JP4204913B2 - 細胞または組織の培養制御装置とその方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、細胞または組織の培養制御装置とその方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、大掛かりな装置を必要とせず、人為的に細胞または組織の接着位置および伸長方向の制御を可能とする培養制御装置とその方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
細胞には、接着、成長、増殖、分泌、遺伝子発現等数多くの機能を有し、複雑なネットワークを形成して、多種多様な生理機能を発揮している。このような複雑な生命現象を解明するために、様々なアプローチが考えられ、その一つの方法として、培養細胞の接着位置や伸長方向を制御し、任意のパターンにて培養育成するパターン培養が考えられている。この培養細胞のパターニングを制御する方法について、数多く研究や検討がなされてきている。たとえば、フォトリソグラフィーを用いたパターン培養方法が提案されている(非特許文献1)。この非特許文献1の方法は、予め培養細胞の接着位置等のパターンをマイクロチップに写したマスク(あるいは、ネガ)と呼ばれるものを使用して、基板にパターンを転写することを特徴とするフォトリソグラフィーを利用している。このフォトリソグラフィーによって、基板上に細胞接着性と細胞非接着性の領域をパターンニングしておき、培養細胞のパターン培養に用いている。しかしながら、フォトリソグラフィーに用いられる各種の試薬類(有機系溶剤)は、細胞や組織等の培養の際に細胞接着の足場等として利用されるポリスチレン等の多くのポリマー材を溶解する等の悪影響があり、培養細胞の足場が失われ、良好な培養条件を保つことが困難であるという問題あった。
【0003】
近年、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を用いたパターン培養方法が開発された(非特許文献2)。このパターン培養方法は、パターンを産生するのにゴム状の高分子であるポリジメチルシロキサン(PDMS)で作製した微細構造を有する表面を利用して、細胞接着物質を基板に転写するソフトリソグラフィーと呼ばれる技術を基にしている。このようなPDMSを用いた技術を採用することによって、培養基板に対するフォトリソグラフィーが不要となり、上記のような有機系溶剤による足場の溶解等が生じることなく、培養条件への悪影響を減少することができる。
【0004】
しかしながら、非特許文献2に示したパターン培養では、PDMSの表面加工にフォトリソグラフィー、あるいは、電子ビームリソグラフィーを基盤としているため、大掛かりな装置が必要となり、コスト等がかかってしまうという問題があった。また、細胞接着性と細胞非接着性の領域を細胞の培養に先立って、パターニングする必要があり、細胞が接着する場所の規定に限定され、引き続いて生じる細胞の伸長や増殖の位置制御することが困難であり、さらに複数種類の細胞を段階的にパターニングすることも困難であった。このような問題は、基板の表面を細胞非接着性とし、任意の箇所を細胞接着性に改質、変化させることによって、解決すると期待できるが、このような技術は未だ報告、あるいは発表されていない。
【0005】
【非特許文献1】
Yoshihiro. Ito, Biomaterials 20; 2333-2342, 1999
【非特許文献2】
Ravi S. Kane, Shuichi Takayama, et al., Biomaterials 20; 2363-2376,1999
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであって、従来技術の問題点を解決し、大掛かりな装置を必要とせず、細胞接着性と細胞非接着性の領域を細胞の培養に先立って、パターニングする必要もなく、人為的に細胞または組織の接着位置および伸長方向の制御を可能とする培養制御装置とその方法を提供することを課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、前記の課題を解決するものとして、第1には、細胞または組織を培養し、その際の細胞または組織の接着位置および伸長方向を制御する培養制御装置であって、アルブミンが固定化された基板、この基板近傍に配置された電極、そしてこの電極の機能および動作を制御するためのコンピュータとを有し、この電極に酸化電位を印加することによって、電気化学的に次亜臭素酸( HOBr )または次亜塩素酸( HOCl )が生成され、基板に固定されたアルブミンの細胞非接着性を細胞接着性へと改質させることを特徴とする培養制御装置を提供し、第2には、アルブミンが、ウシ血清アルブミン( Bovine Serum Albumin; BSA )由来である前記第1の培養制御装置を提供する。
【0008】
またこの出願の発明は、第3には、前記第1または第2に記載の培養制御装置を用いて、細胞または組織を培養し、その際の細胞または組織の接着位置および伸長方向を制御する方法であって、アルブミンが固定化された基板の近傍に電極が配置され、またこの電極の機能および動作を制御するためのコンピュータが電極と連結設置され、このコンピュータの制御下にある電極に酸化電位を印加することによって、電気化学的に次亜臭素酸( HOBr )または次亜塩素酸( HOCl )を生成させ、基板に固定されたアルブミンの細胞非接着性を細胞接着性へと改質させることによって、細胞または組織の接着位置および伸長方向を制御する制御方法を提供し、第4には、前記第3の制御方法を段階的に行うことによって、さらに新たな細胞または組織を播種し、共培養して、この培養に際した接着位置および伸長方向を制御する制御方法を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は、上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について詳しく説明する。
【0011】
この出願の第1の発明は、大掛かりな装置を必要とすることなく、細胞や組織の接着位置や伸長方向等を人為的に制御することができる培養制御装置である。この培養制御装置では、培養細胞や組織が足場等に接着することを阻害する活性を有する細胞非接着性物質としてのアルブミンを、疎水化相互作用を利用して基板に固定化し、またマイクロ電極等の電極をこの基板近傍に配置させている。基板としては、半導体やガラス薄板等が利用することができ、特段限定されるものではない。また、電極は、任意に配置変更することができ、その移動や動作等は、電極と連結されているコンピュータによって制御することができる。
【0012】
そして、このコンピュータの制御下にある電極に酸化電位を印加することによって、電気化学的に活性酸化種を局所的に生成させることができる。この活性酸化種によって、アルブミンの細胞非接着性を細胞接着性へと改質することができる。すなわち、基板の任意の箇所で、電極に酸化電位(あるいは、印加時間が短いのなら酸化パルスともいうことがある)を印加することによって、活性酸化種、具体的には次亜臭素酸( HOBr )または次亜塩素酸( HOCl )が生成され、その箇所のみを細胞接着性に改質させることができ、細胞、あるいは組織が足場に接着することができるようになる。この電極のサイズは、小さいため、これら一連の反応は、上記のとおり局所的に行われる。
【0013】
なお、細胞接着面積は、電極と基板間の距離、また電極反応の時間依存しており、電極先端で生成された活性化学種の拡散供給に支配されている。
【0014】
この出願における「細胞」とは、いかなる由来の培養細胞でもよく、たとえば植物細胞、昆虫細胞、動物細胞があり、また異種由来の細胞同士あるいは細胞とコラーゲンゲル膜、繭糸、ナイロンメッシュ等の非細胞との融合細胞でもよい。もちろん、初代細胞や株化細胞でもよい。特に動物細胞であることが好ましい。さらに、動物細胞における初代細胞としては、ニワトリ胚由来細胞(PSG)、ラット初代心筋細胞、ラット初代肝細胞、マウス初代骨髄細胞、ブタ初代肝細胞、ウシ血管内皮細胞、ヒト初代臍帯血細胞、ヒト初代骨髄造血細胞、後根神経節細胞(DRG)等のヒト初代神経細胞等が例示される。また、株化細胞では、チャイニーズハムスター卵巣細胞由来のCHO細胞、ヒト子宮ガン由来のHeLa細胞、ヒト肝ガン由来のHuh7細胞やHepG2細胞等が例示できる。また、これら細胞にプラスミド導入やウイルス感染等の遺伝子操作により得られた細胞もこの出願の発明に用いることができる。
【0015】
また、細胞は、接着性細胞あるいは浮遊性細胞でもよいが、接着性細胞であることが、この出願の発明の効果をより顕著に得ることができるため、好ましい。
【0016】
一方、「組織」とは、たとえば肝臓、心臓、腎臓、皮膚、骨、軟骨、骨髄等や、これら例示した組織から派生して形成された組織等が挙げられる。
【0017】
多くの細胞や組織は、自身が増殖・伸長するためには、足場に接着することが多く、この出願の培養制御装置においては、この接着を阻害する細胞非接着性物質としてアルブミンを用いる。アルブミンの改質反応自体の速度はきわめて高いため、神経細胞、心筋細胞、内皮細胞等多くの培養細胞の接着誘導が可能となる。そして、このアルブミンは、ウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumin; BSA)由来のもののほか、ウシ胎児血清(Fetal Bovine Serum; FBS)、卵白中に含有するオボアルブミン、乳中のラクトアルブミン等を例示することができる。
【0018】
この出願の発明は、変性剤や活性酸化種等を用いることによって、アルブミンの細胞非接着性を消失させ、細胞や組織が足場に接着することができるようになる。すなわち、アルブミンの細胞非接着性を細胞接着性へと改質することができる。なお、変性剤としては、グアニジン塩酸等が例示できる。
【0019】
この出願の発明は、上記の通り変性剤あるいは活性酸化種いずれも使用することができるが、活性酸化種を使用することが好ましい。そして、具体的には、活性酸化種は、次亜臭素酸( HOBr )または次亜塩素酸( HOCl )のいずれかである。
【0020】
さらにまた、この出願の発明は、上記の発明の培養制御装置を用いて、細胞または組織を培養し、その際の細胞または組織の接着位置および伸長方向を制御する方法を提供する。この制御方法は、アルブミンが固定化された基板の近傍に電極が配置されており、この電極の動作を制御するためのコンピュータが電極と連結設置されている。そして、このコンピュータの制御下にある電極に酸化電位を印加することによって、電気化学的に活性酸化種、具体的には、次亜臭素酸( HOBr )または次亜塩素酸( HOCl )を局所的に生成させ、アルブミンの細胞非接着性を細胞接着性へと改質させることができる。これによって、細胞または組織の接着位置および伸長方向を制御することができる。
【0021】
そして、さらに、前記の制御方法を段階的に行うこともできる。この制御方法の場合には、さらに新たな細胞または組織を播種し、先に培養している細胞または組織と共培養して、この培養に際した接着位置および伸長方向を制御することができる。すなわち、既に細胞や組織が培養されている基板に対して、細胞や組織が培養されていない任意の箇所に電極を2次元走査し、そして酸化電位(酸化パルス等)を電極に印加して、次亜臭素酸( HOBr )または次亜塩素酸( HOCl )を生成させる。この活性酸化種が、再び基板の任意の箇所(局所的)のアルブミンの細胞非接着性を細胞接着性へと改質し、そこに新たな培養細胞あるいは組織を播種することによって、パターン培養を行うことができる。この際の新たに播種する細胞や組織の種類や由来は、特に限定されるものではなく、先に培養されている細胞種や組織由来とは、異なるものでもよい。研究、実験等の目的に合わせて、細胞や組織の種類や由来は、適宜に採択することができる。
【0022】
以上のような、この出願の発明によって、大掛かりな装置を必要とせず、細胞接着性と細胞非接着性の領域を細胞の培養に先立って、パターニングする必要もなく、人為的に細胞または組織の接着位置および伸長方向の制御を可能とする培養制御装置とその方法が実現されることとなり、医用工学やセンサ工学等の広い分野領域に革新的なツールとして提供することができ、産業的にも、経済的にも大きな効果をもたらすことが期待することができる。
【0023】
以下に実施例を説明し、さらに詳しくこの出願の発明について説明する。もちろん、以下の例によって発明が限定されることはない。
【0024】
【実施例】
<実施例1> 基板の前処理
ガラス板を基板として用いた。この基板を洗浄し、10mM n-オクタデシルトリエトキシシラン/ベンゼン溶液に2時間浸し、基板表面を疎水化させた。次に、ウシ血清アルブミン(BSA)を含むリン酸バッファー(PBS)溶液(0.5mgから10mg mL-1、pH 7.4)に30分間浸すことによって、BSAを疎水化相互作用によって、基板表面に吸着固定させた。
<実施例2> BSAに対する次亜臭素酸ナトリウムの効果
(1)培養細胞を用いた検討
基板に固定化されたBSAに対する次亜臭素酸ナトリウム(NaBrO)の効果を評価した。NaBrOは、弱酸によって容易に分解され、強い酸化力を有する次亜臭素酸(HBrO)を遊離するという特徴をもつ。基板全面にBSAを固定化した基板に、基板の任意の箇所を前記の特徴をもつNaBrO溶液(有効臭素9%のNaBrOをPBSで10倍希釈した溶液)に浸した。次に、培養細胞としてHeLa細胞をこの基板上に播種し、培養を行った。
【0025】
結果は、図1aに示したとおりである。公知の方法で、蛍光染色を行って、確認した。破線の左側は、NaBrO処理を行っていないものであり、破線の右側は、NaBrO処理を行ったものである。NaBrO処理を行うことによって、HeLa細胞は基板表面に接着し、培養されている。これは、すなわち、BSAの細胞非接着性の活性が失われ、細胞接着性へと改質されたことを意味すると考えられる。
(2)表面プラズモン(SPR)測定
BSAに対する次亜臭素酸ナトリウムの効果を表面プラズモン(SPR)測定を表面プラズモンバイオセンサ(SPR 670M、日本レーザー電子)を用いて評価した。基板全面にBSAを固定化した後に、血清を含有する培養液を流すと、図1bに示したとおり、BSA固定化後のシグナルの基準である共鳴角度が増加した。一方、BSAを固定化した基板にNaBrO溶液を接触させると、図1cのとおり、共鳴角度の減少が観測され、さらに血清を含む培養液を接触させると、共鳴角度が増加するという結果が確認された。
【0026】
このような結果から、基板に固定化されたBSAは、NaBrO溶液(すなわち、HBrO)で酸化されることで、血清タンパク質が基板に吸着しやすくなると考えることができる。すなわち、血清中に含まれるフィブロネクチン(FN)やラミニン(LN)等の細胞接着性物質(この場合、細胞接着性タンパク質)が基板に接着することで、細胞の基板への接着が促進されることと考えられる。
【0027】
なお、図には示していないが、BSA等の細胞非接着性物質が固定化されている基板を、塩酸グアニジン等の変性剤の水溶液にさらすことによっても、BSAの細胞非接着活性が消失し、培養細胞が基板表面に接着、増殖することができる。
<実施例3> 電気化学的手法の利用
(1)電極の作製
活性ハロゲン種の生成に用いた電極はマイクロ電極として作製した。電解エッチングにより細線化した白金(Pt)線をガラスキャピラリーに挿入し、加熱することによって、ガラスを融解し、キャピラリー内にPt線を封入した。次に、キャピラリー先端を研磨することによって、Pt部を露出させ、Ptマイクロディスク電極として、作製した。4mM フェロシアン化カリウム溶液中で得られてボルタモグラフから、電極半径は15μmとした。また、絶縁ガラス部分を含むチップ径は、約30μmとした。
(2)電極の操作、制御
作製された電極は、基板近傍に、かつ、コンピュータの制御の下になるよう設置した。すなわち、電極位置は、コンピュータの制御下にあるステッピングモーター駆動型xyzステージにマイクロ電極を固定して用いた。なお、参照極として、Ag/AgCl電極を用い、ハロゲン化物イオンの酸化電流はコンピュータにて制御した。
【0028】
図2aは、マイクロ電極で生成したHOBrを用いる基板の局所をBSAを改質する様子を模式的に例示した図であり、図2bは、Br-酸化電位を印加した後に、HeLa細胞を培養した様子を示した図である。
【0029】
図2aに例示したように、実施例1で作製した、BSAを固定化した基板を25mM KBr、0.1M KCl、0.1Mリン酸バッファー(pH 7.5)を含有する水溶液中に浸し、マイクロ電極−基板間の距離をd〜5μmに保持した。そして、1.7VのBr-酸化電位を電極に印加することで、基板局所にHOBrが生成され、基板上のBSAの細胞非接着活性を細胞接着性へと改質させた。
【0030】
結果は、図2bに示したとおりである。電極にBr-酸化電位を60秒間印加し、BSAが固定化された基板に局所的に配置、走査した。そして、培養細胞としてHeLa細胞を播種・培養した。Br-酸化電位を印加された電極を配置、走査した箇所のみにHeLa細胞を育成することができた。
【0031】
なお、HOClを用いて、基板に固定されている細胞非接着性物質(実施例においてはBSA)を細胞接着性物質に改質する場合には、0.1M KCl、0.1Mリン酸バッファー(pH 7.5)を含む水溶液中に浸し、1.9VのCl-酸化電位を電極に印加する。
<実施例4> 電極2次元移動による培養細胞における培養への効果
実施例3(2)に例示したと同様に、マイクロ電極およびBSA固定化済み基板を設置した。そして、Br-酸化電位を電極に印加した状態を保持したまま電極を1250μm/sの速度で、2次元走査して、BSAの細胞非接着活性を細胞接着性に改質させた。この時、電極の移動速度に依存してパターン幅が変化し、電極を高速移動することによって単一細胞の配列を形成させることができる。この電極の移動は、コンピュータの制御下で行われ、任意のパターン培養を行うことができる。この特徴を利用することによって、神経細胞の場合には、軸索の伸長方向も制御することができる。
【0032】
結果は、図3および図4に示したとおりであった。図3は、渦巻状に電極を2次元走査しBSAを改質し、培養細胞としてHeLa細胞を播種・培養した図である。この図3に示したとおり、HeLa細胞は、渦巻状に接着し、増殖した。
【0033】
また、図4aは後根神経節細胞(DRG)を通常の方法で培養した様子を示した図であり、図4bはBSAを改質した基板にDRGを播種・培養した結果を示した図である。改質を行ってない場合は、図4aのように、無秩序に増殖し、その一方で図4bに示したとおり、改質行った場合においては、改質を行った箇所に沿って、軸索が伸長することが確認された。
【0034】
このように、電極電位を保持しながら、電極を任意のパターン(形状)で2次元走査することによって、そのパターン(形状)に沿って細胞を培養することができることが確認された。
<実施例5> 培養細胞の再播種
図5aに、既に細胞を培養されている基板に対して、実施例3(2)の操作を行い、局所的に細胞非接着活性を改質させ、この箇所に培養細胞を播種・培養を行う工程を概略的に例示した。
【0035】
この図5aに例示したとおり、実施例3(2)の電極操作を繰り返すことによって、既に培養細胞が培養されている基板であっても、任意の箇所に後から別の培養細胞を播種・培養することができる。もちろん、このような電極操作を段階的に繰り返すことによって、多段階的に培養細胞(異種の細胞も)を播種して、培養することができる。
【0036】
結果は、図5b、cおよびdに示したとおりである。図5bは、HeLa細胞を2つの群に分け、パターン培養したものである。また、図5cに示したように、右側の細胞集団のパターン培養を行う前に、カルセイン処理を行っているため、左側の細胞集団のみが蛍光染色されることが確認された。図5dは、培養24時間後の状態を示した図である。この図5dに示したとおり、電極操作による局所的な改質をした箇所のみに円形に細胞集団が培養されていることが確認された。
<実施例6> アルブミン固定基板と基板電極の利用
図6aに例示したとおり、BSAを固定化した基板にスペーサーを介して電極部を備えた基板を設置し、電極部から実施例3(2)のように活性ハロゲン種を発生させ、この電極部に対応する箇所のみをBSAを細胞非接着活性を消失させ、改質させて、培養細胞を培養した。
【0037】
結果は、図6bおよび図6cに示したとおりであった。図6bに示した太線箇所に電極部を配置させており、この電極部を有する基板を用いて、Br-酸化電位を10秒間印加した。次いで、HeLa細胞をこの改質されたBSA固定基板に播種し、培養を行った。図6cのとおり、電極部の形状に沿って、培養細胞(本実施例では、HeLa細胞)が接着、増殖され、誘導されることが確認された。
【0038】
【発明の効果】
以上、詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、大掛かりな装置を必要とせず、細胞接着性と細胞非接着性の領域を細胞の培養に先立って、パターニングする必要もなく、人為的に細胞または組織の接着位置および伸長方向の制御を可能とする培養制御装置とその方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 BSAに対する次亜臭素酸ナトリウムの効果を示した図であり、aは細胞の培養状態を蛍光染色して確認した図を、bおよびcは表面プリズモン測定の結果をそれぞれ示している。
【図2】図2aは、マイクロ電極で生成したHOBrを用いる基板の局所におけるBSAを改質する様子を模式的に例示した図であり、図2bは、Br-酸化電位を電極に印加し、基板のアルブミンを改質した後に、HeLa細胞を培養した様子を示した図である。
【図3】渦巻状に電極を2次元走査して、酸化電位を電極に印加して、基板に細胞を培養した様子を示した図である。
【図4】酸化電位による基板上のアルブミンの改質前(a)と改質後(b)の後根神経節細胞の培養状態をそれぞれ示した図である。
【図5】図5aは、既に細胞を培養されている基板に対して、酸化電位を電極に印加して局所的に細胞非接着活性を改質させ、この箇所に培養細胞を播種・培養を行う工程を概略的に例示した図であり、その結果として、HeLa細胞培養2時間の様子を示した図(b)、右側細胞群のパターン培養前にカルセイン処理を行った場合の蛍光写真図(c)、HeLa細胞培養24時間後の様子を示した図(d)である。
【図6】図6aは、アルブミンを固定化した基板にスペーサーを介して電極部を備えた基板を設置し、この電極部に酸化電位を印加させ、局所的にアルブミンの細胞非接着活性を消失させ、改質させて、培養細胞を培養する様子を模式的に例示した図であり、図6bは、使用した電極部の形状を示した図であり、図6cは、図6bに示した電極部付き基板を使用した場合の、細胞培養の結果を示した図である。
Claims (4)
- 細胞または組織を培養し、その際の細胞または組織の接着位置および伸長方向を制御する培養制御装置であって、アルブミンが固定化された基板、この基板近傍に配置された電極、そしてこの電極の機能および動作を制御するためのコンピュータとを有し、この電極に酸化電位を印加することによって、電気化学的に次亜臭素酸( HOBr )または次亜塩素酸( HOCl )が生成され、基板に固定されたアルブミンの細胞非接着性を細胞接着性へと改質させることを特徴とする培養制御装置。
- アルブミンが、ウシ血清アルブミン( Bovine Serum Albumin; BSA )由来であることを特徴とする請求項1記載の培養制御装置。
- 請求項1または2に記載の培養制御装置を用いて、細胞または組織を培養し、その際の細胞または組織の接着位置および伸長方向を制御する方法であって、アルブミンが固定化された基板の近傍に電極が配置され、またこの電極の機能および動作を制御するためのコンピュータが電極と連結設置され、このコンピュータの制御下にある電極に酸化電位を印加することによって、電気化学的に次亜臭素酸( HOBr )または次亜塩素酸( HOCl )を生成させ、基板に固定されたアルブミンの細胞非接着性を細胞接着性へと改質させることによって、細胞または組織の接着位置および伸長方向を制御することを特徴とする制御方法。
- 請求項3記載の制御方法を段階的に行うことによって、さらに新たな細胞または組織を播種し、共培養して、この培養に際した接着位置および伸長方向を制御することを特徴とする制御方法。
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