したβ7+細胞の数が減少したことが示された。
それから、同系ドナー由来の放射線標識腸間膜リンパ球を用いて、炎症を起こした結腸へのリンパ球の補充を定量的に評価した。DSS処理レセプターにおけるこれらの細胞の注射の1時間後、β7特異的抗体またはMAdCAM特異的抗体のいずれかで処理したマウスの結腸に補充した51Cr標識細胞の数に減少の傾向があったが、しかし同位体適合対照抗体で処理したマウスにおいてはなかった(図8)。
B.重症複合免疫不全(scid)マウスにおける結腸炎の誘導および結腸へのリンパ小節細胞の補充の阻害
CD45RBhiCD4+T細胞で再構築された重症複合免疫不全(scid)マウスは、結腸炎および激るいそう症候群(a severe wasting syndrome)を発現する。CD45RBhiCD4+T細胞で再構築したscidマウスにおいて発現する結腸炎は、scidマウスにおいて誘導された結腸炎が、病原性でないが、病気の誘導にCD4+T細胞の存在を明瞭に必要とする点で、大部分の他のIBDのネズミ科モデルと異なる(ポウリー(Powrie),Immunity,3:171(1995)、その教義はそのまま参照することで、本明細書中に組み込まれている)。
モリゼイら(Morrissey et al.)およびポウリーら(Powrie et al.)の改変法(Morrisey et al.,J.Exp.Med.,178:237(1993);Powrie et al.,Int.Imm.,5:1461(1993),その教義はそのまま参照することで、本明細書中に組み込まれている)をBALB/c脾臓から単離された、顆粒白血球、CD8+T細胞、B220+細胞、1−A+細胞およびMAC−1+マクロファージを消耗させることによりCD4+T細胞を増やすために用いた。CD45RBhi細胞をセルソーターにより、抗CD45RBで染色された最も明るい40〜45%のCD4+細胞を捨てて、選別した。1×106個のCD45RBhiまたはCD45RBloT細胞を尾静脈内に静脈(i.v.)注射することにより、感受容scidマウスを再構築した。4匹のマウスをCD45RBhiT細胞で再構築し、4匹のマウスをCD45RBloT細胞で再構築した。
再構築されたマウスを、体重変化および糞潜在血液の発生について週毎に測定した。一般的に、再構築後4〜6週間以内に、同数のCD45RBloT細胞で再構築した対照scidマウスに関してCD45RBhiT細胞で再構築したマウスの体重の違いが、統計的に有為になった(図18)。
2、3および5×104個の細胞を用い、このモデル内に結腸炎を誘導することができる。一般的に1〜5×105個が用いられる。病気の兆候の速度論は、所定の再構築についてマウス間で同一ではないが、結腸炎は、、同様に激しく、一度体重が開始時の75〜85%に減少するほどである。組織構造観察は、他者の報告と一致しており、このモデルにおける結腸炎が、粘膜および粘膜下組織におけるCD4+T細胞の大規模な浸潤、上皮未成熟、潰瘍、陰窩過形成、杯状細胞の損失および陰窩膿瘍(crypt absesses)により特徴づけられることを示す。また、クローン病と同様に、scidモデルにおけるIBDは、深いフィステルを有する粘膜経壁の浸潤により特徴づけられる。結腸炎の他のネズミ科モデルと異なり、病気の激しさは、遠位の結腸のみに限定されず、横行および近位の結腸においても同じ激しさがある。
β7の抗体妨害およびMAdCAM相互作用
抗ネズミMAdCAM−1抗体(MAb MECA−367;アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)(ロックビレ、MD)、寄託番号HB 9478;ストリーターら(Streeter,P.R.,et al.),Nature,331:41(1988);また、ブッチャー(Butcher)に与えられた米国特許第5,403,919号明細書を参照せよ)および抗ネズミβ7抗体(MAb FIB 504;アンドリューら(Andrew,D.P.,et al.),J.Immunol.,153:3847(1994))をこれらの研究に使用した。
scidマウスを2×105個のCD45RBhiまたはCD45RBloCD4+T細胞で再構築した。再構築5ヶ月後、200μg/日のラットIgG2a対照抗体または100μg/日のFIB−504(ネズミβ7特異的)+100μg/日のMECA−367(ネズミMAdCAM特異的)の混合物をマウスに14日の間注射した。抗体はPBS中においた。各処理群には5匹のマウスがあった。14日後、111In−オキシンで標識した5×106個の腸間膜リンパ小節細胞(BALB/c)をマウスに静脈注射した。標識細胞の養子移入後24時間で、組織を採取し、放射活性について評価した。細胞の非特異的トラッピングにより与えられる、組織における放射活性のバックグラウンドのレベルを2%PBS緩衝化ホルムアルデヒドで固定した5×106個の標識細胞の注射により評価した。結果を脾臓の%カウント/分(CPM)で標準化し、バックグラウンドを補正した結腸におけるCPMとして表した。
このCD45RBhiCD4+T細胞で再構築されたscidマウスの大腸への浸潤の定量的な評価は、同数のCD45RBloCD4+T細胞で再構築されたscidレセプターに見られるレベルと比べ10〜100倍の局在化の増加を表した。この結腸における標識細胞の増加された蓄積を、抗β7と抗MAdCAMモノクローナル抗体との組合せを用いて2週間処理することにより、50〜75%阻害した(図19)。
他の実験において、scidマウスを5×104個のCD45RBhiまたはCD45RBloCD4+T細胞で再構築した。再構築の際に、マウスを(a)500μgのFIB504(β7特異的)(6匹のマウス);(b)500μgのMECA−367(MAdCAM特異的)(3匹のマウス);(c)1mgのイソタイプ適合対照抗体(7匹のマウス);または、(d)1mgのFIB504+MECA−367(各500μg)(5匹のマウス)のいずれかで処理した。再構築に続いて、抗体を1週間の間隔で投与した:(a)250μgのFIB504;(b)250μgのMECA−367;(c)500μgのイソタイプ適合対照;または(d)500μgのFIB504+MECA−367(各250μg)。
処理の4ヶ月後、マウスに5×106個の111In標識した腸間膜リンパ小節細胞(BALB/c)を注射し、放射活性のレベルを測定することにより結腸への補充を評価した。結果を図19で述べるように計算した。再構築の時間から始めて、FIB504およびMECA−367を単独でまたは組み合わせて用いて4ヶ月間、scidマウスを処理することで、結腸へのリンパ球の増加させた補充を100%まで阻害した(図20)。
scidマウスを、2.0×105〜4.0×105個のCD45RBhiまたはCD45RBloCD4+T細胞で再構築した。4ヶ月後、マウスをFIB504(β7特異的)+MECA−367(MAdCAM特異的)(全200μg/日について100μgの各MAb/日)またはイソタイプ適合対照抗体(200μg/日)の組合せを用いて、14日間処理した。抗体をPBS中においた。各実験群は4匹のマウスで構成した。右および左結腸の凍結断片を、マウスCD4に特異的なラットモノクローナル抗体で染色し、ファストレッド(Fast Red)またはAEC(3−アミノ−9−エチルカルバゾール)クロモーゲンのいずれかを用いて発現させた。各マウス由来の右結腸および左結腸の1横断面を、レイカ クアンティメット500イメージ アナライザー(a Leica Quantimet 500 Image analyzer)を用いてCD4のポジティブ染色について分析した。10倍対物レンズを用いてその全体おける各部を調べた。有為さをt検定を用いて決定した。データは平均陽性数/組織領域±1標準偏差で表す。
細胞系譜のマーカーおよび分化状態に対して特異的な抗体のパネルを用いる免疫組織化学による組織構造評価は、CD45RBhiT細胞で再構築されたscidマウスの結腸に浸潤している細胞が、実質上全てCD4+T細胞であることを示した。CD8+T細胞またはB220+B細胞を、使用条件下では単離することができなかった。さらに、これらのマウスをβ7およびMAdCAM特異的モノクローナル抗体の組合せで処理することにより、対照に関して上行または下行結腸中のCD4+T細胞数を有為に減少させた(図21)。腸間膜リンパ小節細胞の約95%がリンパ球であるので、これらの結果は、リンパ球上のα4β7とMAdCAMとの相互作用が結腸中の炎症部へのリンパ球の補充に重要であり、この相互作用をブロックする薬剤が炎症を減少することができることを示している。
実施例5 吸収不良性腸炎をもつ一般的なマーモセット(カリスリックス ジャカハス(Callithrix jacchus))における柔突起変化の分析
モデルの解説
一般的なマーモセット(カリスリックス ジャカハス)は、新規の世界的な非ヒト霊長類であり、それらはニューイングランド地方霊長類研究センター(NERPRC)での閉鎖条件下において、ステロイド非反応性、体重減少に特徴づけられる自発性吸収不良症候群、下痢、および吸収能の低下と一致した小腸粘膜変化を発現している。これらの組織構造の変化には小腸柔突起の萎縮および融合およびヒトにおけるセリアック症(非熱帯性スプルー)と同様、単核白血球の基底膜内への浸潤が含まれる。NERPRCでの病理学公記録保管文書から回顧した分析により、80%以上の一般的なマーモセットが、様々な程度で、吸収不良性腸炎を持つことが死後の実験時に示された。
抗体治療プロトコール
NERPRCにおいて、広い範囲のコロニーから成体の一般的なマーモセットを、研究用に選択した。全動物における基礎の研究には、身体検査、全血球数(CBC)、血液化学プロフィール、血清B17、c−反応性蛋白質および腸壁切開による全厚み空腸生検を含まれた。腹部手術からの回復に続いて、動物を、2mg/kg/日のATC−1モノクローナル抗体、α4β7の配座エピトープに対するブロッキングモノクローナル抗体で14日間処理した(シュバイホッファーら(Schweighoffer,T.,et al.),J.Immunol.151:717−729,1993)。以前の研究により、この抗体はカリスリックス(Callithrix)α4β7と交差反応することが示された。抗体治療前に行われた全ての評価を第10日目と第14日目の抗体治療の間で繰り返した。
空腸生検の分析
各マーモセット由来の全厚み空腸生検を2人の無関係な病理学者が組織学的に評価し、柔突起構造を次の格付け基準に従って評価した。
柔突起萎縮
0−正常の粘膜の厚さおよび柔突起の高さ
1−穏やかな萎縮;柔突起の軽微な短化;正常の約75%の高さ
2−中程度の萎縮;正常の高さの約33〜50%の柔突起
3−激しい萎縮;短い(普通の33%未満)または観察できる柔突起がない
柔突起融合
0−正常;融合なし
1−試料中1〜2個の柔突起が融合
2−試料中1〜2から50%の間の柔突起が融合
3−試料中50%より多い柔突起が融合
データ分析
各群の動物で得られる平均値間の違いを組み合わせt検定を用いて統計的な有為さについて評価した。Pが0.05未満のとき平均値間の違いを有意であるとした。
結果
ATC−1モノクローナル抗体を用いた抗体治療の前後における柔突起の融合および萎縮についての平均値を図9および10にそれぞれ示す。明らかに、柔突起萎縮(P<0.01)のほとんど完全な解消およびATC−1抗体を用いた2週間にわたる治療後に柔突起融合改善の傾向があった。ATC−1により認識されるもの以外のエピトープに対して方向づけられた様々なモノクローナル抗体で処理された他の動物は、柔突起の融合および萎縮値の減少に効果がないので、効果は外来免疫グロブリンにさらすという非特異的な効果に比べ二次的なものではなかった。
実施例6 コットントップタマリン(the Cotton Top Tamarin)における結腸炎の消散
モデルの解説
コットントップタマリン(CTT)(サグイナス オエディプス(Saguinus oedipus))は、ヒトにおける潰瘍化結腸炎に臨床的および組織形態的に似た、自発的な、そしてしばしば慢性的な結腸炎を発生する新規の世界的な非ヒト霊長類である(マダラら(Madara,J.L.,et al.),Gastroenterology,88:13−19(1985))。
免疫治療、臨床評価および粘膜生検
臨床評価、結腸粘膜生検および結腸炎CTTのATC−1免疫治療を含む実験プロトコールを始めた(図13)。ATC−1はヒトα4β7と反応するネズミIgG1モノクローナル抗体である(シュバイホッファーら(Schweighoffer,T.,et al.),J.Immunol.,151:717−729(1993);ラザロビッツら(Lazarovits,A.I.,et al.),J.Immunol.,133:1857−1862(1984);アールら(Erle,D.J.,et al.),J.Immunol.,153.517−528(1994))。作用させた動物由来の結腸炎粘膜のACT−1抗体で免疫組織学的染色することによって評価したところ、ATC−1がタマリン中で交差反応することがわかった。これらの初期の試験的研究により、ヒト結腸炎粘膜と同様、作用させた動物由来の結腸の基底膜内にある単核細胞のうちの40〜80%がα4β7+であることが示された。また、CTT末梢血リンパ球(PBL)についてフローサイトメトリーを用いたところ、ATC−1がCTT由来のα4β7と交差反応することがわかった。
下痢および体重減少の臨床診察に基づき、マサチューセッツ、ソウボロスにあるニューイングランド地方霊長類研究センターにおいて広範囲のコロニーから慢性結腸炎をもつCTTを選んだ。結腸炎の存在を確認するため(2または3の組織学的炎症活性値で規定される)、臨床的るいそうおよび下痢を有すると記録されたコロニーの動物を、抗体免疫治療の実験的評価に先立って多くの機会に、結腸粘膜生検試料の通常の組織学的評価により結腸炎症活性について評価した(図13)。小児科ファイバーオプティクス内視鏡(a pediatric fiberoptic endoscope)を用いて、肛門から2〜3cmにある末端下行結腸由来の粘膜試料試験により、少なくとも2度の結腸炎炎症活性について、慢性的な結腸炎CTTを予備選択した。炎症活性値は、基底膜、陰窩管腔、陰窩上皮および表皮内の好中球の相対数に基づいた。特に、急性および慢性炎症活性の組織病理学的な評価系を用いた(マダラら(Madara,J.L.,et al.),Gastroenterology,88:13−19(1985)により述べられている)。全生検試料について評価し、普通の粘膜を0、最も激しく炎症をおこした粘膜を3で表わすことで4群に選別した。0および1の値は、前兆となる結腸炎を表わさず、一方2〜3の値は、中程度から激しい結腸炎活性を表わす。研究用に選択された動物には、(1)一番目の生検試料において慢性の結腸炎を思わせるような、表面および陰窩上皮の中程度(階級2)または激しい(階級3)構造変化、(2)免疫治療前に3〜7日ばらばらに少なくとも2度生検試料において中程度(階級2)または激しい(階級3)炎症活性を有していた。これらの基準を満たす生検試料には陰窩分岐の存在および/または、基底膜および/または上皮区画のいずれにも多型核白血球(PMN)の浸潤を伴う損失という特徴があった。
従って、研究用に選択された動物は、結腸炎炎症活性および最近鎮静した形跡のない慢性の臨床的に関連した結腸炎を繰り返している形跡を有していた。さらに、モノクローナル抗体の投与初日に持続する下痢は、研究に含まれる動物には必須である。結腸炎の確認から5日以内に、動物はATC−1モノクローナル抗体を用いて免疫治療を始めた。
滅菌した発熱原を有しない流動路を用いて中空繊維細胞発酵層中で培養することにより、ATC−1を生産させ、A蛋白質アフィニティークロマトグラフィーにより精製し、インビボ(in vivo)で使用する前に滅菌0.9%NaCl中に希釈した。また、CTTは絶滅に瀕した種であるので、結腸炎CTTに投与する前に抗体の薬物速度論的解析を行なうために、関連した種である一般的なマーモセット(カリスリックス ジャカハス)由来のPBLにおいて、ACT−1がα4β7と交差反応することが示された。研究のこの成分について、始めに静脈に1回注入し、24時間後に次に筋肉内注射した際に、ACT−1は2匹の正常な成体の一般的マーモセットに投与した。これらの動物において2.0mg/kgのATC−1の静脈投与は、1回の筋肉内注射後2〜24時間の間で抗体の継続した吸収を用い、約50時間の半減期と考えられる血清を生産した。この投与形式を用い、抗体の山の血清濃度は、約60μg/mLであり、一方谷の濃度は18.0μg/mL以上であった。有害な臨床効果は、ACT−1を投与されたマーモセットには見られなかった。
これらの観点において、研究要件(n=4;集齢=31齢)を満たすコットントップタマリンの半数に第1日目に2.0mg/kgの投与量でACT−1の丸薬を静脈内(i.v.)に1回投与し、続いて24時間毎に同じ量の筋内(I.M.)注射を7回し、全部で8日間の免疫治療を施された。他の半数の慢性的結腸炎対照動物(n=4;集齢=26齢)には、抗体86D、CTT中で交差反応しない(データを示さず)ヒツジTCRγδに対するネズミモノクローナル抗体を与えた(マッカイら(Mackay,C.R.,et al.),Eur.J.Immunol.,19:1477−1483(1989))。この無関係なイソタイプ適合抗体を生産し、精製し、ACT−1として同一の条件下で投与した。
結腸粘膜生検を再び第一回抗体投与(第0日)の時点、および第5、第10および第20日に採取した。生検を無関係な組織学者が評価した。追加の結腸生検を免疫組織学のために凍結した。組織構造分析について、肛門から2〜3cmで採取した結腸粘膜生検試料を、OCT組成物中で直ぐに急速冷凍し、近接した範囲から採取した複製試料を10%リン酸緩衝ホルマリン中で固定し、普通の組織学的技術により加工し、パラフィン中で包埋して6.0μmの厚さに切り、断片をヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。続いて、ホルマリン固定試料を組織構造について試験した。アセトン固定され、凍結された断片を用い、以前に述べたアビジン−ビオチンペルオキシダーゼ免疫組織化学的技術(レイラーら(Ringler,D.J.,et al.),Clin.Immunol.Immunopathol.,49:349−364(1988))の順に第一抗体を除去することによりインビボで投与されたネズミIgG1を検出した。
動物管理人には、治療方式(ACT−1対イソタイプ適合無関係モノクローナル抗体)について分からないようにし、下痢、半固体または固体のように糞を分類することにより、1日あたりの基準について、各動物における糞の粘稠度を評価した。値は次のように割当てた:0、形のある固体の糞;1、数個の固形物を有する液体状の糞(半固体);2、液体状の糞(下痢)。動物を一日おきに体重測定し、一方、血液を同じ間隔でフローサイトメトリー、血液学、および抗体濃度、抗マウスIgG力価、臨床化学、または急性期蛋白質等のさらなる分析のための血清または血漿の保存用に採取した。
コンピューター補助された形態計測映像分析
定量的な、コンピューター補助された、粘膜生検断片の形態計測分析をレイカ クアンティメット500イメージアナライザーを用いて行なった。最初にアビジン−ビオチンペルオキシダーゼ技術を用いて、以前に述べたように(リングラーら(Ringler,D.J.,et al.),Clin.Immunol.Immunopathol.,49:349−364(1988))、粘膜断片の免疫組織化学的分析を行ない、特異的な白血球細胞型を詳細にした。好中球、β7+細胞および単球/マクロファージ(Mφ)を同定するために、それぞれ一次試薬として順に、ヒツジ抗エラスターゼポリクローナル抗体(バイオデザイン、ケンネブルク、ME)を好中球を同定するために、パラホルムアルデヒド−、アセトン−、またはホルマリンー固定化凍結断片を使用して、FIB21モノクローナル抗体(ラットIgG2a)をβ7鎖を同定するために(アンドリューら(Andrew,D.P.,et al.),J.Immunol.,153:3847−3861(1994))、およびHAM−56モノクローナル抗体(マウスIgM)をマクロファージを同定するために(ダコ株式会社、カーピンテリア、CA)用いた。エラスターゼ抗体を用いて染色された組織断片の試験から、この試薬だけがCTT結腸粘膜中の多型核白血球細胞を認識したことが詳細に記録された。TおよびB細胞を数えるために、それぞれ、第一試薬として順に、ヒトCD3へのウサギポリクローナル抗体(ダコ株式会社、カーピンテリア、CA)、およびL26モノクローナル抗体(マウスIgG2a)(ダコ株式会社、カーピンテリア、CA)を用いて、ホルマリン固定化、パラフィン包埋化組織断片を使用した。第一抗体検出用に、種およびイソタイプ特異的第二試薬を、組織中におけるACT−1または無関係なネズミIgG1抗体の認識を排除するために用いた。免疫組織化学的手段後、各細胞数を2〜4個の任意の粘膜の領域/断片において数えた。細胞を褐色ジアミノベンジジン反応生成物から生じる色波長に基づいて選択したところ、色選択基準は各細胞特異的マーカーについて分析した全断片において同一であった。凍結断片の形態およびβ7+白血球およびマクロファージの高い相関密度のために、これらの細胞型の定量化を、粘膜の免疫反応断片域として推定し、一方、全ての他の白血球細胞を、細胞数/粘膜域として評価した。ある特定の時点における各動物の生検試料由来の値と第0日の同一の動物から得られる値とを比較して得られる値は、処理群内で前処理(第0日)値の平均(±1SEM)%で表した。従って、100%未満の値(下記表3に太字で記載)は、前処理試料と比較して白血球細胞密度の減少を表しており、一方100%を数える値は、粘膜白血球細胞密度の増加を表している。組み合わせt検定を用い、ある特定の時点における細胞密度の平均の未処理値と前処理時の値とを比較することで、有為さを決定した。平均値間の差は、Pが0.05未満の時、有為であると考えた。
血液学およびフローサイトメトリー
α4β7インテグリンを発現するリンパ球を、以前に述べた方法(マッカイら(Mackay,C.R.,et al.)、Eur.J.Immunol.,19:1477−1483(1989))を用い、フローサイトメトリーおよびACT−1モノクローナル抗体により数えた。ACT−1の飽和血清濃度を、注入プロトコールで達成したので、血清中に外来投与されたACT−1を用いて、血液中のα4β7+リンパ球数を数えることができた。簡単には、100μLのEDTAで凝血を阻止させた血液をPBS/10%ウサギ血清/5%ヒトAB血清で20分間4℃で希釈することにより、各血液コレクションにおける各動物由来の全血液を分析した。ブロッキング血清を除去した後、ACT−1で処理された動物の場合には、血球を、直接100μLのフルオレセイン結合したウサギ抗マウスIgG(ダコ株式会社、カーピンテリア、CA)とインキュベートさせるか又は、無関係な抗体または前処理血液試料を与えた動物の場合、続いて二次抗体で10μg/mLになるように血液にACT−1を添加した。各試料について、最小限の10,000個の細胞を分析した。ベーカー5000血液分析機(a Baker 500 hematology analyzer)を用い適切にコットントップタマリン赤血球、白血球および血小板を排除して、普通の血球値および示差解析を行なった。血液分析、およびフローサイトメトリーの結果から、血液のμLあたりのα4β7+リンパ球の絶対数を計算した。
結果/推論
血清濃度
研究の初めの10日間にACT−1および無関係なイソタイプ適合抗体の血清濃度は、一般的に両方とも10μg/mL以上であった。研究2〜10日目に、10μg/mLの濃度で全血液中に用いたビオチン化ACT−1は、ACT−1で処理された動物におけるフローサイトメトリーにより評価される際に、有為な標識末梢リンパ球を欠乏させ、一方、第0日の無関係な抗体で処理された動物において同じ抗体は、ヒトリンパ球におけるACT−1の染色プロフィールと同様に、70〜90%の間の末梢リンパ球プールを認識した。まとめると、これらの結果は、結腸炎CTTにおけるACT−1に関する治療プロトコールが、末梢循環のリンパ球上のα4β7インテグリンの飽和を導くということを示した。
また、結腸炎CTTの結腸粘膜の基底膜内にある、血管外のα4β7+細胞を認識するACT−1の能力を評価した。免疫組織化学的技術を用いて研究動物由来の結腸粘膜生検中のネズミIgG1を検出し、予想されるように、抗体注入前の第0日目からではなく、ACT−1で処理された動物における研究の最初の10日間で、全ての生検時点において、基底膜内にある単核白血球細胞膜について、ACT−1を観察した。標識されていない基底膜細胞を無関係な抗体を投与した動物内で観察した。従って、研究において利用された投与形式は、ACT−1の血清濃度を中和し、付随する血管外の認識し、および結腸炎粘膜内の免疫細胞を標識した。ACT−1抗体は、標的部位、即ち、末梢血液内のリンパ球、および特に結腸炎粘膜内の血管外の区画に位置していた。
臨床効果
4匹の試験動物は全て、前処理および第0日の生検試料の両方において、段階2または3のどちらかの結腸炎炎症活性を維持し、そのために3種の動物を5日までに分離させた。加えて、4匹全ての動物の粘膜構造内の変化は、これら4匹の動物が持続性の結腸炎を有することを証明した。従って、全ての動物は慢性病の病歴をもつことが明らかとなった。
結腸粘膜生検の組織病理学的解析を行った。ACT−1を用いた免疫治療の前および5日後における典型的なCTT(動物Sgo 326−84およびSgo 17−85)からの結果は、結腸炎CTT中の結腸粘膜の顕微鏡的変化に対するACT−1免疫治療の治療効果を説明した。免疫治療前に、上皮区画および陰窩管腔内に化膿した滲出物があり、完全に区別される杯状細胞の喪失で特徴づけられる未成熟上皮および基底膜が単核白血球および化膿した炎症性浸潤により広げられた(Sgo 326−84、筋肉粘膜)。ACT−1免疫治療後、免疫組織化学技術を用いて、基底膜内に単核白血球細胞膜にACT−1を位置づけさせ(Sgo 17−85、筋肉粘膜)、好中球成分の炎症浸潤が解消し、完全に分化した杯状細胞を観察し、そして基底膜は単核白血球または/および好中球により、さらに広げられなかった(Sgo 326−84)。
結腸炎CTTの糞粘稠度に対するACT−1の治療効果は著しかった(図14)。1回目の投与後24時間以内に、下痢が少なくとも半固体糞成分へ改善することが観察され、一方、72時間までに全ての動物において、固体糞への完全な解消が全ての動物において生じた。対照動物は改善せず、全研究期間中、下痢であることが観察され、加えて、この動物群に対する前選択の基準が、効果的に自然な鎮静をもつものを除去することが示された。
全ての動物は、抗体注射終了後約1週間、固体糞を維持した(図11)。個々の動物に関して、1匹の動物(Sgo 63−93)は第4日目から第20日目のプロトコールの終了まで固体糞をした(図11)。2匹の動物(Sgo 129−91、Sgo 17−85)は、研究第14日後に半固体糞に逆戻りした(図11)。4匹目の動物(Sgo 326−84)は、第6日〜第20日の間、下痢の持続的な改善/解消を示した。
同様に、結腸における白血球浸潤が、ACT−1を投与されたCTTにおいて著しく和らげられた。前処理生検と比べ、ACT−1で処理された動物由来の結腸粘膜(結腸粘膜のホルマリン固定化生検試料)の組織分析は、浸潤活性および付随した粘膜の構造的変化において改善を示した。結腸炎症活性の組織評価系(マダラら(Madara,J.L.,et al.),Gastroenterology,88:13−19(1985))を用いたところ、ACT−1で処理された動物は基準の前処理値と比べ、全ての時点において炎症活性値の著しい減少をしており、一方、対照抗体を投与した動物の値は変化しなかった(図15)。第20日の無関係処理群の炎症値には変化がなかった(図15)。ACT−1処理された群の全ての時点で炎症活性の平均未処理値は統計的に第0日での同じ動物の値より低かった(第5日および第10日、P<0.05;第20日、P<0.01)。
個々の動物に関して、4匹全ての試験動物は、ACT−1免疫治療の間または後に炎症活性に改善を示した。2匹の動物(Sgo 129−91およびSgo 17−85)における結腸炎は完全に第10日までに解消された(図12)。他の動物(Sgo 63−93)は第20日までに結腸炎活性の完全な解消を示さず、一方4匹目の動物(Sgo326−84)の粘膜生検値は研究期間の間ずっと改善を示した(図12;Sgo 326−84における第20日の2つの生検は0および1と評価された)。さらに、動物326−84は研究期間中、元の体重の20%増加した。
効果のより定量的な評価を提供するために、全ての研究動物由来の結腸粘膜内にある白血球部分集合のコンピューター補助した形態映像分析を行った。表3は慢性結腸炎CTTの結腸炎症活性に対するACT−1免疫治療の効果の分析結果を示している(前処理値のパーセントとして表現)。ACT−1免疫治療により、抗体投与前に測定される基準数と比較して粘膜白血球の密度が大幅に減少し、一方対照群は無関係抗体の投与後に一般的に同数の又は増加した粘膜白血球数を有していた。ACT−1抗体の第1回投与後10日で、前処理値に比べ約30%弱の粘膜単核白血球がβ7インテグリンを発現していた。この減少は末梢循環プールのα4β7+白血球数を減少させず(図16)、また対照動物由来の結腸粘膜中のα4β7+白血球数が増加または大きく変化しないままなので、操作または非特異的な効果にも関係しない。同様に、粘膜T細胞は、ACT−1で処理した動物において第5日目で約50%に、第10日目で約25%にまで減少し、一方、同じ時点における無関係抗体群の粘膜T細胞は変化しなかった。粘膜B細胞において比較できるような減少は、ACT−1処理群には見られたが、対照群には見られなかった。また、興味深いことにACT−1免疫治療は、α4β7を僅かまたはほとんど発現しない粘膜白血球の密度を減少した。好中球は第10日と第20日で40〜45%まで、ACT−1処理された動物においては20%にまで減少したが、PMNの減少は対照群では観察されなかった。同様に粘膜マクロファージは、全ての治療後生検試料においてACT−1を投与した動物において30〜45%にまで減少し、一方対照群におけるマクロファージは変化しなかった。興味深いことに、免疫組織化学およびクローン化されたヒトMAdCAM(10G3、実施例2)に特異的な交差反応性モノクローナル抗体を用いたところ、ACT−1または対照抗体で処理された結腸炎CTTにおいて、発現の変化が見られなかった。
ACT−1投与に帰することができる研究動物において、明白な毒性は観察されなかった。研究動物のうちで肝臓および腎臓の機能の臨床化学評価に変化が見られるものはなかった(データ示さず)。ACT−1抗体は非分解性モノクローナル試薬であり(ラザロビッツら(Lazarovits,A.I.,et al.),J.Immunol.,133:1857−1862(1984))、白血球減少は、研究の間、どの動物にも見られなかった。実際に、研究の始めの週の間、対照動物を含む全ての試験動物において好中球に対する傾向(周辺血液におけるピーク数は40×103/μLに近く;CTT標準範囲は1.4−12.0×103/μL)があった。その際に、抗体を投与するのに毎日の麻酔/操作が用いられた。また、周辺血液におけるリンパ球の絶対数が18×103/μL近くになるような(CTT通常範囲は0.6−5.7×103/μLである)ACT−1を投与された動物におけるリンパ球増加に対する傾向があった。。従って、ACT−1処理群の結腸への白血球細胞型の補充の減少により、末梢循環プール中の白血球数を変化させることはできなかった。
要約
慢性結腸炎コットントップタマリンに投与した際に、α4β7インテグリンに対するモノクローナル抗体は、下痢および結腸炎症活性を急速に解消して、結腸炎を改善する効果を示した。これらは組織炎症活性値と糞粘稠度との間に完全な相互関係があることを明らかにした。糞粘稠度が、一般的にACT−1抗体を受けた動物において1−2日で改善されるという観察結果は注目すべきものである。更に、粘膜白血球部分集合の関連した密度は、一般的に抗α4β7抗体を用いた免疫治療に応じて弱められた。また、これらの結果は、器官または組織特異的(粘膜特異的)であるような炎症過程に対して効き目のある治療を明らかにしている。
結腸炎CTTにおけるACT−1の治療効果は、消化管へのリンパ球補充の阻害により媒介されるかもしれない。代わりに、または加えて、観察された治療効果は、他の細胞相互作用における変化またはα4β7インテグリンにより媒介される前兆事象における変化に影響するかもしれない。これらの結果は、ACT−1抗体がα4β7インテグリン作用の効果的なアンタゴニストであり、α4β7インテグリン作用の阻害が炎症腸疾患を有する個々動物の臨床治療技術における器官または組織特異的な処理方法とすることができることを示している。さらに、結果は、炎症性腸疾患の病原におけるα4β7インテグリンの役割を示している。α4β7インテグリンは、潜在的に、炎症性腸疾患に対する組織特異的な治療標的を提供する。
従って、本発明の態様は以下の通りである。
(1)霊長類MAdCAMをコードする単離された核酸、
(2)単離された核酸が組換え体である、前記(1)記載の単離された核酸、
(3)該核酸がストリンジェントな条件下で二番目の核酸とハイブリダイズし、該二番目の核酸が図1(配列番号:1)、図2(配列番号:3)または図3(配列番号:5)に示されるヌクレオチド配列を有する、前記(1)記載の単離された核酸、
(4)該核酸が本質的に純粋である、前記(3)記載の単離された核酸、
(5)該核酸が図1(配列番号:2)に示されるポリペプチド、図2(配列番号:4)に示されるポリペプチド、図3(配列番号:6)に示されるポリペプチドまたは対応する成熟蛋白質をコードする、前記(1)記載の単離された核酸、
(6)組換え核酸である、前記(5)記載の単離された核酸、
(7)該核酸が本質的に純粋である、前記(5)記載の単離された核酸、
(8)図1(配列番号:1)に示されるヌクレオチド配列、図2(配列番号:3)に示されるヌクレオチド配列、図3(配列番号:5)に示されるヌクレオチド配列およびコード配列を含有してなる前記のいずれかの一部からなる群より選ばれたヌクレオチド配列を有する前記(5)記載の単離された核酸、
(9)前記(1)記載の核酸を含有してなる組換え核酸構築物、
(10)組換え核酸が発現制御配列に実施可能に連結している、前記(9)記載の組換え核酸構築物、
(11)該核酸が図1(配列番号:2)、図2(配列番号:4)、図3(配列番号:6)に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする、核酸を含有してなる前記(9)記載の組換え核酸構築物、
(12)核酸が発現制御配列に実施可能に連結している、前記(11)記載の組換え構築物、
(13)単離された霊長類MAdCAM、
(14)霊長類MAdCAMがヒトMAdCAMであり、ストリンジェントな条件下で二番目の核酸にハイブリダイズする核酸によりコードされ、該二番目の核酸が図1(配列番号:1)または図2(配列番号:3)に示されるヌクレオチド配列を有する、前記(13)記載の単離された霊長類MAdCAM、
(15)霊長類MAdCAMが図1(配列番号:2)、図2(配列番号:4)に示されるヒトMAdCAMまたは前記のいずれかの対応する成熟蛋白質である、前記(13)記載の単離された霊長類MAdCAM、
(16)霊長類MAdCAMがアカゲザルMAdCAMであり、ストリンジェントな条件下で二番目の核酸にハイブリダイズする核酸によりコードされ、該二番目の核酸が図3(配列番号:5)に示されるヌクレオチド配列を有する、前記(13)記載の単離された霊長類MAdCAM、
(17)霊長類MAdCAMが図3(配列番号:6)に示されるアカゲザルMAdCAMまたは対応する成熟蛋白質である、前記(13)記載の単離された霊長類MAdCAM、
(18)図1(配列番号:2)の19〜406、図2(配列番号:4)の19〜382または図3(配列番号:6)の22〜346のアミノ酸からなるアミノ酸配列を本質的に有する前記(15)記載の単離された霊長類MAdCAM、
(19)α4β7インテグリンへの結合および細胞接着の媒介からなる群より選ばれた1以上の機能を有する単離された霊長類MAdCAM、
(20)細胞接着がα4β7インテグリン依存性である、前記(19)記載の単離された霊長類MAdCAM、
(21)結合がα4β7に対して選択的である、前記(20)記載の単離された霊長類MAdCAM、
(22)前記(2)記載の組換え核酸を含む宿主細胞、
(23)核酸が発現制御配列に実施可能に連結し、それによって宿主細胞を発現に適した条件下で維持した時に霊長類MAdCAMが発現される、前記(22)記載の宿主細胞、
(24)霊長類MAdCAMを含有してなる融合蛋白質、
(25)第1部分および第2部分を含有してなり、該第1部分が霊長類MAdCAMであり、該第2部分が少なくとも免疫グロブリン鎖またはその変異体の一部である、前記(24)記載の融合蛋白質、
(26)該第1部分がそれのC末端で第2部分のN末端に結合している、前記(25)記載の融合蛋白質、
(27)第1部分が全細胞外ドメインを含むヒトMAdCAMの断片および2つのN末端免疫グロブリンドメインを含むヒトMAdCAMの断片からなる群より選ばれた、前記(25)記載の融合蛋白質、
(28)第2部分が少なくとも免疫グロブリン重鎖定常部またはその変異体の一部である、前記(25)記載の融合蛋白質、
(29)免疫グロブリン重鎖がIgGクラスである、前記(28)記載の融合蛋白質、
(30)第2部分が免疫グロブリン重鎖のヒンジ、CH2およびCH3ドメインを含有する、前記(28)記載の融合蛋白質、
(31)前記(25)記載の融合蛋白質を含有してなるハイブリッド免疫グロブリン、
(32)該ハイブリッド免疫グロブリンがホモ二量体である、前記(31)記載の融合蛋白質を含有してなるハイブリッド免疫グロブリン、
(33)必要に応じてコード配列が発現制御配列に実施可能に連結している、前記(24)記載の融合蛋白質をコードするコード配列を含む核酸を含有してなる核酸構築物、
(34)必要に応じてコード配列が発現制御配列に実施可能に連結している、前記(25)記載の融合蛋白質をコードする配列を含む核酸を含有してなる、核酸構築物、
(35)下記工程からなる霊長類MAdCAMの製造方法:
(a)宿主細胞に霊長類MAdCAMをコードする核酸を含有してなる核酸構築物を導入し、それによって少なくとも1つの発現制御配列に実施可能に連結された該コード配列を有する組換え宿主細胞を製造する工程;および
(b)工程(a)において製造された宿主細胞を核酸が発現される条件下で適した培地中で維持する工程、
(36)さらに霊長類MAdCAMを単離する工程を有する、前記(35)記載の方法、
(37)霊長類MAdCAMをコードする組換え核酸を含む宿主細胞を核酸の発現に適した条件下で維持し、それによって霊長類MAdCAMが製造される工程からなる霊長類MAdCAMの製造方法、
(38)さらに霊長類MAdCAMを単離する工程を有する前記(37)記載の方法、
(39)霊長類MAdCAMに結合する抗体またはその機能的部分、
(40)該抗体が霊長類MAdCAMの1以上の機能を阻害することができる、前記(39)記載の抗体、
(41)該抗体が選択的にα4β7依存性接着を阻害することができる、前記(39)記載の抗体、
(42)霊長類がヒトである、前記(40)記載の抗体、
(43)下記工程からなる試料中の選択された霊長類MadCAMの検出方法:
a)選択された霊長類MAdCAMへの該抗体の特異的結合に適した条件下で単離された霊長類MAdCAMと結合する抗体に試料を接触させる工程;および
c)抗体−MAdCAM複合体を検出する工程、
(44)単離された霊長類MAdCAMに対するリガンドの結合に適した条件下で試験される薬物を単離された霊長類MAdCAMと組み合わせて(combining)、該薬物および霊長類MAdCAM間の複合体の形成を検出または測定する工程からなる、霊長類MAdCAMのリガンドまたは霊長類MAdCAMと結合する薬物の検出または同定方法、
(45)下記工程からなる霊長類MAdCAMのリガンドまたは霊長類MAdCAMと結合する薬物の検出または同定方法、
a)組換え霊長類MAdCAMに対するリガンドの結合に適した条件下で試験される薬物を組換え霊長類MAdCAMを発現する宿主細胞と組み合わせる(combining)工程;および
b)該薬物および霊長類MAdCAM間の複合体の形成を検出または測定する工程、
(46)下記工程からなる霊長類MAdCAMのそのリガンドへの結合の阻害剤の検出方法:
a)霊長類MAdCAMに対するリガンドの結合に適した条件下で試験される薬物を霊長類MAdCAMのリガンドおよび単離されたおよび/または組換え霊長類MAdCAMを含有してなる組成物と組み合わせる(combining)工程;および
b)霊長類MAdCAMおよびリガンド間の結合を検出または測定し、それによって適したコントロールと比較して減少した結合が該薬物が阻害剤であることを示す工程、
(47)単離されたおよび/または組換え霊長類MAdCAMが融合蛋白質である、前記(46)記載の方法、
(48)単離されたおよび/または組換え霊長類MAdCAMを含有してなる組成物が組換え霊長類MAdCAMを発現している宿主細胞を含む、前記(46)記載の方法、
(49)下記工程からなる、MAdCAMにより媒介される細胞接着の阻害剤の検出方法:
a)試験される薬物、組換え霊長類MAdCAMを発現している第1細胞およびα4β7インテグリンを有している第2細胞を該第1細胞の該第2細胞への接着に適した条件下で組み合わせる(combining)工程;および
b)該第1および第2細胞間の接着を検出または測定し、それによって適したコントロールと比較して減少した接着が該薬物が阻害剤であることを示す工程、
(50)薬物が抗体または抗体断片である前記(49)記載の方法、
(51)白血球のMAdCAMへの結合を阻害できる有効量の抗体を個体に投与する工程からなる、分子MAdCAMを発現している組織の白血球浸潤と関連する疾患を有する個体の治療方法、
(52)疾患が分子MAdCAMを発現する腸−関連内皮への白血球の結合の結果としての胃腸管または他の組織への白血球補充と関連する疾患であり、抗体が白血球の内皮MAdCAMへの結合を阻害できる前記(51)記載の方法、
(53)抗体がモノクローナル抗体またはその抗原結合断片である前記(52)記載の方法、
(54)モノクローナル抗体またはその抗原結合断片がβ7鎖を含んでいるインテグリンを発現している白血球およびMAdCAMを発現している内皮の接着を阻害する前記(53)記載の方法、
(55)モノクローナル抗体またはその抗原結合断片がα4β7インテグリンと結合する前記(54)記載の方法、
(56)モノクローナル抗体またはその抗原結合断片がβ7と結合する前記(55)記載の方法、
(57)モノクローナル抗体またはその抗原結合断片がMAdCAMと結合する前記(56)記載の方法、
(58)モノクローナル抗体またはその抗原結合断片がFIB 21、FIB 30、FIB 504およびACT−1からなる群より選ばれたモノクローナル抗体の抗原特異性を有する前記(54)記載の方法、
(59)モノクローナル抗体またはその抗原結合断片がFIB 21、FIB 30、FIB 504およびACT−1からなる群より選ばれ、またはその抗原結合断片である前記(58)記載の方法、
(60)モノクローナル抗体がACT−1である前記(59)記載の方法、
(61)モノクローナル抗体がキメラ抗体およびヒトに適合させた抗体からなる群より選ばれる前記(54)記載の方法、
(62)白血球がリンパ球である前記(54)記載の方法、
(63)白血球が単球である前記(54)記載の方法、
(64)疾患が炎症性の腸疾患である前記(54)記載の方法、
(65)疾患が潰瘍性結腸炎である前記(64)記載の方法、
(66)疾患がクローン病(Crohn’s disease)である前記(64)記載の方法、
(67)疾患が腹腔疾患、セロネガティブ関節症に関連する腸疾患、微細もしくはコラーゲン蓄積大腸炎、好酸球性胃腸炎、または窩炎である前記(64)記載の方法、
(68)モノクローナル抗体またはその抗原結合断片がα4β7と結合する前記(64)記載の方法、
(69)モノクローナル抗体またはその抗原結合断片がMAdCAMと結合する前記(64)記載の方法、
(70)モノクローナル抗体またはその抗原結合断片がFIB 21、FIB 30、FIB 504およびACT−1からなる群より選ばれたモノクローナル抗体の抗原特異性を有する前記(64)記載の方法、
(71)モノクローナル抗体またはその抗原結合断片がFIB 21、FIB 30、FIB 504およびACT−1からなる群より選ばれ、またはその抗原結合断片である前記(70)記載の方法、
(72)モノクローナル抗体がACT−1である前記(71)記載の方法、
(73)モノクローナル抗体がキメラ抗体およびヒトに適合させた抗体からなる群より選ばれる前記(64)記載の方法、
(74)白血球の内皮MAdCAMへの結合を阻害する1以上のモノクローナル抗体が投与される前記(64)記載の方法、
(75)白血球の内皮リガンドへの結合を阻害する1以上のモノクローナル抗体が投与される前記(64)記載の方法、
(76)少なくとも1のモノクローナル抗体がMAdCAM以外の内皮リガンドへの白血球の結合を阻害する前記(75)記載の方法、
(77)内皮MAdCAMまたはα4β7インテグリンと結合する有効量の抗体を個体に投与する工程からなる個体における炎症性の腸疾患の治療方法、
(78)抗体がモノクローナル抗体またはその抗原結合断片である前記(77)記載の方法、
(79)モノクローナル抗体またはその抗原結合断片がα4β7インテグリンと結合する前記(78)記載の方法、
(80)モノクローナル抗体またはその抗原結合断片がβ7と結合する前記(79)記載の方法、
(81)モノクローナル抗体またはその抗原結合断片がMAdCAMと結合する前記(78)記載の方法、
(82)モノクローナル抗体またはその抗原結合断片がFIB 21、FIB 30、FIB 504およびACT−1からなる群より選ばれたモノクローナル抗体の抗原特異性を有する前記(78)記載の方法、
(83)モノクローナル抗体またはその抗原結合断片がFIB 21、FIB 30、FIB 504およびACT−1からなる群より選ばれ、またはその抗原結合断片である前記(82)記載の方法、
(84)モノクローナル抗体がACT−1である前記(83)記載の方法、
(85)モノクローナル抗体がキメラ抗体およびヒトに適合させた抗体からなる群より選ばれる前記(78)記載の方法、
(86)疾患が潰瘍性結腸炎である前記(78)記載の方法、
(87)疾患がクローン病(Crohn’s disease)である前記(78)記載の方法、
(88)疾患が腹腔疾患、セロネガティブ関節症に関連する腸疾患、微細もしくはコラーゲン蓄積大腸炎、好酸球性胃腸炎、または窩炎である前記(78)記載の方法、
(89)霊長類MAdCAMに対して特異性を有する抗体の有効量を投与する工程からなる、分子MAdCAMを発現している組織の白血球浸潤と関連する疾患を有する霊長類の治療方法、
(90)抗体が霊長類MAdCAMのα4β7インテグリンとの相互作用を阻害することができる、前記(89)記載の方法、
(91)疾患が分子MAdCAMを発現する腸−関連内皮への白血球の結合の結果としての組織の白血球浸潤と関連する疾患である、前記(89)記載の方法、
(92)霊長類MAdCAMと結合する抗体の有効量を霊長類に投与する工程からなる、霊長類における炎症性腸疾患の治療方法、
(93)抗体が霊長類MAdCAMのα4β7インテグリンとの相互作用を阻害できる、前記(92)記載の方法、
(94)霊長類MAdCAMの有効量または霊長類MAdCAMを含有してなるハイブリッド免疫グロブリンの有効量を投与する工程からなる、分子MAdCAM−1を発現している組織の白血球浸潤と関連する疾患を有する霊長類の治療方法、
(95)霊長類MAdCAMまたは霊長類MAdCAMを含有してなるハイブリッド免疫グロブリンが、霊長類MAdCAMのα4β7インテグリンとの相互作用を阻害することができる、前記(94)記載の方法、
(96)該ハイブリッド免疫グロブリンが融合蛋白質を含み、第1部分および第2部分を含有してなり、該第1部分が霊長類MAdCAMであり、該第2部分が少なくとも免疫グロブリン鎖の一部である、前記(94)記載の方法、
(97)疾患が分子MAdCAMを発現する腸−関連内皮への白血球の結合の結果としての組織の白血球浸潤と関連する疾患である、前記(94)記載の方法、
(98)霊長類MAdCAMの有効量または霊長類MAdCAMを含有してなるハイブリッド免疫グロブリンの有効量を霊長類に投与する工程からなる、霊長類における炎症性の腸疾患の治療方法、
(99)霊長類MAdCAMまたは霊長類MAdCAMを含有してなるハイブリッド免疫グロブリンが、霊長類MAdCAMのα4β7インテグリンとの相互作用を阻害することができる、前記(98)記載の方法、
(100)該ハイブリッド免疫グロブリンが融合蛋白質を含み、第1部分および第2部分を含有してなり、該第1部分が霊長類MAdCAMであり、該第2部分が少なくとも免疫グロブリン鎖の一部である、前記(98)記載の方法。
均等物
当業者は、日常の実験を用いるだけで、ここで詳細に記載された本発明の特定の態様に対する多くの均等物を認識し、または確認することができるであろう。かかる均等物は、請求の範囲に包含されることを意図する。
配列表
(1)一般情報:
(i)出願人:
(A)名称:ロイコサイト,インコーポレーテッド
(B)ストリート:ファースト ストリート 215
(C)市:ケンブリッジ
(D)州:マサチューセッツ
(E)国:アメリカ合衆国
(F)郵便番号:02142
(G)電話番号:617−621−9350
(I)テレファックス:617−621−9349
(i)出願人/発明者:
(A)名称:ブリスキン,マイケル ジェイ.
(B)ストリート:ハーベル ストリート 28
(C)市:レキシントン
(D)州:マサチューセッツ
(E)国:アメリカ合衆国
(F)郵便番号:02173
(i)出願人/発明者:
(A)名称:リングラー,ダグラス ジェイ.
(B)ストリート:ナンバー 1008 オーシャン アベニュー 382
(C)市:リヴィア
(D)州:マサチューセッツ
(E)国:アメリカ合衆国
(F)郵便番号:02151
(i)出願人/発明者:
(A)名称:ピカレラ,ドミニク
(B)ストリート:ナンバー 4 ノース ベネット コート 2
(C)市:ボストン
(D)州:マサチューセッツ
(E)国:アメリカ合衆国
(F)郵便番号:02113
(i)出願人/発明者:
(A)名称:ニューマン,ウォルター
(B)ストリート:ナンバー 3 ダラム ストリート 3
(C)市:ボストン
(D)州:マサチューセッツ
(E)国:アメリカ合衆国
(F)郵便番号:02115
(ii)発明の名称:粘膜血管アドレッシンおよびその用途
(iii)配列の数:13
(iv)連絡先住所:
(A)宛名:ハミルトン,ブルック,スミス アンド レイノルズ,ピー.シー.
(B)ストリート:ミリティア ドライブ 2
(C)市:レキシントン
(D)州:マサチューセッツ
(E)国:アメリカ合衆国
(F)郵便番号:02173−4799
(v)コンピュータ可読フォーム:
(A)媒体型:フロッピーディスク
(B)コンピュータ:IBM PC 互換機
(C)オペレーティングシステム:PC−DOS/MS−DOS
(D)ソフトウェア:パテントイン リリース #1.0,バージョン #1.30
(vi)現出願データ:
(A)出願番号:
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(C)分類:
(vii)先願データ:
(A)出願番号:US 08/523,004
(B)出願日:1995年9月1日
(vii)先願データ:
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(A)氏名:ブルック,デビッド イー.
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(ix)テレコミュニケーション情報:
(A)電話番号:617−861−6240
(B)テレファックス:617−861−9540
(2)配列番号:1の情報:
(i)配列の特徴:
(A)配列の長さ:1624
(B)配列の型:核酸
(C)鎖の数:二本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:cDNA
(ix)配列の特徴:
(A)特徴を表す記号:CDS
(B)存在位置:1..1218
(xi)配列:配列番号:1
(2)配列番号:2の情報:
(i)配列の特徴:
(A)配列の長さ:406
(B)配列の型:アミノ酸
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:タンパク質
(xi)配列:配列番号:2
(2)配列番号:3の情報:
(i)配列の特徴:
(A)配列の長さ:1539
(B)配列の型:核酸
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(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:cDNA
(ix)配列の特徴:
(A)特徴を表す記号:CDS
(B)存在位置:1..1146
(xi)配列:配列番号:3
(2)配列番号:4の情報:
(i)配列の特徴:
(A)配列の長さ:382
(B)配列の型:アミノ酸
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(ii)配列の種類:タンパク質
(xi)配列:配列番号:4
2)配列番号:5の情報:
(i)配列の特徴:
(A)配列の長さ:1721
(B)配列の型:核酸
(C)鎖の数:二本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:cDNA
(ix)配列の特徴:
(A)特徴を表す記号:CDS
(B)存在位置:4..1038
(xi)配列:配列番号:5
(2)配列番号:6の情報:
(i)配列の特徴:
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(B)配列の型:アミノ酸
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(ii)配列の種類:タンパク質
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(2)配列番号:7の情報:
(i)配列の特徴:
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(B)配列の型:核酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:不明
(xi)配列:配列番号:7
(2)配列番号:8の情報:
(i)配列の特徴:
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(B)配列の型:核酸
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(2)配列番号:9の情報:
(i)配列の特徴:
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(2)配列番号:10の情報:
(i)配列の特徴:
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(2)配列番号:11の情報:
(i)配列の特徴:
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(B)配列の型:核酸
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(2)配列番号:12の情報:
(i)配列の特徴:
(A)配列の長さ:26
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(2)配列番号:13の情報:
(i)配列の特徴:
(A)配列の長さ:27
(B)配列の型:核酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(xi)配列:配列番号:13
Claims (48)
- (a)アミノ酸配列が図1(配列番号:2)、図2(配列番号:4)または図3(配列番号:6)に示される蛋白質の配列と少なくとも90%同一の天然霊長類MAdCAM;
(b)α4β7インテグリンに結合し、アミノ酸配列が図1(配列番号:2)、図2(配列番号:4)または図3(配列番号:6)に示される蛋白質の配列と少なくとも90%同一の天然霊長類MAdCAMの機能的変異体;または
(c)α4β7インテグリンに結合し、配列番号:2、配列番号:4又は配列番号:6における2つのN末端免疫グロブリン様ドメインを含む、天然霊長類MAdCAMの機能的断片
をコードする単離された核酸。 - 単離された核酸が組換え体および/または本質的に純粋である、請求項1記載の単離された核酸。
- (a)該核酸が高ストリンジェンシー条件下で二番目の核酸とハイブリダイズし、該二番目の核酸が図1(配列番号:1)、図2(配列番号:3)もしくは図3(配列番号:5)に示されるヌクレオチド配列または前記のいずれか1つのオープンリーディングフレームの相補体である配列を有する;または
(b)該核酸が図1(配列番号:2)に示されるポリペプチド、図2(配列番号:4)に示されるポリペプチド、図3(配列番号:6)に示されるポリペプチドまたは前記のいずれか1つの対応する成熟蛋白質をコードする、
請求項1または2記載の単離された核酸。 - 前記核酸が図1(配列番号:1)に示されるヌクレオチド配列、図2(配列番号:3)に示されるヌクレオチド配列、図3(配列番号:5)に示されるヌクレオチド配列およびコード配列を含有してなる前記のいずれかの一部からなる群より選ばれたヌクレオチド配列を有する請求項3記載の単離された核酸。
- 核酸が発現制御配列に実施可能に連結している、請求項4記載の単離された核酸。
- 請求項1記載の核酸を含有してなる単離された組換え核酸構築物。
- (a)組換え核酸が発現制御配列に実施可能に連結している;または
(b)図1(配列番号:2)、図2(配列番号:4)もしくは図3(配列番号:6)に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸を含有する;または
(c)該核酸が高ストリンジェンシー条件下で二番目の核酸とハイブリダイズし、該二番目の核酸が図1(配列番号:1)、図2(配列番号:3)、図3(配列番号:5)に示されるヌクレオチド配列または前記のいずれか1つのオープンリーディングフレームの相補体である配列を有する、
請求項6記載の単離された組換え核酸構築物。 - (a)アミノ酸配列が図1(配列番号:2)、図2(配列番号:4)または図3(配列番号:6)に示される蛋白質の配列と少なくとも90%同一の天然霊長類MAdCAM;
(b)α4β7インテグリンに結合し、アミノ酸配列が図1(配列番号:2)、図2(配列番号:4)または図3(配列番号:6)に示される蛋白質の配列と少なくとも90%同一の天然霊長類MAdCAMの機能的変異体;または
(c)α4β7インテグリンに結合し、配列番号:2、配列番号:4又は配列番号:6における2つのN末端免疫グロブリン様ドメインを含む、天然霊長類MAdCAMの機能的断片
のアミノ酸配列を有する単離された蛋白質。 - (a)霊長類MAdCAMがヒトMAdCAMであり、高ストリンジェンシー条件下で二番目の核酸にハイブリダイズする核酸によりコードされ、該二番目の核酸が図1(配列番号:1)、図2(配列番号:3)、図3(配列番号:5)に示されるヌクレオチド配列または前記のいずれか1つのオープンリーディングフレームの相補体である配列を有する;
(b)霊長類MAdCAMが図1(配列番号:2)、図2(配列番号:4)に示されるヒトMAdCAMまたは前記のいずれかの対応する成熟蛋白質である;または
(c)霊長類MAdCAMが図3(配列番号:6)に示されるアカゲザルMAdCAMまたは対応する成熟蛋白質である、
請求項8記載の単離された蛋白質。 - アミノ酸配列が図1(配列番号:2)、図2(配列番号:4)または図3(配列番号:6)に示される蛋白質の配列と少なくとも90%同一であり、α4β7インテグリンへの結合および細胞接着の媒介からなる群より選ばれた1以上の機能を有する単離された天然霊長類MAdCAM。
- 細胞接着がα4β7インテグリン依存性である、請求項10記載の単離された天然霊長類MAdCAM。
- 前記結合がα4β7に対して選択的である、請求項10または請求項11記載の単離された天然霊長類MAdCAM。
- (a)アミノ酸配列が図1(配列番号:2)、図2(配列番号:4)または図3(配列番号:6)に示される蛋白質の配列と少なくとも90%同一の天然霊長類MAdCAM;
(b)α4β7インテグリンに結合し、アミノ酸配列が図1(配列番号:2)、図2(配列番号:4)または図3(配列番号:6)に示される蛋白質の配列と少なくとも90%同一の天然霊長類MAdCAMの機能的変異体;または
(c)α4β7インテグリンに結合し、配列番号:2、配列番号:4又は配列番号:6における2つのN末端免疫グロブリン様ドメインを含む、天然霊長類MAdCAMの機能的断片
をコードする組換え核酸を含む宿主細胞。 - 組換え核酸が発現制御配列に実施可能に連結し、それによって宿主細胞を発現に適した条件下で維持した時に天然霊長類MAdCAM、またはα4β7インテグリンに結合する前記機能的変異体もしくはα4β7インテグリンに結合する天然霊長類MAdCAMの前記機能的断片が発現される、請求項13記載の宿主細胞。
- (a)アミノ酸配列が図1(配列番号:2)、図2(配列番号:4)または図3(配列番号:6)に示される蛋白質の配列と少なくとも90%同一の天然霊長類MAdCAM;
(b)α4β7インテグリンに結合し、アミノ酸配列が図1(配列番号:2)、図2(配列番号:4)または図3(配列番号:6)に示される蛋白質の配列と少なくとも90%同一の天然霊長類MAdCAMの機能的変異体;または
(c)α4β7インテグリンに結合し、配列番号:2、配列番号:4又は配列番号:6における2つのN末端免疫グロブリン様ドメインを含む、天然霊長類MAdCAMの機能的断片
を含有してなる融合蛋白質。 - 第1部分および第2部分を含有してなり、該第1部分が、天然霊長類MAdCAMまたは前記その機能的変異体もしくは前記その機能的断片のアミノ酸配列を有し、該第2部分が少なくとも免疫グロブリン鎖またはその変異体の一部である、
請求項15記載の融合蛋白質。 - (a)該第1部分がそれのC末端で第2部分のN末端に結合している;
(b)該第1部分が全細胞外ドメインを含むヒトMAdCAMの機能的断片および2つのN末端免疫グロブリンドメインを含むヒトMAdCAMの機能的断片からなる群より選ばれる;または
(c)該第2部分が少なくとも免疫グロブリン重鎖定常部またはその機能的変異体の一部である、
請求項16記載の融合蛋白質。 - 免疫グロブリン重鎖がIgGクラスである、および/または第2部分が免疫グロブリン重鎖のヒンジ、CH2およびCH3ドメインを含有する、請求項17記載の融合蛋白質。
- 請求項15〜18いずれか記載の融合蛋白質を含有してなるハイブリッド免疫グロブリン。
- 該ハイブリッド免疫グロブリンがホモ二量体である、請求項19記載のハイブリッド免疫グロブリン。
- 必要に応じてコード配列が発現制御配列に実施可能に連結している、請求項15〜18いずれか記載の融合蛋白質をコードするコード配列を含む核酸を含有してなる組換え核酸構築物。
- 蛋白質をコードする組換え核酸を含む宿主細胞を核酸の発現に適した条件下で維持し、それによって該蛋白質が製造される工程からなる請求項8記載の蛋白質の製造方法。
- (a)宿主細胞に蛋白質をコードする核酸を含有してなる核酸構築物を導入し、それによって少なくとも1つの発現制御配列に実施可能に連結された該核酸のコード配列を有する組換え宿主細胞を製造する工程;および
(b)工程(a)において製造された宿主細胞を核酸が発現される条件下で適した培地中で維持する工程、
をさらに含む、請求項22記載の方法。 - さらに該蛋白質を単離する工程を有する、請求項22または請求項23記載の方法。
- 下記工程からなる試料中の選択された霊長類MAdCAMのインビトロ検出方法:
(a)天然霊長類MAdCAMへの抗体またはその抗原結合断片の特異的結合に適した条件下で、天然霊長類MAdCAMと結合する抗体またはその抗原結合断片に試料を接触させる工程;および
(b)前記抗体またはその抗原結合断片およびMAdCAM間の複合体の形成を検出する工程、
ここで、前記天然霊長類MAdCAMが、配列番号:2、配列番号:4又は配列番号:6で示されるヒト又はアカゲザルのMAdCAMである、方法。 - 単離された霊長類MAdCAMに対するリガンドの結合に適した条件下で、試験される薬物を請求項8記載の単離された蛋白質または請求項13記載の宿主細胞と合わせて(combining)、該リガンドまたは薬物および該蛋白質との間の複合体の形成を検出または測定する工程からなる、霊長類MAdCAMのリガンドまたは霊長類MAdCAMと結合する薬物のインビトロ検出または同定方法。
- 下記工程からなる天然霊長類MAdCAMのそのリガンドへの結合の阻害剤のインビトロ検出方法:
(a)霊長類MAdCAMに対するリガンドの結合に適した条件下で、試験される薬物を霊長類MAdCAMのリガンドおよび請求項8に記載された単離された蛋白質または請求項13に記載された宿主細胞を含有してなる組成物と合わせる(combining)工程;および
(b)該蛋白質または宿主細胞およびリガンド間の結合を検出または測定し、それによって適したコントロールと比較して減少した結合が該薬物が阻害剤であることを示す工程。 - 下記工程からなる天然霊長類MAdCAMのそのリガンドへの結合の阻害剤のインビトロ検出方法:
(a)天然霊長類MAdCAMに対するリガンドの結合に適した条件下で、試験される薬物を霊長類MAdCAMのリガンドおよび請求項19もしくは20記載のハイブリッド免疫グロブリンまたは請求項15〜18いずれか記載の融合蛋白質と合わせる(combining)工程;および
(b)前記ハイブリッド免疫グロブリンまたは融合蛋白質およびリガンド間の結合を検出または測定し、それによって適したコントロールと比較して減少した結合が該薬物が阻害剤であることを示す工程。 - 前記リガンドがα4β7インテグリンであり、試験される薬物、α4β7インテグリンを発現する細胞および請求項19記載のハイブリッド免疫グロブリンまたは請求項15もしくは請求項16記載の融合蛋白質を合わせる(combine)、請求項28記載の方法。
- 下記工程からなる、MAdCAMにより媒介される細胞接着の阻害剤のインビトロ検出方法:
(a)試験される薬物、請求項13記載の宿主細胞およびα4β7インテグリンを有している第2細胞を該宿主細胞の該第2細胞への接着に適した条件下で合わせる(combining)工程;および
(b)該宿主および第2細胞間の接着を検出または測定し、それによって適したコントロールと比較して減少した接着が該薬物が阻害剤であることを示す工程。 - 薬物が抗体またはその抗原結合断片である請求項26〜30いずれか記載の方法。
- アミノ酸配列が図1(配列番号:2)、図2(配列番号:4)または図3(配列番号:6)に示される蛋白質の配列と少なくとも90%同一の天然霊長類MAdCAMに結合する抗体またはその抗原結合断片。
- (a)抗体またはその抗原結合断片が天然霊長類MAdCAMの結合機能または細胞接着分子機能の一方または両方を阻害することができる、
(b)抗体またはその抗原結合断片が選択的にα4β7依存性接着を阻害することができる、または
(c)抗体またはその抗原結合断片が天然霊長類MAdCAMのα4β7インテグリンへの結合を阻害することができる、
請求項32に記載された抗体またはその抗原結合断片。 - モノクローナル抗体またはその抗原結合断片である請求項32または33記載の抗体またはその抗原結合断片。
- 天然霊長類MAdCAMが天然ヒトMAdCAMである、請求項32〜34いずれか記載の抗体またはその抗原結合断片。
- 霊長類MAdCAMが図1(配列番号:2)もしくは図2(配列番号:4)に示されるヒトMAdCAMまたは前記のいずれかの対応する成熟蛋白質である、請求項35記載の抗体またはその抗原結合断片。
- 請求項32に記載された抗体または抗原結合断片を活性成分として含有してなる、炎症性の腸疾患を治療するための医薬組成物。
- 疾患が、潰瘍性結腸炎、クローン病(Crohn’s disease)、腹腔疾患、セロネガティブ関節症に関連する腸疾患、微細もしくはコラーゲン蓄積大腸炎、好酸球性胃腸炎、または窩炎である請求項37記載の医薬組成物。
- 抗体またはその抗原結合断片がキメラ抗体、キメラ抗原結合断片、ヒト化抗体、およびヒト化抗原結合断片からなる群より選ばれる請求項37または38記載の医薬組成物。
- 請求項8記載の蛋白質、請求項15記載の融合蛋白質または請求項19記載のハイブリッド免疫グロブリンを活性成分として含有してなる、炎症性の腸疾患を治療するための医薬組成物。
- (a)霊長類MAdCAM、機能的変異体またはハイブリッド免疫グロブリンが霊長類MAdCAMのα4β7インテグリンとの相互作用を阻害することができる;および/または
(b)該ハイブリッド免疫グロブリンが融合蛋白質を含み、第1部分および第2部分を含有してなり、該第1部分が霊長類MAdCAMであり、該第2部分が少なくとも免疫グロブリン鎖の一部である、
請求項40記載の医薬組成物。 - α4β7インテグリンのβ7鎖に結合し、配列番号:2、配列番号:4又は配列番号:6で示されるヒト又はアカゲザルMAdCAMのα4β7インテグリンへの結合を阻害する抗体またはその抗原結合断片を活性成分として含有してなる、炎症性の腸疾患を治療するための医薬組成物。
- 抗体またはその抗原結合断片がβ7鎖を含んでいるインテグリンを発現している白血球およびMAdCAMを発現している内皮の接着を阻害する請求項42記載の医薬組成物。
- (a)白血球の内皮MAdCAMへの結合を阻害する1以上の抗体またはその抗原結合断片が用いられる;または
(b)白血球の内皮リガンドへの結合を阻害する1以上の抗体またはその抗原結合断片が用いられ、少なくとも1の抗体またはその抗原結合断片が白血球のMAdCAM以外の内皮リガンドへの結合を阻害する請求項42または43記載の医薬組成物。 - 抗体またはその抗原結合断片が白血球の内皮MAdCAMへの結合を阻害する請求項42記載の医薬組成物。
- 炎症性の腸疾患が、潰瘍性結腸炎、クローン病、腹腔疾患、セロネガティブ関節症に関連する腸疾患、微細もしくはコラーゲン蓄積大腸炎、好酸球性胃腸炎および窩炎からなる群より選ばれる請求項42〜45のいずれかに記載の医薬組成物。
- 抗体またはその抗原結合断片がキメラ抗体、キメラ抗原結合断片、ヒト化抗体、およびヒト化抗原結合断片からなる群より選ばれる請求項42〜46のいずれかに記載の医薬組成物。
- 抗体またはその抗原結合断片がモノクローナル抗体またはその抗原結合断片である請求項42〜46のいずれかに記載の医薬組成物。
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