JP4201148B2 - 内燃機関用バルブリフタ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、内燃機関用バルブリフタ、特にスカートの側面で潤滑油の貯留量を増加できる内燃機関用バルブリフタに属する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関の吸気バルブ又は排気バルブを開閉する内燃機関用の直打式動弁機構の一例を図3に示す。図示のように、この直打式動弁機構は、内燃機関のシリンダヘッドのリフタボス(1)に形成されたボア(1a)内に摺動可能に配置されたバルブリフタ(2)と、バルブリフタ(2)の上部に形成された当接面(2a)に接触するカム(3a)を有するカムシャフト(3)と、バルブリフタ(2)の当接面(2a)から軸(4a)に沿って延びる円筒状のスカート(2b)内に突出する中心突起(9)に当接するバルブステム(4)と、バルブステム(4)に取り付けられたコッタ(5)と、コッタ(5)を介してバルブステム(4)に取り付けられたリテーナ(6)と、リテーナ(6)及びバルブステム(4)を介してバルブリフタ(2)の当接面(2a)をカム(3a)に押圧するバルブスプリング(7)とを備えている。図示しないが、公知の構造で内燃機関の吸気又は排気を制御する茸状のバルブがバルブステム(4)の下部に一体に形成される。カム(3a)が回転すると、カム(3a)の回転とバルブスプリング(7)の弾力によってバルブリフタ(2)はボア(1a)内で垂直方向に往復運動を行い、カム(3a)の回転運動を往復運動に変換してバルブステム(4)に伝達する。バルブリフタ(2)はリフタボス(1)のボア(1a)に対し適度なクリアランスをもって案内摺接され、カム(3a)の回転に伴う一定のストロークで直線的往復運動をバルブステム(4)に伝達する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記直打式動弁機構では、バルブリフタ(2)とリフタボス(1)との間に摺動部が形成され、この摺動部に供給される潤滑油が不足して摩耗が発生する問題がある。潤滑油の不足に対応するため、摺動面の表面粗度を粗くして保油性を高めることが考えられる。しかしながら、バルブリフタ(2)のスカート(2b)に形成される現状の軸方向表面粗さは、0.4μm以下の非常に高精度の平均粗さ(Ra)で加工され、リフタボス(1)についても同程度の高精度粗さで加工される。表面粗さの精度が向上する程、スカート(2)の表面凹部の総容積が減少するため、スカート(2b)とリフタボス(1)との間に供給される潤滑油の量は減少し、摺動面での保油能力が減少する。また、表面粗さの精度がよい程、スカート(2b)がリフタボス(1)に密着してスカート(2b)の凹凸が減少する。このため、バルブリフタ(2)とリフタボス(1)との間隙に摩耗粉等の異物が進入すると、異物を収容するスペースが小さく、スカート(2b)及びリフタボス(1)の摺動部の摩耗が進展しやすい。バルブリフタ(2)に供給される潤滑油はオイルフィルタを循環し、オイルフィルタにより潤滑油に含まれる異物が濾過される。しかしながら、オイルフィルタによってある程度の大きさの摩耗粒子を捕集できるが、直径2μm程度以下の粒子はオイルフィルタを通過する割合が高く、バルブリフタ(2)の作動中にリフタボス(1)に対してバルブリフタ(2)がボア(1a)の中心から偏位し、バルブリフタ(2)とリフタボス(1)との間に大きな間隙が形成されるとき、直径2μm程度以下の摩耗粒子がバルブリフタ(2)のスカート(2b)とリフタボス(1)との間隙に進入する。この場合、スカート(2b)の表面粗さ、即ち粗さの谷深さが0.4μm以下であるから、異物の直径の方が大きく、スカート(2b)の表面の凹凸部からはみ出し、リフタボス(1)側を攻撃し摩耗を促進させる。また、同時に摩擦損失も大きくなる。
【0004】
異物進入の問題を解決するため、スカートの表面の一部又は全面に波形の表面形状を形成し、台形形状に山部を仕上げたバルブリフタが提案されている。このバルブリフタではほぼ一定の表面粗さでスカートの全面を形成するため、スカートの中央部で十分な量の潤滑油を貯留できず、スカートとリフタボスとの間に異物を嵌入できない難点がある。また、バルブリフタの往復運動で発生する首振り現象に伴い、上死点及び下死点でリフタボスへのスカートの局所当たりが生じるため、スカートの中央部より上端部及び下端部に加わる面圧を低減できず、摩擦損失が大きくなる欠点が生ずる。
【0005】
この発明の目的は、異物によるスカート又はバルブボスの損傷を防止できると共に、スカートの側面で潤滑油の貯留量を増加できる内燃機関用バルブリフタを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
カム(3a)の回転運動を往復運動に変換してバルブステム(4)に伝達するこの発明による内燃機関用バルブリフタは、内燃機関のリフタボス(1)に形成されたボア(1a)内に摺動可能に配置されかつカムシャフト(3)に設けられたカム(3a)に接触する当接面(2a)と、バルブステム(4)の軸方向に当接面(2a)から延びる円筒状のスカート(2b)とを備えている。リフタボス(1)のボア(1a)の壁面に当接するスカート(2b)の側面の表面粗さの最大高さを、バルブステム(4)の軸方向に沿って中央部(2c)で大きくし、上端部(2d)及び下端部(2e)で小さくすることにより、バルブリフタ(2)のスカート(2b)とリフタボス(1)との実質的な接触面積を減少させてかつスカート(2b)とリフタボス(1)との間の隙間に十分な量の潤滑油を確実に貯留することができる。また、バルブリフタ(2)の側面とリフタボス(1)のボア(1a)の表面での油膜を確実に確保することにより、異常摩耗によるトラブルを防止し、バルブリフタ(2)の摺動部の摩擦抵抗を低減させることができる。リフタボス(1)のボア(1a)とバルブリフタ(2)との間に進入する異物をバルブリフタ(2)のスカート(2b)の表面に形成される谷部内に遊動状態で嵌入するので、リフタボス(1)とバルブリフタ(2)との間の壁面で異物を挟持せず、異物による両摺動面の損傷を回避することができる。例えば、直径2μm以下の粒子はオイルフィルタを通過する割合が高いため、スカート(2b)の側面のほぼ中央部(2c)における表面粗さの最大高さは15μm以下、好ましくは2〜10μm以下である。
【0007】
この発明の実施の形態では、スカート(2b)の側面の表面粗さの最大高さを上端部(2d)及び下端部(2e)から中央部(2c)に向かって段階的に又は徐々に大きくすると、スカート(2b)の上端部(2d)及び下端部(2e)からリフタボス(1)とバルブリフタ(2)との間に進入する異物をスカート(2b)の谷部内に遊動状態で嵌入することができる。スカート(2b)の側面の表面は種々の形状で形成できるが、例えば円弧状断面、U字形断面又はV字形断面で形成することができる。この発明による他の実施の形態では、バルブステム(4)の軸方向に沿ってスカート(2b)の側面を同一直径又は樽状に形成してもよい。スカート(2b)の側面に設けられた突部(8)の頂部(8a)に平坦面(8b)を形成すると、突部(8)の頂部(8a)の機械的強度が増加し、頂部(8a)の摩耗が著しく短時間に進行しない。特に、スカート(2b)の上端部(2d)及び下端部(2e)での平坦面(8b)の面積が大きくなるため、バルブリフタ(2)の往復運動で首振り現象が発生してもスカート(2b)の上端部(2d)及び下端部(2e)での面圧を減少することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、この発明による内燃機関用バルブリフタの実施の形態を図1及び図2について説明する。図1及び図2では、図3に示す箇所と同一の部分には同一の符号を付し説明を省略する。
【0009】
図1に示すように、ほぼストレートな直径で形成されるスカート(2b)は上端部(2d)、中央部(2c)及び下端部(2e)の3区分に分割され、バルブステム(4)の軸方向に沿ってスカート(2b)の側面の表面粗さを中央部(2c)で大きく上端部(2d)及び下端部(2e)で小さくして、スカート(2b)の側面の表面粗さを上端部(2d)及び下端部(2e)から中央部(2c)に向かって徐々に大きくすることができる。スカート(2b)の側面の表面は種々の形状で形成できるが、図1(B)は先端がR形状の刃具による旋盤加工を行い、中央部(2c)と上端部(2d)及び下端部(2e)で表面粗さを差別化して円弧状断面の溝を形成した例を示す。図1(B)では、スカート(2b)の上端部(2d)及び下端部(2e)近傍で刃具の送りピッチ及び追い込み量を小さくとり、中央部(2c)近傍では、その送りピッチ及び追い込み量を大きくとる。図1(C)はV字形断面の溝を形成した例を示す。円弧状断面及びV字形断面以外に、U字形断面の溝で形成してもよい。図1(B)及び(C)に示すように、スカート(2b)の側面の表面粗さを上端部(2d)及び下端部(2e)から中央部(2c)に向かって徐々に大きくすると、スカート(2b)の上端部(2d)及び下端部(2e)からリフタボス(1)とバルブリフタ(2)との間に進入する異物をスカート(2b)の谷部内に遊動状態で嵌入することができる。摺動隙間に浸入する異物による両摺動面への攻撃を回避するため、本実施の形態では、バルブリフタ(2)側の表面粗さ形状を形成する谷部内に完全にかつ遊動状態で異物を嵌入させ、リフタボス(1)とリフタとの間の壁面で挟持しないことが重要である。この発明では、最適な油膜形成と、異物の嵌合有利な表面粗さ形状をスカート(2b)の全面に付与することができる。上端部(2d)及び下端部(2e)から中央部(2c)に向かって徐々に大きくする代わりに、スカート(2b)の側面の表面粗さを上端部(2d)及び下端部(2e)から中央部(2c)に向かって段階的に大きくしてもよい。図1(B)及び(C)では、外径の仕上げと表面の突起・バリを取り除くために同一刃具により、送りピッチを超低速側にセットし、仕上げ加工線(L)に沿って仕上げ加工を行うとスカート(2b)の側面に設けられた突部(8)の頂部(8a)に平坦面(8b)が形成される。仕上げ加工は、仕上げ加工線(L)に沿って表面を切削、研磨又は研削してもよい。平坦面(8b)を形成すると、突部(8)の頂部(8a)の機械的強度が増加し、頂部(8a)の摩耗が著しく短時間に進行しない。特に、スカート(2b)の上端部(2d)及び下端部(2e)での平坦面(8b)の面積が大きくなるため、バルブリフタ(2)の往復運動で首振り現象が発生してもスカート(2b)の上端部(2d)及び下端部(2e)での面圧を減少することができる。
【0010】
また、バルブステム(4)の軸方向に沿ってスカート(2b)の側面の表面粗さを中央部(2c)で大きく上端部(2d)及び下端部(2e)で小さくすることにより、バルブリフタ(2)のスカート(2b)とリフタボス(1)との実質的な接触面積を減少させかつスカート(2b)とリフタボス(1)との間の隙間に十分な量の潤滑油を確実に貯留することができる。リフタボス(1)の摩耗を低減させるには、バルブリフタ(2)とリフタボス(1)間に特に十分な量の潤滑油を貯留することが必要である。また、バルブリフタ(2)はリフタボス(1)内のクリアランス範囲内で傾き、上死点・下死点で傾き角度を変更するために、上端部(2d)・下端部(2e)で局所的な高面圧部が生じ油膜が切れやすく、その近傍の確実な油膜形成と十分な油量確保が必要であるが、本実施の形態はこの要求に対応することができる。また、バルブリフタ(2)の側面とリフタボス(1)のボア(1a)の表面での油膜を確実に確保することにより、バルブリフタ(2)の摺動部の摩擦抵抗を低減させ、異常摩耗によるトラブルを防止し、摩擦抵抗を低減することができる。リフタボス(1)のボア(1a)とバルブリフタ(2)との間に進入する異物をバルブリフタ(2)のスカート(2b)の表面に形成される谷部内に遊動状態で嵌入するので、リフタボス(1)とバルブリフタ(2)との間の壁面で異物を挟持せず、異物による両摺動面の損傷を回避することができる。例えば、直径2μm程度以下の粒子はオイルフィルタを通過するので、スカート(2b)の側面のほぼ中央部(2c)における表面粗さの最大高さは15μm以下、好ましくは2〜10μm下である。
【0011】
図1(B)及び(C)では、バルブステム(4)の軸方向に沿ってスカート(2b)の側面を同一直径に形成する例を示したが、図2に示すように、スカート(2b)の側面を樽(バレル)状に形成してもよい。図2では、刃具の追い込み量が一定で、送りピッチ(P)を連続的に可変制御することにより、全体形状を樽型とし、同時にスカート(2b)の上下端方向で粗さ小とし、スカート(2b)の中央方向で粗さが大として、連続性を持たせた粗さ表面を有する切削加工又は研削加工が可能となる。樽形の膨らみ(H)はH=10〜15μmである。また、山の高さ(H)はスカート(2b)の中央部(2c)に向かって徐々に増加する。
【0012】
図2(C)では、旋盤加工によりストレートな波形加工を実施し、その後、樽型形状の仕上げと表面の突起・バリを取り除く加工を同一刃具により行った例である。この場合、スカート(2b)の上端部(2d)又は下端部(2e)に近づくほど、樽形状での刃具追い込み量が大きくなるため、旋盤加工で波形の山部を切削し、実質的に表面粗さは小さくなるが、スカート(2b)の中央部(2c)では、削り代が少ないため粗さは大きくなる。
【0013】
図2(D)では、比較的粗い研削目を残し、その後樽型形状の仕上げを実施した例である。この場合も図2(C)と同様に、スカート(2b)の上端部(2d)及び下端部(2e)に近づくほど、樽型形状での刃具追い込み量が大きくなるため、研削面の山部が切削され、実質的に表面粗さは小さくなる。また、スカート(2b)の中央部(2c)では、削り代が少ないため粗さは大きくなる。
【0014】
本実施の形態では、下記の作用効果が得られる。
[1] スカート(2b)の中央部(2c)で波形の凹部に潤滑油を多量に確保し、潤滑性能を向上することができる。
[2] 局所面圧が作用するスカート(2b)の上端部(2d)及び下端部(2e)で、油膜保持面積を確保し、油膜切れを防止できる。
[3] 軸方向に均衡のとれた潤滑性能を得ることが可能となる。
[4] 摩耗を防止し摩擦抵抗を低減できる。
[5] 浸入する異物を粗さの谷部に嵌入させて、異物噛み込みによるバルブリフタ(2)及びリフタボス(1)の摩耗及び損傷を抑制することができる。
[6] 実質的な摺動部面積を減らし、金属接触抵抗及び流体摩擦抵抗を低減でき、内燃機関の動作効率を向上できる。
[7] 旋盤加工のみで形状設定と粗さ設定が可能となり、機能改善と同時に大幅なコスト低減が可能となる。
【0015】
【発明の効果】
前記のように、この発明では、内燃機関用バルブリフタを円滑に作動することができるので、バルブリフタの摩耗を抑制して故障を減少すると共に、内燃機関の性能を向上することができる。また、旋盤加工のみで、形状と粗さとを選択することができ、機能改善と同時に製造コストを大幅に低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明による第1の実施の形態であるスカートの表面粗さを示すグラフ
【図2】 この発明による第2の実施の形態である樽形に形成されたスカートの表面粗さを示すグラフ
【図3】 内燃機関の直打式動弁機構を示す断面図
【符号の説明】
(1)・・リフタボス、 (1a)・・ボア、 (2)・・バルブリフタ、 (2a)・・当接面、 (2b)・・スカート、 (2c)・・中央部、 (2d)・・上端部、 (2e)・・下端部、 (3)・・カムシャフト、 (3a)・・カム、 (4)・・バルブステム、 (8)・・突部、 (8a)・・頂部、 (8b)・・平坦面、

Claims (6)

  1. 内燃機関のリフタボスに形成されたボア内に摺動可能に配置されかつカムシャフトに設けられたカムに接触する当接面と、バルブステムの軸方向に当接面から延びる円筒状のスカートとを備え、カムの回転運動を往復運動に変換してバルブステムに伝達する内燃機関用バルブリフタにおいて、
    リフタボスのボアの壁面に当接するスカートの側面の表面粗さの最大高さをバルブステムの軸方向に沿って中央部で大きくし、上端部及び下端部で小さくしたことを特徴とする内燃機関用バルブリフタ。
  2. スカートの側面の表面粗さの最大高さを上端部及び下端部から中央部に向かって段階的に又は徐々に大きくした請求項1に記載の内燃機関用バルブリフタ。
  3. スカートの側面の表面を円弧状断面、U字形断面又はV字形断面で形成した請求項1又は2に記載の内燃機関用バルブリフタ。
  4. バルブステムの軸方向に沿ってスカートの側面を同一直径又は樽状に形成した請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関用バルブリフタ。
  5. スカートの側面のほぼ中央部における表面粗さの最大高さは、2〜15μmである請求項1〜4のいずれか1項に記載の内燃機関用バルブリフタ。
  6. スカートの側面に設けられた突部の頂部に平坦面を形成した請求項1〜5のいずれか1項に記載の内燃機関用バルブリフタ。
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