JP2006147010A - 薄膜磁気ヘッドおよび磁気記録装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 磁極層の先端形状の自由度を確保しつつ、非記録時において意図せずに情報が消去されることを抑制することが可能な薄膜磁気ヘッドを提供する。
【解決手段】 エアベアリング面70に近い側において厚さT1を有し、かつエアベアリング面70から遠い側においてトレーリング側およびリーディング側の双方に拡がることにより厚さT1よりも大きな厚さT2(T2>T1)を有するように磁極層40を構成する。磁極層40のうちの後方部分中に残留している磁束(残留磁化)が非記録時において滞留しやすくくなり、すなわち非記録時において磁極層40から残留磁化が外部へ漏洩しにくくなるため、非記録時において意図せずに情報が消去されることが抑制される。しかも、非記録時において情報が消去されにくいか否かは、磁極層40の先端形状に依存しない。
【選択図】 図3
【解決手段】 エアベアリング面70に近い側において厚さT1を有し、かつエアベアリング面70から遠い側においてトレーリング側およびリーディング側の双方に拡がることにより厚さT1よりも大きな厚さT2(T2>T1)を有するように磁極層40を構成する。磁極層40のうちの後方部分中に残留している磁束(残留磁化)が非記録時において滞留しやすくくなり、すなわち非記録時において磁極層40から残留磁化が外部へ漏洩しにくくなるため、非記録時において意図せずに情報が消去されることが抑制される。しかも、非記録時において情報が消去されにくいか否かは、磁極層40の先端形状に依存しない。
【選択図】 図3
Description
本発明は、少なくとも記録用の誘導型磁気変換素子を備えた薄膜磁気ヘッドおよび薄膜磁気ヘッドを搭載した磁気記録装置に関する。
近年、例えばハードディスクなどの磁気記録媒体(以下、単に「記録媒体」という。)の面記録密度の向上に伴い、例えばハードディスクドライブなどの磁気記録装置に搭載される薄膜磁気ヘッドの性能向上が求められている。この薄膜磁気ヘッドの記録方式としては、例えば、信号磁界の向きを記録媒体の面内方向(長手方向)に設定する長手記録方式や、信号磁界の向きを記録媒体の面と直交する方向に設定する垂直記録方式が知られている。現在のところは長手記録方式が広く利用されているが、記録媒体の面記録密度の向上に伴う市場動向を考慮すれば、今後は長手記録方式に代わり垂直記録方式が有望視されるものと想定される。なぜなら、垂直記録方式では、高い線記録密度を確保可能な上、記録済みの記録媒体が熱揺らぎの影響を受けにくいという利点が得られるからである。
垂直記録方式の薄膜磁気ヘッドは、例えば、記録用の磁束を発生させる薄膜コイルと、エアベアリング面から後方に向かって延在し、薄膜コイルにおいて発生した磁束に基づいて記録媒体を磁化させるための磁界(垂直磁界)を発生させる磁極層とを備えている。この垂直記録方式の薄膜磁気ヘッドでは、磁極層において発生した垂直磁界に基づいて記録媒体が磁化されるため、その記録媒体に情報が磁気的に記録される。
この垂直記録方式の薄膜磁気ヘッドでは、最近、非記録時において意図せずに情報が消去される不具合が問題となっている。この「非記録時における意図しない情報の消去」とは、非記録時、すなわち薄膜コイルが通電されていない状態(記録用の磁束が発生していない状態)において、磁極層中に残留している磁束(残留磁化)がエアベアリング面から漏洩することに起因して不要な磁界が発生するため、その不要な磁界に基づいて記録媒体に記録済みの情報が意図せずに消去される現象であり、いわゆる「ポールイレイジャ」と呼ばれる作動特性上の不具合である。
この非記録時における意図しない情報の消去の発生を抑制する方策としては、既にいくつかの方策が提案されている。具体的には、例えば、磁極層の先端形状を制御する方策が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この方策では、記録媒体の記録トラック幅を規定する一定幅部分を含んで磁極層が構成されており、その磁極層のうちの一定幅部分がエアベアリング面に露出している場合に、一定幅部分の長さ(いわゆるネックハイト)と露出面積(エアベアリング面に露出した露出面の面積)との間の比を適正化している。
特開2003−296906号公報
上記した磁極層の先端形状を制御する方策は、非記録時における意図しない情報の消去の発生を抑制する上で有用であるが、薄膜磁気ヘッドの性能向上に伴ってネックハイトが極短小化している現在の技術動向を考慮すると、そのネックハイトに基づいて磁極層の先端形状を制御する方策は既に限界の域にある。しかも、このような技術的背景を考慮した上で高記録密度化を検討した場合には、記録媒体のトラックピッチを狭めるために磁極層の先端幅を狭めると共に、記録媒体のビットピッチを狭めるために磁極層の先端厚さを薄くする必要があるため、非記録時における意図しない情報の消去の発生を抑制する観点において磁極層の先端形状が不利に働く傾向にあり、すなわち非記録時における意図しない情報の消去が発生しやすい方向にシフトする傾向にある。
そこで、最近では、磁極層の先端形状を制御する手法に代えて、他の手法を使用することにより非記録時における意図しない情報の消去の発生を抑制する方策も提案されている。具体的には、例えば、磁極層の先端に、強磁性−非磁性の磁気相転移が可能な補助層を隣接させる方策が知られている(例えば、特許文献2,3参照。)。この方策では、非記録時に補助層を強磁性化することにより、残留磁化が漏洩しにくくなるように磁極層の磁区構造を制御している。また、例えば、磁極層に非磁性層を挿入する方策が知られている(例えば、特許文献4)。この方策では、非磁性層を挟んで2つの磁性層が積層された積層構造を有するように磁極層を構成することにより、非磁性層を介して2つの磁性層を反強磁性的に結合させている。
特開2004−139676号公報
特開2004−095006号公報
特開2004−103204号公報
ところで、垂直記録方式の薄膜磁気ヘッドの普及を図るためには、例えば、記録能力を満足させるような磁極層の先端形状の自由度を確保しつつ、非記録時において意図せずに情報が消去されることを抑制する必要がある。すなわち、垂直記録方式の薄膜磁気ヘッドの各種仕様に関する要望を満たしつつ、その薄膜磁気ヘッドを正常に作動させるためには、ヘッド構造や記録性能などの要望に応じて磁極層の先端形状を変更した場合においても、その磁極層の先端形状に関係せずに非記録時における意図しない情報の消去の発生を抑制し得ることが重要である。しかしながら、従来の垂直記録方式の薄膜磁気ヘッドでは、非記録時において意図せずに情報が消去されることを抑制する上で、その抑制具合が磁極層の先端形状に多分に依存するため、磁極層の先端形状の自由度を確保しつつ、非記録時において意図せずに情報が消去されることを抑制することが困難であるという問題があった。したがって、垂直記録方式の薄膜磁気ヘッドの普及を図るために、磁極層の先端形状の自由度を確保しつつ、非記録時において意図せずに情報が消去されることを抑制することが可能な技術の確立が望まれるところである。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、磁極層の先端形状の自由度を確保しつつ、非記録時において意図せずに情報が消去されることを抑制することが可能な薄膜磁気ヘッドおよび薄膜磁気ヘッドを搭載した磁気記録装置を提供することにある。
本発明に係る薄膜磁気ヘッドは、磁束を発生させる薄膜コイルと、媒体進行方向に移動する記録媒体に対向する記録媒体対向面から後方に向かって延在し、薄膜コイルにおいて発生した磁束に基づいて記録媒体をその表面と直交する方向に磁化させるための磁界を発生させると共に、記録媒体対向面に近い側において第1の厚さを有し、かつ記録媒体対向面から遠い側において媒体進行方向側およびその媒体進行方向側の反対側の双方に拡がることにより第1の厚さよりも大きな第2の厚さを有する磁極層とを備えたものである。
本発明に係る薄膜磁気ヘッドでは、記録媒体対向面に近い側において第1の厚さを有し、かつ記録媒体対向面から遠い側において媒体進行方向側およびその媒体進行方向側の反対側の双方に拡がることにより第1の厚さよりも大きな第2の厚さを有するように磁極層が構成されている。この磁極層のうちの第2の厚さを有する後方部分は、磁極層のうちの主要な磁束収容部分であり、一方、第1の厚さを有する前方部分は、磁極層のうちの主要な磁束放出部分である。この場合には、主要な磁束放出部分である前方部分が第1の厚さを有している場合に、主要な磁束収容部分である後方部分が媒体進行方向側およびその媒体進行方向側の反対側の双方に拡がることにより第1の厚さよりも大きな第2の厚さを有する立体構造を有しているため、その後方部分中に残留している磁束(残留磁化)が非記録時において滞留しやすくくなる。これにより、非記録時において残留磁化が前方部分から外部へ漏洩しにくくなるため、非記録時において意図せずに情報が消去されることが抑制される。しかも、この場合には、上記したように、磁極層のうちの第2の厚さを有する後方部分の立体構造に基づいて、非記録時において意図せずに情報が消去されることが抑制されるため、その非記録時において情報が消去されにくいか否かは、磁極層のうちの第1の厚さを有する前方部分の形状、すなわち磁極層の先端形状に依存しない。
本発明に係る磁気記録装置は、媒体進行方向に移動する記録媒体と、その記録媒体に磁気的処理を施す薄膜磁気ヘッドとを搭載し、その薄膜磁気ヘッドが、磁束を発生させる薄膜コイルと、媒体進行方向に移動する記録媒体に対向する記録媒体対向面から後方に向かって延在し、薄膜コイルにおいて発生した磁束に基づいて記録媒体をその表面と直交する方向に磁化させるための磁界を発生させると共に、記録媒体対向面に近い側において第1の厚さを有し、かつ記録媒体対向面から遠い側において媒体進行方向側およびその媒体進行方向側の反対側の双方に拡がることにより第1の厚さよりも大きな第2の厚さを有する磁極層とを備えたものである。
本発明に係る磁気記録装置では、上記した薄膜磁気ヘッドを搭載しているため、上記したように、非記録時において意図せずに情報が消去されることが抑制される。
特に、本発明に係る薄膜磁気ヘッドでは、磁極層が、第2の厚さを有する部分において、媒体進行方向側およびその媒体進行方向側の反対側に対称に拡がっているのが好ましい。
また、本発明に係る薄膜磁気ヘッドでは、磁極層が、記録媒体対向面よりも後退した位置から後方に向かって延在する第1の補助磁極層と、記録媒体対向面から後方に向かって延在する主磁極層と、記録媒体対向面よりも後退した位置から後方に向かって延在する第2の補助磁極層とがこの順に積層された積層構造を有しており、第1の厚さが主磁極層の厚さに基づいて規定されていると共に、第2の厚さが第1の補助磁極層の厚さ、主磁極層の厚さおよび第2の補助磁極層の厚さの総和に基づいて規定されていてもよい。この場合には、第1の補助磁極層の厚さと第2の補助磁極層の厚さとが互いに等しくなっており、記録媒体対向面に対する第1の補助磁極層の後退距離と記録媒体対向面に対する第2の補助磁極層の後退距離とが互いに等しくなっていると共に、第1の補助磁極層と第2の補助磁極層とが互いに同一の磁性材料を含んで構成されているのが好ましい。
なお、本発明に係る薄膜磁気ヘッドでは、さらに、磁極層の媒体進行方向側に配置され、記録媒体対向面から後方に向かって延在することによりその記録媒体対向面に近い側においてギャップ層により磁極層から隔てられると共に遠い側においてバックギャップを通じて磁極層に連結された磁気遮蔽層を備えていてもよい。
本発明に係る薄膜磁気ヘッドによれば、記録媒体対向面に近い側において第1の厚さを有し、かつ記録媒体対向面から遠い側において媒体進行方向側およびその媒体進行方向側の反対側の双方に拡がることにより第1の厚さよりも大きな第2の厚さを有する磁極層を備えた構造的特徴に基づき、非記録時において磁極層から残留磁化が漏洩しにくくなるため、非記録時において意図せずに情報が消去されることが抑制される。しかも、磁極層のうちの第2の厚さを有する部分の立体構造に基づいて、非記録時において意図せずに情報が消去されることが抑制されるため、その非記録時において情報が消去されにくいか否かは、磁極層の先端形状に依存しない。したがって、磁極層の先端形状の自由度を確保しつつ、非記録時において意図せずに情報が消去されることを抑制することができる。
本発明に係る磁気記録装置によれば、上記した薄膜磁気ヘッドを搭載している構造的特徴に基づき、非記録時において意図せずに情報が消去されることを抑制することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
まず、図1〜図4を参照して、本発明の一実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの構成について説明する。図1〜図4は薄膜磁気ヘッドの構成を表しており、図1は全体の断面構成を示し、図2は主要部の平面構成(Z軸方向から見た平面構成)を示し、図3は主要部の断面構成(YZ面に沿った断面構成)を示し、図4は主要部の露出面の平面構成(Y軸方向から見た平面構成)を拡大して示している。図1のうち、(A)はエアベアリング面に平行な断面構成(XZ面に沿った断面構成)を示し、(B)はエアベアリング面に垂直な断面構成(YZ面に沿った断面構成)を示している。なお、図1に示した上向きの矢印Mは、薄膜磁気ヘッドに対して記録媒体(図示せず)が相対的に移動する方向(媒体進行方向)を示している。
以下の説明では、図1〜図4に示したX軸方向の寸法を「幅」、Y軸方向の寸法を「長さ」、Z軸方向の寸法を「厚さ」とそれぞれ表記する。また、Y軸方向のうちのエアベアリング面に近い側を「前方」、その反対側を「後方」と表記する。これらの表記内容は、後述する図5以降においても同様とする。
この薄膜磁気ヘッドは、媒体進行方向Mに移動する例えばハードディスクなどの記録媒体に磁気的処理を施すために、例えばハードディスクドライブなどの磁気記録装置に搭載されるものである。具体的には、薄膜磁気ヘッドは、例えば、磁気的処理として記録処理および再生処理の双方を実行可能な複合型ヘッドであり、図1に示したように、アルティック(Al2 O3 ・TiC)などのセラミック材料により構成された基板1上に、酸化アルミニウム(Al2 O3 ;以下、単に「アルミナ」という。)などの非磁性絶縁性材料により構成された絶縁層2と、磁気抵抗効果(MR;Magneto-resistive effect)を利用して再生処理を実行する再生ヘッド部100Aと、アルミナなどの非磁性絶縁性材料により構成された分離層9と、垂直記録方式の記録処理を実行するシールド型の記録ヘッド部100Bと、アルミナなどの非磁性絶縁性材料により構成されたオーバーコート層25とがこの順に積層された積層構造を有している。
再生ヘッド部100Aは、例えば、下部リードシールド層3と、シールドギャップ膜4と、上部リードシールド層30とがこの順に積層された積層構造を有している。このシールドギャップ膜4には、記録媒体に対向する記録媒体対向面(エアベアリング面)70に一端面が露出するように、再生素子としてのMR素子8が埋設されている。
下部リードシールド層3および上部リードシールド層30は、いずれもMR素子8を周辺から磁気的に分離するものであり、エアベアリング面70から後方に向かって延在している。下部リードシールド層3は、例えば、ニッケル鉄合金(NiFe(例えばNi:80重量%,Fe:20重量%);以下、単に「パーマロイ(商品名)」という。)などの磁性材料により構成されている。上部リードシールド層30は、例えば、2つの上部リードシールド層部分5,7により非磁性層6が挟まれた積層構造を有しており、すなわちシールドギャップ膜4に近い側から順に、上部リードシールド層部分5と、非磁性層6と、上部リードシールド層部分7とが積層された3層構造を有している。上部リードシールド層部分5,7は、例えば、いずれもパーマロイなどの磁性材料により構成されており、非磁性層6は、例えば、ルテニウム(Ru)やアルミナなどの非磁性材料により構成されている。なお、上部リードシールド層30は、必ずしも積層構造を有している必要はなく、単層構造を有していてもよい。
シールドギャップ膜4は、MR素子8を周辺から電気的に分離するものであり、例えばアルミナなどの非磁性絶縁性材料により構成されている。
MR素子8は、例えば、巨大磁気抵抗効果(GMR;Giant Magneto-resistive effect)やトンネル磁気抵抗効果(TMR;Tunneling Magneto-resistive effect)などを利用して再生処理を実行するものである。なお、MR素子8が巨大磁気抵抗効果(GMR)を利用する場合には、そのMR素子8は、例えば、膜面内電流型(CIP;Current-In-the-Plane )構造を有していてもよいし、あるいは膜面直交電流型(CPP;Current-Perpendicular-to-the-Plane)構造を有していてもよい。
記録ヘッド部100Bは、例えば、絶縁層11,12,13により周辺を埋設された1段目の薄膜コイル10と、絶縁層15,17により周囲を部分的に埋設された磁極層40と、ギャップ層18と、磁気連結用の開口部(バックギャップ50BG)が設けられた絶縁層50により埋設された2段目の薄膜コイル23と、ライトシールド層60とがこの順に積層された積層構造を有している。なお、図2では、記録ヘッド部100Bのうちの主要部として、薄膜コイル10,23、磁極層40およびライトシールド層60を抜粋して示していると共に、図3では、同様に記録ヘッド部100Bのうちの主要部として、磁極層40およびその周辺部分を抜粋して示している。
薄膜コイル10は、主に、薄膜コイル23において発生した記録用の磁束の漏洩を抑制するために漏洩抑制用の磁束を発生させるものであり、例えば、銅(Cu)などの高導電性材料により構成されている。特に、薄膜コイル10は、例えば、図1および図2に示したように、バックギャップ50BGを中心として巻回する巻回構造(スパイラル構造)を有しており、その薄膜コイル10では、例えば、薄膜コイル23において電流が流れる方向と逆方向に電流が流れるようになっている。なお、薄膜コイル10の巻回数(ターン数)は自由に設定可能である。
絶縁層11〜13は、薄膜コイル10を周辺から電気的に分離するものである。絶縁層11は、薄膜コイル10の各巻線間を埋め込むと共に、その薄膜コイル10の周囲を被覆するように配設されている。この絶縁層11は、例えば、加熱時に流動性を示すフォトレジストやスピンオングラス(SOG;Spin On Glass )などの非磁性絶縁性材料により構成されており、例えば、図1に示したように、薄膜コイル10の側方のみを被覆し、その薄膜コイル10の上方を被覆しないように配設されている。絶縁層12は、絶縁層11の周囲を被覆するように配設されており、例えば、アルミナなどの非磁性絶縁性材料により構成されている。絶縁層13は、薄膜コイル10と共に絶縁層11,12を被覆するように配設されており、例えば、アルミナなどの非磁性絶縁性材料により構成されている。
磁極層40は、主に、薄膜コイル23において発生した記録用の磁束を収容し、その磁束を記録媒体に向けて放出することにより記録処理を実行するものであり、より具体的には、垂直記録方式の記録処理として、記録用の磁束に基づいて記録媒体をその表面と直交する方向に磁化させるための磁界(垂直磁界)を発生させるものである。この磁極層40は、薄膜コイル23のリーディング側に配設されており、エアベアリング面70から後方に向かって延在し、より具体的にはバックギャップ50BGまで延在している。この「リーディング側」とは、図1に示した媒体進行方向Mに向かって移動する記録媒体の移動状態を1つの流れと見た場合に、その流れの流入する側(媒体進行方向M側と反対側)をいい、ここでは厚さ方向(Z軸方向)における下側をいう。これに対して、流れの流出する側(媒体進行方向M側)は「トレーリング側」と呼ばれ、ここでは厚さ方向における上側をいう。
特に、磁極層40は、図1および図3に示したように、全体として、エアベアリング面70に近い側において厚さT1(第1の厚さ)を有し、かつエアベアリング面70から遠い側においてトレーリング側およびリーディング側の双方に拡がることにより厚さT1よりも大きな厚さT2(T2>T1;第2の厚さ)を有している。すなわち、磁極層4は、前方において厚さT1を有すると共に後方において厚さT2を有する略T字型の断面形状を有している。ここでは、例えば、磁極層40が、厚さT2を有する後方部分において、トレーリング側およびリーディング側に対称に拡がっている。なお、磁極層40の構造に関して上記した「全体として」とは、図3に示した磁極層40の全体構造、すなわち確認のために太線で囲むことにより明確化した磁極層40の外縁(輪郭)を意味している。また、同様に磁極層40の構造に関して上記した「磁極層40がトレーリング側およびリーディング側に対称に拡がっている」とは、図3に示したように、厚さ方向(Z軸方向)において、厚さT1を有する前方部分の位置、すなわち前方部分の延在方向に沿って付した仮想線(基準線)Jを基準とした場合に、磁極層40が基準線Jを軸とする線対称な全体構造を有していることを意味している。
具体的には、磁極層40は、例えば、絶縁層13に近い側から順に、互いに別体として構成された下部補助磁極層14、主磁極層16および上部補助磁極層20が積層されることにより互いに連結された積層構造(3層構造)を有している。なお、上記した「連結」とは、磁気的に導通可能に連結されていることを意味しており、その「連結」の意味合いは、以降の説明においても同様である。
下部補助磁極層14は、主要な磁束の収容部分として機能するものであり、主磁極層16に対してリーディング側に配置された第1の補助磁極層である。この下部補助磁極層14は、例えば、図3に示したように、エアベアリング面70よりも距離(後退距離)L21だけ後退した位置から後方に向かって延在し、より具体的にはバックギャップ50BGまで延在しており、厚さT21を有している。この後退距離L21は、例えば、下部補助磁極層14に収容された磁束が主磁極層16を経由せずにエアベアリング面70から直接的に放出されることを抑制可能な範囲において、自由に設定可能である。また、下部補助磁極層14は、例えば、図2に示したように、幅W2を有する矩形型の平面形状を有している。特に、下部補助磁極層14は、例えば、主磁極層16を構成している磁性材料よりも低い飽和磁束密度を有する磁性材料により構成されており、具体的には鉄コバルトニッケル合金(FeCoNi)などにより構成されている。
主磁極層16は、主要な磁束の放出部分として機能するものである。この主磁極層16は、エアベアリング面70から後方に向かって延在し、より具体的にはバックギャップ50BGまで延在しており、厚さT11を有している。特に、主磁極層16は、例えば、下部補助磁極層14および上部補助磁極層20の双方を構成している磁性材料よりも高い飽和磁束密度を有する磁性材料により構成されており、具体的には鉄系合金などにより構成されている。この鉄系合金としては、例えば、鉄(Fe)がリッチな鉄ニッケル合金(FeNi)や、鉄コバルト合金(FeCo)などが挙げられる。
この主磁極層16は、例えば、図2に示したように、全体として羽子板型の平面形状を有している。すなわち、主磁極層16は、例えば、エアベアリング面70から順に、そのエアベアリング面70から後方に向かって延在し、記録媒体の記録トラック幅を規定する一定幅W1を有する先端部16Aと、その先端部16Aの後方に連結され、幅W1よりも大きな幅W2(W2>W1)を有する後端部16Bとを含んで構成されている。この主磁極層16の幅が先端部16A(幅W1)から後端部16B(幅W2)へ拡がる位置は、薄膜磁気ヘッドの記録性能を決定する重要な因子のうちの1つである「フレアポイントFP」であり、そのフレアポイントFPとエアベアリング面70との間の距離は、いわゆる「ネックハイトNH」である。
先端部16Aは、主に、薄膜コイル23において発生した記録用の磁束を記録媒体に向けて実質的に放出する部分であり、図2に示したように、エアベアリング面70に露出した露出面16Mを有している。この露出面16Mは、例えば、図4に示したように、トレーリング側に位置する上端縁E1(いわゆるトレーリングエッジTE)と、リーディング側に位置する下端縁E2(いわゆるリーディングエッジLE)と、2つの側端縁E3とにより規定された平面形状を有している。具体的には、露出面16Mは、例えば、トレーリング側からリーディング側に向かって次第に幅が狭まる形状を有しており、すなわち幅W1を有する上端縁E1を互いに対向する2つの対辺のうちの長い方の対辺(上底)とし、かつ幅W1よりも小さな幅W4(W4<W1)を有する下端縁E2を互いに対向する2つの対辺のうちの短い方の対辺(下底)とする左右対象な逆台形状を有しており、面積Sを有している。この先端部16AのトレーリングエッジTEは、磁極層40のうちの実質的な記録箇所である。なお、露出面16Mの平面形状に関して、下端縁E2の延在方向と側端縁E3との間の角度θは、例えば、90°未満の範囲内において自由に設定可能である。
後端部16Bは、下部補助磁極層14および上部補助磁極層20に収容された磁束を収容して先端部16Aへ供給する部分である。この後端部16Bの幅は、例えば、後方において一定(幅W2)であり、前方において先端部16Aへ近づくにしたがって幅W2から幅W1へ次第に狭まっている。
上部補助磁極層20は、下部補助磁極層14と同様に主要な磁束の収容部分として機能するものであり、主磁極層16対してトレーリング側に配置された第2の補助磁極層である。この上部補助磁極層20は、例えば、図3に示したように、エアベアリング面70よりも距離(後退距離)L22だけ後退した位置から後方に向かって延在し、より具体的にはバックギャップ50BGまで延在しており、厚さT22を有している。この後退距離L22は、例えば、下部補助磁極層14に関する後退距離L21と同様に、上部補助磁極層20に収容された磁束が主磁極層16を経由せずにエアベアリング面70から直接的に放出されることを抑制可能な範囲において、自由に設定可能である。また、上部補助磁極層20は、例えば、図2に示したように、下部補助磁極層14と同様に、幅W2を有する矩形型の平面形状を有している。特に、上部補助磁極層20は、例えば、下部補助磁極層14を構成している磁性材料と同一の磁性材料により構成されている。
この磁極層40では、例えば、下部補助磁極層14、主磁極層16および上部補助磁極層20がこの順に積層された積層構造を有していることに伴い、上記した厚さT1が、主磁極層16の厚さT11に基づいて規定されていると共に(T1=T11)、厚さT2が、下部補助磁極層14の厚さT21、主磁極層16の厚さT11および上部補助磁極層20の厚さT22の総和に基づいて規定されている(T2=T21+T11+T22)。また、磁極層40では、例えば、上記したように、厚さT2を有する後方部分においてトレーリング側およびリーディング側に対称に拡がっていることに伴い、下部補助磁極層14の厚さT21と上部補助磁極層20の厚さT22とが互いに等しくなっていると共に(T21=T22)、エアベアリング面70に対する下部補助磁極層14の後退距離L21とエアベアリング面70に対する上部補助磁極層20の後退距離L22とが互いに等しくなっている(L21=L22)。もちろん、下部補助磁極層14および上部補助磁極層20は、例えば、上記したように、互いに同一の幅W2を有している。
絶縁層15は、下部補助磁極層14を周囲から電気的に分離するものであり、例えば、アルミナなどの非磁性絶縁性材料により構成されている。また、絶縁層17は、主磁極層16を周囲から電気的に分離するものであり、例えば、絶縁層15と同様に、アルミナなどの非磁性絶縁性材料により構成されている。
ギャップ層18は、磁極層40とライトシールド層60とを磁気的に分離するためのギャップを構成するものである。このギャップ層18は、例えば、図1に示したように、上部補助磁極層20の配設領域を除いて、主磁極層15に隣接しながらエアベアリング面70から後方に向かって延在している。特に、ギャップ層18は、例えば、アルミナなどの非磁性絶縁性材料やルテニウムなどの非磁性導電性材料により構成されており、その厚さは約0.1μm以下でる。
絶縁層50は、薄膜磁気ヘッドの記録特性を決定する重要な因子のうちの1つであるスロートハイトTHを規定すると共に、薄膜コイル23を被覆することにより周囲から電気的に分離するものである。この絶縁層50は、図1に示したように、スロートハイトTHを実質的に規定する補助絶縁層21と、薄膜コイル23を実質的に被覆する主絶縁層22とがこの順に積層された積層構造(2層構造)を有している。
補助絶縁層21は、図1に示したように、ギャップ層18に隣接しながら、エアベアリング面70よりも後退した位置、より具体的には後述するTH規定層19の後端位置から後方における上部補助磁極層20の前端位置まで延在しており、そのTH規定層19および上部補助磁極層20の双方に隣接している。この補助絶縁層21の前端位置は、絶縁層50の最前端位置(エアベアリング面70に最も近い位置)、すなわちスロートハイトTHを規定するための「スロートハイトゼロ位置TP」であり、そのスロートハイトTHは、エアベアリング面70とスロートハイトゼロ位置TPとの間の距離である。この補助絶縁層21は、例えば、アルミナなどの非磁性絶縁性材料により構成されている。なお、図1および図2では、例えば、スロートハイトゼロ位置TPがフレアポイントFPに一致している場合を示している。
主絶縁層22は、図1に示したように、補助絶縁層21に隣接しながら、その補助絶縁層21よりも後退すると共にバックギャップ50BGを塞がないように延在している。この主絶縁層22は、例えば、図1に示したように、補助絶縁層21および上部補助磁極層20上に薄膜コイル23の下地として配設された主絶縁層部分22Aと、薄膜コイル23およびその周辺の主絶縁層部分22Aを被覆するように配設された主絶縁層部分22Bとを含んで構成されている。主絶縁層部分22Aは、例えば、アルミナなどの非磁性絶縁性材料により構成されており、主絶縁層部分22Bは、例えば、加熱時に流動性を示すフォトレジストやスピンオングラス(SOG)などの非磁性絶縁性材料により構成されている。この主絶縁層部分22Bの端縁近傍部分は、その端縁に向けて落ち込むように丸みを帯びた斜面を構成している。
薄膜コイル23は、記録用の磁束を発生させるものである。この薄膜コイル23では、例えば、薄膜コイル10において電流が流れる方向と逆方向に電流が流れるようになっている。なお、薄膜コイル23に関する上記以外の材質、厚さおよび構造的特徴は、例えば、薄膜コイル10と同様である。
ライトシールド層60は、磁極層40から放出された記録用の磁束の広がり成分を取り込むことにより、その記録用の磁束の勾配を急峻化すると共に、記録用の磁束の広がりを抑制する磁気遮蔽層である。このライトシールド層60は、磁極層40および薄膜コイル23のトレーリング側に配設されており、エアベアリング面70から後方に向かって延在することによりそのエアベアリング面70に近い側においてギャップ層18により磁極層40から隔てられると共に遠い側においてバックギャップ50BGを通じて磁極層40に連結されている。
このライトシールド層60は、例えば、互いに別体として構成されたTH規定層19層およびヨーク層24を含み、これらのTH規定層18およびヨーク層24が互いに連結された構造を有している。
TH規定層19は、主要な磁束の取り込み口として機能するものである。このTH規定層19は、例えば、図1に示したように、ギャップ層18に隣接しながら、エアベアリング面70から後方の位置、より具体的にはエアベアリング面70と薄膜コイル23との間の位置まで延在しており、その位置において補助絶縁層21に隣接している。また、TH規定層19は、例えば、パーマロイまたは鉄系合金などの高飽和磁束密度を有する磁性材料により構成されており、図2に示したように、磁極層40の幅W2よりも大きな幅W3(W3>W2)を有する矩形型の平面形状を有している。このTH規定層19は、上記したように補助絶縁層21に隣接していることに伴い、絶縁層50の最前端位置(スロートハイトゼロ位置TP)を規定することによりスロートハイトTHを規定する役割を担っている。
ヨーク層24は、TH規定層19から取り込まれた磁束の流路として機能するものである。このヨーク層24は、例えば、図1に示したように、TH規定層19に乗り上げながら、エアベアリング面70から絶縁層50上を経由して少なくともバックギャップ50BGまで延在している。すなわち、ヨーク層24は、前方においてTH規定層19に乗り上げることにより連結されていると共に、後方においてバックギャップ50BGを通じて磁極層40に隣接することにより連結されている。ここでは、ヨーク層24は、例えば、バックギャップ50BGにおいて磁極層40に連結されつつ、そのバックギャップ50BGよりも後方まで延在している。このヨーク層24は、例えば、TH規定層19を構成している磁性材料と同様の磁性材料により構成されており、図2に示したように、幅W3を有する矩形型の平面形状を有している。
次に、図1〜図4を参照して、薄膜磁気ヘッドの動作について説明する。
この薄膜磁気ヘッドでは、情報の記録時において、図示しない外部回路から記録ヘッド部100Bのうちの薄膜コイル10,23に電流が流れると、その薄膜コイル23において記録用の磁束が発生する。このとき発生した磁束は、磁極層40(下部補助磁極層14/主磁極層16/上部補助磁極層20)に収容されたのち、その磁極層40内を主磁極層16のうちの先端部16Aへ向けて流れる。この際、主磁極層16内を流れる磁束は、その主磁極層16の幅の減少に伴い、フレアポイントFPにおいて絞り込まれながら集束するため、最終的に先端部16Aのうちの露出面16MにおいてトレーリングエッジTE近傍に集中する。このトレーリングエッジTE近傍に集中した磁束が外部へ放出されることにより、記録媒体の表面と直交する方向に記録磁界(垂直磁界)が発生すると、その垂直磁界に基づいて記録媒体が磁化されるため、記録媒体に情報が磁気的に記録される。
特に、情報の記録時には、互いに逆方向となるように薄膜コイル10,23に電流が流れるため、それらの薄膜コイル10,23において互いに逆方向に向けて磁束が発生する。具体的には、図1を参照すると、薄膜コイル10において磁束(漏洩抑制用の磁束)が上向きに発生する一方で、薄膜コイル23において磁束(記録用の磁束)が下向きに発生する。これにより、薄膜コイル10において発生した上向きの磁束の影響を受けて、薄膜コイル23において発生した下向きの磁束が記録ヘッド部100Bから再生ヘッド部100Aへ伝播しにくくなるため、その薄膜コイル23において発生した記録用の磁束が再生ヘッド部100Aへ漏洩することが抑制される。
なお、情報の記録時には、先端部16Aから放出された磁束の広がり成分がライトシールド層60に取り込まれるため、その磁束の勾配が急峻化すると共に、磁束の広がりが抑制される。このライトシールド層60に取り込まれた磁束は、バックギャップ50BGを通じて磁極層40に環流される。
一方、情報の再生時においては、再生ヘッド部100AのMR素子8にセンス電流が流れると、記録媒体に基づく再生用の信号磁界に応じてMR素子8の抵抗値が変化するため、このMR素子8の抵抗変化がセンス電流の変化として検出されることにより、記録媒体に記録されている情報が磁気的に再生される。
本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドでは、エアベアリング面70に近い側において厚さT1を有し、かつエアベアリング面70から遠い側においてトレーリング側およびリーディング側の双方に拡がることにより厚さT1よりも大きな厚さT2を有するように磁極層40を構成し、具体的には、例えば、エアベアリング面70よりも後退した位置から後方に向かって延在する下部補助磁極層14と、エアベアリング面70から後方に向かって延在する主磁極層16と、エアベアリング面70よりも後退した位置から後方に向かって延在する上部補助磁極層20とがこの順に積層された積層構造を有するように磁極層40を構成したので、以下の理由により、磁極層40の先端形状の自由度を確保しつつ、非記録時において意図せずに情報が消去されることを抑制することができる。
図5および図6は、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドに対する比較例としての薄膜磁気ヘッドの構成を表しており、図5は図1に対応する断面構成を示し、図6は図3に対応する断面構成を示している。この比較例の薄膜磁気ヘッドは、図5に示したように、下部補助磁極層14、主磁極層16および上部補助磁極層20を含み、これらの下部補助磁極層14、主磁極層16および上部補助磁極層20がこの順に積層された3層構造を有する磁極層40を備えた本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドとは異なり、その磁極層40に代えて、上部補助磁極層20を含まずに下部補助磁極層14および主磁極層16のみを含み、これらの下部補助磁極層14および主磁極層16がこの順に積層された2層構造を有する磁極層140を備えている点を除き、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドとほぼ同様の構造を有している。すなわち、比較例の薄膜磁気ヘッドは、図6に示したように、エアベアリング面70に近い側において厚さT1を有し、かつエアベアリング面70から遠い側においてリーディング側のみに拡がることにより厚さT1よりも大きな厚さT3(T3>T2,T3=T11+T21)を有している。この比較例の薄膜磁気ヘッドでは、上記したように、磁極層140が上部補助磁極層20を含まずに下部補助磁極層14および主磁極層16のみを含んでいることに伴い、補助絶縁層21および主絶縁層22(主絶縁層部分22A,22B)を含む絶縁層50に代えて、補助絶縁層21および主絶縁層部分22Aを含まずに主絶縁層部分22Bのみを含む絶縁層150を備えていると共に、絶縁層50がバックギャップ50BGを構成している代わりに、ギャップ層18が主磁極層16上において薄膜コイル23の下地として延設されることによりバックギャップ18BGを構成している。
この比較例の薄膜磁気ヘッド(図5および図6参照)では、下部補助磁極層14および主磁極層16を含む2層構造を有するように磁極層140が構成されており、すなわち磁極層140がエアベアリング面70に近い側において厚さT1を有し、かつエアベアリング面70から遠い側においてリーディング側のみに拡がることにより厚さT1よりも大きな厚さT3を有しているため、その磁極層140のうちの厚さT3を有する後方部分の立体構造に起因して、非記録時において意図せずに情報が消去されやすくなる。具体的には、比較例の薄膜磁気ヘッドでは、磁極層140のうちの主要な磁束放出部分である前方部分が厚さT1を有している場合に、その磁極層140のうちの主要な磁束収容部分である後方部分がリーディング側のみに拡がることにより厚さT3を有する立体構造を有しており、すなわち後方部分がトレーリング側およびリーディング側に非対称に広がる立体構造を有しているため、その後方部分中に残留している磁束(残留磁化)が非記録時において滞留しにくくなる。この場合には、非記録時において残留磁化が前方部分から外部へ漏洩しやすくなるため、非記録時において意図せずに情報が消去されやすくなる。この残留磁化の漏洩現象は、主に、磁極層140のうちの後方部分中に残留磁化が存在している場合に、その残留磁化を収容している後方部分がトレーリング側およびリーディング側に対称な立体構造を有していないと、後方部分中において残留磁化を漏洩させずに滞留させるような適正な磁束収容状態(残留磁化状態)が構築されず、すなわち後方部分中に収容されている残留磁化がエアベアリング面70へ向かって流れやすい磁化状態にあるため、その残留磁化が漏洩しやすいものと想定される。これにより、比較例の薄膜磁気ヘッドでは、非記録時において磁極層140から残留磁化が漏洩しやすいため、非記録時において意図せずに情報が消去されることを抑制することが困難である。
これに対して、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッド(図1および図3参照)では、下部補助磁極層14、主磁極層16および上部補助磁極20を含む3層構造を有するように磁極層40が構成されており、すなわち磁極層40がエアベアリング面70に近い側において厚さT1を有し、かつエアベアリング面70から遠い側においてトレーリング側およびリーディング側の双方に拡がることにより厚さT1よりも大きな厚さT2を有しているため、その磁極層40のうちの厚さT2を有する後方部分の立体構造に基づいて、非記録時において意図せずに情報が消去されにくくなる。具体的には、例えば、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドでは、磁極層40のうちの主要な磁束放出部分である前方部分が厚さT1を有している場合に、その磁極層40のうちの主要な磁束収容部分である後方部分がトレーリング側およびリーディング側の双方に拡がることにより厚さT2を有する立体構造を有しているため、その後方部分中に残留している残留磁化が非記録時において滞留しやすくなる。この場合には、非記録時において残留磁化が前方部分から外部へ漏洩しにくくなるため、非記録時において意図せずに情報が消去されることが抑制される。この残留磁化の滞留現象は、主に、磁極層40のうちの後方部分中に残留磁化が存在している場合に、その残留磁化を収容している後方部分がトレーリング側およびリーディング側に対称な立体構造を有していることに伴い、後方部分中において残留磁化を漏洩させずに滞留させるような適正な磁束収容状態(残留磁化状態)が構築され、すなわち後方部分中に収容されている残留磁化がエアベアリング面70へ向かって流れにくい磁化状態にあるため、その残留磁化が漏洩しにくいものと想定される。しかも、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドでは、上記したように、磁極層40のうちの厚さT2を有する後方部分の立体構造に基づいて、非記録時において意図せずに情報が消去されることが抑制されるため、その非記録時において情報が消去されにくいか否かは、磁極層40のうちの厚さT1を有する前方部分の形状(例えば幅W1、ネックハイトNH、厚さT1または露出面16Mの面積Sなど)、すなわち磁極層40の先端形状に依存しない。したがって、本実施に係る薄膜磁気ヘッドでは、磁極層40の先端形状に関係せずに、非記録時において磁極層40から残留磁化が漏洩しにくいため、磁極層40の先端形状の自由度を確保しつつ、非記録時において意図せずに情報が消去されることを抑制することができるのである。
ここで、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの技術的意義に関して説明しておく。すなわち、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの構造的特徴は、上記したように、磁極層40がエアベアリング面70に近い側において厚さT1を有している場合に、その磁極層40がエアベアリング面70から遠い側においてトレーリング側およびリーディング側の双方に拡がることにより厚さT1よりも大きな厚さT2を有している点にあり、より具体的には、例えば、下部補助磁極層14、主磁極層16および上部補助磁極層20を含む3層構造を有するように磁極層40が構成されている場合に、下部補助磁極層14および上部補助磁極層20の双方がエアベアリング面70よりも後退している点にある。なぜなら、下部補助磁極層14または上部補助磁極層20がエアベアリング面70に露出している場合には、上記したように下部補助磁極層14および上部補助磁極層20の存在に基づいて非記録時に残留磁化が漏洩しにくくなる一方で、エアベアリング面70における磁極層40の露出面の面積(磁束の放出面積)が大きくなり、すなわち磁極層40による記録面積自体が大きくなるため、高記録密度に適した記録処理を実行できなくなるからである。したがって、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドでは、エアベアリング面70における磁極層40の露出面の面積を適正に小さくすることにより高記録密度に適した記録処理を実行可能としつつ、下部補助磁極層14および上部補助磁極層20の存在に基づいて非記録時に残留磁化が漏洩することを抑制する観点において、技術的意義を有するのである。
特に、本実施の形態では、図1および図3に示したように、厚さT2を有する後方部分においてトレーリング側およびリーディング側に対称に拡がるように磁極層40を構成し、具体的には、例えば、下部補助磁極層14の厚さT21および後退距離L21と上部補助磁極層20の厚さT22および後退距離L22とがそれぞれ互いに等しくなるように磁極層40を構成したので、その磁極層40のうちの後方部分中のトレーリング側およびリーディング側において、上記した残留磁化状態が均等化される。したがって、本実施の形態では、磁極層40のうちの後方部分中のトレーリング側およびリーディング側において残留磁化状態が不均等化した場合に、トレーリング側における残留磁化状態とリーディング側における残留磁化状態との差異に起因して残留磁化が漏洩しやすくなる現象が抑制されるため、この観点においても非記録時における意図しない情報の消去の抑制に寄与することができる。
また、本実施の形態では、下部補助磁極層14と上部補助磁極層20とが互いに同一の磁性材料により構成されており、すなわち下部補助磁極層14と上部補助磁極層20とが互いに等しい飽和磁束密度を有しているので、下部補助磁極層14と上部補助磁極層20との間で残留磁化の収容量が均等化される。したがって、本実施の形態では、下部補助磁極層14と上部補助磁極層20との間において残留磁化の収容量が不均等化した場合に、下部補助磁極層14における残留磁化の収容量と上部補助磁極層20における残留磁化の収容量との差異に起因して残留磁化が漏洩しやすくなる現象が抑制されるため、この観点においてもやはり非記録時における意図しない情報の消去の抑制に寄与することができる。
また、本実施の形態では、下部補助磁極層14および上部補助磁極層20の双方が主磁極層16の飽和磁束密度よりも小さな飽和磁束密度を有しているので、その飽和磁束密度の差異に基づいて下部補助磁極層14および上部補助磁極層20よりも主磁極層16において磁束が集中しやすくなる。この場合には、下部補助磁極層14および上部補助磁極層20の双方が主磁極層16の飽和磁束密度以上の飽和磁束密度を有している場合と比較して、記録時において主磁極層16から放出される磁束の絶対量が増加するため、垂直磁界の強度を確保することができる。
また、本実施の形態では、図4に示したように、垂直磁界を発生させるために磁束を放出する主磁極層16の露出面16Mが、左右対象の逆台形状を有するようにしたので、薄膜磁気ヘッドの記録動作時にスキューが発生し、すなわち記録媒体に湾曲線状に設けられた記録対象トラック(情報の記録対象である特定のトラック)の接線方向に対して主磁極層16が傾いたとしても、その主磁極層16の露出面16Mが記録対象トラックから隣接トラック(記録対象トラックに隣接する他のトラック)にはみ出さない。この場合には、露出面16Mが矩形状を有している構造的要因に起因して、スキューの発生時において露出面16Mが記録対象トラックから隣接トラックにはみ出す場合とは異なり、垂直磁界に基づいて記録対象トラックだけでなく隣接トラックまで併せて磁化されることが抑制されるため、情報の記録時において記録媒体に記録済みの情報がスキューに起因して意図せずに消去されることも抑制することができる。
また、本実施の形態では、図1に示したように、主磁極層16のトレーリング側に、記録用の磁束を発生させる薄膜コイル23を備えると共に、その主磁極層16のリーディング側に、薄膜コイル23において発生した記録用の磁束の漏洩を抑制するために漏洩抑制用の磁束を発生させる薄膜コイル10を併せて備えるようにしたので、上記したように、情報の記録時において互いに逆方向となるように薄膜コイル10,23に電流を流すことにより、それらの薄膜コイル10,23において互いに逆方向に向けて磁束を発生させれば、薄膜コイル10において発生した上向きの磁束(漏洩抑制用の磁束)の影響を受けて、薄膜コイル23において発生した下向きの磁束(記録用の磁束)が記録ヘッド部100Bから再生ヘッド部100Aへ伝播しにくくなるため、その薄膜コイル23において発生した記録用の磁束が再生ヘッド部100Aへ漏洩しにくくなる。したがって、薄膜コイル23において発生した記録用の磁束がロスなく主磁極層16を経由してエアベアリング面70から放出されるため、この観点においても垂直磁界の強度を確保することができる。
なお、本実施の形態では、図3に示したように、互いに別体として構成された下部補助磁極層14、主磁極層16および上部補助磁極層20を含むように磁極層40を構成したが、必ずしもこれに限られるものではなく、エアベアリング面70に近い側において厚さT1を有し、かつエアベアリング面70から遠い側においてトレーリング側およびリーディング側の双方に拡がることにより厚さT1よりも大きな厚さT2を有する限り、磁極層40の構造は自由に変更可能である。具体的には、例えば、図7に示したように、下部補助磁極層14、主磁極層16および上部補助磁極層20が一体化された一体型構造を有するように磁極層40を構成してもよい。もちろん、ここでは図7の他に図面を参照して具体的に説明しないが、図7に示した一体型構造を有する他、下部補助磁極層14および主磁極層16が一体化された一体型構造層と共に上部補助磁極層20を併せて含む2層構造を有するように磁極層40を構成したり、あるいは下部補助磁極層14と共に主磁極層16および上部補助磁極層20が一体化された一体型構造層を含む2層構造を有するように磁極層40を構成してもよい。なお、下部補助磁極層14、主磁極層16および上部補助磁極層20は、例えば、それぞれ単層構造に限らず、積層構造であってもよい。これらの場合においても、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。なお、図7に示した薄膜磁気ヘッドに関する上記以外の構造的特徴は、図3に示した場合と同様である。
また、本実施の形態では、図1に示したように、記録用の磁束を発生させる薄膜コイル23と共に漏洩抑制用の磁束を発生させる薄膜コイル10を併せて備える場合に、再生ヘッド部100Aのうちの上部リードシールド層30と記録ヘッド部100Bのうちの磁極層40とが分離層9および絶縁層12,13を介して分離されるようにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、図8に示したように、上部リードシールド層30と磁極層40とが連結層26を介して連結されるようにしてもよい。この連結層26は、分離層9および絶縁層12,13を貫通するように設けられた開口部11Kに配設されており、例えば、上部リードシールド層30(上部リードシールド層部分5,7)や磁極層40(下部補助磁極層14,主磁極層16,上部補助磁極層20)を構成している磁性材料と同様の磁性材料により構成されている。この場合においても、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。この場合には、特に、連結層26が薄膜コイル10において発生した漏洩抑制用の磁束の流路として機能することにより、その漏洩抑制用の磁束が連結層26を通じて記録ヘッド部100Bへ導かれやすくなり、すなわち薄膜コイル23において発生した記録用の磁束に対する漏洩抑制作用が高まるため、その記録用の磁束が記録ヘッド部100Bから再生ヘッド部100Aへ漏洩することをより抑制することができる。なお、図8に示した薄膜磁気ヘッドに関する上記以外の構造的特徴は、図1に示した場合と同様である。
また、本実施の形態では、図1に示したように、記録用の磁束を発生させる薄膜コイル23と共に漏洩抑制用の磁束を発生させる薄膜コイル10を併せて備えるようにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、図9に示したように、薄膜コイル10を備えずに薄膜コイル23のみを備えるようにしてもよい。この場合には、薄膜コイル10を備えていないことに伴い、その薄膜コイル10と共に絶縁層11〜13を併せて備えておらず、磁極層40(下部補助磁極層14)および絶縁層15がいずれも分離層9に隣接されている。この場合においても、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。なお、図9に示した薄膜磁気ヘッドに関する上記以外の構造的特徴は、図1に示した場合と同様である。
また、本実施の形態では、図1に示したように、ライトシールド層60を備えるように記録ヘッド部100Bを構成し、すなわちいわゆるシールド型のヘッド構造を有するように記録ヘッド部100Bを構成したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、図10に示したように、ライトシールド層60を備えないように記録ヘッド部100Bを構成し、すなわちいわゆる単磁極型のヘッド構造を有するように記録ヘッド部100Bを構成してもよい。なお、図10に示した薄膜磁気ヘッドでは、例えば、ライトシールド層60と共に、薄膜コイル23および絶縁層50(補助絶縁層21,主絶縁層22)を併せて備えないように記録ヘッド部100Bが構成されていると共に、図8に示した変形例を適用することにより、連結層26を介して上部リードシールド層30と磁極層40とが互いに連結されている。この場合には、ライトシールド層60を備えていないことに伴い、オーバーコート層25が磁極層40を被覆していると共に、薄膜コイル23を備えていないことに伴い、薄膜コイル10が記録用の磁束を発生させる役割を担っている。。この場合においても、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。なお、図10に示した薄膜磁気ヘッドに関する上記以外の構造的特徴は、図1に示した場合と同様である。
以上をもって、本発明の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法についての説明を終了する。
次に、図11および図12を参照して、本発明の薄膜磁気ヘッドを搭載した磁気記録装置の構成について説明する。図11は磁気記録装置の斜視構成を表しており、図12は磁気記録装置の主要部の斜視構成を拡大して表している。この磁気記録装置は、上記実施の形態において説明した薄膜磁気ヘッドを搭載したものであり、例えばハードディスクドライブである。
この磁気記録装置は、図11に示したように、例えば、筐体200の内部に、情報が磁気的に記録される記録媒体としての複数の磁気ディスク(例えばハードディスク)201と、各磁気ディスク201に対応して配設され、磁気ヘッドスライダ202を一端部において支持する複数のサスペンション203と、このサスペンション203の他端部を支持する複数のアーム204とを備えている。磁気ディスク201は、筐体200に固定されたスピンドルモータ205を中心として回転可能になっている。アーム204は、動力源としての駆動部206に接続されており、筐体200に固定された固定軸207を中心として、ベアリング208を介して旋回可能になっている。駆動部206は、例えば、ボイスコイルモータなどの駆動源を含んで構成されている。この磁気記録装置は、例えば、固定軸207を中心として複数のアーム204が一体的に旋回可能なモデルである。なお、図11では、磁気記録装置の内部構造を見やすくするために、筐体200を部分的に切り欠いて示している。
磁気ヘッドスライダ202は、図12に示したように、例えばアルティックなどの非磁性絶縁材料により構成された略直方体構造を有する基体211の一面に、記録処理および再生処理の双方を実行する薄膜磁気ヘッド212が取り付けられた構成を有している。この基体211は、例えば、アーム204の旋回時に生じる空気抵抗を減少させるための凹凸構造が設けられた一面(エアベアリング面220)を有しており、そのエアベアリング面220と直交する他の面(図12中、右手前側の面)に、薄膜磁気ヘッド212が取り付けられている。この薄膜磁気ヘッド212は、上記実施の形態において説明した構成を有するものである。この磁気ヘッドスライダ202は、情報の記録時または再生時において磁気ディスク201が回転すると、その磁気ディスク201の記録面(磁気ヘッドスライダ202と対向する面)とエアベアリング面220との間に生じる空気流を利用して、磁気ディスク201の記録面から浮上するようになっている。なお、図12では、磁気ヘッドスライダ202のうちのエアベアリング面220側の構造を見やすくするために、図11に示した状態とは上下を反転させた状態を示している。
この磁気記録装置では、情報の記録時または再生時においてアーム204が旋回することにより、磁気ディスク201のうちの所定の領域(記録領域)まで磁気ヘッドスライダ202が移動する。そして、磁気ディスク201と対向した状態において薄膜磁気ヘッド212が通電されると、上記実施の形態において説明した動作原理に基づいて薄膜磁気ヘッド212が動作することにより、その薄膜磁気ヘッド212が磁気ディスク201に記録処理または再生処理を施す。
この磁気記録装置では、上記実施の形態において説明した薄膜磁気ヘッド212を搭載したので、上記したように、非記録時において意図せずに情報が消去されることを抑制することができる。
なお、この磁気記録装置に搭載されている薄膜磁気ヘッド212に関する上記以外の構成、動作、作用、効果および変形例は上記実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
次に、本発明に関する実施例について説明する。
上記実施の形態において説明した薄膜磁気ヘッド(図1〜図4参照;以下、単に「本発明の薄膜磁気ヘッド」という。)を磁気記録装置(図11および図12参照)に搭載させることにより、その磁気記録装置を使用して記録処理を実行しながら薄膜磁気ヘッドの記録性能を調べたところ、以下の一連の結果が得られた。
まず、本発明の薄膜磁気ヘッドに関する記録信号の劣化状況を調べたところ、図13に示した結果が得られた。図13は、記録信号の劣化状況に関する記録幅依存性を表しており、「横軸」は記録幅W(μm)、すなわち記録媒体上の記録トラック幅を示し、「縦軸」は信号強度比S(−)を示している。この記録信号の劣化状況を調べる際には、薄膜コイルに通電させることにより薄膜磁気ヘッドを使用して正常に記録媒体に記録処理を施し、引き続き薄膜コイルに通電させない状態において薄膜磁気ヘッドを使用して正常な記録時と同様に記録媒体をトレースしたのち、薄膜磁気ヘッドを使用して正常に記録媒体に再生処理を施した。このとき、トレース前の記録信号の強度S1およびトレース後の再生信号の強度S2を調べることにより、それらの強度S1,S2に基づいて信号強度比S(=S2/S1)を算出した。すなわち、信号強度比Sは、トレースの前後における記録信号の減衰状況、すなわち非記録時における意図しない情報の消去されやすさを表す指標である。
なお、本発明の薄膜磁気ヘッドに関する記録信号の劣化状況を調べる際には、その記録信号の劣化状況を比較評価するために、図5および図6に示した比較例の薄膜磁気ヘッドに関する記録信号の劣化状況も同様に調べることにより、その結果を図14に示した。
図14に示した結果から判るように、比較例の薄膜磁気ヘッドでは、記録幅Wの変化に伴い、信号強度比Sが広い範囲に渡って分布し、具体的には信号強度比Sが約0.03〜1.0の範囲に渡って広く分布した。この結果は、比較例の薄膜磁気ヘッドでは、磁極層のうちの後方部分がリーディングのみに拡がっている構造的要因に起因して、非記録時において磁極層から残留磁化が漏洩しやすいため、非記録時において意図せずに情報が消去されやすいことを表している。これに対して、図13に示した結果から判るように、本発明の薄膜磁気ヘッドでは、記録幅Wの変化に伴い、信号強度比Sが狭い範囲に渡って分布し、具体的には信号強度比Sが約0.90〜1.0の範囲に渡って分布した。特に、薄膜磁気ヘッドの製品レベルにおいて許容可能な信号強度比Sの下限が0.85であるとすると、本発明の薄膜磁気ヘッドでは、記録信号の劣化状況が全て許容範囲内となった。この結果は、本発明の薄膜磁気ヘッドでは、磁極層のうちの後方部分がトレーリング側およびリーディング側の双方に拡がっている構造的特徴に基づいて、非記録時において磁極層から残留磁化が漏洩しにくいため、非記録時において情報が消去されにくいことを表している。このことから、本発明の薄膜磁気ヘッドでは、非記録時において意図せずに情報が消去されることを抑制することが可能であることが確認された。
続いて、上記した記録信号の劣化状況に関する磁極層の先端形状の影響を調べたところ、図15〜図17に示した結果が得られた。図15は、記録信号の劣化状況に関するネックハイト/面積依存性を表しており、「横軸」は比NH/S、すなわち磁極層(主磁極層)のうちの先端部のネックハイトNHと面積Sとの間の比を示し、「縦軸」は信号強度比S(−)を示している。図16は、記録信号の劣化状況に関するネックハイト/幅依存性を表しており、「横軸」は比NH/W1、すなわち磁極層(主磁極層)のうちの先端部のネックハイトNHと幅W1との間の比を示し、「縦軸」は信号強度比S(−)を示している。図17は、記録信号の劣化状況に関するネックハイト/厚さ依存性を表しており、「横軸」は比NH/T1、すなわち磁極層(主磁極層)のうちの先端部のネックハイトNHと厚さT1との間の比を示し、「縦軸」は信号強度比S(−)を示している。
なお、記録信号の劣化状況に関する磁極層の先端形状の影響を調べる際には、その先端形状の影響を本発明の薄膜磁気ヘッドと比較例の薄膜磁気ヘッドとの間で比較評価するために、本発明の薄膜磁気ヘッドおよび比較例の薄膜磁気ヘッドの双方に関して同様に磁極層の先端形状の影響を調べた。図15〜図17のうち、「●」は本発明の薄膜磁気ヘッドに関する結果を示し、「■」は比較例の薄膜磁気ヘッドに関する結果を示している。
図15に示した結果から判るように、比較例の薄膜磁気ヘッド(■)では、比NH/Sの変化に伴い、信号強度比Sが広い範囲に渡って分布したのに対して、本発明の薄膜磁気ヘッド(●)では、比NH/Sの変化に伴い、信号強度比Sが狭い範囲に渡って分布した。具体的には、比較例の薄膜磁気ヘッドでは、信号強度比Sが約0.74〜0.93の広い範囲に渡って分布したのに対して、本発明の薄膜磁気ヘッドでは、信号強度比Sが約0.93〜0.95の狭い範囲に渡って分布した。特に、本発明の薄膜磁気ヘッドでは、記録信号の劣化状況が全て上記した許容範囲内(0.85以上)となった。この結果は、比較例の薄膜磁気ヘッドでは、磁極層の先端形状に応じて非記録時における残留磁化の漏洩しやすさが変動しやすいため、非記録時における意図しない情報の消去状況が磁極層の先端形状に依存しやすいのに対して、本発明の薄膜磁気ヘッドでは、磁極層の先端形状に応じて非記録時における残留磁化の漏洩しやすさが変動しにくいため、非記録時における意図しない情報の消去状況が磁極層の先端形状に依存しにくいことを表している。このことから、本発明の薄膜磁気ヘッドでは、比NH/Sの観点において、磁極層の先端形状の自由度を確保しつつ、非記録時において意図せずに情報が消去されることを抑制することが可能であることが確認された。
また、図16に示した結果から判るように、比較例の薄膜磁気ヘッド(■)では、比NH/W1の変化に伴い、信号強度比Sが広い範囲に渡って分布したのに対して、本発明の薄膜磁気ヘッド(●)では、比NH/W1の変化に伴い、信号強度比Sが狭い範囲に渡って分布した。具体的には、比較例の薄膜磁気ヘッドでは、信号強度比Sが約0.73〜0.93の広い範囲に渡って分布したのに対して、本発明の薄膜磁気ヘッドでは、信号強度比Sが約0.93〜0.95の狭い範囲に渡って分布した。特に、本発明の薄膜磁気ヘッドでは、記録信号の劣化状況が全て上記した許容範囲内(0.85以上)となった。このことから、本発明の薄膜磁気ヘッドでは、比NH/W1の観点においても、磁極層の先端形状の自由度を確保しつつ、非記録時において意図せずに情報が消去されることを抑制することが可能であることが確認された。
さらに、図17に示した結果から判るように、比較例の薄膜磁気ヘッド(■)では、比NH/T1の変化に伴い、信号強度比Sが広い範囲に渡って分布したのに対して、本発明の薄膜磁気ヘッド(●)では、比NH/T1の変化に伴い、信号強度比Sが狭い範囲に渡って分布した。具体的には、比較例の薄膜磁気ヘッドでは、信号強度比Sが約0.74〜0.93の広い範囲に渡って分布したのに対して、本発明の薄膜磁気ヘッドでは、信号強度比Sが約0.93〜0.95の狭い範囲に渡って分布した。特に、本発明の薄膜磁気ヘッドでは、記録信号の劣化状況が全て上記した許容範囲内(0.85以上)となった。このことから、本発明の薄膜磁気ヘッドでは、比NH/W1の観点においても、磁極層の先端形状の自由度を確保しつつ、非記録時において意図せずに情報が消去されることを抑制することが可能であることが確認された。
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。具体的には、例えば、上記実施の形態および実施例では、本発明を複合型薄膜磁気ヘッドに適用する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、書き込み用の誘導型磁気変換素子を有する記録専用の薄膜磁気ヘッドや、記録・再生兼用の誘導型磁気変換素子を有する薄膜磁気ヘッドにも適用可能である。もちろん、本発明を、書き込み用の素子および読み出し用の素子の積層順序を逆転させた構造の薄膜磁気ヘッドについても適用可能である。
本発明に係る薄膜磁気ヘッドおよび磁気記録装置は、例えば、ハードディスクに磁気的に情報を記録するハードディスクドライブなどに適用することが可能である。
1…基板、2,11〜13,15,17…絶縁層、3…上部リードシールド層、4…シールドギャップ膜、5,7…上部リードシールド層部分、6…非磁性層、8…MR素子、9…分離層、10,23…薄膜コイル、11K…開口部、14…下部補助磁極層、16…主磁極層、16M…露出面、18…ギャップ層、19…TH規定層、20…上部補助磁極層、21…補助絶縁層、22…主絶縁層、22A,22B…主絶縁層部分、24…ヨーク層、25…オーバーコート層、26…連結層、30…上部リードシールド層、40…磁極層、50…絶縁層、50BG…バックギャップ、60…ライトシールド層、70,220…エアベアリング面、100A…再生ヘッド部、100B…記録ヘッド部、200…筐体、201…磁気ディスク、202…磁気ヘッドスライダ、203…サスペンション、204…アーム、205…スピンドルモータ、206…駆動部、207…固定軸、208…ベアリング、211…基体、212…薄膜磁気ヘッド、E1…上端縁、E2…下端縁、E3…側端縁、FP…フレアポイント、J…基準線、L21,L22…後退距離、LE…リーディングエッジ、M…媒体進行方向、NH…ネックハイト、S…面積、T1,T2,T11,T21,T22…厚さ、TE…トレーリングエッジ、TH…スロートハイト、TP…スロートハイトゼロ位置、W1〜W4…幅、θ…角度。
Claims (7)
- 磁束を発生させる薄膜コイルと、
媒体進行方向に移動する記録媒体に対向する記録媒体対向面から後方に向かって延在し、前記薄膜コイルにおいて発生した磁束に基づいて前記記録媒体をその表面と直交する方向に磁化させるための磁界を発生させると共に、前記記録媒体対向面に近い側において第1の厚さを有し、かつ前記記録媒体対向面から遠い側において前記媒体進行方向側およびその媒体進行方向側の反対側の双方に拡がることにより前記第1の厚さよりも大きな第2の厚さを有する磁極層と、を備えた
ことを特徴とする薄膜磁気ヘッド。 - 前記磁極層が、前記第2の厚さを有する部分において、前記媒体進行方向側およびその媒体進行方向側の反対側に対称に拡がっている
ことを特徴とする請求項1記載の薄膜磁気ヘッド。 - 前記磁極層が、
前記記録媒体対向面よりも後退した位置から後方に向かって延在する第1の補助磁極層と、
前記記録媒体対向面から後方に向かって延在する主磁極層と、
前記記録媒体対向面よりも後退した位置から後方に向かって延在する第2の補助磁極層と、がこの順に積層された積層構造を有しており、
前記第1の厚さが、前記主磁極層の厚さに基づいて規定されていると共に、
前記第2の厚さが、前記第1の補助磁極層の厚さ、前記主磁極層の厚さおよび前記第2の補助磁極層の厚さの総和に基づいて規定されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の薄膜磁気ヘッド。 - 前記第1の補助磁極層の厚さと前記第2の補助磁極層の厚さとが互いに等しくなっていると共に、
前記記録媒体対向面に対する前記第1の補助磁極層の後退距離と前記記録媒体対向面に対する前記第2の補助磁極層の後退距離とが互いに等しくなっている
ことを特徴とする請求項3記載の薄膜磁気ヘッド。 - 前記第1の補助磁極層と前記第2の補助磁極層とが互いに同一の磁性材料を含んで構成されている
ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の薄膜磁気ヘッド。 - さらに、前記磁極層の前記媒体進行方向側に配置され、前記記録媒体対向面から後方に向かって延在することによりその記録媒体対向面に近い側においてギャップ層により前記磁極層から隔てられると共に遠い側においてバックギャップを通じて前記磁極層に連結された磁気遮蔽層を備えた
ことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の薄膜磁気ヘッド。 - 媒体進行方向に移動する記録媒体と、その記録媒体に磁気的処理を施す薄膜磁気ヘッドと、を搭載し、
その薄膜磁気ヘッドが、
磁束を発生させる薄膜コイルと、
媒体進行方向に移動する記録媒体に対向する記録媒体対向面から後方に向かって延在し、前記薄膜コイルにおいて発生した磁束に基づいて前記記録媒体をその表面と直交する方向に磁化させるための磁界を発生させると共に、前記記録媒体対向面に近い側において第1の厚さを有し、かつ前記記録媒体対向面から遠い側において前記媒体進行方向側およびその媒体進行方向側の反対側の双方に拡がることにより前記第1の厚さよりも大きな第2の厚さを有する磁極層と、を備えた
ことを特徴とする磁気記録装置。
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---|---|---|---|
JP2004333416A JP2006147010A (ja) | 2004-11-17 | 2004-11-17 | 薄膜磁気ヘッドおよび磁気記録装置 |
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JP (1) | JP2006147010A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7796359B2 (en) | 2007-08-23 | 2010-09-14 | Tdk Corporation | Magnetic head for perpendicular magnetic recording and method of manufacturing the same, the magnetic head including pole layer and two shields sandwiching the pole layer |
-
2004
- 2004-11-17 JP JP2004333416A patent/JP2006147010A/ja not_active Withdrawn
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US7796359B2 (en) | 2007-08-23 | 2010-09-14 | Tdk Corporation | Magnetic head for perpendicular magnetic recording and method of manufacturing the same, the magnetic head including pole layer and two shields sandwiching the pole layer |
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