JP4202180B2 - 垂直磁気記録ヘッドおよび磁気記録装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、少なくとも記録用の誘導型磁気変換素子を備えた垂直磁気記録ヘッドおよびこの垂直磁気記録ヘッドを搭載した磁気記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、例えばハードディスクドライブに代表される磁気記録装置が広く普及している。このハードディスクドライブの開発分野では、磁気記録媒体(以下、単に「記録媒体」という。)としてのハードディスクの面記録密度の向上に伴い、薄膜磁気ヘッドの性能向上が求められている。薄膜磁気ヘッドの記録方式としては、例えば、信号磁界の向きを記録媒体の面内方向(長手方向)にする長手記録方式と、信号磁界の向きを記録媒体の面に対して直交する方向にする垂直記録方式とが知られている。現在のところは長手記録方式が広く利用されているが、面記録密度の向上に伴う市場動向を考慮すれば、今後は長手記録方式に代わり垂直記録方式が有望視されるものと想定される。なぜなら、垂直記録方式では、高い線記録密度を確保可能な上、記録済みの記録媒体が熱揺らぎの影響を受けにくいという利点が得られるからである。
【0003】
垂直記録方式の薄膜磁気ヘッドの主要部は、例えば、磁束を発生させる薄膜コイルと、この薄膜コイルにおいて発生した磁束を記録媒体に向けて放出することにより記録処理を実行する磁極層と、この磁極層から放出されて記録媒体を磁化した磁束を環流させるリターンヨーク層とを含んで構成されている。この種の薄膜磁気ヘッドとしては、例えば、磁極層のトレーリング側にリターンヨーク層が配設されたものがいくつか知られている(例えば、特許文献1〜4参照。)。これらの薄膜磁気ヘッドでは、主に、磁極層から磁束が放出された際に、その磁極層のうちのトレーリング側端縁近傍部分から放出された磁束の一部、すなわち周囲への磁束の広がり成分がリターンヨーク層に流れ込むため、結果として磁束の広がりが抑制される。したがって、これらの薄膜磁気ヘッドでは、リターンヨーク層を備えていない薄膜磁気ヘッドと比較して、記録媒体対向面(エアベアリング面)近傍における記録磁界勾配がより急峻となるため、SN(Signal to Noise )比が向上するという利点が得られる。
【0004】
【特許文献1】
米国特許第4656546号明細書
【特許文献2】
特開平05−325137号公報
【特許文献3】
特開平06−236526号公報
【特許文献4】
特開2003−045008号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、垂直記録方式の薄膜磁気ヘッドの記録性能を安定に確保するためには、例えば、サイドイレーズの発生を可能な限り抑制する必要がある。このサイドイレーズとは、エアベアリング面に放出された不要な磁束に起因して、隣接トラック(記録対象トラックに隣接するトラック)に記録されていた情報が意図せずに上書きされる不具合である。しかしながら、磁極層のトレーリング側にリターンヨーク層が配設された従来の薄膜磁気ヘッドでは、リターンヨーク層の存在に基づいてSN比が向上する一方で、そのリターンヨーク層の構成によってはサイドイレーズの発生を効果的に抑制し得ないおそれがるという問題があった。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、サイドイレーズの発生を可能な限り抑制し、記録性能を安定に確保することが可能な垂直磁気記録ヘッドを提供することにある。
【0007】
また、本発明の第2の目的は、本発明の垂直磁気記録ヘッドを搭載した磁気記録装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る第1の垂直磁気記録ヘッドは、媒体進行方向に移動する記録媒体に対向する記録媒体対向面から後方に向かって一定幅を保って延在する第1の磁極部分と、この第1の磁極部分の後方に連結され、第1の磁極部分よりも大きな幅を有する第2の磁極部分とを含む磁極層と、この磁極層の媒体進行方向側において記録媒体対向面から後方に向かって延在し、記録媒体対向面に近い先端部分がギャップ層により第1の磁極部分から隔てられると共に記録媒体対向面から遠い部分が第2の磁極部分に連結されるように配設された環流磁極層とを備え、環流磁極層のうちの先端部分が、第1の磁極部分に対応して設けられた中央部分と、この中央部分の幅方向の両側に連結された2つの側方部分とを含み、2つの側方部分の後端縁が中央部分の後端縁よりも後方に位置するようにしたものである。また、本発明に係る第2の垂直磁気記録ヘッドは、媒体進行方向に移動する記録媒体に対向する記録媒体対向面から後方に向かって一定幅を保って延在する第1の磁極部分と、この第1の磁極部分の後方に連結され、第1の磁極部分よりも大きな幅を有する第2の磁極部分とを含む磁極層と、この磁極層の媒体進行方向側において記録媒体対向面から後方に向かって延在し、記録媒体対向面に近い先端部分がギャップ層により第1の磁極部分から隔てられると共に記録媒体対向面から遠い部分が第2の磁極部分に連結されるように配設された環流磁極層とを備え、環流磁極層のうちの先端部分が、第1の磁極部分に対応して設けられた中央部分と、この中央部分の幅方向の両側に連結された2つの側方部分とを含み、2つの側方部分の後端縁が中央部分の後端縁よりも後方に位置し、第1および第2の磁極部分が互いに連結する箇所に、磁極層の幅が第1の磁極部分から第2の磁極部分へ拡がる拡幅位置が設けられており、第2の磁極部分が、拡幅位置から後方に向かって幅が拡がる拡幅部分を含み、2つの側方部分が、中央部分に近い側に位置し、拡幅部分の幅の拡がりに沿って延びる拡幅端縁の位置またはその拡幅端縁の位置よりも前方の位置において後端縁の一部を規定する内側側方部分と、中央部分から遠い側に位置し、後端縁の他の一部を規定する外側側方部分とを含むようにしたものである。
【0009】
本発明に係る磁気記録装置は、記録媒体と、この記録媒体に磁気的に情報を記録する垂直磁気記録ヘッドとを有し、この垂直磁気記録ヘッドが、媒体進行方向に移動する記録媒体に対向する記録媒体対向面から後方に向かって一定幅を保って延在する第1の磁極部分と、この第1の磁極部分の後方に連結され、第1の磁極部分よりも大きな幅を有する第2の磁極部分とを含む磁極層と、この磁極層の媒体進行方向側において記録媒体対向面から後方に向かって延在し、記録媒体対向面に近い先端部分がギャップ層により第1の磁極部分から隔てられると共に記録媒体対向面から遠い部分が第2の磁極部分に連結されるように配設された環流磁極層とを備え、環流磁極層のうちの先端部分が、第1の磁極部分に対応して設けられた中央部分と、この中央部分の幅方向の両側に連結された2つの側方部分とを含み、2つの側方部分の後端縁が中央部分の後端縁よりも後方に位置するようにしたものである。
【0010】
ここで、「後方」とは記録媒体対向面から遠ざかる方向であり、「幅方向」とは第1の磁極部分における一定幅の方向(すなわちトラック幅方向)であり、「媒体進行方向側」とは媒体進行方向における媒体流出側である。この「媒体流出側」とは、媒体進行方向に向かって進行する記録媒体の移動状態を1つの流れと見た場合にその流れの流出する側をいい、一般に「トレーリング側」と呼ばれている。なお、媒体流出側の反対側、すなわち流れの流入する側は「媒体流入側」であり、一般に「リーディング側」と呼ばれている
【0011】
本発明に係る垂直磁気記録ヘッドまたは磁気記録装置では、磁極層の媒体進行方向側に配設された環流磁極層を備え、この環流磁極層のうちの先端部分が第1の磁極部分に対応して位置する中央部分とこの中央部分の幅方向の両側に連結された2つの側方部分とを含み、2つの側方部分の後端縁が中央部分の後端縁よりも後方に位置しているため、2つの側方部分の後端縁の位置が中央部分の後端縁の位置と一致している場合と比較して、磁極層中において局所的に集中した過剰な磁束が先端部分に流れ込みやすくなる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
まず、図1〜図4を参照して、本発明の一実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの構成について説明する。図1は薄膜磁気ヘッドの断面構成を表しており、(A)はエアベアリング面40に平行な断面構成を示し、(B)はエアベアリング面40に垂直な断面構成を示している。また、図2および図3は図1に示した薄膜磁気ヘッドの主要部の平面構成を表し、図4はその主要部の露出面の平面構成を拡大して表している。なお、図1に示した上向きの矢印Bは、薄膜磁気ヘッドに対して記録媒体(図示せず)が相対的に進行する方向、すなわち記録媒体の進行方向(媒体進行方向)を示している。図3に示した一点鎖線は、1つの構成要素(後述する磁極層10,TH規定部15)中の区分を説明するために付記したものである。
【0014】
以下の説明では、図1〜図4の各図中におけるX軸方向の距離を「幅」、Y軸方向の距離を「長さ」、Z軸方向の距離を「厚さまたは高さ」と表記する。また、Y軸方向のうちのエアベアリング面40に近い側を「前側または前方」、その反対側を「後側または後方」と表記するものとする。これらの表記内容は、後述する図5以降においても同様とする。
【0015】
この薄膜磁気ヘッドは、例えば、記録・再生の双方の機能を実行可能な複合型ヘッドであり、図1に示したように、例えばアルティック(Al2 3 ・TiC)などのセラミック材料により構成された基板1上に、例えば酸化アルミニウム(Al2 3 ;以下、単に「アルミナ」という。)などの非磁性絶縁材料により構成された絶縁層2と、磁気抵抗効果(MR;Magneto-resistive )を利用して再生処理を実行する再生ヘッド部100Aと、例えばアルミナなどの非磁性絶縁材料により構成された分離層7と、垂直記録方式の記録処理を実行する単磁極型の記録ヘッド部100Bと、例えばアルミナなどの非磁性絶縁材料により構成されたオーバーコート層17とがこの順に積層された構成を有している。
【0016】
再生ヘッド部100Aは、例えば、下部シールド層3と、シールドギャップ膜4と、上部シールド層5とがこの順に積層された構成を有している。このシールドギャップ膜4には、記録媒体に対向する記録媒体対向面(エアベアリング面)40に一端面が露出するように、再生素子としてのMR素子6が埋設されている。
【0017】
下部シールド層3および上部シールド層5は,例えば、いずれもニッケル鉄合金(NiFe(例えばNi:80重量%,Fe:20重量%);以下、単に「パーマロイ(商品名)」という。)などの磁性材料により構成されており、それらの厚さは約1.0μm〜2.0μmである。シールドギャップ膜4は、MR素子6を周囲から電気的に分離するものであり、例えばアルミナなどの非磁性絶縁材料により構成されている。MR素子6は、例えば、巨大磁気抵抗効果(GMR;Giant Magneto-resistive )またはトンネル磁気抵抗効果(TMR;Tunneling Magneto-resistive )などを利用して再生処理を実行するものである。
【0018】
記録ヘッド部100Bは、例えば、絶縁層9,11により周囲を埋設された磁極層20と、連結用の開口(バックギャップ12BG)を有するギャップ層12と、磁束発生用の薄膜コイル13を埋設した絶縁層14と、リターンヨーク層30(環流磁極層)とがこの順に積層された構成を有している。なお、図2では、記録ヘッド部100Bのうちの磁極層20、薄膜コイル13およびリターンヨーク層30のみを示している。
【0019】
磁極層20は、薄膜コイル13において発生した磁束を収容し、その磁束を記録媒体に向けて放出するものであり、エアベアリング面40から後方に向かって延在している。この磁極層20は、例えば、磁束の収容量(以下、「磁気ボリューム」という。)を確保するための補助的な磁束の収容部分として機能する補助磁極層8と、主要な磁束の収容部分およびその磁束の放出部分として機能する主磁極層10とが積層された2段構成を有している。また、磁極層20は、例えば、図4に示したように、エアベアリング面40に露出した矩形状の露出面10P(幅W1,高さT1)を有している。なお、絶縁層9,11は、例えば、アルミナなどの非磁性絶縁材料により構成されている。
【0020】
補助磁極層8は、例えば、主磁極層10のリーディング側に、エアベアリング面40よりも後退した位置から後方に向かって延在しており、その主磁極層10に連結されている。この補助磁極層8は、例えば、主磁極層10と同様の磁性材料により構成されており、矩形状の平面形状を有している。なお、本発明で言うところの「連結」とは、単に接触しているだけでなく、接触した上で磁気的導通が可能な状態にあることを意味している。「リーディング側」の意味については、以下でリターンヨーク層30の構成を説明する際に詳述する。
【0021】
主磁極層10は、エアベアリング面40から後方に向かって延在しており、例えば、図2および図3に示したように、エアベアリング面40から後方に向かって一定幅W1(例えばW1=0.2μm以下)を保って延在する先端部10A(第1の磁極部分)と、この先端部10Aの後方に連結され、先端部10Aの幅W1よりも大きな幅W2(W2>W1)を有する後端部10B(第2の磁極部分)とを含んで構成されている。この先端部10Aの幅W1は、記録媒体の記録トラック幅を規定するものである。先端部10Aと後端部10Bとが互いに連結する箇所には、主磁極層10の幅が先端部10Aから後端部10Bへ拡がる位置、すなわち薄膜磁気ヘッドの記録性能を決定する重要な因子のうちの1つであるフレアポイントFP(拡幅位置)が設けられている。この主磁極層10は、例えば、鉄コバルト合金(FeCo)系や鉄コバルトニッケル合金(FeCoNi)系の磁性材料により構成されており、その厚さは約0.2μm〜0.3μmである。
【0022】
主磁極層10のうちの後端部10Bは、例えば、図2および図3に示したように、フレアポイントFPから順に、このフレアポイントFPから後方に向かって幅が拡がる拡幅部分10BFと、一定幅W2を有する一定幅部分10BRとを含んでいる。すなわち、後端部10Bのうちの拡幅部分10BFは、その拡幅部分10BFの幅の拡がりに沿って延びる拡幅端縁E1を有している。
【0023】
ギャップ層12は、エアベアリング面40近傍において主磁極層10とリターンヨーク層30との間に磁気的なギャップを設けるためのものである。このギャップ層12は、例えば、アルミナなどの非磁性絶縁材料により構成されており、その厚さは約0.2μm以下である。
【0024】
薄膜コイル13は、例えば、バックギャップ12BGを中心としてスパイラル状に巻回する巻線構造を有しており、銅(Cu)などの高導電性材料により構成されている。なお、図1および図2では、薄膜コイル13を構成する複数の巻線のうちの一部のみを示している。
【0025】
絶縁層14は、薄膜コイル13を周囲から電気的に分離するためのものである。この絶縁層14は、例えば、加熱されることにより流動性を示すフォトレジスト(感光性樹脂)やスピンオングラス(SOG)などにより構成されており、その表面が丸みを帯びて傾斜している。この絶縁層14の最前端位置は、薄膜磁気ヘッドの記録性能を決定する重要な因子のうちの1つであるスロートハイトゼロ位置TPであり、このスロートハイトゼロ位置TPとエアベアリング面40との間の距離がスロートハイトTHである。
【0026】
リターンヨーク層30は、磁極層20から放出されて記録媒体を磁化した磁束(環流磁束)を環流させるものであり、その磁極層20のトレーリング側にエアベアリング面40から後方に向かって延在し、エアベアリング面40に近い側においてギャップ層12を介して磁極層20(先端部10A)と対向すると共にエアベアリング面40から遠い側のバックギャップ12BGにおいて磁極層20(後端部10B)と連結されている。このリターンヨーク層30は、例えば、図1〜図3に示したように、互いに別体をなす2つの構成要素、すなわちエアベアリング面40に近い側に位置し、環流磁束の主要な入口として機能するTH規定部15(先端部分)と、環流磁束の流路として機能するヨーク部16とが積層された2段構成を有している。これらのTH規定部15とヨーク部16とは、例えば、互いに同一の幅W3を有している。なお、図3では、主磁極層10と共に、リターンヨーク層30のうちのTH規定部15のみを示している。
【0027】
このリターンヨーク層30は、例えば、図4に示したように、エアベアリング面40に露出した矩形状の露出面30P(幅W3,高さT3)を有している。この露出面30Pは、TH規定部15の露出面15Pとヨーク部16の露出面16Pとが合成されたものであり、例えば、その幅W3は露出面10Pの幅W1以上(W3≧W1)であり、かつ高さT3は露出面10Pの高さT1の5倍以上(T3≧5×T1)である。なお、露出面30Pの幅W3と対比される露出面10Pの幅W1とは、厳密には、露出面10Pのうちのトレーリング側の端縁E2の幅をいう。図4では、露出面30Pの幅W3が露出面10Pの幅W1よりも大きい場合(W3>W1)を示している。
【0028】
上記した「トレーリング側」とは、媒体進行方向B(図1参照)に向かって進行する記録媒体の移動状態を1つの流れと見た場合に、その流れの流出する側(媒体流出側)をいい、ここでは高さ方向(Z軸方向)における上側をいう。これに対して、「リーディング側」とは、流れの流入する側(媒体流入側)をいい、ここでは高さ方向における下側をいう。
【0029】
TH規定部15は、例えば、図1および図3に示したように、ギャップ層12により主磁極層10(先端部10A)から隔てられ、エアベアリング面40からこのエアベアリング面40とバックギャップ12BGとの間の位置P1まで延在している。このTH規定部15は、例えば、パーマロイや鉄コバルトニッケル合金(FeCoNi)などの磁性材料により構成されている。このTH規定部15には絶縁層14が隣接しており、すなわちTH規定部15は、絶縁層14の最前端位置(スロートハイトゼロ位置TP)を規定する役割を担っている。
【0030】
このTH規定部15は、図3に示したように、略凹形状の平面形状を有しており、主磁極層10のうちの先端部10Aに対応して位置し、エアベアリング面40からこのエアベアリング面40と位置P1との間の位置P2まで延在する中央部分15Aと、この中央部分15Aの幅方向の両側に連結され、エアベアリング面40から位置P1まで延在する2つの側方部分15BR,15BLとを含んで構成されている。この中央部分15Aは、例えば、エアベアリング面40から位置P2としてフレアポイントFPまで延在している。すなわち、2つの側方部分15BR,15BLの後端縁(位置P1)は、中央部分15Aの後端縁(位置P2)よりも後方に位置している。
【0031】
2つの側方部分15BR,15BLは、例えば、幅方向において中央部分15Aに近い側に位置し、後端部10B(拡幅部分10BF)のうちの拡幅端縁E1の位置またはその拡幅端縁E1の位置よりも前方の位置まで延在して2つの側方部分15BR,15BLの後端縁の一部を規定する内側側方部分15BUR,15BULと、幅方向において中央部分15Aから遠い側に位置し、位置P1まで延在して2つの側方部分15BR,15BLの後端縁の他の一部を規定する外側側方部分15BSR,15BSLとを含んでいる。エアベアリング面40と直交する方向、すなわち長さ方向(Y軸方向)における内側側方部分15BUR,15BULと拡幅端縁E1との間の距離(離間距離)Lは、例えば、拡幅端縁E1の全域に渡って一定であり、具体的には0μm≦L≦1.0μmの範囲内、好ましくは0≦L≦0.7μmの範囲内である。なお、図3では、例えば、内側側方部分15BUR,15BULが拡幅端縁E1の位置よりも前方の位置まで延在している場合を示している。
【0032】
ヨーク部16は、例えば、図1および図2に示したように、TH規定部15および磁極層20(後端部10B)の双方に連結され、絶縁層14を覆うようにエアベアリング面40からバックギャップ12BGまで延在している。このヨーク部16は、TH規定部15と別体をなしており、例えば、TH規定部15と同様の材料により構成されている。
【0033】
次に、図1および図2を参照して、薄膜磁気ヘッドの動作について説明する。
【0034】
この薄膜磁気ヘッドでは、情報の記録時において、図示しない外部回路を通じて記録ヘッド部100Bの薄膜コイル13に電流が流れると、その薄膜コイル13において磁束が発生する。このとき発生した磁束は、磁極層20を構成する補助磁極層8および主磁極層10に収容されたのち、主に主磁極層10内を後端部10Bから先端部10Aに流れる。この際、主磁極層10内を流れる磁束は、その主磁極層10の幅の減少に伴い、フレアポイントFPにおいて絞り込まれて集束するため、先端部10Aのうちのトレーリング側部分に磁束が集中する。この磁束が先端部10Aから外部に放出されると、記録媒体の表面と直交する方向に記録磁界が発生し、この記録磁界により記録媒体が垂直方向に磁化されるため、記録媒体に磁気的に情報が記録される。記録媒体を磁化した磁束(環流磁束)は、リターンヨーク層30に環流される。
【0035】
一方、再生時においては、再生ヘッド部100AのMR素子6にセンス電流が流れると、記録媒体からの再生用の信号磁界に応じてMR素子6の抵抗値が変化する。そして、この抵抗変化がセンス電流の変化として検出されるため、記録媒体に記録されている情報が磁気的に読み出される。
【0036】
次に、図1および図5〜図8を参照して、薄膜磁気ヘッドの製造方法について説明する。図5〜図8は薄膜磁気ヘッドの製造工程を説明するためのものであり、いずれも図1に対応する断面構成を示している。
【0037】
以下では、まず、図1を参照して薄膜磁気ヘッド全体の製造工程の概略について説明したのち、図5〜図8を参照して薄膜磁気ヘッドの主要部(記録ヘッド部100B)の形成工程について詳細に説明する。なお、薄膜磁気ヘッドの一連の構成要素の材質、寸法および構造的特徴等については既に詳述したので、その説明を随時省略するものとする。
【0038】
この薄膜磁気ヘッドは、主に、めっき処理やスパッタリングなどの成膜技術、フォトリソグラフィ技術などのパターニング技術、ならびにドライエッチングなどのエッチング技術等を含む既存の薄膜プロセスを利用して、各構成要素を順次形成して積層させることにより製造される。すなわち、図1に示したように、まず、基板1上に絶縁層2を形成したのち、この絶縁層2上に、下部シールド層3と、MR素子6を埋設したシールドギャップ膜4と、上部シールド層5とをこの順に積層させることにより、再生ヘッド部100Aを形成する。続いて、再生ヘッド部100A上に分離層7を形成したのち、この分離層7上に、絶縁層9,11により周囲を埋設された磁極層20(補助磁極層8,主磁極層10)と、バックギャップ12BGを有するギャップ層12と、薄膜コイル13を埋設した絶縁層14と、リターンヨーク層30(TH規定部15,ヨーク部16)とをこの順に積層させることにより、記録ヘッド部100Bを形成する。最後に、記録ヘッド部100B上にオーバーコート層17を形成したのち、機械加工や研磨加工を利用してエアベアリング面40を形成することにより、薄膜磁気ヘッドが完成する。
【0039】
記録ヘッド部100Bを形成する際には、分離層7を形成したのち、まず、図5に示したように、分離層7上に、例えばめっき処理を使用して、後工程においてエアベアリング面40となる位置(図1参照)から後退するように補助磁極層8を選択的に形成する。続いて、例えばスパッタリングを使用して、補助磁極層8およびその周辺の分離層7を覆うように、アルミナよりなる前駆絶縁層9Zを形成する。
【0040】
続いて、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing )法を使用して、少なくとも補助磁極層8が露出するまで前駆絶縁層9Zを研磨して平坦化することにより、図6に示したように、補助磁極層8の周囲を埋め込むように絶縁層9を形成する。続いて、補助磁極層8と絶縁層9とにより構成された平坦面上に、例えばめっき処理やスパッタリングを使用して、鉄コバルト合金(FeCo)系または鉄コバルトニッケル合金(FeCoNi)系の磁性材料よりなる磁性層(図示せず)を形成したのち、フォトリソグラフィ技術やエッチング技術を使用して磁性層をパターニングすることにより、主磁極層10を選択的に形成する。この主磁極層10を形成する際には、図3に示したように、前方から順に先端部10Aおよび後端部10B(拡幅部分10BF,一定幅部分10BR)を含むようにする。これにより、補助磁極層8と主磁極層10との2段構成を有する磁極層20が形成される。続いて、例えばスパッタリングを使用して、主磁極層10およびその周辺の絶縁層9を覆うように、アルミナよりなる前駆絶縁層11Zを形成する。
【0041】
続いて、例えばCMP法を使用して、少なくとも主磁極層10が露出するまで前駆絶縁層11Zを研磨して平坦化することにより、図7に示したように、主磁極層10の周囲を埋め込むように絶縁層11を形成する。このときの研磨処理により、先端部10Aのトレーリング側の端縁E2(図4参照)が画定される。続いて、主磁極層10と絶縁層11とにより構成された平坦面上に、例えばスパッタリングを使用して、約0.2μm以下の厚さとなるようにギャップ層12を形成する。このギャップ層12を形成する際には、バックギャップ12BGを覆わないようにする。
【0042】
続いて、ギャップ層12上のうち、後工程において薄膜コイル13が形成されることとなる領域よりも前方の領域に、例えばめっき処理を使用して、TH規定部15を選択的に形成する。このTH規定部15を形成する際には、そのTH規定部15の位置に基づいてスロートハイトTHが決定される点を考慮して形成位置を調整すると共に、図3に示したように、主磁極層10のうちの先端部10Aに対応して位置する中央部分15Aと、この中央部分15Aの幅方向の両側に連結され、中央部分15Aよりも後方まで延在する2つの側方部分15BR,15BL(内側側方部分15BUR,15BUL,外側側方部分15BSR,15BSL)とを含むようにする。この際、特に、離間距離L、すなわち長さ方向(Y軸方向)における内側側方部分15BUR,15BULと拡幅端縁E1との距離Lが、0μm≦L≦1.0μmの範囲内、好ましくは0≦L≦0.7μmの範囲内となるようにする。
【0043】
続いて、図7に示したように、TH規定部15とバックギャップ12BGとの間のギャップ層12上に薄膜コイル13を選択的に形成したのち、例えばフォトリソグラフィ技術を使用して、薄膜コイル13の各巻線間およびその周辺を覆うようにフォトレジスト膜14Fを選択的に形成する。このフォトレジスト膜14Fを形成する際には、例えば、その前方部分がTH規定部15に隣接するようにする。なお、必ずしもTH規定部15を形成したのちに薄膜コイル13を形成する必要はなく、例えば、薄膜コイル13を形成したのちにTH規定部15を形成するようにしてもよい。
【0044】
続いて、フォトレジスト膜14Fを焼成することにより、図8に示したように、絶縁層14を形成する。この焼成によりフォトレジスト膜14Fが流動するため、前方部分がTH規定部15に隣接したまま、後方部分が丸みを帯びて傾斜するように絶縁層14が形成される。
【0045】
最後に、例えばめっき処理やスパッタリングを使用して、絶縁層14およびその周辺を覆うように、パーマロイや鉄コバルトニッケル合金(FeCoNi)よりなるヨーク部16を選択的に形成する。このヨーク部16を形成する際には、前方においてTH規定部15に連結されると共に後方においてバックギャップ12BGを通じて磁極層20(後端部10B)と連結されるようにする。これにより、TH規定部15とヨーク部16との2段構成を有するリターンヨーク層30が形成され、記録ヘッド部100Bが完成する。
【0046】
本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドでは、磁極層20のトレーリング側に配設されたリターンヨーク層30を備え、このリターンヨーク層30のうちのTH規定部15が、主磁極層10のうちの先端部10Aに対応して位置する中央部分15Aと、この中央部分15Aの幅方向の両側に連結され、その中央部分15Aよりも後方まで延在する2つの側方部分15BR,15BLとを含むようにしたので、以下の理由により、サイドイレーズの発生を可能な限り抑制し、記録性能を安定に確保することができる。
【0047】
すなわち、先端部10Aとこの先端部10Aよりも大きな幅を有する後端部10Bとを含む主磁極層10内を磁束が流れる際には、上記したように、広幅の後端部10Bから狭幅の先端部10Aへ流れる磁束がフレアポイントFPにおいて絞り込まれて集束するため、特に、後端部10BのうちのフレアポイントFP近傍に磁束が集中し、磁束飽和が生じる。この点に関して、磁極層20のトレーリング側にリターンヨーク層30が配設された薄膜磁気ヘッドでは、後端部10BのうちのフレアポイントFP近傍に集中した磁束の一部、すなわち磁束飽和に起因して先端部10Aに流れ込めない過剰な磁束がギャップ層12を介してリターンヨーク層30に流れ込むため、後端部10Bからエアベアリング面40に磁束が放出されにくくなる。この後端部10Bからエアベアリング面40への磁束の放出のしやすさは、サイドイレーズの発生状況に大きな影響を及ぼす特性であるため、サイドイレーズの発生抑制の観点から言えば、後端部10Bからエアベアリング面40へ磁束が可能な限り放出されにくくなるようにする必要がある。
【0048】
図9は、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッド(図3参照)に対する比較例としての薄膜磁気ヘッドの主要部の平面構成を表している。また、図10は比較例の薄膜磁気ヘッドに関する問題点を説明するためのものであり、図11は本実施の形態の薄膜磁気ヘッドに関する利点を説明するためのものである。これらの図10および図11では、それぞれ図9および図3に示したT−T線に沿った薄膜磁気ヘッドの主要部の断面構成を表している。図9に示した比較例の薄膜磁気ヘッドは、TH規定部15(中央部分15A,2つの側方部分15BR,15BL)に対応するTH規定部115(中央部分115A,2つの側方部分115BR,115BL)を有していると共に、2つの側方部分115BR,115BLの後端縁の位置が中央部分115Aの後端縁の位置(位置P2)に一致しており、すなわちTH規定部115が全体として矩形状の平面形状を有している点を除き、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドと同様の構成を有している。
【0049】
この比較例の薄膜磁気ヘッドでは、図10に示したように、TH規定部115(側方部分115BR)の後端が主磁極層10(後端部10B)の前端から比較的大きく離れているため、後端部10Bに集中した過剰な磁束JがTH規定部115に流れ込みにくくなる。この場合には、後端部10Bに集中した磁束Jのうちの一部はTH規定部115に流れ込むが、そのTH規定部115に流れ込めない残りの磁束Jはエアベアリング面40に放出されてしまう。したがって、比較例の薄膜磁気ヘッドでは、TH規定部115が後端部10Bに集中した磁束Jを十分に逃がしきれないため、依然としてサイドイレーズを誘発するおそれがある。
【0050】
これに対して、2つの側方部分15BR,15BLが中央部分15Aよりも後方まで延在している本実施の形態の薄膜磁気ヘッドでは(図3参照)、図11に示したように、TH規定部15(側方部分15BR)の後端が後端部10Bの前端に接近しているため、後端部10Bに集中した過剰な磁束JがTH規定部15に流れ込みやすくなる。この場合には、後端部10Bに集中した磁束Jの多くがTH規定部15に流れ込み、後端部10Bからエアベアリング面40に磁束Jが放出されにくくなる。したがって、本実施の形態の薄膜磁気ヘッドでは、TH規定部15が後端部10Bに集中した磁束Jを十分に逃がしやすいため、サイドイレーズの発生を可能な限り抑制し得るのである。
【0051】
特に、本実施の形態では、2つの側方部分15BR,15BLのうちの内側側方部分15BUR,15BULと拡幅端縁E1との離間距離Lを0μm≦L≦1.0μmの範囲内とすれば、サイドイレーズの発生をより効果的に抑制することができる。この点に関しては、さらに、離間距離Lを0≦L≦0.7μmの範囲内とすれば、サイドイレーズの発生を極めて効果的に抑制することができる。
【0052】
また、本実施の形態では、内側側方部分15BUR,15BULが拡幅端縁E1の位置またはその拡幅端縁E1の位置よりも前方の位置まで延在するようにし、すなわち内側側方部分15BUR,15BULが主磁極層10(後端部10B)にオーバーラップしないようにしたので、内側側方部分15BUR,15BULが後端部10Bにオーバーラップした場合に生じ得る不具合、すなわち後端部10Bからギャップ層12を介して内側側方部分15BUR,15BULに磁束が過剰に流れすぎたことに起因して、後端部10Bから先端部10Aに流れる磁束量が減少した結果、記録用の磁界強度が低下することを防止することができる。この点を考慮すれば、例えば、TH規定部15の形成位置に関する誤差等の要因に起因して意図せずに内側側方部分15BUR,15BULが主磁極層10にオーバーラップしてしまい、これにより記録用の磁界強度が低下することを防止する上では、内側側方部分15BUR,15BULが拡幅端縁E1の位置まで延在するよりもむしろ、拡幅端縁E1の位置よりも前方の位置まで延在するようにするのが好ましい。
【0053】
また、本実施の形態では、リターンヨーク層30の露出面30Pの高さT3を磁極層20の露出面10Pの高さT1の5倍以上にすると共に、露出面30Pの幅W3を露出面10Pの幅W1以上にしたので、露出面30Pの面積が露出面10Pの面積よりも大きくなり、リターンヨーク層30による意図しない書き込みを防止することができる。なぜなら、露出面30Pの面積が露出面10Pの面積と同等未満である場合には、記録済みの磁束が環流するための環流口(すなわち露出面30P)が狭いため、その磁束が露出面30P近傍に集中し、本来書き込みを実行する部分でないリターンヨーク層30により意図せずに書き込みが行われやすくなるが、露出面30Pの面積が露出面10Pの面積以上である場合には、十分に広い環流口を通じて記録済みの磁束がリターンヨーク層30に円滑に環流され、その磁束が露出面30P近傍に集中しにくいため、リターンヨーク層30による意図しない書き込みが防止されるのである。
【0054】
また、本実施の形態では、エアベアリング面40から後退した補助磁極層8とエアベアリング面40に露出した主磁極層10とが積層された2段構成を有するように磁極層20を構成したので、磁束の放出口を小さくしつつ磁気ボリュームが確保される。したがって、記録磁界強度を高めることができる。
【0055】
なお、本実施の形態では、図3に示したように、TH規定部15の構成に関して、2つの側方部分15BR,15BLのうちの内側側方部分15BUR,15BULが拡幅端縁E1に対応した幅を有するようにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、内側側方部分15BUR,15BULの幅はサイドイレーズの発生状況等に応じて自由に変更可能である。具体的には、例えば、図12に示したように、内側側方部分15BUR,15BULが拡幅端縁E1に対応した幅よりも小さな幅を有するようにしてもよいし、あるいは図13に示したように、内側側方部分15BUR,15BULが拡幅端縁E1に対応する幅よりも大きな幅を有するようにしてもよい。これらの図12または図13に示したいずれの場合においても、上記実施の形態とほぼ同様の効果を得ることができる。なお、図12または図13に示した薄膜磁気ヘッドに関する上記以外の特徴は、図3に示した場合と同様である。
【0056】
また、本実施の形態では、図3に示したように、TH規定部15の構成に関して、内側側方部分15BUR,15BULと拡幅端縁E1との離間距離Lが拡幅端縁E2の全域に渡って一定となるようにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、上記した適性範囲(0μm≦L≦1.0μm)内である限り、離間距離Lはサイドイレーズの発生状況等に応じて自由に変化可能である。具体的には、例えば、図14に示したように、後方に向かって離間距離Lが次第に大きくなるようにしてもよいし、あるいは図15に示したように、後方に向かって離間距離Lが次第に小さくなるようにしてもよい。これらの図14または図15に示したいずれの場合においても、上記実施の形態とほぼ同様の効果を得ることができる。なお、図14または図15に示した薄膜磁気ヘッドに関する上記以外の特徴は、図3に示した場合と同様である。
【0057】
また、本実施の形態では、TH規定部15の構成を変形することにより、サイドイレーズの発生に関する抑制効果をさらに高めることが可能である。すなわち、図3を参照して説明すれば、主磁極層10内を流れる磁束が後端部10Bに集中した場合には、特に、後端部10Bのうちの側端縁E3と拡幅端縁E1とが交わる箇所に設けられた角部Cに磁束が著しく集中する。したがって、サイドイレーズの抑制効果を高めるためには、この角部Cからエアベアリング面40へ磁束が放出されること重点的に抑制する必要がある。
【0058】
この点を考慮すれば、例えば、図16に示したように、2つの側方部分15BR,15BLのうちの内側側方部分15BUR,15BULおよび外側側方部分15BSR,15BSLがそれぞれ後端部10Bの拡幅端縁E1および側端縁E3に沿って配置され、これらの内側側方部分15BUR,15BULおよび外側側方部分15BSR,15BSLが角部Cを周囲から囲むようにしてもよい。この場合には、角部Cに集中した磁束が内側側方部分15BUR,15BULおよび外側側方部分15BSR,15BSLに円滑に流れ込みやすくなるため、上記実施の形態と比較して、サイドイレーズの抑制効果をより高めることができる。
【0059】
また、例えば、図17に示したように、外側側方部分15BSR,15BSLが後端部10Bのうちの角部Cを含む領域と部分的にオーバーラップするようにしてもよい。この場合においても、角部Cに集中した磁束が外側側方部分15BSR,15BSLに円滑に流れ込みやすくなるため、サイドイレーズの抑制効果をより高めることができる。ただし、例えば、外側側方部分15BSR,15BSLを後端部10Bにオーバーラップさせすぎると、上記したように先端部10Aに供給される磁束量が不足して記録用の磁界強度が低下するおそれがあるため、サイドイレーズの発生抑制と記録用の磁界強度の確保とを両立し得るように、外側側方部分15BSR,15BSLと後端部10Bとのオーバーラップ面積を調整するのが好ましい。具体的には、例えば、先端部10Aに到達した過剰な磁束が中央部分15Aを通じてTH規定部15に流れ込む量よりも、角部Cに集中した磁束が外側側方部分15BSR,15BSLを通じてTH規定部15に流れ込む量を少なくするために、先端部10Aと中央部分15Aとのオーバーラップ面積S1よりも、後端部10Bと外側側方部分15BSR,15BSLとのオーバーラップ面積の和S2+S3が小さくなるようにするのが好ましい(S1>S2+S3)。
【0060】
また、本実施の形態では、図3に示したように、TH規定部15の構成に関して、2つの側方部分15BR,15BLが内側側方部分15BUR,15BULおよび外側側方部分15BSR,15BSLを含むようにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、2つの側方部分15BR,15BLが外側側方部分15BSR,15BSLを含まずに、内側側方部分15BUR,15BULのみを含むようにしてもよい。この場合においても、上記実施の形態とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0061】
また、本実施の形態では、図1に示したように、リターンヨーク層30の構成に関して、互いに別体をなすTH規定部15とヨーク部16とを含むようにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、図18に示したように、TH規定部15とヨーク部16とが一体化された連続体をなすようにしてもよい。図18に示した場合においても、上記実施の形態とほぼ同様の効果を得ることができる。なお、図18に示した薄膜磁気ヘッドに関する上記以外の特徴は、図1に示した場合と同様である。
【0062】
以上をもって、本発明の一実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドについての説明を終了する。
【0063】
次に、図19および図20を参照して、本発明の薄膜磁気ヘッドを搭載した磁気記録装置の構成について説明する。図19は磁気記録装置の切り欠き概観構成を表し、図20は磁気記録装置の主要部の外観構成を拡大して表している。この磁気記録装置は、上記実施の形態において説明した薄膜磁気ヘッドを搭載したものであり、例えばハードディスクドライブである。
【0064】
この磁気記録装置は、図19に示したように、例えば、筐体200の内部に、情報が記録される記録媒体としての複数の磁気ディスク201と、各磁気ディスク201に対応して配置され、先端にヘッドスライダ210が取り付けられた複数のアーム202とを備えている。磁気ディスク201は、筐体200に固定されたスピンドルモータ203を中心として回転可能になっている。アーム202は、動力源としての駆動部204に接続されており、筐体200に固定された固定軸205を中心として、ベアリング206を介して旋回可能になっている。なお、図19では、例えば、固定軸205を中心として複数のアーム202が一体的に旋回するモデルを示している。
【0065】
ヘッドスライダ210は、図20に示したように、アーム202の旋回時に生じる空気抵抗を減少させるために凹凸構造が設けられた略直方体状の基体211のうち、エアベアリング面220と直交する一側面(図20中、手前側の面)に、垂直記録方式の薄膜磁気ヘッド212が配設された構成を有している。この薄膜磁気ヘッド212は、例えば、上記実施の形態において説明した構成を有するものである。なお、図20では、ヘッドスライダ210のうちのエアベアリング面220側の構造を見やすくするために、図19に示した状態とは上下を反転させた状態を示している。
【0066】
なお、薄膜磁気ヘッド212の詳細な構成については、上記実施の形態において既に詳細に説明したので、その説明を省略する。
【0067】
この磁気記録装置では、情報の記録時においてアーム202が旋回することにより、磁気ディスク201のうちの所定の領域(記録領域)までヘッドスライダ210が移動する。そして、磁気ディスク201と対向した状態において薄膜磁気ヘッド212が通電されると、上記実施の形態において説明したように動作することにより、薄膜磁気ヘッド212が磁気ディスク201に情報を記録する。
【0068】
この磁気記録装置では、本発明の薄膜磁気ヘッド212を備えるようにしたので、上記実施の形態と同様の作用により、サイドイレーズの発生を可能な限り抑制し、記録性能を安定に確保することができる。
【0069】
なお、この磁気記録装置に関する上記以外の作用、効果および変形等は、上記実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0070】
【実施例】
次に、本発明に関する実施例について説明する。
【0071】
上記実施の形態において説明した一連の薄膜磁気ヘッドを代表して、変形例として図12に示した構成を有する薄膜磁気ヘッド(以下、単に「本発明の薄膜磁気ヘッド」という。)の諸特性を調べたところ、以下のことが確認された。なお、本発明の薄膜磁気ヘッドの諸特性を調べる際には、その諸特性を比較評価するために、図9に示した比較例の薄膜磁気ヘッドの諸特性も調べた。
【0072】
まず、記録磁界勾配を調べたところ、図21に示した結果が得られた。図21は、記録磁界強度の記録位置依存性を表している。図中の「横軸」は記録媒体上のクロストラック方向(記録媒体上に設けられた複数のトラックを横切る方向)における記録位置D(記録対象トラックのセンター位置(0位置)からの距離;μm)を示し、「縦軸」は比較のために規格化した記録磁界強度H(無単位)を示している。図中に示した「21A(破線)」は比較例の薄膜磁気ヘッドについて表し、「21B(実線)」は本発明の薄膜磁気ヘッドについて表している。
【0073】
図21に示した結果から判るように、記録磁界強度Hは、記録対象トラックのセンター位置(0位置)においてピークを示し、その位置から離れるにしたがって次第に減少した。本発明の薄膜磁気ヘッド(21B)と比較例の薄膜磁気ヘッド(21A)とを比較すると、比較例よりも本発明において記録対象トラック周辺の記録磁界強度Hが減少し、すなわち記録磁界勾配が大きくなった。このことから、本発明の薄膜磁気ヘッドでは、隣接トラック領域における記録磁界強度Hがより減少することが確認された。
【0074】
続いて、サイドイレーズの発生状況を調べたところ、図22に示した結果が得られた。図22は、再生信号出力比の記録位置依存性を表している。図中の「横軸」は図21の「横軸」と同様に記録位置D(μm)を示し、「縦軸」は再生信号出力比S(無単位)、すなわち初期の再生信号出力値S1と記録対象トラック(0位置のトラック)に上書き処理を施したのちの再生信号出力値S2との比(S2/S1)を示している。図中に示した「22A(破線)」は比較例の薄膜磁気ヘッドについて表し、「22B(実線)」は本発明の薄膜磁気ヘッドについて表している。
【0075】
図22に示した結果から判るように、再生信号出力比Sは、記録対象トラックのセンター位置(0位置)において最小となり、その位置から離れるにしたがって次第に増加した。本発明の薄膜磁気ヘッド(22B)と比較例の薄膜磁気ヘッド(22A)とを比較すると、比較例よりも本発明において記録対象トラック周辺における再生信号出力比Sが大きくなり、すなわち初期の再生信号出力値S1からの減衰量が緩和された。このことから、本発明の薄膜磁気ヘッドでは、サイドイレーズの発生が抑制されることが確認された。
【0076】
最後に、漏れ磁界強度の変動状況を調べたところ、図23に示した結果が得られた。図23は、漏れ磁界強度比の離間距離依存性を表している。図中の「横軸」は離間距離L(内側側方部分15BUR,15BULと拡幅端縁E1との間の距離;μm)を示し、「縦軸」は漏れ磁界強度比FH、すなわち比較例の薄膜磁気ヘッドに関する漏れ磁界強度FH1と本発明の薄膜磁気ヘッドに関する漏れ磁界強度FH2との比(FH2/FH1)を示している。なお、「漏れ磁界強度」とは、後端部10Bからエアベアリング面40に放出された不要な磁束(漏れ磁束)に基づく磁界強度をいう。
【0077】
図23に示した結果から判るように、漏れ磁界強度比FHは、離間距離Lが短くなるにしたがって次第に低下した。特に、離間距離Lが1.0μm以下になると漏れ磁界強度比FHが0.6以下となり、さらに離間距離Lが0.7μm以下になると漏れ磁界強度比FHが0.3以下となった。このことから、本発明の薄膜磁気ヘッドでは、離間距離Lが1.0μm以下になると、比較例の薄膜磁気ヘッドに対して約60%以下となるまで漏れ磁界強度が低下し、さらに離間距離Lが0.7μm以下になると、比較例の薄膜磁気ヘッドに対して約30%以下となるまで漏れ磁界強度が低下することが確認された。
【0078】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されず、種々の変形が可能である。具体的には、例えば、上記実施の形態および実施例では、本発明を単磁極型ヘッドに適用する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、リング型ヘッドに適用してもよい。また、上記実施の形態では、本発明を複合型薄膜磁気ヘッドに適用する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、書き込み用の誘導型磁気変換素子を有する記録専用の薄膜磁気ヘッドや、記録・再生兼用の誘導型磁気変換素子を有する薄膜磁気ヘッドにも適用可能である。もちろん、本発明を、書き込み用の素子および読み出し用の素子の積層順序を逆転させた構造の薄膜磁気ヘッドについても適用可能である。
【0079】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の第1または第2の垂直磁気記録ヘッドあるいは磁気記録装置によれば、磁極層の媒体進行方向側に配設された環流磁極層を備え、この環流磁極層のうちの先端部分が、第1の磁極部分に対応して位置する中央部分と、この中央部分の幅方向の両側に連結された2つの側方部分とを含み、この2つの側方部分の後端縁が中央部分の後端縁よりも後方に位置するようにしたので、2つの側方部分の後端縁の位置が中央部分の後端縁の位置に一致している場合と比較して、磁極層中において居所的に集中した過剰な磁束が先端部分に流れ込みやすくなる。したがって、磁極層から記録媒体対向面へ磁束が放出されにくくなるため、サイドイレーズの発生を可能な限り抑制し、記録性能を安定に確保することができる。特に、本発明の第2の垂直磁気記録ヘッドによれば、2つの側方部分のうちの内側側方部分が、拡幅部分の幅の拡がりに沿って延びる拡幅端縁の位置またはその拡幅端縁の位置よりも前方の位置において後端縁の一部を規定するようにしたので、記録用の磁界強度が低下することを防止することができる。
【0081】
また、本発明の垂直磁気記録ヘッドでは、記録媒体対向面と直交する方向における内側側方部分と拡幅端縁との間の距離が、0μm以上1.0μm以下の範囲内となるようにすれば、サイドイレーズの発生をより効果的に抑制することができる。この場合には、さらに、内側側方部分と拡幅端縁との間の距離が0μm以上0.7μm以下の範囲内となるようにすれば、サイドイレーズの発生を極めて効果的に抑制することができる。
【0082】
また、本発明の垂直磁気記録ヘッドでは、2つの側方部分のうちの内側側方部分および外側側方部分が、第2の磁極層部分のうちの角部を周囲から囲むようにすれば、サイドイレーズの抑制効果をより高めることができる。
【0083】
また、本発明の垂直磁気記録ヘッドでは、2つの側方部分のうちの外側側方部分が第2の磁極層部分のうちの角部を含む領域と部分的にオーバーラップするようにすれば、サイドイレーズの抑制効果をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの断面構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した薄膜磁気ヘッドの主要部の平面構成を表す平面図である。
【図3】図1に示した薄膜磁気ヘッドの主要部の他の平面構成を表す平面図である。
【図4】図1に示した薄膜磁気ヘッドの主要部の露出面の平面構成を拡大して表す平面図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの製造工程における一工程を説明するための断面図である。
【図6】図5に続く工程を説明するための断面図である。
【図7】図6に続く工程を説明するための断面図である。
【図8】図7に続く工程を説明するための断面図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドに対する比較例としての薄膜磁気ヘッドの主要部の平面構成を表す平面図である。
【図10】比較例の薄膜磁気ヘッドに関する問題点を説明するための断面図である。
【図11】本発明の一実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドに関する利点を説明するための断面図である。
【図12】本発明の一実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの構成に関する第1の変形例の平面構成を表す平面図である。
【図13】本発明の一実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの構成に関する第2の変形例の平面構成を表す平面図である。
【図14】本発明の一実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの構成に関する第3の変形例の平面構成を表す平面図である。
【図15】本発明の一実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの構成に関する第4の変形例の平面構成を表す平面図である。
【図16】本発明の一実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの構成に関する第5の変形例の平面構成を表す平面図である。
【図17】本発明の一実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの構成に関する第6の変形例の平面構成を表す平面図である。
【図18】本発明の一実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの構成に関する第7の変形例の平面構成を表す断面図である。
【図19】本発明の薄膜磁気ヘッドを搭載した磁気記録装置の切り欠き外観構成を表す斜視図である。
【図20】図19に示した磁気記録装置の主要部の外観構成を拡大して表す斜視図である。
【図21】記録磁界強度の記録位置依存性を表す図である。
【図22】再生信号出力比の記録位置依存性を表す図である。
【図23】漏れ磁界強度比の離間距離依存性を表す図である。
【符号の説明】
1…基板、2,14…絶縁層、3…下部シールド層、4…シールドギャップ膜、5…上部シールド層、6…MR素子、7…分離層、8…補助磁極層、9Z,11Z…前駆絶縁層、10…主磁極層、10A…先端部、10B…後端部、10BF…拡幅部分、10BR…一定幅部分、10P,15P,16P,30P…露出面、12…ギャップ層、12BG…バックギャップ、13…薄膜コイル、14F…フォトレジスト膜、15…TH規定部、15A…中央部分、15BR,15BL…側方部分、15BSR,15BSL…外側側方部分、15BUR,15BUL…内側側方部分、16…ヨーク部、17…オーバーコート層、20…磁極層、30…リターンヨーク層、40,220…エアベアリング面、100A…再生ヘッド部、100B…記録ヘッド部、200…筐体、201…磁気ディスク、202…アーム、203…スピンドルモータ、204…駆動部、205…固定軸、206…ベアリング、210…ヘッドスライダ、211…基体、212…薄膜磁気ヘッド、B…媒体進行方向、C…角部、E1…拡幅端縁、E2…端縁、E3…側端縁、FP…フレアポイント、J…磁束、L…離間距離、TH…スロートハイト、TP…スロートハイトゼロ位置。

Claims (11)

  1. 媒体進行方向に移動する記録媒体に対向する記録媒体対向面から後方に向かって一定幅を保って延在する第1の磁極部分と、この第1の磁極部分の後方に連結され、前記第1の磁極部分よりも大きな幅を有する第2の磁極部分とを含む磁極層と、
    この磁極層の媒体進行方向側において前記記録媒体対向面から後方に向かって延在し、前記記録媒体対向面に近い先端部分がギャップ層により前記第1の磁極部分から隔てられると共に前記記録媒体対向面から遠い部分が前記第2の磁極部分に連結されるように配設された環流磁極層と
    を備え、
    前記環流磁極層のうちの前記先端部分が、前記第1の磁極部分に対応して設けられた中央部分と、この中央部分の幅方向の両側に連結された2つの側方部分とを含み、
    前記2つの側方部分の後端縁が前記中央部分の後端縁よりも後方に位置する
    ことを特徴とする垂直磁気記録ヘッド。
  2. 前記第1および第2の磁極部分が互いに連結する箇所に、前記磁極層の幅が前記第1の磁極部分から前記第2の磁極部分へ拡がる拡幅位置が設けられており、
    前記第2の磁極部分が、前記拡幅位置から後方に向かって幅が拡がる拡幅部分を含む
    ことを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録ヘッド。
  3. 前記2つの側方部分が、
    前記中央部分に近い側に位置し、前記拡幅部分の幅の拡がりに沿って延びる拡幅端縁の位置またはその拡幅端縁の位置よりも前方の位置において前記後端縁の一部を規定する内側側方部分と、
    前記中央部分から遠い側に位置し、前記後端縁の他の一部を規定する外側側方部分と
    を含むことを特徴とする請求項2記載の垂直磁気記録ヘッド。
  4. 前記記録媒体対向面と直交する方向における前記内側側方部分と前記拡幅端縁との間の距離が、0μm以上1.0μm以下の範囲内である
    ことを特徴とする請求項3記載の垂直磁気記録ヘッド。
  5. 前記距離が、0μm以上0.7μm以下の範囲内である
    ことを特徴とする請求項4記載の垂直磁気記録ヘッド。
  6. 前記第2の磁極部分のうちの側端縁と前記拡幅端縁とが交わる箇所に角部が設けられており、
    前記内側側方部分および前記外側側方部分が、前記角部を周囲から囲んでいる
    ことを特徴とする請求項3ないし請求項5のいずれか1項に記載の垂直磁気記録ヘッド。
  7. 前記第2の磁極部分のうちの側端縁と前記拡幅端縁とが交わる箇所に角部が設けられており、
    前記外側側方部分が、前記第2の磁極部分のうちの前記角部を含む領域と部分的にオーバーラップしている
    ことを特徴とする請求項3ないし請求項5のいずれか1項に記載の垂直磁気記録ヘッド。
  8. 前記中央部分の後端縁が、前記拡幅位置に位置している
    ことを特徴とする請求項2ないし請求項7のいずれか1項に記載の垂直磁気記録ヘッド。
  9. 前記環流磁極層は、
    前記記録媒体対向面から後方に向かって延在し、前記記録媒体対向面から遠い側において前記第2の磁極部分に連結されたヨーク部分と、
    前記磁極層と前記ヨーク部分との間における前記記録媒体対向面に近い領域に、前記ヨーク部分とは別体として配設され、前記ギャップ層により前記第1の磁極部分から隔てられると共に前記ヨーク部分に連結された前記先端部分と
    を含むことを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の垂直磁気記録ヘッド。
  10. 媒体進行方向に移動する記録媒体に対向する記録媒体対向面から後方に向かって一定幅を保って延在する第1の磁極部分と、この第1の磁極部分の後方に連結され、前記第1の磁極部分よりも大きな幅を有する第2の磁極部分とを含む磁極層と、
    この磁極層の媒体進行方向側において前記記録媒体対向面から後方に向かって延在し、前記記録媒体対向面に近い先端部分がギャップ層により前記第1の磁極部分から隔てられると共に前記記録媒体対向面から遠い部分が前記第2の磁極部分に連結されるように配設された環流磁極層と
    を備え、
    前記環流磁極層のうちの前記先端部分が、前記第1の磁極部分に対応して設けられた中央部分と、この中央部分の幅方向の両側に連結された2つの側方部分とを含み、前記2つの側方部分の後端縁が前記中央部分の後端縁よりも後方に位置し、
    前記第1および第2の磁極部分が互いに連結する箇所に、前記磁極層の幅が前記第1の磁極部分から前記第2の磁極部分へ拡がる拡幅位置が設けられており、前記第2の磁極部分が、前記拡幅位置から後方に向かって幅が拡がる拡幅部分を含み、
    前記2つの側方部分が、前記中央部分に近い側に位置し、前記拡幅部分の幅の拡がりに沿って延びる拡幅端縁の位置またはその拡幅端縁の位置よりも前方の位置において前記後端縁の一部を規定する内側側方部分と、前記中央部分から遠い側に位置し、前記後端縁の他の一部を規定する外側側方部分とを含む
    ことを特徴とする垂直磁気記録ヘッド。
  11. 記録媒体と、この記録媒体に磁気的に情報を記録する垂直磁気記録ヘッドとを有し、
    この垂直磁気記録ヘッドが、媒体進行方向に移動する記録媒体に対向する記録媒体対向面から後方に向かって一定幅を保って延在する第1の磁極部分と、この第1の磁極部分の後方に連結され、前記第1の磁極部分よりも大きな幅を有する第2の磁極部分とを含む磁極層と、
    この磁極層の媒体進行方向側において前記記録媒体対向面から後方に向かって延在し、前記記録媒体対向面に近い先端部分がギャップ層により前記第1の磁極部分から隔てられると共に前記記録媒体対向面から遠い部分が前記第2の磁極部分に連結されるように配設された環流磁極層と
    を備え、
    前記環流磁極層のうちの前記先端部分が、前記第1の磁極部分に対応して設けられた中央部分と、この中央部分の幅方向の両側に連結された2つの側方部分とを含み、
    前記2つの側方部分の後端縁が前記中央部分の後端縁よりも後方に位置する
    ことを特徴とする磁気記録装置。
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