JP4195136B2 - 炭素質多孔体の製造法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有害物質その他の物質の吸着材、ろ過材、イオン交換材、種々の触媒などとして利用される炭素質多孔体の製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近、飲料水中の塩素化合物、煤煙中のPCB、ダイオキシンに代表されるような塩素含有化合物の毒性や発ガン性が大きな社会問題になりつつある。これらの化合物は、熱分解、酸化などの反応で塩素や塩化水素に変換され、吸着材で除去される。吸着材としては炭素質多孔質材料が最も有効と考えられている。この目的の吸着材の具備すべき要件は、それが大きな比表面積(単位g当たりの表面積)を持つことである。
【0003】
従って、炭素材料であっても、いわゆる炭や高温で処理した黒鉛のようなものでは、比表面積が小さく、吸着材としての性能は非常に劣る。効率が良く実用に供せられる炭素吸着材は、少なくとも50m/g以上の比表面積を持つことが必要である。このためには、粒径1μm以下、望ましくは数十ナノメーター程度の炭素質微粒子の成形体をできるだけ低温、望ましくは900℃以下の温度で固化することが必要である。高温で処理すると、成形体の焼結がすすみ、炭素粒子間の細孔が減少する。その結果、比表面積が低減し、吸着性能は低下する。しかしながら、炭素の微粒子を低温で十分な強度にまで固化させるのは極めて難しく、これまでに所望の強度と吸着性能を有する炭素固化体の製造はなされていない。環境保全の立場から、その製造技術の開発が強く望まれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、炭素の微粒子を低温で十分な強度にまで固化させることができる炭素質多孔体の製造法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る炭素質多孔体の製造法は、平均粒径1μ以下の炭素質微粒子1重量部に対し、二糖類及び単糖類の中から選ばれる少なくとも1種の糖類を0.2〜2重量部の比率で含む混合物を成形した後、前記糖類を加熱分解固化することを特徴とする。
【0006】
本発明者らは、多年にわたり炭素質微粒子の低温固化について研究を重ねてきた結果、庶糖、ブドウ糖、果糖などの糖類を加熱すると、バインダーとしての性質を示す炭素質の物質が生成することを見い出した。これを炭素質微粒子の結合材に利用して低温固化することに想到し、鋭意研究の末、本発明に至ったものである。炭素質微粒子を低温固化させるにはバインダーが不可欠である。この場合のバインダーは炭素質微粒子の結合剤になるだけでなく、熱処理過程において炭素多孔体を構成する炭素自身に変化するものでなければならない。そして、バインダー由来の炭素が炭素質微粒子を3次元的なネットワークで結び付けるものでなければ、炭素だけからなる低温固化体を製造することはできない。丁度、小さな飴玉を同じ成分の水飴で固め、それを乾燥固化したようなものをつくる必要がある。この水飴に相当する物質が糖類である。糖類の分解生成物は、すこぶる良いバインダーとしての性質を示す。
【0007】
本発明において炭素質微粒子とは、有機物、例えば、石油、高分子化合物、樹脂、ピッチなどを不活性雰囲気中で熱処理して炭素化したものや、炭素化の中間生成物を粉砕して、通常粒径1μm以下、望ましくは数十ナノメーター程度の微粒子にしたものを言う。
【0008】
二糖類としてはサトウキビを原料とする甘蔗糖、ビート大根を原料とするビート糖、トウモロコシを原料とする異性化糖などを出発原料とする蔗糖、単糖類としてはブドウ糖や果糖が具体的に例示される。
【0009】
炭素質微粒子と糖類の混合比率は、炭素質微粒子1重量部に対し、糖類を0.2〜2重量部、好ましくは1〜2重量部とするのが良い。糖類の量が多いほど固化が容易である。
【0010】
本発明により炭素質多孔体を製造するに当たっては、炭素質多孔体の使用目的に応じて、炭素質微粒子の他にセラミックス微粒子、金属微粒子及び金属酸化物微粒子の中の少なくとも一つを添加して、炭素質多孔体の吸着特性に加え、炭素質多孔体だけでは持ち合わせない機能、即ちイオン交換性、触媒特性などを付与した多孔体の製造も可能であり、本発明の実施態様に含まれる。この場合、セラミックス微粒子、金属微粒子又は金属酸化物微粒子の平均粒径は、炭素質微粒子の平均粒径と同程度のものを用いることが望ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明による炭素多孔体の製造例を具体的に述べると、炭素質微粒子1重量部に対し、糖類を0.2〜2重量部の比率で採り、少量の水、アルコール類、エチレングリコール、グリセリンなどを加えて乳鉢またはボールミルで十分混合した後、この混合物を成形する。成形物の形状は、球状、ペレット状、柱状など、使用目的に応じて任意でよい。大きさも任意でよい。その成形物を150℃以上、900℃以下、好ましくは300℃〜500℃の温度で加熱する。加熱時間は加熱温度により異なるが、300℃〜500℃の温度で加熱した場合、通常2時間程度で固化する。加熱時間が長すぎると比表面積が減少する傾向であるから、最適加熱時間は実験的に定めればよい。
【0012】
加熱雰囲気は還元性または不活性雰囲気が好ましいが、蓋をした容器内で加熱する場合は酸化性雰囲気であっても良い。この場合は、容器、例えばルツボに少量の炭素粉を入れ、そこに成形体を入れて蓋をし、その炭素粉が先に燃焼することにより成形体が燃焼消失しないように配慮する必要がある。このような方法で合成した炭素多孔体の細孔は0.4nm(ナノメーター)から数nmの範囲にある。成形体の形状に応じて、超微細なサイズから巨視的サイズにまで制御することができる。また、得られる多孔体の比重は0.1程度の極めて小さなものから理論密度に至るまで、多彩に変化させることが可能である。
【0013】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0014】
【実施例1】
炭素質微粒子として平均粒径30nm、比表面積115m/gのゴム用カーボンブラック10gと蔗糖(グラニュール糖)10gをボールミルに入れ、少量の水を添加して20分間混合した。得られた混合粉を50kg/cmの成形圧で直径10mm、厚さ20mmの円柱状に一軸成形した。この成形物を少量の炭素粉と共に蓋付きのアルミナるっぼに入れ、30分で300℃まで加熱し300℃で2時間保持した。加熱処理は全て空気中で行った。その後炉冷して取り出した。測定の結果、得られた固化体の圧縮強度は620kg/cmであった。またBET法による比表面積は130m/gであった。
【0015】
【実施例2】
実施例1で使用したのと同じ炭素質微粒子5gとアパタイト微粒子5gの計10gと蔗糖(グラニュール糖)10gをボールミルに入れ、少量の水を添加して20分間混合した。得られた混合粉を50kg/cmの成形圧で直径10mm、厚さ20mmの円柱状に一軸成形した。それを少量の炭素粉と共に蓋付きのアルミナるっぼに入れ、蓋をして電気炉に入れ、30分で400℃まで加熱し、400℃で2時間保持した。加熱処理は全て空気中で行った。その後、炉冷して取り出した。測定した固化体の圧縮強度は610kg/cmであった。また、BET法による比表面積は78m/gであった。
【0016】
【実施例3】
実施例1で使用したのと同じ炭素質微粒子5gと酸化鉄粉5gの計10gとブドウ糖10gをボールミルに入れ、少量の水を添加して20分間混合した。得られた混合粉を50kg/cmの成形圧で直径10mm、厚さ20mmの円柱状に一軸成形した。それを少量の炭素粉と共にアルミナるつぼに入れ、電気炉中で窒素雰囲気で熱処理した。加熱は30分で400℃まで上げ、400℃で2時間保持した。その後、炉冷して取り出した。測定した固化体の圧縮強度は590kg/cmであった。また、BET法による比表面積は65m/gであった。
【0017】
【実施例4】
実施例1で使用したのと同じ炭素質微粒子5gとゼオライト微粉末5gの計10gに果糖10g加え、ボールミルに入れ、少量のグリセリンを添加して20分間混合した。得られた混合物を50kg/cmの成形圧で直径10mm、厚さ20mmの円柱状に一軸成形した。それを少量の炭素粉と共にアルミナるっぼに入れ、電気炉中窒素雰囲気で熱処理した。加熱は30分で400℃まで上げ、40℃で2時間保持した。その後、炉冷して取り出した。測定した固化体の圧縮強度は610kg/cmであった。また、BET法による比表面積は65m/gであった。
【0018】
【発明の効果】
炭素の微粒子を低温で十分な強度にまで固化させることができ、比表面積が大きく吸着性能が優れた炭素質多孔体を製造することができる。

Claims (1)

  1. 平均粒径1μ以下の炭素質微粒子1重量部に対し、二糖類及び単糖類の中から選ばれる少なくとも1種の糖類を0.2〜2重量部の比率で含む混合物を成形した後、前記糖類を加熱分解固化することを特徴とする炭素質多孔体の製造法。
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