JP4198908B2 - N−アルキルマレイミドの精製方法およびn−アルキルマレイミド組成物 - Google Patents

N−アルキルマレイミドの精製方法およびn−アルキルマレイミド組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ABS、PMMA、PVC等の樹脂の耐熱性向上剤や、医薬、農薬の中間体として有用なN−アルキルマレイミド類及びN−アルキルマレイミドの精製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
N−アルキルマレイミドの製造方法としては古くから幾つかの方法が知られている。その中でも一般的な製造方法は、例えば米国特許第2444536号明細書にも開示されているように無水マレイン酸と一級アミンとを反応させ、生成するマレインアミド酸を無水酢酸及び酢酸ナトリウムの存在下で脱水閉環し、イミド化する方法である。
また、特開昭−68770号公報明細書のように、無水マレイン酸と一級アミンとを有機溶媒中で反応させて生成したマレインアミド酸を単離することなしに、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの極性非プロトン性溶媒及び触媒の存在下に脱水閉環させる方法がある。
さらに、特公平6−23195号公報明細書に開示されているようにマレインアミド酸類を水不溶性又は水不混和性の不活性有機溶媒中で酸触媒の存在下に加熱し、閉環イミド化させることによりマレイミド類を製造する方法がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記したN−アルキルマレイミドの製造方法において副生する副生成物は、一般的に水洗によって水層に抽出し、除去される。本発明における、N−アルキルマレイミドの副生成物としてはマレイン酸、フマール酸、N−アルキルマレアミン酸、N−アルキルフマレアミン酸、N−アルキルアミノ無水コハク酸、2−アルキルアミノ−N−アルキルコハク酸イミド、2−N−アルキルマレアミン酸−N−アルキルコハク酸イミド、2−アルキルアミノ−N−アルキルマレアミン酸、およびN,N−ジアルキルマレアミン酸であり酸性物質が多い。
【0004】
それゆえ、水洗に使用される水層は通常pH7以上の弱アルカリ性又はアルカリ性である。このアルカリ水溶液で副生成物の酸性物質を中和し、水溶性塩とすることで水層に抽出し、除去している。しかし、N−アルキルマレイミドは加水分解しやすい性質を持っており、特にアルカリ性での加水分解速度は速い。従って、アルカリ性水溶液で水洗すると副生成物が効率良く除去できるが、同時に主生成物であるN−アルキルマレイミドの加水分解が起こり、水洗時の収率ロスが大きくなるという問題を有している。また、加水分解により、上記副生成物が、逆に精製時に発生する恐れもある。
【0005】
また、N−アルキルマレイミドの加水分解による水洗時の収率ロスを小さくしようとすると中性あるいは酸性の水で水洗すれば良いが、副生成物の除去率が低くなるという問題を有している。上記の何れの方法で水洗を行ってもN−アルキルアミノ無水コハク酸だけは殆ど除去できずに残存し、最終的に製品中に混入し製品純度が下がる。また、N−アルキルアミノ無水コハク酸の製品中含有量を下げる為に、蒸留工程で精製を行っても、蒸留時のロスが大きくなり、総合収率が下がるという問題を有している。
本発明は、上記の様な問題点を解決するためになされたものであり、本発明の課題は、水洗時のN−アルキルマレイミドの加水分解を抑制し、なおかつ従来は除去することが困難であったN−アルキルアミノ無水コハク酸を水洗により容易に除去できるN−アルキルマレイミドの精製方法を提供することである。
【0006】
また本発明の他の課題は、N−アルキルアミノ無水コハク酸の含有量が少なく純度の高いN−アルキルマレイミド組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題を解決する為に鋭意検討したところ、Nアルキルマレイミドの精製方法において、アンモニアの存在下に水洗を行うとN−アルキルマレイミドの加水分解を抑制し、さらにN−アルキルアミノ無水コハク酸がアンモニアと反応することにより、選択的に水層に抽出されることを見いだし、この発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、粗製のN−アルキルマレイミドを含む炭化水素溶液を、アンモニアを含有する水溶液と攪拌混合させることを特徴とするN−アルキルマレイミドの精製方法に関する。
【0008】
具体的には、N−アルキルマレイミドを含む炭化水素溶液に、アンモニアを含有する水溶液を加え、水層と油層を形成し、N−アルキルマレイミドを含む炭化水素溶液である油層に存在する不純物を水層に移し、さらに当該油層からN−アルキルマレイミドを分離することを特徴とするN−アルキルマレイミドの精製方法である。より具体的には、上記の、アンモニアを含有する水溶液におけるアンモニアの濃度が、0.1〜10重量%であるN−アルキルマレイミドの精製方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられるN−アルキルマレイミドとしては、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−(n−プロピル)マレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−(n−ブチル)マレイミド、N−(sec−ブチル)マレイミド、N−イソブチルマレイミド、N−(t−ブチル)マレイミド、N−(n−ヘキシル)マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−(n−オクチル)マレイミド、N−(n−ドデシル)マレイミド等が挙げられる。また、上記のN−アルキルマレイミドは併用されていてもよい。
【0012】
N−アルキルマレイミドを精製する場合、副生成物であるN−アルキルアミノ無水コハク酸がN−アルキルマレイミドから分離困難であることから、特に本発明のN−アルキルマレイミドの精製方法が好適に用いられる。
【0013】
これらの中でも、特にN−シクロヘキシルマレイミドを精製する場合、副生成物であるN−シクロヘキシルアミノ無水コハク酸がN−シクロヘキシルマレイミドから分離することが困難であるので上記の本発明を好適に用いることができる。
本発明に用いるアンモニア水とはあらかじめ市販の濃アンモニア水を水に溶解させ濃度を調整しておいても良いし、アンモニアガスを水に溶解させて濃度を調整しておいても良い。また、水洗時に希釈水を釜内に先に投入し、次いで濃アンモニア水を投入して所望の濃度に調整しても良い。
また、アンモニア水としての物性、本発明への適応の上で問題がなければ水以外の溶媒が混入されていても良い。例えば、水溶性有機溶媒等であれば10重量%未満であれば混入していても良い。
本発明の精製方法で使用するアンモニアを含有する水洗用液体である、アンモニアを含有する水溶液におけるアンモニアの濃度は、N−アルキルアミノ無水コハク酸の除去効果及び経済的な面で0.1〜10重量%の範囲が好ましい。より好ましくは、0.5重量%〜7重量%の範囲である。
【0014】
また、水洗に用いるアンモニアを含有する水溶液は純粋なアンモニア水でも良いし、中性塩または酸性塩を任意の割合で含んでいても良い。本発明において含有することのできる酸性塩は、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウムおよび塩化アンモニウムから選択される少なくとも一つが挙げられる。本発明における効果に支障のない限りは、これ以外の酸性塩であってもかまわない。また、本発明において含有することのできる中性塩としては、硫酸ナトリウム、硫酸カリウムおよび塩化ナトリウムから選択される少なくとも一つが挙げられる。本発明における効果に支障のない限りは、これ以外の酸性塩であってもかまわない。また、上記中性塩と酸性塩は共存されていてもかまわない。
【0015】
本発明における、N−アルキルマレイミドの精製方法は、N−アルキルマレイミドを含む炭化水素溶液にアンモニアを含有する水溶液を加え、水層と油層を形成し、N−アルキルマレイミドを含む炭化水素溶液である油層に存在する不純物を水層に移し、さらに当該油層からN−アルキルマレイミドを分離する工程を含んでいる。
【0016】
本発明における、N−アルキルマレイミドの精製方法において、上記の、アンモニアを含有する水溶液を加え、水層と油層を形成し、N−アルキルマレイミドを含む炭化水素溶液である油層に存在する不純物を水層に移す工程は、言い換えると、油層を水洗する工程である。この水洗の工程は、例えば、粗製のN−アルキルマレイミドを含む炭化水素溶液に、所望の濃度に調整されたアンモニア水を投入し、所望の液温、時間で水洗を行うことが好ましい。アンモニア水による水洗は何回行っても良い。また、水洗工程の次工程に移る前にアンモニアの残留をなくすために、純水による水洗を1回以上行うのが好ましい。なお、上記のアンモニアを含有する水溶液を加え、水層と油層を形成し、N−アルキルマレイミドを含む炭化水素溶液である油層に存在する不純物を水層に移す工程は、水洗工程、分液工程が実行可能な公知の装置を使用して行えばよい。例えば、取り出し口のついた混合攪拌装置であってもよいし、振動装置のある分液装置であってもよく特に限定されない。
【0017】
本発明における炭化水素溶液とは、N−アルキルマレイミドと後述の有機溶剤から形成されるものである。
【0018】
上記の、本発明の、アンモニアを含有する水溶液を加え、水層と油層を形成し、N−アルキルマレイミドを含む炭化水素溶液である油層に存在する不純物を水層に移す工程の温度、言い換えると、油層を水洗する工程における水洗時の液温は、20〜100℃であるのが好ましい。その中でも30〜90℃がより好ましい。水洗時の液温が20℃に満たない場合は水洗後の水分離に多大な時間を要し、水洗時間が伸び、生産性が下がる場合がある。また、100℃を越える場合は水層と油層の界面が乱れ、水分離が不十分となる場合がある。
本発明の、上記の水洗時間は5〜90分が好ましい。その中でも10〜60分がより好ましい。水洗時間が5分に満たない場合は副生成物の除去率が小さくなる場合がある。また、90分を越える場合は水洗時間が伸び、生産性が下がる場合がある。
本発明の、N−アルキルマレイミドの炭化水素溶液に使用される有機溶剤としては、水不溶性ないし水不混和性の有機溶剤が好適に用いられる。上記の有機溶剤としては、ベンゼン、トルエン、沸点50〜120℃の石油留分、キシレン類(具体的にはオルソキシレン)、エチルベンゼン、クメン、プソイドクメン、メシチレン、t−ブチルベンゼン、オクタン、ノナン、デカン、クロルベンゼン等が挙げられ、上記列記される少なくとも一つを使用できる。
【0019】
なお、上記有機溶媒は、実質的に水と不溶性であればよい。水への溶解度が大きい有機溶剤では、目的物と水へ溶解性のある不純物を油層と水層に分離するときに、不都合をきたすので好ましくはない。また、水への溶解度が比較的低い有機溶媒であれば、本発明の有機溶媒として使用可能であるが、水への溶解度が低くても、上記と同じ問題が起きる可能性があるので、本発明で使用する有機溶媒としては、実質的に水と不溶性の有機溶媒を選択することが好ましい。
【0020】
本発明に使用されるN−アルキルマレイミドの炭化水素溶液の副生成物を含めた固形分濃度は1〜100重量%が好ましい。その中でも10〜50重量%がより好ましい。
【0021】
本発明に使用される水洗液である、アンモニアを含有する水溶液の使用量であるが、上記アンモニアを含有する水溶液の使用量としての、N−アルキルマレイミド炭化水素溶液に対する比率は1〜200重量%が好ましい。その中でも5〜150重量%がより好ましい。
【0022】
以上の様にして水洗された、N−アルキルマレイミド炭化水素溶液とアンモニアを含有する水溶液の混合溶液は、油層と水層の2層が生成するので、該油層と水層を通常の手段で分離し、分離された油層から蒸留等の手段により、精製されたN−アルキルマレイミドを得ることが好ましいものである。もし、アンモニア水を使用せずに水洗を行った場合、分離困難なN−アルキルアミノ無水コハク酸が殆ど除去されずに残存し、次工程で薄層蒸留等の蒸留を行っても、相当量のN−アルキルアミノ無水コハク酸を含んだ留出液が留出し、製品の品質を落としてしまう。また、製品の品質を上げようとして蒸留条件を工夫しても通常の蒸留条件では、相当量のN−アルキルアミノ無水コハク酸が残存する。またその蒸留条件は経済的、工業的な実施条件としては非常に実施困難な蒸留条件となり、結局、相当量のN−アルキルアミノ無水コハク酸を含んだ留出液しか得ることができない。
【0023】
一方、本発明における精製方法の様に、N−アルキルマレイミドを含む炭化水素溶液にアンモニアを含有する水溶液を加え、水層と油層を形成し、N−アルキルマレイミドを含む炭化水素溶液である油層に存在する不純物を水層に移し、さらに当該油層からN−アルキルマレイミドを分離する工程では、油層に存在する殆どのN−アルキルアミノ無水コハク酸が、水層に移動する。具体的には、アンモニア水を使用して水洗を行った場合、水洗工程で殆どのN−アルキルアミノ無水コハク酸が除去される。よって、次工程の薄層蒸留等の蒸留がより効率的な条件で行うことができる。また、製品中のN−アルキルアミノ無水コハク酸が極めて低レベルとなり、N−アルキルマレイミドを含む製品の品質を著しく高めることができる。
【0024】
本発明のN−アルキルマレイミドの精製方法における、上記の水洗後の、油層と水層の分離の方法としては、水洗後の不純物を含んだ水層は下層となるので釜下部から容易に水層のみを抜き出すことができ、上層の油層と分離できる。次に、水洗後の油層からのN−アルキルマレイミドの分離であるが、不純物であるN−アルキルアミノ無水コハク酸が本発明の水洗工程で殆ど除去されているので、目的物である、N−アルキルマレイミドと沸点の近い物質、具体的には、N−アルキルアミノ無水コハク酸との分離には不利な蒸留装置である、単蒸留あるいは薄層蒸留によっても製品純度の高い製品を得ることができ、本発明の精製に用いることができる。また、通常の蒸留であっても、N−アルキルマレイミドと沸点の近い物質であるN−アルキルアミノ無水コハク酸が分離されているので、通常の蒸留条件であっても十分に精製されたN−アルキルマレイミドを得ることが可能になる。
【0025】
よって、本発明のN−アルキルマレイミドの精製方法を工程に含むN−アルキルマレイミドの製造方法は、純度の高いN−アルキルマレイミドを製造する工程として非常に好ましい実施形態である。
【0026】
本発明のN−アルキルマレイミド組成物は、例えば、前記した本発明の精製方法により、好適に製造される。本発明のN−アルキルマレイミド組成物は、N−アルキルマレイミドの含有量が99.5%以上であって、かつ不純物としてのN−アルキルアミノ無水コハク酸含有量が、1.0重量%以下であり、より好ましくは0.7重量%であり、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
【0027】
本発明のN−アルキルマレイミド組成物は、上述の様にN−アルキルアミノ無水コハク酸含有量が特定量範囲以下であるN−アルキルマレイミドの純度の高い組成物である。さらに好ましくは、0.3重量%以下であり、最も好ましくは0.15重量%以下である。
【0028】
非常に加水分解反応を受けやすい、N−アルキルマレイミドにおいて、本発明で開示する特定の精製条件を採用することで、余分な加水分解をうけずに非常に良好な条件下で精製を行う事によって、上述の不純物が少ないN−アルキルマレイミド組成物を得ることができる。このような精製を行う事によって得られる、不純物が少ないN−アルキルマレイミド組成物は、本発明の精製方法における好ましい実施形態の一つである。
【0029】
より具体的には、N−アルキルマレイミドの含有量が99.5%以上であって、かつ不純物としてのN−アルキルアミノ無水コハク酸含有量が、1.0重量%以下であるN−アルキルマレイミド組成物は、N−アルキルアミノ無水コハク酸に由来して発生すると考えられる長期の貯蔵時における着色性等の外観変化が少ない組成物となる。本発明の上記のN−アルキルマレイミド組成物は、貯蔵安定性に優れている。
【0030】
なお、N−アルキルマレイミドの含有量およびN−アルキルアミノ無水コハク酸等の不純物の含有量の測定は、高速液体クロマトグラフにより定量したものである。
【0031】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、N−シクロヘキシルマレイミドの純度及び、N−シクロヘキシルアミノ無水コハク酸の除去率については高速液体クロマトグラフィーにより、以下の条件にて分析を行い定量し、算出した。
【0032】
<高速液体クロマトグラフィー条件>
液体クロマトグラフィポンプ:島津LC−10AD
カラムオーブン:島津CTO−10A
検出器:島津SPD−10A
データ処理機:島津C−R6A
カラム:東ソー社製 TSK-GEL ODS-80TM(4.6φ×150mm+4.6φ×250mm)
キャリアー:水/アセトニトリル=3/4(wt/wt)
(KHPO=0.008mol/kg-H0) リン酸にてpH3.0に調製する。
流速:0.6ml/min
カラム温度:50℃
検出器:UV(220nm)
内部標準物質:安息香酸イソプロピル
リテンションタイム: 有水マレイン酸・・・6.5分
フマール酸・・・7.0分
N-シクロヘキシルフマレアミン酸・・・8.7分
N-シクロヘキシルアミノ無水コハク酸・・・9.55分
N-シクロヘキシルマレアミン酸・・・10.88分
N-シクロヘキシルマレイミド・・・17.68分
内標・・・25.0分
オルソキシレン・・・28.1分
製造例1(粗製N−シクロヘキシルマレイミドの合成)
温度計および水分離器を備えた冷却管と、滴下ロートと攪拌機とを備えたフラスコに、オルソキシレン100gを仕込み、これに無水マレイン酸98.1gを加えてフラスコ内の温度を100℃にして無水マレイン酸を溶解した。次いで、上記溶媒600gにシクロヘキシルアミン99.2gを溶解した溶液を撹拌下に1時間で全量滴下してN−シクロヘキシルマレアミン酸の上記溶媒のスラリー液を合成した。
次に、上記スラリー液にオルソリン酸85g、ジブチルジチオカルバミン酸銅0.1gを加えて加熱して撹拌下147℃に保ち、反応により生成する水を溶媒と共に系外に留去せしめながら7時間反応させた。反応終了後、147℃で反応液から下層に分離した酸触媒層を分離除去し、粗N−シクロヘキシルマレイミド溶液が865.3g得られた。
【0033】
粗N−シクロヘキシルマレイミド溶液中の固形分(固形分:マレイン酸、フマール酸、N−シクロヘキシルマレアミン酸、N−シクロヘキシルフマレアミン酸、N−シクロヘキシルアミノ無水コハク酸の総和)重量は165.3gであり、固形分濃度は19.1重量%であった。高速液体クロマトグラフで分析した結果、粗N−シクロヘキシルマレイミド中のN−シクロヘキシルマレイミドの純度は83重量%(対固形分)であり、N−シクロヘキシルアミノ無水コハク酸が3.2重量%(対固形分)含まれていた。この粗N−シクロヘキシルマレイミド溶液を用いて、以下の実施例及び比較例に供した。
【0034】
<実施例1>
温度計と冷却器と攪拌機とを備えたジャケット及び水分離用コック付き1000mlセパラブルフラスコに上記の粗N−シクロヘキシルマレイミド溶液500gを仕込み、ジャケットに温水を流して液温を80℃に調節した。 次にアンモニア濃度が5重量%のアンモニア水溶液150gを一括投入し、30分間攪拌し、洗浄を行った。洗浄後10分間静置し、下層の水層をフラスコ下部から抜き出した。
【0035】
水洗浄後の油層を高速液体クロマトグラフィーにて分析した結果、N−シクロヘキシルアミノ無水コハク酸の除去率は99.1重量%であった。また、N−シクロヘキシルマレイミドの加水分解率は12.9重量%であった。続いて、油層に水を110g投入して液温80℃で30分間撹拌水洗し、水層を分離した。この操作を2回繰り返した後、有機層から10mmHg(abs)の減圧下溶媒を留去した。
【0036】
次に、フラスコ中に新たに0.3gのジブチルジチオカルバミン酸銅を加え、5mmHg(abs)の減圧下、内温130〜150℃に保ちながら30分かけてN−シクロヘキシルマレイミドの蒸留を行った。その結果、121.9gのN−シクロヘキシルマレイミドの白色結晶を得た。このものの純度は99.97重量%であり、収率は原料シクロヘキシルアミンに対して68モル%に相当する。結果を表1に示す。
【0037】
<実施例2>
実施例1のアンモニア濃度を5重量%から1重量%にした以外は、同様の実験を行った。結果を表1に示す。
【0038】
<実施例3>
アンモニアの他に硫酸ナトリウムを硫酸ナトリウム水溶液の濃度として5重量%になるように加えた以外は実施例1と同様の実験を行った。結果を表1に示す。
【0039】
<実施例4>
アンモニアの他にリン酸アンモニウムをリン酸アンモニウムの濃度として5重量%になるように加えた以外は実施例1と同様の実験を行った。結果を表1に示す。
【0040】
<比較例1〜2>
実施例1と同様の装置で、アンモニアの代わりに炭酸ナトリウムを使用して実施例1と同様に炭酸ナトリウムの濃度が5重量%になるようにして操作を繰り返した。結果を表1に示す。
【0041】
<比較例3>
実施例1と同様の装置で、アンモニアの代わりに硫酸を使用して実施例1と同様に硫酸の濃度が5重量%になるようにして操作を繰り返した。結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
Figure 0004198908
【0043】
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、N−アルキルマレイミドの加水分解を抑制し、なおかつ水洗により分離困難な不純物であるN−アルキルアミノ無水コハク酸の水洗除去が可能となる。あるいは他の精製条件では、N−アルキルマレイミドが加水分解を受け場合によりかえって生成してしまう傾向にある、上記のN−アルキルアミノ無水コハク酸の量を特定量範囲内に調製することが可能になる。その結果得られたN−アルキルマレイミド組成物は、N−アルキルアミノ無水コハク酸の量が特定量範囲内に調整されており、保存安定性が良好である。具体的には、N−アルキルマレイミドの長期保存における外観変化を抑え、また着色性を低く抑えることができる。つまり、製造初期時の外観からの状態変化をなくし、外観を維持することが可能になる。
【0045】
本発明のN−アルキルマレイミド組成物は、各種重合反応用単量体組成物として、またABS、PMMA、PVC等の熱可塑性樹脂の耐熱性向上剤や、医薬、農薬の中間体として有用である。
【0046】
具体的には、N−アルキルアミノ無水コハク酸の量が特定量範囲内に調整されているので、単量体組成物としても純度が高く、各種の重合体を製造する上での非常に有効な原料となる。また同様に、原料としての純度が高いので、医薬、農薬の中間体として非常に有効である。
【0047】
また、上記の耐熱性向上剤としても、また、N−アルキルアミノ無水コハク酸の量が特定量範囲内に調整されているので、各種樹脂、具体的には熱可塑性樹脂に使用した場合、不純物に起因する問題(例えば、成型時のシルバーストリーク性等)が発生し難い。

Claims (2)

  1. N−アルキルマレイミドを含む炭化水素溶液に、アンモニアを含有する水溶液を加え、水層と油層を形成し、N−アルキルマレイミドを含む炭化水素溶液である油層に存在する不純物を水層に移し、さらに当該油層からN−アルキルマレイミドを分離することを特徴とするN−アルキルマレイミドの精製方法。
  2. 上記の、アンモニアを含有する水溶液におけるアンモニアの濃度が、0.1〜10重量%であることを特徴とする請求項1記載のN−アルキルマレイミドの精製方法。
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