JP4195803B2 - アルカリ電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はアルカリ電池に関し、特に電池の内圧が高まった時に、これを電池の外部に開放して安全を確保する防爆式アルカリ電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルカリ電池の正極と負極とに対し、例えば誤使用によって、この電池が形成する電位と逆の電位を外部から印加した場合、電池内の圧力が上昇し、電池が破裂するおそれがある。従って、一般にアルカリ電池は、このような事故を防止する防爆機構を備えている。
【0003】
防爆機構を備えたアルカリ電池の従来の代表的な構造を図6に示す。有底筒形の正極缶1に、発電要素である正極材料2と、セパレータ3と、負極材料4と、電解液とが収容されている。正極缶1の上方は開口され、上方周面にはビーディング1bが形成され、底部には正極端子1aが形成されている。正極缶1の開口部には、封口体10がビーディング部1bまで嵌め込まれ、正極缶1の開口端部1cは、封口体10をビーディング部1bまで挿入設置後に、縮径絞り加工され、正極缶1内部は略密閉されている。
【0004】
封口体10は、負極端子板20、集電棒30、封口ガスケット40、及び封口板50の4つの部品からなる。
【0005】
負極端子板20は、金属板のプレス成形品であり、中央の平坦な円板部21及びその外周に、複数のガス抜き穴(第1ガス抜き穴)22が設けられた環状フランジ23を有している。また、負極端子板20の内面中央には集電棒30の先端部が溶接接合されている。
【0006】
封口ガスケット40は、ナイロン又はポリプロピレンからなる一体成形品であり、正極缶1の開口端部1cと環状フランジ23との間を封止する外筒部41と、集電棒30を囲繞するボス部42と、外筒部41及びボス部42を一体にて連結する中間部43とからなる。この中間部43の負極側の面には、ボス部42の外周面に沿って、破断誘起用薄肉部44が形成されている。尚、ボス部42の下端には、集電棒30との密着性を高めるために金属製キャップ5が装着されている。
【0007】
封口板50は、硬質材料からなる円板であり、その中央に、ボス部42を囲繞する穴51が穿孔され、穴51の周囲に複数のガス抜き穴(第2ガス抜き穴)52が設けられている。封口板50の外周上面部は負極端子板20の環状フランジ23に当接し、外周側面部は封口ガスケット40の外筒部41と密着して、正極缶1の開口端部1c及び負極端子板20の環状フランジ23の封止を支持する。
【0008】
この電池の防爆機構は、以下の通りである。正極缶1内部にガスが発生して内部の圧力が高まると、封口ガスケット40の中間部43が負極側に変形し、構造的に最も弱い破断誘起用薄肉部44に変形応力が集中して、該薄肉部44が破断する。この時、正極缶1内部のガスは、この破断部及びボス部42の間隙を通り、封口板50の第2ガス抜き穴52と負極端子板20の第1ガス抜き穴22とを順次通過して電池の外部に排出され、電池の安全が確保される。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
近年にあっては、デジタルカメラや情報通信端末等をはじめとする携帯電子機器の高性能化に伴い、その電源として用いられるアルカリ電池に対しても、高負荷特性の更なる向上に対する要求が増大している。そして、このような要求にこたえる有効な手段としてアルカリ電池の正極活物質にオキシ水酸化ニッケルを適用することが注目され、検討されている。
【0010】
もし、このようなアルカリ電池を誤使用した場合には、正極活物質に二酸化マンガンを使用した通常のアルカリ電池の場合に比べて、電池内部の温度はより高くなり、これに伴って圧力がより上昇する。
【0011】
ここで、前述の防爆機構は、このような温度上昇を伴った圧力上昇に対応しきれない場合がある。何故なら、薄肉部44が破断した場合でも、図7に示すように、内圧の抜け道が閉鎖されるおそれがあるからである。即ち、樹脂製であるガスケット40が高温によって軟化した状態で破断した場合、薄肉部44に隣接した、ガスケット40の内端が、封口板50の下面に密着した状態となって内部のガスの排出路が遮断されて、電池の防爆機構が機能しなくなるからである。
【0012】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、電池内圧の上昇によってガスケットの薄肉部が破断した場合に、ガス排出路が遮断されることのない安全なアルカリ電池を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、次の事項(1)〜( 12 )によって特定されるアルカリ乾電池である。
(1)発電要素を収納した缶の開口部が、封口体によって封止されていること
(2)前記封口体は、集電棒と封口板と負極端子板と封口ガスケットによって構成されていること
(3)負極端子板の内側中央部には集電棒が接合されること
(4)負極端子板の外周部には第1ガス抜き穴が設けられていること、
(5)封口ガスケットは、前記開口部及び前記外周部に密着してこれを封止する外筒部と、前記集電棒を囲繞するボス部と、該外筒部及び該ボス部を一体にて連結する中間部とを有すること
(6)封口ガスケットの中間部にはボス部の外周面に沿った破断誘起用薄肉部が設けられていること
(7)封口板は、前記負極端子板と前記封口ガスケットとの間に配設されているとともに、中央部で前記ボス部を囲繞していること
(8)封口板におけるボス部の周囲には、第2ガス抜き穴が設けられていること
(9)封口板の下面側にはボス部の外径よりも大きな内径を有する硬質環状体が配設されていること
10 )硬質環状体の外径は、封口ガスケットの破断誘起用薄肉部の外径よりも大きく、封口板の第2ガス抜き穴を完全に閉鎖しない程度に小さい外形を有すること
11 )硬質環状体の厚さは、0.2mm以上であること
12 )硬質環状体には、内径側と外径側とを連通する間隙部が形成されていること
このようなアルカリ電池によれば、前記缶内のガスの圧力が上昇し、前記封口ガスケットの前記破断誘起用薄肉部が破断して前記硬質環状体の下面に密着した場合でも、該ガスの排出路は、該硬質環状体の前記間隙部によって確保されるために、該アルカリ電池の安全が確保される。そして、硬質環状体の厚さ故に、該硬質環状体の内径側の前記間隙部にまでは密着しにくく、該間隙部は閉鎖されにくい。従って、ガスの排出路は、該硬質環状体の該間隙部によって、より効果的に確保されるために、アルカリ電池の安全がより確保される。
【0014】
また、前記硬質環状体がCリングの形状を有してもよい。
【0015】
また、前記硬質環状体が上面側の一部を切欠したリング形状を有してもよい。
【0017】
また、前記発電要素が備える正極活物質がオキシ水酸化ニッケルを含んでもよい。
このようなアルカリ電池の場合には、前記正極活物質に例えば二酸化マンガンを用いる電池に比べて、誤使用時に、前記缶内の温度はより上昇する。しかしこのような高温下であっても、本発明の前記硬質環状体の前記間隙部は、前記破断誘起用薄肉部の破断部によって完全に閉鎖されにくい。従って、該アルカリ電池の安全が確保される。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明のアルカリ電池の一実施形態を図1に示す。尚、従来例と同一の構成要素には、同一の符号を付してある。
本実施の形態におけるアルカリ電池の構成材料は以下の通りである。正極材料2は、二酸化マンガンからなる正極活物質、黒鉛粉末からなる導電剤、アクリル酸樹脂からなるバインダ、及び40重量%濃度の水酸化カリウム水溶液である電解液を重量比100:10:0.1:5の割合で混合し、加圧成型して得た。電解液は、40重量%濃度の水酸化カリウム水溶液である。負極材料4は、亜鉛粉、酸化亜鉛を飽和した40重量%濃度の水酸化カリウム水溶液、アクリル酸樹脂を重量比60:40:1の割合で混合して得られたゲル状のものである。正極材料2及び電解液、並びに負極材料4及び電解液は、セパレータ3によって略分離されている。
【0019】
本実施の形態のアルカリ電池の構造においては、図6の従来の電池と比較して、封口板50と封口ガスケット40との間に硬質環状体60が新しく追加された点が異なり、他は前記説明と同じである。
【0020】
図2は、本実施の形態における硬質環状体60の斜視図を示す。硬質環状体60は、外径7.0mm、内径4.0mm、厚さ0.5mmのCリングの形状を有し、幅1.0mmの切欠部61を有する。硬質環状体60は、鉄等の金属又は耐熱性を有する硬質樹脂からなる。
硬質環状体60の外径は、封口ガスケット40の破断誘起用薄肉部44の外径よりも大きく、封口板50の第2ガス抜き穴52を完全に閉鎖しない程度に小さい。また、硬質環状体60の内径は、ボス部42の外径よりも大きい。
【0021】
図1に示されるように、硬質環状体60は、封口板50及び封口ガスケット40の間に、好ましくは封口板50の下面にこれと同心上に接着されて、封口ガスケット40の中間部43との間には間隙を有するように配設されている。
【0022】
本実施の形態におけるアルカリ電池の安全性を、図4に示した従来のアルカリ電池の安全性と比較するために、逆挿試験を行った。逆挿試験とは、4本のアルカリ電池のうち1本を他の3本とは逆に直列に接続したものを短絡させ、該1本のアルカリ電池の破裂の有無を調べる試験である。これによれば、本実施の形態の電池と従来の電池とに対するそれぞれ20回の逆挿試験のうちで、逆接続した従来のアルカリ電池は17本破裂したのに対し、本実施の形態のアルカリ電池は全く破裂しなかった。
【0023】
本実施の形態における硬質環状体60による防爆機能を、図3を参照しつつ説明する。図3は、封口体10の断面の一部を示しており、封口ガスケット40の薄肉部44が破断した状態を示している。破断した薄肉部44に隣接する、ガスケット40の中間部43は、硬質環状体60の下面に密着している。これにより、アルカリ電池の内部で加圧されたガスは、破断した薄肉部44とボス部42との間隙を通過して、硬質環状体60の中央部から切欠部61を通過し、第1及び第2のガス抜き穴(52、22)を通過してアルカリ電池の外部に排出される。
【0024】
この際、硬質環状体60は、鉄等の金属又は耐熱性を有する硬質樹脂からなるために、電池内部の温度が上昇しても、これによって大きく変形することはなく、確実にガスを通過させ、アルカリ電池の破裂を防ぐことができる。
【0025】
上記の機能を奏するために、硬質環状体60が適切な厚さを有する必要がある。この適切な厚さを調べるために、硬質環状体60の厚さを0.05mm、0.1mm、0.2mm、及び0.5mmと変えたアルカリ電池各20個について、上記と同様の逆挿試験を行い表1に示される結果を得た。
【0026】
【表1】
Figure 0004195803
【0027】
表1によれば、硬質環状体60の厚さが0.2mm以上であれば、アルカリ電池は破裂せず、硬質環状体60による防爆機構が十分に機能している。しかし、硬質環状体60の厚さが0.1mm以下では、硬質環状体60による防爆機構が十分に機能していない。
【0028】
硬質環状体60の厚さが十分でないが故に防爆機構が十分に機能しない理由を、図4を参照しつつ説明する。図4は、硬質環状体60の厚さが0.1mmである時の、封口体10の断面の一部を示しており、これによれば封口ガスケット40の薄肉部44が破断しているが、破断した薄肉部44に隣接する、ガスケット40の中間部43の先端が、硬質環状体60の切欠部61を閉塞している。
表1及び上記の理由から、アルカリ電池の硬質環状体60の厚さは0.2mm以上が好ましいことがわかった。
【0029】
次に、アルカリ電池の正極材料2の正極活物質である二酸化マンガンを、オキシ水酸化ニッケルにして、硬質環状体60の厚さが0.05mm、0.1mm、0.2mm、及び0.5mmの電池各20個について、上記と同様の逆挿試験を行い表2に示される結果を得た。
【0030】
【表2】
Figure 0004195803
【0031】
表2によれば、硬質環状体60の厚さが0.2mm以上であれば、アルカリ電池は破裂せず、硬質環状体60による防爆機構が十分に機能している。しかし、硬質環状体60の厚さが0.1mm以下では、硬質環状体60による防爆機構が十分に機能していない。
【0032】
一般に、正極活物質がオキシ水酸化ニッケルであるアルカリ電池の場合、誤使用による電池内部の温度及び圧力の上昇が、正極活物質が二酸化マンガンの電池の場合よりも激しくなる。しかしながら、表2によれば、硬質環状体60の厚さが0.1mm以下の電池の破裂の確率が高くはなるが、この厚さが0.2mm以上の場合には、正極活物質に関係なく電池の破裂が生じないことがわかった。
以上から、正極活物質がオキシ水酸化ニッケルであるアルカリ電池においても、硬質環状体60による防爆機構は機能し、硬質環状体60の厚さは0.2mm以上が好ましいことがわかった。
【0033】
以上、いくつかの実施の形態に基づき本発明に係るアルカリ電池を説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると伴に、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【0034】
上記の実施の形態においては、封口板50の下面にリング状の硬質環状体60を設けたが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、図5(a)に示されるように、縦6.0mm、横6.0mm、厚さ0.5mmの正方形の板の中央に直径4.0mmの穴を穿孔して、幅1.0mmの切欠部61を形成したものを、硬質環状体60としてもよい。また、図5(b)に示されるように、切欠部61の代わりに、幅1.0mm、深さ0.2mmの溝部62を形成してもよい。
【0035】
【発明の効果】
本発明のアルカリ電池によれば、電池内圧の上昇によってガスケットの薄肉部が破断した場合に、ガス排出路が遮断されることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態のアルカリ電池の構造を示した断面図である。
【図2】Cリングの形状を有する硬質環状体の斜視図である。
【図3】厚さ0.5mmの硬質環状体を備えた封口体で、薄肉部が破断した時の断面の一部を示した図である。
【図4】厚さ0.1mmの硬質環状体を備えた封口体で、薄肉部が破断した時の断面の一部を示した図である。
【図5】正方形形状をなす硬質環状体(a)、及び溝部が形成された硬質環状体(b)の斜視図である。
【図6】代表的なアルカリ電池の従来の構造を示した断面図である。
【図7】従来の封口体で、薄肉部が破断した時の断面の一部を示した図である。
【符号の説明】
1 正極缶
2 正極材料
3 セパレータ
4 負極材料
10 封口体
20 負極端子板
22 第1ガス抜き穴
52 第2ガス抜き穴
30 集電棒
40 封口ガスケット
42 ボス部
43 中間部
44 破断誘起用薄肉部
50 封口板
60 硬質環状体
61 切欠部
62 溝部

Claims (4)

  1. アルカリ電池であって、
    発電要素を収納した缶の開口部が、封口体によって封止され、
    前記封口体は、集電棒と封口板と負極端子板と封口ガスケットによって構成され、
    前記負極端子板の内側中央部には前記集電棒が接合され、
    負極端子板の外周部には第1ガス抜き穴が設けられ、
    前記封口ガスケットは、前記開口部及び前記外周部に密着してこれを封止する外筒部と、前記集電棒を囲繞するボス部と、該外筒部及び該ボス部を一体にて連結する中間部とを有し、
    前記封口ガスケットの前記中間部には前記ボス部の外周面に沿った破断誘起用薄肉部が設けられ、
    前記封口板は、前記負極端子板と前記封口ガスケットとの間に配設されているとともに、中央部で前記ボス部を囲繞し、
    前記封口板における前記ボス部の周囲には、第2ガス抜き穴が設けられ、
    前記封口板の下面側には前記ボス部の外径よりも大きな内径を有する硬質環状体が配設され、
    前記硬質環状体の外径は、前記封口ガスケットの前記破断誘起用薄肉部の外径よりも大きく、前記封口板の前記第2ガス抜き穴を完全に閉鎖しない程度に小さい外形を有し、
    前記硬質環状体の厚さは、0.2mm以上であり、
    前記硬質環状体には、内径側と外径側とを連通する間隙部が形成されている
    ことを特徴とするアルカリ電池。
  2. 請求項1において、前記硬質環状体がCリングの形状を有することを特徴とするアルカリ電池。
  3. 請求項1において、前記硬質環状体が上面側の一部を切欠したリング形状を有することを特徴とするアルカリ電池。
  4. 請求項1乃至3のいずれかにおいて、前記発電要素が備える正極活物質がオキシ水酸化ニッケルを含むことを特徴とするアルカリ電池。
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