JP4196701B2 - 産業車両の車体構造及びその車体構造を備えた産業車両 - Google Patents

産業車両の車体構造及びその車体構造を備えた産業車両 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カウンタバランス型フォークリフト等のカウンタウェイトを備えた産業車両の車体構造、及び、同車体構造を備えた産業車両に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のカウンタバランス型フォークリフトには、左右一対の後輪を支持する後輪車軸を車体に対して上下方向で揺動可能に支持するとともに、後輪車軸の揺動を規制するロックシリンダを車体フレームと後輪車軸との間に支持した車体構造のものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
フォークリフトの車体フレームは、複数の板部材を溶接して構成されるのが一般的である。また、カウンタバランス型フォークリフトでは、容積の大きなカウンタウェイトを車体後部に設けるため、車体フレームはほぼ後輪車軸の位置までを形成する。そして、後輪車軸より後側の車体後部は、車体フレームの後端に固定されるカウンタウェイトによって形成されている。
【0004】
図7,8に示すように、特許文献1に記載された車体フレーム80は、左右一対の構造体81a,81bが、前側連結部材82及び後側連結部材83で連結された構造となっている。また、左右両構造体81a,81bの後部同士は、車両前後方向に垂直な平面上に配置された背板84で連結されている。
【0005】
左右の各構造体81a,81bは、その後部上側が後方に延出され、その両延出部同士は、背板84に平行に配置された副背板85で連結されている。各延出部の後端上側には、カウンタウェイトを着脱可能に支持するためのハンガー部86がそれぞれ設けられている。
【0006】
また、車体フレーム80には、後輪車軸を支持する車軸支持部87が設けられている。車軸支持部87は、背板84の後面から後向きに延びるように形成され、背板84の後面と副背板85の下端とに連結されている。
【0007】
そして、両ハンガー部86に支持されたカウンタウェイトの重量は、副背板85を介して車軸支持部87に加わり、さらに、車軸支持部87に支持された後輪車軸から両後輪に加わる。
【0008】
また、図9に示すように、車体フレーム80には、後輪車軸88との間でロックシリンダ89を支持するためのシリンダ連結部90が設けられている。シリンダ連結部90は、副背板85と、その後方に設けられた取付板91とによって形成され、ロックシリンダ89を支持する連結軸92を車両前後方向に支持する。
【0009】
【特許文献1】
特開2000−6624号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ロックシリンダ89は、例えば車両が急激に旋回するときにその伸縮動作が禁止され、車体フレーム80に対する後輪車軸88の揺動を禁止することで車両の傾動を規制する。このとき、ロックシリンダ89からシリンダ連結部90に強大な力が加わるため、シリンダ連結部90回りの構造強度を特に強化する必要があった。
【0011】
そこで、副背板85及び取付板91を、車体フレーム80を構成する他の板部材よりも厚くしたり、補強材を溶接する必要があるため、車体フレーム80の構造が複雑となっている。
【0012】
また、車体フレーム80の基本構造部材以外に、取付板91や補強材といった、ロックシリンダ89を車体フレーム80に連結するための部材を必要とするため、その分だけ部品点数が増えている。さらに、これらの部材を、車体フレーム80に対して大きな溶接長で溶接する必要があるため、その分だけ製造工数が多かった。
【0013】
本発明の目的は、左右一対の後輪を支持する後輪車軸を車体に対して上下方向で揺動可能に支持し、該後輪車軸の揺動を制限するシリンダを車体と後輪車軸との間に支持するとともにカウンタウェイトを備えた産業車両の車体構造において、車体構造を簡素化し、部品点数及び製造工数を削減することにある。また、同車体構造を備えた産業車両を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、左右一対の後輪を支持する後輪車軸を車体に対してほぼ上下方向で揺動可能に支持するとともに、該後輪車軸の揺動を制限する流体圧シリンダを車体と後輪車軸との間に支持し、車体後部にカウンタウェイトを備えた産業車両の車体構造である。前記車体後部自体を前記カウンタウェイトによって形成し、前記カウンタウェイトに支持されたピンを回動中心として前記後輪車軸を前記上下方向に揺動可能に支持し、前記流体圧シリンダの上端を車体側に連結するための連結部をカウンタウェイトに一体に形成しており、前記連結部は、前記カウンタウェイトの上側に露出するように設けられ、前記カウンタウェイトには、車体の上下方向に貫通するとともにカウンタウェイトの上側に開口する貫通孔が設けられ、前記流体圧シリンダは、前記貫通孔に挿通されて、流体圧シリンダの上端が前記連結部に連結されるとともに流体圧シリンダの下端が前記後輪車軸に連結された。ここで、「後輪車軸の揺動を制限する」とは、後輪車軸の揺動速度を制限することと、揺動を禁止することとを含む。
【0015】
請求項1に記載の発明には次の作用がある。従来のように、後輪車軸を支持する車体フレームに流体圧シリンダを連結するための連結部を設けないので、連結部を形成するための部材を必要とせず、また、この部材を車体フレームに組み付ける必要がない。また、車体フレームにおいて、連結部が設けられる部位を特に強化する必要がない。
【0016】
また、前記連結部は、前記カウンタウェイトの上側に露出するように設けられているため、従来のように車体フレームにカウンタウェイトを着脱する構造と異なり、カウンタウェイトを車体フレームから取り外すことなく、連結部と流体圧シリンダとの連結箇所に対し、点検や、給油等の保守を行うことができる。
【0017】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の発明において、前記連結部を外部から覆うとともに車体の一部を形成するカバーが設けられている。
請求項に記載の発明によれば、請求項に記載の発明の作用に加えて、連結部に連結された流体圧シリンダの可動部位をカバーによって外部環境から保護することができるとともに、カバーを外すだけで可動部位を点検・保守することができる。
【0018】
請求項に記載の発明は、請求項1又は請求項に記載のカウンタウェイトを備えた産業車両の車体構造を有する産業車両である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、産業車両としてのカウンタバランス型フォークリフトの車体構造に具体化した一実施形態を図1〜図6に従って説明する。
【0020】
図2に示すように、本実施形態のカウンタバランス型フォークリフト10は、その車体11の前部に左右一対の前輪12を備え、同じく後部に左右一対の後輪13を備えている。両前輪12は固定駆動輪であり、両後輪13は操舵従動輪である。また、車体11の前側にマスト装置14を備え、両前輪12と両後輪13との間に運転台15を備えている。運転台15の上には、ヘッドガード16が設けられている。
【0021】
図1,3に示すように、車体11は、そのほぼ前部を形成する板組部17と、同じくほぼ後部を形成するカウンタウェイト18とからなる。すなわち、車体11の後部は、カウンタウェイト18によって形成されている。
【0022】
板組部17は、複数の板部材を溶接することによって形成されている。そして、板組部17は、両前輪12を支持する図示しない前輪車軸を支持し、また、同じくエンジン、燃料タンク、荷役用油圧装置、エンジン運転用補助機器等を搭載する。また、板組部17は、運転台15の下部を形成し、ヘッドガード16を支持する。
【0023】
カウンタウェイト18は一体鋳造され、板組部17に対して複数のボルトによって固定されている。カウンタウェイト18には、後輪車軸19が上下方向で揺動可能に支持される。後輪車軸19は、センターピンを備え、センターピンが回動可能な状態でカウンタウェイト18に支持される。そして、後輪車軸19は、センターピンを回動中心として上下方向に揺動可能に支持される。センターピンは、カウンタウェイト18に一体で設けた図示しない支持部、又は、カウンタウェイト18に鋳込まれた別部材からなる図示しない支持部材によって支持される。
【0024】
また、カウンタウェイト18は、後輪車軸19との間でロックシリンダ20を支持する。本実施形態では、ロックシリンダ20が流体圧シリンダである。
図1に示すように、ロックシリンダ20は、その上端に設けられた連結端21が、カウンタウェイト18に一体で設けられた一対の支持部22a,22bに対し回動可能に連結されている。一方、ロックシリンダ20の下端も、後輪車軸19に設けられた図示しない支持部に対し回動可能に連結される。ロックシリンダ20は複動型であって、作動油の給排を許容又は禁止する図示しない電磁開閉弁が制御されることにより、車体11に対する後輪車軸19の双方向での回動を許容又は禁止する。本実施形態では、両支持部22a,22bが連結部を構成する。
【0025】
両支持部22a,22bは、カウンタウェイト18の上側に設けられた収容凹部23内の上面23aに設けられている。両支持部22a,22bは、収容凹部23内の上面23aにおいて車両前後方向に並ぶように立設されている。なお、収容凹部23は、エンジン運転用補助機器である図示しないラジエーター及びマフラーの下部を収容するために設けられている。
【0026】
図1,4に示すように、両支持部22a,22bは、カウンタウェイト18を上下方向に貫通するとともに収容凹部23の上面23aに開口する貫通孔24を挟んだ両側に設けられている。貫通孔24には、ロックシリンダ20の上部が挿通される。
【0027】
図4,5に示すように、各支持部22a,22bは、車両前後方向の厚さと、車両左右方向の幅とを持つ略板状に形成されている。また、各支持部22a,22bにおける収容凹部23の上面23aとの境界付近の部位は、その外周面が円弧状の曲面をなして末広がり状に広がる面形状に形成されている。これは、カウンタウェイト18の鋳造時の湯回りを良好にし、また、各支持部22a,22bの基端部の応力集中を極力抑えてその構造強度をできるだけ大きくするためである。
【0028】
両支持部22a,22bには、ロックシリンダ20を支持するための連結軸25が車両前後方向に延びる状態で支持されている。連結軸25は、貫通孔24を挿通して両支持部22a,22bの間に配置されたロックシリンダ20の連結端21に軸通され、ロックシリンダ20を車両前後方向にほぼ垂直な平面内で揺動可能に支持する。
【0029】
図6に示すように、カウンタウェイト18の上側には、収容凹部23を外部から覆うとともに車体11の後部上側を形成するカバー26が設けられている。すなわち、カバー26は、カウンタウェイト18の上側ほぼ全体を覆うように形成されている。カバー26は、収容凹部23を覆うことで、両支持部22a,22bを外部から覆う。また、カバー26は、収容凹部23に配置された図示しないラジエーター及びマフラーをも外部から覆う。
【0030】
カバー26は、例えば運転台15の後部に対し、図示しないヒンジによって連結される。そして、カバー26は、収容凹部23を覆う状態から、ヒンジを回動中心として、車両前側に跳ね上がるように回動して、収容凹部23内を覆わない状態となる。この収容凹部23がカバー26で覆われない状態では、外部に露出した連結端21、両支持部22a,22b及び連結軸25に対する点検・保守が可能となる。
【0031】
以上詳述した本実施形態は、下記の各効果を有する。
(1) 車体11の後部がカウンタウェイト18によって形成され、後輪車軸19及びロックシリンダ20がカウンタウェイト18に支持される。そして、ロックシリンダ20は、剛性が高い一体鋳造のカウンタウェイト18に一体に形成された両支持部(連結部)22a,22bに連結される。
【0032】
従って、特許文献1に記載の車体フレームのように、ロックシリンダを連結するための連結部を車体フレームに設けないので、連結部を形成する板部材や補強材を必要とせず、また、この板部材や補強材を車体フレームに溶接する組付作業が不要となる。
【0033】
その結果、連結部を設けるための溶接箇所をなくし、車体構造を簡素化することができるので、車体11の耐久性が向上する。また、部品点数及び製造工数を削減することができるので、例えば製造原価を低減することができる。
【0034】
(2) 両支持部22a,22bが、カウンタウェイト18の上側に露出するように設けられている。このため、例えば、両支持部22a,22bに支持された連結軸25と、ロックシリンダ20の連結端21と連結軸25との間に潤滑油を補給するときにも、従来の車体構造のようにカウンタウェイトを車体フレームから取り外す必要がない。従って、カウンタウェイト18に対するロックシリンダ20の連結部の保守・点検が容易となる。
【0035】
(3) 両支持部22a,22bを外部から覆うとともに車体11の後部上側を形成するカバー26が設けられている。このため、カウンタウェイト18とロックシリンダ20との連結部を外部環境から保護しながら、カバー26を外すだけで連結部を点検・保守することができる。
【0036】
(4) 収容凹部23の上面23aに立設された一対の支持部22a,22bにおける上面23aとの境界付近の部位を、その外周面が円弧状の曲面をなして末広がり状に広がる面形状に形成した。このため、各支持部22a,22bの基端部の応力集中が抑えられて構造強度がより大きくなり、車体11の耐久性が向上する。その上、カウンタウェイト18の鋳造時に、各支持部22a,22bへの湯回りが良好となる。
【0037】
(5) カウンタウェイト18の上側には、収容凹部23を覆うとともに車体11の後部上側を形成するカバー26が設けられている。従って、従来、カウンタウェイトによって形成されていた車体の後部上側を、合成樹脂や金属からなるカバー26で形成することができるので、カウンタウェイトに対するパテ仕上げが不要となる。
【0038】
次に、上記一実施形態以外の実施形態を列記する。
○ 前記一実施形態で、流体圧シリンダとしてのロックシリンダ20に代えて、車体11に対する後輪車軸19の揺動速度を制限するダンパとした構成とする。このような構成においても、前記一実施形態の(1)〜(5)に記載した各効果がある。
【0039】
○ 前記一実施形態で、車体に対する後輪車軸の回動を両方向で規制する複動型のロックシリンダ20に代えて、それぞれ一方又は他方への回動を規制する一対の単動型のロックシリンダを設けた構成とする。このような構成においても、前記一実施形態の(1)〜(5)に記載した各効果がある。
【0040】
○ 前記一実施形態で、ロックシリンダ20とカウンタウェイト18との連結部が、カウンタウェイト18の上側に露出しない構成とする。この場合は、カバー26は、ラジエーター及びマフラーのみを覆う。このような構成においても、前記一実施形態の(1),(4),(5)に記載した各効果がある。
【0041】
○ 前記一実施形態で、カウンタバランス型フォークリフトを、エンジン式の代わりにバッテリ式とした構成とする。この場合、カウンタウェイト18の収容凹部23には、走行用モータ及び荷役用モータを制御するコントローラが配置される。このような構成においても、前記一実施形態の(1)〜(5)に記載の各効果がある。
【0042】
○ 本発明を実施する産業車両は、カウンタバランス型フォークリフトに限らず、例えばクランプ、プッシュプル、ラム、クレーン等のフォーク以外の作業用アタッチメントを備え、揺動可能に支持した後輪車軸の揺動を規制するロックシリンダを備えたカウンタバランス型の産業車両に実施することもできる。
【0043】
同様に、カウンタウェイトを備えたショベルローダに実施することもできる。
以下、前記各実施形態から把握される技術的思想を列記する。
(1) 前記カバーは、前記カウンタウェイトの上側のほぼ全体を覆うように形成されている。このような構成によれば、人の目に付きやすい車体の後部上側を、合成樹脂や金属からなるカバーで形成することができるので、カウンタウェイトに対するパテ仕上げが不要となる。
【0044】
(2) 前記カウンタウェイトには、前記流体圧シリンダが、前記連結部と連結されるために挿通される孔(貫通孔24)が形成されている。
【0045】
(3) 前記連結部は、前記孔を挟んだ両側に一対で設けられた支持部(22a,22b)である技術的思想の(2)に記載の産業車両の車体構造。
(4) 前記流体圧シリンダは、前記後輪車軸の揺動を禁止するロックシリンダである。
【0046】
(5) 前記産業車両は、カウンタバランス型フォークリフトである。
【0047】
【発明の効果】
請求項に記載の発明によれば、車体後部をカウンタウェイトによって形成し、後輪車軸をカウンタウェイトに支持するとともに、流体圧シリンダを連結するための支持部をカウンタウェイトに設けたので、車体構造を簡素化し、部品点数及び製造工数を削減することにある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施形態のフォークリフトの車体構造を示す模式斜視図。
【図2】 フォークリフトを示す模式側面図。
【図3】 車体構造を示す模式斜視図。
【図4】 支持部を示す模式側面図。
【図5】 同じく模式正面図。
【図6】 カバー及びカウンタウェイトを示す模式斜視図。
【図7】 従来の車体フレームを示す模式平面図。
【図8】 同じく模式側面図。
【図9】 車体フレームの後部を示す模式一部断面図。
【符号の説明】
10…産業車両としてのカウンタバランス型フォークリフト、11…車体、13…後輪、17…車体を構成する板組部、18…同じくカウンタウェイト、19…後輪車軸、20…流体圧シリンダとしてのロックシリンダ、22a,22b…連結部を構成する支持部、26…カバー。

Claims (3)

  1. 左右一対の後輪を支持する後輪車軸を車体に対してほぼ上下方向で揺動可能に支持するとともに、該後輪車軸の揺動を制限する流体圧シリンダを車体と後輪車軸との間に支持し、車体後部にカウンタウェイトを備えた産業車両の車体構造において、
    前記車体後部自体を前記カウンタウェイトによって形成し、
    前記カウンタウェイトに支持されたピンを回動中心として前記後輪車軸を前記上下方向に揺動可能に支持し
    前記流体圧シリンダの上端を車体側に連結するための連結部をカウンタウェイトに一体に形成しており、
    前記連結部は、前記カウンタウェイトの上側に露出するように設けられ、前記カウンタウェイトには、車体の上下方向に貫通するとともにカウンタウェイトの上側に開口する貫通孔が設けられ、前記流体圧シリンダは、前記貫通孔に挿通されて、流体圧シリンダの上端が前記連結部に連結されるとともに流体圧シリンダの下端が前記後輪車軸に連結された産業車両の車体構造。
  2. 前記連結部を外部から覆うとともに車体の一部を形成するカバーが設けられている請求項1に記載の産業車両の車体構造。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の産業車両の車体構造を備えた産業車両。
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