図1は、この発明によるスタビライザ装置の一実施の形態を系統図として示したものである。
この実施の形態の場合、前輪側及び後輪側のアクチュエータ2f,2rは、いわゆる、油圧で駆動するロータリ式アクチュエータとして構成され、たとえば、具体的には図示はしないが、内壁面に180度の間隔を保って構成した二つの隔壁をもつハウジングと、このハウジングの内部に対して外周面に同じく180度の間隔を置いて構成した二枚のベーンをもつロータを回動自在に納めて構成してある。したがって、この実施の形態の場合、流体は作動油となる。
また、ロータは、中心部分をハウジングの内壁に設けた隔壁の先端に摺接し、かつ、ベーンの先端をハウジングの内壁に摺接させることによって、ハウジング内をロータで2つの圧力室に区画し、ハウジングには、2つの圧力室に開口するポート10f,10r,11f,11rが穿設してある。
これにより、各アクチュエータ2f,2rは、ポート10f,10r,11f,11rを通して一方の圧力室または他方の圧力室に流体圧たる油圧を加えることで揺動可能なようになっている。なお、上述したところでは、各アクチュエータ2f,2rをいわゆるダブルベーン形の揺動形アクチュエータとしているが、シングルベーン形やトリプルベーン形としてもよいことは無論であり、ダブルベーン形の二枚のベーン間隔を180度以外の角度としてもよい。
そして、前輪用のスタビライザ1fは、図2に示すように、トーションバー部分を中央で二つに分割して構成し、この分割した部分の一方を前輪側における油圧ロータリ式のアクチュエータのハウジング側に、また、他方をロータ側に固定して構成してある。同様に、後輪用のスタビライザ1rもまた、それをトーションバー部分の中央で二分割し、この分割した部分の一方を後輪側におけるロータリ式のアクチュエータのハウジング側に、また、他方をロータ側に結合することによって構成してある。
このようにして、前輪側におけるアクチュエータ2fは、前輪用のスタビライザ1r,1fに対するスタビライザ剛性可変用のアクチュエータとして作用すると共に、後輪側のアクチュエータ2rは、後輪用のスタビライザに対するスタビライザ剛性可変用アクチュエータとしてそれぞれ作用するようにしてある。
また、前輪側のアクチュエータ2fは、各圧力室のポート10f,11fにそれぞれ接続された給排流路25f,26fを介してソレノイド方向切換弁12fに接続されており、後輪側のアクチュエータ2rは、各圧力室のポート10r,11rにそれぞれ接続された給排流路25r,26rを介してソレノイド方向切換弁12rに接続されている。
また、前輪側の給排流路25f,26fは互いに前輪側迂回路27fを介して連通されており、前輪側迂回路27fの途中には、極小径のオリフィス23fが設けられており、また、後輪側の給排流路25r,26rも同様に、互いに後輪側迂回路27rを介して連通されており、後輪側迂回路27fの途中には、極小径のオリフィス23rが設けられている。
さらに、前輪側の給排流路25f,26fは互いに前輪側流路60fを介して連通され、すなわち、この前輪側流路60fにより前輪側アクチュエータ2fの各圧力室が連通されており、当該前輪側流路60fの途中に前輪側高圧優先シャトル弁61fが設けられるとともに、後輪側の給排流路25r,26rは互いに前輪側流路60rを介して連通され、すなわち、この後輪側流路60rにより後輪側アクチュエータ2rの各圧力室が連通されており、当該後輪側流路60rの途中に後輪側高圧優先シャトル弁61rが設けられている。またさらに、後輪側の給排流路25r,26rは互いにバイパス路62をも介して連通され、すなわち、このバイパス路62によっても後輪側アクチュエータ2rの各圧力室が連通され、当該バイパス路62の途中には、開閉弁63が設けられている。
上記開閉弁63は、バイパス路62を遮断する遮断ポジション63aとバイパス路62を連通する連通ポジション63bとを備えており、上記前輪側高圧優先シャトル弁61fの出口ポートGfから供給される油圧と上記後輪側高圧優先シャトル弁61rの出口ポートGrから供給される油圧をパイロット圧として、後輪側高圧優先シャトル便61rから供給されるパイロット圧と前輪側高圧優先シャトル弁61fから供給されるパイロット圧との圧力差が所定の値以上となると連通ポジション63bを採るように設定されている。したがって、この開閉弁63にあっては、常に、前輪側アクチュエータ2fの各圧力室のうち高圧側となる圧力室内の油圧がパイロット圧として供給されるとともに、後輪側アクチュエータ2rの各圧力室のうち高圧側となる圧力室内の油圧がパイロット圧として供給されるので、後輪側アクチュエータ2rの各圧力室のうち高圧となる圧力室内の油圧と前輪側アクチュエータ2fの各圧力室のうち高圧となる圧力室内の油圧との差が所定値となった場合にバイパス路62を開放することとなる。なお、圧力差の所定値は、上記2つのパイロット圧のうちどちらか一方から他方を減じた時の値であり、いずれかのパイロット圧を基準として他方のパイロット圧を減ずるかは、このスタビライザ装置が搭載される車両に最適となるように任意に選択される。
また、上記前輪側高圧優先シャトル弁61fの出口ポートGfから供給される油圧はパイロット管64の途中には絞り弁65が設けられており、パイロット圧が急激に変動しないようになっている。
上記の開閉弁63は、具体的にはたとえば、図3に示すように、中空なバルブボディ100と、バルブボディ100内に摺動自在に挿入されるスプール110と、上記スプール110でバルブボディ100内に隔成された一方室102と他方室103と、附勢バネ115とで構成されている。バルブボディ100は、内部に中空孔101を備えており、スプール110は、中空孔101の内周面に摺接する遮断部111と中空孔101の内周面に摺接する隔壁部112と上記遮断部111と隔壁部112との間に設けられた通路部113と、隔壁部112の端部から延設される凸部114とで構成され、このスプール110は、バルブボディ100の中空孔101内に附勢バネ115に附勢されて挿入される。そして、このスプール110の隔壁部112により中空孔101内に他方室103が隔成され、遮断部111により中空孔101内に一方室102が隔成され、遮断部111の外周にはシール部材S1が設けられるとともに、隔壁部112の外周にもシール部材S2が設けられて、一方室102と他方室103は封止されている。すなわち、スプール110は、附勢バネ115により他方室103に向けて附勢されている。また、バルブボディ100内に形成された一方室102は上記前輪側高圧優先シャトル弁61fの出口ポートGfに連通され、他方室103は上記後輪側高圧優先シャトル弁61rの出口ポートGrに連通されている。さらに、バルブボディ100にはバイパス路62に接続される一対のバイパスポート104,105が設けられおり、スプール110が附勢バネ115により附勢されて凸部114の図3中右端が中空孔101の右端面に当接した状態では、スプール110の遮断部111は、常時一方のバイパスポート104を遮断する状態となり、他方室103内と一方室102内との圧力差が所定値以上となったときにスプール110が附勢バネ115の付勢力に抗して図3中左方に移動すると、遮断部111は一方のバイパスポート104を開放するようになっている。そして、この開閉弁63の場合、一方室102内の圧力を受けるスプール110の受圧面は遮断部111の図3中左端面となり、他方室103内の圧力を受けるスプール110の受圧面は隔壁部112の図2中右端面と凸部114の図3中右端面となるので、一方室102側と他方室103側の受圧面の面積は同一
となる。したがって、附勢バネ115のイニシャル荷重によりクラッキング圧が設定され、この場合、クラッキング圧は、上記した他方室103内と一方室102内との圧力差の所定値とされる。すなわち、上記所定値は、附勢バネ115のイニシャル荷重により設定される。
また、開閉弁63を図4に示すように構成してもよい。図4に示す開閉弁63は、やはり中空なバルブボディ200と、バルブボディ200内に摺動自在に挿入されるスプール210と、バルブボディ200内に隔成された一方室202と他方室203と、一方室202内の圧力を受けるピン215と、他方室203内の圧力を受けるピン214と、スプール210を図4中右方に附勢する、すなわち、他方室203側へ向けて附勢する附勢バネ216と、一方室202内のピン215とバルブボディ200の図4中左端内面との間に介装され、ピン215を他方室203側へ向けて附勢する附勢バネ217とで構成されている。バルブボディ200は、内部に複数の環状凸部201a,201bが形成された中空孔201を備えており、スプール210は、中空孔201の環状凸部201aと環状凸部201bとの間の内周面に摺接する遮断部211および隔壁部212と、上記遮断部211と隔壁部212との間に設けられた通路部213とで構成され、このスプール210は、バルブボディ200の中空孔201内に附勢バネ216に附勢されて挿入される。また、ピン215の外周面は、上記バルブボディ200の環状凸部201aの内周面に摺接し、ピン214の外周面は、上記バルブボディ200の環状凸部201bの内周面に摺接し、このピン215により中空孔201内に一方室202が隔成され、ピン214により中空孔201内に他方室203が隔成されており、上記環状凸部201aの内周には、シール部材S3が設けられ、環状凸部201bの内周にもシール部材S4が設けられ、これにより一方室202と他方室203は封止されている。
そして、上記したように、ピン215は附勢バネ217により他方室203側に向けて附勢され、スプール210の図4中左端面に当接させてあり、ピン214は、スプール210の図4中右端面に当接させてある。すなわち、スプール210は、附勢バネ216だけでなく附勢バネ217によっても他方室203に向けて附勢される。また、バルブボディ200内に形成された一方室202は上記前輪側高圧優先シャトル弁61fの出口ポートGfに連通され、他方室203は上記後輪側高圧優先シャトル弁61rの出口ポートGrに連通されている。さらに、バルブボディ200にはバイパス路62に接続される一対のバイパスポート204,205が設けられるとともに、環状凸部201aと遮断部211とで区画される空間220および隔壁部212と環状凸部201bとで区画される空間221はともに後述するリザーバRに連通されている。そして、スプール210が附勢バネ216,217により附勢されてピン214の図4中右端が中空孔201の右端面に当接した状態では、スプール210の遮断部211は、常時一方のバイパスポート204を遮断する状態となり、他方室203内の圧力が高まり他方室203内と一方室202内との圧力差が所定値以上となったときにピン214に押されてスプール210は附勢バネ216,217の付勢力に抗して図4中左方に移動し、上記遮断部211が一方のバイパスポート204を開放するようになっている。そして、この開閉弁63の場合、一方室202内の圧力を受けるピン215の受圧面はピン215の環状凸部201aに摺接する部位の断面積となり、他方室203内の圧力を受けるピン214の受圧面はピン214の環状凸部201bに摺接する部位の断面積となる。なお、図示するところでは、上記ピン215の上記断面積はピン214の上記断面積より大きくなるように設定されており、附勢バネ216,217のイニシャル荷重およびピン215の上記断面積とピン214の上記断面積の面積比によりクラッキング圧が設定され、このクラッキング圧は、上記した他方室203内と一方室202内との圧力差の所定値とされる。すなわち、上記所定値は、附勢バネ216,217のイニシャル荷重およびピン215の上記断面積とピン214の上記断面積の面積比により設定される。
そして、前輪側アクチュエータ2fのポート10f,11fは、4ポート3位置切換弁として構成された方向切換弁12fの制御ポートA,Bへと接続されている。つまり、給排流路25f、26fは、それぞれ方向切換弁12fのポートA、Bに接続されており、また、方向切換弁12fを介して供給流路30fと排出流路29fと選択的に連通または遮断されるようになっている。さらに、供給流路30fと排出流路29fとの間には圧力制御弁15fと逆止弁16fが設けられている。
すなわち、上記方向切換弁12fにおける供給ポートPは、供給流路30fを通して圧力制御弁15fの上流側へと結ばれており、さらに供給流路30fを上流に遡ると順に供給流路30f側からの作動油の流れを阻止する逆止弁16fの上流側と分流弁35の一方の出口ポートDに通じ、さらには、この分流弁35の入口ポートCに接続された供給流路40を介してリリーフ弁17の上流側および流体圧源たる油圧ポンプ20に通じている。
また、方向切換弁12fの排出ポートTは、排出流路29fを通して圧力制御弁15fの下流側へと結ばれており、さらに排出流路29fを下流に下ると順に逆止弁16fの下流側と、リリーフ弁17の下流側とに通じ、さらには、排出流路41を介してリザーバRに通じている。
そして、後輪側アクチュエータ2rのポート10r,11rは、4ポート3位置切換弁として構成された方向切換弁12rの制御ポートA,Bへと接続されている。つまり、給排流路25r、26rは、それぞれ方向切換弁12rのポートA、Bに接続されており、また、方向切換弁12rを介して供給流路30rと排出流路29rと選択的に連通または遮断されるようになっている。さらに、供給流路30rと排出流路29rとの間には圧力制御弁15rと逆止弁16rが設けられている。
すなわち、上記方向切換弁12rにおける供給ポートPは、供給流路30rを通して圧力制御弁15rの上流側へと結ばれており、さらに供給流路30rを上流に遡ると順に供給流路30r側からの作動油の流れを阻止する逆止弁16rの上流側と分流弁35の他方の出口ポートEに通じ、さらには、この分流弁35入口ポートCに接続された供給流路40を介してリリーフ弁17の上流側および流体圧源たる油圧ポンプ20に通じている。
また、方向切換弁12rの排出ポートTは、排出流路29rを通して圧力制御弁15rの下流側へと結ばれており、さらに排出流路29rを下流に下ると順に逆止弁16rの下流側と、リリーフ弁17の下流側とに通じ、さらには、排出流路41を介してリザーバRに通じている。
なお、分流弁35は、油圧ポンプ20から供給された作動油を一定の流量比率の下で分流し、これら分流された作動油を各方向切換弁12f,12rを通してそれぞれのアクチュエータ2f,2rに分配する。
このとき、分流弁35で分流される流量比率は、このスタビライザ装置が使用される状況、本実施の形態においてはシリンダ1f,1rが発生可能なモーメントを搭載される車両に適するように決定すればよい。そして、リザーバRと油圧ポンプ20とは吸込み管路31とで連通されており、油圧ポンプ20から供給される作動油は、最終的にはリザーバRに導かれ各流路40,41,30f,30r,29f,29r,25f,25r,26f,26rを還流することとなる。
また、各方向切換弁12f,12rは、それぞれ供給流路30f,30rに接続される供給ポートPを制御ポートAに、排出ポートTを制御ポートBに連通する連通ポジションと、各ポートを遮断する遮断ポジションと、各供給流路30f,30rに接続される供給ポートPを制御ポートBに、排出ポートTを制御ポートAに連通する連通ポジションの三つのポジションを備えた3位置4ポート弁であって、両端をバネ(付示せず)で附勢され、一方のソレノイド70r,70fに電流を印加すると、ポートTとポートAおよびポートPとポートBをそれぞれ連通し、他方のソレノイド71f、71rに電流を印加すると、ポートTとポートBおよびポートPとポートAをそれぞれ連通し、電流を印加しない状態ではバネ力により各ポートT、P、A、Bを遮断するようになっており、通常は電流が印加した状態で上記したいずれかの連通ポジションをとるように設定されている。
さらに、各圧力制御弁15f,15rは、それぞれ供給流路30f,30rと排出流路29f,29rとを連通する連通ポジションと遮断する遮断ポジションとを有した比例電磁式リリーフ弁であって、一端にバネ(付示せず)を備え、他端にこのバネに対向するソレノイド14f,14rと、圧力制御弁15f,15rの上流側の圧力を上記バネに対向するパイロット圧としたものであって、具体的には、たとえば、圧力制御弁は、弁体と、弁座と、弁体を弁座に着座させる方向に附勢するバネと、弁体を駆動するソレノイドとからなり、パイロット圧で弁体を開弁方向に押す推力が、上記バネとソレノイドの弁体を閉弁させる方向に押す推力に、打ち勝つと開弁するものであって,ソレノイド14f,14rに印加する電流の大きさによって、クラッキング圧をコントロールできるものであり、印加電流の大きさをコントロールすることによって、クラッキング圧を制御して供給流路30f,30r内の圧力を制御することが可能となっている。
また、リリーフ弁17は、それぞれ供給流路40と排出流路41とを接続する連通路36の途中に設けられ、連通路36を連通する連通ポジションと遮断する遮断ポジションとを有し、供給流路40の内圧が異常に上昇したときパイロット圧で開いて作動油をリザーバRに逃がすようになっている。
なお、逆止弁16f,16rとしては、従来から各種の油圧機器において広く一般に用いられているものをそのまま適用すればよく、それらの構成についてはよく知られていることであるのでここでは詳細な説明を省略する。
また、アクチュエータ2f,2rに負荷される油圧力を検出するための圧力検出器22f,22rが供給流路30f,30rの途中に設けられ、供給流路30f,30r内の油圧力を検出する。このような位置に圧力検出器22f,22rを設ければ方向切換弁12f,12rが各ポートを連通している状態においてアクチュエータ2f,2rの圧力室内の圧力を検出することが可能である。
したがって、上述したところでは、前輪側及び後輪側の可変機構Kf,Krは、図1の破線で囲んで示したように、それぞれ供給流路30f,30rと、排出流路29f,29rと、方向切換弁12f,12rと、圧力制御弁15f,15rとで構成されていることになる。
一方、これらと併せて、車体に作用した横加速度、舵角、車速および油圧力信号により圧力制御弁15f,15rのソレノイド14f,14rへの電流供給量を調節するとともに、方向切換弁12f,12rを切換制御しつつアクチュエータ2f,2rを通してスタビライザ1f,1rの捩り剛性を制御するためのコントローラたるECU(図示せず)が設けてある。なお、車両のロール抑制を目的とする場合にあっては、横加速度のみに基づいて制御することも可能である。
上記ECUは、たとえば車体に作用する横加速度の方向および大きさを横加速度信号として検出する横加速度検出器(図示はしないが、例えば、車体の該当部位に設けた横加速度センサ)と、舵角を信号として検出する舵角検出器(図示せず)と、車速を信号として検出する車速検出器(図示せず)と上述の圧力検出器22f,22rとに接続され、これら横加速度信号、舵角信号、車速信号、圧力信号を処理し、電流を各ソレノイド70f,70r,71f,71r,14f,14rに印加して、方向切換弁12f,12rと圧力制御弁15f,15rを制御動作させる。
すなわち、ECUは、複数の出力端子(図示せず)を備え、これらの出力端子を信号線(図示せず)で方向切換弁12f,12rのソレノイド70f,70r,71f,71rと圧力制御弁15のソレノイド14f,14rに結び、当該ECUで方向切換弁12f,12rと圧力制御弁15f,15rとを制御するようにしてある。
次に、以上のように構成したこの発明の実施の形態であるスタビライザ装置の作動について説明する。
例えば、車両が平坦路を直進走行しているとき、すなわち、横加速度検出器および舵角検出器からの検出信号がないときには、車体はローリングしないので、スタビライザの捩り剛性を高めると乗り心地が悪くなる。そのような状態の場合には、ECUは、スタビライザの機能を減殺するべく、圧力制御弁15f,15rのソレノイド14f,14rへ電流供給を行わず、圧力制御弁15f,15rのバネ力のみで弁体を附勢している状態とする。すなわち、圧力制御弁15f,15rのクラッキング圧は最小となる。その結果、油圧ポンプ20からの作動油は圧力制御弁15f,15rを押し開き、この圧力制御弁15f,15rを介して、排出流路29f,29rよりリザーバRへ還流する。さらに、方向切換弁12f,12rのソレノイド70f,70rもしくはソレノイド71f,71rへ電流を供給して上述の各ポートを連通するようにする。このとき、方向切換弁12f,12rの各ポートT,P,A,Bは連通されている状態であれば良いので、ポートTとポートAおよびポートPとポートBをそれぞれ連通させても良いし、ポートTとポートBおよびポートPとポートAをそれぞれ連通しても良い。
上述の場合のECUの具体的処理は、以下のようになる。先ず、横加速度および舵角がゼロであることを、各検出器からの信号の入力がないことをもって、ECUは車両が平坦路を直進走行していることから、スタビライザに負荷されるモーメントがゼロであることを認識して、上述のように、スタビライザの機能を減殺するべくスタビライザの捩り剛性を低くする。この場合、アクチュエータ2f、2rの各圧力室に何等油圧力が負荷されない状態にするべきであること、すなわち必要油圧値がゼロであることを算出する。そして、ECUは、各圧力室に油圧力の供給をストップするべく、上述のように圧力制御弁15f,15rへの電流供給をストップする。このとき、圧力制御弁を上述した比例電磁式リリーフ弁ではなく、電磁式の流量制御弁を使用する場合には、圧力検出器22f,22rで検出した油圧力の値と上述の算出した油圧力の値と比較して、その比較結果により流量制御弁に供給している電流の大きさを制御して、流量制御弁の弁開口面積を制御し算出した油圧力値と検出した油圧力値とが同一になるように制御するとしてもよい。なお、流量制御弁を使用する場合には、上述のような車両が平坦路を直進走行中のときは、流量制御弁の弁開口面積を無条件に最大にするようにしても良い。
また、一方では方向切換弁12f,12rを上述のように各ポートが連通するように電流供給を行う。したがって、この場合には、上述のように油圧ポンプ20から供給される作動油は圧力制御弁15f,15rを優先的に通過して、リザーバRに流入し、アクチュエータ2f、2rには何等油圧力が負荷されない状態に制御することができることとなる。
以上より、本実施の形態のスタビライザ装置では、アクチュエータ2f、2rの各圧力室に負荷される油圧力をゼロにすることができ、車両が直進走行中に突然路面からの入力があっても、各圧力室の油圧力が何等生じてない状態になっているので、スタビライザの機能が発現することを効果的に防止することが可能である。これにより車両における乗り心地が向上する。
他方、コーナリング時や車速が高速であって舵角が大きい時等のように車両が旋回走行に入って車体に横加速度が発生すると、ECUには横加速度検出器、舵角検出器および車速検出器が検出した各信号が入力される。
ECUは、これら各検出した信号に基づいて出力端子から信号線を通して圧力制御弁15f,15rのソレノイド14f,14rに供給している電流を制御して、当該各圧力制御弁15f,15rのクラッキング圧を制御して、前後の各アクチュエータ2f,2rに供給する圧力を制御する。
また、油圧ポンプ20から供給された作動油は、方向切換弁12f,12rのポートTに送り込まれると共に、これら方向切換弁12f,12rの戻りポートPはリザーバRへと連通される。
一方、ECUは、横加速度検出器、舵角検出器および車速検出器からの各信号に基づいて、そのとき車体に作用しているスタビライザに負荷される外部モーメントの大きさと向きに対応してスタビライザに負荷すべきモーメントとその向きを演算し、これに準じた制御信号を電流として各出力端子から出力する。
上記ECUの各出力端子から個々に出力された制御信号電流は、それぞれの信号線を通して対応する圧力制御弁15f,15rのソレノイド14f,14rおよび方向切換弁12f,12rのソレノイド70f,70rもしくはソレノイド71f,71rに通電され、これら圧力制御弁15f,15rおよび方向切換弁12f,12rを別々に制御する。
これに伴い、方向切換弁12f,12rは、スタビライザに負荷される外部モーメントの向きに対応して、スタビライザにその外部モーメントに対抗する向きにモーメントを負荷すべく、上記した連通ポジションのいずれかに切換わりポートTとポートAおよびポートPとポートBを連通もしくはポートTとポートBおよびポートPとポートAを連通するように切換え動作して、油圧ポンプ20から供給される作動油を給排流路25f,25r,26f,26rからアクチュエータ2f,2rのそれぞれのポート10f,10r,11f,11rのどちらかに流入させる。
かくして、アクチュエータ2f,2rには、それぞれのポート10f,10r,11f,11rのどちらかに流入させた作動油により作動油流入側の圧力室の油圧力が高まり、アクチュエータ2f、2rの一方の圧力室に作動油が供給されると、たとえば、ベーンが右方向に回転し、他方の圧力室に作動油が供給されると、ベーンが左方向に回転し、その結果アクチュエータ2f、2rにはベーンを左右方向に回転されるモーメントが発生し、これらモーメントにより前後輪用のスタビライザ1f,1rに対しスタビライザに作用した外部モーメントの向きと大きさに対抗するモーメントを加えることが可能となり、ひいては、車体のロールを抑えることが可能となる。つまり、車体にロールが発生しようとすると、前後輪用のスタビライザ1f,1rが横加速度の大きさに合わせて当該車体を反対側に傾けようとする方向に捩られる。これにより、スタビライザ1f,1rは、その方向への捩り剛性が大きくなり車体に生じようとするロール運動を抑制することになる。なお、このスタビライザ装置が搭載される車両の特性に適した制御を行えるようにすればよいので、外部モーメントに対しスタビライザに負荷するモーメントの大きさを車両の特性に適合するような値となるようにECUに算出させればよい。
また、上述の車体ロール時のECUの具体的処理は、以下のようになる。先ず、横加速度、車速および舵角に基づいて、ECUは車体がロールしていることを認識して、上述のように、スタビライザの機能を発現するべく捩り剛性を高くする、この場合アクチュエータ2f、2rの各圧力室のどちらかに油圧力を負荷してスタビライザにモーメントを負荷すべきであること、すなわち負荷すべきモーメントの発生に必要な油圧値を算出する。
そして、ECUは、アクチュエータ2f、2rのそれぞれの各圧力室のどちらかに必要とされる油圧力の供給するべく、上述のように圧力制御弁15f,15rへの電流供給を大きくするか小さくして供給流路30f,30r内の圧力が必要油圧値以上となると圧力制御弁15f,15rが開弁するようにする。すなわち、圧力制御弁15f,15rのクラッキング圧を上記必要油圧値となるように制御する。
このとき、上述したように圧力制御弁15f,15rを電磁式の流量制御弁とする場合には、圧力検出器22f,22rで検出した油圧力の値と上述の算出した油圧力の値と比較して、検出した油圧力が算出した油圧力の値より大きい場合には、流量制御弁の弁開口面積を大きくし、逆に、検出した油圧力が算出した油圧力の値より小さい場合には、流量制御弁の弁開口面積を小さくし、算出した油圧力値と検出した油圧力値とが同一になるように制御するとしてもよい。また、一方では方向切換弁12f,12rを上述のように各ポートが連通するように電流供給を行う。したがって、この場合には、油圧ポンプ20から供給される作動油は圧力制御弁15f,15rを通過する作動油とアクチュエータ2f、2rへ流入する作動油とに分けられ、アクチュエータ2f、2rにはECUが算出した油圧力が負荷される状態に制御することができることとなる。
以上が、スタビライザ装置の基本的な作動であるが、本実施の形態におけるスタビライザ装置の制御にあたっては、上記した制御手法は一例であって、これ以外の制御手法によってもよく、実際このスタビライザ装置が搭載される車両等に応じて最適となる制御手法を採用すればよい。
つづいて、車体ロール時の方向切換弁12f,12rから前輪側及び後輪側アクチュエータ2f,2r側の回路の作動について説明する。上述したように、車体ロール時には、方向切換弁12f,12rは、スタビライザに負荷される外部モーメントの向きに対応して、スタビライザにその外部モーメントに対抗する向きにモーメントを負荷すべく連通ポジションを採るが、前輪側の給排流路25fと給排流路26fは、上述したように、前輪側流路60fによって連通され、その前輪側流路60fの途中には前輪側高圧優先シャトル弁61fが設けられている。したがって、前輪側アクチュエータ2f内の各圧力室のうち高圧側となる方の圧力室内の圧力が前輪側シャトル弁61fを介して開閉弁63へパイロット圧として供給されることとなる。また、後輪側の給排流路25rと給排流路26rも、後輪側流路60rによって連通され、その後輪側流路60rの途中には後輪側高圧優先シャトル弁61rが設けられている。したがって、後輪側アクチュエータ2r内の各圧力室のうち高圧側となる方の圧力室内の圧力が後輪側シャトル弁61rを介して開閉弁63へパイロット圧として供給されることとなる。そして、上記開閉弁63は、上記前輪側アクチュエータ2f内の各圧力室のうち高圧側となる方の圧力室内の圧力と後輪側アクチュエータ2r内の各圧力室のうち高圧側となる方の圧力室内の圧力とをパイロット圧として開閉動作するから、前輪側アクチュエータ2fで発生するモーメントと後輪側アクチュエータ2rで発生するモーメントとに関連性をもたせる事ができる。
すなわち、前輪側アクチュエータ2fの高圧側圧力室内の圧力が後輪側アクチュエータ2rの高圧側圧力室内の圧力より高くなる場合に開閉弁63がバイパス路62を連通するようにしておけば、前輪側アクチュエータ2fで発生するモーメントより後輪側アクチュエータ2rで発生するモーメントが必ず小さくなるように設定することができ、車体ロール時の制御にあたり、前輪側スタビライザ1fの捩り剛性は、後輪側スタビライザ1rの捩り剛性より常に大きくなるので、ステアリング特性は常にアンダーステア傾向となり、理想的なステアリング特性を得ることが可能となる。そして、前後のアクチュエータ2f,2rは独立に制御可能であるが、従来と異なり、制御系に万が一支障が生じた場合にあっても、前輪側アクチュエータ2fで発生するモーメントと後輪側アクチュエータ2rで発生するモーメントとに関連性をもたせる事ができるので、後輪側アクチュエータ2r内の圧力が前輪側アクチュエータ2f内の圧力より著しく大きくなってしまう事態は招来されず、極端なオーバーステアを引き起こす危惧もない。したがって、車両の挙動を確実に安定させることができる。
また、開閉弁63の開弁する上記前輪側アクチュエータ2f内の各圧力室のうち高圧側となる方の圧力室内の圧力と後輪側アクチュエータ2r内の各圧力室のうち高圧側となる方の圧力室内の圧力との差が所定値を最適化する、すなわち、図3もしくは図4に示した開閉弁であれば、附勢バネやスプールの受圧面積比で開閉弁63のクラッキング圧を最適化すれば、車両に最適となるステアリング特性を提供することが可能となる。
さらに、前輪側及び後輪側アクチュエータ2f,2r内の高圧側となる圧力室内の圧力上昇時に、前輪側高圧優先シャトル弁61fの出口ポートGfから供給されるパイロット圧の上昇は、後輪側高圧優先シャトル弁61rの出口ポートGrから供給されるパイロット圧の上昇に比較して絞り弁65が作用して時間的に遅れる状態となるから、車両旋回初期もしくは旋回中に操舵量を大きくしていくような場面においては、必ず上記の前輪側アクチュエータ2fで発生するモーメントと後輪側アクチュエータ2rで発生するモーメントとの関連付けを行えることとなり、車両の挙動を確実に安定させる効果がより一層高くなる。つまり、たとえば、前輪側アクチュエータ2fの高圧側圧力室内の圧力が後輪側アクチュエータ2rの高圧側圧力室内の圧力より高くなる場合に開閉弁63がバイパス路62を連通するようにしておく場合、後輪側アクチュエータ2rの高圧側圧力室内の圧力が前輪側アクチュエータ2fの高圧側圧力室内の圧力より高い場合だけでなく、後輪側アクチュエータ2rの高圧側圧力室内の圧力と前輪側アクチュエータ2fの高圧側圧力室内の圧力とが同圧を保ったまま増加する場面にあっては、上記絞り弁65の作用により開閉弁63が開弁動作するので前輪側スタビライザ1fの捩り剛性を後輪側スタビライザ1rの捩り剛性より必ず高くすることができ、ステアリング特性を確実にアンダーステア傾向とすることができるのである。さらに、本実施の形態においては、流体圧源と可変機構との間に分流弁を設けたので、1つの流体圧源で前後のアクチュエータを制御することができると同時に、1つの流体圧源を使用しても、流体圧源に対して圧力制御弁が直列に配置されていないので、どちらかの圧力制御弁で急激な圧力変動が生じても、他方に影響することは無く、狙ったスタビライザ制御を行える。さらに、分流弁を設け可変機構を前後独立して設けたので、前後のスタビライザを独立して制御できるので、車両の走行状態により適した制御が可能であるとともに、油圧ポンプを複数必要としないので、消費出力も小さくすることが可能である。なお、本実施の形態においては、上記絞り弁65の作用によっても、前輪側アクチュエータ2f側で急激な圧力変動が生じても、圧力変動が緩和されるので、後輪側アクチュエータ2rへの影響を及ぼすことが防止されている。なお、複数の流
体圧源を使用して、前後のアクチュエータを独立して制御する場合にあっても、前輪側アクチュエータ2fで発生するモーメントと後輪側アクチュエータ2rで発生するモーメントとに関連性をもたせる事ができるので、後輪側アクチュエータ2r内の圧力が前輪側アクチュエータ2f内の圧力より著しく大きくなってしまう事態は招来されず、極端なオーバーステアを引き起こす危惧もない。したがって、車両の挙動を確実に安定させることができることは無論である。
また、開閉弁63の開閉動作には、前後の高圧優先シャトル弁61f,61rから供給される圧力をパイロット圧として利用しているので、機械的にスタビライザ1fの捩り剛性と後輪側スタビライザ1rの捩り剛性を関連付けすることが可能となるので、制御不能な状態に陥っても、車両の挙動の安定を確保することが可能となる。
さらに、開閉弁63にスプールを使用する場合には、スプールの受圧面積比や附勢バネのイニシャル荷重の変更によりクラッキング圧の幅広い設定が可能となり、機械的にスタビライザ1fの捩り剛性と後輪側スタビライザ1rの捩り剛性との関連付けの設定幅が広くなる。
またさらに、アクチュエータ2f、2rの各圧力室に負荷される油圧力を最適なものとすることができ、また圧力制御弁は比例電磁式リリーフ弁とした場合には、圧力検出器を設けずに精度の高い圧力制御を行うことが可能となり、また、比例電磁式リリーフ弁の代わりに電磁式の流量制御弁を使用する場合には、開口面積を変化可能であるので、各圧力室に負荷されている油圧力をきめ細かに制御可能である、すなわち、いずれにしても精度の高い制御が可能となる。つまり、従来のように各圧力室の差圧制御ではなく、直接各圧力室に負荷されている油圧力を制御しているので、路面からの突然の入力によってスタビライザに接続されているアクチュエータの各圧力室内の油圧は変動しても、リアルタイムで各圧力室内に供給されている油圧力を把握できるので、負荷すべきモーメントを維持制御することが可能である。また、その制御も制御しづらい差圧制御ではないので、制御が簡易となり、安定的にアクチュエータに油圧力を供給することが可能である。したがって、アクチュエータに安定的な油圧力を供給することが可能であるので、ロール抑制効果が高く、車両のロール時の乗り心地が向上する。なお、電磁式の流量制御弁を使用する場合には、圧力検出器の出力をフィードバック値として用いて弁開口面積を制御することにより、制御ゲインを大きくすることができるので、制御応答性が高まるという利点がある。
また、この場合に、路面入力によりアクチュエータが強制的に動かされると、油圧源の吐出量以上の作動油の供給が必要となる場合があるが、その場合には、供給流路30f,30r内が負圧となって、供給流路30f,30rと排出流路29f,29rとを接続する逆止弁16f,16rを作動油が押し開き、不足する作動油を供給流路30f,30r内に供給することが可能であるので、異音を発生する事もなく、各圧力室の油圧力をより一層が安定なものとすることが可能である。すなわち、安定したスタビライザ機能を発揮可能である。
さらに、上記したように、前後輪のスタビライザ1f、1rの捩り剛性をそれぞれ独立して制御し得ることから、車体に作用したヨーイングにも対処してコーナリング時における車両の回頭性や収斂性を向上させつつ、ステアリング特性を俊敏に保って車両を安定した状態で走行させることになる。
また、積載荷重により後輪側の負担荷重が増して当該後輪側の荷重移動量が大きくなったとしても、後輪側の反力モーメントが不足してロールが残ってしまったり、或いは、積載荷重の大小によってステアリング特性が変わってしまったりするようなこともなくなる。
なお、圧力検出器22f,22rは、圧力制御が不能となった場合等には、狙った制御が行われていないことを圧力検出器22f,22rで検出する圧力から判断することができるので、スタビライザ装置の回路上のどこかに異常があるか否かを判断する為にも使用可能である。また、本実施の形態においては、上述のように、圧力検出器22f,22rでアクチュエータの圧力室内の油圧力を検出して、その制御に使用することができるが、圧力制御弁15f,15rを電磁式の流量制御弁として場合にあっても、圧力検出器を使用せずとも、あらかじめ油圧ポンプの容量が決められていれば流量制御弁の弁開口面積によって油圧力がどの程度圧力室に負荷されているかが把握できるので、この場合には流量制御弁にどの程度電流を供給しているかによって油圧力の値をECUに認識させても良いことは無論である。
つづいて、フェール時の作動について説明する。このスタビライザ装置やこれを搭載している車両に何らかの異常が発生し制御不能な状態になった場合や方向切換弁12f,12rおよび圧力制御弁15f,15rに対するそれぞれの信号線の断線など制御システムに異常が発生したときには、これをECUが検知して方向切換弁12f,12rと圧力制御弁15f、15rの動作を停止する。
すると、圧力制御弁15f,15rはバネ力によって遮断ポジションをとり、方向切換弁12f,12rはバネ力によって各ポートを遮断するポジションに移行する。そうすると、圧力制御弁15f,15rは、油圧ポンプ20から供給されている作動油によって供給流路30f,30r内の圧力が上昇しパイロット圧によって開弁するので、作動油は、圧力制御弁15f,15rを通過してリザーバRへ流入することとなり、油圧ポンプ20とリザーバR間を還流する。したがって、アクチュエータ2f、2rには一切油圧力が負荷されない状態となる。この状況下で、仮にアクチュエータ2f、2rの各圧力室のどちらかで圧力が高まった状態となって、アクチュエータ2f、2rが捩れた状態となっても、上記前輪側アクチュエータ2fの2つの圧力室は前輪側迂回路27fによって連通されており、また、後輪側アクチュエータ2rの2つの圧力室は後輪側迂回路27rによって連通されているので、やがては各油圧室の油圧は平均化されると同時に、車両が直進状態となっても傾いたりせず、通常の車体姿勢を維持可能である。また、車体がロールした場合にあっても、オリフィス23f,23rを迂回路27f,27rの途中に設けているので、各アクチュエータ2f,2rのポート10f,10rからポート11f,11rへの作動油の移動は抑制されることから、スタビライザ機能を発現することが可能であるとともに、この場合にも、上記開閉弁63は機能して上記前後スタビライザ1f,1rの捩り剛性の関連性は失われない。
そして、異常時にあって、圧力制御弁15f,15rが万が一コンタミネーション等により閉じた状態となっても、油圧ポンプ20から供給される作動油は、各供給流路30f,30r内の油圧力が高まるので、連通路36のリリーフ弁17が開放されリザーバRへと流入することとなるので、スタビライザ装置が損傷することが防止される。この場合にも、上記開閉弁63は機能して上記前後スタビライザ1f,1rの捩り剛性の関連性は失われず、後輪側のスタビライザ1rの捩り剛性が前輪側のスタビライザ1rの捩り剛性よりも著しく大きくなる等の弊害が防止される。
したがって、フェール時にあっても、スタビライザ1f,1rに対してそれらを捩るような外力が働いたとしても、これらスタビライザ1f,1rは、方向切換弁12f,12rで作動油の流れをブロックすることによって剛体化されたアクチュエータ2f,2rを通して少なくとも通常のスラビライザとしての機能を保持しつつ、通常のステアリング特性に近い状態を保って車体のロールを抑制可能であると同時に、前後スタビライザ1f,1rの捩り剛性の関連性は失われないので、車両の挙動を安定させることが可能である。
このようにして、コーナリングでの車体のロール制御中における制御系の異常発生に際しては、アクチュエータ2f,2rをブロック状態に保って前後輪用のスタビライザ1f,1rの捩り剛性を制御中の状態に維持する。
かくして、フェールセーフ動作が行われたとしても、その前後での車体ロール剛性やステアリング特性は変わらず、車両の操縦特性に大きな変化をきたすことなく確実にフェールセーフ動作が行われることになる。
なお、上記したところでは、アクチュエータをロータリ式アクチュエータとしたが、図5に示すように、車両の前後輪側に設けられたスタビライザ50f、50rの一端に、たとえば二つの対向する圧力室を備えた両ロッド型のシリンダ51f、51rを接続してもよいことは勿論である。
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。