JP4198231B2 - 断熱材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、硬質発泡樹脂の粉砕物等を包装材にて封止した断熱材及びその製造方法に関し、特に硬質発泡樹脂の廃材の再利用に有効なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、建材等に使用される硬質ウレタンフォームの端材、スプレー発泡時のフォーム屑、廃棄物から回収されるフォーム片等は、プレス後に廃棄物処理されるのが一般的であったが、コスト面及び環境面から再利用の要求が高まっている。再利用の方法は各種存在するが、断熱材としての再利用に関しては、各種バインダーを用いて粉砕物を固着する方法が主流であった。しかし、バインダーの均一塗布が困難であり、工程も複雑化してコスト面の問題もあるため、実用的な方法とは言い難かった。
【0003】
一方、バインダーを用いない方法として、粉砕物等を真空パックして、断熱材として再利用する技術が存在した。例えば、特開昭60−243471号公報には、硬質ウレタンフォーム廃品を粉砕し、合成樹脂製袋に投入して真空パックしたものを、外板と内板との空間部に挿入して断熱板を形成したものが開示されている。また、類似のものとして、特開平4−194498号公報には、すきまに充填するために軟質ウレタンフォーム等を偏平に圧縮し、更に真空に吸引して真空パックした後、すきまに挿入して真空を破る断熱材の使用方法が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、発泡樹脂廃材の粉砕物等を真空パックした断熱材には、製法上及び製品として下記の問題があった。即ち、
1)吸引により生じる製品表面の凹凸が大きく、断熱材としての断熱対象物との密着性が悪く、生じた空間により断熱性を損ねる場合がある、
2)製品の空隙率が小さいため、ピンホール等により空気が流入すると、体積増加率(厚み増加率)が大きく、また空隙率が小さいと断熱材の柔軟性を妨げるため、用途が制限される、
3)しかも、初期の真空状態を維持するのが困難で、製造上も、真空に排気しながらの封止は困難である、
4)製造上、真空度が適度(大気圧よりやや低い)なものを得るには全体の減圧に時間がかかると共に圧力制御が困難である、
5)製造設備も複雑化し、排気口の除塵フィルタの交換など工程も煩雑である、
といった種々の問題があった。そこで、特開昭60−243471号公報の技術では、熱収縮フィルムで更に被覆したり、また特開平4−194498号公報の技術では、真空を積極的に破ったりしていたが、上記問題の根本的な解決にはなっていなかった。
【0005】
従って、本発明の目的は、簡易な設備、工程、制御により、表面が平滑で適度な柔軟性を有する断熱材を得ることができる断熱材の製造方法、並びに当該製造方法で得られる断熱材を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の製造方法は、硬質発泡樹脂の粉砕物又は充填用成形物を、包装材を介して偏平状に圧縮する工程と、その圧縮した状態で大気圧下にて前記包装材を封止する工程とを有することを特徴とする。ここで、粉砕物とは、微粉砕から粗粉砕まで幅広い粒度範囲で粉砕されたものを含む概念である。また、偏平状とは平板状に限らず、曲面状に偏平したものも含む概念である。
【0007】
上記において、前記硬質発泡樹脂の粉砕物は、廃材由来のものでなくてもよいが、廃材または廃材の粉砕物であることが好ましい。
【0008】
また、前記圧縮の前後の体積比が、0.25〜0.9であることが好ましい。
【0012】
[作用効果]
本発明の製造方法によると、圧縮状態で包装材に封止された硬質発泡樹脂の復元力により、適当な内部圧力の断熱材を製造できるため、吸引を行うことなく、簡易な設備、工程、制御により、表面が平滑で適度な柔軟性を有する断熱材を得ることができる。
【0013】
前記硬質発泡樹脂の粉砕物が、廃材または廃材の粉砕物である場合、廃材でも特に制限なく本発明に用いることができるため、廃材の有効利用が図れる。
【0014】
前記圧縮の前後の体積比が0.25〜0.9である場合、圧縮比をこの範囲にすることで、適度な減圧状態、空隙率の断熱材が製造でき、しかもこのような圧縮比の制御は容易に行うことができる。また、上記体積比の範囲であると、断熱性に有効なセル構造を破壊しないため、断熱性を十分維持でき、また、大きなプレス圧を必要としないため、比較的低コストで製造を行うことができる。上記の観点から、より好ましくは、体積比が0.4〜0.7である。
【0015】
断熱材の上下表面における凹凸高低差が10mm以内であると、表面が十分平滑なため断熱対象物との密着性を高めて、熱損失を小さくすることができる。また、前記粉砕物間に生じる空間の空隙率が2〜40%であると、空隙率が適切な範囲のため、適度な柔軟性と保形性を有すると共に、ピンホール等による体積膨張も少ないものとなる。上記の観点から、より好ましくは、凹凸高低差が5mm以内、空隙率が5〜20%である。
【0016】
なお、図面に基づき、本発明で製造された断熱材と真空吸引により製造された断熱材の構造の相違を説明すると次のようになる。粉砕物1が包装材2にほぼ密に充填されると、図1(イ)と図2(イ)に示すような充填状態となる。本発明の製造方法において、圧縮・封止を行った時点では、図1(ロ)に示すような充填状態となるが、充填粉砕物1は押しつぶされて変形しているものの、粉砕物1の配置や向きはあまり変化していない。このため、全体の体積は小さくなるものの、空隙率はそれほど変化せず、しかも、表面は平滑な状態が保たれる。圧縮が解除されると、圧縮状態で包装材に封止された粉砕物1の弾性復元力により、図1(ハ)のように体積が圧縮前の大きさ近くまで復元し、そのため内部圧が大気圧よりやや小さくなる。これにより、断熱材3の表面は、表面部に存在する個々の粉砕物1の形状に沿って少しだけ凹凸状になるが、凹凸高低差は真空吸引の場合(図2(ロ)参照)と比較して極めて小さい。また、圧縮時および圧縮解除時に空隙率の変化が小さいため、初期の空隙率をほぼ維持して、適度な柔軟性と保形性を有することができる。一方、真空吸引によると、図2(ロ)に示すような充填状態となるが、これは隙間部分の空気を減圧するため、充填粉砕物1の配置と向きの変化により、空間部分がほとんどなくなって、空隙率が減少したものである。また、粉砕物1の配置変化が均一に起こらないため、表面に凹凸が生じ、その凹凸は個々の粉砕物1の形状によるものより、かなり大きくなる。
【0017】
前記内部圧が絶対圧0.80〜0.99atmである場合、内部圧が適切な範囲のため、適度な柔軟性と保形性を有すると共に、ピンホール等による体積膨張も少ないものとなる。上記の観点から、より好ましくは、絶対圧0.90〜0.97atmである。
【0018】
前記硬質発泡樹脂が、硬質ウレタンフォームである場合、硬質ウレタンフォームは、一般に断熱特性が高いため、得られる断熱材も断熱特性が優れる。また、熱可塑性樹脂フォームと異なり、廃材のリサイクルが困難であるため、本発明が特に有用となる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の製造方法、断熱材の順で実施形態を説明する。
【0020】
(本発明の製造方法)
本発明の製造方法は、硬質発泡樹脂の粉砕物又は充填用成形物を、包装材を介して偏平状に圧縮する工程を有するものであるが、原料として用いられる硬質発泡樹脂としては、硬質発泡体が得られる各種熱可塑性樹脂、各種熱硬化性樹脂、セルロース系樹脂などがいずれも使用可能である。また、発泡倍率や粉砕物又は成形物の形状、大きさ等も特に制限されず、形状は粒体状、繊維状、不定形など、また大きさは粉末状のものから断片状のものまで、いずれも使用可能である。但し、粉砕物の大きさは、粉砕処理の経済性を考慮すると、10〜20mm角程度のものが好ましい。更に、廃材の場合には、硬質発泡樹脂以外の材料を含んでいる場合が多いが、その場合でも特に問題なく使用できる。
【0021】
包装材としては、ある程度の気密性が維持できればよく、各種樹脂製のフィルム、シート、また金属箔や金属箔をラミネートしたものなどがいずれも使用可能である。金属箔ラミネート等を使用する場合、輻射熱を反射して断熱効果を高めると共に、空気の透過を少なくして、内部圧を維持する効果が大きくなる。なお、包装材の形状としては、袋状、筒状、シート状などが使用可能であるが、袋状又は筒状のものが充填のし易さの点から好ましい。また、包装材の厚みとしては50〜150μmが好ましい。
【0022】
偏平状に圧縮する方法としては、少なくとも1対のプレス面を有する各種プレス装置、プレス機構を用いて、プレス面間で圧縮を行えばよい。また、金型内でプレスすることも可能であり、プレス装置等に封止手段を組み込んで、圧縮工程と封止工程を同時に行うことも可能である。なお、圧縮の前後の体積比は、前述の通りである。
【0023】
なお、硬質発泡樹脂以外の木屑などを含む廃材の場合には、その先端部により包装材が破れるおそれがあるため、上記圧縮工程に先立って、包装材を使用せずに予備圧縮を行うことにより、木屑などの先端部が突出しないようにしてもよい。
【0024】
本発明の製造方法は、圧縮した状態で大気圧下にて前記包装材を封止する工程を有するものであるが、封止の方法としては、ある程度の気密性が維持できればよく、熱融着、粘着テープや接着剤による接着、機械力による圧着などが、いずれも利用できるが、量産にはヒートシールが適している。ヒートシールする場合、粉砕物等中に含まれる微細な粉体の量が少ない方が好ましい。なお、封止に際しては、予め包装材の内部の空気を押し出すなどして、余分な空間を排除しておくことが、内部圧を適性にして形状保持機能を発現させる観点から好ましい。封止する箇所は、通常、袋状包装材では1箇所、筒状包装材では2箇所、シート状包装材では全周にわたって行われる。なお、封止後の断熱材の平面視形状は、いずれの形状でもよいが、ほぼ矩形であることが輸送や複数配置の便宜上好ましい。
【0025】
(本発明の断熱材)
本発明の断熱材は、廃材である硬質発泡樹脂の粉砕物が包装材の内部に収容され、大気圧より低い内部圧で封止されている偏平状の断熱材において、上下表面における凹凸高低差が10mm以内であり、かつ前記粉砕物間に生じる空間の空隙率が、2〜40%であるが、前述の製造方法により、好適に製造されるものである。従って、硬質発泡樹脂の粉砕物、包装材等は前述の通りであり、補足説明のみを行う。
【0026】
断熱材の厚みは、要求される断熱性能に応じて、適宜設定すればよく、例えば1〜30cm程度、好ましくは3〜15cm程度である。また、断熱材の面積も断熱する面の面積に応じて適宜決定すればよい。
【0027】
なお、断熱材の表面に両面テープを貼付して、断熱材の施工性をより高めてもよい。また、片面に合板を張り付けて、補強などを行ってもよい。
【0028】
本発明の断熱材の熱伝導率は、硬質ウレタンフォームの廃材を用いる場合、0.03〜0.04kcal/mh℃程度であり、グラスウールや発泡スチロール(0.035〜0.05kcal/mh℃)と同等又はそれ以上である。また、硬質ウレタンフォームと比較してもそれ程、熱伝導率が低下しておらず、断熱材として廃材の有効利用が図れる。また、断熱材の用途としては、硬質ウレタンフォーム等の樹脂発泡体が断熱材として用いられる各種用途にいずれも使用可能であり、更に、本発明の断熱材の柔軟性を生かして、複雑な面形状や隙間形状の部分に使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の断熱材の構造を説明するための断面図
【図2】真空吸引により得られる断熱材の構造を説明するための断面図
【符号の説明】
1 粉砕物
2 包装材
3 断熱材
Claims (3)
- 硬質発泡樹脂の粉砕物又は充填用成形物を、包装材を介して偏平状に圧縮する工程と、
その圧縮した状態で大気圧下にて前記包装材を封止する工程とを有する断熱材の製造方法。 - 前記硬質発泡樹脂の粉砕物が、廃材または廃材の粉砕物である請求項1記載の断熱材の製造方法。
- 前記圧縮の前後の体積比が、0.25〜0.9である請求項1又は2記載の断熱材の製造方法。
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