JP4200614B2 - レンズ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はレンズ装置に係り、特に、レンズ装置本体から延設された操作棒の手動操作と、レンズ装置に内蔵されたサーボモータによる電動操作のいずれでもズーム操作を行うことができるレンズ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、放送用テレビカメラに使用される箱型のレンズ装置(EFPレンズ)において、フォーカス操作やズーム操作等のレンズ操作を手動で行うものと電動で行うものとがある。手動で行うものとしては、1軸2操作式と呼ばれる操作方式が知られている。1軸2操作式は、レンズ装置本体から延設された操作棒の押し引きでズーム操作を行い、操作棒の回転でフォーカス操作を行うものである。このような1軸2操作式の操作は、操作棒の押し引き位置によってズーム位置の見当がつき、また、迅速なズーム操作が可能であるためスポーツ中継等のように瞬時の画角調整が要求される撮影において多く使用されている。
【0003】
一方、レンズ操作を電動で行うものとしては、ズームレートデマンドやフォーカスポジションデマンド等の専用のコントローラからの指令信号によりサーボモータを駆動し、その駆動力によってズームレンズやフォーカスレンズを駆動させるサーボ方式と呼ばれる操作方式が知られている。ドラマ撮影のようにスローなズーム操作が要求される撮影の場合には、このサーボ方式が多く使用されている。また、サーボ方式の場合には、ズームレンズをスムーズに止めたり、元のズーム位置に戻したりする場合に有利である。
【0004】
従来、このような1軸2操作式の手動操作方式及びサーボ方式のいずれの方式でも撮影状況やカメラマンの好みに応じて選択できるようにするため、1台のレンズ装置に手動操作方式とサーボ方式の両方の駆動機構を設けるようにしたものが提案されている(特願平11−138616号)。かかるレンズ装置には、手動操作方式とサーボ方式とを切り換えるための切換ツマミが設けられており、この切換ツマミを手動で回動操作してクラッチ機構を駆動することで、手動操作方式の駆動機構又はサーボ方式の駆動機構のいずれかが有効に作動するようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の操作方式選択型のレンズ装置は、上述したように手動操作方式とサーボ方式とを切り換えるため、切換ツマミによってクラッチ機構を駆動する必要があり、この切換ツマミを操作するためにはレンズカバーを取り外す等の煩雑な手間を要していた。また、手動操作方式とサーボ方式とを瞬時に切り換えて状況に応じて使い分けたい場合には、手元のコントローラでその切換えを行えれば便利であるが、従来はこのようなことはできなかった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、操作棒の手動操作とモータによる電動操作との切換操作を操作し易いところで容易に行えるようにしたレンズ装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記目的を達成するために、移動レンズの駆動機構を操作棒で手動操作するための駆動機構又はモータで電動操作するための駆動機構に切り換えて、前記手動操作又は電動操作により前記移動レンズを駆動するレンズ装置において、前記手動操作又は電動操作への切り換えを指示する指示手段と、前記移動レンズの駆動機構を前記手動操作するための駆動機構又は前記電動操作するための駆動機構に切り換える切換用モータと、前記切換用モータを駆動して、前記指示手段によって指示された前記手動操作又は電動操作に対応した駆動機構に前記移動レンズの駆動機構を切り換える制御手段と、を備えたことを特徴としている。
【0008】
本発明によれば、手動操作又は電動操作の切り換えを電動で行うため、その切換えの指示を電気信号で伝達することができる。従って、手動操作又は電動操作の切り換えを指示するための切換スイッチ等の指示手段を操作し易い所望の位置に設置することができるようになる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下添付図面に従って本発明に係るレンズ装置の好ましい実施の形態について詳述する。
【0010】
図1は、本発明に係るレンズ装置が使用されたテレビカメラシステムの全体構成を示した斜視図である。同図に示すテレビカメラシステム10は、撮影状況やカメラマンの好みで1軸2操作式の操作方式と、1軸2操作式ではないズームレートデマンド及びフォーカスポジションデマンドの操作方式のいずれかを選択し、その選択した操作方式によりズーム操作及びフォーカス操作を行えるようにしたものである。尚、1軸2操作式の操作方式を手動操作方式(又は単に手動操作)と称し、1軸2操作式ではないサーボを用いた操作方式をサーボ方式(又は単にサーボ)と称する。
【0011】
テレビカメラシステム10は、主としてレンズ装置12、及びカメラ本体14から構成され、レンズ装置12は、雲台22に載置されたカメラ本体14の正面側に装着される。レンズ装置12の背面側(カメラ本体14に装着される面)には操作棒16が設置され、その操作棒16は、カメラ本体14に形成された操作棒挿通孔14Aを介してカメラ本体14の背面側に延設される。操作棒16は、1軸2操作式の手動操作によってズーム操作、フォーカス操作を行うための操作部材であり、カメラマンは、カメラ本体14のビューファインダ20に映る映像を見ながら、この操作棒16のグリップ18を把持して操作棒16を押し引き操作することでズーム操作を行うことができ、また、グリップ18を回転操作し、操作棒16の軸を回転させることでフォーカス操作を行うことができる。尚、操作棒16はレンズ装置12に対して着脱自在になっている。
【0012】
このような1軸2操作式の操作棒16とは異なるズーム操作部材及びフォーカス操作部材でサーボ方式によるズーム操作、フォーカス操作を行う場合には、雲台22から延設されたパンチルト棒24A、24Bの先端にそれぞれズームレートデマンド26とフォーカスポジションデマンド28が設置される。ズームレートデマンド26及びフォーカスポジションデマンド28からは、それぞれズーム速度を指令するズーム速度指令信号とフォーカス位置を指令するフォーカス位置指令信号が出力され、これらの指令信号はケーブルを介してレンズ装置12に送信される。カメラマンは、ズームレートデマンド26のサムリング26Aを親指で回動操作することによりズーム操作を行うことができ、フォーカスポジションデマンド28のフォーカスノブ28Aを回動操作することでフォーカス操作を行うことができる。
【0013】
尚、上記操作棒16を使用した手動操作方式と、コントローラを使用したサーボ方式との切換えは、レンズ装置12に設けられたサーボ/マニュアル切換スイッチ(S/M切換スイッチ)(図示せず)、又は、ズームレートデマンド26に設けられたサーボ/マニュアル切換スイッチ(S/M切換スイッチ)26Bによって行うことができるようになっている。S/M切換スイッチとしては、例えば、スライドスイッチを用いることができるがスイッチのタイプはこれに限定されない。また、S/M切換スイッチはどの部分に設けてもよく、ズームレートデマンド26に限らずフォーカスポジションデマンド28に設けてもよい。
【0014】
図2は、上記レンズ装置12の内部構成を示す全体構成図である。このレンズ装置12は、主としてレンズ鏡胴30と、1軸2操作式の操作ユニット32と、ズーム駆動切換用のクラッチ部34と、制御回路36と、切換機構部38と、上記ズームレートデマンド26及びフォーカスポジションデマンド28とから構成されている。
【0015】
レンズ鏡胴30には、前方から順にフォーカスレンズ40、バリエータレンズ42A、コンペンセータレンズ42B等のズーム系レンズ42、及びマスターレンズ44が配置される。フォーカスレンズ40は、その支持枠40Aにリードスクリュー46が螺合しており、サーボモータが内蔵されているフォーカスサーボモジュール48の回転出力部48Aから回転入力部50、プーリー52、歯付きベルト54及びプーリー56を介してリードスクリュー46に回転駆動力が伝達されると、光軸方向に沿って前後動するようになっている。尚、上記歯付きベルト54等により、フォーカスサーボモジュール48からリードスクリュー46までの動力伝達系はバックラッシなしで回転駆動力を伝達できるようになっている。
【0016】
リードスクリュー46にはフォーカス位置センサ58が設けられており、このフォーカス位置センサ58は、リードスクリュー46の回転量(フォーカスレンズ40のフォーカス位置)を検出し、そのフォーカス位置を示す信号を制御回路36に出力する。
【0017】
ズーム系レンズ42のバリエータレンズ42A及びコンペンセータレンズ42Bは、これらの支持枠に植設されたカムピン42C、42Dがズームカム60のカム溝60A、60Bに係合しており、後述するクラッチ部34を介してズームカム60が回動すると、これらのバリエータレンズ42A及びコンペンセータレンズ42Bがカム溝60A、60Bで規制される位置関係により光軸に沿って前後動するようになっている。このズームカム60には、ズーム位置センサ62が設けられており、このズーム位置センサ62は、ズームカム60の回転位置(ズーム系レンズ42のズーム位置)を検出し、そのズーム位置を示す信号を制御回路36に出力する。
【0018】
次に、1軸2操作式の操作ユニット32について説明する。
【0019】
操作ユニット32の操作棒16は、回転自在に軸支された中空軸64の内部に摺動自在に挿入されている。中空軸64には、長手方向のキー溝64Aが形成されており、操作棒16の先端に固着されたピン66がキー溝64Aに係合している。従って、操作棒16が回転操作されると、これに連動して中空軸64が回転する。
【0020】
尚、中空軸64の一端側にはピン64Bが配設されており、このピン64Bは、所定量回転するとストッパ68に当接する。これにより中空軸64(操作棒16)の回転範囲が規制されている。また、中空軸64の他端側には、フォーカス用位置センサ70が設けられており、このフォーカス用位置センサ70は、中空軸64の回転位置(フォーカス位置)を検出し、そのフォーカス位置を示すフォーカス位置指令信号を制御回路36に出力する。
【0021】
一方、中空軸64には、移動枠72が軸方向に移動自在に挿通されており、操作棒16のピン66の先端は、その移動枠72の内周に形成された周方向の溝72Aと係合している。この移動枠72には、ワイヤ巻付部80に所定量巻き付け固定されるとともに、プーリー73、74、75及び76を介して張設されたワイヤ78の一部が固着されている。従って、操作棒16を押し引き操作すると、これに連動してワイヤ78が移動し、ワイヤ巻付部80が回転する。
【0022】
次に、ズーム駆動切換用のクラッチ部34について説明する。
【0023】
このクラッチ部34は、主として支軸82を中心にして回転自在に配設された第1のプーリー84と、この第1のプーリー84と一体形成された支軸84Aにそれぞれ回転自在に配設されたワイヤ巻付部80及び第2のプーリー86と、支軸84Aの軸方向に移動自在に配設された移動リング88と、この移動リング88を切換機構部38からの駆動力により移動させる切換ギア90等から構成されている。
【0024】
ワイヤ巻付部80には、前述したように操作ユニット32の操作棒16を押し引き操作によって移動するワイヤ78により回転駆動力が加えられるようになっており、第2のプーリー86には、サーボモータが内蔵されているズームサーボモジュール92の回転出力部92Aから回転入力部93、プーリー95、及び歯付きベルト97を介して回転駆動力が加えられるようになっている。尚、上記歯付きベルト97等により、ズームサーボモジュール92から第2のプーリー86までの動力伝達系はバックラッシなしで回転駆動力を伝達できるようになっている。
【0025】
一方、移動リング88には、キー88Aが設けられており、このキー88Aは、支軸84Aの長手方向に形成されたキー溝84Bと係合している。また、移動リング88は、支軸84Aの軸方向に移動することによりワイヤ巻付部80又は第2のプーリー86と係合できるようになっている。従って、ワイヤ巻付部80又は第2のプーリー86から移動リング88に回転駆動力が伝達され、移動リング88が回転すると、これに連動して支軸84A(第1のプーリー84)も回転する。
【0026】
そして、第1のプーリー84が回転すると、その回転駆動力は、第1のプーリー84から歯付きベルト83を介してズームカム60に固定されたプーリー85にバックラッシなしで伝達される。これによりズームカム60が回動し、ズーム系レンズ42が駆動される。
【0027】
切換機構部38からの駆動力により移動リング88を移動させる切換ギア90は、その切換ギア90の軸にギア91が固定されており、このギア91の偏心した位置にはベアリング94が設けられている。尚、ベアリング94は、移動リング88の外周に形成された溝88Bに当接し、移動リング88の回転に伴って回転できるようになっている。
【0028】
また、ギア91にはギア96が噛み合っており、このギア96には、ギア96の回動位置(切換ギア90の回動位置)に応じてコイルバネ98により常時、時計回り方向(CW方向)又は反時計回り方向(CCW方向)に付勢力が加えられるようになっている。
【0029】
図3は図2上の矢印A方向から上記ギア91及び96等を見た要部矢視図である。図3上で、ギア96はコイルバネ98によってCW方向に回動するように付勢されており、その結果、ギア91はCCW方向に回動するように付勢される。そして、ギア91の下面側の偏心した位置に設けられたベアリング94は、点線で示すように移動リング88の溝88Bの右側面に当接し、移動リング88を右方向に移動させるとともに右方向に付勢する。これにより、移動リング88は、ワイヤ巻付部80と所定の付勢力をもって係合する。
【0030】
一方、切換ギア90(ギア91)をCW方向に回動させ、ギア96を付勢するコイルバネ98が点線で示す位置にくると、このコイルバネ98によってギア96はCCW方向に回動するように付勢され、その結果、ギア91はCW方向に回動するように付勢される。そして、ギア91の下面側の偏心した位置に設けられたベアリング94は、一点鎖線で示すように移動リング88の溝88Bの左側面に当接し、移動リング88を左方向に移動させるとともに左方向に付勢する。これにより、移動リング88は、第2のプーリー86と所定の付勢力をもって係合する。
【0031】
尚、図3上で99は、ギア96と共に回転する突起部96Aによって動作する切換スイッチであり、この切換スイッチ99は、ズーム操作が1軸2操作式の手動操作側に切り換えられたか、サーボ側に切り換えられたかを検出する。即ち、切換スイッチ99は、図3に示す状態(移動リング88がワイヤ巻付部80と係合する状態)ではスイッチONとなり、手動操作側に切り換えられたことを示す信号を制御回路36に出力し、移動リング88が第2のプーリー86と係合する状態ではスイッチOFFとなり、サーボ側に切り換えられたことを示す信号を制御回路36に出力する。
【0032】
次に、移動リング88とワイヤ巻付部80及び第2のプーリー86との係合部について説明する。図4は移動リング88の右側面とワイヤ巻付部80の左側面の要部拡大図である。同図に示すように移動リング88の右側面には、1本のテーパーピン89が植設されており、ワイヤ巻付部80の左側面には、上記テーパーピン89と係合する1つのテーパー孔81が穿設されている。
【0033】
このテーパーピン89は、金属材料からなるテーパーピン本体89Aと、潤滑性材料からなる先端部89Bとの複合構造となっている。従って、テーパーピン89は、ワイヤ巻付部80のテーパー孔81と係合するまでは、ワイヤ巻付部80の側面に当接した状態で摺動するが、その摺動動作を円滑に行うことができる。また、テーパーピン89はテーパー孔81とバックラッシなしで係合することができ、更に移動リング88とワイヤ巻付部80とは、互いに所定の回転位置関係にあるときのみ係合する。
【0034】
尚、移動リング88とワイヤ巻付部80とを互いに所定の回転位置関係にあるときのみ係合可能にした理由は、操作棒16の位置とズーム位置との関係が変化しないようにするためである。一方、第2のプーリー86は、サーボ方式で速度制御されるため、移動リング88に対してどの位置で係合してもよく、そのため任意の回動位置(多数の回動位置)で係合できる構造となっている。
【0035】
また、この実施の形態では、移動リング88とワイヤ巻付部80とを歯付きギアによって係合させるようにしたが、これに限らず、複数のテーパーピンとテーパー孔、又は1本のテーパーピンと複数のテーパー孔によって複数の位置で係合できるようにしてもよい。更に、前記コイルバネ98による移動リング88の付勢力は、前記テーパーピン89とテーパー孔81、あるいは歯付きギア87Aと歯付きギア87Bとが回転駆動力の伝達時に外れないように設定する必要がある。
【0036】
次に、上記切換ギア90を駆動する切換機構部38について説明する。
【0037】
図5は、切換機構部38の構成を示した斜視図である。上記切換ギア90の歯溝には、同図に示す平板状のアーム部材130先端に形成された突部130Aが係合される。アーム部材130の基端部にはナット部材132が固着されており、このナット部材132は、リードスクリュー134に螺合される。また、ナット部材132にはピン132Aが突設されており、このピン132Aの先端が図示せぬケーシングの回転規制溝136に係合されることによって、ナット部材132及びアーム部材130の回転が規制される。
【0038】
リードスクリュー134は、図示せぬケーシングに固定された軸受け部材138、140により回動自在に支持されている。リードスクリュー134の端部にはギア142が固定されており、このギア142は、モータ144の出力軸に固定されたギア146に係合される。
【0039】
従って、モータ144が回転すると、ギア146及びギア142を介してリードスクリュー134が回転し、リードスクリュー134が回動するとナット部材132がリードスクリュー134の軸方向に移動してアーム部材130が同図矢印a、bの方向に進退移動する。これにより、アーム部材130の突部130Aに係合された切換ギア90が回転し、上述のように移動リング88が移動する。アーム部材130が矢印aの方向に移動した場合には、切換ギア90は図3においてCW方向(図5ではCCW方向)に回転し、移動リング88は、第2のプーリー86と係合する。従って、操作方式がサーボ式に切り換えられる。一方、アーム部材130が矢印bの方向に移動した場合には、切換ギア90は図3においてCCW方向(図5ではCW方向)に回転し、移動リング88は、ワイヤ巻付部80に係合する。従って、操作方式が手動操作方式に切り換えられる。
【0040】
モータ144は、モータ駆動回路152によって駆動されるようになっており、モータ駆動回路152が図2の制御回路36から与えられる駆動信号に基づいてその回転方向を制御することにより、切換ギア90を手動操作方式又はサーボ方式のいずれかに切り換える方向に回転させる。また、モータ駆動回路152は、軸受け部材138、140にそれぞれ取り付けられているスイッチ148、150からのオン、オフ信号を取得し、モータ144を駆動している際に、ナット部材132がその移動方向にあるスイッチ148、150に到達してスイッチ148又はスイッチ150がオフからオンに切り換わったことを検出すると、モータ144の回転を停止させる。
【0041】
次に、制御回路36について説明する。尚、図6は、図2のシステム全体を簡略化して示したブロック図であり、これを参照しながら説明する。
【0042】
上述のように制御回路36には、フォーカス位置センサ58及びズーム位置センサ62からそれぞれ現在のフォーカス位置及びズーム位置を示す信号が加えられ、ズームレートデマンド26及びフォーカスポジションデマンド28からは、それぞれズーム速度を指令するズーム速度指令信号(以下、ズーム信号という)とフォーカス位置を指令するフォーカス位置指令信号(以下、フォーカス信号という)が加えられ、操作ユニット32に設けたフォーカス用位置センサ70からは、フォーカス位置を示すフォーカス信号が加えられている。また、切換スイッチ99からは、ズーム操作が1軸2操作式の手動操作側に切り換えられたか、サーボ側に切り換えられたかを示す信号が加えられている。更に、レンズ装置12とズームレートデマンド26のそれぞれに設けられたS/M切換スイッチ120、26Bからは手動操作又はサーボへの切り換えを指示する信号が加えられている。
【0043】
先ず、ズーム及びフォーカスの制御について説明すると、制御回路36は、切換スイッチ99からズーム操作が1軸2操作式の手動操作側に切り換えられたことを示す信号を入力すると、ズームレートデマンド26及びフォーカスポジションデマンド28からの入力信号を無効とし、操作ユニット32のフォーカス用位置センサ70からの入力信号を有効とする。
【0044】
従って、操作棒16を回転操作すると、制御回路36にはフォーカス用位置センサ70から操作棒16(中空軸64)の回転位置(フォーカス位置)を示すフォーカス信号が加えられ、制御回路36は、このフォーカス信号と、フォーカス位置センサ58から加えられる現在のフォーカス位置を示す信号とに基づいてフォーカスサーボモジュール48に制御信号を出力し、フォーカスレンズ40がフォーカス信号に応じたフォーカス位置になるようにサーボ制御する。
【0045】
また、切換スイッチ99からズーム操作が1軸2操作式の手動操作側に切り換えられたことを示す信号を入力している場合には、移動リング88はワイヤ巻付部80と係合している。
【0046】
従って、操作棒16を押し引き操作すると、その操作力が操作ユニット32からクラッチ部34を介してズームカム60に伝達され、ズームカム60が回転駆動される。即ち、操作棒16を押し引き操作すると、クラッチ部34において、ワイヤ78を介してワイヤ巻付部80が回転する。このワイヤ巻付部80の回転駆動力は、ワイヤ巻付部80と係合している移動リング88、移動リング88のキー88A、及びキー溝84Bを介して第1のプーリー84に伝達され、更に第1のプーリー84から歯付きベルト83を介してプーリー85及びズームカム60に伝達される。これによりズームカム60が回動し、ズーム系レンズ42が手動駆動される。
【0047】
一方、制御回路36は、切換スイッチ99からズーム操作がサーボ側に切り換えられたことを示す信号を入力すると、ズームレートデマンド26及びフォーカスポジションデマンド28からの入力信号を有効とし、フォーカス用位置センサ70からの入力信号を無効とする。
【0048】
従って、ズームレートデマンド26の操作に基づいてズームレートデマンド26からズーム信号を入力すると、制御回路36は、このズーム信号と、ズーム位置センサ62から加えられる現在のズーム位置を示す信号(この信号を時間微分した信号はズーム速度信号)とに基づいてズームサーボモジュール92に制御信号を出力し、ズームサーボモジュール92を駆動する。
【0049】
このズームサーボモジュール92の回転駆動力は、クラッチ部34を介してズームカム60に伝達され、ズームカム60が回転駆動される。即ち、ズームサーボモジュール92の回転駆動力は、回転出力部92Aから回転入力部93、プーリー95、及び歯付きベルト97を介して第2のプーリー86に伝達される。また、切換スイッチ99からズーム操作がサーボ側に切り換えられたことを示す信号を入力している場合には、移動リング88は第2のプーリー86と係合しているため、第2のプーリー86に伝達された回転駆動力は、第2のプーリー86と係合している移動リング88、移動リング88のキー88A、及びキー溝84Bを介して第1のプーリー84に伝達され、更に第1のプーリー84から歯付きベルト83を介してプーリー85及びズームカム60に伝達される。これによりズームカム60が回動し、ズーム系レンズ42がサーボ駆動される。
【0050】
また、フォーカスポジションデマンド28の操作に基づいてフォーカスポジションデマンド28からフォーカス信号を入力すると、制御回路36は、このフォーカス信号と、フォーカス位置センサ58から加えられる現在のフォーカス位置を示す信号とに基づいてフォーカスサーボモジュール48に制御信号を出力し、フォーカスレンズ40がフォーカス信号に応じたフォーカス位置になるようにサーボ制御する。
【0051】
尚、制御回路36は、切換スイッチ99からの入力信号に基づいて表示器100の表示内容を制御する。即ち、図7に示すように表示器100は、操作棒(ズーム)、操作棒(フォーカス)、ズームレートデマンド、フォーカスポジションデマンドを示す4つの表示パネル100A〜100Dを有しており、制御回路36は、切換スイッチ99からの入力信号に基づいて現在使用可能状態となっている操作部材を示す表示パネルを点灯させる。これにより、操作者は、いずれの操作部材が使用可能状態となっているかを容易に確認することができる。
【0052】
次に、切換機構部38に関する制御について説明する。制御回路36は、ズームレートデマンド26のS/M切換スイッチ26B、又は、レンズ装置12のS/M切換スイッチ120から手動操作又はサーボへの切り換えを指示する信号を入力すると、切換機構部38のモータ駆動回路152(図5参照)に駆動信号を出力してモータ144を回転させる。そして、このモータ144の回転によってクラッチ部34の移動リング88を移動させて移動リング88をワイヤ巻付部80又は第2のプーリー86に係合させて、ズーム操作をS/M切換スイッチで指示された手動操作又はサーボに切り換える。
【0053】
ズームレートデマンド26とレンズ装置12の両方にS/M切換スイッチが設けられている場合には、制御回路36は、ズームレートデマンド26のS/M切換スイッチ26Bから加えられる信号を優先し、これに従って上記手動操作とサーボの切り換えを制御する。一方、ズームレートデマンド26にS/M切換スイッチが設けられていない場合やズームレートデマンド26自体がレンズ装置12に接続されていない場合には、レンズ装置12のS/M切換スイッチ120から加えられる信号に基づいて上記手動操作とサーボの切り換えを制御する。
【0054】
この制御回路36の処理手順を図8のフローチャートを用いて説明する。制御回路36は、まず、ズームレートデマンド26が取り付けられていないか若しくはズームレートデマンド26にS/M切換スイッチが設けられていないか否か検出する(ステップS10)。もし、YESと判定した場合には、レンズ装置12のS/M切換スイッチ120からの信号を入力する(ステップS12)。一方、NOと判定した場合、即ち、ズームレートデマンド26が取り付けられており、そのズームレートデマンド26にS/M切換スイッチ26Bが設けられている場合には、レンズ装置12のS/M切換スイッチ120よりも優先してズームレートデマンド26のS/M切換スイッチ26Bからの信号を入力する(ステップS14)。
【0055】
続いて制御回路36は、上述のようにして入力したS/M切換スイッチ26B又はS/M切換スイッチ120からの信号がサーボ側を指定しているか否かを判定する(ステップS16)。YESと判定した場合には、切換機構部38に駆動信号を出力して切換機構部38のモータ144を所定方向に回転させて、クラッチ部34をサーボ側に切り換える。即ち、クラッチ部34の移動リング88を第2のプーリー86に係合させる(ステップS18)。尚、ステップS16においてYESと判定した場合において、既にクラッチ部34がサーボ側に設定されているときにはステップS18の処理は不要である。
【0056】
これにより、制御回路36は、切換スイッチ99からズーム操作がサーボ側に切り換えられたことを示す信号を入力することとなり、上述のように、ズームレートデマンド26、フォーカスポジションデマンド28から与えられるズーム信号及びフォーカス信号に基づいてズームサーボモジュール92及びフォーカスサーボモジュール48を駆動する。従って、フォーカスレンズ40及びズーム系レンズ42はフォーカスポジションデマンド28及びズームレートデマンド26の信号により作動する(ステップS20)。
【0057】
一方、上記ステップS16でNOと判定した場合、切換機構部38に駆動信号を出力し、モータ144を上記サーボ側に切り換える場合と逆方向に回転させて、クラッチ部34を手動操作側に切り換える。即ち、クラッチ部34の移動リング88をワイヤ巻付部80に係合させる(ステップS22)。尚、ステップS16においてNOと判定した場合において、既にクラッチ部34が手動操作側に設定されているときにはステップS22の処理は不要である。
【0058】
これにより、制御回路36は、切換スイッチ99からズーム操作が手動操作側に切り換えられたことを示す信号を入力することとなり、上述のように、ズームレートデマンド26、フォーカスポジションデマンド28から与えられるズーム信号及びフォーカス信号を無効にし、1軸2操作式の操作ユニット32のフォーカス用位置センサ70から加えられるフォーカス信号に基づいてフォーカスサーボモジュール48を駆動する。また、操作棒16の押し引き操作による駆動力はクラッチ部34を介してズームカム60に伝達される。従って、フォーカスレンズ40及びズーム系レンズ42は操作棒16による1軸2操作によって作動する(ステップS24)。
【0059】
以上の図8に示した処理は、S/M切換スイッチの指示が手動操作とサーボとで変更されたか否かにかかわらず常時繰り返し行うようにしてもよいが、ズームレートデマンド26のS/M切換スイッチ26BがあるときにはS/M切換スイッチ26Bが切り換えられたときのみ、S/M切換スイッチ26Bがないときにはレンズ装置12のS/M切換スイッチ120が切り換えられたときのみ行うようにしてもよい。
【0060】
尚、制御回路36は、切換スイッチ99によってズーム操作が手動操作側又はサーボ側かを検出するようにしていたが、この検出は、切換機構部38に設けられているスイッチ148、150(図5参照)によってナット部材132がいずれの端点に到達しているかを検出することでも可能であり、また、S/M切換スイッチ120、26Bがいずれの操作方式を指示しているかを検出することでも可能である。従って、切換スイッチ99は必ずしも必要ではない。
【0061】
以上、上記実施の形態では、手動操作とサーボとの切り換えを指示するS/M切換スイッチをレンズ装置12とズームレートデマンド26に設けた場合について説明したが、S/M切換スイッチはフォーカスポジションデマンド28に設けてもよいし、レンズ装置12に接続される他の付属品に設けてもよい。これによって、S/M切換スイッチが多数存在することとなる可能性がある場合には、予めどの部材に設けられたS/M切換スイッチの指示に従うかの優先順位を決めておくようにしてもよいし、S/M切換スイッチの切り換え操作が最後に行われたものの指示に従うようにしてもよい。
【0062】
また、上記実施の形態において、手動操作とサーボとの切り換えを上述のクラッチ部34と切換機構部38との機構によって電動で行えるようにしたが、手動操作とサーボとの切り換えを電動で行えるようにするための機構はこれに限らず、例えば、電磁クラッチ等を使用して手動操作とサーボとの切り換えを可能にした機構等、上述の機構とは構成が異なるものであっても本発明を適用できる。
【0063】
また、上記実施の形態では、クラッチ部34の手動操作とサーボとの切り換えをS/M切換スイッチによって行うようにしたが、これに限らず現時点で操作されている(後操作された)操作部材(操作棒16、デマンド26、28等)に基づいてクラッチ部34の手動操作とサーボを自動で切り換え、S/M切換スイッチの操作なしに、所望の操作部材を操作することによって手動操作とサーボが自動で切り換えられるようにしてもよい。
【0064】
また、上記実施の形態では、クラッチ部34の切換え、即ち、手動とサーボ(電動)との切換えについて説明したが、電動と電動の切換えについても本発明を適用できる。即ち、電動用の操作部材が複数ある場合に、いずれの操作部材に基づいてズームやフォーカスを駆動するかの切換えについても手元操作部材等に設けられたスイッチによって切り換えられるようにしてもよい。
【0065】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係るレンズ装置によれば、手動操作又は電動操作の切り換えを電動で行うため、その切換えの指示を電気信号で伝達することができる。従って、手動操作又は電動操作の切り換えを指示するための切換スイッチ等の指示手段を手元操作部材等の操作し易い所望の位置に設置することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係るレンズ装置が使用されたテレビカメラシステムの全体構成を示した斜視図である。
【図2】図2は、本発明に係るレンズ装置の内部構成を示した全体構成図である。
【図3】図3は、図2の矢印A方向から見た要部矢視図である。
【図4】図4は、図2に示した移動リングの右側面とワイヤ巻付部の左側面の要部拡大図である。
【図5】図5は、図2に示した切換ギアを駆動する切換機構部の構成を示した斜視図である。
【図6】図6は、図2のシステム全体を簡略化して示したブロック図である。
【図7】図7は、表示器の表示態様を示した図である。
【図8】図8は、制御回路36における切換機構部の制御手順を示したフローチャートである。
【符号の説明】
10…テレビカメラシステム、12…レンズ装置、14…カメラ本体、16…操作棒、26…ズームレートデマンド、28…フォーカスポジションデマンド、30…レンズ鏡胴、32…操作ユニット、34…クラッチ部、36…制御回路、40…フォーカスレンズ、42…ズーム系レンズ、44…マスターレンズ、48…フォーカスサーボモジュール、58…フォーカス位置センサ、60…ズームカム、62…ズーム位置センサ、64…中空軸、70…フォーカス用位置センサ、80…ワイヤ巻付部、84…第1のプーリー、86…第2のプーリー、88…移動リング、90…切換ギア、99…切換スイッチ、100…表示器、26B、120…S/M切換スイッチ、130…アーム部材、132…ナット部材、132A…ピン、134…リードスクリュー、136…回転規制溝、144…モータ、148、150…スイッチ、152…モータ駆動回路
Claims (4)
- 移動レンズの駆動機構を操作棒で手動操作するための駆動機構又はモータで電動操作するための駆動機構に切り換えて、前記手動操作又は電動操作により前記移動レンズを駆動するレンズ装置において、
前記手動操作又は電動操作への切り換えを指示する指示手段と、
前記移動レンズの駆動機構を前記手動操作するための駆動機構又は前記電動操作するための駆動機構に切り換える切換用モータと、
前記切換用モータを駆動して、前記指示手段によって指示された前記手動操作又は電動操作に対応した駆動機構に前記移動レンズの駆動機構を切り換える制御手段と、
を備えたことを特徴とするレンズ装置。 - 前記指示手段は、前記移動レンズを搭載したレンズ装置本体、及び/又は前記レンズ装置に接続される操作部材に設けたことを特徴とする請求項1のレンズ装置。
- 前記制御手段は、前記指示手段が複数存在する場合には予め決められた優先順位に基づいて駆動機構を切り換えることを特徴とする請求項2のレンズ装置。
- 前記操作部材は、ズーム操作を行うためのズームレートデマンド又はフォーカス操作を行うためのフォーカスポジションデマンドであることを特徴とする請求項2のレンズ装置。
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