JP4197377B2 - 地盤強化工法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、トンネルや法面における崩壊性地盤を強化する地盤強化工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の地盤強化工法として、地盤の所定部位に補強部材用の挿入孔を削孔し、この挿入孔内にグラウト材を注入充填した後、この挿入孔内の充填グラウト材内に鉄筋やアンカー等の補強部材を挿入する地盤強化工法が知られている。この例としては、例えば特開平10−131181号公報記載の地盤強化工法がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、軟弱地盤等の崩壊性地盤では、補強部材用の挿入孔を削孔した後に、続いて挿入孔内にグラウト材を注入する前に挿入孔壁が崩壊し、挿入孔内へのグラウト材の注入が不可能になる、あるいは不完全になることがあった。また、挿入孔内壁の亀裂からグラウト材が逸走することもあった。
【0004】
そこで、本発明の主たる課題は、補強部材挿入孔の孔壁崩壊、ならびに挿入孔内壁の亀裂からのグラウト材の逸走を防止することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決した本発明の地盤強化工法は、崩壊性地盤の所定部位に削孔ロッドを挿入して補強部材挿入用の挿入孔を削孔し、
この挿入孔から削孔ロッドを引き抜くのに伴って、少なくとも削孔ロッド先端面と挿入孔底面との間に、セメントペーストを主体とし且つ骨材を含まない高粘度グラウト材を順次注入充填し、削孔ロッドの占有空間を前記グラウト材により置換し、その置換したグラウト材により挿入孔壁を維持させ、
しかる後にこの挿入孔内の充填グラウト材内に補強部材を挿入する地盤強化工法であって、
前記高粘度グラウト材として、テーブルフロー値が150〜280のグラウト材を用い、
予め、既知の挿入孔径および所定の削孔ロッド引抜速度に基づいて前記置換部分の体積 増加速度を求めておき、これを前記グラウト材の注入速度として注入を行う、
ことを特徴とするものである。
本発明は、挿入孔壁の周辺地盤が亀裂を有している場合に好ましい。
【0006】
<作用>
補強部材用の挿入孔を削孔した後に、挿入孔内にグラウト材を注入すると、それら工程間において、挿入孔内は空洞となり、挿入孔壁が支持されていない状態が生じる。そのため、挿入孔壁が崩壊し、挿入孔内へのグラウト材の注入が不可能になる、あるいは不完全になることがある。
【0007】
しかるに、本発明に従って削孔ロッドを引き抜くのにともなって、少なくとも削孔ロッド先端面と挿入孔底面との間に、セメントペーストを主体とし且つ骨材を含まない高粘度グラウト材を順次注入充填すると、削孔ロッドを引き抜いてゆく過程で順次形成されてゆく、削孔ロッド先端面と挿入孔底面との隙間に高粘度グラウト材が順次注入充填されてゆくので、挿入孔壁が支持されていない状態が殆ど生じないため、挿入孔の孔壁の崩壊を防止することができるようになる。
【0008】
しかも、本発明では、高粘度のグラウト材を注入するため、グラウト材が挿入孔内に確実に残存するので、孔壁維持効果に優れるとともに、硬化したグラウト材および補強部材からなる地盤強化体の地盤強化効果にも優れるようになる。
【0009】
すなわち、特に本発明の好適対象となる崩壊性地盤においては、孔壁周辺地盤が亀裂を有していたり透水性が高い場合が多い。かかる場合に低粘度のグラウト材を用いると、挿入孔内に注入したグラウト材が硬化前に亀裂を介して逸走したり、地盤に浸透したりしてしまい、孔壁維持効果を十全に発揮しえないこととなる。また、かかるグラウト材の逸走等があると、形成される地盤強化体と挿入孔壁との間に隙間ができるので、地盤強化効果も十全に発揮しえない。
【0010】
なお、前掲特開平10−131181号公報記載の従来工法は、同公報第9欄において「必要本数の削孔を形成し、その削孔4にグラウト材としてフロー値が200以下の硬練りのモルタル5を注入する。そのモルタル5の注入は、従来行われているように、注入ホースなどを用いて」とあるように、明らかに、削孔後に補強部材挿入孔にグラウト材を注入するものである。
【0011】
また、この特開平10−131181号公報記載の従来工法は、グラウト材としてモルタルを用いるために、補強部材の挿入が容易ではなく、同公報記載の特殊な補強部材を用いる必要があるという問題点も有している。すなわち、モルタルは砂等の細骨材を含有しており、これが補強部材挿入の妨げとなるのである。
【0012】
これに対して、本発明は骨材を含まないグラウト材を用いるので、高粘度のグラウト材を用いても補強部材の挿入を容易に行える利点がある。
【0013】
この他にも、高粘度のグラウト材および補強部材を用いる地盤強化工法としては、例えば特開平7−208097号公報記載のものがある。しかし、これも削孔ロッドの引き抜きにともなってグラウト材を注入充填するものではなく、また高粘度グラウト材の高粘度という特性を挿入孔壁の維持に利用するものではない。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しつつ詳説する。
本発明の実施に際しては、先ず図1に示すように、対象地盤2の所定部位に削孔ロッド1を挿入して補強部材挿入用の挿入孔3を削孔する。1Aは、削孔ロッド先端に取り付けられた削孔ビットを示している。
【0015】
続いて図2に示すように、この挿入孔3から削孔ロッド1を引き抜くのに伴って、少なくとも削孔ロッド1先端面と挿入孔3底面との間に、セメントペーストを主体とし且つ骨材を含まない高粘度グラウト材Gを順次注入充填する。図示例では、高粘度グラウト材Gを、削孔ロッド1内の図示しない圧送管路を介して削孔ビット1Aの先端側に臨む図示しない吐出口から、削孔ビット1Aの先端側挿入孔部分(以下置換部分ともいう)Sに対してグラウト材Gを注入させている。かくして、削孔ロッド1の占有空間をグラウト材Gにより置換し、その置換したグラウト材Gにより挿入孔3の孔壁を維持させる。図3は、グラウト材Gによる置換が完了し、挿入孔3全体(底から口元まで全体)にわたりグラウト材Gが充填されている状態を示している。しかし、本発明では、必ずしも挿入孔3の長手方向全体にグラウト材Gを充填しなくても良い。
【0016】
特にこの注入に際し、予め、既知の挿入孔径および所定の削孔ロッド引抜速度に基づいて置換部分Sの体積増加速度を求めておき、これをグラウト材Gの注入速度として注入を行うと、置換部分Sに隙間が生じることなく、挿入孔3内の空間は削孔ロッド1および充填したグラウト材Gにより常に占有されており、挿入孔3の孔壁が支持されていない状態になることが実質的にないため、挿入孔3の孔壁の崩壊をより確実に防止することができるようになる。
【0017】
なお、このように本発明工法は、補強部材挿入部位1ヶ所毎に、削孔およびグラウト材注入を行うものであり、複数の挿入孔を設けた後にそれらに対してグラウト材を注入するものではない。
【0018】
グラウト材Gの充填が完了したならば、充填グラウト材Gの固化前に、図4に示すように挿入孔3内の充填グラウト材G内に補強部材4を挿入する。図示例の補強部材4は、基端部分にネジ部4Aが形成された軸部材であり、同図ではさらに補強部材4の基端部に台座5を通した上で、基端ネジ部4Aにナット6を螺合している。
一方、本発明に用いるグラウト材Gは、セメントペーストを主体とし且つ骨材を含まない高粘度(孔壁維持効果を発揮しうる程度)のグラウト材具体的には、テーブルフロー値が150〜280のグラウト材を用いる。テーブルフロー値が150未満になると、ポンプを用いてしかも削孔ロッド内の比較的に細い管路を介して圧送することが困難になり、テーブルフロー値が280以上になると、孔壁の維持効果が発揮されない。更に良好な孔壁の維持効果を発揮させるにはテーブルフロー値が250以上であるのが好ましい。
【0019】
かかる高粘度グラウト材としては、テーブルフロー値が150〜280のセメントペースト、すなわちセメントおよび水のみからなり、含水量調節により粘度調節を行ったもののほか、特に、セメントペーストに増粘材を添加してテーブルフロー値を150〜280に調節したものを推奨する。後者における増粘材としては公知のもの、例えばセルロース系樹脂、アクリル酸系樹脂、および多糖類などから適宜選択して用いることができる。
【0020】
他方、本発明の地盤強化工法は、さらに具体的には、補強部材として鉄筋を用いる鉄筋挿入工法、補強部材としてロックボルトを用いるいわゆるロックボルト工法、いわゆるアンカー工法等への応用が可能である。
【0021】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば、補強部材挿入孔の孔壁崩壊、ならびに挿入孔壁の亀裂からのグラウト材の逸走を防止することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態の第1工程を概略的に示す、縦断面図である。
【図2】 第2工程を概略的に示す、縦断面図である。
【図3】 第3工程を概略的に示す、縦断面図である。
【図4】 第4工程を概略的に示す、縦断面図である。
【符号の説明】
1…削孔ロッド、2…地盤、3…挿入孔、4…補強部材、G…グラウト材。

Claims (2)

  1. 崩壊性地盤の所定部位に削孔ロッドを挿入して補強部材挿入用の挿入孔を削孔し、
    この挿入孔から削孔ロッドを引き抜くのに伴って、少なくとも削孔ロッド先端面と挿入孔底面との間に、セメントペーストを主体とし且つ骨材を含まない高粘度グラウト材を順次注入充填し、削孔ロッドの占有空間を前記グラウト材により置換し、その置換したグラウト材により挿入孔壁を維持させ、
    しかる後にこの挿入孔内の充填グラウト材内に補強部材を挿入する地盤強化工法であって、
    前記高粘度グラウト材として、テーブルフロー値が150〜280のグラウト材を用い、
    予め、既知の挿入孔径および所定の削孔ロッド引抜速度に基づいて前記置換部分の体積増加速度を求めておき、これを前記グラウト材の注入速度として注入を行う、
    ことを特徴とする地盤強化工法。
  2. 前記挿入孔壁の周辺地盤が亀裂を有している、請求項1記載の地盤強化工法。
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