JP7124514B2 - 内燃機関の複リンク式ピストンクランク機構におけるアッパリンク - Google Patents

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Description

この発明は、内燃機関の複リンク式ピストンクランク機構の構成要素の一つであるアッパリンクに関し、特に、ロアリンクとの連結部となるアッパピン用ピンボス部の改良に関する。
レシプロ式内燃機関のピストンピンとクランクピンとの間を複リンク式のピストンクランク機構で連結した従来技術として、本出願人が先に提案した特許文献1等が公知となっている。これは、ピストンのピストンピンに連結されるアッパリンクと、このアッパリンクとクランクシャフトのクランクピンとを連結するロアリンクと、一端が機関本体側に揺動可能に支持され、かつ他端が上記ロアリンクに連結されるコントロールリンクと、を備えている。そして、上記アッパリンクと上記ロアリンクとは、アッパピンを介して互いに回転可能に連結され、上記コントロールリンクと上記ロアリンクとは、コントロールピンを介して互いに回転可能に連結されている。
このような複リンク式のピストンクランク機構におけるアッパリンクは、棒状のロッドの両端にそれぞれ円環状のピンボス部を備えた構成となっており、一方のピストンピン用ピンボス部がピストンピンに連結され、他方のアッパピン用ピンボス部がアッパピンに連結される。アッパピンは、ロアリンクの一端部に二股状に形成された一対のロアリンク側ピンボス部に両端部が支持されており、軸方向の中央部に、アッパリンクのアッパピン用ピンボス部が回転可能に嵌合する。
上記のアッパピン用ピンボス部とアッパピンとの嵌合部つまり摺動面の潤滑のために、特許文献1には、クランクシャフト内部からロアリンクに設けたオイル噴射孔を介してアッパリンクのアッパピン用ピンボス部外周面へ向けて潤滑油を噴射供給する構成が開示されている。そして、アッパピン用ピンボス部の軸方向の端面には、噴射供給された潤滑油を受け取ってアッパピンとの接触面に導くように凹部が切欠形成されている。すなわち、所定クランク角においてクランクピンの油路とロアリンクのオイル噴射孔とが合致することで潤滑油が噴射され、このクランク角において潤滑油噴射方向に凹部が整列することで潤滑油が内周側へ案内される。
特開2016-196888号公報
しかしながら、特許文献1の構成では、クランクシャフト内部を通して供給される潤滑油に依存して潤滑が行われる。この発明は、クランクシャフト内部を通した強制潤滑に依存せずに、クランクケース内に飛散するオイルミストを利用して、アッパピン用ピンボス部とアッパピンとの間の潤滑を行うことを目的としている。
この発明に係る内燃機関の複リンク式ピストンクランク機構におけるアッパリンクは、アッパピン用ピンボス部のアッパピンの軸方向に向かう一対の端面の少なくも一方において、該アッパピン用ピンボス部の内周縁に沿った3箇所に、クランクケース内に飛散するオイルミストを捕集する三日月形の凹部が軸方向に凹んで形成されている。各凹部は、アッパピンの軸方向に直交する平面上に位置する外周側の輪郭を有する。これらの凹部は、上記内周縁の周方向の中で、上記ロッド部側となる中央位置と、上記ロッド部に対して斜め下方となる一対の位置と、の計3箇所に設けられている。
ピストンクランク機構が高速で運動するクランクケース内には、多量のオイルミストが飛散している。アッパリンクの端部にあるアッパピン用ピンボス部は、クランクケース内で概ねD字形をなすように上下に往復運動する。すなわち、ほぼシリンダ軸線方向に沿って真っ直ぐに下降して下死点に達した後、斜めに上昇し、かつ上昇の途中でD字形をなすように傾斜の方向が反対側となってさらに上昇し、上死点に達する。このようなD字形をなす往復運動に伴ってアッパピン用ピンボス部端面の3つの凹部にオイルミストが効果的に捕集される。捕集されたオイルミストは、徐々に大きな油滴となり、凹部からアッパピン用ピンボス部の内周側へ流れる。これにより、アッパピンとの間が潤滑される。
なお、このオイルミストを利用する潤滑は、オイルポンプにより加圧された潤滑油の供給による他の強制潤滑と組み合わせて用いることも可能である。
この発明によれば、クランクケース内に飛散するオイルミストを利用してアッパピン用ピンボス部とアッパピンとの間を潤滑することができる。
複リンク式ピストンクランク機構の構成説明図。 一実施例のアッパリンクの正面図。 アッパピン用ピンボス部の移動軌跡を示す説明図。 運動軌跡中の4点における凹部内でのオイルの挙動を示す説明図。 第1実施例のアッパピン用ピンボス部の正面図。 第1実施例のアッパピン用ピンボス部の斜視図。 第2実施例のアッパピン用ピンボス部の正面図。 第2実施例のアッパピン用ピンボス部の斜視図。 第3実施例のアッパピン用ピンボス部の正面図。 第3実施例のアッパピン用ピンボス部の斜視図。 第3実施例における凹部端部でのオイルの挙動を示す説明図。 第4実施例のアッパピン用ピンボス部の正面図。 第4実施例のアッパピン用ピンボス部の斜視図。
以下、この発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、この発明が適用される複リンク式ピストンクランク機構の構成要素を示している。この複リンク式ピストンクランク機構自体は前述した特許文献1等によって公知のものであり、ピストン1にピストンピン2を介して一端が連結されたアッパリンク3と、このアッパリンク3の他端にアッパピン4を介して連結され、かつクランクシャフトのクランクピン5に連結されたロアリンク6と、このロアリンク6の自由度を規制するコントロールリンク7と、を備えている。上記コントロールリンク7は、一端が機関本体側の支持ピン8に揺動可能に支持され、他端が上記ロアリンク6にコントロールピン9を介して連結されている。なお、上記複リンク式ピストンクランク機構は、上記支持ピン8の位置を可変とすることで、可変圧縮比機構として構成することも可能である。
上記ロアリンク6は、上記クランクピン5に嵌合する円筒形のクランクピン軸受部11を中央に有し、かつこのクランクピン軸受部11を挟んで互いにほぼ180°反対側となる位置に、アッパピン用ピンボス部12およびコントロールピン用ピンボス部13がそれぞれ設けられている。このロアリンク6は、全体として、菱形に近い平行四辺形をなしており、クランクピン軸受部11の中心を通る分割面14において、アッパピン用ピンボス部12を含むロアリンクアッパ6Aと、コントロールピン用ピンボス部13を含むロアリンクロア6Bと、の2部品に分割して形成されている。これらのロアリンクアッパ6Aおよびロアリンクロア6Bは、クランクピン軸受部11をクランクピン5に嵌め込んだ上で、互いに逆向きに挿入される一対のボルト(図示せず)によって互いに締結されている。
上記アッパピン用ピンボス部12は、アッパリンク3を軸方向中央部に挟むように二股状の構成となっており、アッパピン4の軸方向の両端部を支持する一対のアッパピン用ピンボス部12の各々が、ロアリンク6の軸方向の端面に沿って延びている。つまり、一対のアッパピン用ピンボス部12の間に、アッパリンク3の揺動運動を可能とする一定幅の溝部(図示せず)が存在する。各々のアッパピン用ピンボス部12は、円形のピン嵌合孔を有し、これらのピン嵌合孔にアッパピン4が圧入されている。
コントロールピン用ピンボス部13も基本的に同様の構成であり、二股状をなす一対のコントロールピン用ピンボス部13の間の溝部(図示せず)にコントロールリンク7が組み合わされ、コントロールピン9の両端部がコントロールピン用ピンボス部13のピン嵌合孔に圧入されている。
図2は、上記のロアリンク6とピストン1とを連結するアッパリンク3を示している。このアッパリンク3は、炭素鋼の鍛造や鋳造等によって一部品として構成されているものであり、直線的に延びた矩形断面の棒状をなすロッド部21と、このロッド部21の一端に設けられた円環状のピストンピン用ピンボス部22と、ロッド部21の他端に設けられた円環状のアッパピン用ピンボス部23と、を有する。
ピストンピン用ピンボス部22は、ピストン1に両端部が支持されたピストンピン2の中央部に回転可能に嵌合する。なお、ピストンピン2は、ピストン1に圧入して固定してもよく、あるいは、いわゆるフルフロート形式としてピストン1に回転可能に支持するようにしてもよい。
アッパピン用ピンボス部23は、ロアリンク6側のアッパピン用ピンボス部12に両端が支持されたアッパピン4の中央部に回転可能に嵌合する。図5,図6は、アッパピン用ピンボス部23の詳細を示す拡大図である。これらの図に示すように、アッパピン用ピンボス部23は、ロアリンク6側の一対のアッパピン用ピンボス部12の内側面に対向するようにアッパピン4軸方向に向かう一対の端面24と、アッパピン4と接する軸受メタル31が圧入された内周面つまり軸受孔25と、ロッド部21の側面に連続する外周面26と、から円環状に構成されている。ここで、上記端面24は、上記軸受孔25を囲む内周側の環状平面部24aと、この環状平面部24aの外周側に位置するテーパ部24bと、を有する。上記環状平面部24aは、上記アッパピン4の軸方向に対して直交する平面に沿って機械加工により仕上げられている。これに対し、上記テーパ部24bは、外周側へ向かうに従って上記環状平面部24aに沿った平面から後退するように傾斜しており、鍛造等による粗面のままとなっている。
一対の端面24の各々には、クランクケース内に飛散するオイルミストを捕集するためのオイルミスト捕集凹部28が周方向の3箇所に形成されている。具体的には、端面24(環状平面部24a)の内周縁の周方向の中で、ロッド部21側となる中央位置に第1のオイルミスト捕集凹部28Aが設けられ、ロッド部21に対して斜め下方となる一対の位置に、第2のオイルミスト捕集凹部28Bおよび第3のオイルミスト捕集凹部28Cが設けられている。これらのオイルミスト捕集凹部28A~28Cは、それぞれ図5の正面視において三日月形をなし、かつ軸方向に凹んで形成されている。
換言すれば、各々のオイルミスト捕集凹部28A~28Cは、環状平面部24aに位置する外周側の輪郭28aと、基本的に環状平面部24aと平行な平面をなす底面28bと、によって画定されている。図5,図6に示す第1実施例においては、外周側の輪郭28aは、端面24の内周縁つまり軸受孔25の曲率半径よりも小さな曲率半径の円弧に沿った形状をなしている。
なお、3つのオイルミスト捕集凹部28A~28Cの間においては、環状平面部24aが周方向に不連続なものとなるように、半径方形に沿った凹溝部29を備えていてもよい。
第1実施例においては、3つのオイルミスト捕集凹部28A~28Cは、いずれも同一の大きさを有している。つまり、各々の輪郭28aの形状が同一であり、底面28bの深さも互いに等しい。第2のオイルミスト捕集凹部28Bと第3のオイルミスト捕集凹部28Cとは、アッパピン用ピンボス部23の中心を通りかつロッド部21の長手方向に沿ったアッパリンク中心線CL(換言すれば、アッパピン用ピンボス部23の中心とピストンピン用ピンボス部22の中心を通る中心線)を挟んで対称に形成されている。また、第1のオイルミスト捕集凹部28Aは、やはり、上記のアッパリンク中心線CLを挟んで対称形の三日月形をなしている。特に第1実施例においては、3つのオイルミスト捕集凹部28A~28Cがほぼ等間隔に配置されており、従って、上記アッパリンク中心線CLを基準として120°毎の半径線を仮想すると、各々の半径線がオイルミスト捕集凹部28A~28Cとそれぞれ交差する。
上記のような構成を有するオイルミスト捕集凹部28A~28Cは、例えば、アッパリンク3の基本形状を鍛造等によって形成した上で、端面24における環状平面部24a等の機械加工と併せて二次的に機械加工される。放電加工等によって二次的に加工してもよい。その他、鍛造等でアッパリンク3を製造する際に同時に型によってオイルミスト捕集凹部28A~28Cを形成するようにしてもよい。
上記のようにアッパピン用ピンボス部23の内周縁の3箇所にオイルミスト捕集凹部28A~28Cを設けることにより、クランクケース内に飛散するオイルミストが効果的に捕集される。図3は、クランクケース内でのアッパピン用ピンボス部23の移動軌跡を示している。アッパリンク3とロアリンク6とコントロールリンク7とを含む複リンク式ピストンクランク機構においては、アッパリンク3とロアリンク6との連結部に相当するアッパピン用ピンボス部23は、図示するように、クランクケース内で概ねD字形をなすように上下に往復運動する。すなわち、上死点TDCから下死点BDCへ至る下降行程S1は、ほぼシリンダ軸線方向に沿った直線状をなすのに対し、下死点BDCから上死点TDCへ至る上昇行程S2は、下死点BDCから斜めに上昇する第1区間S2aと、傾斜の方向が反対側に変化して斜めに上昇する第2区間S2bと、を含む略L字形に屈曲した形状をなす。なお、図3には、各々の行程でのロアリンク6の姿勢を併せて図示してある。
基本的に、アッパピン用ピンボス部23の上部中央に位置する第1のオイルミスト捕集凹部28Aは、下降行程S1でのオイルミストの捕集に寄与する(図3の位置Aおよび位置Bを参照)。図5の右側に位置する第2のオイルミスト捕集凹部28Bは、上昇行程S2の中の第1区間S2aでのオイルミストの捕集に寄与し(図3の位置Cを参照)、図5の左側に位置する第3のオイルミスト捕集凹部28Cは、上昇行程S2の中の第2区間S2bでのオイルミストの捕集に寄与する(図3の位置Dを参照)。そして、捕集されたオイルミストは、徐々に油滴に成長した上で、アッパピン用ピンボス部23の運動に伴い、内周側へつまりアッパピン4へと供給される。このオイルによって、軸受孔25(厳密には軸受メタル31の内周面)とアッパピン4との接触面が潤滑される。
図4は、図3の移動軌跡の中の代表的なクランク角位置である位置A~Dにおけるオイルの挙動を説明している。位置Aでは、アッパピン用ピンボス部23はほぼ真っ直ぐ下方へ下降中であり、かつ下方へ向かって加速している。そのため、第1のオイルミスト捕集凹部28Aではオイルが上方へ向かって堆積していく。また、第2のオイルミスト捕集凹部28Bおよび第3のオイルミスト捕集凹部28Cでは、加速度に対してオイルが追従できずに遅れるので、第2のオイルミスト捕集凹部28Bおよび第3のオイルミスト捕集凹部28Cの中で相対的にオイルが上方へ移動し、かつこれらオイルミスト捕集凹部28B,28Cから離れて内周側へつまりアッパピン4側へ供給される。なお、図中の大きな矢印Pは、アッパピン用ピンボス部23の移動方向を示し、小さな矢印Oは、各オイルミスト捕集凹部28でのオイルの挙動を模式的に示している。
位置Bでは、アッパピン用ピンボス部23はほぼ真っ直ぐ下降中であるが、下死点BDCに近付くことで、その移動速度が減速する。そのため、第2のオイルミスト捕集凹部28Bおよび第3のオイルミスト捕集凹部28Cでは、特にその下側部分にオイルが堆積する。第1のオイルミスト捕集凹部28Aでは、減速度に対してオイルが追従できずに第1のオイルミスト捕集凹部28Aから離れようとするので、それまでに堆積していたオイルがオイルミスト捕集凹部28Aから離れて内周側つまりアッパピン4側へ供給される。
位置Cでは、アッパピン用ピンボス部23は、図の左斜め上方へ加速しながら上昇する。そのため、第2のオイルミスト捕集凹部28Bにオイルが堆積する。第1のオイルミスト捕集凹部28Aでは、加速度に追従できないオイルが第1のオイルミスト捕集凹部28Aから離れて内周側つまりアッパピン4側へ供給される。第3のオイルミスト捕集凹部28Cでは、該第3のオイルミスト捕集凹部28Cの中でオイルが移動し、外周側の輪郭28aに沿って放出される。この第3のオイルミスト捕集凹部28Cから放出されるオイルも、やはりアッパピン4側へ供給される。
位置Dでは、アッパピン用ピンボス部23は、図の右斜め上方へ減速しつつ移動するため、第3のオイルミスト捕集凹部28Cにオイルが堆積する。第1のオイルミスト捕集凹部28Aでは、オイルが第1のオイルミスト捕集凹部28Aから離れて内周側つまりアッパピン4側へ供給され、第3のオイルミスト捕集凹部28Cでは、該第3のオイルミスト捕集凹部28Cの中でオイルが移動して輪郭28aに沿って内周側へ放出される。
このような動作の繰り返しによって、3つのオイルミスト捕集凹部28A~28Cにより効果的にオイルミストが捕集されるとともに、アッパピン4のほぼ全周に対してオイル供給がなされる。
次に、図7および図8は、オイルミスト捕集凹部28A~28Cの構成を一部変更した第2実施例を示している。この第2実施例においては、中央位置に位置する第1のオイルミスト捕集凹部28Aの容積が他の第2のオイルミスト捕集凹部28Bの容積や第3のオイルミスト捕集凹部28Cの容積よりも大きなものとなっている。図示例では、三日月形をなす第1のオイルミスト捕集凹部28Aの周方向に沿った角度範囲が、他の第2のオイルミスト捕集凹部28Bおよび第3のオイルミスト捕集凹部28Cに比較して相対的に大きなものとなっている。例えば、第1のオイルミスト捕集凹部28Aの外周側の輪郭28aの曲率半径を大きくすることで、左右に大きく拡がったオイルミスト捕集凹部28Aが形成される。なお、底面28bの深さは、第2のオイルミスト捕集凹部28Bおよび第3のオイルミスト捕集凹部28Cの深さと変わりがない。
これは、第1のオイルミスト捕集凹部28A内にオイルが堆積する行程S1(図3参照)が区間S2a,S2bの各々に比較して相対的に長いことを考慮したものである。すなわち、第1のオイルミスト捕集凹部28Aにオイルが堆積しようとする時間が他のオイルミスト捕集凹部28B,28Cよりも長いので、第1のオイルミスト捕集凹部28Aの容積を相対的に大きくすることで、オイルミスト捕集量の総量が大となる。
なお、代替の実施例として、三日月形の大きさを変えずに、底面28bの深さを深くすることで、第1のオイルミスト捕集凹部28Aの容積を他のオイルミスト捕集凹部28B,28Cよりも大きくしてもよい。
次に、図9および図10は、オイルミスト捕集凹部28A~28Cの第3実施例を示している。この第3実施例においては、第2のオイルミスト捕集凹部28Bおよび第3のオイルミスト捕集凹部28Cの輪郭28aの一端部28c(詳しくはロッド部21から離れた側の一端部)の形状を変更している。輪郭28aは、基本的には一定の曲率半径の円弧に沿った形状をなしているが、ロッド部21から遠い方の一端部28cでは、アッパピン用ピンボス部23の半径線に近付くように傾いている。例えば、半径線に近付くように、局部的に曲率半径の小さなR形状をなしている。つまり、輪郭28aの他方の端部28dでは軸受孔25の接線に対して比較的小さい角度(例えば30°前後)で輪郭28aが交差するのに対し、ロッド部21から離れた側の端部28cでは、軸受孔25の接線に対して相対的に大きな角度(例えば45°前後)で輪郭28aが交差する。
このような構成によれば、図11の説明図に示すように、加速度によってオイルミスト捕集凹部28B,28Cの中を一端部28cの方へ移動したオイルが、該一端部28cでの湾曲に沿って内周側へ案内される。つまり、矢印Oで示すように、半径方向内周側へ向かう速度成分がより多くオイルに与えられる。
次に、図12および図13は、オイルミスト捕集凹部28A~28Cの第4実施例を示している。この第4実施例においては、中央に位置する第1のオイルミスト捕集凹部28Aの三日月形の両端部28e,28fにおいて、底面28bの深さが徐々に浅くなっていき、最終的に0となる。つまり、凹部として生じる空間の周方向の両端が鋭端として終端している。なお、底面28bの全体が徐々に深さが変化する態様であってもよく、あるいは、両端部を除く大部分では底面28bの深さが一定であり、両端部28e,28fの近くの部分で深さが徐々に減少する態様であってもよい。
このようにオイルミスト捕集凹部28Aの両端が鋭端として終端することにより、オイルミスト捕集凹部28Aからオイルが流れ出る際に外周側へ回り込んでしまうオイルの流れが少なくなる。従って、オイルミストとして捕集したオイルをアッパピン4側へより確実に供給することができる。
1…ピストン
2…ピストンピン
3…アッパリンク
4…アッパピン
5…クランクピン
6…ロアリンク
7…コントロールリンク
21…ロッド部
23…アッパピン用ピンボス部
24…端面
24a…環状平面部
24b…テーパ部
28A~28C…オイルミスト捕集凹部
28a…輪郭
28b…底面

Claims (6)

  1. ピストンにピストンピンを介して一端が連結されたアッパリンクと、
    このアッパリンクの他端にアッパピンを介して連結され、かつクランクシャフトのクランクピンに連結されたロアリンクと、
    一端が機関本体側に揺動可能に支持され、他端が上記ロアリンクにコントロールピンを介して連結されたコントロールリンクと、
    を備えてなる内燃機関の複リンク式ピストンクランク機構における上記アッパリンクであって、
    上記アッパリンクは、ロッド部の端部に、上記アッパピンが回転可能に嵌合する円環状のアッパピン用ピンボス部を備え、
    このアッパピン用ピンボス部の上記アッパピンの軸方向に向かう一対の端面の少なくも一方において、該アッパピン用ピンボス部の内周縁に沿った3箇所に、クランクケース内に飛散するオイルミストを捕集する三日月形の凹部が軸方向に凹んで形成されており、
    各凹部は、アッパピンの軸方向に直交する平面上に位置する外周側の輪郭を有し、
    これらの凹部は、上記内周縁の周方向の中で、上記ロッド部側となる中央位置と、上記ロッド部に対して斜め下方となる一対の位置と、の計3箇所に設けられている、ことを特徴とする、内燃機関の複リンク式ピストンクランク機構におけるアッパリンク。
  2. 上記凹部の外周側の輪郭は、上記内周縁の曲率半径よりも小さな曲率半径の円弧に沿っている、ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の複リンク式ピストンクランク機構におけるアッパリンク。
  3. 上記中央位置に位置する凹部の容積が、他の2つの凹部の個々の容積よりも大きい、ことを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の複リンク式ピストンクランク機構におけるアッパリンク。
  4. 上記中央位置に位置する凹部の周方向に沿った角度範囲が、他の2つの凹部の各々の周方向に沿った角度範囲よりも大きい、ことを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の複リンク式ピストンクランク機構におけるアッパリンク。
  5. 上記ロッド部に対して斜め下方となる位置に位置する凹部の各々は、上記ロッド部から離れた側となる三日月形の一方の端部における輪郭が、他方の端部における輪郭に比較してアッパピン用ピンボス部の半径線に近付くように傾いている、ことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の内燃機関の複リンク式ピストンクランク機構におけるアッパリンク。
  6. 上記中央位置に位置する凹部の三日月形の両端部において、凹部の深さが徐々に浅くなって鋭端として終端している、ことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の内燃機関の複リンク式ピストンクランク機構におけるアッパリンク。
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